説明

ビニールシート掛け装置

【課題】 一人乃至少人数で簡単かつ安全にビニールシート掛け作業を行うことができ、風の強い日でもビニールシートの展張・固定作業が進められ、しかも作業員によってビニールシートを引っ張る作業を行わなくても適度なテンションを付与して掛けた分から逐次速やかに固定することができるビニールシート掛け装置を提供する。
【解決手段】 屋根骨組部材52aに沿って長尺状に形成され、ビニールシートSを載置可能なフレーム状に形成されたシート載置用フレーム2と、このシート載置用フレーム2の下側に設けられ、隣設する屋根骨組部材52aの間隔よりも長尺な長さに形成され、ビニールハウス5の尾根方向に沿って屋根骨組み上を滑走可能な滑走用ソリ部3と、シート載置用フレーム2の後端側に設けられ、ビニールシートSを後方側に繰り出す際に上下方向から狭持しつつ後方へ送り出して展張させるシート展張部4とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニールハウスの屋根部分を構成する屋根骨組みにビニールシートを掛けるためのビニールシート掛け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ビニールハウスの屋根部分を構成する屋根骨組みにビニールシートを掛ける作業は、多くの作業員による手作業によって行われている。具体的には、2〜3人がかりでビニールシートの一端を押さえ付けておき、ビニールハウスの両側に二人、屋根骨組みの上に一人の作業員が配置され、ビニールシートの他端を引っ張りながら屋根骨組みに掛ける作業が進められている。
【0003】
また、このようなビニールシート掛け作業を補助するための技術が提案されている。例えば、特開平8−214710号公報には、屋根骨組みの上を棟方向に沿って可動な走行部と、この走行部に屋根骨組みから浮上した状態に設置され、屋根骨組みのアーチ形状にほぼ沿って棟とほぼ直交する状態のシート載置架台とを備えたビニールハウスにおける屋根シート展張用補助具が提案されている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−214710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような多くの作業員による手作業でビニールシート掛け作業を行う場合、大きくて重たいビニールシートを広範囲にかけて広げなければならず、極めて重労働である。また、屋根骨組み上に配置される作業員は、高所での作業となるため危険であり、腕力のある熟練した作業員でなければスムーズに作業を進められないという問題もある。
【0006】
また、通常、ビニールシートは、所定の位置に正確に広げた後、その位置がずれないように複数の作業員が押さえ付けながら骨組みに固定している。このため、風の強い日には、押さえ付ける作業自体が困難であるし、ビニールシートが強風で吹き飛ばされてしまうおそれもある。
【0007】
さらに、上述したビニールシート掛け作業においては、通常、ビニールシートを地面に置いた状態から屋根骨組みの上まで引っ張りながら持ち上げている。このため、ビニールシートを骨組に引っ掛けてしまい、ビニールシート表面に施されている無滴加工を傷つけてその効果を低減させてしまったり、最悪の場合、ビニールシートを破いたり、穴を開けてしまうという問題がある。
【0008】
また、上記特許文献1に記載された発明においては、単なる補助具に過ぎない。つまり、単に、屋根シートをシート載置架台に載置しているだけであり、その繰り出しを規制あるいは調節する手段が設けられていない。このため、屋根シートは、何ら制限されることなく自由に繰り出され、ビニールハウスとして好適なテンションを付与されることがないため、だぶついた状態で骨組みに固定されてしまう。したがって、結局、複数の作業員が屋根の端部を持って展張させる作業が必要となる。
【0009】
また、上記特許文献1においては、屋根シート展張用補助具を移動させるための走行部として、単に、そり状フレームを備えているだけである。このため、屋根骨組み上を滑走移動させている間に左右方向の重心バランスが崩れると、屋根シート展張用補助具が骨組み上を横滑りして地面に落下してしまうおそれがあり、作業者に衝突して怪我をさせてしまうおそれがある。
【0010】
さらに、上記特許文献1においては、くの字状のジョイントを用いて各パイプを連結することにより、シート載置架台を多角形状に湾曲させている。しかしながら、屋根骨組みの湾曲度合が異なるビニールハウスに使用する場合には、その都度、屈曲角度の異なるジョイントに交換して各パイプを連結し直さなければならず、面倒な作業を伴い非効率的である。
【0011】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、一人乃至少人数で簡単かつ安全にビニールシート掛け作業を行うことができ、風の強い日でもビニールシートの展張・固定作業が進められ、しかも作業員によってビニールシートを引っ張る作業を行わなくても適度なテンションを付与して掛けた分から逐次速やかに固定することができるビニールシート掛け装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るビニールシート掛け装置の特徴は、ビニールハウスの屋根部を構成する屋根骨組部材に沿って長尺状に形成されるとともに、折り畳まれた屋根用のビニールシートを載置可能なフレーム状に形成されたシート載置用フレームと、このシート載置用フレームの下側に設けられ、隣設されている前記屋根骨組部材の間隔よりも長尺な長さに形成され、ビニールハウスの尾根方向に沿って屋根骨組み上を滑走可能な滑走用ソリ部と、前記シート載置用フレームの後端側に設けられ、このシート載置用フレームに載置されたビニールシートを後方側に繰り出す際に、当該ビニールシートを上下方向から狭持しつつ後方へ送り出して展張させるシート展張部とを有する点にある。
【0013】
また、本発明において、シート載置用フレームは、前記屋根骨組部材の形状に沿って変形可能なリンク状連接部を備えていることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明において、前記シート展張部は、前記屋根骨組部材に沿って所定間隔を隔てて複数設けられており、前記シート載置用フレームの後方側に回転自在に軸支された下部ローラと、前記シート載置用フレームの前方側から後方側までの長さを有しており、ビニールシートを載置するために前方側端部を開閉自在に軸支された開閉アームと、この開閉アームの後方側の自由端部に回転自在に軸支された上部ローラと、この上部ローラを前記下部ローラに押圧させる付勢部材とをそれぞれ有していることが好ましい。
【0015】
また、本発明において、前記上部ローラの回転軸に固定されて同軸回転し、その外周面には周方向に沿って所定間隔を隔てて係止穴が形成されたストッパーローラと、このストッパーローラの係止穴に係合しうる逆回転防止ストッパーとを有しており、前記係止穴は、前記上部ローラが前記ビニールシートを送り出す方向に正回転するときには前記逆回転防止ストッパーが係止することなく摺接しうる傾斜摺接面を備えているとともに、前記上部ローラが逆回転したときには前記逆回転防止ストッパーが係止しうる係止壁面を備えていることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明において、隣接されている前記屋根骨組部材の間隔よりも短い長さに形成されているとともに、前記ビニールハウスの尾根に沿って構成された尾根骨組部材の両側に対で配置され、かつ、前記尾根骨組部材の長手方向に沿って回転自在に軸支された位置ズレ防止ストッパーを有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、一人乃至少人数で簡単かつ安全にビニールシート掛け作業を行うことができ、風の強い日でもビニールシートの展張・固定作業が進められ、しかも作業員によってビニールシートを引っ張る作業を行わなくても常に適度なテンションを付与するためビニールシートを掛けた分から逐次速やかに固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るビニールシート掛け装置の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態のビニールシート掛け装置1を示す斜視図であり、図2から図4は、本実施形態のビニールシート掛け装置1をビニールハウス5の骨組み上に載置した状態を示す正面図、平面図および側面図である。
【0019】
図1から図4に示すように、本実施形態のビニールシート掛け装置1は、主として、ビニールシートSを載置するためのシート載置用フレーム2と、このシート載置用フレーム2の下面に設けられる滑走用ソリ部3と、前記シート載置用フレーム2からビニールシートSを狭持しつつ送り出して展張させるシート展張部4とを有している。
【0020】
なお、本実施形態において、ビニールハウス5の骨組み構造は、図2から図4に示すように、地面に立設される本体骨組み51と、この本体骨組み51上に設置される屋根骨組み52から構成されている。本体骨組み51は複数本の本体骨組部材51aが所定の間隔を隔てて地面に立設されており、これら本体骨組部材51aの上端に屋根部を構成する略アーチ形状の屋根骨組部材52aが連結されている。そして、これら屋根骨組部材52aの頂点部を結ぶ線上に略直線状の尾根骨組部材52bが設けられている。
【0021】
以下、各構成部についてより詳細に説明する。シート載置用フレーム2は、折り畳まれた屋根用のビニールシートSを載置するものであり、屋根骨組部材52aの長手方向に沿って長尺状に形成されている。また、本実施形態において、シート載置用フレーム2は、屋根骨組み52の形状に沿って変形可能に構成されている。具体的には、図1から図3に示すように、シート載置用フレーム2は、複数のフレームユニット21がリンク状連接部22によって互いに連接されており、中心位置に設けられるセンターフレーム23に対して左右対称に構成されている。
【0022】
各フレームユニット21は、図5に示すように、一対のフレーム部材21aが、所定の間隔を隔てて平行に配置されており、これらフレーム部材21aの間にはビニールシートSを載置するためのシート載置網21bが細いワイヤー等によって構成されている。また、各フレームユニット21の端部には、隣接するフレームユニット21同士を回転自在に連接するためのリンク状連接部22が設けられている。本実施形態において、リンク状連接部22は、所定の回転許容範囲を有するヒンジ機構から構成されており、シート載置用フレーム2の湾曲度合を適宜変更しうるようになっている。なお、シート載置用フレーム2を変形可能にする構成としては、リンク状連接部22に限定されずに、ゴム等の弾性変形の大きい部材を連接部に用いることによって構成してもよい。
【0023】
滑走用ソリ部3は、屋根骨組み52上において、シート載置用フレーム2をビニールハウス5の長手方向、すなわち尾根方向に沿って滑走移動させるためのものである。本実施形態において、滑走用ソリ部3は、隣接する屋根骨組部材52aの間隔よりも長いソリ状フレーム31から構成されており、このソリ状フレーム31の滑走面に樹脂等の低摩擦部材32がコーティングされている。また、ソリ状フレーム31は、図2に示すように、各フレームユニット21の下面に固定されており、このソリ状フレーム31のコーティング面を介して屋根骨組み52上を滑走させて、各フレームユニット21を速やかに移動させられるようになっている。
【0024】
シート展張部4は、ビニールシートSに所定のテンションを付与しつつ、シート載置用フレーム2の後方へ送り出して展張させる役割を果たすものである。本実施形態において、シート展張部4は、屋根骨組部材52aに沿って所定間隔を隔てて複数設けられており、図5から図7に示すように、主として、一対の下部ローラ41,41と、上部ローラ42と、開閉アーム43と、付勢部材44とから構成されている。
【0025】
下部ローラ41,41および上部ローラ42は、ビニールシートSを上下方向から狭持しつつ送り出すためのものであり、ゴムローラ等から構成されている。本実施形態では、図7に示すように、シート載置用フレーム2の後方側に下部ローラ軸支部45が設けられており、この下部ローラ軸支部45に一対の下部ローラ41,41が回転自在に軸支されている。また、本実施形態の下部ローラ41,41は、前後方向に間隙を隔てて並列配置されており、これら下部ローラ41,41の双方に当接しうるように上部ローラ42が設けられている。
【0026】
前記上部ローラ42は、開閉アーム43の一端部に回転自在に軸支されて一対の下部ローラ41,41間に配置されている。つまり、図5に示すように、開閉アーム43は、シート載置用フレーム2の前方側から後方側までの長さに形成されており、その前方側の基端部がソリ状フレーム31の前端部に開閉自在に軸支されている。これは、ビニールシートSを載置しやすいように開閉させる構造である。そして、開閉アーム43の後方側の自由端部には、上部ローラ軸支部46が固定されており、この上部ローラ軸支部46に上部ローラ42が回転自在に軸支されている。
【0027】
また、本実施形態では、図5に示すように、開閉アーム43の前方側端部には、引張バネから構成される付勢部材44の一端が掛止され、他端がソリ状フレーム31に掛止されている。したがって、付勢部材44は、開閉アーム43を閉方向に付勢し、上部ローラ42を下部ローラ41,41に適当な付勢力によって押圧させるようになっている。そして、折り畳まれたビニールシートSをシート載置用フレーム2上に載置する場合には、前記付勢部材44の付勢力に対抗して開閉アーム43を開口させる。
【0028】
さらに、本実施形態では、ビニールシートSのテンションを保持するための機構として、図6および図7に示すように、ストッパーローラ47と、逆回転防止ストッパー48とを有している。ストッパーローラ47は、上部ローラ42の回転軸と同軸に固定されており、その周方向に沿って外周面に所定間隔を隔てて係止穴49が形成されている。また、逆回転防止ストッパー48は、その基端部が上部ローラ軸支部46に回転自在に軸支され、引張バネやガススプリング等によりストッパーローラ47側に付勢されている。
【0029】
本実施形態において、各係止穴49には、図6に示すように、上部ローラ42がビニールシートSを送り出す方向に正回転するときには逆回転防止ストッパー48が係止することなく摺接しうる傾斜摺接面49aと、上部ローラ42が逆回転したときには逆回転防止ストッパー48が係止しうる係止壁面49bとが形成されている。したがって、上部ローラ42が、ビニールシートSを元に戻す方向に逆回転しようとすると、逆回転防止ストッパー48の先端部が係止穴49に係合し、ストッパーローラ47の逆回転を防止するようになっており、作業中、たとえば風などが吹いてもビニールシートSが弛まずに安定して展張状態を維持できる。
【0030】
また、本実施形態では、ビニールシート掛け装置1の位置ズレを防止するための機構として、図1および図2に示すように、位置ズレ防止ストッパー6を有している。この位置ズレ防止ストッパー6は、左右一対の長尺板状体61,61を複数個、尾根骨組部材52bの両側においてセンターフレーム23に回転自在に軸支させている。各位置ズレ防止ストッパー6は、隣接する屋根骨組部材52aの間隔よりも短い長さに形成されており、尾根骨組部材52bの長手方向に直交する回転軸周りに回転自在に軸支されている。
【0031】
したがって、各位置ズレ防止ストッパー6は、通常状態では、自重により垂下されており、ビニールシートSの展張作業に従って尾根方向に沿って進むと、屋根骨組部材52aに当接して回転し、仮にビニールシートS載置用フレームが尾根骨組部材52bの左右直交方向にズレそうになったときには、尾根骨組部材52bに当接してズレを防止するようになっている。
【0032】
つぎに、本実施形態におけるビニールシート掛け装置1による作用、およびビニールシート掛け作業の方法を説明する。
【0033】
本実施形態のビニールシート掛け装置1によってビニールシートSを屋根骨組み52に掛ける場合、まず、すべての開閉アーム43を開方向に回転させた後、つづら折り等に折り畳まれたビニールシートSをシート載置用フレーム2上に載置する。このとき、シート載置用フレーム2は、地面に置かれているが、その下面に設けられたソリ状フレーム31が地面と直接接し、リンク状連接部22において各フレームユニット21の角度を変更させるため、自動的に平らな状態に変形されており、簡単に載置作業が終えられる。
【0034】
そして、載置したビニールシートSの端部を下部ローラ41,41よりも所定長さだけ後方に引き出した状態で、すべての開閉アーム43を閉方向に回転させる。これにより、付勢部材44により付勢された上部ローラ42が、下部ローラ41,41側に押圧されるため、引き出されたビニールシートSは、上部ローラ42と下部ローラ41,41との間でしっかりと狭持される。
【0035】
つづいて、フォークリフト等のリフト手段により、ビニールシート掛け装置1を持ち上げ、屋根骨組み52上に載置する。このとき、ビニールシートSは、折り畳まれた状態で、全体が一度に持ち上げられるため、各骨組部材に引っ掛けてしまうことがない。また、シート載置用フレーム2は、その下面に設けられたソリ状フレーム31が屋根骨組み52と当接し、図2に示すように、リンク状連接部22において各フレームユニット21の角度が屋根骨組部材52aの湾曲形状に合わせて変更され、シート載置用フレーム2全体として、自動的に屋根骨組部材52aのカーブに沿った形状に変形される。
【0036】
また、本実施形態では、センターフレーム23に設けられた一対の位置ズレ防止ストッパー6が、尾根骨組部材52bの両側に垂下している。このため、風などが吹いてビニールシート掛け装置1に尾根の左右方向へ移動させる力が加わったとしても、各位置ズレ防止ストッパー6が尾根骨組部材52bに当接し、横滑りが防止される。
【0037】
つづいて、上部ローラ42および下部ローラ41,41からはみ出しているビニールシートSの端部を屋根骨組み52の各位置に固定した後、ビニールシート掛け装置1をビニールハウス5の長手方向に牽引する。本実施形態では、図1、図3および図7に示すように、ビニールシート掛け装置1の前端部3カ所に牽引用ワイヤWを連結し、この牽引用ワイヤWを所定のウインチ手段7で牽引している。ただし、この構成に限られるものではなく、ビニールシート掛け装置1に別途、駆動車輪等を設けるとともに、屋根骨組み52上にレール部材を敷設し、このレール部材上を自走させるようにしてもよい。
【0038】
ウインチ手段7により牽引用ワイヤWを巻き取りつつ牽引すると、ソリ状フレーム31が屋根骨組部材52a上を尾根方向に沿って滑らかに移動し、ビニールシート掛け装置1全体を牽引方向に滑走移動させる。このとき、つづら折りで載置されているビニールシートSは、その一端部がビニールハウス5に固定されているため、上部ローラ42および下部ローラ41,41に狭持されつつ後方に送り出される。
【0039】
これにより、ビニールシートSは、図8に示すように、必要以上に繰り出されることがなく、適度なテンションが付与された状態で屋根骨組み52上に展張される。また、展張された部分を順次、固定することにより、風の強い日でも容易にビニールシート掛け作業を安全に行えるようになっている。
【0040】
また、本実施形態では、上記のように、上部ローラ42がビニールシートSを送り出す方向に正回転している限り、逆回転防止ストッパー48が、ストッパーローラ47の傾斜摺接面49aと摺接し、係止穴49に係止することがない。このため、上部ローラ42の正回転は防止されることがない。一方、装置に逆方向の力が働いて上部ローラ42が逆回転方向の力を受けたときには、逆回転防止ストッパー48が、ストッパーローラ47の係止壁面49bに当接し、係止穴49に係止する。したがって、上部ローラ42は逆回転しない。
【0041】
さらに、各位置ズレ防止ストッパー6は、ビニールシート掛け装置1の滑走移動に伴って各屋根骨組部材52aに当接するが、後方に押されるように回転し、各屋根骨組部材52aを順次、乗り越えて進む。そして、屋根骨組部材52aを乗り越えた位置ズレ防止ストッパー6は、自重により再び垂下し、位置ズレ防止機能を果たすようになっている。ただし、一対だけでは位置ズレ防止ストッパー6が一つの屋根骨組部材52aを乗り越えている間、位置ズレ防止機能を果たせないおそれがある。このため、本実施形態では、一対の位置ズレ防止ストッパー6が乗り越え中であっても、他の一対の位置ズレ防止ストッパー6が垂下している状態を確保するために、複数対の位置ズレ防止ストッパー6を設けている。
【0042】
一方、引き続きウインチ手段7により、ビニールシート掛け装置1を屋根骨組み52の端部まで滑走移動させた後、リフト手段によって、ビニールシート掛け装置1を地面に下ろす。そして、ビニールシートSの端部をビニールハウス5に固定することにより、ビニールシート掛け作業が完了する。
【0043】
以上のような本実施形態によれば、
1.ビニールシートSに適度なテンションを付与しながら正確かつ確実に展張することができる。
2.風の強い日であっても一人乃至少人数で簡単かつ安全にビニールシート掛け作業を行うことができる。
3.展張作業中にビニールシートSが弛むのを防止することができる。
4.ビニールシート掛け装置1が屋根骨組み52から落下するのを防止し、作業の確実性および安全性を向上することができる等の効果を奏する。
【0044】
なお、本発明に係るビニールシート掛け装置1は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0045】
例えば、本実施形態では、シート載置用フレーム2を屋根骨組み52に沿って変形可能に構成しているが、一定形状のビニールハウス5に適用する場合などは各フレームユニット21の連結部を固定しておいてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、位置ズレ防止効果を向上させるため、一対の位置ズレ防止ストッパー6を、センターフレーム23の長手方向に沿って3つ設けているが、この構成に限られるものではなく、適宜増減させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るビニールシート掛け装置の実施形態を示す斜視図である。
【図2】本実施形態のビニールシート掛け装置をビニールハウスを構成する屋根骨組み上に載置した状態を示す正面図である。
【図3】本実施形態のビニールシート掛け装置をビニールハウスを構成する屋根骨組み上に載置した状態を示す平面図である。
【図4】本実施形態のビニールシート掛け装置をビニールハウスを構成する屋根骨組み上に載置した状態を示す側面図である。
【図5】本実施形態のフレームユニットおよびシート展張部を示す拡大斜視図である。
【図6】本実施形態の上部ローラおよび下部ローラ近傍を示す正面図である。
【図7】本実施形態の上部ローラおよび下部ローラ近傍を示す側面図である。
【図8】本実施形態のビニールシート掛け装置を用いてビニールシートを掛けている状態を示す全体図である。
【符号の説明】
【0048】
1 ビニールシート掛け装置
2 シート載置用フレーム
3 滑走用ソリ部
4 シート展張部
5 ビニールハウス
6 位置ズレ防止ストッパー
7 ウインチ手段
21 フレームユニット
21a フレーム部材
21b シート載置網
22 リンク状連接部
23 センターフレーム
31 ソリ状フレーム
32 低摩擦部材
41 下部ローラ
42 上部ローラ
43 開閉アーム
44 付勢部材
45 下部ローラ軸支部
46 上部ローラ軸支部
47 ストッパーローラ
48 逆回転防止ストッパー
49 係止穴
49a 傾斜摺接面
49b 係止壁面
51 本体骨組み
51a 本体骨組部材
52 屋根骨組み
52a 屋根骨組部材
52b 尾根骨組部材
61 長尺板状体
S ビニールシート
W 牽引用ワイヤ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニールハウスの屋根部を構成する屋根骨組部材に沿って長尺状に形成されるとともに、折り畳まれた屋根用のビニールシートを載置可能なフレーム状に形成されたシート載置用フレームと、
このシート載置用フレームの下側に設けられ、隣設されている前記屋根骨組部材の間隔よりも長尺な長さに形成され、ビニールハウスの尾根方向に沿って屋根骨組み上を滑走可能な滑走用ソリ部と、
前記シート載置用フレームの後端側に設けられ、このシート載置用フレームに載置されたビニールシートを後方側に繰り出す際に、当該ビニールシートを上下方向から狭持しつつ後方へ送り出して展張させるシート展張部と
を有することを特徴とするビニールシート掛け装置。
【請求項2】
請求項1において、シート載置用フレームは、前記屋根骨組部材の形状に沿って変形可能なリンク状連接部を備えていることを特徴とするビニールシート掛け装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記シート展張部は、前記屋根骨組部材に沿って所定間隔を隔てて複数設けられており、
前記シート載置用フレームの後方側に回転自在に軸支された下部ローラと、
前記シート載置用フレームの前方側から後方側までの長さを有しており、ビニールシートを載置するために前方側端部を開閉自在に軸支された開閉アームと、
この開閉アームの後方側の自由端部に回転自在に軸支された上部ローラと、
この上部ローラを前記下部ローラに押圧させる付勢部材とを
それぞれ有していることを特徴とするビニールシート掛け装置。
【請求項4】
請求項3において、前記上部ローラの回転軸に固定されて同軸回転し、その外周面には周方向に沿って所定間隔を隔てて係止穴が形成されたストッパーローラと、このストッパーローラの係止穴に係合しうる逆回転防止ストッパーとを有しており、
前記係止穴は、前記上部ローラが前記ビニールシートを送り出す方向に正回転するときには前記逆回転防止ストッパーが係止することなく摺接しうる傾斜摺接面を備えているとともに、前記上部ローラが逆回転したときには前記逆回転防止ストッパーが係止しうる係止壁面を備えていることを特徴とするビニールシート掛け装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかにおいて、隣接されている前記屋根骨組部材の間隔よりも短い長さに形成されているとともに、前記ビニールハウスの尾根に沿って構成された尾根骨組部材の両側に対で配置され、かつ、前記尾根骨組部材の長手方向に沿って回転自在に軸支された位置ズレ防止ストッパーを有していることを特徴とするビニールシート掛け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−11801(P2008−11801A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187545(P2006−187545)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000222978)東洋農機株式会社 (27)
【Fターム(参考)】