説明

ビニル系樹脂粒子の製造方法

【課題】 本発明は、粒子表面に窪みを有するビニル系樹脂微粒子の製造方法であって、煩雑な製造工程を経ることがない、安価に該樹脂粒子を製造可能なビニル系樹脂微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明のビニル系樹脂粒子の製造方法は、水性媒体中にて可塑剤を含むビニル系単量体を撹拌することにより、該ビニル系単量体の液滴が微細に分散された混合液を得る分散工程と、該混合液中のビニル系単量体を反応器内で重合する重合工程とからなる、粒子表面に窪みを有する平均粒径が1〜200μmのビニル系樹脂粒子の製造方法であって、
該分散工程におけるビニル系単量体には、可塑剤として脂肪酸エステル、流動パラフィン、又はオレフィンの群から選択される1種又は2種以上が、ビニル系単量体100重量部に対して0.1〜3重量部添加されており、
該重合工程において、ビニル系単量体の重合転化率が40〜98%の状態で、溶解度パラメーターが13〜17(MPa)1/2の炭化水素を前記混合溶液に添加することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニル系樹脂微粒子の製造方法に関し、詳しくは表面に窪みを有すると共にその平均粒径が1〜200μmであるビニル系樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平均粒径が数μm〜数十μm程度の樹脂微粒子が、塗料、化粧品、光拡散剤などの分野において多様な目的で使用されている。
しかしながら、一般的に用いられている樹脂微粒子の形状は真球状であることから、塗料の艶消し性や隠蔽性の付与、化粧品の散乱性や付着性の付与などの高機能化が求められる場合には改善の余地を残すものであった。
【0003】
そこで、真球状の樹脂微粒子の機能をより高めるために、表面に窪みを有する樹脂微粒子の開発が試みられてきた。しかしながら、得られる粒子が多孔質であったり、窪みの形状が歪でいたりするものが多かった。これらに対し、特許文献1に開示されている方法により、表面に良好な窪みを有する樹脂微粒子を得ることはできるようになった。特許文献1の方法は、架橋剤の不存在下で、重合性ビニルモノマー100重量部に、この重合性ビニルモノマーと共重合性を有さず、かつ25℃における粘度が0.1〜3cSt未満である疎水性のフッ素系液状有機化合物3〜40重量部を溶解し、水系懸濁重合することで、その表面に椀状の窪みを有する球状樹脂粒子を得るというものである。しかしながら、この方法には、特殊なフッ素系の液状化合物を用いるため、最終的に樹脂粒子とフッ素系化合物との分離操作が必要であることから、工業的規模で生産し、使用することについてのコスト上の困難性があった。
【0004】
【特許文献1】特開2002−88102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解消するためになされたものであり、粒子表面に窪みを有するビニル系樹脂微粒子の製造方法であって、煩雑な製造工程を経ることがない、安価に該樹脂粒子を製造可能なビニル系樹脂微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するために種々検討を重ねた結果、特定の可塑剤含むビニル系単量体を高速撹拌することによりビニル系単量体の液滴を微細に分散させた混合液を製造し、これを反応器内で撹拌しながら樹脂粒子を重合する際に、重合反応の転化率を目安に特定の炭化水素を添加することにより、粒子表面に窪みを有するビニル系樹脂微粒子が製造できることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
即ち、本発明によれば、以下に示すビニル系樹脂粒子の製造方法が提供される。
〔1〕水性媒体中にて可塑剤を含むビニル系単量体を撹拌することにより、該ビニル系単量体の液滴が微細に分散された混合液を得る分散工程と、該混合液中のビニル系単量体を反応器内で重合する重合工程とからなる、粒子表面に窪みを有する平均粒径が1〜200μmのビニル系樹脂粒子の製造方法であって、
該分散工程におけるビニル系単量体には、可塑剤として脂肪酸エステル、流動パラフィン、又はオレフィンの群から選択される1種又は2種以上が、ビニル系単量体100重量部に対して0.1〜3重量部添加されており、
該重合工程において、ビニル系単量体の重合転化率が40〜98%の状態で、溶解度パラメーターが13〜17(MPa)1/2の炭化水素を前記混合溶液に添加することを特徴とするビニル系樹脂粒子の製造方法。
〔2〕該炭化水素の添加量がビニル系単量体100重量部に対して1〜30重量部であることを特徴とする前記〔1〕に記載のビニル系樹脂粒子の製造方法。
〔3〕該炭化水素の沸点が80℃未満であることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載のビニル系樹脂粒子の製造方法。
〔4〕該ビニル系単量体がアクリル酸エステル、或いは、アクリル酸エステルとアクリル酸エステル以外の1種以上のビニル系単量体とからなることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のビニル系樹脂粒子の製造方法。
〔5〕該ビニル系単量体がメタクリル酸メチル、スチレンおよびα−メチルスチレンからなることを特徴とする前記〔4〕に記載のビニル系樹脂粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、分散工程において、特定の可塑剤が特定量添加された状態のビニル系単量体を分散させ、重合工程において、特定の炭化水素を添加すると共に該炭化水素の添加時期を調整してビニル系単量体を重合することにより、平均粒径が1〜200μm且つ表面に窪みを有するビニル系樹脂粒子を容易に得ることができる。本発明の製造方法によれば、特許文献1で採用されているような特殊なフッ素系液状化合物を用いなくとも表面に窪みを有するビニル系樹脂粒子を得ることができるので、樹脂粒子とフッ素系化合物との分離操作のような煩雑な工程を必要としない。従って、表面に窪みを有するビニル系樹脂粒子を工業的規模で大量且つ安価に製造することができる。また、本発明によれば、重合工程において特定の炭化水素の添加時期を調整すること等により樹脂粒子表面に形成される窪みの数や大きさを調整することが容易にできるため、電気、電子分野、医療分野、化学分野、化粧品分野、その他の工業分野の要求に適応できる樹脂粒子を容易に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のビニル系樹脂粒子の製造方法について詳細に説明する。
本発明のビニル系樹脂粒子(以下、単に樹脂粒子ともいう。)の製造方法は1)分散工程とこれに続く2)重合工程とからなり、これらの工程を経ることにより、平均粒径が1〜200μmであると共に表面に窪みを有する樹脂粒子が得られる。
【0010】
前記1)分散工程は、水性媒体中にてビニル系単量体を撹拌することにより、該ビニル系単量体の液滴が微細に分散された混合液を得る工程であり、前記2)重合工程は該混合液中のビニル系単量体を反応器内で重合する工程である。1)分散工程と2)重合工程とからなる樹脂粒子の製造方法としては、乳化重合法、懸濁重合法、シード重合法などが挙げられ、その中でも以下に具体例として示すような懸濁重合法が好ましい。まず、1)分散工程において、乳化装置を備えた容器に、水性媒体、懸濁剤、アニオン系界面活性剤を投入し、次いで、ビニル系単量体、重合開始剤を投入する。乳化装置の高せん断撹拌により、ビニル系単量体を水性媒体中に微細な液体として分散させて、乳化液としてから、2)重合工程において、該乳化液を、撹拌装置を備えた反応器に投入し、窒素置換により反応器内の酸素を除去した後、撹拌しながら反応器を加熱し、所定温度で所定時間、ビニル系単量体を重合させる。本明細書では、以下、懸濁重合法を例にとって説明するが、本発明の技術に基づき他の重合法においても当然に樹脂粒子表面に窪みを有するビニル系樹脂粒子が製造できる。
【0011】
本発明において使用される水性媒体としては、脱イオン水、純水等が挙げられる。
【0012】
本発明において使用されるビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−オクチルスチレン、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム等のビニル芳香族系化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有不飽和化合物等が挙げられる。
【0013】
該ビニル系単量体は、得られる樹脂粒子の使用目的に応じて、1種、あるいは2種以上を組み合わせて使用される。なお、本発明において樹脂粒子表面の窪みの数や大きさを調整し易くなることから、ビニル系単量体としては、前記アクリル酸エステル、或いは、前記アクリル酸エステルと前記アクリル酸エステル以外の1種以上のビニル系単量体との組合せが好ましく、更にメタクリル酸メチル、スチレンおよびα−メチルスチレンを組み合わせて使用することが好ましい。この場合の配合量としては、前記アクリル酸エステルと前記アクリル酸エステル以外の1種以上のビニル系単量体との組合せにおいては、アクリル酸エステルを50〜100重量%、その他のビニル系単量体を0〜50重量%とすること(但し、これらの合計は100重量%である。)が好ましく、メタクリル酸メチルとスチレンとα−メチルスチレンとの組合せにおいては、メタクリル酸メチル50重量%以上100重量%未満、スチレン0重量%超50重量%未満、α−メチルスチレン0重量%超15重量%以下(但し、これらの合計は100重量%である。)が好ましい。
【0014】
本発明において使用される重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系化合物、クメンヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ラウロイルパーオキサイドなどの単量体に可溶な開始剤があげられる。重合開始剤の量は、通常、仕込みビニル系単量体の全重量100重量部に対して0.01〜3重量部が好ましい。
【0015】
本発明においては、得られる樹脂粒子の分子量を調整するために、例えば、n−ドデシルメルカプタンやα−メチルスチレンダイマー等の連鎖移動剤をビニル単量体に添加しても良い。
【0016】
また、本発明で添加される前記懸濁剤としては、例えば、リン酸三カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第2鉄、水酸化チタン、水酸化マグネシウム、リン酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、ベントナイト等の微粒子状の難水溶性無機塩が挙げられる。より好ましくは、リン酸三カルシウムやハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウムである。
【0017】
該懸濁剤の使用量は、懸濁重合系の水性媒体(反応生成物含有スラリーなどの水を含む系内の全ての水をいう)100重量部に対して、通常、固形分量として0.05〜20重量部、好ましくは0.3〜15重量部である。0.05重量部未満の場合は、ビニル系単量体を懸濁安定化することができずに樹脂の塊状物が発生することがあり、20重量部を超えると製造コストの面から好ましくないだけではなく、粒度分布が広くなるという問題が生じやすい。
【0018】
本発明で添加される前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、αオレインスルホン酸ナトリウム、ドデシルフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム等が挙げられる。好ましくは、炭素数8〜20のアルキルスルホン酸アルカリ金属塩(好ましくはナトリウム塩)、更に好ましくは、ラウリルスルホン酸アルカリ金属塩(好ましくはナトリウム塩)である。これにより、優れた懸濁安定化の効果が得られる。また、懸濁剤中に必要に応じて、例えば塩化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等の無機塩類等の電解質を加えることができる。
【0019】
本発明方法により得られる樹脂粒子の平均粒径は1〜200μmである。この範囲内に平均粒径を調整するには、懸濁剤に添加されるアニオン系界面活性剤等の種類や量、撹拌条件等によりビニル系単量体の分散状態を制御すればよい。なお、当然のことながら、得られた樹脂粒子を分級することにより平均粒径を調整することができる。
【0020】
本明細書における樹脂粒子の平均粒径とは、体積平均粒子径のことをいう。なお、体積平均粒子径は、樹脂粒子を水中に分散させ、レーザー回折散乱法(日機装株式会社製マイクロトラックMT−3300EX)により粒度分布を測定し、全粒子の体積に対する累積体積が50%になる時の粒子径として求められる。
【0021】
樹脂粒子表面に窪みを有する樹脂粒子を得るためには、1)分散工程におけるビニル系単量体として、脂肪酸エステル、流動パラフィン、及びオレフィンの群から選択される1種又は2種以上の可塑剤を、ビニル系単量体100重量部に対して0.1〜3重量部添加したものを使用することを要し、更に2)重合工程においてビニル系単量体の重合転化率が40〜98%の状態で、溶解度パラメーターが13〜17(MPa)1/2の炭化水素を異形化剤として該混合溶液に添加することを要する。
【0022】
前記1)分散工程において使用される可塑剤含有ビニル系単量体には、前記の通り該可塑剤として脂肪酸エステル、流動パラフィン、及びオレフィンの群から選択される1種又は2種以上のものが使用されるが、それらの中でも特に、窪みの密度、深さ、及び開口部の直径を調整することが比較的容易にできる観点から、脂肪酸エステルが好ましく使用される。なお、窪みの密度、深さ、及び開口部の直径については、詳しく後述する。
【0023】
前記脂肪酸エステルとしては、2−エチルヘキサン酸ヘキサデシル、ヤシ脂肪酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2―エチルヘキシル、牛脂脂肪酸メチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸2―エチルヘキシル、ステアリン酸イソトリデシル、カプリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、オレイン酸メチル、オレイン酸イソブチル、オレイン酸オクチル、オレイン酸ラウリル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル、オレイン酸2―エチルヘキシル、オレイン酸デシル、オレイン酸イソブチル等の脂肪酸と1価のアルコールのエステル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート、ポリエチレングリコールモノラウエート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリンモノオレエート、グリセリントリ−2−エチルヘキサレート、硬化牛脂、硬化ヒマシ油等の脂肪酸と多価アルコールのエステルが例示される。また、これらの脂肪酸エステルは、単独で又は混合して使用することができる。
【0024】
これらの脂肪酸エステルの中でも、グリセリントリステアレートを使用することが、窪みの密度0.5個/100μm以上、窪みの深さ0.05μm以上の樹脂粒子を容易に得ることができるので好ましい。
【0025】
また、前記流動パラフィンとしては、C(n<2m+2、mは炭素数)で示される分岐構造、環構造を有する脂環式炭化水素化合物またはそれらの混合物が挙げられる。窪みの大きさ及び数を調整する観点から流動パラフィンの平均炭素数は、10〜40個であることが好ましく、特に好ましくは20〜35個である。該炭素数が小さすぎる場合には窪みが形成され難くなり、一方、該炭素数が大きすぎる場合には、窪みの開口部の直径が小さくなり易い。
【0026】
また、前記オレフィンとしては、炭素数が10〜40個のオレフィン、又はこれらの混合物を意味するが、炭素数が15〜35個のもの、又はこれらの混合物が好ましい。オレフィンとしては特にα−オレフィンが好ましい。オレフィンの炭素数が小さすぎる場合には、窪みが形成され難くなり、一方、該炭素数が大きすぎる場合には、窪みの開口部の直径が小さくなり易い。
【0027】
前記可塑剤の添加量(複数の可塑剤を使用する場合は、それらの合計添加量)は、ビニル系モノマー100重量部当たり、0.1〜3重量部であり、好ましくは0.3〜2重量部である。この範囲内であると、得られる樹脂粒子表面に複数の窪みを容易に形成することができる。0.1重量部未満では、樹脂粒子の表面に窪みを形成するという目的が達成できない虞がある。一方、3重量部超では、懸濁系が不安定になり、重合時に樹脂粒子が凝結する虞がある。
なお、前記可塑剤をビニル系モノマーに添加する方法としては、特に制限はないが、重合に使用するビニル系単量体中に予め所定量を添加して溶解させておく方法が好ましい。
【0028】
本発明の2)重合工程においては、窪みを形成するための炭化水素(異形化剤)として前記可塑剤と共に作用する、溶解度パラメーター(以下、SP値ともいう。)が13〜17(MPa)1/2、好ましくは14〜16(MPa)1/2の炭化水素が使用される。SP値が13〜17(MPa)1/2である炭化水素としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、デカン、リモネンなどが挙げられ、その中でも特にペンタン、リモネンがビニル系単量体との相溶性の観点から好ましい。
【0029】
尚、本明細書におけるSP値とは、分子間の凝集エネルギー密度の平方根に相当するもので、この値は下記(1)式の通り、物理的に1cmの液体を蒸発させるのに必要なエネルギー量を1/2乗した値で、単位体積当たりの極性の大きさを示す数値である。本明細書におけるSP値は、下記(1)式に基づき求められる値とする。
SP値(MPa)1/2=(△E/V)1/2=((△H−RT)/V)1/2
=(((△H−RT)d/M)1/2 ・・・(1)
△E:蒸発エネルギー(J/mol)、V:分子容(cm/mol)、△H:蒸発潜熱(J/mol)、R:気体定数=8.314J/(mol・K)、T:絶対温度(K)、d:密度(g/cm)、M:分子量(g/mol)
【0030】
また、本発明で用いられる炭化水素の沸点は、80℃未満であることが好ましい。該沸点が80℃未満であることにより、得られた樹脂粒子から炭化水素を容易に除去でき、樹脂粒子中に該炭化水素が残留することを極力抑えることができる。
【0031】
本発明方法の2)重合工程においては、前記炭化水素は、ビニル系単量体の重合転化率が40〜98%、好ましくは40〜80%の状態で、反応器内の混合溶液に添加される。
なお、該炭化水素を混合溶液に添加する重合転化率が40〜98%の状態とするための具体的な温度、時間の反応条件調整は、各種組成物の配合、重合条件等により一概に決定することはできないが、例えば、(1)反応器内のスラリーを撹拌しながら、概ね80℃まで0.4〜0.8℃/分で昇温後、その温度にて3〜9時間、撹拌しながら保持すること、(2)反応器内のスラリーを撹拌しながら、概ね80℃まで0.4〜0.8℃/分で昇温後、昇温速度を遅くして概ね115℃まで更に昇温しつつ、3〜9時間かけて撹拌しながら保持すること、或いは(3)反応器内のスラリーを撹拌しながら、概ね80℃まで0.4〜0.8℃/分で昇温後、昇温速度を遅くして概ね115℃まで更に昇温し、その温度にて撹拌しながら保持すると共に前記80℃到達以降の操作を3〜9時間かけて行うこと等により調整できる。
【0032】
なお、本発明における重合転化率は次の通り求めることができる。
炭化水素を添加する前の反応器から餅状ポリマー約5gをろ紙に取り出し、ポリマーをろ紙で軽く押さえつけ水分をろ紙に吸い取る。ろ紙上から餅状ポリマー約1.5gを20mlのビーカに取って、小数点以下4桁まで秤量(g)し「再沈前の重量」とする。
次いで、20mlのビーカ中のポリマーにクロロホルムを、ポリマー1g(純度100%として)に対してクロロホルム5〜6mlの割合で、加えてポリマーをクロロホルムに溶解させる。別に用意した200mlビーカに120〜130mlのメタノールを入れ、スターラーチップで撹拌しながら、メタノールを入れたビーカに先に用意したクロロホルム溶液を少しずつ滴下させる。最後に、20mlのビーカにもメタノール10mlを注ぎ、器壁についたポリマーを回収して、その溶液を200mlビーカに加える。次いで該200mlビーカ中の溶液を数時間撹拌した後にろ過して、ポリマーを回収する。回収したポリマーを風乾後、80℃、1日以上の条件にて真空乾燥器にて乾燥を行う。この操作により得られたポリマーの回収量を小数点以下4桁まで秤量(g)し「再沈後の重量」とする。
【0033】
前記の通り求められた「再沈前の重量」と「再沈後の重量」とを下記(2)式に代入することにより、重合転化率(%)を求めることができる。
重合転化率(%)=(「再沈後の重量」/「再沈前の重量」)×100…(2)
【0034】
該重合転化率が40%未満で炭化水素を添加した場合やSP値が13(MPa)1/2未満の炭化水素を使用した場合では、後述する相分離が起り難く、樹脂粒子の表面に窪みがある樹脂粒子は得られない虞がある。一方、該重合転化率が98%を超える場合にも、樹脂粒子の表面に窪みがある樹脂粒子は得られない虞がある。また、SP値が17(MPa)1/2を超える炭化水素を使用した場合には、樹脂粒子が凝集し、甚だしい場合には固まって一体化して凝結しまう虞がある。
【0035】
前記炭化水素の混合溶液中への添加量は、ビニル系単量体100重量部に対して、1〜30重量部、更に3〜20重量部であることが好ましく、特に4〜17重量部が好ましい。該炭化水素の添加量がビニル系単量体100重量部に対して、少なすぎる場合には、後述する相分離が起りにくく、樹脂粒子の表面に窪みがある樹脂粒子は得られない虞があり、該炭化水素の添加量が多すぎる場合には、懸濁系が不安定になり樹脂粒子が得られない虞がある。
【0036】
該炭化水素の混合溶液への添加方法としては、連続的もしくは断続的に供給してもよい。また、窪みの開口部の直径や窪みの深さや窪みの密度は、炭化水素の種類や添加量、添加時期、添加速度により調整することができる。具体的には、炭化水素としてSP値が13〜17(MPa)1/2の炭化水素を使用することにより、相分離を起こすのに必要な量の炭化水素が樹脂粒子に吸収されやすくなる。該炭化水素の添加量を増やすと相分離を起こすのに必要な量の炭化水素を樹脂粒子に吸収され得るが、多すぎると樹脂粒子が凝集し、甚だしい場合には固まって一体化して凝結してしまう虞がある。また、炭化水素の添加時期を早くすると相分離を起こすのに必要な量の炭化水素を樹脂粒子に吸収させる十分な時間を確保することができる。一方、炭化水素の添加時期が遅すぎると、相分離を起こすのに必要な量の炭化水素を樹脂粒子に吸収させる十分な時間が確保できない。また、炭化水素の混合溶液への添加速度を早くすると、相分離を起こすのに必要な量の炭化水素を樹脂粒子に吸収させ易くなる。また、窪みの開口部の直径や窪みの深さや窪みの密度との関係において、炭化水素のSP値が大きいほど、添加量が多いほど、添加時期が早いほど、添加速度が速いほど、開口部の直径が大きくなり、窪みの深さが深くなり、窪みの密度が小さくなる傾向にある。
【0037】
本発明において、粒子表面に複数の窪みを有するビニル系樹脂粒子が得られる機構は、定かではないが、モノマーやポリマーに溶解していた炭化水素および前記可塑剤が、重合の進行とともに、ポリマーの相と、炭化水素や可塑剤の相とが相分離を起こして炭化水素や可塑剤が除去され、その跡が窪みになると推察される。尚、本発明では、相分離の状態を制御するために、α−メチルスチレンやα−メチルスチレンダイマーを用いて重合速度や重合体粘度を制御しているが、α−メチルスチレンダイマー以外の連鎖移動剤を用いることや、重合開始剤の種類、量、あるいは重合温度条件を変更することで調整することも可能である。
【0038】
次に、本発明の方法によって得られる樹脂粒子表面に窪みを有するビニル系樹脂粒子について詳述する。
本発明方法により得られるビニル系樹脂粒子は、図1の概念図で示すように、その表面に窪みを有するものである。窪みの形状は、図2〜4に示されるように、概ね円形に窪んだ形状をしており、さながらクレーター状のものである。樹脂粒子の表面には、このような窪みが1つの樹脂粒子に対して一個以上、好ましくは複数個形成される。
【0039】
本発明により形成される、樹脂粒子の窪みの平均個数は、概ね1.0〜200個であり、該樹脂粒子の用途にもよるが、好ましくは1.2〜20個である。該窪みの開口部の直径は、概ね0.1〜15μmであり、該樹脂粒子の用途にもよるが、好ましくは0.8〜10μmである。樹脂粒子の窪みの深さは、概ね0.03〜5μmであり、該樹脂粒子の用途にもよるが、好ましくは0.05〜3μmである。樹脂粒子の窪みの密度は、概ね0.3〜200個/100μmであり、該樹脂粒子の用途にもよるが、好ましくは0.5〜20個/100μmである。
【0040】
前記窪みの平均個数とは、任意の樹脂粒子20個について樹脂粒子表面の窪みの数を計測し、得られた値の算術平均値として算出される値である。具体的には、ビニル系樹脂粒子表面を走査型電子顕微鏡により2000倍に拡大して写真撮影し、任意の樹脂粒子20個について各々の窪みの個数を計測し、計測した20個の樹脂粒子の窪みの個数の算術平均値として算出される値である。
【0041】
前記窪みの開口部の直径とは、樹脂粒子表面の任意の窪み20箇所について開口部の直径を計測し、得られた値の算術平均値として算出される値である。具体的には、ビニル系樹脂粒子表面を走査型電子顕微鏡により、2000倍に拡大して写真撮影し、任意の20箇所の窪み開口部について最大直径を測定し、測定した20箇所の直径の算術平均値として算出される値である。
【0042】
前記窪みの深さとは、樹脂粒子表面の任意の窪み20箇所について窪みの深さを計測し、得られた値の算術平均値として算出される値である。具体的には、樹脂粒子をナノスケールハイブリッド顕微鏡により、1250倍に拡大して写真撮影し、窪みの最大深さをカンチレバー(20nm)のたわみ量により任意に20箇所について測定し、測定した20箇所の深さの算術平均値として算出される値である。
【0043】
前記窪みの密度とは、樹脂粒子表面を走査型電子顕微鏡により2000倍に拡大して写真撮影し、任意の樹脂粒子20個について、各々の樹脂粒子表面の窪みの数を計測すると共に、計測した樹脂粒子の直径等に基づき該樹脂粒子の表面積を計算し、各々の樹脂粒子の表面積100μm当たりの窪みの数を算出し、算出した20個の樹脂粒子の表面積100μm当たりの窪みの数の算術平均値として算出される値である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明により得られる表面に窪みを有するビニル系樹脂粒子は、光拡散剤や、化粧品、潜在、塗料などへの添加剤用途に使用でき、更に窪みを有することによる機能性を生かした各種用途に使用できるものである。
【実施例】
【0045】
以下、本発明について具体的な実施例により詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0046】
実施例1
撹拌翼を備えた容量3Lの反応器(オートクレーブ)に脱イオン水1kgを入れ、更にピロリン酸ナトリウム16.2gを加えて溶解させた後、粉末状の硝酸マグネシウム・6水和物37.5gを加え、室温で30分撹拌して懸濁剤としてのピロリン酸マグネシウムを合成し反応生成物含有スラリーを調整した。
【0047】
次いで、この反応生成物含有スラリーに、ラウリルスルホン酸ナトリウム10重量%水溶液5gと、予めビニル系単量体としてメタクリル酸メチル375g、スチレン90g、α−メチルスチレン35gに重合開始剤としての過酸化ベンゾイル2.5g(日本油脂社製ナイパーBW、水希釈粉体品)、連鎖移動剤としてα−メチルスチレンダイマー(日本油脂社製ノフマーMSD)1g、脂肪酸エステル(可塑剤)としてグリセリントリステアレート(日本油脂社製牛脂極度硬化油)5gを溶解させた溶液を加えた後、その混合溶液をホモジナイザー(Mテクニック社製)にて、回転数10000rpmで10分間撹拌して、スラリー中にビニル系単量体を微細に分散させた。
【0048】
次いで、オートクレーブ内を窒素置換した後、撹拌翼を回転数200rpmで撹拌しながら、昇温を開始し、1時間半かけて80℃(重合開始温度)まで昇温した。80℃到達後、続いて115℃まで6時間かけて昇温し、そのまま115℃で5時間保持した後、30℃まで約6時間かけて冷却した。なお、上記昇温工程において、オートクレーブ内が80℃(重合開始温度)に到達してから5時間後に炭化水素(異形化剤)としてペンタン(n−ペンタン80%とイソペンタン20%の混合物)75gを約60分かけ、オートクレーブ内に添加した。
【0049】
冷却後、内容物を取り出し、濃度67.5重量%の硝酸水溶液を25ml添加し、15分間撹拌して、樹脂粒子の表面に付着した懸濁剤を溶解させた。その後、遠心分離機で脱水・洗浄し、真空乾燥機で水分を除去し、樹脂粒子を得た。
なお、実施例1で得られた樹脂粒子の顕微鏡写真を図2に示す。
【0050】
実施例2
オートクレーブ内が80℃(重合開始温度)に到達してから3時間後に炭化水素(異形化剤)としてのペンタン(n−ペンタン80%とイソペンタン20%の混合物)75gを60分かけてオートクレーブ内に添加した以外は実施例1と同様に実施して、樹脂粒子を得た。
【0051】
実施例3
脂肪酸エステル(可塑剤)としてのグリセリントリステアレート(日本油脂社製牛脂極度硬化油)2.5g、炭化水素(異形化剤)としてブタン(ノルマルブタン20%とイソブタン80%の混合物)50gを用いた以外は実施例1と同様に実施して、樹脂粒子を得た。
なお、実施例3で得られた樹脂粒子の顕微鏡写真を図3に示す。
【0052】
実施例4
脂肪酸エステル(可塑剤)としてグリセリントリ−2−エチルヘキサレート(花王社製エキセパールTGO)10gを用いた以外は実施例1と同様に実施して、樹脂粒子を得た。
【0053】
実施例5
ビニル系単量体としてメタクリル酸メチル465g、α−メチルスチレン35gを用いた以外は実施例1と同様に実施して、樹脂粒子を得た。
【0054】
実施例6
脂肪酸エステル(可塑剤)としてグリセリンモノステアレート1.5g、炭化水素(異形化剤)としてシクロヘキサン25gを用いた以外は実施例1と同様に実施して、樹脂粒子を得た。
【0055】
実施例7
メタクリル酸メチル285g、スチレン180g、α−メチルスチレン35g、脂肪酸エステル(可塑剤)としてグリセリントリステアレート(日本油脂社製牛脂極度硬化油)10g、炭化水素(異形化剤)としてリモネンを用い、オートクレーブ内が80℃(重合開始温度)に到達してから4時間後に炭化水素(異形化剤)としてのリモネン50gを60分かけてオートクレーブ内に添加した以外は実施例1と同様に実施して、樹脂粒子を得た。
【0056】
実施例8
脂肪酸エステル(可塑剤)としてソルビタンモノオレエート(花王社製エマゾールO−10(F))5g、炭化水素(異形化剤)としてデカン75gを用いた以外は実施例1と同様に実施して、樹脂粒子を得た。
なお、実施例8で得られた樹脂粒子の顕微鏡写真を図4に示す。
【0057】
実施例9
オートクレーブ内が80℃(重合開始温度)に到達してから9時間後に炭化水素(異形化剤)としてのペンタン(n−ペンタン80%とイソペンタン20%の混合物)75gを60分かけてオートクレーブ内に添加した以外は実施例1と同様に実施して、樹脂粒子を得た。
【0058】
実施例10
撹拌翼を備えた容量3Lの反応器(オートクレーブ)に脱イオン水1200kgを入れ、更にピロリン酸ナトリウム19.4gを加えて溶解させた後、粉末状の硝酸マグネシウム・6水和物45gを加え、室温で30分撹拌して懸濁剤としてのピロリン酸マグネシウムを合成し反応生成物含有スラリーを調整した。
次いで、この反応生成物含有スラリーに、ラウリルスルホン酸ナトリウム10重量%水溶液6gと、予めビニル系単量体としてメタクリル酸メチル300gに重合開始剤としての過酸化ベンゾイル1.2g(日本油脂社製ナイパーBW、水希釈粉体品)、脂肪酸エステル(可塑剤)としてグリセリントリステアレート(日本油脂社製牛脂極度硬化油)3gを溶解させた溶液を加えた後、その混合溶液をホモジナイザー(Mテクニック社製)にて、回転数10000rpmで10分間撹拌して、スラリー中にビニル系単量体を微細に分散させた。
【0059】
次いで、オートクレーブ内を窒素置換した後、撹拌翼を回転数200rpmで撹拌しながら、昇温を開始し、1時間半かけて80℃(重合開始温度)まで昇温した。80℃到達後、続いて115℃まで6時間かけて昇温し、そのまま115℃で5時間保持した後、30℃まで約6時間かけて冷却した。なお、上記昇温工程において、オートクレーブ内が80℃(重合開始温度)に到達してから5時間後に炭化水素(異形化剤)としてペンタン(n−ペンタン80%とイソペンタン20%の混合物)45gを約60分かけて、オートクレーブ内に添加した。
【0060】
冷却後、内容物を取り出し、濃度67.5重量%の硝酸水溶液を25ml添加し、15分間撹拌して、樹脂粒子の表面に付着した懸濁剤を溶解させた。その後、遠心分離機で脱水・洗浄し、真空乾燥機で水分を除去し、樹脂粒子を得た。
【0061】
比較例1
オートクレーブ内が80℃(重合開始温度)に到達してから2時間後に炭化水素(異形化剤)としてのペンタン(n−ペンタン80%とイソペンタン20%の混合物)75gを60分かけてオートクレーブ内に添加した以外は実施例1と同様に実施して、樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子表面には、窪みが形成されていなかった。
【0062】
比較例2
炭化水素(異形化剤)としてネオペンタン25gを用いた以外は実施例1と同様に実施して、樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子表面には、窪みが形成されていなかった。
なお、比較例2で得られた樹脂粒子の顕微鏡写真を図5に示す。
【0063】
比較例3
炭化水素(異形化剤)としてキシレン25gを用いた以外は実施例1と同様に実施して、樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子は凝結しており、凝結体の平均径は200μmより大きい状態であった。
【0064】
比較例4
脂肪酸エステル(可塑剤)の代わりにキシレン5gを用いた以外は実施例1と同様に実施して、樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子表面に、窪みは形成されていたが、平均個数(樹脂粒子1個当りに換算)は、0.3個であった。
【0065】
比較例5
炭化水素(異形化剤)を用いなかった以外は実施例1と同様に実施して、樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子表面には、窪みが形成されていなかった。
【0066】
比較例6
オートクレーブ内が80℃(重合開始温度)に到達してから10時間後に炭化水素(異形化剤)としてのペンタン(n−ペンタン80%とイソペンタン20%の混合物)75gを60分かけてオートクレーブ内に添加した以外は実施例1と同様に実施して、樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子表面には、窪みが形成されていなかった。
【0067】
比較例7
脂肪酸エステル(可塑剤)を用いなかった以外は実施例1と同様に実施して、樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子表面には、窪みが形成されていなかった。
【0068】
比較例8
脂肪酸エステル(可塑剤)としてグリセリントリステアレート(日本油脂社製牛脂極度硬化油)25gを添加した以外は実施例1と同様に実施して、樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子は凝結しており、凝結体の平均径は200μmより大きい状態であった。
【0069】
以上の各実施例及び各比較例で得られた樹脂粒子の平均粒径、窪みの平均個数、密度、開口部の直径、および深さを測定し、その結果を表1、2に示した。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
表1、2における平均粒径の測定には、測定装置として日機装株式会社製マイクロトラックMT−3300EXを使用してレーザー回折散乱法により粒度分布を測定し、全粒子の体積に対する累積体積が50%になる時の体積平均粒子径を求めた。また、その際、粒子の形状ファクターは非球形とした。
【0073】
また、表1、2における窪みの平均個数、窪みの密度、窪みの開口部の直径の測定には、測定装置としてキーエンス社製走査型電子顕微鏡VE7800を使用して樹脂粒子表面を撮影しそれぞれの値を測定した。
【0074】
また、表1、2における窪みの深さの測定には、測定装置としてキーエンス社製ナノスケールハイブリッド顕微鏡VN8000を使用して樹脂粒子を撮影し、樹脂粒子表面の窪みの深さをカンチレバー(20nm)のたわみ量により計測した。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は、窪み開口部の最大直径、窪みの最大深さを示す概念図である。
【図2】図2は、実施例1にて得られた樹脂粒子の顕微鏡写真である。
【図3】図3は、実施例3にて得られた樹脂粒子の顕微鏡写真である。
【図4】図4は、実施例8にて得られた樹脂粒子の顕微鏡写真である。
【図5】図5は、比較例2にて得られた樹脂粒子の顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中にて可塑剤を含むビニル系単量体を撹拌することにより、該ビニル系単量体の液滴が微細に分散された混合液を得る分散工程と、該混合液中のビニル系単量体を反応器内で重合する重合工程とからなる、粒子表面に窪みを有する平均粒径が1〜200μmのビニル系樹脂粒子の製造方法であって、
該分散工程におけるビニル系単量体には、可塑剤として脂肪酸エステル、流動パラフィン、又はオレフィンの群から選択される1種又は2種以上が、ビニル系単量体100重量部に対して0.1〜3重量部添加されており、
該重合工程において、ビニル系単量体の重合転化率が40〜98%の状態で、溶解度パラメーターが13〜17(MPa)1/2の炭化水素を前記混合溶液に添加することを特徴とするビニル系樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
該炭化水素の添加量がビニル系単量体100重量部に対して1〜30重量部であることを特徴とする請求項1に記載のビニル系樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
該炭化水素の沸点が80℃未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載のビニル系樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
該ビニル系単量体がアクリル酸エステル、或いは、アクリル酸エステルとアクリル酸エステル以外の1種以上のビニル系単量体とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のビニル系樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
該ビニル系単量体がメタクリル酸メチル、スチレンおよびα−メチルスチレンからなることを特徴とする請求項4に記載のビニル系樹脂粒子の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−101119(P2008−101119A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284956(P2006−284956)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【Fターム(参考)】