説明

ビチューメン含有組成物を活性化させるための方法

ビチューメン含有組成物を活性化させるための方法であって、前記方法は、カシューナッツ殻液(CNSL)の蒸留残留物をビチューメン含有組成物に添加する工程を含み、前記蒸留残留物は、250から350℃の温度までのカシューナッツ殻液の蒸留により得られる、方法。有利には、前記ビチューメン含有組成物は、ビチューメン、アスファルト、屋根葺き材、断熱材、支柱被覆材、およびアンチドラムプレートから選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビチューメン含有組成物を活性化させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、ビチューメン含有組成物を活性化させるためのいくつかの方法が知られている。その例は、非特許文献1に開示されている。ここで、以下の活性化添加剤が試験されている:市販の芳香油、芳香自動車リサイクル油、およびSoft 150/200 Penetration Bitumen。最適な組成物は、20%の自動車油と組み合わせた80%の熟成した(aged)ビチューメンを含むことが研究により示された。カシューナッツ殻液は記述されていない。
【0003】
また、ハーグ(オランダ国)のShell Internationale Research Maatschappij BVの名称で、特許文献1は、アスファルトを再利用するための活性化剤および方法を開示している。活性化剤として、ビチューメンおよびパーム油を含む組成物が使用されている。
【0004】
従来技術からの他の公知の活性化剤の例は、パラフィンおよび菜種油などである。しかしながら、これらの剤は、パーム油と同様にビチューメンを非常に軟化するという重大な不利益を有するので、例えばアスファルトなどのビチューメン含有組成物の粘度も非常に低くなる。例えばアスファルトの場合において、これらの剤のために、骨材に対する接着が減少するので、アスファルトの耐久性が低下する。またこれらの剤はビチューメンと混合しにくい。
【0005】
さらに、ビチューメン含有組成物のための活性化剤として使用され得る石油化学樹脂が存在するが、それらは非常に高価である。
【0006】
従来技術において、アスファルトおよび他のビチューメン含有組成物を再利用することは公知である。従来技術において、組成物は、通常、粉砕され、新たな組成物に加えられて調製されるか、または適切な添加剤を加えている間などに再利用される。この場合、常に、新しい新鮮なビチューメンが、組成物の処理可能性および質(耐久性、寿命)を保証するために組成物に加えられなければならない。つまり、実際に使用するのに良好な特性を有する単に再利用されたビチューメン含有材料からなる組成物は、現在まで不可能であることが示されている。既存のそのような組成物は、その劣化特性が重要とみなされない場合に適用されている。例えば、機械加工アスファルトが、道路の側部の補強端部のために、新鮮なビチューメンを加えずに再利用されている。しかしながら、そのような材料は新しい道路面として使用するのに十分に適していない。
【0007】
利用可能な適切なビチューメンの量は、ここ数年でかなり減少してきている。これは、石油が高温で蒸留され、それによって、重質留分が次第に減ってきているという事実の結果である。さらに、重質留分は、より有用で、それにより、より価値のある製品を得るために改良されている。従って、利用可能なビチューメンの量は減少するだけでなく、質も悪くなってきている。そのため、現在では、ビチューメンは、他の化学物質から新規に均一に調製されている。
【0008】
ビチューメン含有組成物は経年劣化を非常に受けやすいので、時間による劣化の特性として時間とともに交換しなければならない。ビチューメン含有組成物の経年劣化は、酸化、物質の蒸発、UVによる攻撃、滲出および配向を含む、異なる機構によって引き起こされ得る。このプロセスにおいて、マルテンがアスファルテンに部分的に変換され、それによって、材料がより脆くなる。経年劣化により、処理および適用についての有益な特性が質の面で減少する。その組成物は、高い頻度で、硬くなり、より脆くなり、柔軟性がなくなり、時間とともに次第に再利用できなくなってくる。
【0009】
ビチューメンは、大部分が道路建設のためのアスファルトに使用されている。腐食および気候の影響により、アスファルトは比較的早く経年劣化し、通常、アスファルトは10年以内に新しくされなければならない。これまで、アスファルトは道路面から取り除かれ、粉砕によりサイズが減少する。粉砕した産物は、少量で新しいアスファルト調製物に再利用される。最近では、良好なアスファルト特性を維持しながら、このような粉砕アスファルトの実際の再利用は、例えば特別な化学物質または新鮮なビチューメンを添加することによって非常に高いコストでのみ可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2008/084014号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】R.Romera,Project 1992−1993/ISSN 0361−1981,Transportation Research Board of the National Academies,Spain,「Rheological Aspects of the rejuvenation of aged bitumen」,2005年,6月27日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、従来技術において、古いビチューメン含有組成物が再利用され得るように、ビチューメンを活性化させるための方法の必要性が存在している。現在まで、このような方法は存在せず、または非常にコストがかかる方法のみで可能であった。
【0013】
本発明は上記の必要性を満たすことを目的とし、従って、ビチューメン含有組成物を活性化するための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の方法は、カシューナッツ殻液(CNSL)の蒸留残留物をビチューメン含有組成物に添加する工程を含み、前記蒸留残留物は、250℃から350℃の温度まで、好ましくは300℃から340℃の温度まで、最も好ましくは310から320℃の温度まで、カシューナッツ殻液を蒸留することによって得られる。
【0015】
驚くべきことに、比較的少量のCNSLのこの特定の蒸留残留物を添加することによって、組成物中のビチューメンが活性化され、その特性が改良され、ビチューメンが再び、その通常の適用に適切になることが見出された。一部の場合において、活性化されたビチューメンは、特定の特性に関して新しく調製されたビチューメンより優れていた。
【0016】
加えられるべきCNSLの蒸留残留物は刺激されないので、使用者に不都合な結果を与えることなく、適切に処理され得る。これは特に、例えばアスファルトが高温になる道路建設において利点がある。さらにCNSLは天然産物であり、非常に技術的に有益性を有する。
【0017】
CNSLはカシューナッツの殻から抽出される樹脂であり、大量に利用可能である。この樹脂は実質的に、フェノール環でメタ置換される、種々の不飽和度を有する実質的に15C原子の長さの鎖を有するフェノール化合物から実質的に完全になる。
【0018】
欧州特許EP−A−1 642935号は、例えば、表面処理のアスファルト混合系の方法のために道路建設に使用されるビチューメン含有結合剤を開示している。その剤は、ビチューメンベースおよびフラックス剤、例えば反応フラックス剤(カシューナッツ殻液(CNSL)、カルドールまたはカルダノール)を含む。この点において、CNSLは、蒸留産物に関し、カシューナッツ殻液の蒸留残留物に関係しない。蒸留産物は、反応形式で特性を変化させることを意図する反応産物である。本発明による蒸留残留物は反応せず、物理的形式においてビチューメン含有組成物の特性を調整する。
【0019】
従来技術において、CNSLは実質的に、その「反応性」蒸留産物を指し、カシューナッツ殻を抽出することによって得られる「非反応性」グリーンカシューナッツ殻液でもなく、本発明による「非反応性」蒸留残留物でもない。
【0020】
本発明に従って使用されるCNSLの蒸留残留物は、主に、室温で液体であるアルキルフェノール樹脂の形態で3−ペンタデセニルフェノールおよび3−ペンタデカジエニルレゾルシノールの重合産物の混合物からなる。鎖の長さは、約13〜16個の炭素原子である。
【0021】
ビチューメンの活性化は、ビチューメンが、使用されるビチューメンより良い特性を回復し、新鮮なビチューメンに有利に匹敵し、特に新鮮なビチューメンより良くなるように、使用されるビチューメンの特性が改良されることを意味することを意図する。
【0022】
蒸留残留物は、有利には、1,000から30,000mPa.s−1、好ましくは1,000から10,000mPa.s−1、より好ましくは1,000から2,500mPa.s−1からなる粘度を有し、最も好ましい粘度は実質的に1,500mPa.s−1である。このような粘度を有する蒸留残留物は、ビチューメンを活性化するのに特に適切である。
【0023】
本発明の特定の実施形態において、蒸留残留物は、1〜5、好ましくは1.2〜1.3の平均飽和率を有する。
【0024】
有利には、ビチューメン含有組成物は以下から選択される:ビチューメン、アスファルト、断熱材、支柱被覆材およびアンチドラムプレート。
【0025】
全てのこれらのビチューメン含有組成物は、本発明によるCNSLの特定の蒸留残留物を添加することによって活性化され得るので、それらは、この添加工程を除外することはできないが、新鮮なビチューメンを添加せずに再利用に適切になる。
【0026】
活性化されたビチューメン含有組成物の特性をさらに改良するために、さらにビチューメン含有組成物は、以下の物質のうちの1つ以上と共に構成されてもよい:植物性か否かに関わらず樹脂、植物性か否かに関わらず油、パラフィン、ポリマー、例えば、EVA、SBS、APP、PE、メタロセンおよび合成ワックス。
【0027】
本発明はさらに、本発明による方法の適用によって活性化されるビチューメン含有組成物を提供する。
【0028】
好ましくは、活性化されるビチューメン含有組成物は以下から選択される:アスファルト、断熱材、屋根葺き材、支柱被覆材、アンチドラムプレート。
【0029】
以下に本発明を、ビチューメン含有組成物を活性化するための方法の多くの実施例と併せてさらに説明する。
【実施例】
【0030】
実施例1
ビチューメンを含有する再利用されたシングル屋根材を活性化するための方法
シングル屋根材は、オランダ国の異なる場所で約20年間屋根の上にあった屋根のウェブ(roof web)を使用した。改築した瓦礫以外に、解体廃材にも関係しているので、屋根のビチューメンの元のものは様々であった。この経年劣化したビチューメンの屋根は、50重量%のアタチックポリプロピレン(App)(ポリマーで修飾されたビチューメン)を含むビチューメンからなり、残りは充填剤と分裂材であった。この屋根材のサイズを機械的に小さくした。
【0031】
さらに、混合物の範囲は、315℃の温度までカシューナッツ殻液を蒸留することによって得た異なる量のCNSL蒸留残留物を添加した屋根材から構成された(図1)。この範囲のサンプルを、1週間80℃で、および12週間70℃で経年劣化を促進させた。両方の経年劣化は、NEN−EN495−5およびまたNEN−EN129に記載される標準的な人工経年劣化法に従って実行した。
【0032】
表1
【表1】

【0033】
これらの試験により、CNSLを用いる経年劣化プロセスが、新しいビチューメン(製品2008)に基づいた屋根材と比べてゆっくりであることが示された。
【0034】
この試験範囲の後、10%から25%のCNSL添加を含むサンプルの試験片を、ヘールフゴヴァールト(オランダ国)において屋根に適用した。プロセスの間、再利用した経年劣化した屋根のビチューメンに10%および15%のCNSLを添加した屋根材は不十分なプロセス特性を示した。12℃の温度の外に置いていた屋根材はプロセスの間、非常に硬くなった。20%を添加した屋根材は最適なプロセス特性を示した。この組成物は、新しいビチューメン(製品2008)に基づいた屋根材とほとんど同様である。
【0035】
実施例2
ビチューメンを含有する再利用された粉砕アスファルト組成物を活性化するための方法
アスファルトでの試験に関して、レオロジー試験を、315℃の温度までカシューナッツ殻液を蒸留することによって得た、異なる割合のCNSL残留物中で混合しながら、経年劣化した道路建設物のビチューメンおよび経年劣化した屋根のビチューメンの混合物の粘度を異なる温度で測定することによって実施した。結果を表2に示す。
【0036】
表2
【表2】

【0037】
レオロジー試験において、屋根のビチューメンおよびCNSLは一定の割合で使用した。その割合は4部の屋根のビチューメン:1部のCNSLの残留物(重量に基づいて)であった。屋根のビチューメンの元のものは、上記の試験と同じであった。経年劣化した道路建設物のビチューメンは、粉砕した異なるアスファルト道路由来のものであった。この粉砕したアスファルトを加熱ドラム中で加熱し、屋根の粉砕物と混合した。まず、屋根の粉砕物をCNSL残留物と予め混合し、次いで冷却し、アスファルトミキサー中の予め加熱した無機物および粉砕したアスファルトに加えた。この混合物を均一に混合し、表3に示すようにさらに試験した。
【0038】
表3
【表3】

【0039】
混合物2を、2008年6月にブレダの商業エリアのアスファルトの試験領域に3mの幅および25mの長さで適用した。このプロセスは、標準的なアスファルト適用機械を用いて通常の方法で実施し、アスファルトはスチールローラーを用いて通常の方法で圧縮した。このアスファルト混合物のプロセスは、通常のDAB0/16と同一であった。また、アスファルトの特性は、DAB0/16に関する製造パラメータの範囲内である(上記の表)。
【0040】
原材料の説明
屋根の粒状物:これは、古いビチューメンの屋根を取り替える際に解体作業員および屋根会社から受け取った異なるビチューメンの屋根の混合物であった。この解体廃材を粉砕し、均一にした。これは実質的に、無機物およびガラス繊維強化材を含むAPPで修飾したビチューメンからなる。粉砕の間に、0.5mm〜15mmの様々なサイズであり得る粒状化を得た。
【0041】
粉砕したアスファルト:これは、粉砕した経年劣化または損傷したアスファルト道路によって得たアスファルト粒状物であった。例えば、DAB、STAB、ZOABなどにおいて異なる質が別々に維持されるように、粉砕は選択的に実施した。粉砕後、粒状物をふるいによって分類した。
【0042】
CNSL残留物:これは、315℃までで生じた未加工のカシューナッツ殻液蒸留の残留産物であった。
【0043】
DAB0/16の主な成分の全ては、残留物のストリーム由来の生成物であり、上記の割合で混合し、アスファルト組成物は新しい原材料に基づいたアスファルトに対応して作製した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビチューメン含有組成物を活性化させるための方法であって、前記方法は、カシューナッツ殻液(CNSL)の蒸留残留物を前記ビチューメン含有組成物に添加する工程を含み、前記蒸留残留物は、250から350℃の温度までのカシューナッツ殻液の蒸留により得られる、方法。
【請求項2】
前記蒸留残留物は、1000から30,000mPa.s−1、好ましくは1,000から10,000mPa.s−1、より好ましくは1,000から2,500mPa.s−1、最も好ましくは実質的に1,500mPa.s−1からなる粘度を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記蒸留残留物は、1〜5の平均飽和率を有し、好ましくは1.2〜1.3の平均飽和率を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ビチューメン含有組成物は、ビチューメン、アスファルト、屋根葺き材、断熱材、支柱被覆材、およびアンチドラムプレートから選択されることを特徴とする、請求項1〜3のうちの1つ以上に記載の方法。
【請求項5】
前記ビチューメン含有組成物は、更に、以下の物質:植物性か否かに関わらず樹脂、植物性か否かに関わらず油、パラフィン、ポリマー、例えば、EVA、SBS、APP、PE、メタロセンおよび合成ワックスのうちの1つ以上と共に構成されることを特徴とする、請求項1〜4のうちの1つ以上に記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のうちの1つ以上に記載される方法を適用することによって活性化される、ビチューメン含有組成物。
【請求項7】
活性化された前記ビチューメン含有組成物は、アスファルト、断熱材、屋根葺き材、支柱被覆材、およびアンチドラムプレートから選択されることを特徴とする、請求項6に記載のビチューメン含有組成物。

【公表番号】特表2012−515829(P2012−515829A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547835(P2011−547835)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際出願番号】PCT/NL2010/000007
【国際公開番号】WO2010/085140
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(511173295)
【Fターム(参考)】