説明

ヒートポンプ給湯機

【課題】除菌成分などの有用成分の湯水への供給量の調整を容易に行うとともに、使用する機能によって変化させることが可能な、長寿命な成分投入装置を搭載した給湯機を得ること。
【解決手段】給湯機からの湯水を浴槽へ供給する湯はり配管路と、湯はり配管路内の湯水に、除菌成分を溶出させる成分投入装置と、成分投入装置による、除菌成分の溶出量を制御する溶出量制御手段と、を備え、溶出量制御手段は、浴槽への湯はり動作のときと、浴槽への注水による洗浄動作のときで、溶出量を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は除菌成分などの有用成分を浴槽へ供給する手段を備える給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から浴槽への注湯時に除菌成分などの有用成分を添加する給湯機、例えば湯の除菌機能つき給湯機が提案されており、浴槽への湯の供給時に湯が通過する配管に銀イオン除菌器を設けて銀イオンを溶出させている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−322687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし従来は、銀イオン除菌器で所定濃度以上の銀イオンの添加をしようとすると電極に酸化銀の皮膜ができて寿命が短くなる為、銀イオン除菌器への湯水の供給量を調整するなどして対応しており、銀イオン等除菌成分の濃度調整に難があった。また、浴槽への注湯流路に銀イオン除菌器があるため、湯水への銀イオンの添加は、銀イオン除菌器を通過する1度しか機会がなく、それ以上添加しようとすると浴槽への注湯が必要となり湯水の無駄使いに繋がる。また、除菌成分などの有用成分の使用用途によりその濃度を調節して利用するという考え方がなかった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、除菌成分などの有用成分の湯水への供給量の調整を容易に行うとともに、使用する機能によって変化させることが可能な、長寿命な成分投入装置を搭載した給湯機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
給湯機からの湯水を浴槽へ供給する湯はり配管路と、湯はり配管路内の湯水に、除菌成分を溶出させる成分投入装置と、成分投入装置による、除菌成分の溶出量を制御する溶出量制御手段と、を備え、溶出量制御手段は、浴槽への湯はり動作のときと、浴槽への注水による洗浄動作のときで、溶出量を変更する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、除菌成分などの有用成分の湯水への供給量の調整を容易に行うとともに、使用する機能によって変化させることが可能な、長寿命な成分投入装置を搭載した給湯機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1におけるヒートポンプ給湯機の回路構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1における成分投入装置を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態2における成分投入装置を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態3における成分投入装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態について図面とともに詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態1による給湯機の一例であるヒートポンプ給湯機の回路構成図である。本実施の形態1によるヒートポンプ給湯機は、湯を沸かすヒートポンプユニット1と、その湯を貯湯するタンクユニット2から構成されている。
【0010】
タンクユニット2は、タンクユニットケース内に貯湯タンク3と、ヒートポンプユニット1や後述する風呂湯はり用混合弁7、成分投入装置11、風呂追い焚き熱源ポンプ12、風呂追い焚き循環ポンプ15、流量センサー10などを制御しヒートポンプ給湯機の動作全体を制御する制御部4、および風呂追い焚き用熱交換器14を内蔵している。貯湯タンク3は、上部に高温水、下部に低温水が温度層ごとに温度差による密度差で分かれて蓄えられる積層式の貯湯タンクである。
【0011】
風呂追い焚き用熱交換器14は水流が対向して流れる水一水熱交換器で、上部にタンク側入口141および風呂側出口144が、下部にタンク側出口142および風呂側入口143が設けられており、上部のタンク側入口141から供給された温水は下部のタンク側出口142から排出され、下部の風呂側入口143から供給された浴槽水は上部の風呂側出口144から排出される。
【0012】
貯湯タンク3には、上部に温水導入口31、温水導出口32および風呂追い焚き用温水導出口33が、下部に水導入口34、水導出口35および風呂追い焚き水導入口36が設けられており、温水導出口32には貯湯タンク3内の湯水の温度上昇により圧力が過度に上昇した場合のために逃し弁8が給湯配管20から分岐して接続されている。また、給水配管30は、一端を市水等の水源に接続され、途中に水源水圧を所定以下に減圧する減圧弁9を介在したあと2つに分岐し、分岐した一方は風呂湯はり用混合弁7に接続され、もう一方を水導入口34に接続される。
【0013】
浴槽13への湯はりは、貯湯タンク3の上部の温水導出口32から給湯配管20により温水が風呂湯はり用混合弁7に供給され、風呂湯はり用混合弁7で給水配管30により供給される水道水と混合後、ふろ注湯配管21を経由し、途中に設けられた流量センサー10を経て、浴槽13と風呂追い焚き用熱交換器14を結ぶ、ふろ循環配管24に合流し、浴槽13との間に設けられた成分投入装置11を経て行われる。
【0014】
風呂追い焚き用熱交換器14の上部のタンク側入口141には、貯湯タンク3の上部の風呂追い焚き用温水導出口33から温水が供給され、風呂追い焚き用熱交換器14で熱交換後、下部のタンク側出口142から排出される。排出された水は風呂追い焚き熱源ポンプ12により貯湯タンク3の下部の風呂追い焚き水導入口36から貯湯タンク3内に戻される。
【0015】
一方、風呂追い焚き用熱交換器14の下部の風呂側入口143には、浴槽13からの湯水がふろ循環配管24に設けられた風呂追い焚き循環ポンプ15により供給され、成分投入装置11を経由して、風呂追い焚き用熱交換器14で熱交換されて加温された温水となる。その後、上部の風呂側出口144から排出された温水は浴槽13内に戻される。
【0016】
つぎに、動作を説明する。図1において、タンクユニット内の制御部4からの貯湯運転信号により、ヒートポンプユニット1が運転され、貯湯タンク3の下部の水導出口35に接続された往き配管5を通ってヒートポンプユニット1に水が供給され、加熱される。そして、加熱され高温となった水は、貯湯タンクの上部の温水導入口31に接続された戻り配管6を通って貯湯タンク3に流入する。従って、高温水は、貯湯タンク3の上部から順次貯湯される。
【0017】
浴槽13へ湯はりを実施する場合、貯湯タンク3内の上部高温水を温水導出口32から出湯し、風呂湯はり用混合弁7、流量センサー10、成分投入装置11を通り、風呂追い焚き用熱交換器14を経由して、浴槽13に至る。このとき、成分投入装置11は、図2(a)に示すように、内蔵する成分供給材111を、ふろ循環配管24中に露出し、成分供給材111が湯水に接触することにより、その内部から除菌成分が水中に溶出して添加され、除菌成分を含有した湯が浴槽13に供給される。そのほか、浴槽13へ貯湯タンク3からの湯水を少量足すような足し湯などの動作のときも、同様にして除菌成分を含有した湯が浴槽に供給される。
【0018】
風呂追いだきを実施する場合、熱を供給する一次回路側においては、貯湯タンク3内の上部高温水を温水導出口32から出湯し風呂追い焚き用熱交換器14のタンク側入口141から供給して、風呂追い焚き用熱交換器14を通りタンク側出口142から風呂追い焚き水導入口36を経由し貯湯タンク3に戻される。この動作は、風呂追い焚き用熱源ポンプ12により行われる。
【0019】
熱を供給される二次回路側においては、浴槽13内の湯水がふろ循環配管24により取り出され、成分投入装置11を通過した後、プレート式熱交換器14の風呂側入口143から供給され、ふろ追い焚き用熱交換器14を通り風呂側144から出て、ふろ循環配管24を再び経由し浴槽13に戻される。この動作は、風呂追い焚き用循環ポンプ15により行われる。このとき、成分投入装置11は成分供給材111を配管中に露出し、成分供給材111が浴水に接触することにより、その内部から除菌成分が水中に溶出して添加され、除菌成分を追加した湯が浴槽に供給される。
【0020】
入浴後、浴槽13から水が排水されたことを、ふろ循環配管24に設けた図示しない浴槽水位センサ等で制御部4が検出すると、浴槽13に繋がる配管や浴槽13の洗浄を行う配管洗浄の状態に切り替わり、風呂湯はり用混合弁7から水が供給され、成分投入装置11を通ることによって前述と同様に除菌成分が溶出し、除菌成分を含んだ水となって浴槽13へ向けて流出する。流出した除菌成分を含んだ水はふろ循環配管24内や風呂追い焚き用熱交換器14内を洗浄し、さらに浴槽13内、およびその排水口周辺に滞留して臭気やぬめりのもととなる雑菌の繁殖を抑制する。なお、このとき風呂湯はり用混合弁7からの湯水の注入の前に、所定時間あるいは浴槽13からの排水に伴ってふろ循環配管24での循環が可能な間は、風呂追い焚き用循環ポンプ15により、ふろ循環配管24内に浴槽13の湯水を循環させながら成分投入装置11で除菌成分を水中に溶出させる動作を行っても良い。これにより、注水による除菌成分の添加よりも多量の除菌成分の添加が可能となる。
【0021】
図2は成分投入装置11付近の要部を拡大した図である。成分投入装置11は、成分供給材111、成分供給材駆動部112を備えている。成分供給材駆動部112は、タンクユニット2の制御部4からの制御信号によって、成分供給材11を、ふろ循環配管24内に出し入れすることにより接水状態にするとともに、その出し入れする割合、およびその暴露時間を調節することにより接水面積および成分の溶出量を調整する。
【0022】
湯はり時、足し湯時、追い焚きなどの浴槽13の湯水循環時は、湯中の除菌成分の濃度は低くて良いため、成分供給材111は、成分供給材駆動部112から表面だけを所定時間だけ出した状態に制御される(図2の(a))。一方、配管洗浄の時は洗浄効果を高めるために水中の除菌成分の濃度を高めるため、除菌成分供給材111は成分供給材駆動部112から十分な長さを接水した状態に前述の所定時間よりも長い時間だけ制御される(図2の(b))。このとき、前述のように、ふろ循環配管24での循環が可能な間は、風呂追い焚き用循環ポンプ15により、ふろ循環配管24内に浴槽13の湯水を循環させながら成分投入装置11で除菌成分を水中に溶出させる動作を行っても良い。これにより、注水による除菌成分の添加よりも多量の除菌成分の添加が可能となり高濃度化が可能となる。
【0023】
このように除菌成分供給材111の接水面積や時間を、その成分の必要となる用途や濃度によって容易に調整することが可能となり、除菌成分供給材111の消費量を適正に抑え、接水面積や時間を変化させない場合に比べ、長期間の使用が可能になる。また、浴槽13の循環経路に成分投入装置11を備えることにより、浴槽13への注水時以外にも循環動作によって除菌成分の投入が可能となり、量および濃度の調整がより一層容易になる。
【0024】
実施の形態2.
図3は、本発明の他の形態の形態による成分投入装置11付近の要部を拡大した図である。成分供給材111は、ふろ循環配管24の所定の位置に固定され、その周りを成分供給材洗浄部112aが覆っている。成分供給材洗浄部112aは、タンクユニット2の制御部4からの制御信号によって成分供給材111の表面を覆うようにスライドしながら移動することで、成分供給材111のふろ循環配管24内での接水面積や接水時間が変えられるように構成されている。
【0025】
また、成分供給材111の表面が水中のゴミなどで汚れ、十分な量の除菌成分が溶出できなくならないように、成分供給材洗浄部112aと成分供給材111の接触するスライド部分には、成分供給材11の表面を洗浄(研磨や表面のゴミの剥離等)する洗浄手段112bが設けられており、成分供給材洗浄部112aをスライドさせることにより成分供給材111の表面を洗浄してゴミや汚れを取り除き新しい表面を露出させ、除菌成分の溶出量を常に所定量となるように調整する(図3の(a)から(b)、または(b)から(a)のようにスライドさせる)。
【0026】
このように本実施の形態2では、成分供給材洗浄部112aおよび洗浄手段112bにより、ゴミや汚れなどを含んだ水中で使用した場合であっても成分供給材111の表面の状態を常に初期状態同様の清浄な状態に維持することで、適正な成分の溶出を可能とし、流量を増加させるなど、汚れによる成分溶出量の低下を補う手段を用いて成分供給材111の消費量を増やすことをせず、安定して適正な溶出量を確保し、無駄な消費を抑えることができ長期間の使用が可能になる。
【0027】
実施の形態3.
図4は、本発明の他の実施の形態による成分投入装置11付近の要部を拡大した図である。成分投入装置11は、印加電圧を調整することにより、内蔵する成分供給材111からの除菌成分の溶出量が電圧に比例して増加可能に構成されており、タンクユニット2の制御部4からの制御信号によって印加電圧が変化し、成分供給材11から水中に溶出する除菌成分の量が変えられるように制御されている。
【0028】
湯はり時、足し湯時、追い焚き時は、湯中の除菌成分の濃度は低くて良いため、成分供給材111に印加される電圧は低い状態に制御される(図4の(a))。一方、配管洗浄時は洗浄効果を高めるために水中の除菌成分の量や濃度を高めるため、成分供給材111に印加される電圧は高い状態に制御される(図4の(b))。
【0029】
このように成分投入装置11に対する印加電圧を変えることにより、成分供給材111からの成分溶出量を適正に制御可能となり、無駄な成分の消費量を抑えることができる。
【0030】
なお、本実施の形態1から3においては、成分投入装置11から投入する成分を除菌成分の場合として一例を説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、除菌成分の替わりに、入浴の際に美容効果や温浴効果を発揮するミネラル成分や、除菌効果と入浴効果を兼ね備えたミネラル成分などの有用成分の給湯機からの添加にも利用可能である。一般的にミネラルを含んだ水は、菌の増殖を抑制したり、ミネラルを含むことで湯の性質が変化し、人体や浴槽、その他接触する対象物に対して、なじみ易くなると言われており、ミネラルを含んだ水で対象物を洗浄したり、その水に入浴することにより、除菌効果や温浴効果、洗浄補助効果などがあるとされており、除菌成分に替えてミネラル成分を添加するように構成すれば、上述の洗浄効果に加え、浴槽への湯はりの際にミネラル成分を添加した湯水を注湯しておくことにより、ミネラルを含んだ水に入浴することにより、除菌効果や温浴効果、洗浄補助効果などを得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0031】
1 ヒートポンプユニット
2 タンクユニット
3 貯湯タンク
4 制御部
5 往き配管
6 戻り配管
7 風呂湯はり用混合弁
8 逃がし弁
9 減圧弁
10 流量センサー
11 成分投入装置
12 風呂追い焚き熱源ポンプ
13 浴槽
14 風呂追い焚き用熱交換器
15 風呂追い焚き循環ポンプ
20 給湯配管
21 ふろ注湯配管
24 ふろ循環配管
30 給水配管
31 温水導入口
32 温水導出口
33 風呂追い焚き用温水導出口
34 水導入口
35 水導出口
36 風呂追い焚き水導入口
141 タンク側入口
142 タンク側出口
143 風呂側入口
144 風呂側出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯機からの湯水を浴槽へ供給する湯はり配管路と、
前記湯はり配管路内の湯水に、除菌成分を溶出させる成分投入装置と、
前記成分投入装置による、前記除菌成分の溶出量を制御する溶出量制御手段と、
を備え、
前記溶出量制御手段は、前記浴槽へ前記給湯機からの湯水を供給して所定量の湯はりを行う湯はり動作のときと、前記浴槽へ前記給湯機からの湯水を所定量注水して前記湯はり配管路および前記浴槽の洗浄を行う洗浄動作のときで、前記溶出量を変更することを特徴とする給湯機。
【請求項2】
前記溶出量制御手段は、前記湯はり動作より前記洗浄動作のほうが、前記浴槽に供給する湯水の前記除菌成分の溶出濃度が高くなるように制御することを特徴とする、請求項1に記載の給湯機。
【請求項3】
前記湯はり配管路は、前記浴槽内の湯水を取り出し、前記給湯機に内蔵された風呂追い焚き用熱交換器を経由して前記浴槽へ循環させる、ふろ循環配管を含み、
前記成分投入装置は、前記ふろ循環配管に設けられるとともに、
前記湯はり動作および/または前記洗浄動作の際に、前記浴槽の湯水を前記風呂追い焚き用熱交換器に循環させ、前記成分投入装置による湯水への前記除菌成分の溶出を行うように構成したことを特徴とする、請求項1または2に記載の給湯機。
【請求項4】
前記成分投入装置は、除菌成分を含み、水と接することにより該成分が溶出する成分供給材を備えるとともに、前記湯はり配管路での前記成分供給材の前記湯水への接水面積を調整可能に構成し、
前記溶出量制御手段は、前記接水面積を調整することにより、前記溶出量を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の給湯機。
【請求項5】
前記成分投入装置は、前記成分供給材の接水面を物理的に洗浄する洗浄手段を備えることを特徴とする、請求項4に記載の給湯機。
【請求項6】
前記成分投入装置は、除菌成分を含み、電圧を印加することにより該成分が溶出する成分供給材を備え、
前記溶出量制御手段は、前記電圧を調整することにより、前記溶出量を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の給湯機。
【請求項7】
前記成分投入装置は、ミネラル成分を溶出する成分供給材を備えたことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1つに記載の給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−40731(P2013−40731A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178756(P2011−178756)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】