説明

ヒンダードアミン化合物の製造方法

【課題】1−アルキルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン構造を有するヒンダードアミン化合物を効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)、


(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に炭素原子数1〜30のアルキル基、または炭素原子数6〜12のシクロアルキル基である)で表されるヒンダードアミン化合物の製造方法において、(1)1−オキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンとジアルカノイルパーオキシドを水の存在下にて反応させる工程と、(2)得られた反応生成物を疎水性の有機溶剤に抽出し、該有機溶剤から水分を除去する工程と、(3)得られた溶液にエステル化触媒を加えてエステル化反応させる工程と、を含むヒンダードアミン化合物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒンダードアミン化合物の製造方法に関し、詳しくは、従来の方法より、効率よく製造することができる低塩基性ヒンダードアミン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒンダードアミン化合物は、合成樹脂などの有機物の光劣化を抑制することが知られており、アミン構造の違いによる安定化効果の違いや使用環境からの影響の大小により、活性水素を有する構造、活性水素を持たない3級アミン構造、および3級アミン構造より、さらに低塩基性のアルキルオキシアミン構造などが検討されてきた。また、安定化する合成樹脂との相溶性や耐抽出性の向上を目的にトリアジン骨格を導入するなどの検討も行われてきた。
【0003】
例えば、従来のヒンダードアミン化合物は、ポリオレフィン樹脂に用いた場合に、樹脂への相溶性が低く、樹脂から揮散してしまうため安定化効果が持続しない問題があった。また、酸性雨や農薬に触れる用途では、酸により抽出される問題もあった。
【0004】
1−アルキルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン構造を有するヒンダードアミン化合物は、低塩基性ヒンダードアミン化合物として、特許文献1などに提案され、特許文献2には種々の骨格を有する低塩基性ヒンダードアミン化合物が提案され、ケタール骨格を有するカルボン酸エステル構造を有するヒンダードアミンなどが提案されている。低塩基性ヒンダードアミン化合物は酸による抽出に優れた耐性を示すので、特許文献3などにポリオレフィン製農業用フィルムへの活用が提案されている。
【0005】
1−アルキルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン構造を有するヒンダードアミン化合物の合成方法としては、通常、下記反応式に示すように、1−オキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンとジアルカノイルパーオキシドを1:1モルで反応する第1の工程後に生成物を精製し、エステル化を行っている。

【特許文献1】特公昭49−40557号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開平1−113368号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】特開2001−139821号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の1−アルキルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン構造を有するヒンダードアミン化合物の合成方法では、製造工程が煩雑であり、中間生成物の精製工程を必要とし、廃棄物が発生するなど生産性が低いものであった。
【0007】
そこで本発明の目的は、1−アルキルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン構造を有するヒンダードアミン化合物を効率よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる現状に鑑み鋭意検討を重ねた結果、中間生成物を単離することなく、特定の条件で反応を行うことにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明のヒンダードアミン化合物の製造方法は、下記一般式(I)、

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に炭素原子数1〜30のアルキル基、または炭素原子数6〜12のシクロアルキル基である)で表されるヒンダードアミン化合物の製造方法において、
(1)1−オキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンとジアルカノイルパーオキシドを水の存在下にて反応させる工程と、
(2)得られた反応生成物を疎水性の有機溶剤に抽出し、該有機溶剤から水分を除去する工程と、
(3)得られた溶液にエステル化触媒を加えてエステル化反応させる工程と、
を含むことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のヒンダードアミン化合物の製造方法は、一般式(I)におけるR1およびR2が、それぞれ独立に炭素原子数3〜17のアルキル基であるヒンダードアミン化合物の製造に好適に用いることができ、R1およびR2が、同じ置換基である化合物の製造にも好適に用いることができる。また、前記工程(1)において、1−オキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンのジアルカノイルパーオキシドに対するモル比が0.98〜1.02であることが好ましく、更に、本発明に係るエステル化触媒としては、テトライソプロピルチタネートを好適に使用することができる。更にまた、前記工程(3)の後、アルコール溶媒を用いてヒンダードアミン化合物を再結晶する工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、効率よく一般式(I)で表されるヒンダードアミン化合物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のヒンダードアミン化合物の製造方法は、下記一般式(I)、

で表されるヒンダードアミン化合物の製造方法である。ここで、一般式(I)においてR1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜30のアルキル基、または炭素原子数6〜12のシクロアルキル基である。炭素原子数1〜30のアルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、ペンチル、第二ペンチル、第三ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、第三オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシルなどが挙げられ、炭素原子数6〜12のシクロアルキル基としては、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシルなどが挙げられる。中でも好ましくは、炭素原子数3〜17のアルキル基である。
【0013】
本発明の製造方法は、例えば、下記反応スキームで表すことができる。下記反応スキームはR1およびR2が、同じRである場合の反応スキームである。本発明の製造方法は、R1およびR2が、同じ置換基である化合物の製造にも好適に用いることができるが、複数の種類のジアルカノイルパーオキシドを用い、R1およびR2が、異なる置換基である化合物、または混合物とすることにより、分子量分布のある製品として粘度や融点を調整することも可能である。本発明の製造方法では、上記従来の製造方法と比較し、中間生成物の精製工程およびカルボン酸の仕込み工程が省略でき、生産性の高い製造方法であることが明らかである。

【0014】
一般式(I)で表される化合物としては、具体的には、下記化合物1〜4が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物によりなんら制限を受けるものではない。
【0015】

【0016】

【0017】

【0018】

【0019】
まず、本発明は工程(1)において、1−オキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンとジアルカノイルパーオキシドを水の存在下にて反応させる。本発明に用いる1−オキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンの合成方法としては、特に制限されず、通常の有機合成における手法により合成可能であり、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンを過酸化物と反応するなどの方法で合成したものを蒸留、再結晶、再沈などにより精製したものなどを適宜使用できる。
【0020】
また、本発明に用いるジアルカノイルパーオキシドは、目的のヒンダードアミン化合物の置換基に合わせて、適宜、選択することとなる。例えば、ジブチロイルパーオキシド、ジオクタノイルパーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、ジミリスチロイルパーオキシド、ジパルミトイルパーオキシド、ジステアロイルパーオキシド、ジシクロヘキサノイルパーオキシドなどが挙げられる。
【0021】
工程(1)において、1−オキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンのジアルカノイルパーオキシドに対するモル比が0.98〜1.02であることが好ましい。モル比を当該範囲とすることにより、未反応の1−オキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンおよびジアルカノイルパーオキシドを少なくすることができるため、コスト的に好ましい。
【0022】
1−オキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンとジアルカノイルパーオキシドは、水の存在下にて反応させる。
【0023】
次に、工程(2)において、まず、工程(1)にて得られた反応生成物を疎水性の有機溶剤に抽出する。得られた生成物とは、1−アルコキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン、およびジアルカノイルパーオキシドから生じるカルボン酸である。これら生成物を疎水性の有機溶剤にて反応液から抽出する。疎水性の有機溶剤としては、特に制限されるものではないが、生成物を効率的に抽出することができ、疎水性に優れ、水分を除去しやすいものが好ましい。例えば、プソイドキュメン(1,2,4−トリメチルベンゼン)等を好適に使用することができる。次に、得られた抽出液から水分を除去する。水分の除去方法は定法に従い、行うことができる。例えば、まず、水層を除去し、次に、加熱下で減圧還流脱水を行うこと等が挙げられる。
【0024】
次に、工程(3)において、工程(2)にて得られた溶液にエステル化触媒を加えてエステル化反応させる。エステル化触媒は特に制限されるものではないが、テトライソプロピルチタネート等を好適に使用することができる。
【0025】
得られた一般式(I)で表されるヒンダードアミン化合物の精製方法は、特に制限されるものではなく、定法に従い行うことができ、工程(3)の後、アルコール溶媒を用いてヒンダードアミン化合物を再結晶する工程を含むことが好ましい。具体的には、エステル化反応終了後、反応溶液を10%炭酸ナトリウム水溶液等によるアルカリ洗浄や水洗等を行った後、溶媒を除去し、アルコール溶媒を加え、冷却等行うことにより再結晶することが挙げられる。再結晶に用いるアルコール溶媒としては、エタノールを好適に使用することができる。
【0026】
一般式(I)で表されるヒンダードアミン化合物は、合成樹脂の安定剤などとして有用であり、安定化される合成樹脂としては、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリブテン−1、ポリ−3−メチルペンテン、ポリ−4−メチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体等の痾−オレフィンの単重合体または共重合体、これらの痾−オレフィンと共役ジエンまたは非共役ジエン等の多不飽和化合物、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル等との共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート、ポリエチレンテレフタレート・パラオキシベンゾエート、ポリブチレンテレフタレートなどの直鎖ポリエステルや酸変性ポリエステル、ポリカプロラクタム及びポリヘキサメチレンアジパミド等のポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、スチレン及び/又は痾−メチルスチレンと他の単量体(例えば、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、メタクリル酸メチル、ブタジエン、アクリロニトリル等)との共重合体(例えば、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、耐熱ABS樹脂等)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、塩化ゴム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−シクロヘキシルマレイミド共重合体等の含ハロゲン樹脂、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸オクチル等の(メタ)アクリル酸エステルの重合物、ポリエーテルケトン、ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、直鎖又は分岐のポリカーボネート、石油樹脂、クマロン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタン、繊維素系樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂、更に、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブタジエン−スチレン共重合ゴム、ブタジエン−アクリロニトリル共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合ゴム、エチレンとプロピレン、ブテン−1等の痾−オレフィンとの共重合ゴム、更にエチレン−痾−オレフィン及びエチリデンノルボルネン、シクロペンタジエン等の非共役ジエン類との三元共重合体ゴム等のエラストマー、シリコン樹脂等であってもよく、これら樹脂及び/又はエラストマーをアロイ化又はブレンドしたものであってもよい。
【0027】
上記合成樹脂は、立体規則性、比重、重合触媒の種類、重合触媒の除去の有無や程度、結晶化の度合い、温度や圧力などの重合条件、結晶の種類、X線小角散乱で測定したラメラ晶のサイズ、結晶のアスペクト比、芳香族系または脂肪族系溶媒への溶解度、溶液粘度、溶融粘度、平均分子量、分子量分布の程度、分子量分布におけるピークがいくつあるか、共重合体にあってはブロックであるかランダムであるか、各モノマーの配合比率などにより安定化効果の発現に差異が生じることはあるものの、いかなる樹脂を選択した場合においても適用可能である。
【0028】
一般式(I)で表されるヒンダードアミン化合物を樹脂へ配合する方法としては、特に限定されず、公知の樹脂への安定剤の配合技術が用いられる。合成樹脂を重合する際に予め重合系に添加する方法、重合途中で添加する方法、重合後に添加する方法のいずれでもよい。また、重合後に添加する場合には、安定化する合成樹脂の粉末やペレットとヘンシェルミキサーなどで混合したものを押出し機などで混練する方法や溶液として合成樹脂に噴霧して含浸させる方法、マスターバッチとした後に用いる方法などがあり、用いる加工機の種類や加工温度、加工後の冷却条件なども特に制限されず、得られる樹脂物性が用途に適したものとなる条件を選択することが好ましい。また、本発明に係るヒンダードアミン化合物を単独または他の添加剤と一緒に顆粒状にして用いてもよい。
【0029】
本発明に係る一般式(I)で表されるヒンダードアミン化合物を合成樹脂の安定化に用いる場合には、必要に応じて、通常各々の樹脂に用いられる各種の配合剤が用いられる。例えば、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、紫外線吸収剤、他のヒンダードアミン化合物、造核剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤、充填材、繊維状充填材、金属石鹸、ハイドロタルサイト類、帯電防止剤、顔料、染料などが挙げられる。
【0030】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4'−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−第三ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2'−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、2,2'−エチリデンビス(4−第二ブチル−6−第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕などが挙げられ、樹脂100重量部に対して、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは、0.05〜5重量部である。
【0031】
上記イオウ系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類およびペンタエリスリトールテトラ(竈−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールの竈−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類があげられ、樹脂100重量部に対して、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは、0.05〜5重量部である。
【0032】
上記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4'−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2'−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2'−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2'−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第三ブチルフェノールのホスファイトなどがあげられ、樹脂100重量部に対して、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは、0.05〜5重量部である。
【0033】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5'−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−第三ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−第三ブチル−5'−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール等の2−(2'−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2'−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4'−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−痾−シアノ−竈,竈−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシ−5−メチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)−s−トリアジン等のトリアリールトリアジン類があげられ、樹脂100重量部に対して、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは、0.05〜5重量部である。
【0034】
上記他のヒンダードアミン化合物としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン等のヒンダードアミン化合物があげられる。
【0035】
上記造核剤としては、p−t−ブチル安息香酸アルミニウム、安息香酸ナトリウムなどの芳香族カルボン酸金属塩;ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)リン酸ナトリウム、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)リン酸リチウム、ナトリウム−2,2'−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート等の酸性リン酸エステル金属塩;ジベンジリデンソルビトール、ビス(メチルベンジリデン)ソルビトールなどの多価アルコール誘導体などが挙げられる。
【0036】
上記難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、赤燐、リン酸メラミン、リン酸グアニジン、リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物などのリン系難燃剤、メラミンシアヌレートなどの窒素系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物が、難燃助剤としては、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛などの無機化合物、ポリテトラフルオロエチレンなどのドリップ防止剤などが挙げられる。
【0037】
ハイドロタルサイト類としては、天然物でも合成品でもよく、表面処理の有無や結晶水の有無によらず用いることができる。例えば、下記一般式(II)で表される塩基性炭酸塩が挙げられる。
xMgyAlzCO3(OH)xp+2y+3z-2・nH2O (II)
(式中、Mはアルカリ金属または亜鉛を、xは0〜6の数を、yは0〜6の数、zは0.1〜4の数を、pはMの価数を、nは0〜100の結晶水の数を表す。)
【0038】
滑剤としては、ラウリルアミド、ミリスチルアミド、ラウリルアミド、ステアリルアミド、ベヘニルアミドなどの脂肪酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、ポリエチレンワックス、カルシウムステアレート、マグネシウムステアレートなどの金属石鹸、ジステアリルリン酸エステルマグネシウム、ステアリルリン酸エステルマグネシウムなどのリン酸エステル金属塩などが挙げられる。
【0039】
充填材としては、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、チタン酸カリウム、ホウ酸カリウムなどの無機物が、球状物においては粒径、繊維状物においては繊維径や繊維長さおよびアスペクト比を適宜選択して用いられる。また、充填材は、必要に応じて表面処理したものを用いることが好ましい。
【0040】
また、農業用フィルムに用いる場合には、作物の生長を制御するために紫外線吸収剤を配合したり、保温性を向上するために赤外線吸収剤を配合したり、ハウス内に霧が発生したり、フィルム表面が結露して作物に光が十分に届かないことがあるので、防曇剤や防霧剤を配合してもよい。
【0041】
本発明に係るヒンダードアミン化合物は、合成樹脂の安定化、特にポリオレフィン製農業用フィルムに好適に用いられるが、潤滑油や電解液などの液状品の安定化など、有機物の長期の安定化効果が要求される用途において用いることができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例によりなんら制限を受けるものではない。
実施例1
化合物2の合成
1−オキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン10.2g(58.9mmol)を水10.2gに溶解し、70℃で40%ジラウロイルパーオキシド懸濁液58.7g (58.9mmol)を1.5時間かけて滴下した。さらに1.5時間反応して得られた反応物をガスクロマトグラフ(装置:島津製作所製GC−14B、カラム:GLサイエンス社製SiliconOV−17 5%/Chromosorb WAW 60/80mesh,直径2.6mm長さ1m、インジェクション温度250℃、ディテクター温度300℃、昇温速度15℃/分)により分析して原料の消失を確認した。得られた反応液は、4−ヒドロキシ−1−ウンデカノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ラウリン酸および少量の1−ウンデカノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オンの混合物であった。
【0043】
次に、反応液にプソイドキュメン55gを加え、生成物を油層に抽出し水層は除去した。その後100℃で減圧還流脱水を行った後、テトライソプロピルチタネート0.9gを加えて175℃で7時間常圧還流反応を行った。この時点でガスクロマトグラフでの反応率は99%以上であった。次に触媒除去のためこの反応液に10%炭酸ナトリウム水溶液を6g加えて70℃でアルカリ洗浄を行い、水層除去後、続けて水15gで水洗を4回行い淡黄色液体27.2g(収率91%、ガスクロマトグラフでの純度95.3%)を得た。着色が認められたため、さらに100℃で減圧還流脱水を行った後溶媒を除去後に脱色のためにエタノール50gを加えて−30℃で晶析を2回行った。その後、再度プソイドキュメン30gに溶解し、活性白土1.5gを加えて100℃で脱色処理を行い、処理液を濃縮し、無色液体13.5g(収率:45.0%)を得た。得られた液体は以下の分析結果から、化合物2であることが確認された。なお、得られた液体は、ガスクロマトグラフで純度96.5%であった。
【0044】
屈折率(25℃):1.4613
赤外吸収スペクトル(neat, cm-1):2920, 2850, 1780, 1460, 1360, 1380, 1305, 1180, 1115, 1040, 1000
1H-NMR(90MHz, CDCl3):4.90〜5.14(m) 3.65〜3.78(t) 2.18〜2.33(t) 0.82〜2.00(m)
MASS(GC-MS, m/z):508, 494, 294, 228, 172, 158, 140

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)、

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に炭素原子数1〜30のアルキル基、または炭素原子数6〜12のシクロアルキル基である)で表されるヒンダードアミン化合物の製造方法において、
(1)1−オキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンとジアルカノイルパーオキシドを水の存在下にて反応させる工程と、
(2)得られた反応生成物を疎水性の有機溶剤に抽出し、該有機溶剤から水分を除去する工程と、
(3)得られた溶液にエステル化触媒を加えてエステル化反応させる工程と、
を含むことを特徴とするヒンダードアミン化合物の製造方法。
【請求項2】
前記R1およびR2が、それぞれ独立に炭素原子数3〜17のアルキル基である請求項1記載のヒンダードアミン化合物の製造方法。
【請求項3】
前記R1およびR2が、同じ置換基である請求項1または2記載のヒンダードアミン化合物の製造方法。
【請求項4】
前記工程(1)において、1−オキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンのジアルカノイルパーオキシドに対するモル比が0.98〜1.02である請求項1〜3のうちいずれか一項記載のヒンダードアミン化合物の製造方法。
【請求項5】
前記エステル化触媒がテトライソプロピルチタネートである請求項1〜4のうちいずれか一項記載のヒンダードアミン化合物の製造方法。
【請求項6】
前記工程(3)の後、アルコール溶媒を用いてヒンダードアミン化合物を再結晶する工程を含む請求項1〜5のうちいずれか一項記載のヒンダードアミン化合物の製造方法。

【公開番号】特開2007−169191(P2007−169191A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367133(P2005−367133)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】