説明

ビニルエステル樹脂組成物

本発明は、(a)ビニルエステル樹脂を30〜70重量%と、(b)反応性希釈剤を30〜70重量%とを含む樹脂組成物であって、反応性希釈剤としてメタクリレート含有化合物およびイタコン酸エステルをさらに含む樹脂組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、(a)ビニルエステル樹脂を30〜70重量%と、(b)反応性希釈剤を30〜70重量%とを含む樹脂組成物に関する。
【0002】
反応性希釈剤としてメタクリレート含有化合物を含むこのような樹脂組成物は、例えば国際公開第2008/077586号パンフレットに記載されている。国際公開第2008/077586号パンフレットには、この種の樹脂組成物が再ライニングに好適に適用できることが記載されている。樹脂組成物の取扱い性の観点からは、樹脂組成物の粘度が高過ぎないことが望ましい。例えば、再ライニングには樹脂組成物を繊維に含浸させることが含まれる。したがって、取扱い性および含浸時間を考慮すれば粘度が過度に高くない樹脂組成物が用いられるであろう。粘度が非常に重要であるという事実は他の多くの用途、例えば、ケミカルアンカー、注入、真空注入だけでなく、より低粘度の樹脂を用いることでより円滑に進行するオープンモールド用途等の単純な積層工程にも当てはまる。そのため、樹脂組成物の粘度を低下させる方法が強く望まれている。粘度を低下させる方法の1つは反応性希釈剤をより多量に添加することであるが、樹脂組成物中の樹脂含有量が低下するため、硬化後の樹脂組成物の機械的性質の低下を招くのが通常である。
【0003】
本発明の目的は、粘度が低下されている一方で、硬化物の例えば引張強度、引張弾性率、曲げ強度、および/または曲げ弾性率で示される機械的性質が維持されるかあるいは改善さえされている樹脂組成物を得ることにある。
【0004】
驚くべきことに、このことは、メタクリレート反応性希釈剤の一部を反応性希釈剤としてのイタコン酸のエステルと置き換えることによって達成できることが見出された。したがって、本発明による樹脂組成物は、反応性希釈剤としてメタクリレート含有化合物およびイタコン酸のエステルを含む。
【0005】
さらなる驚くべき利点は、硬化物の破断伸度も改善される可能性があることにある。
【0006】
本発明による組成物は、少なくとも1種のビニルエステル樹脂を30〜70重量%含む。特段の指定がない限り、本明細書において重量%で与えられる量はすべてビニルエステル樹脂(a)および反応性希釈剤(b)の総重量に対する。本発明によるビニルエステル樹脂組成物中に含まれるビニルエステル樹脂自体は当業者に周知のビニルエステル樹脂から適切に選択することができる。ビニルエステル樹脂が使用される理由は主として耐加水分解性および極めて優れた機械的性質を有する点にある。末端の位置にのみ不飽和部位を有するビニルエステル樹脂は、例えば、エポキシオリゴマーまたはポリマー(例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ、またはテトラブロモビスフェノールAをベースとするエポキシ)を、例えば(メタ)アクリル酸と反応させることにより調製される。(メタ)アクリル酸に替えて(メタ)アクリルアミドも使用してもよい。本明細書において用いられるビニルエステル樹脂とは、少なくとも1個の(メタ)アクリレート官能性末端基を含むオリゴマーまたはポリマーであり、(メタ)アクリレート官能性樹脂としても周知である。これには、ビニルエステルウレタン樹脂(ウレタン(メタ)アクリレート樹脂とも称される)の分類も含まれる。好ましいビニルエステル樹脂は、ウレタンメタクリレート樹脂や、エポキシオリゴマーまたはポリマーをメタクリル酸またはメタクリルアミド(好ましくはメタクリル酸)と反応させることにより得られる樹脂等のメタクリレート官能性樹脂である。最も好ましいビニルエステル樹脂は、エポキシオリゴマーまたはポリマーをメタクリル酸と反応させることにより得られる樹脂である。
【0007】
本発明によるビニルエステル樹脂組成物中に含まれるビニルエステル樹脂そのものの分子量Mnは、好ましくは500〜3000ダルトンの範囲、より好ましくは500〜1500の範囲にある。本明細書において用いられるビニルエステル樹脂の分子量はISO 13885−1に準拠し、ポリスチレン標準および分子量測定用に設計された適切なカラム用いたゲル浸透クロマトグラフィーによりテトラヒドロフラン(tetrahydrofrane)中で測定される。ビニルエステル樹脂の酸価は、好ましくは0〜50mgKOH/g樹脂の範囲、より好ましくは0〜30mgKOH/g樹脂の範囲にある。本明細書において用いられるビニルエステル樹脂の酸価はISO 2114−2000に準拠して滴定法により測定される。
【0008】
本発明によるビニルエステル樹脂は、少なくとも1種のメタクリレート反応性希釈剤を含む。樹脂組成物がビニルエステル樹脂としてメタクリレート官能性樹脂(methacrylate functional resin)を含む場合、本発明による樹脂組成物は、反応性希釈剤として、このメタクリレート官能性樹脂とは異なるメタクリレート含有化合物を含む。メタクリレート反応性希釈剤は少なくとも1個の反応性メタクリレート基を含む希釈剤である。メタクリレート反応性希釈剤の非限定的な例として、単官能性および二官能性メタクリレートが挙げられる。
【0009】
本発明による樹脂組成物は反応性希釈剤を含む。希釈剤は、例えば、樹脂組成物の取扱いをより容易にすることを目的として粘度を低減するために適用されるであろう。明瞭化のため、反応性希釈剤とは、本発明による組成物中に存在するビニルエステル樹脂と共重合可能な希釈剤とする。
【0010】
本発明の好ましい実施形態においては、メタクリレート反応性希釈剤の少なくとも25重量%は分子量Mが200〜500の範囲にある二官能性メタクリレート希釈剤である。分子量Mが200〜500の範囲にある二官能性反応性希釈剤の好適な例は、PEG200ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートおよびその異性体、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、PPG250ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、および/またはテトラエチレングリコールジメタクリレートである。好ましくは、二官能性メタクリレート希釈剤は、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PEG200ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、および/またはトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートから選択される。この好ましい実施形態においては、樹脂組成物は、好ましくはテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、および/またはヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレートから選択される単官能性メタクリレートをさらに含む。
【0011】
本樹脂組成物は他のエチレン性不飽和反応性希釈剤、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルピロリドン、およびN−ビニルカプロラクタムをさらに含んでいてもよい。好ましくは、本樹脂組成物はスチレンを2重量%未満含み、好ましくは、本樹脂組成物は基本的にスチレンを含まない。スチレンは、調製および硬化の最中や想定内の長期使用期間中にさえ放出される可能性があり、望ましくない悪臭の原因となったり、毒性作用を引き起こしたりする可能性さえあるので、スチレンが低量であることは有利である。
【0012】
本樹脂組成物は、好ましくは、樹脂組成物をラジカル硬化させるための開始助剤を0.00001〜10重量%の量でさらに含む。好ましい開始助剤はアミンまたは遷移金属化合物である。
【0013】
本組成物中に存在し得るアミン開始助剤は、好ましくは芳香族アミンであり、よりさらに好ましくは第3級芳香族アミンである。好適な促進剤(accelerator)としては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン;トルイジンおよびキシリジン(N,N−ジイソプロパノール−パラ−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)キシリジンおよびトルイジン等)が挙げられる。樹脂組成物中のアミンの量は、通常は少なくとも0.00001重量%、好ましくは少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.1重量%である。一般に、樹脂組成物中のアミンの量は、最大で10重量%、好ましくは最大5重量%である。
【0014】
開始助剤として好適な遷移金属化合物の例は、原子番号が22〜29の範囲または原子番号が38〜49の範囲または原子番号が57〜79の範囲にある、バナジウム、鉄、マンガン、銅、ニッケル、モリブデン、タングステン、コバルト、クロム化合物等の遷移金属化合物である。好ましい遷移金属は、V、Cu、Co、Mn、およびFeである。
【0015】
好ましくは、樹脂組成物は、好ましくはフェノール化合物、ベンゾキノン、ヒドロキノン、カテコール、安定なラジカル、および/またはフェノチアジンの群から選択される1種またはそれ以上のラジカル禁止剤をさらに含む。しかしながら、本発明の文脈において使用されるラジカル禁止剤の量は多少広い範囲で変化させてもよく、達成したいゲル化時間の1つの目安(first indication)として選択してもよい。
【0016】
本発明による樹脂組成物中に使用することができるラジカル禁止剤の好適な例は、例えば、2−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2,4,6−トリス−ジメチルアミノメチルフェノール、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、6,6’−ジ−t−ブチル−2,2’−メチレンジ−p−クレゾール、ヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,6−ジメチルヒドロキノン、2,3,5−トリメチルヒドロキノン、カテコール、4−t−ブチルカテコール、4,6−ジ−t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、2,3,5,6−テトラクロロ−1,4−ベンゾキノン、メチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、ナフトキノン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オール(TEMPOLとも称される化合物)、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オン(TEMPONとも称される化合物)、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−カルボキシル−ピペリジン(4−カルボキシ−TEMPOとも称される化合物)、1−オキシル−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン、1−オキシル−2,2,5,5−テトラメチル−3−カルボキシルピロリジン(3−カルボキシ−PROXYL)、アルミニウム−N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、ガルビノキシル、フェノチアジン、および/またはこれらの任意の化合物の誘導体もしくは組合せである。
【0017】
有利には、本発明による樹脂組成物中のラジカル禁止剤の量は0.0001〜10重量%の範囲にある。より好ましくは、樹脂組成物中の禁止剤の量は0.001〜1重量%の範囲にある。当業者であれば、選択された禁止剤の種類に応じて本発明により良好な結果が得られる量を非常に容易に決定することができるであろう。
【0018】
本発明による樹脂組成物は反応性希釈剤としてのイタコン酸のエステル(以下、イタコン酸エステルと称する)を好ましくは5〜50重量%の量で含む。
【0019】
イタコン酸エステルは、好ましくはイタコン酸モノ(シクロ)アルキルエステル、イタコン酸ジ(シクロ)アルキルエステル、ジオールジイタコン酸エステル、およびトリオールトリイタコン酸エステルから選択される。好ましいイタコン酸モノ(シクロ)アルキルエステルはイタコン酸C5〜C8シクロアルキルエステルおよびイタコン酸C1〜C12アルキルエステル、より好ましくはイタコン酸C1〜C6アルキルエステルである。好ましいイタコン酸ジ(シクロ)アルキルエステルはイタコン酸ジC5〜C8シクロアルキルエステル、イタコン酸ジC1〜C12アルキルエステル、より好ましくはイタコン酸ジC1〜C6アルキルエステルである。
【0020】
イタコン酸アルキルエステルの例としては、イタコン酸メチル、イタコン酸エチル、イタコン酸プロピル、イタコン酸イソプロピル、イタコン酸ヒドロキシエチルがある。イタコン酸シクロアルキルエステルの好ましい例としては、イタコン酸シクロヘキシルがある。イタコン酸ジアルキルエステルの例としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジプロピル、イタコン酸ジイソプロピル、イタコン酸ジヒドロキシエチル、イタコン酸ジヘキシルがある。イタコン酸ジシクロアルキルエステルの好ましい例としては、イタコン酸ジシクロヘキシルがある。ジオールジイタコン酸エステルの例としては、例えば、ブタンジオールジイタコネート、ブタンジオールジイタコネートジメチルエステル、(ポリ)エチレングリコールジイタコネート、(ポリ)エチレングリコールジイタコネートジエチルエステル、(ポリ)プロピレングリコールジイタコネート、(ポリ)プロピレングリコールジイタコネートジエチルエステルがある。トリオールトリイタコン酸エステルの例としては、例えば、トリメチロールプロパントリイタコネート、トリメチロールプロパントリイタコネートトリメチルエステル、ならびにそのエトキシ化およびプロポキシ化形態がある。
【0021】
好ましい実施形態においては、本発明による組成物は、イタコン酸エステルとしてイタコン酸のジエステルを含む。より好ましい実施形態においては、イタコン酸エステルとしてイタコン酸のジエステルが使用される。イタコン酸のジエステルは、好ましくは式
【化1】



(式中、AおよびBは同一であっても異なっていてもよく、Aおよび/またはBは1〜12個の炭素原子、より好ましくは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基である)
を有する。最も好ましくは、反応性希釈剤としてイタコン酸ジメチルが使用される。
【0022】
本組成物は、好ましくは、イタコン酸エステルを、反応性希釈剤の総量に対し5〜95重量%、好ましくは15〜85重量%、より好ましくは20〜80重量%の量で含む。好ましくは、イタコン酸エステルは、例えばトウモロコシ等の非化石資源に由来する。
【0023】
メタクリレート含有化合物(ビニルエステル樹脂を除く)およびイタコン酸エステルの重量比は、好ましくは10:1〜1:10、より好ましくは5:1〜1:5、よりさらに好ましくは4:1〜1:4の範囲にある。その理由は、比率がこの範囲内にあると本発明の有利な効果が一層顕著に表れるためである。
【0024】
さらに本発明は、本発明による樹脂組成物をラジカル硬化させる方法であって、上述した樹脂組成物に開始剤を加えることにより硬化を実施する方法に関する。好ましくは、硬化は、−20〜+200℃の範囲、好ましくは−20〜+100℃の範囲、最も好ましくは−10〜+60℃の範囲の温度(いわゆる低温硬化)で実施される。開始剤は光開始剤、熱開始剤、および/またはレドックス開始剤である。
【0025】
本明細書における光開始剤は、照射により硬化を開始させることができるものを意味する。光開始とは、好適な波長の光の照射(光照射)を用いて硬化させることと理解される。これは光硬化とも称される。
【0026】
光開始系は、光開始剤そのもので構成されていてもよいし、あるいは光開始剤および増感剤の組合せであってもよいし、あるいは光開始剤の混合物(場合により1種またはそれ以上の増感剤を併用)であってもよい。
【0027】
本発明の文脈において使用することができる光開始系は当業者に周知の広範囲な光開始系群から選択することができる。非常に多くの好適な光開始系を、例えば、「UVおよびEB製剤の化学技術(Chemistry and Technology of UV and EB Formulations)」、第3巻、第2版、K.DietlikerおよびJ.V.Crivello(SITA Technology,ロンドン(London);1998)から探すことができる。
【0028】
熱開始剤は、アゾ化合物(例えばアゾイソブチロニトリル(AIBN)等)、C−Cが不安定な化合物(例えば、ベンゾピナコールや過酸化物等)、およびこれらの混合物から選択することができる。熱開始剤は、好ましくは、有機過酸化物または2種以上の有機過酸化物の組合せである。
【0029】
レドックス開始剤は、好ましくは、有機過酸化物と上述の開始助剤の少なくとも1種との組合せである。好適な過酸化物の例は、例えば、ハイドロパーオキサイド、パーオキシカーボネート(式−OC(O)OO−を有するもの)、パーオキシエステル(式−C(O)OO−を有するもの)、ジアシルパーオキサイド(式−C(O)OOC(O)−のもの)、ジアルキルパーオキサイド(式−OO−のもの)等である。
【0030】
さらに本発明は、この種のビニルエステル樹脂組成物を、上述した開始剤を用いて硬化させることにより調製される物品または構造部品にも関する。本明細書において用いられる構造用樹脂組成物とは、構造部品を提供することができるものである。一般に、この種の樹脂組成物は非水系である。これらは水を最大5重量%含み、これは主として樹脂調製反応中に生じたものである。本明細書における構造部品とは、厚みが少なくとも0.5mmで適切な機械的性質を有するとみなされるものを意味する。本発明による樹脂組成物を適用することができる最終分野は、例えば、自動車部品、船、ケミカルアンカー、屋根材、建設、容器、再ライニング、パイプ、タンク、床材、風車の羽根である。
【0031】
ここで一連の実施例および比較例を用いて本発明を具体的に示す。すべての実施例は特許請求の範囲を支持するものである。しかしながら、本発明は実施例に示す特定の実施形態に限定されない。
【0032】
[実施例1〜5および比較実験A]
Atlac 5808(DSM Composite Resins B.V.より市販)を55g、ブタンジオールジメタクリレートをxg、ポリエチレングリコールジメタクリレートをyg、イタコン酸ジメチルをzg、およびコバルト溶液(NL−49P)を30gを用いて樹脂配合物を調製した。表1を参照されたい。
【0033】
過酸化物としてButanox M50を2重量%使用し、以下に記載する配合に従いこれらの樹脂配合物の4mmの注型品を調製した。注型品を離型した後、60℃で24時間、次いで80℃で24時間後硬化させた。次いで、注型品を機械分析にかけた。
【0034】
硬化物の機械的性質をISO 527−2に準拠して測定した。荷重たわみ温度(HDT)をISO 75−Aに準拠して測定した。粘度測定のための試験方法はISO 3219に準拠する。
【0035】
硬化は標準的なゲル化時間測定装置(gel time equipment)で観測した。これは、前述したように樹脂を過酸化物で硬化させてDIN 16945の方法に準拠して発熱測定を行うことによりゲル化時間(TgelまたはT25→35℃)およびピーク時間(peak time)(TpeakまたはT25→peak)の両方を測定したことを意味することを意図している。
【0036】
【表1】



【0037】
これらの実験から、イタコン酸エステルを使用すると樹脂組成物の粘度を低下させることができると同時に硬化物の機械的性質が維持されるかまたは改善さえされることがはっきりと示される。さらに、多くの場合、引張強度および弾性率の両方(剛性の目安)に加えて破断伸度(可撓性の目安)が向上する。通常は剛性を獲得するとその代償として可撓性が低下するので、このことは驚くべきことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ビニルエステル樹脂を30〜70重量%と、(b)反応性希釈剤を30〜70重量%とを含む樹脂組成物であって、反応性希釈剤として、メタクリレート含有化合物およびイタコン酸のエステルを含むことを特徴とする、樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂組成物がイタコン酸エステルを5〜50重量%の量で含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記メタクリレート反応性希釈剤の少なくとも25重量%が、分子量Mが200〜500の範囲にある二官能性メタクリレート希釈剤であることを特徴とする、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記二官能性メタクリレート希釈剤が、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PEG200ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、および/またはトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートから選択されることを特徴とする、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記ビニルエステル樹脂が、エポキシオリゴマーまたはポリマーとメタクリル酸との反応により得られることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
イタコン酸エステルとしてイタコン酸のジエステルが使用されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記イタコン酸の前記ジエステルが、式
【化1】



(式中、AおよびBは同一であっても異なっていてもよく、Aおよび/またはBはアルキル基である)
を有することを特徴とする、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
AおよびBが、1〜12個の炭素原子を有する同一または異なるアルキル基であることを特徴とする、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記組成物が、イタコン酸ジメチルを含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記イタコン酸の前記エステルが、非化石資源に由来することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記組成物が、好ましくはイタコン酸のエステルを、反応性希釈剤の総量に対し5〜95重量%、好ましくは15〜85重量%、より好ましくは20〜80重量%の量で含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
メタクリレート含有化合物(ビニルエステル樹脂を除く)およびイタコン酸エステルの重量比が10:1〜1:10の範囲にあることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の樹脂組成物をラジカル硬化させる方法であって、前記硬化が、開始剤を添加することにより実施されることを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の樹脂組成物から、開始剤を用いて硬化させることによって得られる硬化物または構造部品。
【請求項15】
請求項14に記載の硬化物または構造部品の、自動車部品、船、ケミカルアンカー、屋根材、建設、容器、再ライニング、パイプ、タンク、床材、風車の羽根における使用。

【公表番号】特表2012−521464(P2012−521464A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501291(P2012−501291)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053808
【国際公開番号】WO2010/108939
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】