説明

ヒートポンプ装置

【課題】凝縮器を乾式運転と湿式運転とに切り換えて運転でき、いずれの運転時にも高効率のヒートポンプ装置を提供する。
【解決手段】圧縮機2と、凝縮器3と、膨張弁5と、蒸発器6とを介設した冷媒循環流路7と、凝縮器3に通風する冷却ファン8と、凝縮器3に散水する散水装置11とを有するヒートポンプ装置1において、散水装置11の状態に応じて、冷却ファン8の回転数を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒートポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機と凝縮器と膨張弁と蒸発器と介設した冷媒循環流路を有するヒートポンプ装置において、例えば特許文献1および2に記載されているように、負荷状態に応じて、散水装置により凝縮器に散水し、乾式運転と湿式運転とを切り換えるものが公知である。
【0003】
乾式運転においては、凝縮器で冷媒を空気との熱交換によって冷却するので、冷却効率を高めるために、ファンにより凝縮器に通風するのが一般的であり、最適な冷却効率を得るためにはある程度大きな風量が必要である。
【0004】
一方、湿式運転においては、凝縮器に散水した水の気化熱によって冷媒を冷却するので、凝縮器に多量の空気を通気することは求められない。しかしながら、従来のヒートポンプ装置は、湿式運転時において乾式運転時と同様の風量を凝縮器に通風させるので、冷却ファンの駆動のために不必要なエネルギーを消費して、ヒートポンプの効率を低下させるという問題があった。
【特許文献1】特開2003−130427号公報
【特許文献2】特開2003−185224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、前記問題点に鑑みて、本発明は、凝縮器を乾式運転と湿式運転とに切り換えて運転でき、いずれの運転時にも効率の高いヒートポンプ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明によるヒートポンプ装置は、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器とを介設した冷媒循環流路と、前記凝縮器に通風する冷却ファンと、前記凝縮器に散水する散水装置とを有し、前記散水装置の状態に応じて、前記冷却ファンの回転数を制御するものとする。
【0007】
この構成によれば、散水装置の運転状態に応じて、凝縮器に必要以上の空気を通風させないように、冷却ファンの回転数を制御することで、冷却ファンに必要以上のエネルギーを消費させず、ヒートポンプ装置全体の効率を高く維持することができる。
【0008】
また、本発明のヒートポンプ装置において、前記散水装置が前記凝縮器に散水しないときは、前記冷却ファンの回転数を所定の高速回転にし、前記散水装置が前記凝縮器に散水するときは、前記冷却ファンの回転数を所定の低速回転にしてもよい。
【0009】
ヒートポンプ装置において、凝縮器の乾式運転時に比べ、凝縮器の湿式運転時には最適な通風量がかなり少ない。このため、凝縮器の冷却ファンを、凝縮器の湿式運転時の低速回転と凝縮器の乾式運転時の高速回転との2つの速度を切り換える簡単な制御で、ヒートポンプ装置全体の効率を大きく向上させることができる。
【0010】
また、本発明のヒートポンプ装置において、外気温度を検出する温度検出手段をさらに有し、温度検出手段が検出した温度が所定の限界温度よりも高いとき、前記散水装置は、前記凝縮器に散水するものとする。
【0011】
この構成によれば、乾式運転で凝縮器を効率よく冷却することができなくなる限界温度を検出して、湿式運転に切り換えるので、乾式運転と湿式運転とを最適なタイミングで切り換えることができる
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、凝縮器に散水する散水装置の運転状態に応じて、凝縮器に通風する冷却ファンの回転数を制御するので、冷却ファンが必要以上の空気を通風させることがなく、無駄なエネルギーを消費しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の1つの実施形態であるヒートポンプ装置1を示す。ヒートポンプ装置1は、スクリュ圧縮機2と凝縮器3と受液器4と蒸発弁5と蒸発器6とが介設され、冷媒が封入された冷媒循環流路7を有している。ヒートポンプ装置1は、蒸発器6において、冷却水やブラインなどの被冷却媒体から熱を奪い、凝縮器3において、その熱を外部に放出するものである。
【0014】
ヒートポンプ装置1は、凝縮器3に外気を通風させる冷却ファン8が設けられており、冷却ファン8を回転させるファンモータ9は、インバータ10によって回転数を制御可能である。
【0015】
また、ヒートポンプ装置1は、凝縮器3に散水する散水装置11を有しており、散水装置11は、水タンク12、ポンプ13およびスプレーノズル14からなっている。
【0016】
ヒートポンプ装置1は、インバータ10の出力周波数およびポンプ13の起動停止を制御する凝縮器制御装置15と、外気温度Tを検出する外気温度センサ(温度検出手段)16とを有する。凝縮器制御装置15は、外気温度センサ16が検出した外気温度Tと、予め設定されている限界温度Tとを比較してインバータ10およびポンプ13を制御する。
【0017】
図2は、凝縮器制御装置15による凝縮器3の冷却ファン8および散水装置11の制御の流れを示す。凝縮器制御装置15は、ステップS1において、外気温度Tと限界温度Tとを比較する。ステップS1において外気温度Tが限界温度Tよりも高ければ、ステップS2に進み、散水装置11のポンプ13を始動し、さらに、ステップS3に進んで、冷却ファン8を所定の低速回転で運転するようにインバータ10の出力周波数を第1の値に設定する。その後、凝縮器制御装置15は、再びステップS1に戻って、外気温度Tと限界温度Tとを比較する。
【0018】
凝縮器制御装置15は、ステップS1において外気温度Tが限界温度T以下であれば、ステップS4に進み、散水装置11のポンプ13を停止し、さらに、ステップS5に進んで、冷却ファン8を所定の高速回転(好ましくは定格回転)で運転するようにインバータ10の出力周波数を第1の値よりも高い第2の値に設定し、ステップS1に戻る。
【0019】
つまり、凝縮器制御装置15は、外気温度Tが限界温度Tより高ければ、散水装置11で凝縮器3に散水する湿式運転をし、湿式運転時は、冷却ファン8を低速回転にする。また、凝縮器制御装置15は、外気温度Tが限界温度T以下であれば、散水装置11で凝縮器3に散水しない乾式運転をし、乾式運転時は、冷却ファン8を高速回転にする。
【0020】
続いて、図1の構成のヒートポンプ装置1を、図2の流れに従って運転する効果を説明する。
散水装置11のポンプ13を停止して、凝縮器3に散水しない状態の乾式運転時、凝縮器3は、冷却ファン8によって通風される空気との熱交換により冷媒の熱を放出する。空気は比熱が小さいために、冷媒の熱を十分に奪うためには、ある程度大きな風量が必要である。このため、冷却ファン8およびファンモータ9は、この乾式運転において最も効率よく凝縮器3に通風できるように定格で運転されることが好ましい。
【0021】
一方、散水装置11のポンプ13を停止して、凝縮器3に散水する状態の湿式運転時、凝縮器3の冷媒は、散水された水の気化熱によって熱を奪われる。冷却ファン8によって通風される外気は、水の気化を促進するが、凝縮器3の表面温度が空気の湿球温度にまで低下すると、それ以上は水を気化させることができない。この限界によって、冷却ファン8の回転数がある回転数を超えると、冷却効果は全く同じであるのに、冷却ファン8の消費電力だけが回転数の3乗に略比例して上昇し、エネルギーだけを多く消費することになる。
【0022】
図3は、凝縮器3に散水する状態の湿式運転において、冷却ファン8の回転数の定格回転数に対する比と、ヒートポンプ装置1全体の効率を示す成績係数(COP)の冷却ファン8を定格回転数で運転したときの成績係数に対する比との関係を示すものである。
【0023】
図示するように、湿式運転時には、冷却ファン8の回転数が乾式運転時の回転数である定格回転数の約0.7倍の低速回転で運転するとき、冷却ファン8が凝縮器3に通風して水を気化させることで冷却効率を向上させる効果と、冷却ファン8を駆動するファンモータ9の消費電力の上昇とがバランスし、ヒートポンプ装置1全体として、最大の効率を発揮する。この状態で、図示するように、ヒートポンプ装置1は、冷却ファン8を定格回転数で運転する場合に比べて、成績係数が約7%改善されている。
【0024】
本実施形態のヒートポンプ装置1では、インバータ10によって冷却ファン8の回転数を決定しているが、タップモータや他の手段で回転速度を変更してもよい。
【0025】
また、本実施形態では、外気温度センサ16で検出した温度Tによって、散水装置11で凝縮器3に散水するか否かを判断しているが、スクリュ圧縮機2の吐出圧力や冷媒温度などで判断してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態のヒートポンプ装置の概略図。
【図2】図1のヒートポンプ装置の凝縮器運転の流れ図。
【図3】図1のヒートポンプ装置の散水時におけるファン回転数と成績係数との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0027】
1 ヒートポンプ装置
2 スクリュ圧縮機
3 凝縮器
4 受液器
5 蒸発弁
6 蒸発器
7 冷媒循環流路
8 冷却ファン
9 ファンモータ
10 インバータ
11 散水装置
13 ポンプ
15 凝縮器制御装置
16 外気温度センサ(温度検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器とを介設した冷媒循環流路と、
前記凝縮器に通風する冷却ファンと、
前記凝縮器に散水する散水装置とを有し、
前記散水装置の状態に応じて、前記冷却ファンの回転数を制御することを特徴とするヒートポンプ装置。
【請求項2】
前記散水装置が前記凝縮器に散水しないときは、前記冷却ファンの回転数を所定の高速回転にし、
前記散水装置が前記凝縮器に散水するときは、前記冷却ファンの回転数を所定の低速回転にすることを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ装置。
【請求項3】
外気温度を検出する温度検出手段をさらに有し、
温度検出手段が検出した温度が所定の限界温度よりも高いとき、前記散水装置は、前記凝縮器に散水することを特徴とする請求項1または2に記載のヒートポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−187344(P2007−187344A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3797(P2006−3797)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)