説明

ビニールハウスの換気装置

【課題】回転駆動装置や回転シャフトに無理な荷重が掛からずスムースに上下作動を行え、併せて透明シートのスムースな巻き上げ、巻き戻しが出来るようにしたビニールハウスの換気装置の提供。
【解決手段】ビニールハウスAに近接して起立したガイドロッド1と、ガイドロッド1に上下移動自在に取り付けた回転駆動装置2と、当該装置2に一端を回転自在に結合しながらビニールハウスAに対向して水平に配置したシャフト3と、シャフト3に一端を結合し他端をビニールハウスAに結合した透明シート4とを備え、当該装置2でシャフト3を回転したとき当該シャフト3に透明シート4が巻かれ又は巻き戻されてビニールハウスAの開口部Bを開閉する換気装置において、上記シャフト3に鼓形状のボビン5を結合し、このボビン5の外周に上記透明シート4と並列に配置したワイヤ6を巻きつけ、更に上記ワイヤ6の一端をビニールハウスAの上部と下部に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニールハウスの側面,屋根面又は妻面に設けられてハウス内の換気を行なうのに適するビニールハウスのシートの展張装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にビニールハウスではハウス内の温度、湿度を調整して植物の適正な育成に対応させるためにビニールハウスの側面又は屋根面に換気装置を設けているのが普通である。
【0003】
ビニールハウスの側面における換気装置としては、例えば、ビニールハウスの上部から垂設した透明シートの下端を回転シャフトに巻き付け、地上近辺から上方に向けてシートを上方に向けて巻き上げることによりビニールハウスの側面に形成した開口部を開放させるものである。
【0004】
回転シャフトは、ビニールハウスの側に起立するガイドロッドに上下移動自在に取り付けた手動又は電動の回転駆動装置を介して回転駆動し、シートを回転シャフトに巻き上げることにより開口部を開き、巻き戻すことにより開口部を閉じるものである。
【0005】
しかし、上記の換気装置は回転シャフトを回転するだけで自動的にシートが巻き付けられ又は巻き戻されることにより開口部の開口が自動的に行なえる反面、次のような不具合がある。
【0006】
第1に、回転駆動装置はビニールハウスから離れたガイドロッドに取り付けられているため、回転駆動装置は自重で下降する傾向にあり、回転駆動装置の重みが透明シートの負荷され、当該シートの伸びが発生しその劣化が促進される。
【0007】
第2に、シートの伸びに伴い、回転駆動装置と回転シャフトとが同期して平行に移動できなくなり、その結果回転駆動装置がガイドパイプに食い付き、回転シャフトの変形も発生する。
【0008】
第3に、回転シャフンは普通側面,屋根面等に沿って水平に設けているため、大型ハウスの場合、回転シャフトが長くなり、その結果回転シャフトがシートの重みで歪み、均一に回転シャフトを回転できず、大きな回転操作が必要となる。無理に歪んだ回転シャフトを回転させようとするとシートが均一に巻き付かず皴が発生し、又回転シャフトの歪みに起因してハウスの骨組が変形するおそれがある。
【0009】
そこで、上記の不具合を解消するため、例えば、特許文献1に示すように、回転駆動装置の重みを支え、回転シャフトに対する荷重を担持してその歪みの発生を防止し、スムースなシートの開閉が可能な換気装置が開発されている。
【0010】
この換気装置は、図6に示すように、ビニールハウスAに近接して起立したガイドロッド61と、ガイドロッド61に上下移動自在に取り付けた手動又は電動の回転駆動装置62と、回転駆動装置62に一端を回転自在に結合しながらビニールハウスAの側面面に対向して水平に配置した回転シャフト63と、シャフト63に一端を結合し他端をビニールハウスAの上部に結合した透明シート64と、同じくシャフト63一端を結合し他端をビニールハウスAの上部に結合したベルト65とを備え、回転駆動装置62でシャフト63を時計方向又は反時計方向に回転したとき当該シャフト63に透明シート64とベルト65が巻かれ又は巻き戻されてビニールハウスAの側面面の開口部を開閉するものである。
【特許文献1】特開2002−27843号公報(請求項1、図面参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記の改良された換気装置は構造上の欠陥があるわけではないが、次のような不具合の改善が要望されている。
【0012】
第1に、長期間の使用中にベルト65が伸びたりして劣化が発生すると、このベルト65が回転駆動装置62や回転シャフト63からの重量を支えられなくなり、その結果上記のような不具合が再び発生する恐れがある。
【0013】
第2に、上記のようにベルト65が劣化すると、これを交換する必要があるが、その交換作業が面倒で、困難である。
【0014】
第3に、シート64とベルト65とは普通ベルト65の方の厚みが厚くなっており、これらを図7の中立位置Iから回転シャフト63を巻き上げ又は巻き戻した位置H、Jではシャフト63に対する両者の巻径が異なり、回転駆動装置62とシャフト63に無理荷重が掛かり、スムースな上下作動が阻止され、これらの破損の原因となる。
【0015】
そこで、本発明の目的は、回転駆動装置や回転シャフトに無理な荷重が掛かるのを防止してスムースに上下作動を行えるようにし、併せて透明シートのスムースな巻き上げ、巻き戻しが出来るようにしたビニールハウスの換気装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するため、本発明の手段は、ビニールハウスAに近接して起立したガイドロッド1と、ガイドロッド1に上下移動自在に取り付けた回転駆動装置2と、回転駆動装置2に一端を回転自在に結合しながらビニールハウスの側面又は屋根面に対向して水平に配置したシャフト3と、シャフト3に一端を結合し他端をビニールハウスAの上部又下部に結合した透明シート4とを備え、回転駆動装置2でシャフト3を時計方向又は反時計方向に回転したとき当該シャフト3に透明シート4が巻かれ又は巻き戻されてビニールハウスの側面又は屋根面の開口部Bを開閉するビニールハウスの換気装置において、上記シャフト3に鼓形状のボビン5を結合し、このボビン5の外周に上記透明シート4と並列に配置したワイヤ6を巻きつけ、更に上記ワイヤ6の一端をビニールハウスAの上部と下部に固定したことを特徴とする。
【0017】
この場合、ワイヤ6の端部にターンバックル等からなるテンション調整部材7を結合してワイヤ6の張力を調整するようにしても良い。
【0018】
同じく、ボビン5が筒状のボビン本体7と、ボビン本体7の両側に一体に形成したフランジ7a、7bと、一方のフランジ7aの端部に一体に連設した筒状の取付部8と、上記取付部8に形成した取付孔に挿入したボルト又はピンからなる止め具9とからなり、ボビン本体7をシャフト3に挿入後上記止め具9の先端をシャフト3に固定してボビン本体7をシャフト3に固定しているのが好ましい。
【0019】
同じく、ボビン本体の外周にリブ10、突起11又は摩擦材12からなるワイヤ6のすべり止め機構を施しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
各請求の発明によれば、シャフト3に鼓形状のボビン5を結合し、このボビン5の外周に上記透明シート4と並列に配置したワイヤ6を巻きつけ、更に上記ワイヤ6の一端をビニールハウスAの上部と下部に固定したので、ボビン5に巻かれたワイヤ6がボビン5を介してシャフト3と回転駆動装置2の荷重を担持し、これらのシャフト3と回転駆動装置2を同期して上下動でき且つ両者の傾き、歪み、変形を防止できる。
【0021】
同じく、ワイヤ6の上下端が固定されているため、ボビン5に対するワイヤの巻き数はどの位置でも一定であり、シート4がシャフト3に多重に巻きつき又は巻き戻されてもその巻き付き位置に対応してボビン5が上下動し、シャフトが湾曲したり、傾斜したりしない。
【0022】
その結果、シャフト3や回転駆動装置2に無理な荷重を掛けず、シート4をスムースに巻き付け、巻き戻しできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0024】
本発明のビニールハウスの換気装置は、図1、図6に示すように、 ビニールハウスAに近接して起立したガイドロッド1と、ガイドロッド1に上下移動自在に取り付けた回転駆動装置2と、回転駆動装置2に一端を回転自在に結合しながらビニールハウスの側面又は屋根面に対向して水平に配置したシャフト3と、シャフト3に一端を結合し他端をビニールハウスAの上部又下部に結合した透明シート4とを備え、回転駆動装置2でシャフト3を時計方向又は反時計方向に回転したとき当該シャフト3に透明シート4が巻かれ又は巻き戻されてビニールハウスの側面又は屋根面の開口部Bを開閉するものである。
【0025】
そして、本発明の特徴は、シャフト3に鼓形状のボビン5を結合し、このボビン5の外周に上記透明シート4と並列に配置したワイヤ6を巻きつけ、更に上記ワイヤ6の一端をビニールハウスAの上部と下部に設けた取付具13,14に固定したことでる。
【0026】
この場合、ワイヤ6は単独で取付具13,14に結合しても良いが、図1、図2に示すように、ワイヤ6の端部にターンバックル等からなるテンション調整部材7を結合してワイヤ6の張力を調整するようにしているのが好ましい。
【0027】
ワイヤ6はボビン5を使用することなく、直接シャフト3に巻きつけても使用可能であるが、ワイヤ6の横方向へのズレを防止する為、実施の形態に示すように、鼓状のボビン5を介してワイヤ6を巻きつけたほうが良い。
【0028】
図3に示すように、ボビン5は筒状のボビン本体7と、ボビン本体7の両側に一体に形成したフランジ7a、7bと、一方のフランジ7aの端部に一体に連設した筒状の取付部8と、上記取付部8に形成した取付孔に挿入したボルト又はピンからなる止め具9とからなっている。
【0029】
そして、ボビン本体7をシャフト3に挿入後上記止め具9の先端をシャフト3に圧接しながら固定してボビン本体7をシャフト3に固定している。止め具9はシュフト3を貫通したり、ネジ結合したり、溶接して固定しても良い。
【0030】
従って、ボビン5は止め具9で固定されて横方向のズレが防止されて、ワイヤ6を常に同じ位置に配置でき、シート4との同期作動を維持できる。
【0031】
ボビン5はシャフト3に一体加工して設けても使用可能である。
【0032】
図4、図5の他の実施の形態に示すように、ボビン本体7の外周にリブ10、突起11又は突起状の摩擦材12からなるワイヤ6のすべり止め機構を施して良いし、ゴム等からなる摩擦材を巻き付けたり、吹き付けても良い。
【0033】
この場合は、ワイヤ6に対する摩擦が増加し、ボビン5とシャフト3が空回りするのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の一例に係るビニールハウスの換気装置の一部切欠き斜視図である。
【図2】図1の拡大側面図である。
【図3】シャフトとボビン部分の拡大斜視図である。
【図4】他の実施の形態に係るボビンの斜視図である。
【図5】更に他の実施の形態に係るボビンの斜視図である。
【図6】換気装置を取り付けたビニールハウスの略示斜視図である。
【図7】従来の換気装置の作動状態を示す拡大正面図である。
【符号の説明】
【0035】
A ビニールハウス
1 ガイドロッド
2 回転駆動装置
3 シャフト
4 透明シート
5 ボビン
6 ワイヤ
7a、7b フランジ
8 取付部
9 止め具
10 リブ
11 突起
12 摩擦材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニールハウスAに近接して起立したガイドロッド1と、ガイドロッド1に上下移動自在に取り付けた回転駆動装置2と、回転駆動装置2に一端を回転自在に結合しながらビニールハウスの側面又は屋根面に対向して水平に配置したシャフト3と、シャフト3に一端を結合し他端をビニールハウスAの上部又下部に結合した透明シート4とを備え、回転駆動装置2でシャフト3を時計方向又は反時計方向に回転したとき当該シャフト3に透明シート4が巻かれ又は巻き戻されてビニールハウスの側面又は屋根面の開口部Bを開閉するビニールハウスの換気装置において、上記シャフト3に鼓形状のボビン5を結合し、このボビン5の外周に上記透明シート4と並列に配置したワイヤ6を巻きつけ、更に上記ワイヤ6の一端をビニールハウスAの上部と下部に固定したことを特徴とするビニールハウスの換気装置。
【請求項2】
ワイヤ6の端部にターンバックル等からなるテンション調整部材7を結合してワイヤ6の張力を調整するようにしている請求項1に記載のビニールハウスの換気装置。
【請求項3】
ボビン5が筒状のボビン本体7と、ボビン本体7の両側に一体に形成したフランジ7a、7bと、一方のフランジ7aの端部に一体に連設した筒状の取付部8と、上記取付部8に形成した取付孔に挿入したボルト又はピンからなる止め具9とからなり、ボビン本体7をシャフト3に挿入後上記止め具9の先端をシャフト3に固定してボビン本体7をシャフト3に固定している請求項1又は2に記載のビニールハウスの換気装置。
【請求項4】
ボビン本体の外周にリブ10、突起11又は摩擦材12からなるワイヤ6のすべり止め機構を施している請求項3に記載のビニールハウスの換気装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate