説明

ヒートパイプを内蔵したプリント基板

【目的】 実装されている発熱部品を冷却するためにヒートパイプを埋め込んだプリント基板の構造に関し、放熱効果を更に改善することを目的とする。
【構成】 表面に回路パターン(8a)を具え、基板を構成する絶縁層(5)内にヒートパイプ(6)を埋め込んでその放熱部(6b)を基板の外に露出させ、該ヒートパイプ(6)と基板表面の基板基材(1)との間に集熱用銅板(4)を挟み込んだプリント基板において、高発熱の電子回路部品(7)が実装されるべき前記基板基材(1)の領域に、予め前記銅板(4)に達する多数のスルーホール(9)を設けて、これの内周壁に銅めっきを施すと共に、その表面に部品実装用銅箔パターン(8b)を設けておき、該銅箔パターン(8b)に裏面にメタライズ加工を施された高発熱電子回路部品(7)を半田付け(10)して固定する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、実装されている発熱部品を冷却するためにヒートパイプを埋め込んだプリント基板の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】最近の電子回路装置は、LSI等の高発熱部品が高密度で実装されているために、プリント基板の発熱量が著しく多くなって来ている。このため、従来の冷却方式の強制空冷では能力が限界に達している。こうした状況を打開するために、プリント基板の中にサンドイッチ状に銅板を挟み込み、これに近接してヒートパイプの吸熱部を基板中に埋設し、電子回路部品から発生した熱を銅板を介してヒートパイプに伝え、プリント基板の外部に突出した該ヒートパイプの放熱部から外気中に放散させる方式が採用されている。
【0003】更に、この銅板とヒートパイプとの間の伝熱効率を向上させると共にプリント基板の板厚を減少させるために、埋め込まれるヒートパイプの断面形状を偏平化したものが、例えば特願平2-248644号等に提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、こうしたヒートパイプ内蔵型のプリント基板の放熱効果を更に改善することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】この目的は、表面に回路パターンを具え、基板を構成する絶縁層内にヒートパイプの吸熱部を埋め込んでその放熱部を基板の外に露出させ、該吸熱部と基板表面の基板基材との間に集熱用銅板を挟み込んだプリント基板において、高発熱の電子回路部品が実装されるべき前記基板基材の領域に、予め前記銅板に達する多数のスルーホールを設けて、これの内周壁に銅めっきを施すと共に、その表面に部品実装用銅箔パターンを設けておき、該銅箔パターンに裏面にメタライズ加工を施された高発熱電子回路部品を半田付けして固定したことを特徴とするヒートパイプを内蔵したプリント基板によって達成される。
【0006】本発明の別の一態様によれば、前記電子回路部品は、それが実装される領域の前記基板基材を取り除いて、露出した前記銅板の表面に直接半田付けして固定されている。
【0007】
【作用】本発明においては、プリント基板上に実装された電子回路部品から発生した熱は、銅箔パターン,半田層,及びその直下に設けられているスルーホールの銅めっきを通じて直ちに集熱用銅板に伝導され、ここからヒートパイプを介してプリント基板の外に放出される。
【0008】また、別の態様においては、電子回路部品の発熱は、半田層を通じて直接に集熱用銅板に伝導され、ヒートパイプによって外に放出される。以下、図面に示す好適実施例に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。
【0009】
【実施例】図1は、本発明の第1実施例の構成を示すプリント基板の断面図である。ガラス/エポキシ系樹脂からなる基板基材1,2で構成された表裏面の間に、プリプレグ層3を介して集熱用銅板4を挟み、更に、これに接近して、中心部のプリプレグ層5内にヒートパイプ6の吸熱部6aを埋め込んで構成されている。
【0010】このプリント基板の表面には、通常のようにエッチング等によって銅箔の回路パターン8aと電子回路部品7の固定のための銅箔パターン8bが形成されている。このヒートパイプ6は偏平断面を有しているが、この製造方法に関しては、前述の特願平2-248644号に詳細に述べられているので、ここでの説明は省略する。
【0011】本発明の特徴は、高発熱電子回路部品7のための銅箔パターン8bが設けられている領域の表面の基板基材1に、予め、前記銅板4に達する多数のスルーホール9が穿孔されている点にある。このスルーホール9の内周壁には銅めっきが施されており、これが銅板4に接触している。高発熱電子回路部品7は、予めその裏面にメタライズ加工によって金属皮膜が蒸着されている。そして、そのリード7aを回路パターン8aに接続する際に、回路パターン8aのフットプリントと共に銅箔パターン8bにもクリーム半田を塗布してリフロー炉に入れることにより、基板基板1の表面に半田層10によって固定される。
【0012】このようにして、構成されたヒートパイプ内蔵のプリント基板においては、高発熱電子回路部品7から生じた発熱は、半田層10,スルーホール9の銅めっき,銅板4を通じて、その直下に埋め込まれているヒートパイプの吸熱部6aに伝達され、放熱部6bを通じて外部に放出される。このように、熱は金属層同士の接触による伝導によって効率よくヒートパイプまで伝達されるので、冷却効果が増大する。
【0013】図2は本発明の第2実施例の構成を示すプリント基板の断面図である。この例でも、プリント基板自体の基本構成は同じであるが、高発熱電子回路部品7の実装される領域の基板基材1とその下のプリプレグ層3が切除され、埋め込まれている銅板4が露出している。そして、電子回路部品7は露出した銅板4の上に直接半田付けして固定されている。従って、第1実施例の場合に比して、銅板4に対する熱の伝達は更に効率的に行われる。
【0014】図3は、埋め込まれているヒートパイプのレイアウトの一例を示し、4本のヒートパイプ6が水平方向に互いに平行に並列されて、その放熱部6bがプリント基板の同じ縁から外に突出するように配置されている。そして、この放熱部6bには、共通の複数のフィン6cが設けられ、これをファン等による強制冷却気流によって冷却するように構成されている。
【0015】図4はヒートパイプのレイアウトの別の例の示し、前述の第1及び第2実施例で説明したような4本のヒートパイプ6’が垂直方向に互いに平行に並列され、銅板4を挟んでプリント基板の裏面に、これよりも径の太い共通の一本のヒートパイプ6”が前記ヒートパイプ6’の上端領域を横切って水平に延在している。垂直方向のヒートパイプ6’は完全にプリント基板内に埋設され、一方、水平方向のヒートパイプ6”の放熱端はプリント基板の縁から外に露出されている。
【0016】この構成によれば、ヒートパイプ6’によって上端側に運ばれた電子回路部品からの発熱は、ヒートパイプ7”によって運び出され、強制気流によって外部に放散される。これの特徴は、ヒートパイプ6’が垂直に設置されているので、パイプの上部で結露した冷媒蒸気が還流する際の速度が重力の作用によって加速される利点がある。
【0017】なお、上述の例は、ヒートパイプの断面形状が偏平化されているものについてのみ述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく、通常の円形断面のものについても同様に適用可能である。
【0018】
【発明の効果】本発明によれば、ヒートパイプ内蔵型プリント基板において、高発熱電子回路部品からヒートパイプまで達する伝熱経路を熱伝導性に優れた金属によって形成したので、効率のよい熱の汲み出しが可能になり、以て、装置の小型化、部品の高密度実装に伴う発熱量の増大に対応し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の構成を示すプリント基板の断面図である。
【図2】同じく第2実施例の構成を示すプリント基板の断面図である。
【図3】ヒートパイプのレイアウトの一例を示すプリント基板の平面図である。
【図4】同じく別のレイアウトを示すプリント基板の平面図である。
【符号の説明】
1,2…基板基材
3…プリプレグ層
4…集熱用銅板
5…中心部のプリプレグ層
6…ヒートパイプ
7…電子回路部品
8a…回路パターン
8b…銅箔パターン
9…スルーホール
10…半田層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面に回路パターン(8a)を具え、基板を構成する絶縁層(5)内にヒートパイプ(6)を埋め込んでその放熱部(6b)を基板の外に露出させ、該ヒートパイプ(6)と基板表面の基板基材(1)との間に集熱用銅板(4)を挟み込んだプリント基板において、高発熱の電子回路部品(7)が実装されるべき前記基板基材(1)の領域に、予め前記銅板(4)に達する多数のスルーホール(9)を設けて、これの内周壁に銅めっきを施すと共に、その表面に部品実装用銅箔パターン(8b)を設けておき、該銅箔パターン(8b)に裏面にメタライズ加工を施された高発熱電子回路部品(7)を半田付け(10)して固定したことを特徴とするヒートパイプを内蔵したプリント基板。
【請求項2】 表面に回路パターン(8a)を具え、基板を構成する絶縁層(5)内にヒートパイプ(6)を埋め込んでその放熱部(6b)を基板の外に露出させ、該ヒートパイプ(6)と基板表面の基板基材(1)との間に集熱用銅板(4)を挟み込んだプリント基板において、高発熱の電子回路部品(7)が実装されるべき領域の前記基板基材(1)を除去して前記銅板(4)を露出し、その上に前記電子回路部品(7)を直接に半田付け(10)したことを特徴とするヒートパイプを内蔵したプリント基板。
【請求項3】 前記ヒートパイプ(6)が偏平断面をしている請求項1または2に記載されたプリント基板。
【請求項4】 複数の前記ヒートパイプ(6)の放熱部がプリント基板の一側縁から突出し、これに共通の冷却用フィンが設けられている請求項1〜3のいずれか1項に記載のプリント基板。
【請求項5】 前記ヒートパイプが複数の水平方向パイプ(6’)とこれらに共通の一本の垂直方向パイプ(6”)とからなり、前者はプリント基板内に完全に埋設され、後者は前記銅板(4)を挟んでプリント基板の裏面側領域に前者を横断する姿勢で設置され、外部に露出されたその放熱端には冷却フィンが設けられている請求項1〜3のいずれか1項に記載のプリント基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平5−29717
【公開日】平成5年(1993)2月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−150380
【出願日】平成3年(1991)6月21日
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)