説明

ヒューズ装置

【課題】爪付きヒューズを締付け金具で締付ける際、締め付け金具の回転により生じるヒューズ捩じれを防止することができ、既存のヒューズボックスやCKSの構造を変更することないヒューズ装置を提供する。
【解決手段】二本の電線の端部間に接続されるヒューズ装置であって、ヒューズを固定する絶縁ケースと、各電線の端部導体と夫々電気的に接続された2つの取付け端子部材と、前記各取付け端子部材に設けた雌螺子穴と、雌螺子穴内に螺合する雄螺子部及び雄螺子部の一端に固定した頭部を有した締結用ネジと、2つの前記取付け端子部材に両端部を当接した状態で両端部に設けた挿通部に前記締結用ネジの雄螺子部を挿通させるヒューズ片と、前記締結用ネジの頭部と前記ヒューズ片の端部との間に配置されたワッシャーと、を備え、前記ワッシャーは、前記絶縁ケースの一部と接触することによってワッシャーの回転を阻止する回転止め部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気回路内に設けられて定格以上の大電流から電気回路を保護したり、該大電流に起因した過熱、発火等の事故を防止するヒューズ装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、架空線から工場や一般家庭等の電力需要者の設備へ電力を供給する手段として、低圧配電線路より分岐させた低圧引込線が用いられている。この低圧引込線には電力需要者の設備で短絡が生じ、定格以上の大電流が流れる場合などに電気回路を保護し、また大電流が流れることに起因する過熱や発火等の事故を防止するために電線ヒューズが用いられている。
また動力装置等の電力線にはCKS(Cover Knife Switch)が用いられ、CKSにも短絡や過電流保護を目的としたヒューズが備えられている。このような電線ヒューズやCKSでは通常爪付きヒューズが用いられている。
電線ヒューズやCKSに用いられる爪付きヒューズは爪部をボルト等の締付け金具で締付ける際に締付け金具の回転によりヒューズが捩じれ、ヒューズの爪部である銅の部分と過電流が流れた時に溶断される鉛の部分との結合部分に応力が加わり、定格電流以下での溶断が生じるという問題点があった。
【0003】
特許文献1(特開平7−296711号公報)には、爪付きヒューズを絶縁基台にボルトなどの締付具で取り付ける際に締付具の回転でヒューズが捩じれることを防止するため、爪部の回動を阻止する2個の係止部と、これら係止部による爪部の回動阻止状態を保持させるために手で把持することが可能な把持部を備えた爪付きヒューズ用装着工具が開示されている。
また、特許文献2(特開2000−195408公報)には、板ヒューズをボルトにて締付けて固定したり、締付けたボルトを緩める際にボルトの回転により板ヒューズが連れ回りし、ヒューズエレメントが変形して損傷することを防止するために、ボルトが挿入される金属製プレート部と板ヒューズとの間に連れ回りを防止するために金属製プレートから突出する回り止めが一体形成された電気接続箱が開示されている。
しかし、特許文献1に開示のヒューズ用装着工具はヒューズの回動阻止のためにヒューズの連結部を把持する装着工具が必要であり、該装着工具をヒューズボックス内に備えるためにはヒューズボックスの構造を変更しなければならず、既存のヒューズボックスやCKSを利用できないという問題があった。
また、特許文献2に開示の電気接続箱もその内部に連れ回りを防止するための回り止め部が一体形成された金属製プレートが必要であり、既存のヒューズボックスやCKSを利用できないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−296711号公報
【特許文献2】特開2000−195408公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように電線ヒューズやCKSにおいて、その内部に爪付きヒューズを利用する場合、爪付きヒューズの爪部をボルト等の締付け金具で締付ける際に締付け金具の回転によりヒューズが捩じれ、ヒューズの爪部である銅の部分と過電流が流れた時に溶断される鉛の部分との結合部分に応力が加わり、定格電流以下での溶断が生じるという問題点があった。特許文献1にはヒューズの回動阻止のためにヒューズの連結部を把持する装着工具が開示され、また特許文献2にはヒューズの連れ回りを防止するための回り止め部を有す金属製プレートが開示されているが、いずれの先行技術もヒューズボックス或いは電気接続箱の構造を変更する必要があり、既存のヒューズボックスやCKSを利用できないという問題点があった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、爪付きヒューズを締付け金具で締付ける際、締め付け金具の回転により生じるヒューズ捩じれを防止することができ、しかも、既存のヒューズボックスやCKSの構造を変更することないヒューズ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、二本の電線の端部間に接続されるヒューズ装置であって、ヒューズを固定する絶縁ケースと、該絶縁ケースの内部に離間配置されて各電線の端部導体と夫々電気的に接続された2つの取付け端子部材と、前記各取付け端子部材に設けた雌螺子穴と、該雌螺子穴内に螺合する雄螺子部及び該雄螺子部の一端に固定した頭部を有した締結用ネジと、2つの前記取付け端子部材に両端部を当接した状態で該両端部に設けた挿通部に前記締結用ネジの雄螺子部を挿通させるヒューズ片と、前記締結用ネジの頭部と前記ヒューズ片の端部との間に配置されたワッシャーと、を備え、前記ワッシャーは、前記絶縁ケースの一部と接触することによって該ワッシャーの回転を阻止する回転止め部を備えていることを特徴とする。
ヒューズ片を取付け端子部材に固定する際、締結用ネジの回転力が直接ヒューズ片に加わらず、かつ、ワッシャーには絶縁ケースの一部と接触し、ワッシャーの回転を阻止する回転止め部を有しているので、締結用ネジの回転力はワッシャーに加わるが、ワッシャーは回転しないためヒューズに回転力が伝播しない。したがって、ヒューズを端子部材に固定する際、締結用ネジの回転力がヒューズに加わらず、ヒューズに捩じれ等の力が加わらないのでヒューズの溶断特性が変化せず、安全なヒューズ装置を提供することができる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、前記ワッシャーが底板と該底板と一体に形成された縁部とからなる皿型構造であって、該皿型構造の底板で前記ヒューズと接触し、かつ縁部外周の一部から延出し前記絶縁ケースの一部と接触するL字状の回転止め部を備えていることを特徴とする。
ワッシャーが皿型構造を有しているのでヒューズの取付け端子部材上への挿入が容易となるので、ヒューズ交換の作業性が向上することができる。
請求項3の発明は、請求項1において、前記ワッシャーがL字状の構造を有し、L字状の一辺の部材底部で前記ヒューズと接触し、かつL字状の他辺の端部で前記絶縁ケースの一部と接触する回転止め部を備えていることを特徴とする。
ワッシャーがL字状の構造を有しているので皿型構造のワッシャーと比較して安価に構成することができる。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1乃至3において、前記絶縁ケースが2つ絶縁ケース片を開閉自在に構成したケッチホルダからなることを特徴とする。
絶縁ケース片がケッチホルダであるため、電線ヒューズとして活用することができる。
請求項5の発明は、請求項1乃至3において、絶縁ケースがカバーナイフスイッチであることを特徴とする。
絶縁ケース片がカバーナイフスイッチであるので、カバーナイフスイッチに内蔵されるヒューズ装置として利用することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ワッシャーの下側にヒューズを配置し、締結用ネジによりヒューズを取付け端子部材に固定する際、締結用ネジの回転はワッシャーに伝達するが、該ワッシャーはその端部がケッチホルダ内或いはカバーナイフスイッチ内の絶縁構造体の一部に接触して回転が阻止されているため、締結用ネジの回転はヒューズに伝達しないので、ヒューズに捩じれを与えず、ヒューズの爪部と溶断部分との結合部分に応力が加わることがなく、溶断特性が変動しない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は本発明にかかるヒューズ装置を電線ヒューズに適用した場合の電線ヒューズに用いられる密閉型ケッチホルダの正面図、(b)はその断面図。
【図2】ケッチホルダ内の一方の取付け端子部付近の部分拡大図。
【図3】(a)はワッシャーの平面図、(b)は側部断面図、(c)は斜視図である。
【図4】本発明にかかるヒューズ装置に用いられるワッシャーの他の実施形態を示す図であり、(a)は取付け端子部付近の部分拡大図、(b)はワッシャーの斜視図である。
【図5】本発明にかかるヒューズ装置をカバーナイフスイッチに適用した場合の実施の形態を示す図であり、(a)はカバーを開放した状態のカバーナイフスイッチの平面図、(b)、(c)はヒューズ取り付け部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1(a)、(b)はそれぞれ本発明にかかるヒューズ装置を電線ヒューズに適用した場合の電線ヒューズに用いられる密閉型ケッチホルダの正面図及びその断面図である。電線ヒューズ100は2つ絶縁ケース102a、102bを開閉自在に構成したケッチホルダ102と、該ケッチホルダ102内に離間配置されて各電線104、105の導体端部と夫々電気的に接続された取付け端子部材106、107とを有す。
また、取付け端子部材106、107それぞれには雌螺子穴108、109が設けられ、該雌螺子穴108、109の穴内には、これらと螺合する雄螺子部110a、111a及び該雄螺子部の一端に固定された頭部110b、111bを有する締結用ネジ110、111がねじ込まれている。
さらに、取付け端子部材106、107間には取付け端子部材106、107に両端部を当接した状態で該両端部に設けた穴或いは切欠きの挿通部115aに締結用ネジの雄螺子部110a、111aを挿通させるヒューズ片115が設けられている。このヒューズ片115は締結用ネジ110及び111によりワッシャー117、118を介して取付け端子部材106、107に取り付けられている。
このように構成した電線ヒューズ100は一方の電線104が低圧配電線路より分岐させた低圧引込線と接続し、他方の電線105が一般需要家の電力設備と接続し、一般需要家の電力設備で短絡等の異常が生じ、過大な電流が流れた場合にヒューズ片115が溶断し、事故を防止する。
【0012】
図2はケッチホルダ102内の一方の取付け端子部107付近の部分拡大図であり、同図に示すようにヒューズ片115はその端部に設けられた穴或いは切り欠きの挿通部115aに締結用ネジの雄螺子部111aが挿入され、更に頭部111bと取付け端子部材107との間には、延出し端部118dがケッチホルダ102内の絶縁構造体120の一部に接触したワッシャー118が配置され、該ワッシャー118を介して固定されることにより、ヒューズ片115と電線の導体端部105とが電気的に接続している。
【0013】
図3(a)はワッシャー118の平面図、図3(b)は側部断面図、図3(c)は斜視図である。本発明にかかるヒューズ装置に用いられるワッシャー118は、底板118aと底板118aと一体に形成された縁部118bとからなる皿型構造であり、かつその皿の底板118aは非平坦で締結用ネジが貫通する穴部118cから外周部に近づくほど浮き上がるように反っている。これはワッシャー118を配置した状態でヒューズ片115の挿通部115aを容易に締結位置に挿入することを可能とするためである。また、ワッシャー118の縁部118bからは略L字状の端部118dが延出しており、該端部118dはケッチホルダ102内の絶縁構造体120の一部に接触することにより回転止め部として機能している。
したがって、各ワッシャー117、118の下側にそれぞれヒューズ片115を配置し、締結用ネジ110、111によりヒューズ片115を取付け端子部材106、107に固定する際、締結用ネジ110、111の回転はワッシャー117、118に伝達するが、ワッシャー117、118はその端部118dがケッチホルダ102内の絶縁構造体120の一部に接触し回転が阻止されているため、締結用ネジ110、111の回転はヒューズ片115に伝達せず、ヒューズ片115に捩じれを与えず、ヒューズの爪部と溶断部分との結合部分に応力が加わることがなく、ヒューズの溶断特性が変動しない。
【0014】
次に、図4は本発明にかかるヒューズ装置に用いられるワッシャーの他の実施形態を示す図であり、(a)は取付け端子部107付近の部分拡大図、(b)はワッシャーの斜視図である。なお、図1及び図2に示した実施の形態と比較してワッシャーの構造のみ異なり、他の部分については同一のためその説明を省略する。
同図に示すように本実施形態におけるワッシャー122はその断面が略L字状であり、ワッシャーとして機能し、締結用ネジが挿入される穴122aが設けられた部分と、その部分から直交する方向に延出する端部122bを有している。そして、この端部122bがヒューズ片115を装着する際にケッチホルダ102内の絶縁構造体120の一部に接触することにより回転止め部として機能している。
なお、上記説明では取付け端子部材106、107のいずれにヒューズ片115を固定する場合にも回転止め部を有するワッシャーを用いたが、取付け端子部材106、107のいずれかにワッシャーを備えるようにしても良い。すなわち、ヒューズ片115をヒューズ装置に取り付ける際には取付け端子部材106、107の一方にヒューズ片115の一端部に設けられた穴或いは切り欠きの挿通部を締結用ネジで固定し、更に他端部に設けられた挿通部を他端側の取付け端子部材に締結用ネジで固定するが、始めに固定する側のヒューズの挿通部では連結用ネジによる回転による応力が加わるものの、他端側が固定されていないためヒューズの溶断特性が変動するほどの応力を受けないためである。
したがって、ヒューズの一端の挿通部を締結用ネジで取付け端子部材に固定し、その後、他端側の挿通部を締結用ネジで取付け端子部材に固定する際、他端側の取付け端子部材にワッシャーを備えた構成としても、取り付けの際の締結用ネジによる回転力がヒューズ与える影響を低減し、同様の効果を得ることができる。
【0015】
図5は本発明にかかるヒューズ装置をCKSに適用した場合の実施の形態を示す図であり、(a)はカバーを開放した状態のCKSの平面図、(b)、(c)はヒューズ取り付け部の拡大図である。
CKS130は、絶縁基台からなる本体132、カバー134、スイッチレバー136、取付け端子部138、ヒューズ片140、ワッシャー142、ヒューズ片140の両端を締付ける締結用ネジ144を有している。ワッシャー142は断面が略L字状の外形を有し、垂直部分は絶縁基台132の一部に接触し、回転止め部として機能している。したがって、ヒューズ片140を取付け端子部138に締結用ネジ144で取り付ける際に締結用ネジから生じる回転力を受け、しかもワッシャー142の一部が絶縁基台132の一部に接触しているためたワッシャー142は連れ回りせず、ヒューズ片140に捩じれ等を与える応力を発生しない。
上記のように本発明にかかるヒューズ装置は、ヒューズ片を絶縁ケースに固定する際、固定用の締結ネジの回転力を受けず、したがって、ヒューズ片に捩じれが生じずヒューズの溶断特性が変動しない。また、ワッシャーに端部を設け、端部がケースの一部と接触することによりワッシャーの回転を防止するので、既存の電線ヒューズやカバーナイフスイッチ等の構造を変えることなくヒューズ装置を構成することができるという利点を有す。
【符号の説明】
【0016】
102 ケッチホルダ(絶縁ケース)、132 カバーナイフスイッチ絶縁基台(絶縁ケース)、106、107 取付け端子部材、 110、111 締結用ネジ、115、140 ヒューズ片、118、122、142 ワッシャー、118d、122a、142a ワッシャー端部(回転止め部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本の電線の端部間に接続されるヒューズ装置であって、
ヒューズを固定する絶縁ケースと、該絶縁ケースの内部に離間配置されて各電線の端部導体と夫々電気的に接続された2つの取付け端子部材と、前記各取付け端子部材に設けた雌螺子穴と、該雌螺子穴内に螺合する雄螺子部及び該雄螺子部の一端に固定した頭部を有した締結用ネジと、2つの前記取付け端子部材に両端部を当接した状態で該両端部に設けた挿通部に前記締結用ネジの雄螺子部を挿通させるヒューズ片と、前記締結用ネジの頭部と前記ヒューズ片の端部との間に配置されたワッシャーと、を備え、
前記ワッシャーは、前記絶縁ケースの一部と接触することによって該ワッシャーの回転を阻止する回転止め部を備えていることを特徴とするヒューズ装置。
【請求項2】
前記ワッシャーが底板と該底板と一体に形成された縁部とからなる皿型構造であって、該皿型構造の底板で前記ヒューズと接触し、かつ縁部外周の一部から延出し前記絶縁ケースの一部と接触するL字状の回転止め部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のヒューズ装置。
【請求項3】
前記ワッシャーがL字状の構造を有し、L字状の一辺の部材底部で前記ヒューズと接触し、かつL字状の他辺の端部で前記絶縁ケースの一部と接触する回転止め部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のヒューズ装置。
【請求項4】
前記絶縁ケースが2つ絶縁ケース片を開閉自在に構成したケッチホルダーからなることを特徴とする請求項1乃至3に記載のヒューズ装置。
【請求項5】
前記絶縁ケースがカバーナイフスイッチであることを特徴とする請求項1乃至3に記載のヒューズ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−94397(P2012−94397A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241402(P2010−241402)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】