説明

ビスアゾ顔料、ビスアゾ顔料を有する電子写真感光体、並びに電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】優れた光導電性を有するビスアゾ顔料、及びこのビスアゾ顔料を有し、高感度でかつ耐久電位変動が小さい電子写真感光体を提供する。また、この電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供する。
【解決手段】下記式(1)


(式(1)中、Cp及びCpは、それぞれ独立にカプラー残基を表す。)で示される構造を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なビスアゾ顔料に係り、詳しくはこのビスアゾ顔料を含有する電子写真感光体、この電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真感光体には、セレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛等の無機光導電性物質が広く用いられてきたが、近年、成膜性が良く、塗工によって生産できる点で、有機光導電性物質を用いた電子写真感光体が普及している。この有機光導電性物質を用いた電子写真感光体は、極めて生産性が高く安価に製造できるという利点を有する。また、この有機光導電性物質を用いた電子写真感光体は、使用する染料や顔料などの選択により、感色性を自在にコントロールできる等の利点を有し、これまで幅広い検討がなされてきた。近年では、有機光導電性染料や顔料を含有した電荷発生層と、光導電性ポリマーや低分子の有機光導電性物質を含有した電荷輸送層とを積層した機能分離型感光体の開発されている。この機能分離型の感光体は、従来の有機電子写真感光体の欠点とされていた感度や耐久性に著しい改善がなされてきた。
【0003】
なかでも、アゾ顔料は、優れた光導電性を示し、しかもアミン成分とカプラー成分との組み合わせによって、様々な特性を持った化合物が容易に得られることから、これまで数多くの化合物が提案されている(特許文献1)。しかしながら、これらのアゾ顔料を有する電子写真感光体は、必ずしも感度及び耐久電位変動に関して十分に満足できる性能を有していなかった。従って、高感度でかつ耐久電位変動が小さい電子写真感光体を用いることが求められていた。
【特許文献1】特開昭63−061258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の従来の問題に鑑みてなされたものであり、優れた光導電性を有するビスアゾ顔料、及びこのビスアゾ顔料を有し、高感度でかつ耐久電位変動が小さい電子写真感光体を提供する。また、この電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく様々なアミン成分の分子構造を設計、合成及び評価の検討をした結果、全く新規なビスアゾ顔料を見出した。さらに、この新規なビスアゾ顔料を感光層に用いた電子写真感光体において、高感度でかつ耐久電位変動が小さいことを見出し、上記課題を解決することができた。
【0006】
つまり、本発明によるビスアゾ顔料は、
下記式(1)
【0007】
【化11】

【0008】
(式(1)中、Cp及びCpは、それぞれ独立にカプラー残基を表す。)
で示される構造を有することを特徴とする。
【0009】
本発明による電子写真感光体は、
支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該感光層は、下記式(1)
【0010】
【化12】

【0011】
(式(1)中、Cp及びCpは、それぞれ独立にカプラー残基を表す。)
で示される構造を有するビスアゾ顔料を含有することを特徴とする。
【0012】
本発明によるプロセスカートリッジは、上述の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、及びクリーニング手段からなる群より選ばれる1つ以上の手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に脱着自在であることを特徴とする。
【0013】
本発明による電子写真装置は、上述の電子写真感光体と、帯電手段、イメージ露光手段、現像手段、及び転写手段とを装着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特定構造のビスアゾ顔料を感光層に用いることにより、高感度でかつ耐久電位の変動を小さくすることができる。特に、特定の波長の範囲の短波長半導体レーザーの光源やハロゲンランプ等の白色光源に対し高い分光感度を有し、耐久を通じて電位変動が小さく、安定した高解像度な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態につき説明する。
【0016】
<本発明によるビスアゾ顔料>
本発明によるビスアゾ顔料は、下記式(1)で示される構造を有する。
【0017】
【化13】

【0018】
式(1)中、Cp及びCpは、それぞれ独立にカプラー残基を表す。Cp及びCpのカプラー残基は、特に限定されないが、下記式(2)、下記式(3)、下記式(4)又は下記式(5)で示されるカプラー残基のいずれかであることが好ましく、さらに下記式(3)又は下記式(5)で示されるカプラー残基がより好ましい。
【0019】
【化14】

【0020】
式(2)中、Xは、ベンゼン環と縮合して、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素環又は置換若しくは無置換の芳香族複素環を形成するのに必要な残基を表す。ベンゼン環と縮合した置換若しくは無置換の芳香族炭化水素環又は置換若しくは無置換の芳香族複素環としては、下記の環が挙げられる。
【0021】
ナフタレン環、アントラセン環、カルバゾール環、ベンゾカルバゾール環、ジベンゾフラン環、ベンゾナフトフラン環、フルオレノン環
【0022】
Xに係る置換基としては、メチル、エチルのようなアルキル基、メトキシ、エトキシのようなアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のようなハロゲン原子、トリフルオロメチルのようなハロメチル基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。
【0023】
式(2)中のR及びRは、独立して、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基又は置換若しくは無置換の複素環基を表す。また、RとRとは、式(2)中の窒素原子を介して環状アミノ基を形成してもよい。Zは、酸素原子又は硫黄原子を表し、mは、0又は1を表す。
【0024】
及びRのアルキル基としては、メチル、エチル及びプロピルのような基が挙げられ、アリール基としては、フェニル、ナフチル及びアンスリルのような基が挙げられる。また、R及びRの複素環基としては、ピリジル、チエニル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾリル及びベンゾチアゾリルのような基が挙げられる。また、RとRとで形成される、窒素原子を環内に含む環状アミノ基としては、ピロール、ピロリン、ピロリジン、ピロリドン、インドール、インドリン、カルバゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラゾリン、オキサジン及びフェノキサジンが挙げられる。
【0025】
これらの基が有してもよい置換基としては、下記のものが挙げられる。
【0026】
メチル、エチル、プロピル及びブチルのようなアルキル基
メトキシ、エトキシ及びプロポキシのようなアルコキシ基
フッ素原子、塩素原子及び臭素原子のようなハロゲン原子
ジメチルアミノ及びジエチルアミノのようなジアルキルアミノ基
フェニルカルバモイル基
ニトロ基
シアノ基
トリフルオロメチルのようなハロメチル基
【0027】
なお、このフェニルカルバモイル基のフェニル基は、上述のような置換基をさらに有してもよい。
【0028】
【化15】

【0029】
式(3)中、Yは、置換若しくは無置換の2価の芳香族炭化水素環基又は置換若しくは無置換の2価の含窒素複素環基を表す。
【0030】
Yに係る2価の芳香族炭化水素環基及び含窒素複素環基としては、下記の2価の基が挙げられる。
【0031】
o−フェニレン、o−ナフチレン、ペリナフチレン、1,2−アンスリル、3,4−ピラゾールジイル、2,3−ピリジンジイル、4,5−ピリジンジイル、6,7−イミダゾールジイル及び6,7−キノリンジイル
【0032】
Yが有してもよい置換基としては、下記のものが挙げられる。
【0033】
メチル、エチル、プロピル及びブチルのようなアルキル基
メトキシ、エトキシ及びプロポキシのようなアルコキシ基
フッ素原子、塩素原子及び臭素原子のようなハロゲン原子
ジメチルアミノ及びジエチルアミノのようなジアルキルアミノ基
水酸基
ニトロ基
シアノ基
ハロメチル基
【0034】
なかでも、Yは、無置換のo−フェニレンであることが好ましい。
【0035】
【化16】

【0036】
式(4)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はニトロ基を表す。また、Rは、置換若しくは無置換のアルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。また、Rは、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基を表す。lは、0以上2以下の整数を表し、lが2であるとき、Rは、相異なる基であってもよい。
【0037】
、R及びRのハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキル基、アリール基及びアルコキシ基としては、下記の置換基が挙げられる。
【0038】
塩素及び臭素のようなハロゲン原子
メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基のようなアルコキシカルボニル基
カルバモイル基及びフェニルカルバモイル基のようなカルバモイル基
メチル基、エチル基及びプロピル基のようなアルキル基
フェニル基、ナフチル基及びアンスリル基のようなアリール基
メトキシ基及びエトキシ基のようなアルコキシ基
【0039】
これらの基が有してもよい置換基としては、下記のものが挙げられる。
【0040】
メチル、エチル、プロピル及びブチルのようなアルキル基
メトキシ、エトキシ及びプロポキシのようなアルコキシ基
フッ素原子、塩素原子及び臭素原子のようなハロゲン原子
ジメチルアミノ及びジエチルアミノのようなジアルキルアミノ基
水酸基
ニトロ基
シアノ基
ハロメチル基
【0041】
【化17】

【0042】
式(5)中、R及びRは、独立して、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基又は置換若しくは無置換の複素環基を表す。また、RとRとは、式(5)中の窒素原子を介して環状アミノ基を形成してもよい。また、Zは、酸素原子又は硫黄原子を表し、mは、0又は1を表す。
【0043】
及びRのアルキル基、アリール基、複素環基、及び窒素原子を環内に含む環状アミノ基としては、下記のものが挙げられる。
【0044】
メチル、エチル及びプロピルのようなアルキル基
フェニル、ナフチル及びアンスリルのようなアリール基
ピリジル、チエニル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾリル及びベンゾチアゾリルのような複素環基
ピロール、ピロリン、ピロリジン、ピロリドン、インドール、インドリン、カルバゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラゾリン、オキサジン及びフェノキサジンのような窒素原子を環内に含む環状アミノ基
【0045】
これらの基が有してもよい置換基としては、下記のものが挙げられる。
【0046】
メチル、エチル、プロピル及びブチルのようなアルキル基
メトキシ、エトキシ及びプロポキシのようなアルコキシ基
フッ素原子、塩素原子及び臭素原子のようなハロゲン原子
ジメチルアミノ及びジエチルアミノのようなジアルキルアミノ基
水酸基
ニトロ基
シアノ基
アセチル基
フェニルカルバモイル基
ハロメチル基
ハロメトキシ基
【0047】
式(5)において、Rが水素原子であり、Rが置換又は無置換のフェニル基であり、且つZが酸素原子であることが好ましい。
【0048】
このフェニル基の置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アセチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基及びフェニルカルバモイル基が挙げられる。なお、このフェニルカルバモイル基のフェニル基は、上述のような置換基を更に有していてもよい。
【0049】
さらに、式(5)において、mは、1であることがより好ましい。
【0050】
本発明によるビスアゾ顔料の結晶形は、結晶質であっても非晶質であってもよい。
【0051】
本発明によるビスアゾ顔料の好ましい化合物例を表1〜表6(例示化合物1−1〜4−5)に列挙するが、これらに限定されるものではない。本発明によるビスアゾ顔料に関する構造式を、表のように、式(1)をアゾ基の置換位置により、下記基本型I、基本型II及び基本型IIIに分類した。また、これらの各基本型に対して、Cp及びCpに相当する部分のみを記載した。
【0052】
【化18】

【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

【0058】
【表6】

【0059】
<本発明による電子写真感光体>
次に、本発明の電子写真感光体について説明する。
【0060】
図1、図2及び図3は、本発明を適用できる電子写真感光体の層構成の例を示す断面図である。本発明による電子写真感光体の層構成は、これらの図に示すように、公知の層構成を採用し得る。これらのなかでも、図1で示すように、支持体a上に、電荷発生材料eを有する電荷発生層c、及び電荷輸送材料を有する電荷輸送層dの順で積層された、いわゆる機能分離型の有機感光体であることが好ましい。なお、これらの図において、aは、支持体を示し、bは、感光層を示し、cは、電荷発生層を示し、dは、電荷輸送層を示し、eは、電荷発生材料を示す。
【0061】
以下に、本発明による電子写真感光体のうち、支持体上に電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に積層した機能分離型の有機感光体について、その作製方法を説明する。
【0062】
支持体の材質としては、無機系、有機系を問わず、導電性を有するものであればよい。例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス、バナジウム、モリブデン、クロム、チタン、ニッケル、インジウム、金及び白金が挙げられる。また、これらの金属又は合金を真空蒸着法によって被膜形成したプラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート及びアクリル樹脂など)であってもよい。また、導電性粒子(例えば、カーボンブラック及び銀粒子など)を適当な結着樹脂と共に上記プラスチック、金属又は合金上に被覆したものであってもよい。また、導電性粒子をプラスチックや紙に含浸させた支持体であってもよい。
【0063】
支持体上には、支持体のムラ、欠陥の被覆、及び/又は干渉縞防止を目的とした導電層を設けてもよい。
【0064】
導電層は、カーボンブラック、金属粒子及び金属酸化物などの導電性粉体を、結着樹脂中に分散したものを支持体上に塗布して、形成することができる。導電層の膜厚は、1〜40μmであることが好ましく、特には1〜30μmであることがより好ましい。
【0065】
また、アルミニウム又はアルミニウム合金などの支持体表面は、ホーニング加工、又はセンターレス研削若しくは切削などの粗面化処理されてもよい。さらに、これら粗面化処理により支持体表面を適当な粗さに設計することができ、干渉縞対策を実施できる。支持体表面の十点平均粗さRzjisは、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上が特に好ましい。
【0066】
十点平均粗さRzjisの測定は、JIS B0601(2001)に基づき、サーフコーダーSE−3500(小坂研究所製)にて、カットオフを0.8mm、測定長さを8mmとして行うものであってもよい。
【0067】
支持体又は導電層上には、バリア機能と接着機能とを持つ中間層を設けてもよい。
【0068】
中間層の材料としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、ポリアミド、にかわ及びゼラチンが挙げられる。中間層は、これらの材料を適当な溶剤に溶解して支持体上に塗布して形成される。中間層の膜厚は、0.2〜3.0μmであることが好ましい。
【0069】
本発明による電子写真感光体において、支持体、導電層又は中間層上には、電荷発生層が設けられる。
【0070】
電荷発生層は、電荷発生材料を適当な溶剤中で結着樹脂と共に分散した液を、支持体、導電層又は中間層上に公知の方法によって塗布し、乾燥することによって形成される。
【0071】
電荷発生材料としては、上述の<本発明によるビスアゾ顔料>で説明した全ての化合物が挙げられる。電荷発生材料として、上述のビスアゾ顔料を2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0072】
さらに必要に応じて、下記の電荷発生材料と組み合わせて使用してもよい。
【0073】
ピリリウム系染料
チアピリリウム系染料
アズレニウム系染料
チアシアニン系染料及びキノシアニン系染料のようなカチオン染料
スクエアリウム塩系染料
アントアントロン系顔料
ジベンズピレンキノン系顔料及びピラントロン系顔料のような多環キノン顔料
インジゴ顔料
キナクリドン顔料
ペリレン系顔料
フタロシアニン系顔料
【0074】
電荷発生層を形成するための結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂又は有機光導電性ポリマーが挙げられる。なかでも、例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルベンザール、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、フェノキシ樹脂、セルロース系樹脂、アクリル樹脂及びポリウレタンが好ましい。また、これら2つ以上の共重合体等が好ましい。これらの樹脂は、置換基を有してもよく、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及びトリフルオロメチル基が好ましい。また、結着樹脂の使用量は、電荷発生層の全質量に対して、80質量%以下であることが好ましく、さらには60質量%以下であることがより好ましい。
【0075】
電荷発生層は、電荷発生材料を結着樹脂及び溶剤と共に分散して得られる電荷発生層用塗布液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。分散方法としては、ホモジナイザー、超音波、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルなどを用いた方法が挙げられる。電荷発生材料と結着樹脂との割合は、10:1〜1:4(質量比)の範囲が好ましい。
【0076】
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤は、使用する結着樹脂や電荷発生材料の溶解性や分散安定性を考慮して選択してもよい。なかでも、例えば、下記のものが挙げられる。
【0077】
テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンのようなエーテル
シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、ペンタノンのようなケトン
N,N−ジメチルホルムアミドのようなアミン
酢酸メチル、酢酸エチルのようなエステル
トルエン、キシレン、クロロベンゼンのような芳香族
メタノール、エタノール、2−プロパノールのようなアルコール
クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエチレン、四塩化炭素、トリクロロエチレンのような脂肪族ハロゲン化炭化水素
【0078】
電荷発生層用塗布液を塗布する際には、例えば、浸漬塗布法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法のような塗布方法を用いることができる。
【0079】
また、電荷発生層の膜厚は、5μm以下であることが好ましく、特には、0.1〜2μmであることがより好ましい。
【0080】
また、電荷発生層には、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、増粘剤などを必要に応じて添加することもできる。
【0081】
本発明による電子写真感光体において、電荷発生層上には、電荷輸送層が設けられる。
【0082】
電荷輸送層は、電界の存在下にて電荷発生層から電荷キャリアを受け取り、これを輸送する機能を有する。電荷輸送層は、電荷輸送材料を必要に応じて適当な結着樹脂と共に溶剤中に溶解した塗布液を塗布することによって形成される。電荷輸送層の膜厚は、3〜40μmであることが好ましく、さらに4〜30μmであることがより好ましい。
【0083】
本発明による電子写真感光体において、電荷輸送層を形成する電荷輸送材料としては、本技術分野公知の種々の材料を用いることができ、電荷輸送材料には、電子輸送材料と正孔輸送材料とがある。
【0084】
電子輸送材料としては、例えば、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、クロラニル及びテトラシアノキノジメタンのような電子吸引性材料やこれらの電子吸引性材料を高分子化したものが挙げられる。
【0085】
正孔輸送材料としては、例えば、下記のものが挙げられる。
【0086】
ピレン及びアントラセンのような多環芳香族化合物
カルバゾール系、インドール系、オキサゾール系、チアゾール系、オキサジアゾール系、ピラゾール系、ピラゾリン系、チアジアゾール系及びトリアゾール系化合物のような複素環化合物
ヒドラゾン系化合物
スチリル系化合物
ベンジジン系化合物
トリアリールメタン系化合物
フェニレンジアミン系化合物
ビスシクロヘキシルアミン系化合物
トリフェニルアミン系化合物
【0087】
本発明による電子写真感光体において、電荷輸送層を形成するこれらの電荷輸送材料は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。電荷輸送材料が成膜性を有していない場合には、適当な結着樹脂を用いることができる。
【0088】
電荷輸送層の結着樹脂としては、アクリル樹脂、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアミド、塩素化ゴムのような絶縁性樹脂が挙げられる。また、電荷輸送層の結着樹脂としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びポリビニルアントラセンのような有機光導電性ポリマーが挙げられる。これらは単独、混合又は共重合体として1種又は2種以上用いることができる。
【0089】
また、上記電荷輸送材料から誘導される基を主鎖又は側鎖に有する高分子(例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン)のような電荷輸送材料の機能と結着樹脂の機能とを兼ね備えた光導電性樹脂を用いてもよい。
【0090】
上述したように、本発明による電子写真感光体において、図1に示すように、感光層は、支持体側から電荷発生層及び電荷輸送層をこの順に積層した層構成を有してもよい。この場合、電荷輸送層に用いる電荷輸送材料としては、使用するイメージ露光光源に対して透過性が高い電荷輸送材料や結着樹脂を選択する必要がある。
【0091】
電荷輸送層用塗布液に用いる溶剤としては、下記のものが挙げられる。
【0092】
アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン
テトラヒドロフラン、ジメトキシメタンのようなエーテル
酢酸メチル、酢酸エチルのようなエステル
トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素
メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンのようなアルキルシクロヘキサン
クロロベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素のようなハロゲン原子で置換された炭化水素
【0093】
電荷輸送層用塗布液を塗布する際には、例えば、浸漬塗布法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法のような塗布方法を用いることができる。
【0094】
また、電荷輸送層には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、フィラーのような添加剤必要に応じて添加することもできる。
【0095】
また、感光層が図3に示すような単層型である場合、単層型の感光層は、上記電荷発生材料及び上記電荷輸送材料を上記結着樹脂及び上記溶剤と共に分散して得られる単層型感光層用塗布液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。
【0096】
本発明による電子写真感光体において、感光層上には、感光層を機械的外力や化学的外力などから保護することを目的として、また、転写性やクリーニング性の向上を目的として、保護層を設けてもよい。
【0097】
保護層は、下記で例示される種々の樹脂有機溶剤によって溶解して得られる保護層用塗布液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。
【0098】
ポリビニルブチラール
ポリエステル
ポリカーボネート
ポリアミド
ポリイミド
ポリアリレート
ポリウレタン
スチレン−ブタジエンコポリマー
スチレン−アクリル酸コポリマー
スチレン−アクリロニトリルコポリマー
【0099】
また、保護層に電荷輸送能を併せ持たせるために、電荷輸送能を有するモノマー材料や高分子型の電荷輸送材料を種々の架橋反応を用いて硬化させることによって保護層を形成してもよい。硬化させる反応としては、ラジカル重合、イオン重合、熱重合、光重合、放射線重合(電子線重合)、プラズマCVD法、光CVD法などが挙げられる。
【0100】
さらに、保護層中に導電性粒子や紫外線吸収剤、及び耐摩耗性改良剤のような特定の機能を有する材料を含ませてもよい。導電性粒子としては、例えば、酸化錫粒子などの金属酸化物が好ましい。耐摩耗性改良剤としては、フッ素系樹脂微粉末、アルミナ、シリカが好ましい。
【0101】
保護層の膜厚は、0.5〜20μmであることが好ましく、特には1〜10μmであることが好ましい。
【0102】
本発明による電子写真感光体において、用語「表面層」とは、電子写真感光体の表面を構成する層を総称するものであって、図1では、電荷輸送層dに相当し、図2では、電荷発生層cに相当し、図3では、感光層bに相当する。また、本発明による電子写真感光体において、上述の保護層を設けた場合、「表面層」は、保護層である。
【0103】
<本発明によるプロセスカートリッジ及び電子写真装置>
次に、本発明による電子写真感光体を有する電子写真装置の概略断面図の一例を図4に示す。この電子写真装置としては、電子写真方式を採用した、複写機、プリンター、ファクシミリ、製版システムなどの画像形成装置(電子写真装置)が挙げられる。
【0104】
図4に示すフルカラー用の電子写真装置は、上部にデジタルフルカラー画像リーダー部と、下部にデジタルフルカラー画像プリンター部とを有する。
【0105】
リーダー部において、原稿30を原稿台ガラス31上に載せ、露光ランプ32により露光走査することにより、原稿30からの反射光像を、レンズ33によりフルカラーセンサー34に集光し、フルカラー色分解画像信号を得る。フルカラー色分解画像信号は、増幅回路(図示せず)を経て、ビデオ処理ユニット(図示せず)にて処理を施され、プリンター部に送出される。
【0106】
プリンター部において、1は、電子写真感光体であり、この電子写真感光体の周囲に、以下の部材が矢印方向に回転自在に担持されている。
【0107】
前露光ランプ11(除電手段)
コロナ帯電器2(帯電手段)
レーザー露光光学系3(露光手段)
電位センサー12
色の異なる4個の現像器4y、4c、4m、4Bk(現像手段)
電子写真感光体上の光量検知手段13
転写手段5
クリーニング器6(クリーニング手段)
【0108】
レーザー露光光学系3には、半導体レーザーが搭載されている。半導体レーザーの発振波長としては、高解像度な画像出力が可能なレーザースポット径の小径化と感光体の分光感度域との観点から、380nm以上550nm以下であることが好ましい。また、レーザー露光出力に関しては、1mW以上が好ましく、3mW以上がより好ましく、5mW以上が特に好ましい。
【0109】
レーザー露光光学系3において、リーダー部からの画像信号は、レーザー出力部(図示せず)にてイメージスキャン露光の光信号に変換される。この変換されたレーザー光は、ポリゴンミラー3aで反射され、レンズ3b及びミラー3cを通って、電子写真感光体1の面に投影される。書き込みピッチは、400〜2400dpi程度、ビームスポット径は、15〜40μm程度である。
【0110】
プリンター部画像形成時には、電子写真感光体1を矢印方向に回転させ、前露光ランプ11で除電した後の電子写真感光体1をコロナ帯電器2によりマイナスに一様に帯電させて、各分解色ごとに光像Eを照射し、静電潜像を形成する。
【0111】
次に、所定の現像器を動作させて、電子写真感光体1上の静電潜像を現像し、電子写真感光体1上に樹脂を基体とした一成分トナー又は二成分現像剤(何れもネガトナー)による現像像を形成する。現像器は、偏心カム24y、24c、24m、24Bkの動作により、各分解色に応じて択一的に電子写真感光体1に接近するようにしている。
【0112】
さらに、電子写真感光体1上の現像像を、転写材である紙が収められた転写材カセット7より搬送系及び転写手段5を介して電子写真感光体1と対向した位置に供給された紙(転写材)に転写する。転写手段5は、本例では、転写ドラム5a、転写帯電器5b、紙(転写材)を静電吸着させるための吸着帯電器5cと対向する吸着ローラー5g、内側帯電器5d、及び外側帯電器5eを有する。また、回転駆動されるように軸支された転写ドラム5aの周面開口域には、誘電体からなる転写材担持シート5fを円筒状に一体的に張設している。転写材担持シート5fは、ポリカーボネートフィルムなどの誘電体シートを使用している。
【0113】
転写ドラム5aを回転させるにしたがって、電子写真感光体上の現像像は、転写帯電器5bにより転写材担持シート5fに担持された紙(転写材)上に転写する。
【0114】
このように転写材担持シート5fに吸着搬送される紙(転写材)には、所望数の色画像が転写され、フルカラー画像を形成する。
【0115】
フルカラー画像を形成する場合、このようにして4色の現像像の転写が終了すると、紙(転写材)を転写ドラム5aから分離爪8a、分離押し上げコロ8b及び分離帯電器5hの作用によって分離し、熱ローラー定着器9を介してトレイ10に排紙する。
【0116】
一方、転写後の電子写真感光体1は、表面の残留トナーをクリーニング器6で清掃した後、再度画像形成工程に供される。
【0117】
紙(転写材)の両面に画像を形成する場合には、まず、熱ローラー定着器9を排出後、すぐに搬送パス切替ガイド19を駆動し、搬送縦パス20を経て、反転パス21aに一旦導く。その後、反転ローラー21bの逆転により、送り込まれた際の後端を先頭にして送り込まれた方向と反対向きに退出させ、中間トレイ22に収納する。その後、再び上述した画像形成工程によって、もう一方の面に画像を形成する。
【0118】
また、転写ドラム5aの転写材担持シート5f上の粉体の飛散付着、紙(転写材)上のオイルの付着などを防止するために、バックアップブラシ15及びバックアップブラシ17により、清掃を行う。つまり、バックアップブラシ15を用いて清掃を行う場合には、ファーブラシ14と転写材担持シート5fとを介してファーブラシ14に対向して配置されたバックアップブラシ15を作用させる。また、バックアップブラシ17を用いて清掃を行う場合には、オイル除去ローラー16と転写材担持シート5fとを介してオイル除去ローラー16に対向して配置されたバックアップブラシ17を作用させる。このような清掃は、画像形成前又は画像形成後に行い、また、ジャム(紙詰まり)発生時には、随時行う。
【0119】
また、本例においては、所望のタイミングで偏心カム25を動作させ、転写ドラム5aと一体化しているカムフォロワ5iを作動させることにより、転写材担持シート5fと電子写真感光体1とのギャップを任意に設定可能な構成としている。例えば、スタンバイ中又は電源オフ時には、転写ドラムと電子写真感光体との間隔を離す。
【0120】
次に、本発明による電子写真感光体を有するプロセスカートリッジについて説明する。図5は、本発明を適用できるプロセスカートリッジを具備する電子写真装置の概略断面図である。
【0121】
図5に示す電子写真装置では、少なくとも電子写真感光体1、コロナ帯電器2及び現像手段4を容器35に納めてプロセスカートリッジとし、そのプロセスカートリッジを装置本体のレールなどの案内手段34iを用いて着脱自在に構成している。クリーニング器6は、容器35内に配置しても配置しなくてもよい。
【0122】
また、図6及び図7に示すように、帯電手段として接触帯電手段2aを用い、電圧印加された接触帯電手段2aを電子写真感光体1に接触させることにより電子写真感光体1の帯電を行ってもよい(この帯電方法を、以下、接触帯電という)。図6及び図7に示す装置では、電子写真感光体1上のトナー像も、接触転写手段5jで転写材7aに転写される。即ち、電圧印加された接触転写手段5jを転写材7aに接触させることにより、電子写真感光体1上のトナー像を転写材7aに転写させる。
【0123】
さらに、図7に示す電子写真装置では、少なくとも電子写真感光体1及び接触帯電手段2aを第1の容器36に納めて、第1のプロセスカートリッジとしている。また、この電子写真装置では、少なくとも現像手段4を第2の容器37に納めて、第2のプロセスカートリッジとしている。さらに、この電子写真装置では、これらの第1のプロセスカートリッジと、第2のプロセスカートリッジとを着脱自在に構成している。クリーニング器6は、容器36内に配置しても配置しなくてもよい。
【0124】
次に、本発明の電子写真感光体に用いられる現像剤(トナー)について説明する。
【0125】
本発明に用いられるトナーは、特定の粒度分布を有することが好ましい。粒径が5μm以下のトナー粒子が17個数%未満であると、消費量が増加する傾向にある。また、体積平均粒径(Dv[μm])が8μm以上であり、かつ重量平均粒径(D4[μm])が9μm以上であるトナーでは、100μm以下のドット解像性において低下傾向にある。本発明において達成可能である15〜40μmのドット解像性においては、さらに顕著に低下する。この際、他の現像条件の無理な設計によって現像しようとしても、ライン太りやトナーの飛び散りを生じやすく、また、トナーの消費量が増大するなど安定した現像性が得ることが難しい。
【0126】
一方、粒径が5μm以下のトナー粒子が90個数%を超えると、現像を安定にすることが難しく、画像濃度が低下するなどの弊害を生じることがある。さらに解像力を向上させるためには、3.0μm≦Dv≦6.0μm、3.5μm≦D4<6.5μmの微粒径トナーであることが好ましい。さらには、3.2μm≦Dv≦5.8μm、3.6μm≦D4≦6.3μmであることがより好ましい。
【0127】
トナーに使用される結着樹脂としては、下記のものが挙げられる。
【0128】
ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体のようなスチレン系の単重合体又は共重合体
ポリエステル樹脂
エポキシ樹脂
石油系樹脂
【0129】
定着時の定着部材からの離型性の向上、及び定着性の向上の点から、下記のワックス類をトナー中に含有させることも好ましい。
【0130】
パラフィンワックス及びその誘導体
マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体
フィッシャートロプシュワックス及びその誘導体
ポリオレフィンワックス及びその誘導体
カルナバワックス及びその誘導体
【0131】
これらの誘導体としては、酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合体、グラフト変性物が挙げられる。その他、長鎖アルコール、長鎖脂肪酸、酸アミド化合物、エステル化合物、ケトン化合物、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックス、鉱物系ワックス、ペトロラクタムも利用できる。
【0132】
トナーに用いられる着色剤としては、従来知られている無機顔料、有機染料、有機顔料が使用可能である。例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーが挙げられる。これらは通常、結着樹脂100質量部に対し0.5〜20質量部使用される。
【0133】
トナーの構成成分としては、磁性体を用いてもよい。磁性体としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、珪素のような元素を含む磁性金属酸化物が挙げられる。それらのなかでも、四三酸化鉄、γ−酸化鉄のような磁性酸化鉄を主成分とするものが好ましい。
【0134】
トナーの帯電制御の目的で、ニグロシン染料、四級アンモニウム塩、サリチル酸金属錯体、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属錯体、サリチル酸、アセチルアセトンを用いることができる。
【0135】
本発明の電子写真感光体に用いられるトナーは、トナー粒子表面上に無機微粉体を有していることが好ましく、現像効率、静電潜像の再現性及び転写効率を向上させ、カブリを減少させる効果がある。
【0136】
無機微粉体としては、下記の材料で形成された微粉末体が挙げられる。
【0137】
コロイダルシリカ
酸化チタン
酸化鉄
酸化アルミニウム
酸化マグネシウム
チタン酸カルシウム
チタン酸バリウム
チタン酸ストロンチウム
チタン酸マグネシウム
酸化セリウム
酸化ジルコニウム
【0138】
無機微粉体としては、これらのものを1種類又は2種類以上を混合して使用することができる。それらのなかでも、チタニア、アルミナ、シリカのような酸化物又は複酸化物の微粉体が好ましい。
【0139】
また、これらの無機微粉体は、疎水化されていることが好ましい。特に、無機微粉体は、シランカップリング剤又はシリコーンオイルで表面処理されていることが好ましい。このような疎水化処理方法としては、無機微粉体と反応あるいは物理吸着するシランカップリング剤、チタンカップリング剤のような有機金属化合物で処理する方法が挙げられる。また、このような疎水化処理方法としては、シランカップリング剤で処理した後、あるいは、シランカップリング剤で処理すると同時に、シリコーンオイルのような有機ケイ素化合物で処理する方法が挙げられる。
【0140】
無機微粉体は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m/g以上、特には50〜400m/gの範囲のものが好ましい。疎水化処理された無機微粉体の使用量は、トナー粒子100質量部に対して0.01〜8質量部であることが好ましく、さらには0.1〜5質量部であることがより好ましく、特には0.2〜3質量部であることがより一層好ましい。
【0141】
トナーには、実質的な悪影響を与えない範囲内で、さらに他の添加剤を加えてもよく、例えば、下記のものが挙げられる。
【0142】
ポリテトラフルオロエチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末のような滑剤粉末
酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末のような研磨剤
酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末のような流動性付与剤
ケーキング防止剤
カーボンブラック粉末、酸化亜鉛粉末、酸化スズ粉末のような導電性付与剤
トナーとは逆極性の有機微粒子及び無機微粒子のような現像性向上剤
【0143】
トナーを作製するには、公知の方法が用いられる。例えば、トナーを構成する材料を、混合器を用いて十分混合した後、これを、熱混練機を用いて溶融混練して樹脂類を互いに相溶させたものに、さらにトナーを構成する材料を分散又は溶解させて、冷却固化後、粉砕、分級を行う方法であってもよい。混合器としては、ヘンシェルミキサー及びボールミルが挙げられる。混合器を用いて混合するトナーを構成する材料としては、結着樹脂、ワックス、金属塩又は金属錯体、着色剤としての顔料、染料、又は、磁性体、必要に応じて荷電制御剤、その他の添加剤が挙げられる。また、熱混練機としては、加熱ロール、ニーダー及びエクストルーダーが挙げられる。樹脂類を互いに相溶させたものに加えるトナーを構成する材料としては、金属化合物、顔料、染料、磁性体が挙げられる。分級工程においては、生産効率上、多分割分級機を用いることが好ましい。
【0144】
また、トナーの作製方法としては、重合性モノマーと着色剤などを水系溶媒中に懸濁し、重合を行い、直接トナー粒子を製造する方法が挙げられる。さらに、乳化重合方法などにより得られた重合体微粒子を水系媒体中に分散し、着色剤と共に会合融着する方法で製造することもできる。
【0145】
さらに、トナーは、磁性一成分系現像剤あるいは非磁性一成分現像剤として用いてもよいし、キャリア粒子と混合して二成分現像剤として用いてもよい。
【0146】
本発明による電子写真感光体を用いた現像方式としては、トナーを含む現像剤と電子写真感光体表面とが接触して行う反転現像方式が好ましい。トナーと磁性キャリアとを使用する磁気ブラシ現像方法を用いる場合は、磁性キャリアとしては、例えば、磁性フェライト、マグネタイト及び鉄粉が挙げられる。また、これらを、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂のような樹脂でコーティングしたものが挙げられる。
【実施例】
【0147】
以下に、実施例に基づき、本願発明をより具体的に説明するが、本願発明を限定するものではない。
【0148】
(合成例1)
例示化合物1−1の合成
下記のアミン化合物10gと、イオン交換水(電導度1×10−4S/m以下、以下同様)1200mLと、濃塩酸23.8mLとを、3Lビーカーに入れて攪拌しながら0℃まで冷却した。
【0149】
【化19】

【0150】
その後、これに、亜硝酸ナトリウム4.8gをイオン交換水10.5mLに溶かした液を、液温を−2〜0℃に保ちながら10分かけて液中滴下した。その後、液温0〜5℃で60分間撹拌した後、活性炭0.79gを加えて5分間攪拌した後、吸引濾過した。この濾液を0〜5℃に保ったままホウフッ化ナトリウム12.6gをイオン交換水32mLに溶解した液を10分かけて撹拌下に滴下した後、60分間攪拌した。析出した結晶を吸引濾過した。次に、濾過物を5%のホウフッ化ナトリウム水溶液400mLで0〜5℃に保ったまま50分間分散洗浄した後、吸引濾過した。さらに、この濾過物をアセトニトリル50mLとジイソプロピルエーテル150mLとの混合液で0〜5℃に保ったまま40分間分散洗浄し吸引濾過した。イソプロピルエーテル100mLで2回濾過器洗浄した後、濾過物を室温で減圧乾燥してホウフッ化塩を得た(収量16.91g、収率86.9%)。
【0151】
次に、300mLビーカーにN,N−ジメチルホルムアミド100mLを入れ、下記構造式の化合物2.35gを溶解し液温0℃に冷却した後、上記で得たホウフッ化塩1.5gを添加し、次いでN−メチルモルホリン0.69gを2分間で滴下した。
【0152】
【化20】

【0153】
その後、0〜5℃で2時間撹拌し、さらに室温で1.5時間攪拌した後、吸引濾過した。得た濾過物を、N,N’−ジメチルホルムアミド150mLで1.5時間分散洗浄し且つ濾過する工程を3回繰返し、さらにイオン交換水250mLで1.5時間分散洗浄し且つ濾過する工程を3回繰返し行った後、凍結乾燥して例示化合物1−1を得た。例示化合物1−1の収量は、2.69gであり、収率は、83.8%であり、質量分析及びIR分析の結果は、下記の通りである。なお、以上の製造工程は全て黄色光下で実施した。
【0154】
質量分析スペクトル
測定装置:メーカー:BRUKER、形式:REFLEXIII−TOF
測定モード:NEGA
分散溶剤:シクロヘキサノン
m/z=1073.5
【0155】
IRスペクトル
測定装置:メーカー:日本分光、形式:FT/IR−420
測定法:KBr法
cm−1=1698、1563、1494、1336、1245、1159、928、765
【0156】
また、例示化合物1−1のUV吸収スペクトルを図8に示す(λmax=458nm)。UV吸収スペクトルは、試料をシクロヘキサノン中で超音波分散し、λmaxの吸光度(Abs)が1.0以下になるように希釈調製した後、日本分光(株)製V−570型を用いて測定した。
【0157】
(合成例2)
例示化合物2−4の合成
300mLビーカーに、N,N−ジメチルホルムアミド100mLを入れ、下記構造式の化合物2.24gを溶解し液温0℃に冷却した後、合成例1で得たホウフッ化塩1.8gを添加し、次いでN−メチルモルホリン0.83gを2分間で滴下した。
【0158】
【化21】

【0159】
その後、0〜5℃で2時間撹拌し、さらに室温で1.5時間攪拌した後、吸引濾過した。得た濾過物を、N,N’−ジメチルホルムアミド150mLで1.5時間分散洗浄し且つ濾過する工程を3回繰返し、さらにイオン交換水250mLで1.5時間分散洗浄し且つ濾過する工程を3回繰返し行った後、凍結乾燥して例示化合物2−4を得た。例示化合物2−4の収量は、2.63gであり、収率は、79.5%であった。なお、以上の製造工程は全て黄色光下で実施した。また、合成例1と同様に質量分析スペクトル及びIRスペクトルを測定した。
【0160】
質量分析スペクトル
m/z=921.3
【0161】
IRスペクトル
cm−1=1682、1592、1538、1493、1442、1246、1147、1013、928、747
【0162】
また、例示化合物2−4のUV吸収スペクトルを図9に示す(λmax=504nm)。UV吸収スペクトルは、合成例1と同様に測定した。
【0163】
(合成例3)
例示化合物2−1の合成
5000mLビーカーに、N,N−ジメチルホルムアミド2320mLを入れ、下記構造式の化合物2.396gを溶解し液温0℃に冷却した後、合成例1で得たホウフッ化塩2.00gを添加し、次いでN−メチルモルホリン0.926gを2分間で滴下した。
【0164】
【化22】

【0165】
その後、0〜5℃で2時間撹拌し、さらに室温で1.5時間攪拌した後、吸引濾過した。得た濾過物を、N,N’−ジメチルホルムアミド150mLで1.5時間分散洗浄し且つ濾過する工程を4回繰返し、さらにイオン交換水350mLで2時間分散洗浄し且つ濾過する工程を4回繰返し行った後、凍結乾燥して例示化合物2−1を得た。例示化合物2−1の収量は、1.46gであり、収率は、40.8%であった。なお、以上の製造工程は全て黄色光下で実施した。また、合成例1と同様に質量分析スペクトル及びIRスペクトルを測定した。
【0166】
質量分析スペクトル
m/z=899.3
【0167】
IRスペクトル
cm−1=1705、1584、1492、1444、1357、1243、1150、928、769
【0168】
また、例示化合物2−1のUV吸収スペクトルを図10に示す(λmax=464nm)。UV吸収スペクトルは、合成例1と同様に測定した。
【0169】
(合成例4)
例示化合物2−2の合成
3000mLビーカーに、N,N−ジメチルホルムアミド2000mLを入れ、下記構造式の化合物2.336gを溶解し液温0℃に冷却した後、合成例1で得たホウフッ化塩2.50gを添加し、次いでN−メチルモルホリン1.157gを2分間で滴下した。
【0170】
【化23】

【0171】
その後、0〜5℃で2時間撹拌し、さらに室温で1.5時間攪拌した後、吸引濾過した。得た濾過物を、N,N’−ジメチルホルムアミド150mLで1.5時間分散洗浄し且つ濾過する工程を4回繰返し、さらにイオン交換水350mLで2時間分散洗浄し且つ濾過する工程を4回繰返し行った後、凍結乾燥して例示化合物2−2を得た。例示化合物2−2の収量は、3.12gであり、収率は、81.8%であった。なお、以上の製造工程は全て黄色光下で実施した。また、合成例1と同様に質量分析スペクトル及びIRスペクトルを測定した。
【0172】
質量分析スペクトル
m/z=773.1
【0173】
IRスペクトル
cm−1=1653、1576、1515、1416、1393、1244、1212、1163、962、928、766
【0174】
また、例示化合物2−2のUV吸収スペクトルを図11に示す(λmax=572nm)。UV吸収スペクトルは、合成例1と同様に測定した。
【0175】
(実施例1)
以下、本発明による電子写真感光体の製造例を示す。以下、「部」は「質量部」を意味する。
【0176】
下記の材料を、直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で、2時間分散して導電層用塗料を調製した。
【0177】
導電性酸化チタン粉体 50部
(10%の酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆したもの)
フェノール樹脂 25部
メチルセロソルブ 20部
メタノール 5部
シリコーンオイル 0.002部
(ポリジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、数平均分子量3000)
【0178】
その後、この導電層用塗料を、アルミニウム素管(ED管)(昭和電工(株)製、直径30mm×長さ357.5mm、Rzjis=0.8μm)上に、上記ディッピング塗工し、140℃で30分間乾燥して、膜厚15μmの導電層を形成した。
【0179】
次に、下記の材料をメタノール260部及びブタノール40部の混合溶媒中に溶解した中間層用溶液を、上記導電層上にディッピング塗工し、100℃で10分間乾燥して、膜厚0.6μmの中間層を形成した。
【0180】
メトキシメチル化ナイロン樹脂(数平均分子量32000) 30部
アルコール可溶性共重合ナイロン樹脂(数平均分子量29000) 10部
【0181】
次に、上記合成例1で得たビスアゾ顔料(例示化合物1−1)20部をシクロヘキサノン215部に添加し、直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で20℃、20時間前分散した。その後、これに、ビニルアセテート−ビニルアルコール−ビニルベンザール共重合体、(ベンザール化度80モル%、重量平均分子量83000)5部をシクロヘキサノン45部に溶解した溶液を添加した。さらに、これをサンドミル装置で20℃、2時間分散した後、これに、シクロヘキサノン160部と、メチルエチルケトン160部とを添加し、希釈して電荷発生層用塗料を作製した。この塗料を中間層上にディッピング塗工し、80℃で10分間乾燥して、膜厚0.25μmの電荷発生層を形成した。
【0182】
次に、下記式で示す構造を有する電荷輸送材料(A)10部と、ポリカーボネート樹脂(ユーピロンZ−200、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)10部とを、モノクロルベンゼン70部とメチラール5部とに溶解した電荷輸送層用溶液を調製した。この溶液を電荷発生層上にディッピング塗工し、120℃で1時間乾燥して、膜厚18μmの電荷輸送層を形成して、電子写真感光体を得た。
【0183】
【化24】

【0184】
次に、この電子写真感光体を、ギア、フランジを取り付けモノクロ複写機(GP−215、キヤノン(株)製)に装着した。露光手段であるレーザー露光光学系には、発振波長が407nm、出力5mWのGaN系チップ(日亜化学工業(株)製)を搭載し、ビームスポット径が28μmとなるように改造した。温度23℃、相対湿度55%の環境下で、帯電(Vd)−700Vに設定した際の明電位(Vl)−200Vにおける光量を感度Δ500(V・cm/μJ)とした。結果を表7に示す。表7から明らかなように、実施例1で得た電子写真感光体のΔ500は、610(V・cm/μJ)となり、非常に高感度な電子写真感光体が得られた。
【0185】
【表7】

【0186】
(実施例2〜13)
実施例1に使用した電子写真感光体中のビスアゾ顔料を、表7に示す例示化合物にそれぞれ変更したこと以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例1と同様に感度Δ500(V・cm/μJ)を求めた。その結果、表7に示すように高感度な電子写真感光体が得られた。
【0187】
(比較例1)
実施例1に使用した電子写真感光体中の電荷発生層中のビスアゾ顔料として、下記式で示される特許文献1に記載の比較化合物Aを用いた以外は実施例1と同様にして比較用電子写真感光体を作製した。この比較用電子写真感光体について実施例1と同様にしてΔ500(V・cm/μJ)を求めた結果、表7に示すように低感度な電子写真感光体しか得られなかった。
【0188】
比較化合物A
【0189】
【化25】

【0190】
(比較例2及び3)
実施例1に使用した電子写真感光体中の電荷発生層中のビスアゾ顔料として、下記式で示される比較化合物B及びCをそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にして比較用電子写真感光体を作製した。この比較用電子写真感光体について実施例1と同様にしてΔ500(V・cm/μJ)を求めた結果、表7に示すように低感度な電子写真感光体しか得られなかった。
【0191】
比較化合物B
【0192】
【化26】

【0193】
比較化合物C
【0194】
【化27】

【0195】
(実施例14)
アルミニウム素管(ED)(昭和電工(株)製、直径30mm×長さ370mm、Rzjis=0.8μm)を液体ホーニング処理して、シリンダー(Rzjis=1.5μm)を得た。このシリンダー上に、6−66−610−12四元系ポリアミド共重合体樹脂5部をメタノール70部とブタノール25部との混合溶媒に溶解した溶液をディッピング塗工し、100℃で10分間乾燥して0.6μmの中間層を設けた。
【0196】
次に、中間層上に実施例1と同様にして電荷発生層を形成した。次に、下記式で示される構造を有する電荷輸送材料(A)7部と、ポリカーボネート樹脂(商品名ユーピロンZ−400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)10部とを、モノクロルベンゼン70部に溶解した電荷輸送層用溶液を調製した。この溶液を電荷発生層上にディッピング塗工し、100℃で30分間乾燥し、膜厚15μmの電荷輸送層を形成した。
【0197】
【化28】

【0198】
次に、下記式で示される構造を有する電荷輸送材料(B)36部と、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粉末(ルブロンL−2、ダイキン工業(株)製)4部とを、n−プロピルアルコール60部に混合した。これを、超高圧分散機にて分散混合し、表面保護層用塗料を調製した。
【0199】
【化29】

【0200】
この塗料を用いて、上記電荷輸送層上に保護層を塗布した後、窒素中において加速電圧60kV、線量0.8Mradの条件で電子線を照射した後、引き続いて感光体の温度が150℃になる条件で5分間加熱処理を行った。このときの酸素濃度は、20ppmであった。さらに、感光体を大気中で120℃、1時間後処理を行って、膜厚5μmの保護層を形成し、電子写真感光体を得た。
【0201】
このようにして得た電子写真感光体をギア、フランジを取り付けフルカラー複写機(IRC3200、キヤノン(株)製)に装着した。露光手段であるレーザー露光光学系には、発振波長が405nm、出力5mWのGaN系チップ(日亜化学工業(株)製)を搭載しビームスポット径が32μmとなるように改造した。温度20℃、相対湿度60%の環境下において、帯電(Vd)−500V、明電位(Vl)−200V、現像バイアス(Vbis)−350Vになるように設定し、1ドット1スペースの画像と文字(5ポイント)画像の出力を行った。5000枚後の帯電(Vd=−495V)と明電位(Vl=−210V)とを測定し、初期から5000枚後までのVd及びVlの変動量(ΔVd=−5V、ΔVl=+10Vと表記、以下同様)を求めた。また、画像5000枚目のドット再現性や文字再現性の画像目視評価を行った。結果を表8に示す。表8から明らかなように、ΔVd、ΔVLは小さく耐久電位変動は良好であった。また、耐久を通じてドット再現性や文字再現性に優れ、高解像度なフルカラー画像が得られた。
【0202】
【表8】

【0203】
(実施例15〜18)
実施例14に使用した電子写真感光体中のビスアゾ顔料を表8に示す例示化合物にそれぞれ変更したこと以外は実施例14と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例14と同様にΔVdとΔVlの測定と画像目視評価を実施した。その結果、表8に示すように実施例14と同様に耐久電位変動が小さく、高解像度なフルカラー画像が得られた。
【0204】
(比較例4〜6)
実施例14に使用した電子写真感光体中のビスアゾ顔料を上記比較化合物A乃至Cにそれぞれ変更したこと以外は実施例14と同様にして比較用電子写真感光体を作製し、実施例14と同様にΔVdとΔVlの測定と画像目視評価を実施した。その結果、表8に示すように、比較例4では、耐久電位変動が大きく、耐久を通じて高解像度なフルカラー画像を得ることができなかった。また、比較例5及び6では、非常に低感度なために光量調節を行っても明電位(VL)を−200Vに設定することができなかった。
【0205】
(実施例19)
アルミシート上に、下記の材料をメタノール180部及びブタノール90部の混合溶媒中に溶解した中間層用溶液をマイヤーバーで塗布し、100℃で10分間乾燥して、膜厚0.6μmの中間層を形成した。
【0206】
メトキシメチル化ナイロン樹脂(数平均分子量32000) 5部
アルコール可溶性共重合ナイロン樹脂(数平均分子量29000) 10部
【0207】
次に、合成例1で得られたビスアゾ顔料(例示化合物1−1)2.5部をTHF104部にブチラール樹脂(BX−1、積水化学工業(株)製)2部を溶かした液に加え、直径0.8mmのガラスビーズを用いたペイントシェーカー装置で5時間分散した。その後、これをシクロヘキサノン75部とTHF75部とで希釈して分散液を調製した。この分散液を上記中間層上にマイヤーバーで塗布し、80℃で10分間乾燥して膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0208】
次に、下記式で示される構造を有する電荷輸送材料(C)7部と、ポリカーボネート樹脂(ユーピロンZ−200、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)10部とを、クロロベンゼン350部に溶解した。
【0209】
【化30】

【0210】
この溶液を上記電荷発生層上にマイヤーバーで塗布し120℃で60分間乾燥して膜厚が24μmの電荷輸送層を形成し電子写真感光体を得た。
【0211】
このようにして得た電子写真感光体について、表面電位が初期表面電位の半分に減衰するために必要な露光量を下記の通り求めた。つまり、まず、この電子写真感光体の表面を、川口電機(株)製静電複写紙試験装置(EPA−8100)を用いて−5kVのコロナ放電で負に帯電させた。その後、ハロゲンランプを用いて照度10ルックスの光で露光した。このようにして、表面電位が初期表面電位の半分に減衰するために必要な露光量を求めた。結果を表9に示す。表9から明らかなように、得た半減露光量(E1/2)は、1.9lx・秒となり、高感度であった。
【0212】
次に、前記静電複写試験紙装置を用いて帯電(Vd)及び明電位(Vl)をそれぞれ−700V及び−200V付近に設定し、ハロゲンランプを用いて帯電及び露光を1000回繰り返して、Vd及びVlの変動量を求めた。結果を表9に示す。表9から明らかなように、Vdが−695V、Vlが−205V(変動量ΔVd=−5V、ΔVl=+5V)となり、耐久電位変動が小さかった。
【0213】
【表9】

【0214】
(実施例20〜21)
実施例19に使用した電子写真感光体中のビスアゾ顔料を表9に示す例示化合物にそれぞれ変更したこと以外は実施例19と同様にして電子写真感光体を作製し、作製した電子写真感光体について実施例19と同様にしてE1/2、ΔVd、ΔVlを求めた。その結果を表9に示す。表9から明らかなように、何れも高感度かつ耐久電位変動が小さいことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0215】
本発明による電子写真感光体は、電子写真方式を採用する、複写機、プリンター、ファクシミリ、製版システムなどの画像形成装置に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0216】
【図1】本発明を適用できる電子写真感光体の層構成の例を示す断面図である。
【図2】本発明を適用できる電子写真感光体の層構成の例を示す断面図である。
【図3】本発明を適用できる電子写真感光体の層構成の例を示す断面図である。
【図4】本発明を適用できる電子写真装置の概略断面図である。
【図5】本発明を適用できるプロセスカートリッジを具備する電子写真装置の概略断面図である。
【図6】本発明を適用できるプロセスカートリッジを具備する電子写真装置の概略断面図である。
【図7】本発明を適用できるプロセスカートリッジを具備する電子写真装置の概略断面図である。
【図8】例示化合物1−1のUV吸収スペクトル図である。
【図9】例示化合物2−4のUV吸収スペクトル図である。
【図10】例示化合物2−1のUV吸収スペクトル図である。
【図11】例示化合物2−2のUV吸収スペクトル図である。
【符号の説明】
【0217】
a 支持体
b 感光層
c 電荷発生層
d 電荷輸送層
e 電荷発生材料
1 電子写真感光体
1a 軸
2 コロナ帯電器
2a 接触帯電手段
3 レーザー露光光学系
3a ポリゴンミラー
3b レンズ
3c ミラー
4 現像手段
4y 現像器
4c 現像器
4m 現像器
4Bk 現像器
5 転写手段
5a 転写ドラム
5b 転写帯電器
5c 吸着帯電器
5d 内側帯電器
5e 外側帯電器
5f 転写材担持シート
5g 吸着ローラー
5h 分離帯電器
5i カムフォロワ
5j 接触転写手段
6 クリーニング器
7 転写材カセット
7a 転写材
8a 分離爪
8b 分離押し上げコロ
9 熱ローラー定着器
10 トレイ
11 前露光ランプ
12 電位センサー
13 光量検知手段
14 ファーブラシ
15 バックアップブラシ
16 オイル除去ローラー
17 バックアップブラシ
19 搬送パス切替ガイド
20 搬送縦パス
21a 反転パス
21b 反転ローラー
22 中間トレイ
23 中間トレイ用搬送パス
24y 偏心カム
24c 偏心カム
24m 偏心カム
24Bk 偏心カム
25 偏心カム
30 原稿
31 原稿台ガラス
32 露光ランプ
33 レンズ
34 フルカラーセンサー
34i 案内手段
35 容器
36 容器
37 容器
50 プロセスカートリッジ
100 電子写真装置
E 光像
L 露光光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】


(式(1)中、Cp及びCpは、それぞれ独立にカプラー残基を表す。)
で示される構造を有することを特徴とするビスアゾ顔料。
【請求項2】
前記式(1)において、Cp及びCpの少なくとも一方は、下記式(2)
【化2】


(式(2)中、Xは、ベンゼン環と縮合して、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素環又は置換若しくは無置換の芳香族複素環を形成するのに必要な残基を表し、
及びRは、独立して、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、若しくは置換若しくは無置換の複素環基、又はRとRとが式中の窒素原子を介して環状アミノ基を形成したものを表し、
は、酸素原子又は硫黄原子を表し、
は、0又は1を表す。)、
下記式(3)
【化3】


(式(3)中、Yは、置換若しくは無置換の2価の芳香族炭化水素環基又は置換若しくは無置換の2価の含窒素複素環基を表す。)、
下記式(4)
【化4】


(式(4)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はニトロ基を表し、
は、置換若しくは無置換のアルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、
は、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基を表し、
lは、0以上2以下の整数を表し、lが2であるとき、Rは、相異なる基であってもよい。)、又は
下記式(5)
【化5】


(式(5)中、R及びRは、独立して、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、若しくは置換若しくは無置換の複素環基、又はRとRとが式中の窒素原子を介して環状アミノ基を形成したものを表し、
は、酸素原子又は硫黄原子を表し、
m2は、0又は1を表す。)
で示されるカプラー残基のいずれかである、請求項1に記載のビスアゾ顔料。
【請求項3】
前記式(1)において、Cp及びCpは、前記式(2)、式(3)、式(4)又は式(5)で示されるカプラー残基のいずれかである、請求項2に記載のビスアゾ顔料。
【請求項4】
前記式(1)において、Cp及びCpは、前記式(5)で示されるカプラー残基である、請求項3に記載のビスアゾ顔料。
【請求項5】
前記式(5)において、
は、水素原子であり、
は、置換又は無置換のフェニル基であり、
は、酸素原子である、請求項4に記載のビスアゾ顔料。
【請求項6】
前記式(5)において、mは、1である、請求項5に記載のビスアゾ顔料。
【請求項7】
前記式(1)において、Cp及びCpは、Yが無置換のo−フェニレン基である前記式(3)で示されるカプラー残基である、請求項3に記載のビスアゾ顔料。
【請求項8】
支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該感光層は、下記式(1)
【化6】


(式(1)中、Cp及びCpは、それぞれ独立にカプラー残基を表す。)
で示される構造を有するビスアゾ顔料を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【請求項9】
前記式(1)において、Cp及びCpの少なくとも一方は、下記式(2)
【化7】


(式(2)中、Xは、ベンゼン環と縮合して、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素環又は置換若しくは無置換の芳香族複素環を形成するのに必要な残基を表し、
及びRは、独立して、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、若しくは置換若しくは無置換の複素環基、又はRとRとが式中の窒素原子を介して環状アミノ基を形成したものを表し、
は、酸素原子又は硫黄原子を表し、
は、0又は1を表す。)、
下記式(3)
【化8】


(式(3)中、Yは、置換若しくは無置換の2価の芳香族炭化水素環基又は置換若しくは無置換の2価の含窒素複素環基を表す。)、
下記式(4)
【化9】


(式(4)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はニトロ基を表し、
は、置換若しくは無置換のアルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、
は、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基を表し、
lは、0以上2以下の整数を表し、lが2であるとき、Rは、相異なる基であってもよい。)、又は
下記式(5)
【化10】


(式(5)中、R及びRは、独立して、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、若しくは置換若しくは無置換の複素環基、又はRとRとが式中の窒素原子を介して環状アミノ基を形成したものを表し、
は、酸素原子又は硫黄原子を表し、
m2は、0又は1を表す。)
で示されるカプラー残基のいずれかである、請求項8に記載の電子写真感光体。
【請求項10】
前記式(1)において、Cp及びCpは、前記式(2)、式(3)、式(4)又は式(5)で示されるカプラー残基のいずれかである、請求項9に記載の電子写真感光体。
【請求項11】
前記式(1)において、Cp及びCpは、前記式(5)で示されるカプラー残基である、請求項10に記載の電子写真感光体。
【請求項12】
前記式(5)において、
は、水素原子であり、
は、置換又は無置換のフェニル基であり、
は、酸素原子である、請求項11に記載の電子写真感光体。
【請求項13】
前記式(5)において、mは、1である、請求項12に記載の電子写真感光体。
【請求項14】
前記式(1)において、Cp及びCpは、Yが無置換のo−フェニレン基である前記式(3)で示されるカプラー残基である、請求項10に記載の電子写真感光体。
【請求項15】
請求項8乃至14のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、イメージ露光手段、現像手段、及び転写手段とを装着したことを特徴とする電子写真装置。
【請求項16】
前記イメージ露光手段は、380nm以上550nm以下の波長を有する半導体レーザー光を用いたイメージ露光手段である、請求項15に記載の電子写真装置。
【請求項17】
請求項8乃至14のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、及びクリーニング手段からなる群より選ばれる1つ以上の手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に脱着自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−138136(P2008−138136A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328309(P2006−328309)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】