説明

ヒートポンプ式蒸気生成装置

【課題】待機運転が可能であり、再び外部に蒸気を供給する際に、需要に応じて速やかに必要量の蒸気を供給することが可能なヒートポンプ式蒸気生成装置を提供する。
【解決手段】ヒートポンプ循環経路20と、給水経路L3と、供給水量調整手段P1と、気液分離器7と、蒸気取出し経路L4と、気液分離器7の液相部と給水経路L3とを接続する水循環経路L6と、排水経路L5と、排水用の弁V1とを備え、蒸気取出し経路L4からの蒸気量が低減あるいは停止した場合、圧縮機2の運転を予め設定された最低レベルまで下げ、排水用の弁V1を開いてヒートポンプの運転を継続する待機運転を行うように制御されているヒートポンプ式蒸気生成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場排水などから排熱を回収して蒸気を生成するヒートポンプ式蒸気生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気発生装置の一つとして、ヒートポンプを利用したヒートポンプ式蒸気発生装置がある。ヒートポンプ式蒸気発生装置は、工場排水など排熱を回収して蒸気を生成するものであって、燃焼系蒸気発生装置に比べて、ランニングコストが低く、COの排出量を低減できるなどのメリットがある。
【0003】
特許文献1には、圧縮機の吐出側に一端が接続された冷媒管の他端が、蒸気生成用熱交換器、温水生成用熱交換器、膨張弁、熱回収器を介して前記圧縮機の吸入側に接続された冷媒回路を備え、熱回収器において外部熱源からの熱を回収し、蒸気生成用熱交換器で蒸気を生成し、温水生成用熱交換器で温水を生成するように構成されたヒートポンプ式蒸気・温水発生装置が開示されている。そして、特許文献1のヒートポンプ式蒸気・温水発生装置では、蒸気生成用熱交換器で生成した蒸気中に含まれるあるいは蒸気の凝縮により液化した水を給水用気液分離器で分離し、給水用気液分離器の気相に設けられた蒸気供給管から外部に取出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−232357号公報(請求項1、段落番号0023)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1に開示されたヒートポンプ式蒸気・温水発生装置は、給水用気液分離器からの出力系統が蒸気供給管のみであるので、蒸気の取出し量に応じて、供給水の導入量を調整して、給水用気液分離器内の水位を安定化させていると考えられる。このため、蒸気の取出しが行われなくなると、供給水の供給を停止する必要がある。供給水が供給されなくなると、冷媒回路(本発明のヒートポンプ循環経路に相当)からの熱エネルギーの流れがほとんどなくなるため、圧縮機などの機器類が過熱されて損傷する恐れがある。このため、蒸気の取出しを停止する際には、装置全体の運転を停止する必要があった。
【0006】
しかしながら、一旦装置を完全に停止してしまうと、装置の安定化に時間を要し、需要に応じて速やかに蒸気を供給することが困難であった。
【0007】
よって、本発明の目的は、待機運転が可能で、再び外部に蒸気を供給する際に、需要に応じて速やかに必要量の蒸気を供給することが可能なヒートポンプ式蒸気生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のヒートポンプ式蒸気生成装置は、
外部熱源から熱を回収して媒体を加温する排熱回収器、前記排熱回収器を通過した媒体を圧縮する圧縮機、前記圧縮機で圧縮された媒体の熱を供給水に伝熱して温水及び蒸気の気液二相流を生成する媒体凝縮器、及び前記媒体凝縮器を通過した媒体を減圧して温度を下げる膨張機を有するヒートポンプ循環経路と、
前記媒体凝縮器に前記供給水を導入する給水経路と、
前記媒体凝縮器で生成した、温水及び蒸気の気液二相流を、水蒸気と水とに分離する気液分離器と、
前記気液分離器の気相部に設けられた蒸気取出し経路と、
前記気液分離器の液相部と前記給水経路とを接続する水循環経路とを備えたヒートポンプ式蒸気生成装置であって、
前記給水経路に配置された供給水量調整手段と、
前記気液分離器の液相部に設けられた排水経路と、
前記排水経路に介装された排水用の弁とを備え、
前記蒸気取出し経路からの蒸気量が低減あるいは停止した場合、前記圧縮機の運転を予め設定された最低レベルまで下げ、前記排水用の弁を開いてヒートポンプの運転を継続する待機運転を行うように制御されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のヒートポンプ式蒸気生成装置は、前記給水経路に配置された供給水量調整手段が、前記蒸気取出し経路から取り出される蒸気の流量および前記排出経路から排出される排水流量前記供給水の合計に等しい流量で、前記供給水を供給するように制御されていることが好ましい。
【0010】
本発明のヒートポンプ式蒸気生成装置は、前記気液分離器内の圧力を検出する圧力計を更に備え、前記排水用の弁は、前記圧力計の検出値が設定値以上で開き、前記圧力計の検出値が設定値以下で閉じるように制御されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のヒートポンプ式蒸気生成装置は、蒸気の取出しを停止あるいは低減させた場合であっても、装置全体を停止させずに待機運転を行うことができる。このため、再び蒸気の需要が増加した場合であっても、需要に対して速やかに対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のヒートポンプ式蒸気生成装置の概略構成図である。
【図2】本発明のヒートポンプ式蒸気生成装置の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明のヒートポンプ式蒸気生成装置の概略図である。
図1に示すように、このヒートポンプ式蒸気生成装置は、第1排熱回収器1の出口側から伸びた配管L1が、圧縮機2、媒体凝縮器3、媒体冷却器4、膨張機5の順に経由して、第1排熱回収器1の入り口側に接続したヒートポンプ循環経路20を備える。
【0014】
ヒートポンプ循環経路20では、媒体(以下、ヒートポンプ媒体という)が循環流通しており、ヒートポンプ媒体を介して外部熱源から送られてくる熱媒体(この実施形態では、熱媒体として排温水を使用している)の熱を回収するとともに、給水源から送られてくる供給水にヒートポンプ媒体の熱を伝熱して蒸気を生成するように構成されている。
【0015】
ヒートポンプ媒体としては、臨界温度が高く、地球温暖化係数が低く、オゾン破壊係数の低いものが好ましく用いられる。このような媒体としては、R245fa、ハイドロフルオロエーテル系媒体、自然媒体であるペンタン等が好ましく用いることができる。
【0016】
外部熱源から伸びた、排温水が流通する配管L2は、第1排熱回収器1、第2排熱回収器6の順に経由して系外に接続している。
【0017】
給水源から伸びた、供給水が流通する配管L3は、給水ポンプP1、第2排熱回収器6、媒体冷却器4、媒体凝縮器3の順に経由して、気液分離器7の気相部に接続している。
【0018】
気液分離器7は、気相部に、蒸気流量計31を介装した蒸気取出し用の配管L4が設けられている。また、液相部に、系外の排水系へと伸びる開閉弁V1を介装した配管L5と、媒体冷却器4と媒体凝縮器3との間の配管L3aに接続する配管L6が設けられている。また、気液分離器7内には、気相部の圧力を検出する圧力計32と貯留された温水の水位を検出する水位計33が設けられている。
【0019】
配管L3aの配管L6との接続部よりも下流側には、送液ポンプP2が配置されている。
【0020】
次に、本発明のヒートポンプ式蒸気生成装置の定常運転時における動作について、熱の流れに沿って、図2の制御ブロック図も参照して説明する。
【0021】
(排温水)
工場排水系等の外部熱源から送られる排温水は、配管L2を流通し、第1排熱回収器1、第2排熱回収器6の順に通過して系外へと送られる。
第1排熱回収器1では、排温水の熱を、配管L1を流通するヒートポンプ媒体に伝熱してヒートポンプ媒体を加温する。
第2排熱回収器6では、ヒートポンプ媒体を加温後の排温水の余熱を、配管L3を流通する供給水に伝熱して供給水を一次予備加熱する。
【0022】
(ヒートポンプ媒体)
第1排熱回収器1にて、排温水との熱交換により加温されたヒートポンプ媒体は、圧縮機2にて所定の圧力まで圧縮して高温高圧媒体とする。この高温高圧媒体は、媒体凝縮器3、媒体冷却器4の順に通過して、配管L3を流通する供給水との熱交換に利用される。
【0023】
圧縮機2は、図2の制御ブロック図に示すように、圧縮機コントローラ41で気液分離器7の圧力計32の測定値と、気液分離器7の圧力設定値(本実施形態では、200kPa・abs(温度で120℃に相当)である)とを比較補償して出力される回転数指令値に基いて制御される。圧力計32の測定値が気液分離器7の圧力設定値よりも小さいときは回転数上げ、圧力計32の測定値が気液分離器7の圧力設定値よりも大きいときは回転数を下げる制御が行われる。圧縮機2の回転数の上限及び下限は、上下限リミッター42により制御され、圧縮機コントローラ41から、上限を超える回転数の指令信号が出力された場合は、予め設定した上限の回転数を圧縮機2に出力し、下限を下回る回転数の指令信号が出力された場合は、予め設定した下限の回転数を圧縮機2に出力する。
【0024】
媒体凝縮器3では、高温高圧媒体(ヒートポンプ媒体)の熱を、配管L3を流通する被加熱水(後述する二次予備加熱された供給水と、配管L6から送られてくる気液分離器7内の温水との混合水)に伝熱して温水及び蒸気の気液二相流を生成する。
【0025】
媒体冷却器4では、第1媒体凝縮器3を通過後のヒートポンプ媒体の余熱を、前述した排温水との熱交換により一次予備加熱された、配管L3を通る供給水に伝熱して二次予備加熱する。
【0026】
媒体冷却器4を通過したヒートポンプ媒体は、膨張機5にて所定圧力まで膨張して温度を下げ、第1排熱回収器1に再び導入して、配管L2を流通する排温水の熱回収に用いられる。
【0027】
(供給水)
給水源から給水ポンプP1で供給される供給水は、供給水の質量流量Q1が、配管L4から取出される蒸気の質量流量Q2及び配管L5からの排水流量Q3との合計量(Q2+Q3)となるように制御される。具体的には、図2の制御ブロック図に示すように、まず、気液分離器7の圧力計32の計測値と開閉弁V1のバルブ容量係数に基いて、配管L5からの排水流量(ブローダウン流量)計算値がブローダウン流量計算器43によって出力される。また、配管L4に設けられた蒸気流量計31により蒸気流量計測値が出力される。また、気液分離器7の水位計33の計測値と、気液分離器7の水位設定値が水位補償器44に入力され、流量補正値が出力される。そして、上記ブローダウン流量計算値、蒸気流量計測値および流量補正値の和が、流量指令値として流量調節器45、46に入力される。流量調節器45では、給水ポンプP1の特性(回転数と流量との関係)に基づいて、流量指令値に対応する回転数指令値を給水ポンプP1に出力して、給水ポンプP1が制御される。なお、流量調節器46では、後述する送液ポンプP2の制御を行う。
【0028】
次に、供給水は、前述したように第2排熱回収器6、媒体冷却器4でそれぞれ予備加熱される。
予備加熱された供給水は、配管L6から送られてくる、気液分離器7内の温水(以下、循環水という)と合流して、循環水と供給水との混合水が形成され、媒体凝縮器3に送液される。媒体凝縮器3に導入された混合水は、前述したように高温高圧媒体(ヒートポンプ媒体)の熱を回収し、温水及び蒸気の気液二相流を生成して、送液ポンプP2を駆動して気液分離器7に送られる。なお、送液ポンプP2は、流量調節器46にて、供給水の流量指令値に対し定数Kを乗じた値を送液ポンプ流量とし、送液ポンプP2の特性(回転数と流量との関係)に基づいて、送液ポンプ流量指令値に対応する回転数指令値を送液ポンプP2に出力して、送液ポンプP2が制御される。
【0029】
気液分離器7では、温水及び蒸気の気液二相流を蒸気と温水とに分離する。そして、気液分離器7の気相部に貯留された蒸気は、外部の需要に応じて配管L4から取出される。また、気液分離器7の液相部に貯留された温水は、配管L6を通して配管L3a内を流通する供給水と混合して循環利用される。
【0030】
気液分離器7の液相部に接続された配管L5に設けられた開閉弁V1は、循環水系統の塩分の濃縮防止を目的としてブローダウンするために、定期的又は一時的に開閉制御を行うほか、次のように、気液分離器7内の圧力および水位に基づく開閉制御が行われる。
【0031】
すなわち、図2に示すように、開閉設定器47は、気液分離器7の圧力計32の計測値が、予め設定した上限値(本実施形態では、270kPa・abs(130℃相当)である)以上の場合に開の信号を開閉選択器49に出力し、予め設定した下限値(本実施形態では、230kPa・abs(125℃相当)である)以下の場合に閉の信号を開閉選択器49に出力すると共に、開閉設定器48は、気液分離器7の水位計33の計測値が、予め設定した上限値(本実施形態では、65%以上である)の場合に開の信号を開閉選択器49に出力し、予め設定した下限値(本実施形態では、60%以下である)の場合に閉の信号を開閉選択器49に出力する。そして、開閉選択器49では、開閉設定器47及び開閉設定器48から入力された両信号の少なくとも一方が開の場合は、開信号を開閉指令値として開閉弁V1に与え、両信号のいずれもが閉の場合は閉信号を開閉指令値として開閉弁V1に与える。
【0032】
(待機運転)
次に待機運転時の動作を説明する。
蒸気の需要が少なくなると、気液分離器7の圧力計32の計測値が上昇し、圧縮機コントローラ41の出力は、上下限リミッター42で制限された回転数指令値の下限値を圧縮機2に与え、回転数を最低レベルまで低下させて、媒体凝縮器3でのヒートポンプ媒体から循環水への伝熱量を低下させる。
【0033】
気液分離器7の圧力計32の計測値が、開閉設定器47の上限値(270kPa・abs)に到達すると、開閉設定器47からの開信号により、開閉弁V1が開き、配管L5からのブローダウンにより熱を放出すると共に、これに伴いブローダウン流量相当の供給水が供給されるので、気液分離器7内の温度及び圧力が低下する。
【0034】
このように、本発明によれば、蒸気の需要が少なくなり、配管L4からの蒸気の供給を停止あるいは低減している間も、ヒートポンプ媒体から供給される熱と配管L5から放出される熱をバランスさせながら、ヒートポンプの待機運転を行うことができる。
このため、再び蒸気の需要が増加した場合であっても、需要に対して速やかに対応できる。
【符号の説明】
【0035】
1:第1排熱回収器
2:圧縮機
3:媒体凝縮器
4:媒体冷却器
5:膨張機
6:第2排熱回収器
7:気液分離器
20:ヒートポンプ循環経路
31:蒸気流量計
32:圧力計
33:水位計
41:圧縮機コントローラ
42:上下限リミッター
43:ブローダウン流量計算器
44:水位補償器
45、46:流量調節器
47、48:開閉設定器
49:開閉選択器
L1〜L6:配管
P1:供給ポンプ
P2:送液ポンプ
V1:開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部熱源から熱を回収して媒体を加温する排熱回収器、前記排熱回収器を通過した媒体を圧縮する圧縮機、前記圧縮機で圧縮された媒体の熱を供給水に伝熱して温水及び蒸気の気液二相流を生成する媒体凝縮器、及び前記媒体凝縮器を通過した媒体を減圧して温度を下げる膨張機を有するヒートポンプ循環経路と、
前記媒体凝縮器に前記供給水を導入する給水経路と、
前記媒体凝縮器で生成した、温水及び蒸気の気液二相流を、水蒸気と水とに分離する気液分離器と、
前記気液分離器の気相部に設けられた蒸気取出し経路と、
前記気液分離器の液相部と前記給水経路とを接続する水循環経路とを備えたヒートポンプ式蒸気生成装置であって、
前記給水経路に配置された供給水量調整手段と、
前記気液分離器の液相部に設けられた排水経路と、
前記排水経路に介装された排水用の弁とを備え、
前記蒸気取出し経路からの蒸気量が低減あるいは停止した場合、前記圧縮機の運転を予め設定された最低レベルまで下げ、前記排水用の弁を開いてヒートポンプの運転を継続する待機運転を行うように制御されていることを特徴とするヒートポンプ式蒸気生成装置。
【請求項2】
前記給水経路に配置された供給水量調整手段が、前記蒸気取出し経路から取り出される蒸気の流量および前記排出経路から排出される排水流量前記供給水の合計に等しい流量で、前記供給水を供給するように制御されている請求項1に記載のヒートポンプ式蒸気生成装置。
【請求項3】
前記気液分離器内の圧力を検出する圧力計を更に備え、
前記排水用の弁は、前記圧力計の検出値が設定値以上で開き、前記圧力計の検出値が設定値以下で閉じるように制御されている請求項1又は2に記載のヒートポンプ式蒸気生成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−21747(P2012−21747A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161662(P2010−161662)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)