説明

ヒートポンプ給湯室外機

【課題】大型の放熱部品等を搭載しなくても、既存の給水機構を利用して発熱性電気部品を効率よく冷却する。
【解決手段】ヒートポンプ給湯室外機の筐体1内には、仕切板2により機械室3と送風機室4とを形成する。機械室3には圧縮機6を配置し、送風機室4には空気冷媒熱交換器7、送風機11等を配置する。また、機械室3には、筐体1の上面部1Eから離れた位置に電装品収納箱20を収容し、電装品収納箱20の上側に電装品上方空間23を形成する。電装品上方空間23には、圧縮機6を駆動制御するインバータモジュール21と、外部の貯湯タンクから流出した加熱対象水を水冷媒熱交換器8に供給する給水機構21とを配置する。そして、給水機構21は、水ポンプ13及び水流入内部配管14を流れる低温な加熱対象水を利用してインバータモジュール21を冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ給湯室外機に関し、特に、電装品搭載体を備えたヒートポンプ給湯室外機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、例えば特許文献1に記載されているように、空気調和機等の一部を構成し、電装品収納箱を備えた室外機が知られている。従来技術では、電装品収納箱内の基板上にインバータモジュールを搭載し、このインバータモジュールにより圧縮機等を制御することが一般的に行われている。また、従来技術では、室外機の内部を左,右に仕切る仕切板を設け、この仕切板により室外機の内部に機械室と送風機室とを形成している。そして、電装品収納箱の一部を送風機の上側で送風機室内に配置し、送風機室を通る外気により電装品収納箱を冷却することが可能な構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−294272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術で用いられるインバータモジュールは、圧縮機等を制御する際の発熱量が多く、また、耐熱性にも限界がある。このため、従来技術では、例えば大型の放熱部品をインバータモジュールに密着させた上で、この放熱部品を外気が通る送風機室に設置し、インバータモジュールの温度上昇を抑制する必要がある。これにより、従来技術では、インバータモジュールに関連した部品のコストや重量が増加するという問題がある。また、従来技術では、送風機室を通る外気により電装品収納箱を冷却可能な構成としている。しかしながら、外気による冷却だけでは、発熱量が多いインバータモジュール等の冷却効率を十分に高めることができないという問題がある。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、大型の放熱部品等を搭載しなくても、既存の給水機構を利用して発熱性電気部品を効率よく冷却し、高い冷却性能を実現することが可能なヒートポンプ給湯室外機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るヒートポンプ給湯室外機は、圧縮機、空気冷媒熱交換器及び水冷媒熱交換器を有し、圧縮機により冷媒を循環させて水冷媒熱交換器により加熱対象水を加熱する冷媒回路と、少なくとも冷媒回路を制御する機器であって、発熱性電気部品を含む複数の電気部品が搭載された電装品搭載体と、水冷媒熱交換器に加熱対象水を供給する機構であって、少なくとも一部が発熱性電気部品から熱伝導可能な位置に配設され、加熱対象水を利用して発熱性電気部品を冷却する給水機構と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外部から給水機構に流入する低温な加熱対象水を利用して、発熱性電気部品を冷却することができる。これにより、既存の給水機構をヒートポンプ給湯室外機に搭載して発熱性電気部品から熱伝導可能な位置に配設するだけで、発熱性電気部品の冷却効率を高めることができる。従って、発熱性電気部品を冷却する大型の放熱フィンや専用の冷却機構等が不要となるので、ヒートポンプ給湯室外機の小型軽量化を促進しつつ、高い冷却性能を実現することができる。また、給水機構を流通する加熱対象水は、発熱性電気部品から発生する熱を吸収するので、発熱性電気部品の廃熱を再利用して加熱対象水を加熱することができ、その分だけ冷媒回路の消費電力を節約することができる。従って、ヒートポンプ給湯室外機の運転効率を高め、省エネルギ化を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1において、ヒートポンプ給湯室外機の外観を示す斜視図である。
【図2】筐体を取外した状態のヒートポンプ給湯室外機を示す正面図である。
【図3】本発明の実施の形態2において、筐体を取外した状態のヒートポンプ給湯室外機を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、図1及び図2を参照して、本発明の実施の形態1について説明する。なお、各図においては、共通する要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略するものとする。図1は、本発明の実施の形態1において、ヒートポンプ給湯室外機の外観を示す斜視図である。ここで、図1(a)及び(b)は、それぞれヒートポンプ給湯室外機を斜め前方及び斜め後方からみた状態を示している。また、図2は、筐体を取外した状態のヒートポンプ給湯室外機を示す正面図である。
【0010】
図1に示すように、ヒートポンプ給湯室外機は、その外郭を構成する箱形状の筐体1を備えている。筐体1は、それぞれ平坦な金属板等により形成された前面部1A、後面部1B、左側面部1C、右側面部1D、上面部1E及び底面部1F(図2参照)により構成されている。筐体1の内部には、図2に示すように、上下方向及び前後方向に伸長した平板状の仕切板2が設けられている。仕切板2は、筐体1内の空間を水平方向の一側と他側(右側と左側)に仕切るもので、筐体1の内部には、仕切板2により右側の機械室3と左側の送風機室4とが形成されている。より詳しく述べると、仕切板2は、その四辺が筐体1の前面部1A、後面部1B、上面部1E及び底面部1Fに接触した状態で配置されている。このため、機械室3と送風機室4とは、配管や電線等を挿通する小さな挿通穴を除いて、仕切板2により相互に遮断されている。
【0011】
また、筐体1内には、冷媒を循環させて加熱対象水を加熱する公知の冷媒回路5が設けられている。冷媒回路5は、後述の圧縮機6、空気冷媒熱交換器7、水冷媒熱交換器8及び膨張弁(図示せず)と、これらの機器を環状に接続する冷媒配管とを備えている。圧縮機6は、冷媒を吸込んで吐出することにより、冷媒回路5に冷媒を循環させるもので、駆動源となるモータを備えている。そして、圧縮機6は、機械室3の下部側に収容され、筐体1の底面部1F上に設置されている。また、圧縮機6の吸込側には吸入管9が接続され、圧縮機6の吐出側には吐出管10が接続されている。これらの配管9,10は前記冷媒配管の一部を構成している。
【0012】
空気冷媒熱交換器7は、冷媒配管を流通する冷媒と空気との間で熱交換を行うもので、複数回往復するように屈曲した長尺な冷媒配管と、当該冷媒配管に固着された多数の金属フィンとを備えている。空気冷媒熱交換器7は、全体として略平板状に形成され、送風機室4の後部側(前後方向の一側)に収容されている。また、送風機室4の前部側(前後方向の他側)には、空気冷媒熱交換器7に外気を送風する送風機11が収容されている。送風機11は、複数枚のプロペラ翼と当該プロペラ翼を回転駆動するモータとを備えており、その回転数に応じて空気冷媒熱交換器7を通過する空気量(送風量)を変化させる。これにより、空気冷媒熱交換器7における空気と冷媒との熱交換量は、送風機11の回転数に応じて調整される。なお、送風機室4は、風路を確保するために機械室3よりも大きな容積をもって形成されている。
【0013】
水冷媒熱交換器8は、後述の給水機構12により供給される水(加熱対象水)と冷媒との間で熱交換を行うもので、1次側となる冷媒流入口及び冷媒流出口と、2次側となる水流入口及び水流出口とを有している。そして、水冷媒熱交換器8は、送風機室4の下部側に収容され、筐体1の底面部1F上に設置されている。なお、水冷媒熱交換器8は、後述の水流入内部配管14と冷媒配管とを密着させ、これらを略直方体形状の容器に収納することにより構成されている。一方、冷媒回路5の膨張弁は、外部からの通電状態に応じて冷媒の流路抵抗を調節し、冷媒圧力を減圧するもので、圧縮機6や冷媒配管と共に機械室3に収容されている。
【0014】
次に、冷媒回路5の回路構成について説明する。まず、圧縮機6の吐出側は、吐出管10を介して水冷媒熱交換器8の冷媒流入口に接続されている。また、水冷媒熱交換器8の冷媒流出口は、冷媒配管及び膨張弁を介して空気冷媒熱交換器7の冷媒流入口に接続され、空気冷媒熱交換器7の冷媒流出口は、吸入管9を介して圧縮機6の吸込側に接続されている。そして、このように環状に接続された冷媒回路5には、CO冷媒等の冷媒が封入されている。
【0015】
一方、筐体1内には、水冷媒熱交換器8に加熱対象水を供給する給水機構12が収容されている。給水機構12は、水ポンプ13、水流入内部配管14,15及び水流出内部配管16を備えている。水ポンプ13は、水冷媒熱交換器8に供給するための水を吐出するもので、水ポンプ13の吐出側は、水流入内部配管14を介して水冷媒熱交換器8の水流入口に接続されている。水流入内部配管14は、水ポンプ13から吐出された低温な加熱対象水を水冷媒熱交換器8に流入させるものである。また、水ポンプ13の吸込側は、他の水流入内部配管15を介して水入口バルブ17に接続されている。なお、給水機構12の具体的な配置については後述する。
【0016】
水流出内部配管16は、水冷媒熱交換器8の水流出口と給湯出口バルブ18とを接続しており、水冷媒熱交換器8から流出した高温水を外部の給湯先に向けて流通させるものである。また、上記2つのバルブ17,18は、筐体1の右側面部1Dに設けられたサービスパネル19(図1参照)の内部に配置され、数百リットル程度の容量をもつ外部の貯湯タンク(図示せず)に接続される。具体的に述べると、水入口バルブ17は、第1の外部配管を介して貯湯タンクの底部側に接続され、給湯出口バルブ18は、第2の外部配管を介して貯湯タンクの上部側に接続される。このように、ヒートポンプ給湯室外機は、貯湯タンクを備えた外部の貯湯装置と接続した状態で使用される。なお、サービスパネル19は、後述の電装品上方空間23とほぼ同じ高さ位置で筐体1の上部側に配置されている。
【0017】
一方、水ポンプ13と給湯出口バルブ18には、図2に示すように、エア抜きバルブ13A,18Aが設けられており、これらのバルブ13A,18Aはサービスパネル19内に配置されている。ヒートポンプ給湯室外機の配管接続工事等においては、水ポンプ13や給湯出口バルブ18の内部に侵入したエアをエア抜きバルブ13A,18Aから抜くエア抜き作業が行われる。本実施の形態では、エア抜きバルブ13A,18Aをヒートポンプ給湯室外機の上部側(サービスパネル19)に配置しているので、エア抜き作業では、給湯室外機の下部側に設置された水冷媒熱交換器8等に溜まり易いエアを上部側のエア抜きバルブ13A,18Aから容易に抜くことができる。これにより、エア抜き作業を短時間で効率よく行うことができ、また、溜まったエアを確実に抜くことができる。
【0018】
次に、ヒートポンプ給湯室外機に搭載された電装品搭載体としての電装品収納箱20について説明する。電装品収納箱20には、例えば抵抗、コンデンサ等の回路部品や半導体等の電子部品を含む複数の電気部品が搭載(収納)されている。これらの電気部品には、圧縮機6を駆動する発熱性電気部品としてのインバータモジュール21と、送風機11、水ポンプ13、膨張弁等をそれぞれ駆動する複数のモジュール(送風機用モジュール、水ポンプ用モジュール、膨張弁用モジュール)とが含まれている。そして、電装品収納箱20は、ヒートポンプ給湯室外機の設置環境、使用条件等に基いて、圧縮機6の回転数、送風機11の回転数及び膨張弁の開度を制御する。
【0019】
インバータモジュール21は、例えばモータの回転数制御等に用いられる一般的なインバータ回路をパッケージ化したもので、スイッチング素子及び/又はダイオード素子(以下、これらをまとめてスイッチング素子と称す)を備えている。このスイッチング素子には、ワイドバンドギャップ半導体が用いられている。ワイドバンドギャップ半導体とは、シリコンと比較してバンドギャップ(禁制帯)の幅が大きい半導体の総称であり、具体例としては、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンド等が知られている。本実施の形態では、例えばSiC半導体を用いてインバータモジュール21を構成し、インバータモジュール21により圧縮機6の回転数を制御するようにしている。
【0020】
また、電装品収納箱20は金属製の箱体等により形成され、その上面部は、平坦な金属板等からなるベース20Aにより構成されている。そして、電装品収納箱20に搭載された電気部品のうちインバータモジュール21を除いた他の電気部品は、ベース20Aの下面部に搭載され、電装品収納箱20の内部に収容されている。また、ベース20Aの上面部には、平坦な金属板等からなる取付部材としての取付板22が面接触した状態で取付けられており、インバータモジュール21は、取付板22の上面部(電装品収納箱20の外側面)に搭載されている。取付板22は、ベース20Aと共に電装品収納箱20の上面部を構成するもので、筐体1の前面部1A、後面部1B、左側面部1C及び仕切板2のうちの少なくと1箇所に取付けられ、機械室3内で水平方向に延びている。
【0021】
即ち、電装品収納箱20は、取付板22を介して機械室3内に着脱可能に固定されている。なお、本発明では、電装品収納箱20のベース20Aと取付板22とを共通化し、両者を単一の金属板により形成してもよい。また、電装品収納箱20の右側下部には、電装品収納箱20内の電気回路を外部の電気配線に接続する端子台20Bが設けられている。この端子台20Bはサービスパネル19内に配置され、サービスパネル19により保護されている。電装品収納箱20は、端子台20Bを介して外部から電力の供給を受けたり、外部の機器に制御信号を出力することができる。
【0022】
また、電装品収納箱20は、圧縮機6の上側であって筐体1の上面部1Eから下方に離間した位置に固定されている。これにより、機械室3内には、電装品収納箱20の上側に位置する電装品上方空間23が形成されている。電装品上方空間23は、筐体1の上面部1Eと電装品収納箱20の取付板22(またはベース20A)との間に形成され、筐体1の前面部1A、後面部1B、右側面部1D及び仕切板2により囲まれた空間となっている。また、上下方向における電装品収納箱20の取付位置は、例えば仕切板2を挟んで送風機11のプロペラ翼と水平方向で並ぶ位置に設定されている。これにより、電装品上方空間23内には、給水機構12を配置するのに十分な容積が確保されている。なお、電装品収納箱20のベース20A及び取付板22は、機械室3のうち圧縮機6が配置された下部側の空間と電装品上方空間23との間を仕切る(遮断する)構成としてもよい。
【0023】
次に、電装品上方空間23内における各部品の配置について説明する。電装品上方空間23には、インバータモジュール21と、給水機構12の水ポンプ13と、水流入内部配管14,15及び水流出内部配管16の少なくとも一部とが収容されている。給水機構12は、低温な加熱対象水を利用してインバータモジュール21を冷却するために、電装品上方空間23に配置されている。インバータモジュール21と水ポンプ13は、電装品収納箱20の外側面である取付板22の上面部にそれぞれ密着(面接触)した状態で固定されている。即ち、後述の沸上げ運転時に低温な水が流通する水ポンプ13は、熱伝導性が良好な金属製の取付板22を介してインバータモジュール21に接続されている。
【0024】
また、水ポンプ13から水冷媒熱交換器8に向けて低温な水を流通させる水流入内部配管14は、インバータモジュール21の上面部に直接密着(面接触)した状態に保持されている。従って、水ポンプ13及び水流入内部配管14は、インバータモジュール21から熱伝導可能な位置に配設され、インバータモジュール21の放熱を促進するように構成されている。なお、インバータモジュール21及び水ポンプ13に接続された電気配線は、ベース20A及び取付板22に設けられた配線挿通穴20C,22Aを通じてベース20Aの下面部に引出され、端子台20Bに直接または間接的に接続されている。配線挿通穴20C,22Aには、シール材等を充填することにより防水処理が施されている。これにより、電装品上方空間23側で漏水や結露等により水が生じても、この水は配線挿通穴20C,22Aから電装品収納箱20内に浸入することがない。従って、電装品収納箱20内の部品を水の浸入による短絡等の不具合から保護することができる。
【0025】
本実施の形態によるヒートポンプ給湯室外機は上述の如き構成を有するもので、次に、貯湯タンク内の水(湯)を加熱する沸上げ運転を例に挙げて、ヒートポンプ給湯室外機の動作について説明する。沸上げ運転では、まず、インバータモジュール21により圧縮機6が駆動され、圧縮機6により冷媒の圧縮動作が行われる。これにより、冷媒は、低圧な状態で吸入管9から圧縮機6に吸込まれ、高圧となって吐出管10に吐出される。この冷媒は、水冷媒熱交換器8に流入し、水冷媒熱交換器8内で2次側の水と熱交換することにより、水を加熱する。そして、水を加熱してエンタルピが低下した冷媒は、膨張弁により減圧されて低温低圧となった状態で空気冷媒熱交換器7に流入し、空気冷媒熱交換器7内で空気と熱交換する。これにより、エンタルピが増加した冷媒は、吸入管9から圧縮機6に再び吸込まれる。このように、冷媒回路5を冷媒が循環し、ヒートポンプサイクルが行われる。
【0026】
一方、沸上げ運転時には、圧縮機6と共に水ポンプ13が駆動される。水ポンプ13が作動すると、貯湯タンク内の水は、タンクの下部側から第1の外部配管に流出し、更に、水入口バルブ17、水流入内部配管15、水ポンプ13及び水流入内部配管14を順次通過して水冷媒熱交換器8に流入することにより、水冷媒熱交換器8内で加熱されて高温水となる。そして、この高温水は、水冷媒熱交換器8から水流出内部配管16に流出し、給湯出口バルブ18及び第2の外部配管を介して貯湯タンクの上部側に流入する。これにより、貯湯タンク内の水を加熱する沸上げ運転が実行される。また、冷媒回路5の作動時には、送風機11が作動し、例えば筐体1の後面部1Bに設けられた吸気口から送風機室4内に外気が吸込まれる。この空気は、空気冷媒熱交換器7を後方から前方に向けて通過した後に、筐体1の前面部1Aに設けられた排気口から外部に排出される。
【0027】
上記沸上げ運転を含めて、ヒートポンプ給湯室外機の作動時には、インバータモジュール21により圧縮機6の回転数が数十〜百rps(Hz)程度の所定範囲内で制御される。これにより、インバータモジュール21は、冷媒回路5を循環する冷媒の循環速度及び流量を変化させ、沸上げ能力を制御する。また、水ポンプ用モジュールは、水ポンプ13の回転数を数百rpm〜千rpm程度の所定範囲内で制御し、膨張弁用モジュールは、膨張弁の開度を所定の開度範囲内で制御する。送風機用モジュールは、送風機11の回転数を数百rpm〜千rpm程度の所定範囲内で変化させ、空気冷媒熱交換器7における空気と冷媒との熱交換量を制御する。
【0028】
次に、本実施の形態の効果について説明する。本実施の形態では、水冷媒熱交換器8に加熱対象水を供給する給水機構12により、インバータモジュール21を冷却する構成としている。このため、沸上げ運転時等には、貯湯タンクから水ポンプ13及び水流入内部配管14に流入する低温な加熱対象水を利用して、インバータモジュール21を冷却することができる。これにより、既存の給水機構12をヒートポンプ給湯室外機に搭載してインバータモジュール21から熱伝導可能な位置に配設するだけで、インバータモジュール21から給水機構12への放熱を促進し、冷却効率を高めることができる。従って、本実施の形態では、インバータモジュール21を冷却する大型の放熱フィンや専用の冷却機構等が不要となり、放熱フィンを小型化または廃止することができるので、ヒートポンプ給湯室外機の小型軽量化を促進しつつ、高い冷却性能を実現することができる。
【0029】
一方、水ポンプ13及び水流入内部配管14内を流通する水(加熱対象水)は、インバータモジュール21から発生する熱を吸収し、その後に水冷媒熱交換器8によって加熱される。即ち、インバータモジュール21から放出される廃熱を再利用して加熱対象水を加熱することができ、前記廃熱を利用した分だけ冷媒回路5の加熱能力(圧縮機6の消費電力)を節約することができる。従って、ヒートポンプ給湯室外機の運転効率を高め、省エネルギ化を促進することができる。特に、ヒートポンプ給湯室外機は、深夜電力を利用することが多いので、ランニングコストに対する使用者の関心が高い。従って、省エネルギ化を促進することにより、ヒートポンプ給湯室外機の商品性を高めることができる。
【0030】
また、本実施の形態では、給水機構12の水流入内部配管14をインバータモジュール21と直接接触させているので、インバータモジュール21の熱が水流入内部配管14に伝導するときの抵抗を小さくして、冷却を効率よく行うことができる。また、水ポンプ13は、金属製の取付板22を介してインバータモジュール21と接続しているので、熱伝導性が高い取付板22を利用してインバータモジュール21から水ポンプ13への放熱を円滑に行うことができる。そして、取付板22を介在させることにより、インバータモジュール21や水ポンプ13の配置に自由度をもたせることができ、設計自由度を高めることができる。
【0031】
また、本実施の形態では、機械室3内で圧縮機6の上側に電装品収納箱20を配置し、更に電装品収納箱20の上側に電装品上方空間23を形成し、給水機構12を電装品上方空間23に収容している。これにより、給水機構12を、インバータモジュール21に近接し、かつ、圧縮機6から離れた位置に配設することができ、圧縮機6から放出される熱によりインバータモジュール21の冷却効率が低下するのを防止することができる。また上記配置によれば、電装品上方空間23の側方にサービスパネル19を配置し、このサービスパネル19に水ポンプ13及び給湯出口バルブ18のエア抜きバルブ13A,18Aを設けることができるので、前述したようにエア抜き作業を効率化することができる。
【0032】
しかも、インバータモジュール21は、電装品収納箱20の外側面である取付板22の上面部に搭載され、他の電気部品は電装品収納箱20の内部に収容されているので、他の部品と比較して発熱量が大きいインバータモジュール21だけを給水機構12により選択的に冷却することができる。そして、インバータモジュール21の熱が他の電気部品に伝導するのを抑制し、電装品収納箱20全体の耐熱性を向上させることができる。更に言えば、機械室3のうち圧縮機6が配置された下部側の空間と、電装品上方空間23との間を電装品収納箱20により仕切る構成とすることで、圧縮機6の熱により暖められた空気が給水機構12の周囲に到達するのを遮断し、より高い冷却効率を得ることができる。
【0033】
また、本実施の形態では、筐体1の内部に仕切板2を設けることにより、機械室3と送風機室4とを水平方向に並んだ状態で形成し、電装品収納箱20は、仕切板2を挟んで送風機11のプロペラ翼と水平方向で並ぶ位置に配設している。これにより、電装品収納箱20を、送風機11のプロペラ翼と干渉させることなく、上下方向の途中位置に設けることができる。従って、電装品収納箱20の上側には、十分な容積をもつ電装品上方空間23を容易に形成することができる。
【0034】
一方、本実施の形態では、インバータモジュール21を、SiC半導体(ワイドバンドギャップ半導体)により構成している。インバータモジュール21は、通電電流が大きい圧縮機6の駆動制御を行うことで発熱量が大きくなる。しかし、SiC半導体等のワイドバンドギャップ半導体により形成されたスイッチング素子は、耐熱性が高いので、大型の放熱フィンや冷却機構を付設する必要がない。従って、極端な低温にはならない貯湯タンク内の水を冷却水として用いた場合でも、インバータモジュール21の温度を許容される上限温度以下に抑制することができる。また、沸上げ運転の繰返し等により貯湯タンク全体の水温が高くなり、貯湯タンクから給水機構12に比較的高温な水が供給される場合には、インバータモジュール21の冷却効率が低下する。しかし、このような高温でも、耐熱性が高いSiC半導体は、圧縮機6の駆動制御を安定的に行うことができる。
【0035】
従って、本実施の形態のように、給水機構12により冷却する発熱性電気部品にワイドバンドギャップ半導体を用いる構成とすれば、貯湯タンク内の水を冷却水として利用する水冷システムを安定的に実現することができる。また、ワイドバンドギャップ半導体により形成されたスイッチング素子は、高い耐電圧を有し、許容電流密度も高い上に、電力損失が小さい。これにより、インバータモジュール21を小型化することができると共に、インバータモジュール21の高効率化が可能となり、給湯室外機の運転効率を向上させることができる。
【0036】
更に言えば、本実施の形態のように、ワイドバンドギャップ半導体により構成されたインバータモジュール21を用いる場合には、給水機構12をインバータモジュール21に直接接触させたり、熱伝導性の部材を介して接続する構成としなくてもよい。即ち、インバータモジュール21と給水機構12とを電装品上方空間23内に一緒に配置しておくだけで、空気を介した熱伝導によりインバータモジュール21から給水機構12に適度に放熱することができる。そして、インバータモジュール21は、この程度の冷却状態でも、安定的に作動することができる。
【0037】
実施の形態2.
次に、図3を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1に対して、インバータモジュールと給水機構とを直接接触させない点が異なるもので、この点を特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0038】
図3は、本発明の実施の形態2において、筐体を取外した状態のヒートポンプ給湯室外機を示す正面図である。本実施の形態のインバータモジュール31は、電装品収納箱20の取付板22の下面部に密着(面接触)した状態で搭載され、他の電気部品と共に電装品収納箱20内に収容されている。また、電装品収納箱20のベース20Aには、インバータモジュール31を収容する素子収容穴20Dが設けられ、インバータモジュール31は、取付板22の下面部から素子収容穴20Dを介して電装品収納箱20内に突出している。また、水ポンプ13に接続された電気配線は、実施の形態1の場合と同様に、配線挿通穴20C,22Aを通じてベース20Aの下面部に引出され、端子台20Bに直接または間接的に接続されている。配線挿通穴20C,22Aには防水処理が施されている。
【0039】
一方、水ポンプ13から水冷媒熱交換器8に向けて加熱対象水を流通させる水流入内部配管14′は、実施の形態1と比較して低い位置に設けられ、取付板22の上面部と密着(面接触)した状態で設置されている。即ち、本実施の形態では、インバータモジュール31が取付板22を介して水ポンプ13及び水流入内部配管14′に接続されている。なお、取付板22は、実施の形態1で述べたように、熱伝導性が良好な金属板等により形成されている。また、インバータモジュール31は、SiC半導体等のワイドバンドギャップ半導体により構成されている。
【0040】
このように構成される本実施の形態でも、前記実施の形態1とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、インバータモジュール31を耐熱性が高いワイドバンドギャップ半導体により構成しているので、インバータモジュール31と給水機構12とを直接接触させなくても(取付板22を介した間接的な放熱だけでも)、インバータモジュール31の温度を許容される上限温度以下に抑制することができる。また、インバータモジュール31と給水機構12とを直接接触させないので、給水機構12側で漏水や結露が生じた場合でも、インバータモジュール31を水との接触から保護することができ、インバータモジュール31の耐久性を向上させることができる。
【0041】
なお、前記実施の形態1,2では、電装品収納箱20の上側に電装品上方空間23を形成し、インバータモジュール21と給水機構12とを電装品上方空間23に収容するものとした。しかし、本発明は、給水機構12によりインバータモジュール21を冷却することができれば良いものであり、仕切板2、機械室3、電装品上方空間23等は必ずしも必要としない。即ち、本発明では、インバータモジュール21と給水機構12とを熱伝動可能な状態で配置すれば、他の構成は実施の形態1,2と異なるものでもよい。
【0042】
また、前記実施の形態1,2では、電装品搭載体として箱形状の電装品収納箱20を例示したが、本発明は、箱形状以外の形状を有する電装品搭載体にも適用されるものであり、例えば板状の電装品搭載体に適用してもよい。さらに、本発明において、発熱性電気部品は、インバータモジュール21,31に限定されるものではない。即ち、本発明は、通電時に発熱する各種の電気部品に適用されるものであり、この電気部品には、実施の形態で例示した送風機用モジュール、水ポンプ用モジュール及び膨張弁用モジュールや、大きな抵抗値を有する抵抗体、大容量のコンデンサ等が含まれるものである。
【0043】
また、前記実施の形態1,2では、給水機構12の水ポンプ13及び水流入内部配管14,14′によりインバータモジュール21,31を冷却するものとしたが、本発明はこれに限らず、水ポンプ13及び水流入内部配管14,14′の何れか一方のみによりインバータモジュール21,31を冷却する構成としてもよい。さらには、貯湯タンクの水を水ポンプ13に流入させる水流入内部配管15によりインバータモジュール21,31を冷却する構成としてもよい。
【0044】
また、前記実施の形態1,2では、SiC半導体により構成されたインバータモジュール21,31を用いる場合を例示した。しかし、本発明は、SiC半導体に限定されるものではなく、例えば窒化ガリウム、ダイヤモンド等を含む他のワイドバンドギャップ半導体を用いて、インバータモジュールを構成してもよい。これらのワイドバンドギャップ半導体によっても、SiC半導体を用いた場合とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0045】
さらに、前記実施の形態1,2では、ヒートポンプ給湯室外機により貯湯タンクの水を加熱対象水として沸上げる場合を例示したが、本発明はこれに限らず、例えばヒートポンプ給湯室外機により浴槽の水を加熱対象水として沸上げる(追焚きする)場合に適用してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 筐体
2 仕切板
3 機械室
4 送風機室
5 冷媒回路
6 圧縮機
7 空気冷媒熱交換器
8 水冷媒熱交換器
11 送風機
12 給水機構
13 水ポンプ
14,14′,15 水流入内部配管
16 水流出内部配管
20 電装品収納箱(電装品搭載体)
20A ベース
21,31 インバータモジュール(発熱性電気部品)
22 取付板(取付部材)
23 電装品上方空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、空気冷媒熱交換器及び水冷媒熱交換器を有し、前記圧縮機により冷媒を循環させて前記水冷媒熱交換器により加熱対象水を加熱する冷媒回路と、
少なくとも前記冷媒回路を制御する機器であって、発熱性電気部品を含む複数の電気部品が搭載された電装品搭載体と、
前記水冷媒熱交換器に前記加熱対象水を供給する機構であって、少なくとも一部が前記発熱性電気部品から熱伝導可能な位置に配設され、前記加熱対象水を利用して前記発熱性電気部品を冷却する給水機構と、
を備えたヒートポンプ給湯室外機。
【請求項2】
外郭を構成する筐体と、
前記筐体内に配置された圧縮機、空気冷媒熱交換器及び水冷媒熱交換器を有し、前記圧縮機により冷媒を循環させると共に前記水冷媒熱交換器により加熱対象水を加熱する冷媒回路と、
前記筐体内に形成され、前記圧縮機が収容された機械室と、
少なくとも前記冷媒回路を制御するために前記筐体内に配置された機器であって、発熱性電気部品を含む複数の電気部品が搭載され、前記圧縮機の上側で前記機械室内に配置されると共に前記筐体の上面部から下方に離間した電装品搭載体と、
前記機械室内で前記電装品搭載体の上側に形成された空間である電装品上方空間と、
前記水冷媒熱交換器に前記加熱対象水を供給する機構であって、少なくとも一部が前記電装品上方空間に配置され、前記加熱対象水を利用して前記発熱性電気部品を冷却する給水機構と、
を備えたヒートポンプ給湯室外機。
【請求項3】
前記発熱性電気部品は、前記電装品搭載体の上面部に搭載して前記電装品上方空間に配置し、他の電気部品は、前記電装品搭載体の内部に収容する構成としてなる請求項2に記載のヒートポンプ給湯室外機。
【請求項4】
前記電装品搭載体の上面部を構成し、前記機械室内に固定されると共に前記給水機構が取付けられる金属製の取付部材を備え、
前記発熱性電気部品は、前記取付部材に搭載する構成としてなる請求項2または3に記載のヒートポンプ給湯室外機。
【請求項5】
前記電装品搭載体は、前記機械室のうち前記圧縮機が配置された下部側の空間と前記電装品上方空間との間を仕切る構成としてなる請求項2乃至4のうち何れか1項に記載のヒートポンプ給湯室外機。
【請求項6】
前記筐体の内部を上下方向に伸長し、前記筐体内の空間を水平方向の一側に位置する前記機械室と水平方向の他側に位置する送風機室とに仕切る仕切板と、
前記空気冷媒熱交換器と共に前記送風機室に収容され、前記空気冷媒熱交換器に外気を送風する送風機と、を備え、
前記電装品搭載体は、前記仕切板を挟んで前記送風機と水平方向で並ぶ位置に配設してなる請求項2乃至5のうち何れか1項に記載のヒートポンプ給湯室外機。
【請求項7】
前記発熱性電気部品は、前記給水機構と直接接触させるか、または熱伝導性を有する部材を介して前記給水機構と接続する構成としてなる請求項1乃至6のうち何れか1項に記載のヒートポンプ給湯室外機。
【請求項8】
前記給水機構は、前記水冷媒熱交換器に供給するための水を吐出する水ポンプと、前記水ポンプの吐出側と前記水冷媒熱交換器の流入側とを接続する水流入配管と、を備え、
前記発熱性電気部品は、前記水ポンプと前記水流入配管の少なくとも一方により冷却する構成としてなる請求項1乃至7のうち何れか1項に記載のヒートポンプ給湯室外機。
【請求項9】
前記発熱性電気部品は、前記圧縮機の作動状態を制御するインバータモジュールであり、前記インバータモジュールには、ワイドギャップ半導体を用いてなる請求項1乃至8のうち何れか1項に記載のヒートポンプ給湯室外機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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