説明

ヒンジ試験装置

【課題】ノートパソコン等の表示部の蓋を開閉して使用する装置において、ヒンジ部の開閉動作試験や開閉動作の耐久試験を、開閉動作だけでなく、回転軸中心方向にも加圧したヒンジ試験を可能とする。
【解決手段】表示部のヒンジ開閉動作を行わせる試験装置において、サーボモータ等を使用しアームを回転駆動させるアクチュエータの軸にアームの片端を固定し、アームの先端側に設けた把持部材で表示部を把持/回転駆動すると共に、蓋先端部に接して平行に備えられ、エアシリンダ等により回転軸中心方向に加圧する荷重調整可能なアクチュエータを設ける。アームの左右両先端側に設けた取付けバーに、把持部材と一体で加圧用アクチュエータを設けるようにしても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノートパソコン等の蓋の開閉動作試験を行う試験装置に関し、更には液晶パネル等の蓋部分に対し、回転方向以外に、回転軸中心方向へ加圧する機構を備えたヒンジの開閉耐久試験装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
情報端末装置本体部に対し、液晶パネル等からなる蓋の表示部を開閉動作させて使用されるノートパソコン等では、従来は試験装置のアームの回転動作のみによって、パネル部のヒンジ開閉動作の試験を行っていた。
【0003】
図5に従来の試験装置の外観図を示す。同図において、1は試験装置、2は被試験装置の本体部、3は被試験装置の表示部、4はアーム、5は回転用のアクチュエータ、6は把持部材、7は取付けバーである。ノートパソコン等のノート型電子機器等の被試験装置は、一般的にキーボード等の操作部を有する被試験装置の本体部2と、液晶パネル等の被試験装置の表示部3を有する蓋から構成され、使用時には被試験装置の表示部3を開き、使用後や移動、保管時には蓋を閉じて使用される。このため、被試験装置の表示部3のヒンジ開閉動作を行わせる動作試験や開閉動作の耐久試験等が必要となり、試験装置1には被試験装置の表示部3の開閉動作を行わせるためのアーム4、サーボモータ等からなり、アーム4を回転させる回転用アクチュエータ5、被試験装置の表示部3の蓋を把持する把持部材6、必要に応じ取付けバー7を備え、特に図示しないが、被試験装置自体は開閉方向に力を加えられても、動かないように試験装置1の台の上に固定されている。
【0004】
従来の試験装置1では、ノート型電子機器等の被試験装置の表示部3を挟むアーム4が、試験装置1の回転軸に接続/固定され、回転軸を駆動する回転用アクチュエータ5により、開く方向と閉める方向に回転駆動させるようにできている。また、アーム4の回転と共に、アーム4の左右両端に固定されている取付けバー7に取り付けられて蓋を把持する把持部材6により、蓋を回転駆動させるようになっている。
【0005】
しかし、実際にユーザが操作する場合には、回転方向だけではなくヒンジの回転軸中心方向に押し付ける荷重がかけられ、この力の繰り返しによりヒンジ部を固定するネジが緩んだり、更には、ヒンジ部の摩擦に伴うヒンジ破壊などの障害が発生する問題がある。
【0006】
特許文献1には、情報端末装置の蓋の開閉動作の開閉耐久試験で、蓋を閉じるアームと開くアームで構成され、蓋の自由な回転運動を拘束せずに開閉することができる開閉装置が開示されている。また、特許文献2には、車のドア耐久試験で、カメラ、歪計、加速度センサを用い、センサ出力から異常検出する車両開閉部の自動耐久試験方法が記載されている。
【0007】
しかし、これらのいずれの文献に示される試験装置でも、上記のように ヒンジ部の回転軸中心方向へ加圧するものではなく、ヒンジ部に関連した障害等を防ぎ品質確保に十分対応できるような技術は開示されておらず、この問題を解決するものではない。
【特許文献1】特開2005−83491号公報(第1−2頁、図1)
【特許文献2】特許第2750632号公報(第1−2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の問題点を解決し、ユーザが表示部を開閉する際と同様に、回転方向だけでなく、ヒンジ回転軸中心方向へ荷重をかけ押付けるヒンジ試験を可能とするヒンジ試験装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
被試験装置の表示部のヒンジ開閉動作を行わせる試験装置のアームに、表示部を把持する把持部材と、アームの先端部に荷重調整可能な加圧用アクチュエータを実装し、サーボモータ等を使用しアームを回転駆動させる回転用アクチュエータにより表示部を回転駆動すると共に、アーム先端部に備えられ、回転軸中心方向に加圧するエアシリンダ等による加圧用アクチュエータとから構成される試験装置とし、必要に応じアクチュエータを取り付ける取付けバーを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、軸方向に荷重をかけることで、従来の試験装置よりもユーザが操作する荷重を忠実に再現でき、この荷重を繰り返し加えることにより、ヒンジ部の摩擦変化に伴なうトルク増減が顕著に検出できるので、ヒンジ破壊の検出が可能となり、将来起こりうるヒンジの問題点を早期に検出するための耐久試験が可能となる。また、設計段階での検証用、または工場出荷前検査用の試験装置としても活用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に本発明の1実施例外観図を示す。同図において、1〜7は図5と同様であり、8は回転軸中心方向に加圧する加圧用アクチュエータであり、本実施例では加圧用アクチュエータ8を取り付けるための取付けバー7を備えている。本取付けバー7は、被試験装置の前面から見た場合の蓋の左右両端の外側で、左右両端のアーム4の先端部に水平方向に、蓋の上端の上部に平行して取り付けられている。取付けバー7には、被試験装置の表示部3の蓋を把持する把持部材6と加圧用アクチュエータ8が取り付けられ、加圧用アクチュエータ8が回転軸中心方向に向いて、蓋のヒンジ部が加圧されるように、把持部材6と加圧用アクチュエータ8は回転軸中心方向にしっかりと固定される構造になっている。
【0012】
特に図示していないが、被試験装置自体は回転や軸方向に力を加えられても、動かないように試験装置1の台の上にしっかりと固定されており、また、取付けバー7に取付ける把持部材6と加圧用アクチュエータ8の位置は、水平方向左右に任意に調整して固定することができるようになっている。また、本実施例は把持部材6と加圧アクチュエータ8が一体構造で取付けバー7に取り付けるようになっているが、特に図示しないが、加圧用アクチュエータ8が正しく蓋の回転軸中心方向に向いて設置できれば、蓋を把持して回転させる把持部材を別に設けても、また把持部材の取付け場所を蓋の左右上部を挟む位置としてもよいことはいうまでもない。
【0013】
図2は、本発明の試験装置の1実施例構成図である。11はシーケンサの本体部で、CPUユニットやI/Oユニットを有し、12はADユニット、13はモニタ部、14はサーボモータアンプ、15はサーボモータ、16は電磁弁、17はエアシリンダ、18はレギュレータ、19はスピードコントローラである。シーケンサ11は回転制御を行うためにサーボモータアンプ14を駆動し、サーボモータ15はサーボモータアンプ14の出力により、アーム回転用アクチュエータ5として、被試験装置の表示部3を回転駆動するアーム4を回転駆動する。アーム回転用アクチュエータ5は、被試験装置の表示部3に応じた任意の角度の範囲で開閉され、また、任意角度で停止し、その回転速度や繰り返し回数をシーケンサからの指示により適時制御される。
【0014】
本実施例ではシーケンサ11は、工場等のエア供給設備から、レギュレータ18とスピードコントローラ19を経由して供給されるエアを、電磁弁16からエアシリンダ17に供給する。その際、この電磁弁の制御に従い、エアシリンダ17へのエアの供給、停止を行うことにより、加圧圧力が制御され、被試験装置の表示部3のヒンジの回転軸中心方向に加圧する加圧用アクチュエータ8として動作する。加圧用アクチュエータ8は、シーケンサ11の指示によりアーム3の回転中/停止中に、任意の時間、任意の荷重を印加することが可能であり、また、上記の開閉動作試験中、発生するトルク上昇・降下からヒンジ破壊を検出し、その時までの開閉動作回数、開閉動作時間、及びトルク値などのデータを取得することができ、ヒンジ破壊を検出したら開閉動作等を停止する。
【0015】
図3は、図1の本発明の試験装置の1実施例の加圧用アクチュエータ部分の詳細外観図で、把持部材6と加圧用アクチュエータ8は図1と同様で、9はエアチューブであり、共に図2の電磁弁16に接続され、エアシリンダ17の中にある2つの部屋のそれぞれに、エアの供給、停止が制御され、エアシリンダ17内の空気圧により、蓋を挟み把持している把持部材6を介して、所定の圧力が蓋に加圧されるようになっている。
【0016】
図4は、本試験装置のシーケンサによる1実施例の動作フローチャートである。同図において、ステップS01でまず、開閉の回数や加圧時間等のパラメータの設定を行い、S02で起動をかけ、S03で回数到達までS04以下を繰り返す。S04で加圧アクチュエータ6により所定圧力により加圧し、S05でモータの回転により開く角度へ移動する。S06で加圧インターバルが終了すると、S07で減圧し、S08で停止インターバル終了で開いている間の動作を終了する。
【0017】
次に、閉じる動作に移り、S09で加圧アクチュエータ6により所定圧力で加圧し、S10でモータを回転させ閉じる角度へ移動させる。この状態でS11の加圧インターバル終了を待ち、S12で減圧に入り、S13で停止インターバル終了を待って、一回の開閉動作を終了し、S14で回数カウントアップしてS03に戻り、回数到達まで上記の動作を繰り返し、S15で回数到達すると、一連の試験動作を終了する。
【0018】
その後は、再度、パラメータの設定を変更して、S01から起動をかけることにより、加圧アクチュエータ6による加圧圧力を様々に変更設定し、繰り返しすことにより、アームの回転中または停止中のどちらの状態であっても、所定時間、所定荷重を印加したヒンジ試験が可能となる。また、この間、回転駆動手段のトルクを計測しており、発生するトルク上昇と降下からヒンジ破壊を検出することができ、ヒンジ破壊を検出したら開閉動作等を停止させる。と同時に、その時までの開閉動作回数、開閉動作時間及びトルク値などのデータをシーケンサのプログラムにより取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の試験装置の1実施例外観図
【図2】本発明の試験装置の1実施例構成図
【図3】加圧用アクチュエータ部分の詳細外観図
【図4】本発明のシーケンサによる1実施例の動作フローチャート
【図5】従来の試験装置の外観図
【符号の説明】
【0020】
1 試験装置
2 被試験装置の本体部
3 被試験装置の表示部
4 アーム
5 回転用アクチュエータ
6 把持部材
7 取付けバー
8 加圧用アクチュエータ
9 エアチューブ
11 シーケンサ
12 AD変換ユニット
13 液晶モニタ
14 サーボモータアンプ
15 サーボモータ
16 電磁弁
17 エアシリンダ
18 レギュレータ
19 スピードコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部をヒンジされ、反対側端部を開閉させる開閉動作可能な蓋を有する情報端末装置の、前記蓋のヒンジ部を試験するヒンジ試験装置であって、
回転駆動手段と、
前記回転駆動手段の回転軸に根本部が固定され、先端部が前記蓋を把持しつつ回転駆動されるアームと、
前記蓋と同一面上の、前記蓋の先端面に平行した水平方向に、且つ、前記アームの回転軸中心方向に向けた姿勢で、前記蓋の先端部に当接しつつ取り付けられた加圧アクチュエータと、
を備え、
前記回転駆動手段により、前記蓋を蓋が閉じられた状態から、所定最大角度に開かれた状態までの角度内で、前記アームが回転駆動されると共に、前記加圧アクチュエータにより、回転軸中心方向へ加圧されることを特徴とするヒンジ試験装置。
【請求項2】
前記加圧アクチュエータは、前記情報端末装置の正面から見て、前記蓋の左右両外側に設けられた前記アームの、アーム先端部に固定されて設けられる取付けバーに取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ試験装置。
【請求項3】
前記加圧アクチュエータにより、前記アームの回転中または停止中のどちらの状態であっても、所定時間、所定荷重を印加可能であることを特徴とする請求項1〜2に記載のヒンジ試験装置。
【請求項4】
前記ヒンジ開閉動作試験中の、前記回転駆動手段のトルクを計測し、発生するトルク上昇と降下からヒンジ破壊を検出した場合、開閉動作を停止することを特徴とする請求項1〜3に記載のヒンジ試験装置。
【請求項5】
前記ヒンジ破壊を検出した場合、その時までの開閉動作回数、開閉動作時間及びトルク値のいずれか一つ以上のデータを取得することを特徴とする請求項1〜4に記載のヒンジ試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−191018(P2008−191018A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26257(P2007−26257)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】