説明

ビデオカメラ

【課題】 ビューファインダの画面領域を全体表示領域とフォーカス合わせ領域とに分けているビデオカメラでは、フォーカス合わせ領域に表示される画像が小さく見づらいため、表示されている画像を見ながら行うマニュアルフォーカスが必ずしも容易ではない。
【解決手段】 マニュアルフォーカス時のフォーカス合わせを行うときには、スイッチ15は端子bに切替接続される。これにより、帯域制限回路22により帯域制限されていない、縮小回路16による縮小処理により折返し歪み成分を含む映像信号がビューファインダへ出力される。フォーカスが合ったときには、ビューファインダに表示される映像信号の高域周波数成分が最も多く得られ、折返し歪み成分が強調されるので、ビューファインダの画面領域全体に表示される画像が、画像エラーの多い、斜め線があるときにはその斜め線がギザギザになる、画質が劣化した画像となるように、フォーカス合わせを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビデオカメラに係り、特に撮影解像度より低い表示解像度のビューファインダを備えたビデオカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビデオカメラはCCD(電荷結合素子)等の固体撮像素子の撮影解像度が急速に高解像度化し、ビューファインダの表示解像度を大幅に上回るものが現れてきている。図3はこのような従来のビデオカメラの一例のブロック図を示す。同図において、撮像素子11は、被写体を撮像して例えば、垂直方向720画素、水平方向1280画素の高画質のHDTV画像(ハイビジョン画像)の映像信号を出力する高撮影解像度のCCDであり、その出力映像信号がY/C処理回路12に供給されて公知の輝度信号(Y)と色差信号(C)を生成するための信号処理が施される。
【0003】
Y/C処理回路12から出力された輝度信号と2種類の色差信号からなるハイビジョン信号は、図示しない記録機構に入力されて記録媒体に記録される一方、解像度変換回路21に供給される。解像度変換回路21は、撮影解像度よりも低い表示解像度のビューファインダに表示するため、あるいはNTSC方式用モニタ装置にて表示するために、ハイビジョン信号を帯域制限回路22により帯域制限した後、縮小回路23によりメモリを用いた公知の縮小処理をして、例えば垂直方向480画素、水平方向720画素の低表示解像度に変換した映像信号を出力する。
【0004】
ここで、帯域制限回路22は、縮小回路23による縮小処理により発生する折返し成分による画質の劣化を防ぐために帯域制限するものである。なお、従来のビデオカメラの中には、回路規模の問題で帯域制限をかけずに縮小処理を行うものもある(この場合は、当然、折返し成分による画質の劣化がある。)。
【0005】
しかしながら、上記の従来のビデオカメラでは、帯域制限して縮小処理した映像信号をビューファインダに表示するようにしているため、画質はきれいであるが、高周波成分が低減されておりビューファインダでは表示画像の高周波成分が確認しづらいため、ビューファインダの表示画像を見ながら、ユーザがマニュアルフォーカスする場合、フォーカスが合わせ難いという問題がある。
【0006】
そこで、ビューファインダ内に表示解像度の高い状態で画像を表示するフォーカス合わせ領域を設け、そのフォーカス合わせ領域にフォーカス合わせ用画像を表示させてマニュアルフォーカスを行うようにしたビデオカメラが従来知られている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、この従来のビデオカメラでは、被写体像を表示する全体表示領域と、全体表示領域よりも表示解像度の高い状態で画像を表示するフォーカス合わせ領域とを設け、高い撮影解像度の撮像素子で得られた映像信号から同じ解像度か、または縮小率を抑えた状態で切り出した映像信号を、フォーカス合わせ領域により映し出すことにより、フォーカス合わせ領域の画像を見ながらオートフォーカスを容易にできるようにしたものである。
【0007】
【特許文献1】特開2001−119611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかるに、上記の特許文献1記載の従来のビデオカメラでは、ビューファインダの画面領域を全体表示領域とフォーカス合わせ領域とに分けているため、フォーカス合わせ領域に表示される画像が小さく見づらいため、表示されている画像を見ながら行うマニュアルフォーカスが必ずしも容易ではない。
【0009】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、ビューファインダの構成を変更することなく、簡単にマニュアルフォーカスを行うための画像をビューファインダに表示し得るビデオカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記の目的を達成するため、撮像素子から出力される映像信号を縮小処理してから、撮影解像度より低い表示解像度のビューファインダに供給して画像表示を行うビデオカメラにおいて、縮小処理により発生する折返し歪み成分の発生を低減するために、撮像素子から出力される映像信号に対して帯域制限を行ってから縮小処理を行わせる帯域制限手段と、マニュアルフォーカス時は帯域制限手段により帯域制限されていない映像信号を選択してビューファインダに供給し、画質優先時は帯域制限手段により帯域制限された映像信号を選択してビューファインダに供給する選択手段とを有することを特徴とする。
【0011】
この発明では、マニュアルフォーカス時は帯域制限手段により帯域制限されていない映像信号を選択してビューファインダに表示させるようにしたため、マニュアルフォーカス時はビューファインダの画面領域全体に縮小処理により発生する折返し歪み成分を含む画像が表示され、フォーカスが合ったときには、映像信号の高域周波数成分が最も多くなるので、上記折返し歪み成分が最も強調された画像が表示される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マニュアルフォーカス時はビューファインダの画面領域全体に縮小処理により発生する折返し歪み成分を含む画像を表示し、フォーカスが合ったときには、映像信号の高域周波数成分が最も多くなり、上記折返し歪み成分が最も強調された画像を表示させるようにしたので、フォーカス合わせを、ビューファインダの画面領域全体に大きく表示される画像全体の偽信号の変化を見ることで行うことができ、フォーカスが合わせ易く、簡単にフォーカスを手動で合わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。図1は本発明になるビデオカメラの一実施の形態のブロック図を示す。同図中、図3と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図1に示す実施の形態は、従来のビデオカメラと比べて、解像度変換回路13の構成に特徴がある。解像度変換回路13は、帯域制限回路14、スイッチ15及び縮小回路16からなる。
【0014】
帯域制限回路14は、従来のビデオカメラと同様に、縮小回路16による縮小処理の際に発生する折返し歪みを低減するために設けられている。スイッチ15は、帯域制限のオン/オフスイッチで、帯域制限回路14から出力された帯域制限後映像信号と、Y/C処理回路12から出力された帯域制限されていない映像信号とのうち、一方の映像信号を選択して縮小回路16に供給する。
【0015】
次に、本実施の形態の動作について説明する。画質優先時には、スイッチ15が端子aに接続され、帯域制限回路14から出力された帯域制限後映像信号がスイッチ15を介して縮小回路16に供給される。これにより、この画質優先時には、図3に示した従来のビデオカメラと同様に、撮像して得られた、例えば垂直方向720画素、水平方向1280画素のハイビジョン信号は帯域制限回路22により帯域制限された後、縮小回路23によりメモリを用いた公知の縮小処理により、例えば垂直方向480画素、水平方向720画素の低表示解像度に変換された映像信号がビューファインダあるいはNTSC方式用モニタ表示装置へ出力される。
【0016】
次に、マニュアルフォーカス時のフォーカス合わせを行うときには、スイッチ15は端子bに切替接続される。これにより、スイッチ15によりY/C処理回路12から出力された、帯域制限されていない映像信号、すなわちハイビジョン信号として記録される映像信号が選択されて縮小回路16に供給され、縮小処理が行われ、例えば垂直方向480画素、水平方向720画素の低表示解像度に変換されるも、帯域制限回路22により帯域制限されていないため、縮小処理により折返し歪み成分を含む映像信号がビューファインダあるいはNTSC方式用モニタ表示装置へ出力されることとなる。
【0017】
従って、このマニュアルフォーカス時には、ビューファインダの画面領域全体に、縮小処理により折返し歪み成分を含む低表示解像度の映像信号による画像が表示される。ここで、フォーカスが合ったときには、フォーカスが合っていない時に比べてビューファインダに表示される映像信号の高域周波数成分が最も多く得られる状態である。一方、前記折返し歪み成分は、映像信号の高域側に混入する。
【0018】
従って、ビューファインダに表示される画像は、フォーカスが合っていないときには、高域周波数成分が少ないぼけた画像であるが、フォーカスが合うと、映像信号の高域周波数成分が多く得られるので、折返し歪み成分による偽信号が発生し、画像エラーの多い、また、斜め線があるときにはその斜め線が途切れ途切れ(ギザギザ)になる、画質が劣化した画像となる。
【0019】
すなわち、ユーザは、マニュアルフォーカス時には、ビューファインダの画面領域全体に表示される画像が、ボケた画像から画像エラーの多い劣化した画質の画像に変化するように、フォーカスを合わせる。このフォーカス合わせは、ビューファインダの画面領域全体に大きく表示される画像全体の偽信号の変化を見ることで行われるため、フォーカスが合わせ易く、簡単にフォーカスを手動で合わせることができる。
【0020】
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。図2は本発明になるビデオカメラの他の実施の形態のブロック図を示す。同図中、図1と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図2に示す実施の形態は、図1に示した本発明の一実施の形態のビデオカメラと比べて、解像度変換回路18の構成に特徴がある。
【0021】
解像度変換回路18は、帯域制限回路14、高域フィルタ(HPF)19、スイッチ20及び縮小回路16からなる。HPF19は、Y/C処理回路12から出力されたハイビジョン信号の高域周波数成分を周波数選択して出力する。スイッチ20は帯域制限回路14から出力された帯域制限後映像信号と、HPF19から出力された高域周波数成分とのうち、一方の信号を選択して縮小回路16に供給する。
【0022】
次に、本実施の形態の動作について説明する。画質優先時には、スイッチ20が端子aに接続され、帯域制限回路14から出力された帯域制限後映像信号がスイッチ20を介して縮小回路16に供給される。これにより、この画質優先時には、従来のビデオカメラ及び図1の実施の形態と同様の動作が行われ、ビューファインダには折返し歪みのない縮小画像が表示される。
【0023】
次に、マニュアルフォーカス時のフォーカス合わせを行うときには、スイッチ20は端子bに切替接続される。これにより、スイッチ20により帯域制限されていない映像信号、すなわちハイビジョン信号からHPF19により周波数選択された高域周波数成分が選択されて、縮小回路16に供給されて縮小処理が行われ、例えば垂直方向480画素、水平方向720画素の低表示解像度に変換されるも、帯域制限回路14により帯域制限されていないため、縮小処理により発生する折返し歪み成分を含む映像信号がビューファインダあるいはNTSC方式用モニタ表示装置へ出力されることとなる。
【0024】
従って、このマニュアルフォーカス時には、ビューファインダの画面領域全体に、縮小処理により折返し歪み成分を含む低表示解像度の映像信号による画像が表示される点は図1の実施の形態と同様であるが、本実施の形態では、ビューファインダには、ハイビジョン信号の高域周波数成分が縮小表示されるので、高域成分が強調された画像が表示され、フォーカスが合ったときには、より折返し歪み成分が強調された画像が表示される。
【0025】
すなわち、本実施の形態では、図1の実施の形態に比べてビューファインダに表示される画像は、高域成分の強調により元の画像とはかけ離れてしまうが、マニュアルフォーカス時には、よりフォーカスが合ったかどうかを確認させ易い画像がビューファインダの画面領域全体に得られる。従って、本実施の形態によれば、図1の実施の形態に比べて、よりフォーカスが合わせ易いという効果がある。
【0026】
なお、本発明は以上の実施の形態に限定されるものではなく、例えば、記録機能は必ずしも有していなくてもよく、また、ビューファインダは液晶表示素子(LCD)による開閉自在なビューアでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態のブロック図である。
【図2】本発明の他の実施の形態のブロック図である。
【図3】従来の一例のブロック図である。
【符号の説明】
【0028】
11 撮像素子
12 Y/C処理回路
13、18 解像度変換回路
14 帯域制限回路
15、20 スイッチ
16 縮小回路
19 高域フィルタ(HPF)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子から出力される映像信号を縮小処理してから、撮影解像度より低い表示解像度のビューファインダに供給して画像表示を行うビデオカメラにおいて、
前記縮小処理により発生する折返し歪み成分の発生を低減するために、前記撮像素子から出力される前記映像信号に対して帯域制限を行ってから前記縮小処理を行わせる帯域制限手段と、
マニュアルフォーカス時は前記帯域制限手段により帯域制限されていない前記映像信号を選択して前記ビューファインダに供給し、画質優先時は前記帯域制限手段により帯域制限された映像信号を選択して前記ビューファインダに供給する選択手段と
を有することを特徴とするビデオカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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