説明

ヒートポンプシステム及びその運転方法

【課題】液滴となった作動媒体が圧縮機に導入されることが防止できるヒートポンプシステム及びその運転方法を提供する。
【解決手段】水が流通する作動媒体供給配管2の水を減圧する膨張器3と、外部からの熱媒体で膨張器3からの水を蒸発させる蒸発器5と、蒸発器5からの水蒸気が流通する蒸気供給配管6と、蒸気供給配管6内の圧力を低減する真空ポンプ8と、蒸気供給配管6内の水の飽和温度以上に蒸気供給配管6の温度が達するように蒸気供給配管6を加熱する加熱装置7と、蒸気供給配管6内の水の飽和温度以上に蒸気供給配管6が加熱された以後に起動され、蒸気供給配管6からの水蒸気を圧縮する圧縮機7と、この圧縮機7で圧縮した水蒸気を熱媒体として熱利用設備に供給する熱媒体供給配管14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱媒体を熱利用設備に供給するヒートポンプシステム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー効率を向上させるための方策として、従来廃棄されていたエネルギーの活用が重要視されており、そのようなエネルギーの回収・利用を図ったものとしてヒートポンプシステムがある。ヒートポンプシステムには、作動媒体の加熱に比較的低温(例えば、60〜80℃程度)の熱源(例えば、工場排熱)を利用しているものがあるが、その中でも、外部からの熱源で加熱した作動媒体自体を熱媒体として熱利用設備に供給しているものがある(特許文献1等参照)。
【0003】
この種のヒートポンプでは、常圧における作動媒体の飽和温度が外部熱源の温度より高いため、まず、ヒートポンプ系内を負圧にして作動媒体の飽和温度を外部熱源の温度より低くしてから、外部熱源によって作動媒体を蒸発させている。このように蒸発された作動媒体は、蒸気供給配管を介して圧縮機(ターボ圧縮機)に導入されて昇圧され、熱媒体として熱利用設備に供給されている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−10243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の技術の蒸気供給配管は、圧縮機を起動する前は大気中に放置されているため、作動媒体の飽和温度より低い温度(常温程度)で保持されている。そのため、ヒートポンプを始動するために圧縮機を起動すると、蒸気供給配管を介して圧縮機に向かう作動媒体の中に、蒸気供給配管の壁面に冷却されて凝縮し液滴となるものが生じる場合がある。このように生じた液滴が圧縮機内に導入されると、インペラと衝突して圧縮機を損傷させる恐れがある。また、インペラが損傷すると、ロータ系にアンバランスが生じて異常振動が発生する場合もある。
【0006】
本発明の目的は、液滴となった作動媒体が圧縮機に導入されることが防止できるヒートポンプシステム及びその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、上記目的を達成するために、作動媒体が流通する作動媒体供給配管と、この作動媒体供給配管からの作動媒体を減圧する膨張器と、外部からの熱媒体が流通する熱源供給配管と、この熱源供給配管の熱媒体で前記膨張器からの作動媒体を蒸発させる蒸発器と、この蒸発器からの作動媒体が流通する蒸気供給配管と、この蒸気供給配管内の圧力を低減する真空ポンプと、前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度以上に前記蒸気供給配管の温度が達するように前記蒸気供給配管を加熱する加熱装置と、前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度以上に前記蒸気供給配管が加熱された以後に起動され、前記蒸気供給配管からの作動媒体を圧縮する圧縮機と、この圧縮機で圧縮した作動媒体を熱媒体として熱利用設備に供給する熱媒体供給配管とを備えるものとする。
【0008】
このように構成されたヒートポンプシステムにおいて、前記加熱装置を利用して前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度以上に前記蒸気供給配管が加熱された以後に前記圧縮機を起動すれば、前記蒸気供給配管の温度が加熱前に作動媒体の飽和温度より低い場合でも、作動媒体を気体のまま前記圧縮機に導入することができる。これによりヒートポンプシステムを起動する際に作動媒体が液滴となって前記圧縮機に導入されることが防止されるので、前記圧縮機が損傷することを抑制することができる。
【0009】
(2)上記(1)は、好ましくは、前記圧縮機が停止されてから全システムが停止されるまでの間に、前記加熱装置は、前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度以上に前記蒸気供給配管の温度を保持し、前記真空ポンプは、前記加熱装置によって気体状態に保持された前記蒸気供給配管内の作動媒体を外部へ排出するものとする。
【0010】
(3)上記(1)の前記真空ポンプは、好ましくは、前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度以下に設定した予熱完了温度に前記蒸気供給配管の温度が達した以後に、前記蒸気供給配管内の圧力を低減するものとする。
【0011】
(4)上記(1)は、好ましくは、前記蒸気供給配管の温度を検出する温度検出手段と、前記蒸気供給配管内の圧力を検出する圧力検出手段と、操作信号が入力されると、前記蒸気供給配管の温度が前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度以上に達したことを知らせる報知装置と、前記圧力検出手段から入力される検出値に基づいて前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度を算出し、前記温度検出手段から入力される検出値が前記算出した作動媒体の飽和温度以上に達したときに前記報知装置に操作信号を出力する制御装置とを備えるものとする。
【0012】
(5)上記(2)は、好ましくは、前記蒸気供給配管の温度を検出する温度検出手段と、前記蒸気供給配管内の圧力を検出する圧力検出手段と、操作信号が入力されると、前記蒸気供給配管の温度が前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度以上に保持されていることを知らせる報知装置と、前記圧縮機が停止されてから全システムが停止されるまでの間に、前記圧力検出手段から入力される検出値に基づいて前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度を算出し、前記温度検出手段から入力される検出値が前記算出した作動媒体の飽和温度以上に保持されているときに前記報知装置に操作信号を出力する制御装置とを備えるものとする。
【0013】
(6)上記(3)は、好ましくは、前記蒸気供給配管の温度を検出する温度検出手段と、前記蒸気供給配管内の圧力を検出する圧力検出手段と、第1操作信号が入力されたときには前記蒸気供給配管の温度が前記予熱完了温度以上に達したことを知らせ、第2操作信号が入力されたときには前記蒸気供給配管の温度が前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度以上に達したことを知らせる報知装置と、
前記温度検出手段から入力される検出値が前記予熱完了温度以上に達したときに前記報知装置に第1操作信号を出力し、この第1操作信号が出力された以後において、前記圧力検出手段から入力される検出値に基づいて前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度を算出し、前記温度検出手段から入力される検出値が前記算出した作動媒体の飽和温度以上に達したときに前記報知装置に第2操作信号を出力する制御装置とを備えるものとする。
【0014】
(7)上記(1)は、好ましくは、前記蒸気供給配管の温度を検出する温度検出手段と、前記蒸気供給配管内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記圧力検出手段から入力される検出値に基づいて前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度を算出し、前記温度検出手段から入力される検出値が前記算出した作動媒体の飽和温度以上に達したときに前記圧縮機を起動する制御装置とを備えるものとする。
【0015】
(8)上記(2)は、好ましくは、前記蒸気供給配管の温度を検出する温度検出手段と、前記蒸気供給配管内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記圧縮機が停止されてから全システムが停止されるまでの間に、前記圧力検出手段から入力される検出値に基づいて前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度を算出し、前記温度検出手段から入力される検出値が前記算出した作動媒体の飽和温度以上に保持されているときに前記真空ポンプを作動させる制御装置とを備えるものとする。
【0016】
(9)上記(3)は、好ましくは、前記蒸気供給配管の温度を検出する温度検出手段と、前記蒸気供給配管内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記温度検出手段から入力される検出値が前記予熱完了温度以上に達したときに前記真空ポンプを起動し、前記真空ポンプが起動された以後において、前記圧力検出手段から入力される検出値に基づいて前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度を算出し、前記温度検出手段から入力される検出値が前記算出した作動媒体の飽和温度以上に達したときに前記圧縮機を起動する制御装置とを備えるものとする。
【0017】
(10)上記(1)は、好ましくは、前記加熱装置は、外部からの熱媒体が流通する配管であって、前記蒸気供給配管を外周側から覆うように設けられた管部を有するものとする。
【0018】
(11)上記(4)は、好ましくは、前記加熱装置は、外部からの熱媒体が流通する配管であって、前記蒸気供給配管を外周側から覆うように設けられた管部を有し、前記温度検出手段は、前記蒸気供給配管に対して、前記管部内の熱媒体の流通方向の下流側に位置する部分に取り付けられているものとする。
【0019】
(12)上記(10)または(11)は、好ましくは、前記管部は、前記蒸発器の上流側で前記熱源供給配管から分岐した配管であって、前記蒸気供給配管の外周側を通過した後に前記熱源供給配管と再度接続する配管であるものとする。
【0020】
(13)本発明は、上記目的を達成するために、作動媒体が流通する作動媒体供給配管と、この作動媒体供給配管からの作動媒体を減圧する膨張器と、外部からの熱媒体が流通する熱源供給配管と、この熱源供給配管の熱媒体で前記膨張器からの作動媒体を蒸発させる蒸発器と、この蒸発器からの作動媒体が流通する蒸気供給配管と、この蒸気供給配管からの作動媒体を圧縮する圧縮機と、この圧縮機で圧縮した作動媒体を熱媒体として熱利用設備に供給する熱媒体供給配管と、前記圧縮機が停止されてから全システムが停止されるまでの間に、前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度以上に前記蒸気供給配管の温度を保持する加熱装置と、前記加熱装置によって気体状態に保持された前記蒸気供給配管内の作動媒体を外部へ排出する真空ポンプとを備えるものとする。
【0021】
(14)本発明は、上記目的を達成するために、水が流通する作動媒体供給配管と、この作動媒体供給配管からの水を減圧する膨張器と、外部からの熱媒体が流通する熱源供給配管と、この熱源供給配管の熱媒体で前記膨張器からの水を蒸発させる蒸発器と、この蒸発器からの水蒸気が流通する蒸気供給配管と、この蒸気供給配管内の圧力を低減する真空ポンプと、前記蒸気供給配管内の水の飽和温度以上に前記蒸気供給配管の温度が達するように前記蒸気供給配管を加熱する加熱装置と、前記蒸気供給配管内の水の飽和温度以上に前記蒸気供給配管が加熱された以後に起動され、前記蒸気供給配管からの水蒸気を圧縮する圧縮機と、この圧縮機で圧縮した水蒸気を熱媒体として熱利用設備に供給する熱媒体供給配管とを備えるものとする。
【0022】
(15)本発明は、上記目的を達成するために、作動媒体を減圧し、この減圧した作動媒体を外部からの熱媒体で蒸発させ、この蒸発させた作動媒体を蒸気供給配管を介して圧縮機に導入し、この圧縮機で圧縮した作動媒体を熱媒体として熱利用設備に供給するヒートポンプシステムの運転方法であって、前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度以上に前記蒸気供給配管を加熱した以後に、前記圧縮機を起動するものとする。
【0023】
(16)本発明は、上記目的を達成するために、作動媒体を減圧し、この減圧した作動媒体を外部からの熱媒体で蒸発させ、この蒸発させた作動媒体を蒸気供給配管を介して圧縮機に導入し、この圧縮機で圧縮した作動媒体を熱媒体として熱利用設備に供給するヒートポンプシステムの運転方法であって、前記圧縮機を停止する手順と、前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度以上に前記蒸気供給配管を加熱する手順と、前記圧縮機を停止した以後に、前記蒸気供給配管の温度を前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度以上に保持したまま前記蒸気供給配管内の作動媒体を外部へ排出する手順とを備えるものとする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、液滴となった作動媒体が圧縮機に導入されることが防止されるので、圧縮機の損傷を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0026】
図1は本発明の実施の形態であるヒートポンプシステムの概略構成図である。
この図に示すヒートポンプシステムは、水タンク1と、作動媒体供給配管2a,2bと、膨張器3と、熱源供給配管4と、蒸発器5と、蒸気供給配管6と、加熱装置7と、真空ポンプ8と、圧縮機9と、温度検出器10と、圧力検出器11と、制御装置12と、作動媒体排気配管13と、熱媒体供給配管14を備えている。
【0027】
水タンク1は、本実施の形態のヒートポンプシステムの作動媒体である水が液体状態で貯蔵されるタンクである。なお、本実施の形態のように作動媒体として水を利用する場合には、ヒートポンプシステム内の機器や配管を酸腐食やエロージョン等から保護する観点から溶存酸素が少ない純水を利用することが好ましい。
【0028】
膨張器3は、作動媒体供給配管2aを介して水タンク1から導入される作動媒体(水)を減圧するもので、作動媒体供給配管2aを介して水タンク1と接続されている。膨張器3で作動媒体を減圧すると作動媒体の飽和温度が低減されるので、常温における作動媒体の飽和温度より温度の低いものを作動媒体を蒸発させる熱媒体として利用することができる。作動媒体供給配管2aには、水タンク1からの水が液体状態で流通している。
【0029】
熱源供給配管4は、作動媒体(水)を加熱するために利用する外部からの熱媒体(流体)が流通するものであり、上流側において熱媒体の供給元である熱源15と接続されている。この熱源15としては、例えば工場が挙げられ、そこから熱源供給配管4を介して供給される熱媒体としては温排水が挙げられる。この熱源15からの熱媒体の温度は、作動媒体を蒸発させるために、膨張器3で減圧された作動媒体の飽和温度以上となっている。本実施の形態における作動媒体である水は、ヒートポンプシステム運転時において、常圧から0.02MPa(設定圧力(Pset))まで減圧されるようになっており、その飽和温度は約60℃(設定飽和温度(Tset))まで低減される。本実施の形態では、この設定飽和温度(60℃)以上の温度を有する熱媒体として、熱源15を出る際に80℃程度のものを利用するものとする。
【0030】
また、熱源供給配管4は、熱源15から下流側に向かって順番に、配管接続部21と、蒸発器系切替弁22と、配管接続部23を備えている。熱源供給配管4は、配管接続部23の下流側において蒸発器5の内部に導かれており、蒸発器5を通過した後には例えば熱媒体を排出する設備(排水設備、排気設備)に接続されている。
【0031】
配管接続部21は、加熱装置系配管24aの上流側の端部が接続される部分である。加熱装置系配管24aは、蒸気供給配管6を加熱する加熱装置7(後に詳述)に熱媒体を供給するもので、下流側の端部において加熱装置7と接続されている。また、加熱装置系配管24aには加熱装置系切替弁25が設けられている。この切替弁25は、加熱装置7に熱媒体を導入するか否かを選択するものであり、切替弁25を開くと熱媒体が加熱装置7に導入される。一方、配管接続部23は、加熱装置系配管24bの下流側の端部が接続される部分である。加熱装置系配管24bは、加熱装置7から排出された熱媒体が流通するもので、上流側の端部において加熱装置7と接続されている。
【0032】
蒸発器系切替弁22は、熱源15からの熱媒体の流通経路を切り替えるもので、配管接続部21と配管接続部23の間に位置するように熱源供給配管4に取り付けられている。この切替弁22を開くと熱媒体は蒸発器5の方向へ直接導かれ、切替弁22を閉じると加熱装置7の方向へ導かれる。
【0033】
蒸発器5は、熱源供給配管4内の熱媒体で膨張器3からの水を蒸発させるもので、作動媒体供給配管2bを介して膨張器3と接続されている。作動媒体供給配管2bには膨張器3で減圧された水が流通している。蒸発器5の内部には上記で説明したように熱源供給配管4が通過しており、熱源供給配管4内を流通する熱媒体と膨張器3からの水を熱交換させることによって蒸発器5は水蒸気を生成している。
【0034】
蒸気供給配管6は、蒸発器5からの作動媒体(水蒸気)が流通するものであり、上流側において蒸発器5と、下流側において圧縮機9と接続されている。蒸気供給配管6は、図2に示すように、蒸発器側フランジ31と、圧縮機側フランジ32を有している。蒸発器側フランジ31は、蒸気供給配管6の上流側の端部に設けられた継ぎ手部分で、蒸発器5の蒸気出口に設けられたフランジ(図示せず)と接続されている。一方、圧縮機側フランジ32は、蒸気供給配管6の下流側の端部に設けられた継ぎ手部分で、圧縮機1の蒸気入口に設けられたフランジ(図示せず)と接続されている。なお、これらフランジ31,32は、部材間に熱伸び差が生じることを考慮して、熱伸び吸収部材(例えば、フレキシブルチューブ)を間に介して蒸発器5又は圧縮機9のフランジと接続することが好ましい。
【0035】
図2は本実施の形態のヒートポンプシステムにおける蒸気供給配管6付近の断面図である。
この図に示すように、本実施の形態のヒートポンプシステムは、蒸気供給配管6付近において、加熱装置7と、温度検出器10と、圧力検出器11と、作動媒体排気配管13を備えている。
【0036】
加熱装置7は、蒸気供給配管6内の作動媒体の飽和温度以上に達するように蒸気供給配管6を加熱するもので、管部35と、配管接続部36a,36bと、支持板部37a,37bを備えている。
【0037】
管部35は、加熱装置系配管24aからの熱媒体が流通する配管であり、蒸気供給配管6の外周側から蒸気供給配管6を覆うように設けられている。つまり、この管部35と蒸気供給配管6によって二重管構造が形成されており、加熱装置7はこの管部35によって蒸気供給配管6を加熱している。
【0038】
また、管部35には、配管接続部36a,36bが設けられている。配管接続部36aは加熱装置系配管24aが接続される熱媒体の導入口であり、配管接続部36bは加熱装置系配管24bが接続される熱媒体の排出口である。本実施の形態においては、配管接続部36aは圧縮機9側に、熱媒体が排出される配管接続部36bは蒸発器5側に設けられている。このように配管接続部36a,36bを設けると、熱媒体は管部35内を圧縮機9側から蒸発器5側に向かって流れるので、蒸気供給配管6の温度は蒸発器5側より圧縮機9側の方が高くなる。
【0039】
支持板部37aは、管部35の圧縮機9側の開口部を塞ぐ板部材であり、管部35の圧縮機9側に溶接等によって固定されている。支持板部37bは、管部35の蒸発器5側の開口部を塞ぐ板部材であり、管部35の蒸発器5側に溶接等によって固定されている。
【0040】
温度検出器10は、蒸気供給配管6の温度(メタル温度)を検出するもので、蒸気供給配管6に取り付けられている。温度検出器10としては、例えば、金属保護管(シース)の内部に熱電対素線を挿入し、その周囲に粉末状の無機絶縁物を充填したシース熱電対を利用すると良い。本実施の形態では温度検出器10としてシース熱電対を利用している。温度検出器10であるシース熱電対は、支持板部37bと蒸発器側フランジ31の間に設けられた座38に対して、そのシース先端が蒸気供給配管9のメタル温度を検出するように取り付けられている。温度検出器10が検出したメタル温度(Tm)は、A/D変換器61(後の図3参照)を介してデジタル信号(Td)となり、制御装置12に出力されている。
【0041】
なお、温度検出器10は、蒸気供給配管6に対して、管部35内の熱媒体の流通方向の下流側に位置する箇所に取り付けることが好ましい。このように温度検出器10を取り付けると、熱媒体の流れの上流側と比較して温度が低い部分に基づいて蒸気供給配管6の温度を監視できるので、蒸気供給配管6内の広範囲に渡って作動媒体の液滴が付着することを抑制することができるからである。そのため、本実施の形態における温度検出器10は、管部35内を圧縮機9側から蒸発器5側へ流れる熱媒体の下流側に位置するように、支持板部37bと蒸発器側フランジ31の間に取り付けられている。
【0042】
圧力検出器11は、蒸気供給配管6内の圧力を検出するもので、蒸気供給配管6に取り付けられている。本実施の形態の圧力検出器11は、蒸気供給配管6に設けられた静圧孔39を介して蒸気供給配管6の内部圧力を圧力伝送器62(後の図3参照)に導いており、この圧力伝送器62によって蒸気供給配管6の内部圧力を検出している。静圧孔39は蒸気供給配管6の周方向において温度検出器10と異なる位置に設けられており、圧力伝送器62は導圧管(図示せず)を介して静圧孔39と接続されている。本実施の形態における静圧孔39は、蒸気供給配管6の周方向における座38の位置から180度位相が異なる位置に設けられている。圧力検出器11が検出した内部圧力(P)は、温度検出器10と同様に、A/D変換器61を介してデジタル信号(Pd)となり、制御装置12に出力されている。このように圧力検出器11から制御装置12に出力された信号(Pd)は、制御装置12において蒸気供給配管6内の作動媒体の飽和温度(Ts)を求めるために利用される。なお、本実施の形態では、図3に示すように、温度検出器10と圧力検出器11とでA/D変換器61を兼用しているが、それぞれに個別のA/D変換器を設けて検出値をデジタル変換しても勿論良い。
【0043】
作動媒体排気配管13は、蒸気供給配管6内の作動流体を外部に排出する配管で、蒸気供給配管6と接続されている。本実施の形態における作動媒体排気配管13は、圧縮機側フランジ32と支持板部37aの間に設けられた吸気口41を介して蒸気供給配管6と接続されている。作動媒体排気配管13において吸気口41と反対側の端部は例えば大気などに開放されており、吸気口41から吸引された作動媒体は外部へ放出される。
【0044】
ここで図1に戻り、作動媒体排気配管13には、真空ポンプ8と、開閉弁45が設けられている。
【0045】
真空ポンプ8は、蒸気供給配管6内の圧力を設定圧力(Pset)まで低減するものであり、作動媒体の流通方向に向かって開閉弁45の下流側に位置するように作動媒体排気配管13に取り付けられている。
【0046】
開閉弁45は、作動媒体排気配管13の流路を開閉するためのものであり、吸気口41と真空ポンプ8の間に位置するように作動媒体排気配管13に取り付けられている。開閉弁45を開くと作動媒体排気配管13内の作動媒体は外部に向かって流通可能となり、開閉弁45を閉じると作動媒体排気配管13内の作動媒体の流通は遮断される。
【0047】
圧縮機(ターボ圧縮機)9は、蒸気供給配管6からの作動媒体を圧縮するもので、蒸気供給配管6と接続されている。圧縮機9には圧縮機9を回転駆動させるロータ51が連結されており、圧縮機9の出口には熱媒体供給配管14が接続されている。また、圧縮機9は静止体であるケーシング(図示せず)内に設けられた回転体であるインペラ(図示せず)を回転させることによって作動媒体を圧縮している。なお、特に図示しないが、蒸気供給配管6を出る際に負圧となっている熱媒体(作動媒体)を正圧にまで昇圧して熱利用設備に供給するために、圧縮機9は複数段で構成することが好ましい。
【0048】
ロータ51は、軸受52,53によって支承されており、カップリング57を介して電動機58と連結されている。電動機58に通電すると、電動機58の駆動力がカップリング57及びロータ51を介して圧縮機9に伝達され、圧縮機9が起動される。これと反対に電動機58への通電を停止すると、圧縮機9は停止される。
【0049】
軸受52,53は、潤滑油が供給される潤滑油供給配管54を介して潤滑油装置55と接続されており、潤滑油が排出される潤滑油排出配管56を介して潤滑油装置55と接続されている。軸受52,53には潤滑油装置55から潤滑油供給配管54を介して潤滑油が供給されており、軸受52,53に供給された後の排油は潤滑油排出配管56を介して潤滑油装置55に戻される。
【0050】
熱媒体供給配管14は、圧縮機9で圧縮した作動媒体(水蒸気)を熱媒体として熱利用設備に供給するもので、熱利用設備(図示せず)と接続されている。熱媒体供給配管14を介して送られる作動媒体は熱利用設備で熱媒体として利用される。
【0051】
なお、特に図示しないが、上記において説明した全ての配管(例えば、作動媒体供給配管2a,2b、熱源供給配管4、蒸気供給配管6、熱媒体供給配管14等(加熱装置7を構成するものも含む))は、各配管内の流体を保温して効率を向上させるために、断熱材で覆うことが好ましい。
【0052】
制御装置12は、温度検出器10及び圧力検出器11からの入力信号(Td,Pd)に基づいて蒸気供給配管6の温度と設定値との大小を判定し、その判定結果に基づいて操作信号を出力するものである。
【0053】
図3は本実施の形態のヒートポンプシステムにおける制御装置の機能ブロック図である。
【0054】
この図において、制御装置12は、演算部63と、制御部64を備えている。
【0055】
演算部63は、圧力検出器11から入力される内部圧力(Pd)に基づいて蒸気供給配管6内の作動媒体の飽和温度(Ts)を算出する処理と、蒸気供給配管6のメタル温度(Td)と作動媒体の飽和温度(Ts)の差(Tc=Td−Ts)を算出する処理を主に行う部分である。演算部63には、温度検出器10から蒸気供給配管6のメタル温度(Td)が、圧力検出器11から蒸気供給配管6内の作動媒体の圧力(Pd)が入力されている。また、演算部63は算出した温度差(Tc)を制御部64に出力している。
【0056】
ここで、本実施の形態のヒートポンプシステムの運転手順を参照しつつ、制御部64について説明する。
【0057】
詳細は後述の動作説明で行うが、本実施の形態では、ヒートポンプシステムを運転するにあたって、(1)蒸気供給配管6の内部を大気圧にして蒸気供給配管6を予熱する手順、(2)蒸気供給配管6の内部を設定圧力(Pset)にして蒸気供給配管6を加熱する手順、(3)圧縮機9を起動する手順、という3つのステップが順番に行われる。
【0058】
ステップ(1)は、蒸気供給配管6の内部圧力(P)を大気圧にしたまま、蒸気供給配管6の温度が予熱完了温度以上に達するまで蒸気供給配管6を加熱装置7で加熱する段階である。このように真空ポンプ8を起動する前に蒸気供給配管6を予熱しておけば、真空ポンプ8を駆動する時間が低減されるので、エネルギー効率を向上することができる。ステップ(2)は、真空ポンプ8を起動して蒸気供給配管6内の内部圧力(P)を設定圧力(Pset)にし、蒸気供給配管6の温度が加熱完了温度以上に達するまで蒸気供給配管6を加熱装置7で加熱する段階である。このように圧縮機9を起動する前に蒸気供給配管6を加熱しておけば、圧縮機9に作動媒体が導入される際に凝縮して液滴となることを抑制することができる。ステップ(3)は、蒸気供給配管6内の内部圧力(P)を設定圧力(Pset)に保持したまま圧縮機9を起動してヒートポンプシステムを運転する段階である。
【0059】
ところで、ステップ(1)から(2)と、ステップ(2)から(3)への移行は、前のステップが完了した後に行われ、各ステップが完了したか否かは制御部64によって判定される。制御部64は、演算部63から入力される温度差(Tc)を用いることによって各ステップが完了したか否かを判定し、各ステップの完了を明示する部分である。具体的には、制御部64は、ステップ(1)の完了を温度差(Tc)が予熱完了値(C1)以上に達したか否かで判定し、ステップ(2)の完了を温度差(Tc)が加熱完了値(C2)以上に達したか否かで判定する。
【0060】
予熱完了値(C1)は、ステップ(1)において蒸気供給配管6が予熱完了温度以上に達したか否かを判定するために用いられる設定値である。予熱完了値(C1)は、蒸気供給配管6の予熱の目標である予熱完了温度から常圧(大気圧)における作動媒体の飽和温度を減じることによって求められる。予熱完了温度としては、ヒートポンプ運転中の蒸気供給配管6の内部圧力(設定圧力(Pset))における飽和温度(設定飽和温度(Tset))以下の温度を適宜設定すれば良い。本実施の形態では、作動媒体の設定飽和温度(Tset)が60℃と設定されていることを鑑みて、これより5℃低い55℃を予熱完了温度として設定するものとする。この場合、この予熱完了温度(55℃)から大気圧における水の飽和温度(100℃)を減じることにより、予熱完了値(C1)は「−45℃」と設定される。
【0061】
ステップ(1)において、蒸気供給配管6が加熱装置7によって加熱されて、温度差(Tc)が予熱完了値(C1)以上に達したことが制御部64によって判定されると、蒸気供給配管6の予熱が完了した旨の信号(予熱完了信号)が制御部64によって出力される。この予熱完了信号は、ヒートポンプシステムの操作者に蒸気供給配管6の予熱が完了したことを知らせる報知装置65(図3参照)を作動させるための操作信号(第1操作信号)である。この報知装置65としては、例えば、予熱が完了した旨を画面上に表示する表示装置や、予熱が完了した旨を点灯して知らせる報知灯等が挙げられる。
【0062】
報知装置65によって蒸気供給配管6の予熱が完了した旨を認識した操作者は、ステップ(1)を終了し、続くステップ(2)を開始する操作を行う。この際、温度差(Tc)の判定に用いられる設定値は、予熱完了値(C1)から加熱完了値(C2)に切り替えられる。なお、この設定値の切替は手動で行っても良いし、自動で行っても良い。
【0063】
加熱完了値(C2)は、ステップ(2)において蒸気供給配管6が加熱完了温度以上に達したか否かを判定するために用いられる設定値である。加熱完了値(C2)は、蒸気供給配管6の加熱の目標である加熱完了温度から作動媒体の設定飽和温度(Tset)を減じることによって求められる。加熱完了温度としては、蒸気供給配管6内で作動媒体が凝縮しないように、設定飽和温度(Tset)以上の温度を適宜設定すれば良い。本実施の形態では、設定飽和温度(Tset)が60℃と設定されていることを鑑みて、これと等しい60℃を加熱完了温度として設定するものとする。この場合、この加熱完了温度(60℃)から水の設定飽和温度(60℃)を減じることにより、加熱完了値(C2)は「0℃」と設定される。
【0064】
ステップ(2)において、蒸気供給配管6が加熱装置7によって加熱されて、温度差(Tc)が加熱完了値(C2)以上に達したことが制御部64によって判定されると、蒸気供給配管6の加熱が完了した旨の信号(加熱完了信号)が制御部64によって出力される。この加熱完了信号は、蒸気供給配管6の加熱が完了したことを知らせる報知装置65を作動させるための操作信号(第2操作信号)である。なお、本実施の形態では、予熱と加熱が完了した旨を知らせるものとして同一の報知装置65を利用しているが、それぞれ個別のものを利用しても勿論良い。報知装置65によって蒸気供給配管6の加熱が完了した旨を認識した操作者は、ステップ(2)を終了し、続くステップ(3)を開始する操作を行う。
【0065】
なお、本実施の形態では、エネルギー効率を向上させるために真空ポンプ8を起動する前に蒸気供給配管6を予熱するステップ(1)を行うものについて説明したが、このステップ(1)を省略しても、液滴を生じさせることなく作動媒体を圧縮機9に導入することは勿論可能である。
【0066】
次に本実施の形態のヒートポンプシステムの起動方法について、図を参照しつつ説明する。
【0067】
図4は、本実施の形態のヒートポンプシステムの起動方法のフローチャートである。
【0068】
上記のように構成される本実施の形態において、蒸気供給配管6の予熱をする(ステップ(1))には、まず、開閉弁45と蒸発器系切替弁22を閉め、加熱装置系切替弁25を開く(S401)。これにより、熱源15から供給される約80℃の熱媒体は、熱源供給配管4から、配管接続部21、加熱装置系配管24aを経て、加熱装置7に導かれる。このように加熱装置7に導かれた熱媒体は、管部35内を圧縮機9側から蒸発器5側に向かって流れ、自身の温度を低下させながら蒸気供給配管6を加熱する。管路35内を通過した熱媒体は、加熱装置系配管24bから、配管接続部23を経て、再度、熱源供給配管4を流通し、蒸発器5内に導入される。蒸発器5に導かれた熱媒体は、蒸発器5を予熱した後に排出設備に排出される。
【0069】
制御装置12は、加熱装置7が蒸気供給配管6を予熱する間、温度検出器10から入力される蒸気供給配管6のメタル温度(Td)と圧力検出器11から入力される内部圧力(Pd)に基づいて、「Tc=Td−Ts≧C1」が成立するか否かを監視し、蒸気供給配管6の予熱が完了したか否かを判定している(S402)。このとき、メタル温度(Td)は加熱装置7によって時間経過とともに増加していくが、内部圧力(Pd)から求められる作動媒体の飽和温度(Ts)は、蒸気供給配管6内が常圧(大気圧)に保持されているため、常圧における作動媒体の飽和温度を示し続ける。本実施の形態では、予熱完了値(C1)が−45℃で、常圧における作動媒体(水)の飽和温度(Ts)が100℃なので、蒸気供給配管6が加熱された結果、「Tc=Td−100℃≧C1=−45℃」即ち「Td≧55℃」が満たされると、蒸気供給配管6が予熱完了温度に達して予熱完了信号が出力される(S403)。
【0070】
予熱完了信号が出力されると、ヒートポンプシステムの操作者は、蒸気供給配管6の予熱が完了したことを報知装置65を介して認識する。これを認識した操作者は、内部圧力を設定圧力(Pset)にして蒸気供給配管6の加熱を行うために(ステップ(2))、真空ポンプ8を起動するとともに開閉弁45を開け、制御装置12が温度差(Tc)の判定に用いる設定値を予熱完了値(C1)から加熱完了値(C2)へと切り替える。(S404)。真空ポンプ8を起動して開閉弁45を開くと、蒸気供給配管6内の流体が作動媒体排気配管13を介して排出され、蒸気供給配管6の内部圧力は設定圧力(Pset)である0.02MPaまで低減される。一方、加熱装置7には熱媒体が導入され続けているので、蒸気供給配管6は予熱完了温度から更に加熱される。
【0071】
制御装置12は、加熱装置7が蒸気供給配管6を加熱する間、「Tc≧C2」が成立するか否かを監視し、蒸気供給配管6の加熱が完了したか否かを判定する(S405)。本実施の形態では、加熱完了値(C2)が0℃で、設定圧力(0.02MPa)における水の設定飽和温度(Tset)が約60℃なので、蒸気供給配管6が加熱された結果、「Tc=Td−Tset≧C2=0℃」即ち「Td≧Tset(60℃)」が満たされると、蒸気供給配管6が加熱完了温度に達して加熱完了信号が出力される(S406)。
【0072】
加熱完了信号が出力されると、操作者は、蒸気供給配管6の加熱が完了したことを報知装置65を介して認識する。これを認識した操作者は、ヒートポンプシステムの運転を開始するために(ステップ(3))、まず、開閉弁45を閉じて真空ポンプ8を停止させ、蒸気供給配管6の内部圧力を設定圧力(Pset)に保持する(S407)。そして、電動機58に通電して圧縮機9を起動し、加熱装置系切替弁25を閉め蒸発器系切替弁22を開く(S408)。これにより、水タンク1からの水は、膨張器3で減圧された後に、蒸発器5において熱源15から熱源供給配管4を介して直接導入される熱媒体によって加熱され、水蒸気となって蒸気供給配管6に導入される。蒸気供給配管6に導入された水蒸気は、蒸気供給配管6が水蒸気の設定飽和温度(Tset)以上に加熱されているので、凝縮することなく気体のまま圧縮機9に導かれる。圧縮機9に導入された水蒸気は、所定の圧力まで昇圧された後に、熱媒体供給配管14を介して熱利用設備に供給される。
【0073】
なお、上記のS408では蒸発器5で利用する熱量を確保するために、加熱装置系切替弁25を閉、蒸発器系切替弁22を開として、熱媒体を熱源15から蒸発器5に直接供給するようにしたが、加熱装置7で蒸気供給配管6を加熱した後の熱媒体でも作動媒体を蒸発できる場合には、加熱装置系切替弁25を開、蒸発器系切替弁22を閉としたままで圧縮機9を起動してヒートポンプシステムの運転を行っても良い。また、上記では、S407の後にS408を行っているが、これらの操作は同時に行っても良い。
【0074】
さらに、上記の各手順では各装置や弁等の操作について特に説明しなかったが、これらの操作は操作者が手動で行っても良いし、制御部64から各装置に操作信号を出力して自動で行っても良い。
【0075】
次に本実施の形態のヒートポンプシステムの停止方法について、図を参照しつつ説明する。
【0076】
図5は、本実施の形態のヒートポンプシステムの停止方法のフローチャートである。
【0077】
ここでは前提として、上記のヒートポンプシステムを運転しているときに、圧縮機9は作動しており、蒸発器系切替弁22は開いており、加熱装置系切替弁25及び開閉弁45は閉じており、真空ポンプ8は停止しているとする。この状態からヒートポンプシステムを停止するには、まず、操作者は電動機58を停止させて圧縮機9を停止させる(S501)。これにより、水タンク1からの水の供給が停止して、ヒートポンプシステム内での作動媒体の流通が停止する。このように作動媒体の流通が停止すると、蒸気供給配管6の温度は作動媒体の設定飽和温度(Tset)から徐々に低下し始めようとする。
【0078】
次に、操作者は、蒸発器系切替弁22を閉めて加熱装置系切替弁25を開き、熱源15からの熱媒体を加熱装置系配管24aを介して加熱装置7に導入する(S502)。このように加熱装置7に熱媒体を導入すると、熱源15からの熱媒体によって蒸気供給配管6が加熱され、蒸気供給配管6の温度は蒸気供給配管6内の作動媒体の飽和温度以上に保持される。これにより作動媒体の供給と圧縮機9が停止しても、蒸気供給配管6内の作動媒体を気体状態に保持することができる。
【0079】
続いて、操作者は、真空ポンプ8を起動するとともに開閉弁45を開け、蒸気供給配管6内に残存する気体状態の作動媒体を作動媒体排出配管13を介して外部へ排出し(S503)、作動媒体の排出が完了したらヒートポンプの全システムを停止させる(S504)。このように気体状態に保持された作動媒体を蒸気供給配管6から排出すれば、蒸気供給配管6内に作動媒体が液滴として残存することを抑制することができる。
【0080】
なお、蒸気供給配管6内の作動媒体を気体状態にして確実に排出するためには、S503において、制御装置12を利用して蒸気供給配管6の温度(Td)が蒸気供給配管6内の作動媒体の飽和温度以上に保持されていることを監視することが好ましい。具体的には、例えば、作動媒体の排出時(S503)において、「Tc≧C2」が満たされていることを報知装置65で確認しながら作業すると良い。このように排出作業を行う間、加熱完了信号が出力され続けていれば、真空ポンプ8によって確実に作動媒体を排出できたことになる。また、逆に、排出作業中に加熱完了信号が途切れることがあれば、配管内部に水滴が残留している恐れがあるので、配管内における液滴の確認作業や除去作業を別途行う必要が生じる。このように制御装置12で蒸気供給配管6の温度を監視すれば、配管系統に異常があった場合にも液滴の残留を回避することができるので、システムの信頼性を向上することができる。
【0081】
また、上記では、圧縮機9を停止する手順(S501)の後に加熱装置7に熱媒体を導く手順(S502)を行ったが、これらの順番は逆でも良いし、同時に行っても良い。
【0082】
次に本実施の形態の効果について、比較例を参照しながら説明する。
【0083】
まず、本実施の形態の比較例として、特許文献1等に記載されているヒートポンプシステムであって、外部からの熱源で加熱した作動媒体自体を熱媒体として熱利用設備に供給しているものに着目する。この種のヒートポンプの蒸気供給配管は、圧縮機を起動する前は大気中に放置されているため、作動媒体の飽和温度より低い温度(常温程度)で保持されている。そのため、ヒートポンプを始動するために圧縮機を起動すると、蒸気供給配管を介して圧縮機に向かう作動媒体の中に、蒸気供給配管の壁面に冷却されて液滴となるものが生じる場合がある。このように生じた液滴が圧縮機内に導入されると、インペラと衝突して圧縮機を損傷させる恐れがある。また、インペラが損傷すると、ロータ系にアンバランスが生じて異常振動が発生する場合もある。したがって、この種のヒートポンプでは、上記の不具合を回避するために、配管内部に生じた作動媒体の液滴を外部に排出する特別な排水設備を設ける必要があった。
【0084】
このような比較例に対して、本実施の形態のヒートポンプシステムは、蒸気供給配管6内の圧力を低減する真空ポンプ8と、蒸気供給配管6内の作動媒体の飽和温度(Tset)以上に蒸気供給配管6の温度が達するように蒸気供給配管6を加熱する加熱装置7と、蒸気供給配管6が設定飽和温度(Tset)以上に加熱された以後に起動され、蒸気供給配管6からの作動媒体を圧縮する圧縮機9を備えている。このように構成された本実施の形態のヒートポンプシステムにおいて、まず加熱装置7を用いて蒸気供給配管6を加熱し、蒸気供給配管6の温度が設定飽和温度(Tset)以上に達した以後に圧縮機9を起動してヒートポンプシステムを起動させると、蒸気供給配管6の温度が加熱前に作動媒体の飽和温度より低い場合でも、作動媒体を気体のまま圧縮機9に導入することができる。これにより、ヒートポンプシステムを起動する際に作動媒体が液滴となって圧縮機9に導入されることが防止されるので、圧縮機9が損傷することを抑制することができる。また、本実施の形態によれば特別な排水設備等で凝縮水を排出する必要がなくなるので、システムのイニシャルコストやランニングコストが削減でき、かつ運転開始時に必要な作業手順を低減することができる。これによりシステムの導入と保守を容易にすることができるとともに、システムの運転性を向上させることができる。
【0085】
さらに、本実施の形態では、蒸気供給配管6の温度が設定飽和温度(Tset)に達する以前において、まず加熱装置7で蒸気供給配管6を予熱完了温度以上に加熱してから、真空ポンプ8で蒸気供給配管6内の圧力を設定圧力(Pset)まで低減している。このように真空ポンプ8を起動する前に蒸気供給配管6を予め加熱しておくと、蒸気供給配管6の加熱と同時に真空ポンプ8を起動する場合と比較して真空ポンプ8が作動している時間を短縮することができる。これにより真空ポンプ8の駆動するエネルギーを削減することができるので、ヒートポンプシステムのエネルギー効率を向上させることができる。
【0086】
また、本実施の形態のヒートポンプシステムは、温度検出器10及び圧力検出器11から入力される検出値に基づいて、蒸気供給配管6の温度が予熱完了温度又は加熱完了温度以上に達したことを判定する制御装置12と、この制御装置12から入力される予熱完了信号又は加熱完了信号に基づいて、蒸気供給配管6の温度が予熱完了温度又は加熱完了温度以上に達したことを操作者に知らせる報知装置65を備えている。このように構成された本実施の形態によれば、操作者は、蒸気供給配管6の温度が予熱完了温度又は加熱完了温度以上に達したことを報知装置65を介して容易に認識できるので、各手順の完了を確認してから次の手順を実行することができる。これにより各手順の完了前に次の手順を実行してしまう等の操作ミスが発生することが抑制されるので、システムの信頼性を向上させることができる。
【0087】
なお、上記の例では、蒸気供給配管6の加熱の程度を報知装置65を介して操作者に伝達し(S403,S406)、それに基づいて操作者自身がシステムを操作する(S404,S407,S408)構成について説明したが、蒸気供給配管6の温度に応じて制御装置12が自動的に各装置を操作するように構成しても良い。この場合の構成としては、例えば、蒸気供給配管6の温度が予熱完了温度に達したことを制御装置12が認識した場合には、上記の例における予熱完了信号に代えて、真空ポンプ8を作動させる操作信号、及び開閉弁45を開く操作信号を各装置へ出力するようにし、さらに、加熱完了温度に達したことを制御装置12が認識した場合には、上記の加熱完了信号に代えて、真空ポンプ8を停止させる操作信号、開閉弁45を閉じる操作信号、及び圧縮機9を起動する操作信号等を出力するようにしたものがある。このように構成したヒートポンプシステムによれば、蒸気供給配管6の加熱の程度に基づいて各装置が制御装置12によって操作されるので、ヒートポンプ始動に必要な手順を自動的に行うことができる。これにより作業の途中で操作者が介入する必要がなくなるので、操作時間の短縮や人件費の削減を実現することができる。
【0088】
また、この構成を利用して、ヒートポンプシステムを停止する場合には、「Tc≧C2」が満たされているとき(即ち、蒸気供給配管6の温度が蒸気供給配管6内の作動媒体の飽和温度以上に保持されているとき)のみに真空ポンプ8を作動させ開閉弁45を開く操作信号を出力し、「Tc<C2」が成立するときには真空ポンプ8を停止し開閉弁45を閉じる操作信号を出力するように制御装置12を構成しても良い。このようにすれば作動媒体が気体状態のときに限って真空ポンプ8を作動できるので、作動媒体の排出時(S503)に「Tc≧C2」が満たされていることを報知装置65で確認しながら作業する場合よりさらに確実に作動媒体を外部に排出することができる。
【0089】
ところで、上記の比較例では、ヒートポンプシステムを停止するために圧縮機を停止させると、蒸気供給配管が大気に冷却されてその温度が作動媒体の飽和温度未満に達することがある。この場合に蒸気供給配管内に作動媒体が残留していると、その作動媒体が凝縮して液滴となる場合がある。このように発生した液滴も、圧縮機の起動時に発生する液滴と同様、圧縮機を再起動する際に圧縮機を損傷させる原因となり得る。
【0090】
このような課題を有する比較例に対して、本実施の形態では、圧縮機9が停止されてから全システムが停止されるまでの間において、加熱装置7によって蒸気供給配管6内の作動媒体の飽和温度以上に蒸気供給配管の温度を保持し、真空ポンプ8によって気体状態に保持された作動媒体を蒸気供給配管6から排出している。このように作動媒体を蒸気供給配管6から排出すると、蒸気供給配管6内の作動媒体を確実に排出することができるので、蒸気供給配管が冷却されても内部に作動媒体の液滴が発生することが防止できる。したがって、本実施の形態によれば、圧縮機9を停止した後に作動媒体が液滴となることが防止できるので、圧縮機9の損傷を抑制することができる。
【0091】
なお、本実施の形態では、熱源供給配管4から加熱装置7に熱媒体を導入して蒸気供給配管6を加熱しているが、加熱装置系配管24aの上流側の端部を熱源15に接続して熱媒体を加熱装置7に直接導いても良いし、熱源15以外の熱源と加熱装置系配管24aを接続して蒸発器5と独立した系を構成しても良い。
【0092】
また、加熱装置7としては、上記のように蒸気供給配管6と管部35で二重管構造を形成したものだけでなく、例えば、加熱装置7の管部を蒸気供給配管6に螺旋状に巻き付けたもの等を採用してもよい。さらに、上記の加熱装置7は熱媒体によって蒸気供給配管6を外表面から加熱するものだったが、例えば、蒸気供給配管6に加熱空気等の流通する配管を接続して熱媒体を配管6内部に供給し、配管内部から加熱する方法を利用しても良い。また、蒸気供給配管6に電熱線を巻き付ける等して電気で加熱する方法を採用しても勿論良い。
【0093】
さらに、以上においては、ヒートポンプシステムの作動媒体として水を利用する場合について説明したが、ヒートポンプ運転中における設定飽和温度(Tset)が常温環境に放置した蒸気供給配管6の温度より低いものを作動媒体として利用しているヒートポンプシステムであれば、本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の実施の形態であるヒートポンプシステムの概略構成図。
【図2】本発明の実施の形態であるヒートポンプシステム蒸気供給配管6付近の断面図。
【図3】本実施の形態のヒートポンプシステムにおける制御装置の機能ブロック図。
【図4】本実施の形態のヒートポンプシステムの起動方法のフローチャート。
【図5】本実施の形態のヒートポンプシステムの停止方法のフローチャート。
【符号の説明】
【0095】
2 作動媒体供給配管
3 膨張器
4 熱源供給配管
5 蒸発器
6 蒸気供給配管
7 加熱装置
8 真空ポンプ
9 圧縮機
10 温度検出器
11 圧力検出器
12 制御装置
14 熱媒体供給配管
24 加熱装置系配管
35 管部
65 報知装置
Pset 設定圧力
Tset 設定飽和温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動媒体が流通する作動媒体供給配管と、
この作動媒体供給配管からの作動媒体を減圧する膨張器と、
外部からの熱媒体が流通する熱源供給配管と、
この熱源供給配管の熱媒体で前記膨張器からの作動媒体を蒸発させる蒸発器と、
この蒸発器からの作動媒体が流通する蒸気供給配管と、
この蒸気供給配管内の圧力を低減する真空ポンプと、
前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度以上に前記蒸気供給配管の温度が達するように前記蒸気供給配管を加熱する加熱装置と、
前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度以上に前記蒸気供給配管が加熱された以後に起動され、前記蒸気供給配管からの作動媒体を圧縮する圧縮機と、
この圧縮機で圧縮した作動媒体を熱媒体として熱利用設備に供給する熱媒体供給配管とを備えることを特徴とするヒートポンプシステム。
【請求項2】
請求項1記載のヒートポンプシステムにおいて、
前記圧縮機が停止されてから全システムが停止されるまでの間に、
前記加熱装置は、前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度以上に前記蒸気供給配管の温度を保持し、
前記真空ポンプは、前記加熱装置によって気体状態に保持された前記蒸気供給配管内の作動媒体を外部へ排出することを特徴とするヒートポンプシステム。
【請求項3】
請求項1記載のヒートポンプシステムにおいて、
前記真空ポンプは、前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度以下に設定した予熱完了温度に前記蒸気供給配管の温度が達した以後に、前記蒸気供給配管内の圧力を低減することを特徴とするヒートポンプシステム。
【請求項4】
請求項1記載のヒートポンプシステムにおいて、
前記蒸気供給配管の温度を検出する温度検出手段と、
前記蒸気供給配管内の圧力を検出する圧力検出手段と、
操作信号が入力されると、前記蒸気供給配管の温度が前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度以上に達したことを知らせる報知装置と、
前記圧力検出手段から入力される検出値に基づいて前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度を算出し、前記温度検出手段から入力される検出値が前記算出した作動媒体の飽和温度以上に達したときに前記報知装置に操作信号を出力する制御装置とを備えることを特徴とするヒートポンプシステム。
【請求項5】
請求項2記載のヒートポンプシステムにおいて、
前記蒸気供給配管の温度を検出する温度検出手段と、
前記蒸気供給配管内の圧力を検出する圧力検出手段と、
操作信号が入力されると、前記蒸気供給配管の温度が前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度以上に保持されていることを知らせる報知装置と、
前記圧縮機が停止されてから全システムが停止されるまでの間に、前記圧力検出手段から入力される検出値に基づいて前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度を算出し、前記温度検出手段から入力される検出値が前記算出した作動媒体の飽和温度以上に保持されているときに前記報知装置に操作信号を出力する制御装置とを備えることを特徴とするヒートポンプシステム。
【請求項6】
請求項3記載のヒートポンプシステムにおいて、
前記蒸気供給配管の温度を検出する温度検出手段と、
前記蒸気供給配管内の圧力を検出する圧力検出手段と、
第1操作信号が入力されたときには前記蒸気供給配管の温度が前記予熱完了温度以上に達したことを知らせ、第2操作信号が入力されたときには前記蒸気供給配管の温度が前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度以上に達したことを知らせる報知装置と、
前記温度検出手段から入力される検出値が前記予熱完了温度以上に達したときに前記報知装置に第1操作信号を出力し、この第1操作信号が出力された以後において、前記圧力検出手段から入力される検出値に基づいて前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度を算出し、前記温度検出手段から入力される検出値が前記算出した作動媒体の飽和温度以上に達したときに前記報知装置に第2操作信号を出力する制御装置とを備えることを特徴とするヒートポンプシステム。
【請求項7】
請求項1記載のヒートポンプシステムにおいて、
前記蒸気供給配管の温度を検出する温度検出手段と、
前記蒸気供給配管内の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記圧力検出手段から入力される検出値に基づいて前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度を算出し、前記温度検出手段から入力される検出値が前記算出した作動媒体の飽和温度以上に達したときに前記圧縮機を起動する制御装置とを備えることを特徴とするヒートポンプシステム。
【請求項8】
請求項2記載のヒートポンプシステムにおいて、
前記蒸気供給配管の温度を検出する温度検出手段と、
前記蒸気供給配管内の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記圧縮機が停止されてから全システムが停止されるまでの間に、前記圧力検出手段から入力される検出値に基づいて前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度を算出し、前記温度検出手段から入力される検出値が前記算出した作動媒体の飽和温度以上に保持されているときに前記真空ポンプを作動させる制御装置とを備えることを特徴とするヒートポンプシステム。
【請求項9】
請求項3記載のヒートポンプシステムにおいて、
前記蒸気供給配管の温度を検出する温度検出手段と、
前記蒸気供給配管内の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記温度検出手段から入力される検出値が前記予熱完了温度以上に達したときに前記真空ポンプを起動し、前記真空ポンプが起動された以後において、前記圧力検出手段から入力される検出値に基づいて前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度を算出し、前記温度検出手段から入力される検出値が前記算出した作動媒体の飽和温度以上に達したときに前記圧縮機を起動する制御装置とを備えることを特徴とするヒートポンプシステム。
【請求項10】
請求項1記載のヒートポンプシステムにおいて、
前記加熱装置は、外部からの熱媒体が流通する配管であって、前記蒸気供給配管を外周側から覆うように設けられた管部を有することを特徴とするヒートポンプシステム。
【請求項11】
請求項4記載のヒートポンプシステムにおいて、
前記加熱装置は、外部からの熱媒体が流通する配管であって、前記蒸気供給配管を外周側から覆うように設けられた管部を有し、
前記温度検出手段は、前記蒸気供給配管に対して、前記管部内の熱媒体の流通方向の下流側に位置する部分に取り付けられていることを特徴とするヒートポンプシステム。
【請求項12】
請求項10又は11記載のヒートポンプシステムにおいて、
前記管部は、前記蒸発器の上流側で前記熱源供給配管から分岐した配管であって、前記蒸気供給配管の外周側を通過した後に前記熱源供給配管と再度接続する配管であることを特徴とするヒートポンプシステム。
【請求項13】
作動媒体が流通する作動媒体供給配管と、
この作動媒体供給配管からの作動媒体を減圧する膨張器と、
外部からの熱媒体が流通する熱源供給配管と、
この熱源供給配管の熱媒体で前記膨張器からの作動媒体を蒸発させる蒸発器と、
この蒸発器からの作動媒体が流通する蒸気供給配管と、
この蒸気供給配管からの作動媒体を圧縮する圧縮機と、
この圧縮機で圧縮した作動媒体を熱媒体として熱利用設備に供給する熱媒体供給配管と、
前記圧縮機が停止されてから全システムが停止されるまでの間に、前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度以上に前記蒸気供給配管の温度を保持する加熱装置と、
前記加熱装置によって気体状態に保持された前記蒸気供給配管内の作動媒体を外部へ排出する真空ポンプとを備えることを特徴とするヒートポンプシステム。
【請求項14】
水が流通する作動媒体供給配管と、
この作動媒体供給配管からの水を減圧する膨張器と、
外部からの熱媒体が流通する熱源供給配管と、
この熱源供給配管の熱媒体で前記膨張器からの水を蒸発させる蒸発器と、
この蒸発器からの水蒸気が流通する蒸気供給配管と、
この蒸気供給配管内の圧力を低減する真空ポンプと、
前記蒸気供給配管内の水の飽和温度以上に前記蒸気供給配管の温度が達するように前記蒸気供給配管を加熱する加熱装置と、
前記蒸気供給配管内の水の飽和温度以上に前記蒸気供給配管が加熱された以後に起動され、前記蒸気供給配管からの水蒸気を圧縮する圧縮機と、
この圧縮機で圧縮した水蒸気を熱媒体として熱利用設備に供給する熱媒体供給配管とを備えることを特徴とするヒートポンプシステム。
【請求項15】
作動媒体を減圧し、この減圧した作動媒体を外部からの熱媒体で蒸発させ、この蒸発させた作動媒体を蒸気供給配管を介して圧縮機に導入し、この圧縮機で圧縮した作動媒体を熱媒体として熱利用設備に供給するヒートポンプシステムの運転方法であって、
前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度以上に前記蒸気供給配管を加熱した以後に、前記圧縮機を起動することを特徴とするヒートポンプシステムの運転方法。
【請求項16】
作動媒体を減圧し、この減圧した作動媒体を外部からの熱媒体で蒸発させ、この蒸発させた作動媒体を蒸気供給配管を介して圧縮機に導入し、この圧縮機で圧縮した作動媒体を熱媒体として熱利用設備に供給するヒートポンプシステムの運転方法であって、
前記圧縮機を停止する手順と、
前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度以上に前記蒸気供給配管を加熱する手順と、
前記圧縮機を停止した以後に、前記蒸気供給配管の温度を前記蒸気供給配管内の作動媒体の飽和温度以上に保持したまま前記蒸気供給配管内の作動媒体を外部へ排出する手順とを備えることを特徴とするヒートポンプシステムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−58147(P2009−58147A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224225(P2007−224225)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)