説明

ビタミンB1含有飲料及びその製造方法、並びにビタミンB1含有飲料の不快臭抑制方法

【課題】ビタミンB1に特有の不快臭が抑制されてなるビタミンB1含有飲料、当該ビタミンB1含有飲料の製造方法、及びビタミンB1含有飲料におけるビタミンB1に特有の不快臭を抑制することのできる、ビタミンB1含有飲料の不快臭抑制方法を提供する。
【解決手段】ビタミンB1含有飲料は、ビタミンB1と、リモネンと、ヌートカトンとを含有し、ヌートカトンの含有量(A)に対するリモネンの含有量(B)の比(B/A,質量基準)が、4〜26である。これにより、ビタミンB1に特有の不快臭を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンB1含有飲料及びその製造方法、並びにビタミンB1含有飲料における不快臭を抑制する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビタミンB1は、水溶性ビタミンの一種で、炭水化物からのエネルギー産生(糖代謝)を助ける栄養素として知られており、疲労回復等の効果を期待して様々な食品や飲料等へ配合されて使用されている。一般にビタミンは苦味や、特有の不快臭を有するものが多く、とりわけビタミンB1は、不快臭(硫黄臭等)が極めて強いため、特に飲料等の嗜好品への添加は、嗜好的に適さないという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するために、従来、粉末飲料にココアパウダーとビタミンB群に属するビタミンとを配合することにより、ビタミンB群の苦味を抑制する方法(特許文献1)、ビタミンB1等の水溶性ビタミンを含有する組成物に水溶性ビタミンとともにアセスルファムカリウムを配合することで、水溶性ビタミンの不快な風味を改善する方法(特許文献2)、ライチ様、マンゴー様、パイナップル様、マスカット様、パッション様、バナナ様香料等のトロピカル系香料によりビタミン臭をマスキングする方法(特許文献3)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−6112号公報
【特許文献2】特開2002−60339号公報
【特許文献3】特開平11−12159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法は、ココア系飲料にビタミンB1を添加しようとする場合には問題ないが、ココア系飲料以外の飲料に添加しようとする場合には、当該飲料にココアパウダー特有の風味が付与されてしまうため、嗜好的に好ましくない。
【0006】
一方、上記特許文献2には、水溶性ビタミンの不快な風味について有効であることが実施例において示されているものの、実施例において調製されている組成物が、複数種類の水溶性ビタミンを含むものであるとともに、ビタミンCの含有量が極めて多いため、ビタミンの中でも不快臭や苦味が極めて強いと言われるビタミンB1に対して十分に有効であるか否かについて明確には示されていない。
【0007】
また、上記特許文献3に記載の方法は、トロピカル系の香料によりビタミン臭をマスキングするものであるが、内服液剤を対象とするものであって、当該内服液剤の服用を妨げるビタミン臭を感じさせなければよく、ビタミン含有飲料としての嗜好性に関する評価がなされていない。特に、ニアウォーターやエンハンスドウォーター等の水系のビタミン含有飲料においてトロピカル系の香料を用いてビタミン臭(特に、ビタミンB1臭)をマスキングしようとすると、香料の香りが強すぎて、嗜好的に好ましくない飲料となってしまうという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、ビタミンB1に特有の不快臭が抑制されてなり、かつ嗜好的に好ましいビタミンB1含有飲料、当該ビタミンB1含有飲料の製造方法、及びビタミンB1含有飲料におけるビタミンB1に特有の不快臭を抑制することのできる、ビタミンB1含有飲料の不快臭抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、ビタミンB1と、リモネンと、ヌートカトンとを含有し、前記ヌートカトンの含有量(A)に対する前記リモネンの含有量(B)の比(B/A,質量基準)が、4〜26であることを特徴とするビタミンB1含有飲料を提供する(発明1)。
【0010】
上記発明(発明1)によれば、ビタミンB1含有飲料中におけるリモネンとヌートカトンとの含有比(質量基準)を所定の範囲に設定することで、ビタミンB1に特有の不快臭を抑制することができるとともに、嗜好的に好ましい飲料とすることができ、結果として、ビタミンB1を飲料の形態として摂取し易くすることができる。
【0011】
上記発明(発明1)においては、前記ヌートカトンの含有量(A)に対する前記リモネンの含有量(B)の比(B/A,質量基準)が、7〜23であるのが好ましい(発明2)。
【0012】
上記発明(発明1,2)においては、前記飲料として、ニアウォーター、エンハンスドウォーター、茶系飲料、炭酸飲料、スポーツドリンク、アミノ酸飲料を例示することができる(発明3)。
【0013】
また、本発明は、ビタミンB1とリモネンとヌートカトンとを含有するビタミンB1含有飲料を製造する方法であって、前記飲料中における前記ヌートカトンの含有量(A)に対する前記リモネンの含有量(B)の比(B/A,質量基準)が4〜26となるように、前記飲料に前記ビタミンB1、前記リモネン及び前記ヌートカトンを配合することを特徴とするビタミンB1含有飲料の製造方法を提供する(発明4)。
【0014】
上記発明(発明4)においては、前記飲料中における前記ヌートカトンの含有量(A)に対する前記リモネンの含有量(B)の比(B/A,質量基準)が7〜23となるように、前記飲料に前記ビタミンB1、前記リモネン及び前記ヌートカトンを配合するのが好ましい(発明5)。
【0015】
上記発明(発明4,5)においては、前記飲料として、ニアウォーター、エンハンスドウォーター、茶系飲料、炭酸飲料、スポーツドリンク、アミノ酸飲料を例示することができる(発明6)。
【0016】
さらに、本発明は、ビタミンB1を含有する飲料における不快臭を抑制する方法であって、前記飲料中における前記ヌートカトンの含有量(A)に対する前記リモネンの含有量(B)の比(B/A,質量基準)が、4〜26となるように、前記飲料に前記リモネン及び前記ヌートカトンを配合することを特徴とするビタミンB1含有飲料の不快臭抑制方法を提供する(発明7)。
【0017】
上記発明(発明7)においては、前記飲料中における前記ヌートカトンの含有量(A)に対する前記リモネンの含有量(B)の比(B/A,質量基準)が7〜23となるように、前記飲料に前記リモネン及び前記ヌートカトンを配合するのが好ましい(発明8)。
【0018】
上記発明(発明7,8)においては、前記飲料として、ニアウォーター、エンハンスドウォーター、茶系飲料、炭酸飲料、スポーツドリンク、アミノ酸飲料を例示することができる(発明9)。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ビタミンB1に特有の不快臭が抑制されてなり、かつ嗜好的に好ましいビタミンB1含有飲料、当該ビタミンB1含有飲料の製造方法、及びビタミンB1含有飲料におけるビタミンB1に特有の不快臭を抑制することのできる、ビタミンB1含有飲料の不快臭抑制方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係るビタミンB1含有飲料は、ビタミンB1と、リモネンと、ヌートカトンとを含有するものである。
【0021】
本実施形態に係るビタミンB1含有飲料中に含まれるビタミンB1は、飲料に添加物として配合され得る、ビタミンB1を強化し得る添加物のみからなるものであってもよいが、当該ビタミンB1含有飲料中のビタミンB1の一部は、野菜汁、果汁等の飲料原料に含まれるものであってもよい。
【0022】
本実施形態に係るビタミンB1含有飲料における上記ビタミンB1を強化し得る添加物としては、例えば、チアミン塩酸塩、チアミン硝酸塩、ジベンゾイルチアミン塩酸塩等のビタミンB1誘導体等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を使用し得るが、これらに特に限定されるものではない。
【0023】
本実施形態に係るビタミンB1含有飲料におけるビタミンB1の濃度は、チアミン塩酸塩換算で2〜20mg/kgであり、2〜15mg/kgであるのが好ましく、2〜10mg/kgであるのがより好ましく、2〜8mg/kgであるのが特に好ましい。当該濃度が2mg/kg未満であると、ビタミンB1に基づく効果(疲労回復効果等)が不十分となり、20mg/kgを超えると、ビタミンB1による不快臭が強くなりすぎ、飲料の風味・呈味を損ねてしまう。
【0024】
なお、本実施形態において、ビタミンB1含有飲料中のビタミンB1濃度は、チアミン塩酸塩を標準物質として使用したHPLC法等を用い、チアミン塩酸塩としての濃度に換算した濃度と定義するものとする。
【0025】
本実施形態に係るビタミンB1含有飲料に含まれるリモネン及びヌートカトンは、合成されたもの又は天然物から抽出・単離されたものや、リモネン及び/又はヌートカトンを含む精油又は香料として当該飲料に配合され得るものであってもよいし、これらの混合物であってもよい。
【0026】
リモネンを含む天然物としては、例えば、グレープフルーツ、レモン、オレンジ、温州みかん、夏みかん、スウィーティー、ゆず、シークワァーサー、ライム等が挙げられ、ヌートカトンを含む天然物としては、例えば、グレープフルーツ、夏みかん、ブンタン(ザボン)、ハッサク等が挙げられる。
【0027】
したがって、リモネン及び/又はヌートカトンを含む精油又は香料を配合することにより、ビタミンB1含有飲料にリモネン及びヌートカトンを含有せしめる場合には、リモネン及びヌートカトンをともに含有するグレープフルーツの精油又は香料等を用いるのが好適である。
【0028】
一般に、ビタミンB1含有飲料において、ビタミンB1濃度を高濃度にすると、ビタミンB1に特有の不快臭(硫黄臭等)等が際立つようになってしまうが、本実施形態に係るビタミンB1含有飲料においては、当該飲料にリモネン及びヌートカトンが所定の含有比で含まれていることで、飲料中におけるビタミンB1濃度を高濃度にしたとしてもビタミンB1に特有の不快臭を抑制することができ、かつビタミンB1含有飲料を嗜好的に優れたものとすることができる。
【0029】
本実施形態に係るビタミンB1含有飲料中におけるヌートカトンの含有量(A)に対するリモネンの含有量(B)の比(B/A,質量基準)は、4〜26であり、好ましくは7〜23であり、より好ましくは8〜18であり、特に好ましくは10〜16である。当該含有比(B/A)が4未満であると、ビタミンB1に特有の不快臭を抑制するのが困難となるおそれがあり、当該含有比が26を超えると、相対的にリモネンの含有量が増大してしまい、リモネンの芳香が強くなりすぎるため、嗜好的に好ましくない飲料となるおそれがある。
【0030】
本実施形態に係るビタミンB1含有飲料中におけるヌートカトンの含有量(A)は、0.1〜15mg/Lであるのが好ましく、1〜10mg/Lであるのがより好ましい。
【0031】
また、本実施形態に係るビタミンB1含有飲料中におけるリモネンの含有量(B)は、1〜300mg/Lであるのが好ましく、5〜160mg/Lであるのがより好ましい。
【0032】
本実施形態に係るビタミンB1含有飲料にリモネン及びヌートカトンを含有せしめるために、リモネン及び/又はヌートカトンを含む天然物の精油又は香料(例えば、グレープフルーツ精油又は香料)の少なくとも1種を配合する場合、当該飲料中におけるリモネンとヌートカトンとの含有量及び含有比が上述した範囲内に含まれるように、当該精油又は香料におけるリモネンやヌートカトンの含有量に応じて配合量を決定することができる。
【0033】
なお、グレープフルーツ香料の原料となるグレープフルーツ精油には、リモネンが80〜90質量%程度、ヌートカトンが0.01〜0.1質量%程度含まれており(「[食べ物]香り百科事典」,日本香料協会編,朝倉書店,2006年,p.510)、ヌートカトンの含有量に対するリモネンの含有量の比は、当該香料の原料としてのグレープフルーツの産地等により異なるが、一般に本実施形態におけるビタミンB1含有飲料中における当該含有量の比よりも高いため、例えば、グレープフルーツ香料を当該ビタミンB1含有飲料に配合する場合には、当該飲料中におけるリモネンとヌートカトンとの含有量及び含有比が上述した範囲内に含まれるように、グレープフルーツ香料とともにリモネン及び/又はヌートカトンを配合するのが好ましい。
【0034】
なお、本実施形態に係るビタミンB1含有飲料には、所望により、通常飲料に配合される原料が含有されていてもよく、例えば、砂糖、ブドウ糖、果糖、果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖果糖液糖、高果糖液糖、オリゴ糖、トレハロース、キシリトール、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、はちみつ、イソマルツロース、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ステビア抽出物、ソルビトール、カンゾウ抽出物、ラカンカ抽出物等の砂糖類及び甘味料;オレンジ、温州ミカン、レモン、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、ユズ、タンジェリン、テンプルオレンジ、タンジェロ、カラマンシー、リンゴ、ブドウ、モモ、パイナップル、グアバ、バナナ、マンゴー、カシス、ブルーベリー、アセロラ、プルーン、パパイヤ、パッションフルーツ、ウメ、ナシ、アンズ、ライチ、メロン、西洋ナシ、スモモ類等から得られる果汁;ニンジン、トマト、ナス、カボチャ、ピーマン、ゴーヤ、ナーベラ、トウガン、オクラ、トウガラシ、トウモロコシ、キュウリ等の果菜類、ゴボウ、タマネギ、タケノコ、レンコン、カブ、ダイコン、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ニンニク、ショウガ等の根菜類、モロヘイヤ、アスパラガス、セロリ、ケール、チンゲンサイ、ホウレンソウ、コマツナ、キャベツ、レタス、ハクサイ、ブロッコリー、カリフラワー、ミツバ、パセリ、ネギ、シュンギク、ニラ等の葉茎類等から得られる野菜汁;ペクチン、ゼラチン、コラーゲン、寒天、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、大豆多糖類、アラビアガム、グァーガム、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ジェランガム等の増粘安定剤;クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料;アスコルビン酸等の酸化防止剤;炭酸水素ナトリウム(重曹)、クエン酸ナトリウム等のpH調整剤;ビタミンB1以外のビタミン類;グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤;食物繊維、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナイアシン、パントテン酸等の強化剤;各種乳酸菌;各種香料;各種色素等が含有されていてもよい。
【0035】
本実施形態に係るビタミンB1含有飲料における飲料の種類としては、特に限定されるものではなく、例えば、ニアウォーター、エンハンスドウォーター、茶系飲料、炭酸飲料、スポーツドリンク、アミノ酸飲料、野菜飲料、果汁飲料、コーヒー飲料、酢含有飲料、乳酸菌飲料等が挙げられるが、特に、ニアウォーター、エンハンスドウォーター、茶系飲料、炭酸飲料、スポーツドリンク、アミノ酸飲料等のブリックス(糖質濃度)の低い飲料が好適である。なお、本実施形態に係るビタミンB1含有飲料は、栄養機能食品等の機能性飲料として提供することも可能である。
【0036】
本実施形態に係るビタミンB1含有飲料は、PETボトル、ガラスビン、缶、紙パック等の密閉容器に充填した形態で提供することができる。
【0037】
本実施形態に係るビタミンB1含有飲料は、従来公知の方法により製造することができる。例えば、まず、市水、井水、イオン交換水、脱気水等の飲用に適した水にビタミンB1(ビタミンB1を強化し得る添加物)を添加し、ヌートカトン及びリモネンの含有比が上述した範囲に含まれるようにヌートカトン及びリモネン、又はそれらを含む香料、精油等を添加し、所望によりその他の飲料原料等をさらに添加して攪拌し、飲料原液を調製する。
【0038】
このようにして得られた飲料原液に所望によりpH調整剤等を添加することで、飲料原液のpHを所定の範囲に調整する。その後、所望によりpHを調整した飲料原液を高圧殺菌、加熱殺菌等により殺菌して密閉容器等に充填する。このようにして、本実施形態に係るビタミンB1含有飲料を製造することができる。
【0039】
このようにして得られる本実施形態に係るビタミンB1含有飲料によれば、ビタミンB1、ヌートカトン及びリモネンを含有し、かつヌートカトンとリモネンとの含有比が所定の範囲内であることで、ビタミンB1に特有の不快臭を感じることがないため、嗜好的に優れたビタミンB1含有飲料とすることができる。
【0040】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0041】
以下、試験例を示すことにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の試験例等に何ら限定されるものではない。
【0042】
〔試験例1〕ビタミンB1臭抑制効果確認試験
下記表1に示す配合になるように、各飲料原料をイオン交換水に添加して溶解させ、200gに定量し、当該イオン交換水を95℃に達するまで加熱殺菌した後、PET容器に充填して、ビタミンB1含有飲料を調製した(試料1〜4)。
【0043】
【表1】

【0044】
上述のようにして得られたビタミンB1含有飲料(試料1〜4)について、ビタミンB1による不快臭の抑制効果を試験した。かかる試験は、飲料の開発を担当する訓練された10人のパネラーにより、15℃に冷却保管されたビタミンB1含有飲料(試料1〜4)のビタミンB1による不快臭の抑制効果を評価した。かかる評価は、ビタミンB1臭を強く感じる飲料を「×」、ビタミンB1臭を感じる飲料を「△」、ビタミンB1臭を若干感じるが気になる程度ではない飲料を「○」、ビタミンB1臭を感じない飲料を「◎」として行った。結果を表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
表2に示すように、ビタミンB1含有飲料にヌートカトン、又はヌートカトンとリモネンとを添加することで、ビタミンB1による不快臭を抑制し得ることが確認され、特に、ヌートカトン及びリモネンを添加することで、ビタミンB1による不快臭を効果的に抑制し得ることが確認された。
【0047】
〔試験例2〕ビタミンB1臭抑制効果確認試験
下記表3に示す配合になるように、各飲料原料をイオン交換水に添加して溶解させ、200gに定量し、当該イオン交換水を95℃に達するまで加熱殺菌した後、PET容器に充填して、ビタミンB1含有飲料を調製した(試料5〜17)。
【0048】
【表3】

【0049】
上述のようにして得られたビタミンB1含有飲料(試料5〜17)について、ビタミンB1による不快臭の抑制効果を試験した。かかる試験は、飲料の開発を担当する訓練された10人のパネラーにより、15℃に冷却保管されたビタミンB1含有飲料(試料5〜17)のビタミンB1による不快臭の抑制効果を評価した。かかる評価は、ビタミンB1臭を強く感じる飲料を「×」、ビタミンB1臭を感じる飲料を「△」、ビタミンB1臭を若干感じるが気になる程度ではない飲料を「○」、ビタミンB1臭を感じない飲料を「◎」として行った。結果を表4に示す。
【0050】
【表4】

【0051】
表4に示すように、ヌートカトンの含有量に対するリモネンの含有量の比が4〜26となるようにビタミンB1含有飲料にヌートカトンとリモネンとを配合することで、ビタミンB1による不快臭を抑制し得ることが確認された(試料6〜11、13〜17)。特に、当該比が7〜23となるようにビタミンB1含有飲料にヌートカトンとリモネンとを配合することにより、ビタミンB1による不快臭を極めて効果的に抑制し得ることが確認された(試料7〜10、14〜17)。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のビタミンB1含有飲料は、ビタミンB1を高濃度に含有せしめたとしても嗜好的に極めて好ましく、摂飲し易いため、特に、ビタミンB1を補給するための飲料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンB1と、リモネンと、ヌートカトンとを含有し、
前記ヌートカトンの含有量(A)に対する前記リモネンの含有量(B)の比(B/A,質量基準)が、4〜26であることを特徴とするビタミンB1含有飲料。
【請求項2】
前記ヌートカトンの含有量(A)に対する前記リモネンの含有量(B)の比(B/A,質量基準)が、7〜23であることを特徴とする請求項1に記載のビタミンB1含有飲料。
【請求項3】
前記飲料が、ニアウォーター、エンハンスドウォーター、茶系飲料、炭酸飲料、スポーツドリンク又はアミノ酸飲料であることを特徴とする請求項1又は2に記載のビタミンB1含有飲料。
【請求項4】
ビタミンB1とリモネンとヌートカトンとを含有するビタミンB1含有飲料を製造する方法であって、
前記飲料中における前記ヌートカトンの含有量(A)に対する前記リモネンの含有量(B)の比(B/A,質量基準)が4〜26となるように、前記飲料に前記ビタミンB1、前記リモネン及び前記ヌートカトンを配合することを特徴とするビタミンB1含有飲料の製造方法。
【請求項5】
前記飲料中における前記ヌートカトンの含有量(A)に対する前記リモネンの含有量(B)の比(B/A,質量基準)が7〜23となるように、前記飲料に前記ビタミンB1、前記リモネン及び前記ヌートカトンを配合することを特徴とする請求項4に記載のビタミンB1含有飲料の製造方法。
【請求項6】
前記飲料が、ニアウォーター、エンハンスドウォーター、茶系飲料、炭酸飲料、スポーツドリンク又はアミノ酸飲料であることを特徴とする請求項4又は5に記載のビタミンB1含有飲料の製造方法。
【請求項7】
ビタミンB1を含有する飲料における不快臭を抑制する方法であって、
前記飲料中における前記ヌートカトンの含有量(A)に対する前記リモネンの含有量(B)の比(B/A,質量基準)が、4〜26となるように、前記飲料に前記リモネン及び前記ヌートカトンを配合することを特徴とするビタミンB1含有飲料の不快臭抑制方法。
【請求項8】
前記飲料中における前記ヌートカトンの含有量(A)に対する前記リモネンの含有量(B)の比(B/A,質量基準)が7〜23となるように、前記飲料に前記リモネン及び前記ヌートカトンを配合することを特徴とする請求項7に記載のビタミンB1含有飲料の不快臭抑制方法。
【請求項9】
前記飲料が、ニアウォーター、エンハンスドウォーター、茶系飲料、炭酸飲料、スポーツドリンク又はアミノ酸飲料であることを特徴とする請求項7又は8に記載のビタミンB1含有飲料の不快臭抑制方法。

【公開番号】特開2011−167144(P2011−167144A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35355(P2010−35355)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(591014972)株式会社 伊藤園 (213)
【Fターム(参考)】