説明

ビタミンE類含有組成物

【目的】低温に保存しても凍結しないビタミンE類含有組成物を提供する。
【構成】ビタミンE類及びα−リノレン酸を構成脂肪酸として40%以上含む油脂を含有することを特徴とするビタミンE類含有組成物。α−リノレン酸を構成脂肪酸として40%以上含む油脂は、シソ油、エゴマ油等が挙げられる。これら油脂はビタミンE類1重量部に対し、0.2〜10重量部配合されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ビタミンE類を含有する組成物及びソフトカプセルに関する。
【0002】
【従来の技術】すぐれた抗酸化力を有すると共に、末梢血行障害による種々の諸症状の緩和に有効であるビタミンE類の多くは常温で液体の油状物質であるため、その製剤化に際してはソフトカプセルとすることが多い。ソフトカプセル化においてはダイズ油、コーン油、綿実油等の植物油や中鎖脂肪酸トリグリセライド等の合成油ビタミンE類の溶剤として用いられることが多い。
【0003】
【本発明が解決しようとする問題点】ビタミンE類及び植物油の多くは比較的融点が高いため、低温で保存すると凍結する場合がある。透明なソフトカプセルは、外観が美しく商品価値が高いため好んで選定されるが、凍結すると濁りを生じ外観から容易に識別できるため商品価値が著しく損なわれるだけでなく、服用する人にも不安を与えるため改善が望まれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意検討した結果、以下に示す構成により問題を解決できることを見いだし本発明を完成した。即ち、本発明は、ビタミンE類及びα−リノレン酸を構成脂肪酸として40%以上含む油脂を含有することを特徴とするビタミンE類含有組成物である。更に詳しくは、本発明はビタミンE類1重量部に対しα−リノレン酸を構成脂肪酸として40%以上含む油脂が0.2〜10重量部であることを特徴とするビタミンE類含有組成物である。
【0005】本発明にかかるビタミンE類含有組成物は、安定な溶液であり、長期間の低温保存においても凍結することがないが、この低温における保存安定性に優れた組成物を提供することが本発明の目的である。更に、本願に使用するα−リノレン酸を構成成分として40%以上含む油脂は、ビタミンE類と相溶性が良く、粘度も低いため、ソフトカプセル化に際しては油脂の使用量を減らすことができ、その結果、剤形を小さくできるという利点も有する。
【0006】本発明にかかるビタミンE類とは、一般にビタミンEと総称されるすべての化合物を意味する。例えば、dl- α- トコフェロール、d-α- トコフェロール、酢酸d-α- トコフェロール、γ- トコフェロール等を挙げることができる。
【0007】また、本発明におけるα−リノレン酸を構成脂肪酸として40%以上含む油脂としては、シソ油、エゴマ油、アマニ油等がある。シソ油はシソの種子から、エゴマ油はエゴマの種子から、アマニ油は亜麻の種子から圧搾法もしくは有機溶媒による抽出等公知の方法により得られる植物油であり、市販されているものを容易に入手することができる。
【0008】本発明におけるビタミンE類とα−リノレン酸を構成脂肪酸として40%以上含む油脂の比率は、本発明の目的すなわちビタミンE及び油脂の凍結を防げる範囲であれば特に限定されないが、ビタミンE類1重量部に対しα−リノレン酸を構成脂肪酸として40%以上含む油脂が0.2〜10重量部である場合に好ましい効果をもたらし、0.4〜5重量部である場合に更に好ましい効果をもたらし、0.4〜3.5重量部である場合に特に好ましい効果をもたらす。本発明におけるα−リノレン酸を構成脂肪酸として40%以上含む油脂は二重結合を有するため、抗酸化剤としてビタミンEが極少量添加されているがこの量では本発明で見いだされた効果を示さない。。
【0009】本発明にかかる組成物の製造方法は特に限定されず、ビタミンE類とα−リノレン酸を構成脂肪酸として40%以上含む油脂を混合することにより製造できる。必要により混合時に加温等の操作を加えることは自由である。
【0010】本発明にかかる組成物は、ソフトカプセルに充填することによりソフトカプセル剤とすることができる。ソフトカプセル剤を製造するには一般に用いられるソフトカプセル製造装置を使用することができる。また、本発明にかかる組成物をケイ酸類、セルロース類等の賦形剤に吸着させ、更に通常用いられる結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を用いて、顆粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤等とすることもできる。
【0011】
【作用】ビタミンE類、シソ油、エゴマ油の融点はそれぞれ約−3℃、約−4℃、約−4℃であり、例えば−8℃において保存すると凍結する。しかし、本発明にかかる組成物は融点が著しく低下するために凍結が起こらない。
【0012】以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが本発明がこれらに限定されるわけではない。
【0013】
【実施例】
実施例1 d−α−トコフェロール10g、エゴマ油(日本油脂社製)6gを室温で攪拌混合してビタミンE含有組成物を得た。
【0014】実施例2 d−α−トコフェロール10g、エゴマ油(日本油脂社製)10gを室温で攪拌混合してビタミンE含有組成物を得た。
【0015】実施例3 d−α−トコフェロール3200g、エゴマ油(日本油脂社製)1920gを室温で攪拌混合してビタミンE含有組成物を得た。得られた組成物を楕円形カプセル型を取りつけた打ち抜き法ソフトカプセル連続自動製造機に供給し、内容物160mgのソフトカプセルを得た。なお、ソフトカプセルの製造に用いたゼラチン皮膜は、ゼラチン50kg、濃グリセリン15kg及び精製水46kgであった。
【0016】
【効果】
効果例1 本発明の効果を示すために、実施例1及び2で得られた試料をガラス容器に入れ、−25℃に保存して外観を観察した。対照試料には、以下の比較例により得られた試料を用いた。
【0017】比較例1 d−α−トコフェロール10g、ダイズ油6gを室温で攪拌混合してビタミンE含有組成物を得た。
【0018】比較例2 d−α−トコフェロール10g、ダイズ油10gを室温で攪拌混合してビタミンE含有組成物を得た。
【0019】比較例3 d−α−トコフェロール10g、コーン油6gを室温で攪拌混合してビタミンE含有組成物を得た。
【0020】比較例4 d−α−トコフェロール10g、コーン油10gを室温で攪拌混合してビタミンE含有組成物を得た。
【0021】結果を表1に示す。
【0022】
【表1】


【0023】表1より本発明にかかる組成物は低温に保存しても凍結しないことが明らかである。
【0024】効果例2 実施例3により得られたソフトカプセル剤を−15℃に保存して、外観を観察した。対照試料には以下の比較例5により得られた試料を用いた。
【0025】比較例5 d−α−トコフェロール3200g、綿実油1920gを室温で攪拌混合し、ビタミンE含有組成物を得、以下実施例3と同様にしてソフトカプセル剤を製造した。結果を表2に示した。
【0026】
【表2】


【0027】表2より、本発明にかかるソフトカプセルは低温に保存しても凍結しないことが明らかである。
【0028】効果例3 d−α−トコフェロール及びシソ油を種々の割合で混合した組成物を−15℃で保存して外観を観察した結果を表3に示した。
【0029】
【表3】


【0030】表3よりビタミンE1重量部に対し、シソ油0.2〜10重量部を配合した場合には1日の保存においては凍結せず、0.4〜4重量部では7日間の保存においても凍結せず、0.4〜3.5重量部では白濁もせず良好な状態を保つことが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】ビタミンE類及びα−リノレン酸を構成脂肪酸として40%以上含む油脂を含有することを特徴とするビタミンE類含有組成物。
【請求項2】ビタミンE類1重量部に対しα−リノレン酸を構成脂肪酸として40%以上含む油脂が0.2〜10重量部である請求項1記載のビタミンE類含有組成物。
【請求項3】α−リノレン酸を構成脂肪酸として40%以上含む油脂がエゴマ油又はシソ油である請求項1又は2記載のビタミンE類含有組成物。
【請求項4】ビタミンE類及びα−リノレン酸を構成脂肪酸として40%以上含む油脂を含有することを特徴とするビタミンE類含有ソフトカプセル。
【請求項5】ビタミンE類1重量部に対しエゴマ油又はシソ油を0.2〜10重量部含有することを特徴とするビタミンE類含有ソフトカプセル。