ビアを有する銅板接合AlN基板
【目的】表面が配線パターンを有する実装側、裏面が放熱側である銅板接合基板の表裏の導通を確保し、両面を有効に利用し得るようにすると共に、接合基板に積層構造を持たせることも可能とする。
【構成】表面及び裏面に銅板11を滑性金属を含む合金のろう材12を用いてセラミックス基板13に接合した銅板接合基板にパターン化された両面の銅板をビアホール14で電気的に接合する。
【構成】表面及び裏面に銅板11を滑性金属を含む合金のろう材12を用いてセラミックス基板13に接合した銅板接合基板にパターン化された両面の銅板をビアホール14で電気的に接合する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ビアを有する銅板接合AlN基板に関する。さらに詳しくは、大電流を使用する電子部品搭載用基板として用いられる、耐熱サイクル性に優れた銅板接合AlN基板のうち、特に基板の表裏面を有効に利用することができ、さらには積層構造を持たせることも可能とするビアホール構造を付加した銅板接合AlN基板に関する。
【0002】
【従来の技術】大電流を使用する電子部品搭載用基板として、セラミックス基板の両面にろう材を用いて金属板を接合した基板が用いられており、その典型的な例を図2に縦断面模式図で示す。図において、電子部品搭載側金属板1は、電子部品搭載側ろう材2を介して、セラミックス基板3に接合されており、放熱側金属板5は放熱側ろう材4を介して基板3に接合されている。このような金属板接合セラミックス基板は、積層構造とすることができないだけでなく、表裏面を有効に利用できないという欠点がある。また、外部配線が多くなりシステムとして小型化しにくく、設計上の制約も多い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の銅板接合基板にビアホールを持たせることによって、表裏面の導通を確保し、配線面、放熱面を有効に利用することを目的とする。本発明者らはビアホールの比抵抗値のばらつきを低減するために、材質、構造、製造工程について広範囲に検討し、実際の使用に耐え得る製品を得た。本発明はこのようなビアを有する銅板接合AlN基板を提供することで、上記従来技術の問題点を解決しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明では、上記課題を解決するために、一つあるいは複数個のビアホールをセラミックス基板に形成する技術と従来の銅板接合技術を組合せることを特徴とする、大電流を使用する電子部品搭載用基板を提供する。本発明は電子部品搭載あるいは電気配線のための銅板及び放熱用の銅板が、活性金属を含む合金のろう材を介してAlN焼結体の両面にそれぞれ接合されており、パターン化された両面の銅板の一部を電気的に接続したビアホールを得たことを特徴とするビアを有する銅板接合AlN基板である。この場合に、AlN焼結体が熱伝導率150W/mK以上、酸素含有量2重量%以下のAlN焼結体であり、ビアホールはAlN基板と銅板をろう付けする温度よりも高い温度で予め焼結され、良好な導電性を有する金属が、緻密に充填されているビアホールとすれば好適である。
【0005】また、ビアホールは、Cuを主成分とし、ケミカルボンドタイプあるいはガラスフリットボンドタイプで焼結温度が900〜1000℃の導電性焼結金属とし、ろう材はAg−Cu合金を主成分とし、活性金属としてTiを含み900℃以下で良好な接合状態が得られるろう材としてもよい。さらに、これらの場合にビアホールのアスペクト比(深さ/径)が、1以上で3以下とするのがよく、ビアホールのアスペクト比が1未満のときは、ビアホールの断面積の合計が一致する複数個の径の小さいビアホールとするのが好ましい。
【0006】
【作用】本発明は、Ag−Cu合金を主成分とし、活性金属としてTiを添加した従来のろう材を用いた銅板とAlNセラミックス基板の接合技術に、Cu導体を主成分としたガラスフリットタイプあるいはケミカルボンドタイプのペーストでスルーホール印刷し、接合温度より高い900〜1000℃に焼成しビアホールを形成する技術を組合せることを特徴とする。このような複合・多段階メタライズ技術により、従来の銅板接合基板の付加価値を向上させるものである。
【0007】スルーホール形成、ビアホール形成、パターン形成、銅板接合からなる本発明の実施例を製造する全工程を図3に示す。まずグリーンシートを成形し、これを適当な寸法に切断、打抜き基板の焼成を行う。次いでCuペーストをスルーホールに充填し、乾燥し、表面を平滑化して焼成する。この基板にろう材を印刷し、鋼板を仮止めする。次に真空焼成して接合しエッチング、めっき処理を行うことによって製造される。次に本発明のビアホールのアスペクト比(深さ/径)は1以上3以下であるとビアホールと銅板、ろう材、アルミナ基板の接合状態が良好で、熱サイクル経過前後の比抵抗のばらつきが少なく好適である。アスペクト比が1未満のときは、複数個の近接するビアホールの群に分割するとよい。
【0008】
【実施例】
実施例1平均粒径1.2μmのAlN粉末(酸素含有量0.65重量%、カーボン含有量0.02重量%)に、平均粒径0.5μmのY2 O3 を2.5重量%添加し、ポリビニルブチラール(PVB)と可塑材を適量加え、AlNスラリーとした。このスラリーより、ドクターブレード法にて厚さ約1mmのグリーンシートを成形し、さらにこれを65×65mm角に打抜き加工して、図4に示すグリーンシート6を得た。このグリーンシート6にドリリングマシンにより、焼き上がりの後の収縮を見込んで、0.36mmφのスルーホール21を形成した(図4(a))。窒素気流中で600℃の脱脂及び1900℃の焼成を行い、熱伝導率180W/mKのスルーホール基板7(図4(b))を得た。
【0009】焼結後0.3mmφに収縮したスルーホール21aに、スルーホール径の20%増のランド径を有するスクリーンマスクにより、ガラスフリットタイプ、固形分80〜90%Cuペーストを充填した。30分のレベリング後、大気中200℃で乾燥(イン・アウトで30分)し、ランド部分を研削して基板表面を平滑にした。引き続き、窒素気流中900℃(イン・アウトで80分)でCuペーストを焼成し、ビアホールとした。この時の、ビア部の比抵抗のばらつきを図5に示す。
【0010】続いて、Ag−Cu(+Ti)ろう材を図6(a)(表面)、図6(b)(裏面)に示すパターンで、ビアホール基板の表面8及び裏面9に、膜厚25〜30μmで印刷し、30分のレベリング後Cuペーストと同じ条件で乾燥した。両面に厚さ150μm、55mm□の銅板を接着剤で仮止めした。この状態で適当な荷重をかけて固定した後、真空中(10-6Torr)、850℃で40分焼成し、接合体とした。接合後のビアホール部を含む破断面の顕微鏡写真を図7(a)に示す。図7(b)はその説明図であって、AlN基板19を貫通しCuが充填されたビアホール部18の一部へ銅板16を接合しているAg層17が拡散している状態が観察される。接合後図6(a)、図6(b)に示したパターンのみ残し、エッチングにより余分な銅板を取り除いた。
【0011】図1はこれを模式的に示したもので、ビアホール14を設けた基板13の表面8及び裏面9にろう材12を介して銅板11を形成し(図1(b))、エッチングにより余分の銅板を取り除いた(図1(c))状態を示している。この時のビア部の比抵抗(ろう材、銅板こみの全抵抗を比抵抗に換算)のばらつき、および熱サイクル試験(−50℃〜150℃、200回)後の比抵抗(ろう材、鋼板こみ)のばらつきを図8、図9に示す。また、ビアホールのみ(ろう材と銅板を除去)の比抵抗(初期値)のばらつきを図10に示す。熱サイクル試験の前後で比抵抗のばらつきに変化のないことが分かる。このことから、銅板、ろう材、AlN基板、及びビアホールの接合状態が良好であるといえる。
【0012】実施例2実施例1と同様にAlNグリーンシートを用意した。0.36mmφのスルーホール21が5個からなる1集団を、図11に示すようなパターンで形成した。この1集団は、破線で示した0.8mmφのスルーホール22を1個形成したのと同じ断面積に相当する。以下実施例1と同様に銅板を接合し、ビアの抵抗のばらつきを測定した。結果を図12に示す(ビアホール1集団は、5個の小さなビアホールで構成されている。)実施例1と同じく、比抵抗のばらつきの小さい良好な結果が得られた。また、図11に破線で示す0.8mmφのスルーホール22の1個からなるビアホールを、図11に実線で示すスルーホール21の5個の代りに、図11と同じパターンで形成した。鋼板接合後のビア部の比抵抗のばらつきは図15のようになり、同じ断面積を有する分割したビアホールの場合に比べると、比抵抗値の分布が広がっている。これはビアホールの充填密度(焼結密度)の低下(ばらつき)が原因と考えられる。
【0013】実施例3実施例1と同様にAlNグリーンシートを用意した。0.36mmφのスルーホール23が10個からなる1集団を、図13に示すようなパターンで形成した。これは図13に破線で示した1.14mmφのスルーホール24が1個分の断面積に相当する。実施例1と同様に銅板を接合し、ビア部の抵抗のばらつきを測定した。結果を図14に示す(ビアホール1集団は、10個の小さなビアホールで構成されている)。実施例1と同じく、比抵抗値のばらつきの小さい良好な結果が得られた。次に図13に破線で示す1.14mmφのスルーホール24の1個からなるビアホールを、図13に実線で示すスルーホール23の10個に代って、図13と同じパターンで形成した。銅板接合後のビア部の比抵抗のばらつきは図16のようになり、同じ断面積を有する分割されたビアホールのものと比べ高抵抗化しており、比抵抗値の分布が広がっている。
【0014】
【発明の効果】以上述べたように本発明によると、従来の銅板接合基板にビアホールを付加することによって、接合基板の表裏面を有効に利用することができ、設計上の制約が緩和され、積層構造を持たせることも可能となる。さらに、ビアホールをCuペースト充填法によって形成することによって、導電性に優れるだけでなく、ろう材からのAgの拡散により、ろう材との密着力が強固となり、耐熱サイクル等の信頼性も向上する。また、ビアホールの構造としては、断面積が同じなら、ある程度まではアスペクト比(深さ/径)の大きい(3程度)、すなわち断面積の小さい複数個のビアホールで構成する方が、比抵抗が低減するだけでなく、その分布が狭くなり信頼性が向上する。これは大電流で使用する場合に重要な構造といえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)はエッチング後の表面のパターン図、(b)は銅板を仮止めした状態のB−B矢視図、(c)はエッチング後のB−B矢視図である。
【図2】金属板接合セラミックス基板の縦断面模式図である。
【図3】ビアを有する銅板接合AlN基板の製造工程図である。
【図4】形成されたスルーホールパターンの例を示す図である。
【図5】ビアホール部の比抵抗のばらつきを示すグラフである。
【図6】銅板接合パターンを示す図である。
【図7】(a)はビアホール部の顕微鏡写真、(b)はその説明図である。
【図8】熱サイクル試験前のビア部比抵抗のばらつきを示すグラフである。
【図9】熱サイクル試験後のビア部比抵抗のばらつきを示すグラフである。
【図10】ビアホールのみの比抵抗(初期値)のばらつきを示すグラフである。
【図11】グリーンシートに形成されたスルーホールのパターンを示す基板の部分平面図である。
【図12】ビアホールの比抵抗のばらつきを示すグラフである。
【図13】グリーンシートに形成されたスルーホールのパターンを示す基板の部分平面図である。
【図14】ビアホールの比抵抗のばらつきを示すグラフである。
【図15】ビアホールの比抵抗のばらつきを示すグラフである。
【図16】ビアホールの抵抗値のばらつきを示すグラフである。
【符号の説明】
1 電子部品搭載側金属板
2 電子部品搭載側ろう材
3 セラミックス基板
4 放熱側ろう材
5 放熱側金属板
6 グリーンシート
7 基板
8 表面
9 裏面
11 銅板
12 ろう材
13 セラミックス基板
14 ビアホール
16 銅板
17 Ag層
18 ビアホール
19 AlN基板
21、22、23、24 スルーホール
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ビアを有する銅板接合AlN基板に関する。さらに詳しくは、大電流を使用する電子部品搭載用基板として用いられる、耐熱サイクル性に優れた銅板接合AlN基板のうち、特に基板の表裏面を有効に利用することができ、さらには積層構造を持たせることも可能とするビアホール構造を付加した銅板接合AlN基板に関する。
【0002】
【従来の技術】大電流を使用する電子部品搭載用基板として、セラミックス基板の両面にろう材を用いて金属板を接合した基板が用いられており、その典型的な例を図2に縦断面模式図で示す。図において、電子部品搭載側金属板1は、電子部品搭載側ろう材2を介して、セラミックス基板3に接合されており、放熱側金属板5は放熱側ろう材4を介して基板3に接合されている。このような金属板接合セラミックス基板は、積層構造とすることができないだけでなく、表裏面を有効に利用できないという欠点がある。また、外部配線が多くなりシステムとして小型化しにくく、設計上の制約も多い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の銅板接合基板にビアホールを持たせることによって、表裏面の導通を確保し、配線面、放熱面を有効に利用することを目的とする。本発明者らはビアホールの比抵抗値のばらつきを低減するために、材質、構造、製造工程について広範囲に検討し、実際の使用に耐え得る製品を得た。本発明はこのようなビアを有する銅板接合AlN基板を提供することで、上記従来技術の問題点を解決しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明では、上記課題を解決するために、一つあるいは複数個のビアホールをセラミックス基板に形成する技術と従来の銅板接合技術を組合せることを特徴とする、大電流を使用する電子部品搭載用基板を提供する。本発明は電子部品搭載あるいは電気配線のための銅板及び放熱用の銅板が、活性金属を含む合金のろう材を介してAlN焼結体の両面にそれぞれ接合されており、パターン化された両面の銅板の一部を電気的に接続したビアホールを得たことを特徴とするビアを有する銅板接合AlN基板である。この場合に、AlN焼結体が熱伝導率150W/mK以上、酸素含有量2重量%以下のAlN焼結体であり、ビアホールはAlN基板と銅板をろう付けする温度よりも高い温度で予め焼結され、良好な導電性を有する金属が、緻密に充填されているビアホールとすれば好適である。
【0005】また、ビアホールは、Cuを主成分とし、ケミカルボンドタイプあるいはガラスフリットボンドタイプで焼結温度が900〜1000℃の導電性焼結金属とし、ろう材はAg−Cu合金を主成分とし、活性金属としてTiを含み900℃以下で良好な接合状態が得られるろう材としてもよい。さらに、これらの場合にビアホールのアスペクト比(深さ/径)が、1以上で3以下とするのがよく、ビアホールのアスペクト比が1未満のときは、ビアホールの断面積の合計が一致する複数個の径の小さいビアホールとするのが好ましい。
【0006】
【作用】本発明は、Ag−Cu合金を主成分とし、活性金属としてTiを添加した従来のろう材を用いた銅板とAlNセラミックス基板の接合技術に、Cu導体を主成分としたガラスフリットタイプあるいはケミカルボンドタイプのペーストでスルーホール印刷し、接合温度より高い900〜1000℃に焼成しビアホールを形成する技術を組合せることを特徴とする。このような複合・多段階メタライズ技術により、従来の銅板接合基板の付加価値を向上させるものである。
【0007】スルーホール形成、ビアホール形成、パターン形成、銅板接合からなる本発明の実施例を製造する全工程を図3に示す。まずグリーンシートを成形し、これを適当な寸法に切断、打抜き基板の焼成を行う。次いでCuペーストをスルーホールに充填し、乾燥し、表面を平滑化して焼成する。この基板にろう材を印刷し、鋼板を仮止めする。次に真空焼成して接合しエッチング、めっき処理を行うことによって製造される。次に本発明のビアホールのアスペクト比(深さ/径)は1以上3以下であるとビアホールと銅板、ろう材、アルミナ基板の接合状態が良好で、熱サイクル経過前後の比抵抗のばらつきが少なく好適である。アスペクト比が1未満のときは、複数個の近接するビアホールの群に分割するとよい。
【0008】
【実施例】
実施例1平均粒径1.2μmのAlN粉末(酸素含有量0.65重量%、カーボン含有量0.02重量%)に、平均粒径0.5μmのY2 O3 を2.5重量%添加し、ポリビニルブチラール(PVB)と可塑材を適量加え、AlNスラリーとした。このスラリーより、ドクターブレード法にて厚さ約1mmのグリーンシートを成形し、さらにこれを65×65mm角に打抜き加工して、図4に示すグリーンシート6を得た。このグリーンシート6にドリリングマシンにより、焼き上がりの後の収縮を見込んで、0.36mmφのスルーホール21を形成した(図4(a))。窒素気流中で600℃の脱脂及び1900℃の焼成を行い、熱伝導率180W/mKのスルーホール基板7(図4(b))を得た。
【0009】焼結後0.3mmφに収縮したスルーホール21aに、スルーホール径の20%増のランド径を有するスクリーンマスクにより、ガラスフリットタイプ、固形分80〜90%Cuペーストを充填した。30分のレベリング後、大気中200℃で乾燥(イン・アウトで30分)し、ランド部分を研削して基板表面を平滑にした。引き続き、窒素気流中900℃(イン・アウトで80分)でCuペーストを焼成し、ビアホールとした。この時の、ビア部の比抵抗のばらつきを図5に示す。
【0010】続いて、Ag−Cu(+Ti)ろう材を図6(a)(表面)、図6(b)(裏面)に示すパターンで、ビアホール基板の表面8及び裏面9に、膜厚25〜30μmで印刷し、30分のレベリング後Cuペーストと同じ条件で乾燥した。両面に厚さ150μm、55mm□の銅板を接着剤で仮止めした。この状態で適当な荷重をかけて固定した後、真空中(10-6Torr)、850℃で40分焼成し、接合体とした。接合後のビアホール部を含む破断面の顕微鏡写真を図7(a)に示す。図7(b)はその説明図であって、AlN基板19を貫通しCuが充填されたビアホール部18の一部へ銅板16を接合しているAg層17が拡散している状態が観察される。接合後図6(a)、図6(b)に示したパターンのみ残し、エッチングにより余分な銅板を取り除いた。
【0011】図1はこれを模式的に示したもので、ビアホール14を設けた基板13の表面8及び裏面9にろう材12を介して銅板11を形成し(図1(b))、エッチングにより余分の銅板を取り除いた(図1(c))状態を示している。この時のビア部の比抵抗(ろう材、銅板こみの全抵抗を比抵抗に換算)のばらつき、および熱サイクル試験(−50℃〜150℃、200回)後の比抵抗(ろう材、鋼板こみ)のばらつきを図8、図9に示す。また、ビアホールのみ(ろう材と銅板を除去)の比抵抗(初期値)のばらつきを図10に示す。熱サイクル試験の前後で比抵抗のばらつきに変化のないことが分かる。このことから、銅板、ろう材、AlN基板、及びビアホールの接合状態が良好であるといえる。
【0012】実施例2実施例1と同様にAlNグリーンシートを用意した。0.36mmφのスルーホール21が5個からなる1集団を、図11に示すようなパターンで形成した。この1集団は、破線で示した0.8mmφのスルーホール22を1個形成したのと同じ断面積に相当する。以下実施例1と同様に銅板を接合し、ビアの抵抗のばらつきを測定した。結果を図12に示す(ビアホール1集団は、5個の小さなビアホールで構成されている。)実施例1と同じく、比抵抗のばらつきの小さい良好な結果が得られた。また、図11に破線で示す0.8mmφのスルーホール22の1個からなるビアホールを、図11に実線で示すスルーホール21の5個の代りに、図11と同じパターンで形成した。鋼板接合後のビア部の比抵抗のばらつきは図15のようになり、同じ断面積を有する分割したビアホールの場合に比べると、比抵抗値の分布が広がっている。これはビアホールの充填密度(焼結密度)の低下(ばらつき)が原因と考えられる。
【0013】実施例3実施例1と同様にAlNグリーンシートを用意した。0.36mmφのスルーホール23が10個からなる1集団を、図13に示すようなパターンで形成した。これは図13に破線で示した1.14mmφのスルーホール24が1個分の断面積に相当する。実施例1と同様に銅板を接合し、ビア部の抵抗のばらつきを測定した。結果を図14に示す(ビアホール1集団は、10個の小さなビアホールで構成されている)。実施例1と同じく、比抵抗値のばらつきの小さい良好な結果が得られた。次に図13に破線で示す1.14mmφのスルーホール24の1個からなるビアホールを、図13に実線で示すスルーホール23の10個に代って、図13と同じパターンで形成した。銅板接合後のビア部の比抵抗のばらつきは図16のようになり、同じ断面積を有する分割されたビアホールのものと比べ高抵抗化しており、比抵抗値の分布が広がっている。
【0014】
【発明の効果】以上述べたように本発明によると、従来の銅板接合基板にビアホールを付加することによって、接合基板の表裏面を有効に利用することができ、設計上の制約が緩和され、積層構造を持たせることも可能となる。さらに、ビアホールをCuペースト充填法によって形成することによって、導電性に優れるだけでなく、ろう材からのAgの拡散により、ろう材との密着力が強固となり、耐熱サイクル等の信頼性も向上する。また、ビアホールの構造としては、断面積が同じなら、ある程度まではアスペクト比(深さ/径)の大きい(3程度)、すなわち断面積の小さい複数個のビアホールで構成する方が、比抵抗が低減するだけでなく、その分布が狭くなり信頼性が向上する。これは大電流で使用する場合に重要な構造といえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)はエッチング後の表面のパターン図、(b)は銅板を仮止めした状態のB−B矢視図、(c)はエッチング後のB−B矢視図である。
【図2】金属板接合セラミックス基板の縦断面模式図である。
【図3】ビアを有する銅板接合AlN基板の製造工程図である。
【図4】形成されたスルーホールパターンの例を示す図である。
【図5】ビアホール部の比抵抗のばらつきを示すグラフである。
【図6】銅板接合パターンを示す図である。
【図7】(a)はビアホール部の顕微鏡写真、(b)はその説明図である。
【図8】熱サイクル試験前のビア部比抵抗のばらつきを示すグラフである。
【図9】熱サイクル試験後のビア部比抵抗のばらつきを示すグラフである。
【図10】ビアホールのみの比抵抗(初期値)のばらつきを示すグラフである。
【図11】グリーンシートに形成されたスルーホールのパターンを示す基板の部分平面図である。
【図12】ビアホールの比抵抗のばらつきを示すグラフである。
【図13】グリーンシートに形成されたスルーホールのパターンを示す基板の部分平面図である。
【図14】ビアホールの比抵抗のばらつきを示すグラフである。
【図15】ビアホールの比抵抗のばらつきを示すグラフである。
【図16】ビアホールの抵抗値のばらつきを示すグラフである。
【符号の説明】
1 電子部品搭載側金属板
2 電子部品搭載側ろう材
3 セラミックス基板
4 放熱側ろう材
5 放熱側金属板
6 グリーンシート
7 基板
8 表面
9 裏面
11 銅板
12 ろう材
13 セラミックス基板
14 ビアホール
16 銅板
17 Ag層
18 ビアホール
19 AlN基板
21、22、23、24 スルーホール
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電子部品搭載あるいは電気配線のための銅板及び放熱用の銅板が、活性金属を含む合金のろう材を介してAlN焼結体の両面にそれぞれ接合されており、パターン化された両面の銅板の一部を電気的に接続したビアホールを備えたことを特徴とするビアを有する銅板接合AlN基板。
【請求項2】 AlN焼結体が熱伝導率150W/mK以上、酸素含有量2重量%以下のAlN焼結体であり、ビアホールはAlN基板と銅板をろう付けする温度よりも高い温度で予め焼結され、良好な導電性を有する金属が、緻密に充填されているビアホールであることを特徴とする請求項1記載のビアを有する銅板接合AlN基板。
【請求項3】 ビアホールは、Cuを主成分とし、ケミカルボンドタイプあるいはガラスフリットボンドタイプで焼結温度が900〜1000℃の導電性焼結金属であり、ろう材はAg−Cu合金を主成分とし、活性金属としてTiを含み900℃以下で良好な接合状態が得られるろう材であることを特徴とする請求項1記載のビアを有する銅板接合AlN基板。
【請求項4】 ビアホールのアスペクト比(深さ/径)が、1以上3以下である請求項1〜3のいずれかに記載のビアを有する銅板接合AlN基板。
【請求項5】 アスペクト比が1未満のビアホールを断面積の合計が一致する複数個の径の小さいビアホールに分割したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のビアを有する銅板接合AlN基板。
【請求項1】 電子部品搭載あるいは電気配線のための銅板及び放熱用の銅板が、活性金属を含む合金のろう材を介してAlN焼結体の両面にそれぞれ接合されており、パターン化された両面の銅板の一部を電気的に接続したビアホールを備えたことを特徴とするビアを有する銅板接合AlN基板。
【請求項2】 AlN焼結体が熱伝導率150W/mK以上、酸素含有量2重量%以下のAlN焼結体であり、ビアホールはAlN基板と銅板をろう付けする温度よりも高い温度で予め焼結され、良好な導電性を有する金属が、緻密に充填されているビアホールであることを特徴とする請求項1記載のビアを有する銅板接合AlN基板。
【請求項3】 ビアホールは、Cuを主成分とし、ケミカルボンドタイプあるいはガラスフリットボンドタイプで焼結温度が900〜1000℃の導電性焼結金属であり、ろう材はAg−Cu合金を主成分とし、活性金属としてTiを含み900℃以下で良好な接合状態が得られるろう材であることを特徴とする請求項1記載のビアを有する銅板接合AlN基板。
【請求項4】 ビアホールのアスペクト比(深さ/径)が、1以上3以下である請求項1〜3のいずれかに記載のビアを有する銅板接合AlN基板。
【請求項5】 アスペクト比が1未満のビアホールを断面積の合計が一致する複数個の径の小さいビアホールに分割したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のビアを有する銅板接合AlN基板。
【図2】
【図5】
【図1】
【図3】
【図4】
【図6】
【図8】
【図9】
【図11】
【図13】
【図7】
【図10】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図5】
【図1】
【図3】
【図4】
【図6】
【図8】
【図9】
【図11】
【図13】
【図7】
【図10】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開平5−105528
【公開日】平成5年(1993)4月27日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−296665
【出願日】平成3年(1991)10月17日
【出願人】(000001258)川崎製鉄株式会社 (8,589)
【公開日】平成5年(1993)4月27日
【国際特許分類】
【出願日】平成3年(1991)10月17日
【出願人】(000001258)川崎製鉄株式会社 (8,589)
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