説明

ビロソームに基づく鼻内インフルエンザワクチン

本発明は、ウイルスの再構成エンベロープを含むインフルエンザビロソームの組成物であって、該ウイルスエンベロープが完全にインフルエンザウイルス粒子に由来し、脂質が外部起源から再構成ビロソームに付加されず、該ビロソームがインフルエンザ抗原ヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼまたはそれらの誘導体を含み、別個のアジュバントおよび/または免疫刺激剤が組成物に添加されず、かつ、該組成物は、ヒトに対する調合物の単回の鼻内または吸入投与が、全身性応答がインフルエンザワクチンに関するCHMP基準に一致している該インフルエンザ抗原に対する全身性および/または局所性免疫応答および/または細胞傷害性リンパ球応答を誘導するに十分であることを特徴とする鼻内または吸入投与調合物のために存在し、そして1鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの用量が30μg以下かまたはそれに等しい、組成物を提供する。また、本発明は、該組成物の製造のための再構成インフルエンザビロソーム、したがって製造されたワクチン調合物の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、単回の鼻内または吸入投与が臨床的防御と明確に相関させられる全身性免疫応答を生じる、不活化インフルエンザワクチンのための組成物および投与経路に関する。
【背景技術】
【0002】
鼻または口腔咽頭経路を介するインフルエンザに対する免疫化ならびに不活化インフルエンザ抗原の使用のための種々の概念は、皮下または筋肉内免疫に対する針無使用の代替法として探究された。針無使用アプローチを支持する実験データは動物モデルにおいて作成された。動物データによって支持される鼻内経路を介する免疫化のための不活化インフルエンザ抗原(例えば、化学的に不活性化された全ウイルス粒子、またはスプリットウイルス(sprit virus)のようなさらに処理されたウイルス構成成分、または精製された表面抗原ヘマグルチニン(HA)および/またはノイラミニダーゼ(NA))の使用は、不活化インフルエンザ抗原と組み合わせてアジュバントまたは免疫刺激剤のいずれかの使用を含むか、または多数回のワクチン接種を必要とする。アジュバントは、それと混合された抗原の免疫原性を増進するすべての物質である。ヒトでは、鼻内経路を介するインフルエンザに対する成功裏のワクチン接種は、(a)生(冷温適応株)インフルエンザワクチン(FluMistTM,MedImmune Vaccines Inc)(非特許文献1、2、3)、(b)E・コリ(E.coli)の熱不安定性毒素をアジュバントとして添加されたビロソーム(virosomal)インフルエンザワクチン(NasalFlu,Berna Biotech Ltd)(非特許文献4)または(c)多量の抗原の使用および反復ワクチン接種(非特許文献5、6、7)について報告されているだけである。生ワクチンは、満足される免疫応答を誘導できるけれども、生ウイルスが存在するという特殊な性質が、さらなる安全性への関心を惹起し、そして上気道において要求されるウイルス複製の循環による副作用を誘導するかもしれない。また、要求される貯蔵条件がこれらの生産物の商業化を制約している。アジュバントとしてのE.コリHLTを含有する鼻内インフルエンザワクチンの使用と、顔面神経麻痺(ベル麻痺)との間の強い関連は、市場からHLTをアジュバントとするビロソームワクチンの撤退を引き起こした(非特許文献8)。
【0003】
一定の集団におけるインフルエンザワクチンの効能は、ワクチン接種後に生成される抗インフルエンザ抗体の量に関係する免疫原性パラメーターを査定することによって評価されてもよい。一般にCHMP基準と呼ばれるこれらの免疫原性パラメーターは、不活化インフルエンザワクチンの年毎の再認可のために使用される(非特許文献9)。今日まで、不活化ワクチンの単回の鼻内投与により、そしてワクチンが防御を意図する感染性作用物に由来しないで抗原に対する免疫応答を増進する目的のためにワクチン調合物に添加されるワクチンの付加成分であるアジュバントの添加なしに、これらの免疫要件またはCHMP基準に合致している(非特許文献9)、インフルエンザに対するヒトの成功裏の免疫化は記述されていない。したがって、単回の鼻内投与後に満足される全身性免疫応答を惹起することができ、アジュバントを含有せず、そして該単回投与よってCHMP基準(非特許文献9)に合致する、不活化インフルエンザワクチン組成物に対する当該技術分野における必要性がなお存在することは認識される。
【0004】
該CHMP基準は、次のように定義される。インフルエンザワクチンの要件の調和におけるガイダンスに関するCHMP覚書(CHMP(Committee for Medical Products for Human Use)Note for Guidance on Harmonisation of Requirements f
or influenza Vaccines)において、次の血清学的パラメーターが、不活化インフルエンザワクチンの免疫原性を評価するために定義される:
− セロプロテクション率(seroprotection rate),血球凝集阻止(HI)タイター≧40として定義されるセロプロテクションによる、
− セロコンバージョン率(seroconversion rate)、ワクチン接種前HIタイター<10およびワクチン接種後HIタイター≧40、またはワクチン接種前HIタイター≧10かつHIタイターにおける少なくとも4倍増加として定義されるセロコンバージョン、
− 平均倍増、これは個人内増加(すなわち、ワクチン接種後HIタイター/ワクチン接種前HIタイター)の幾何平均である。
【0005】
インフルエンザワクチンの免疫原性に関するCHMP要件は、次の基準の少なくとも1つが合致するワクチンにおける3種のウイルス株の各々についての要件である:
【0006】
【表1】

【0007】
また、本発明は子供に対しても適用され、これに関しては、彼らが成人と比較できる様式で免疫学的に応答することが示された(非特許文献10)。また本発明は老人にも適用される。老人は60歳以上である。
【非特許文献1】引用文献1
【非特許文献2】引用文献2
【非特許文献3】引用文献3
【非特許文献4】引用文献4
【非特許文献5】引用文献5
【非特許文献6】引用文献10
【非特許文献7】引用文献11
【非特許文献8】引用文献6
【非特許文献9】引用文献7
【非特許文献10】引用文献8
【発明の開示】
【0008】
驚くべきことに、そして前臨床の齧歯類データおよびヒトの臨床実験における文献に反して、本発明者らは、再構成されたインフルエンザのエンベロープを含んでなる不活化インフルエンザワクチンによる単回の鼻内ワクチン接種後のヒトにおける免疫応答が、18〜60歳の年齢群についてインフルエンザワクチンの効能に関するすべて3つのCHMP基準と一致していることを見出だした。1回の鼻内投与は、不活化インフルエンザワクチンの免疫原性に関する上記CHMP基準に合致させるために、ワクチン調合物の投与の反復を必要としない1もしくは両鼻孔を介するワクチン調合物の接種である。ワクチンの1回の投与(鼻内、吸入、経口、皮下または筋肉内経路を介する)は、一般に、プライミング(priming)およびブースティング(boosting)として当該技術分野において既知の数日または数週に分けられるワクチンの多数回投与を含まないワクチン接種スケジュールである。鼻内または吸入投与調合物として設計された調合物は、鼻内または吸入投与を可能とするような方法で調製された1種以上の有効成分と添加物の混合物を含む。本発明は、有利には、ビロソーム(virosomal)・インフルエンザワクチン
の単回の鼻内または吸入投与による、CHMP基準に一致している全身性免疫応答(循環性免疫グロブリンまたは抗体産生B細胞)を誘導する方法を提供する。また、本発明は、有利には、ビロソーム・インフルエンザワクチンの単回の鼻内または吸入投与による、粘膜の表面におけるIgAとして既知の分泌性免疫グロブリンにおける増加を含む、局所または粘膜性免疫応答を誘導する方法を提供する。鼻内投与後の特異的IgGおよびIgAの誘導は、鼻腔におけるリンパ様組織の活動(引用文献12)を含む。そのような組織は、鼻関連リンパ様組織(NALT)として既知であり、そしてまた、細胞性免疫応答の粘膜誘導部位であることが示されている(引用文献13)。ビロソームが細胞性免疫応答を誘導する潜在能力を有することが知られている(引用文献14、15)ので、本発明は、また、特異的な細胞傷害性リンパ球(CTL)の誘導方法を提供する。
【0009】
ビロソームはウイルスの糖タンパク質を含有する脂質二重層である。ビロソームは、一般に、洗剤(detergent)による包膜ウイルスからの膜タンパク質と脂質の抽出と、それに続く該洗剤の除去による特徴的な二重層の再構成によって生成される。また本発明は、1もしくは両鼻孔を介して鼻咽頭または口腔咽頭の粘膜に投与されてインフルエンザに対する全身性および局所性免疫を達成するエアゾルによるワクチン接種の使用のための、再構成されたインフルエンザウイルスのエンベロープ(特に、脂質のさらなる添加なしに、かつ免疫刺激剤(一般にアジュバントと呼ばれる)という免疫モジュレーターの添加なしに、再構成された)を含んでなるインフルエンザビロソームの組成物を提供する。吸入による単回投与もまた可能である。単回の経口粘膜投与もまた可能である。
【0010】
再構成インフルエンザビロソームは、不活化ウイルスから調製されてもよく、これは疎水性ビーズへの吸着によって除去される非透析性洗剤によって可溶化することができる。調製物は、ヘマグルチニン(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、ヘマグルチニンの誘導体およびノイラミニダーゼの誘導体から選ばれる1種以上のインフルエンザ抗原の精製懸濁物を含んでもよい。ウイルスの膜タンパク質ヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼは、低レベルのエンドトキシンおよびオボアルブミンを含有するウイルス脂質からなる膜において再構成されてもよい(参照、引用文献9)。ヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼの誘導体は、修飾されたアミノ酸配列および/または構造物を有するヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼ分子である。アミノ酸は、例えば、配列に対して欠失、変更または付加されてもよい。またグリコシル化パターンが変更されてもよい。誘導体は、宿主に導入された場合に免疫応答を誘導する能力を保持する。
【0011】
再構成ビロソームを調製するために使用されるインフルエンザウイルスは、例えば、受精ニワトリ卵において、あるいは接着細胞または懸濁液中の細胞のいずれかの細胞培養において増殖することができる。ウイルスは、例えば、野生株または再構築株(reassortant)もしくは遺伝的に修飾された株であってもよい。ウイルスタイプは、例えば、汎流行性株を含む、いかなるインフルエンザAもしくはBサブタイプであってもよい。
【0012】
また本発明はワクチンを提供する。用語ワクチンは、免疫活性のある製薬学的調製物に向けられると理解される。ある種の実施態様では、ワクチンは、例えば、免疫系を刺激して現実の病原に対する防御を高める病原性微生物の無害の変異体または誘導体を含んでもよい。ある種の実施態様では、ワクチンは、例えば、宿主に投与された場合に適応免疫を誘導する。ワクチンは、病原体の死滅もしくは弱毒化形態物または病原体の成分、例えば病原体の抗原性成分を含有してもよい。ワクチン調製物は、ワクチンが投与されるよう意図される特定の方式のために設計されてもよい製薬学的担体、例えば鼻内または吸入投与のために設計された製薬学的担体をさらに含有してもよい。インフルエンザワクチンは、1種以上の非変性インフルエンザ抗原を含んでもよく、1種以上のこれらはインフルエンザに特異的な免疫応答を誘導することができる。
【0013】
本発明は、組成物が鼻内または吸入投与調合物として設計される、該ウイルスの再構成エンベロープを含むインフルエンザビロソームを含んでなる組成物を提供する。また、本発明は、ビロソームがインフルエンザ抗原ヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼまたはそれらの誘導体を含む、該組成物を提供する。また本発明は、ウイルスエンベロープが完全にウイルス粒子に由来する該組成物を提供する。また本発明は、脂質が外部起源から再構成ビロソームに付加されない該組成物を提供する。また本発明は、別個のアジュバントおよび/または免疫刺激剤が組成物に添加されない該組成物を提供する。また本発明は、被験者に対する調合物の単回の鼻内または吸入投与が全身性免疫応答を誘導することができる該組成物を提供する。また本発明は、被験者に対する調合物の単回の鼻内または吸入投与がまた局所性免疫応答を誘導することができる該組成物を提供する。また本発明は、被験者に対する調合物の単回の鼻内または吸入投与がまた細胞傷害性リンパ球応答を誘導することができる該組成物を提供する。また本発明は、全身性免疫応答および/または局所性免疫応答および/または細胞傷害性リンパ球応答を誘導する能力がヒトにおいて発揮される該組成物を提供する。また本発明は、免疫応答がインフルエンザ抗原ヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼまたはそれらの誘導体に向けられた免疫応答を含む該組成物を提供する。好適な実施態様では、また本発明は、免疫応答がインフルエンザワクチンに関するCHMP基準に一致している該組成物を提供する。また本発明は、免疫応答が、成人では>70%および/または老人では>60%のセロプロテクション率、成人では>40%および/または老人では>30%のセロコンバージョン率、および成人では>2.5および/または老人では>2.0の平均倍増の1つ以上を提供する、該組成物を提供する。特に好適な実施態様では、また本発明は、1鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの用量が30μgに等しいかまたはそれ以下である該組成物を提供する。最後にまた、本発明は、組成物が鼻内または吸入投与のための製薬学的担体を含んでなるワクチン調合物である該組成物を提供する。
【0014】
さらに本発明は、鼻内または吸入投与のための組成物の製造のための該ウイルスの再構成エンベロープを含むインフルエンザビロソームの使用を提供する。また本発明は、インフルエンザビロソームがインフルエンザ抗原ヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼまたはそれらの誘導体を含む、該使用を提供する。また本発明は、ウイルスエンベロープが完全にインフルエンザウイルス粒子に由来する該使用を提供する。また本発明は、脂質が外部起源から組成物中のインフルエンザビロソームに付加されない該使用を提供する。また本発明は、別個のアジュバントおよび/または免疫刺激剤が組成物に添加されない該使用を提供する。また本発明は、被験者に対する組成物の単回の鼻内または吸入投与が全身性免疫応答の誘導のために十分である該使用を提供する。また本発明は、組成物の単回の鼻内または吸入投与がまた局所性免疫応答を誘導する該使用を提供する。また本発明は、組成物の単回の鼻内または吸入投与がまた細胞傷害性リンパ球応答を誘導する該使用を提供する。また本発明は、投与を受ける被験者がヒトである該使用を提供する。また本発明は、組成物がインフルエンザ抗原ヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼまたはそれらの誘導体に向けられた免疫応答を含む免疫応答を誘導する該使用を提供する。好適な実施態様では、また本発明は、組成物が、インフルエンザワクチンに関するCHMP基準に一致している免疫応答を誘導する該使用を提供する。また本発明は、免疫応答が、成人では>70%および/または老人では>60%のセロプロテクション率、成人では>40%および/または老人では>30%のセロコンバージョン率、および成人では>2.5および/または老人では>2.0の平均倍増の1つ以上を提供する、該使用を提供する。特に好適な実施態様では、また本発明は、1鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの投与用量が30μgに等しいかまたはそれ以下である該使用を提供する。最後にまた、本発明は、製造された組成物がワクチン調合物である該使用を提供する。
【0015】
かくして、1つの実施態様では、本発明は、ウイルスの再構成エンベロープを含むインフルエンザビロソームの組成物であって、該ウイルスエンベロープが完全にインフルエンザウイルス粒子に由来し、脂質が外部起源から再構成ビロソームに付加されず、該ビロソームがインフルエンザ抗原ヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼまたはそれらの誘導体を含み、別個のアジュバントおよび/または免疫刺激剤が組成物に添加されず、かつ、該組成物は、ヒトに対する調合物の単回の鼻内または吸入投与が、全身性応答がインフルエンザワクチンに関するCHMP基準に一致している該インフルエンザ抗原に対する全身性および/または局所性免疫応答を誘導することができることを特徴とする、鼻内または吸入投与調合物として設計され、そして1鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの用量が30μg以下かまたはそれに等しい、組成物を提供する。
【0016】
その他の実施態様によれば、本発明は、鼻内または吸入投与のための組成物の製造のためのウイルスの再構成エンベロープを含むインフルエンザビロソームの使用であって、該ウイルスエンベロープが完全にインフルエンザウイルス粒子に由来し、脂質が外部起源から再構成ビロソームに付加されず、該ビロソームがインフルエンザ抗原ヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼまたはそれらの誘導体を含み、そして別個のアジュバントおよび/または免疫刺激剤が組成物に添加されない使用であり、鼻内または吸入投与のための組成物の製造のための該インフルエンザビロソームの使用は、ヒトに対する組成物の単回の鼻内または吸入投与が、応答がインフルエンザワクチンに関するCHMP基準に一致している該インフルエンザ抗原に対する全身性および/または局所性免疫応答の誘導のために十分であることを特徴とし、そして1鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの用量が30μg以下かまたはそれに等しい、使用を提供する。
【0017】
その他の実施態様によれば、本発明は、ウイルスの再構成エンベロープを含むインフルエンザビロソームの組成物を含んでなるワクチン調合物であって、該ウイルスエンベロープが完全にインフルエンザウイルス粒子に由来し、脂質が外部起源から再構成ビロソームに付加されず、該ビロソームがインフルエンザ抗原ヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼまたはそれらの誘導体を含み、別個のアジュバントおよび/または免疫刺激剤が組成物に添加されないワクチン調合物であり、このワクチンは、ワクチンがヒトに対する単回の鼻内または吸入投与のための設計されることを特徴とし、そして1単回の鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの用量が30μg以下かまたはそれに等しい、ワクチン調合物を提供する。有利には、該、調合物の単回の鼻内または吸入投与は、該ヒトにおける全身性および/または局所性免疫応答を誘導することができる。本発明によれば、また、単回の鼻内または吸入投与のための該ワクチン調合物のある量を含んでなるデバイスが提供される。
【0018】
また、1鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの本発明による適用用量は、25μg、20μg、15μg、10μgまたは5μg以下かまたはそれに等しくてもよい。
【0019】
【表2】

【0020】
【表3】

【実施例】
【0021】
[例1]
8週齢のBalb/cマウスにおけるLPP−ビロソームワクチン;最適以下のHA用量レベルにおける種々のHA/LPP比の鼻内の比較
10匹のインフルエンザ・セロネガティブのメスBalb/cマウスの群が、1:1.5、1:0.7、1:0.4、1:0(すなわち、LPP(リポペプチド)無添加)のHA/LPP比において、かつ1用量当たり2μgのHAを含有する鼻内投与によってLPP−ビロソームワクチンを受けた。さらに、10匹のメスのマウスの対照群が0μgHA/用量(媒質の鼻内投与)を受けた。
【0022】
LPP−含有ビロソームの4種の調製物が調製された。簡単に言えば、30〜40%スクロース溶液中不活化インフルエンザウイルスが遠心によって沈殿された。ウイルスは、洗剤オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル(OEG)を含有するバッファー中に再懸濁され、可溶化された。続いて、ウイルスのヌクレオキャプシドが超遠心によって除去された。OEG含有上澄液が4つの等容量に分けられ、そしてOEG含有バッファー中異なる量のリポペプチドP3CSK4が添加された(P3CSK4:N−パルミトイル−S−[2,3−ビス(パルミトイルオキシ)−(2RS)−プロピル]−[R]−システイニル−[S]−セリル−[S]−リジル−[S]−リジル−[S]−リジル−[S]−リジン)。容量はOEG含有バッファーを用いて調節された。OEGは疎水性樹脂への吸着によって除去された。これにより、LPP含有ビロソーム、それらの膜中にHAおよびNAならびに(場合によっては)それらの膜中にLPPを含有する再構成ウイルス粒子の形成がもたらされた。OEGの除去後、ビロソームは、0.22μmの孔径を有するPVDFメンブランを通して濾過された。
【0023】
出発材料は、252I.U.エンドトキシン/100μgHAを含有する、インフルエンザA/Wyoming/3/2003 X−147(A/Fujian/411/200 (H3N2)様株)からのHAの20mgであった。可溶化後、4バッチが表1に略記されたように調製された。
【0024】
【表4】

【0025】
媒質は、5mM Hepes、145mM NaCl、1mM EDTA(pH7.4)からなった。群E(表2参照)では、媒質は、0.22μmの孔径を有するPVDFメンブランを通して濾過された。調製されたビロソームの4バッチは、鼻内免疫のためには200μg/mlおよび筋肉内免疫のためには67μg/mlの濃度に希釈され、そして表2に指示されるように1−mlバイアル(1群当たり2個)に分けられた。ワクチンのこれらの群は表4に略記されるように使用された。
【0026】
【表5】

【0027】
調合物の分析
この研究のために使用された調合物は、表3に指示されるようにいくつかの変数について分析された。
【0028】
【表6】

【0029】
Lowryアッセイ、原理:タンパク質は、アルカリ性硫酸銅およびFolin−ciocalteuフェノール試薬による処理後に青色を形成する。タンパク質含量は、参考としてアルブミンBSA標準を使用して、750nmにおける吸収から測定された。
Lowry,OH,NJ Rosebrough,AL Farr,and RJ Randall.J.Biol.Chem.193:265.1951.
Oostra,GM,NS Mathewson,and GN Catravas.Anal.Biochem.89:31.1978.
Stoscheck,CM.Quantitation of Protein.Methods in Enzymology 182:50−69(1990).
Hartree,EF.Anal.Biochem.48:422−427(1972)
PhEur:monograph 2053 and section 2.7.1
原理:各リン脂質は1個のリン原子を含有し、これはリン脂質の定量のために使用することができる。リン脂質は、過塩素酸によって分解され、そして生成されたリン酸イオンがモリブデン酸塩によって錯体化され、これがアスコルビン酸によって還元されて青色生成物を生じる。着色は812nmにおいて分光光度計により測定される。サンプル中のリン脂質の量はホスフェートカリブレーター(phosphate calibrator)を含むことによって定量される。
Ames BN.Assay of inorganic phosphate,total phosphate and phosphatases.Meth.Enzymol.1966;8:115−118
Boettcher CJF,van Gent CM & Pries C.A rapid and sensitive sub−micro phosphorus determination.Anal.Chim.Acta 1961;24:203−204
Ph.Eur.2.6.14
オボアルブミンELISAは、捕捉のための固定化ポリクローナル抗オボアルブミン抗体および検出系としての抗オボアルブミン−HRPコンジュゲートを使用する直接サンドイッチ酵素イムノアッセイである。コンジュゲートおよびサンプルが同時にインキュベートされる。非結合成分は洗浄段階によって除去される。基質(TMBおよびH)がウェルに添加される。ウェル中の特異的に結合されたコンジュゲートの存在は、青色の発色によって指示される。硫酸が基質に添加されて反応を停止し、そしてこれが黄色への生成物における着色変化をもたらす。吸光度(OD)が450nmにおいて読まれる。最適の結果のために、620nmにおける参考フィルターが使用される。標準曲線は、アッセイに含まれるオボアルブミン標準(0.3〜20.0ng/ml)の応答値から作成される。未知のサンプルの濃度は、標準曲線から内挿することができる。
monograph 0869および2053による:一価のプールされた回収物(harvest)の純度は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって試験された。電気泳動:Ph.Eur 2.2.31による。
【0030】
試験システム
試験動物
10匹のメスBalb/cマウス(BALB/cAnNCrl)の7群、各々が使用された。処置の開始時には、マウスは8〜9週齢で、体重17〜19gであった。動物は、一価のLPPビロソームインフルエンザワクチン(A/Wyoming)を用いて0日および14日目に鼻内にワクチン接種され、そして第2回のワクチン接種21日後に検視された。
【0031】
鼻内:試験物質は、背面位の動物を用いて軽いイソフラン/O/NO麻酔下で鼻内に(両に鼻孔に分けられた10μl)接種された。
【0032】
【表7】

【0033】
第1回のワクチン接種前および第1回ワクチン接種14日後に、眼窩の血液サンプルがイソフラン/O/NO麻酔下で収集された。35日目に、動物は犠牲にされ、そして血液サンプルが収集された(腹部大動脈または心臓穿刺によるO/CO麻酔下の瀉血)。全サンプルからの血清が回収され、強く凍結され、そして処理するまで<−10℃でポリプロピレンチューブにおいて保存された。
【0034】
インフルエンザウイルスは赤血球(RBC)を凝集するが、これはウイルスに対する十分な特異的抗体の存在下で阻止される。この現象は血球凝集阻止(HI)アッセイの基礎を提供し、これが血清中の特異的抗ウイルス抗体を検出し、定量するために使用される。血清がインフルエンザウイルスおよびシチメンチョウRBCに添加された。数種の希釈液が試験された(滴定)。HIタイターは、血球凝集をなお阻止する最高希釈の逆数として定義される。幾何平均タイター(GMT)は次のように計算された:
1)2つの並列値の算術平均として個々のlog(タイター)を計算する:
[log(タイター)+log(タイター)]/2
2)個々のlog(タイター)の算術平均を計算する
3)GMT(群)=10EXP(群平均log(タイター))
【0035】
統計
HIタイターが幾何平均タイターを用いて、ワクチン接種群および日毎で総括された。群のlog変換された35日目のHIタイターが線形回帰の平均値によって分析されて、ワクチン中のLPP量とGMTとの間の用量−応答関係が調査された。
【0036】
結果
HIタイター分析
GMTが表5に示される。
【0037】
【表8】

【0038】
0日目では、HAに特異的な抗体は、マウスにおいて検出できなかった(すなわち、全HIタイター<10)。
14日目には、鼻内経路(i.n.)によってワクチン接種されたマウスの大部分でHA特異的抗体は検出できなかった。全HIタイターは、群Aにおける1マウス(HIタイター:80)、群Cにおける1マウス(HIタイター:35)および群Dにおける1マウス(HIタイター:160)を除いて、≦10であった。
35日目には、HA特異的抗体の生成における用量−応答が観察された、すなわち、ワクチンへの、より多くのLPPの添加が、より高い抗体タイターをもたらした。
(log変換された)35日目のHIタイターが、線形回帰の平均値によって群間で比較された。適合された回帰傾斜(slope)は高度に有意であった(p<0.0001)。かくして、ワクチン中のLPP量とGMTとの間の観察された用量−応答関係は統計的に有意であった。
【0039】
結論
アジュバント無添加の再構成インフルエンザビロソームによるマウスの反復鼻内ワクチン接種は、測定可能な全身性免疫応答を誘導しなかった。同じHA用量レベル(2μgHA/用量)で、かつLPPの増加用量によるLPPアジュバントを添加された再構成インフルエンザビロソームを使用する反復鼻内ワクチン接種は、LPP用量依存様式において全身性免疫応答を示した。本発明とは明らかに反対に(下記例2参照)、これらのデータは、たとえ、インフルエンザ抗原(HA)が再構成ビロソーム中に存在していても、免疫刺激剤(この場合、LPP)の使用が、不活化インフルエンザワクチンによる鼻内ワクチン接種のために不可欠であるという当該技術分野における一致した見解を支持すると以前には考えられていた。
【0040】
[例2]
年齢18〜40歳の健康な若い成人において鼻内送達後の、リポペプチド・アジュバントの安全性ならびにビロソームサブユニット・インフルエンザワクチンの効能に及ぼすその影響を調査するための二重盲検、無作為化、並行群研究
健康なヒトのボランティアが、LPP(リポペプチド)アジュバントを添加された再構成インフルエンザビロソームにより、1株について150mcg HA/mlと315mcg LPP/mlを含有する0.2ml(1鼻孔に0.1ml)の用量容量において鼻内にワクチン接種された。類似の群は、1株について150mcg HA/mlを含有する0.2ml(1鼻孔に0.1ml)の用量容量においてLPPを含有しない再構成インフルエンザビロソームにより鼻内にワクチン接種された。研究の目的は、不活化インフルエンザワクチンによる鼻内ワクチン接種後に満足できる全身性免疫応答を得るために、アジュバント(例えば、LPP)の使用が要求されるというマウスにおいて示されたような概念の証明を、ヒトにおいて確認することであった。
【0041】
研究計画
これは、年齢18〜40歳の健康な若い被験者における二重盲検、無作為化並行群研究であった。この研究は、1研究センター:Swiss Pharma Contract
Ltd.,Basel,Switzerlandにおいて実施された。主任研究者はDr.M.Seiberlingであった。研究は2パートを有した。パートIでは、LPPアジュバント添加のビロソームサブユニット・インフルエンザワクチンの安全性が12人の被験者において評価された。9被験者はLPP−RVM(LPPで再構成されたウイルス膜;LPPをアジュバント添加された、インフルエンザワクチン−表面抗原、不活化,ビロソーム−)により、そして3被験者はRVM(インフルエンザワクチン−表面抗原、不活化,ビロソーム−)によりワクチン接種された。研究のパートIIでは、LPP−RVMの効能および安全性が100人の被験者(1群当たり50)において評価された。
【0042】
研究は健康な被験者において実施された。さらに、研究のパートIIに参加する被験者は、研究の開始前に3年間インフルエンザに対してワクチン接種されていなかった。このことは、インフルエンザに対する予め存在する抗体を有する被験者の数を最小化することによって、パートIIにおける研究集団の同質性を増大する。
【0043】
パートI:
ワクチン接種前14日間(Visit 1)に、被験者はインフォームドコンセントを与えられた後、男性または女性は、基準に合致するか、しないか(in−or exclusion)について選別され、そして身体検査を受けた。この訪問(visit)では、鼻の上皮細胞のサンプルが細胞検査(cytology)のために採取され、そして基礎繊毛活動がサッカリン試験により測定された。
【0044】
Visit 2(1日目)には、4〜6mlの血液サンプルが標準血液学的分析のために採取され、6〜10mlのサンプルが標準生化学的分析のために採取され、そして生活徴候が評価された。無作為化の後、被験者は2種のワクチン調合物の1つを接種され、そしてワクチン接種後最初の24時間はその場所に留められて、即時的局所および全身反応、および副作用がモニターされた。生活徴候は、ワクチン接種後4時間と24時間目に評価された。さらに、24時間後、2つの血液サンプルが標準血液学的(4〜6ml)および生化学的(6〜10ml)分析のために採取された;鼻上皮細胞のサンプルが細胞検査のために採取され、そしてワクチン接種後の繊毛活動がサッカリン試験により測定された。
【0045】
被験者は、その翌日(3日目)に局所および全身反応を評価するために、質問票(質問票1)を与えられて帰宅した。
【0046】
被験者は、帰宅2日後に研究場所に戻らねばならなかった;Visit3(4日目)。この訪問では、局所および全身反応が評価され、そして前回と今回の訪問の間に起きた何らかの自然発生の副作用が記録された。さらに、2つの血液サンプルが標準血液学的(4〜6ml)および生化学的(6〜10ml)分析のために採取され、そして生活徴候が評価された。
【0047】
被験者は、最初のワクチン接種2週間後、15日目に研究場所に戻った(Visit4)。この訪問では、鼻上皮細胞のサンプルが、細胞検査のために採取され、繊毛活動がサ
ッカリン試験により測定され、そしてVisit3とVisit4の間に起きた副作用が記録された。
【0048】
パートII:
最初の血液と鼻洗浄液のサンプリング前14日間(Visit 1)に、被験者はインフォームドコンセントを与えられた後、男性または女性は、基準に合致するか、しないか選別され、そして彼らの健康が身体検査によってチェックされた。
【0049】
Visit 2(1日目;この訪問はVisit 1と一緒にすることができる)には、6〜10mlの血液サンプルが基礎血球凝集阻止(HI)タイター測定のために採取され、そして血液サンプルが、標準血液学的(4〜6ml)および標準生化学的(6〜10ml)分析のために採取された。鼻洗浄サンプルは、基礎鼻IgA抗体タイターの測定のために回収された。
【0050】
翌日、生活徴候の評価後のVisit3(1日目)では、被験者は、無作為化されて鼻インフルエンザワクチンの2種の調合物の1つの単回用量を接種された。何らかの即時的局所反応、全身反応および副作用が、ワクチン接種後1時間の間その場所でモニターされた。その後、生活徴候が再評価され、そして被験者は、ワクチン接種後最初の7日間の局所および全身反応を毎日記録するために、質問票を与えられて帰宅した。
【0051】
2週間後(Visit4;15日目)に、6〜10mlの血液サンプルが、HIタイター測定のために採取され、2つのさらなる血液サンプルが、標準血液学的(4〜6ml)および生化学的(6〜10ml)分析のために採取され、鼻洗浄液サンプルが鼻IgA抗体タイターのために採取された。
【0052】
効能評価
効能を評価するために、血液サンプルおよび鼻洗浄サンプルが1日目(基礎)および15日目に収集された。
【0053】
血液サンプル
6〜10mlの血液が収集されて、血球凝集阻止(HI)抗体タイターが測定された(参照、Palmer DF,Dowdle WR,Coleman MT,Schild GC.Hemagglutination Inhibition Test.Advanced laboratory techniques for influenza diagnosis.U.S.Dept.Hlth.Ed.Welfare,P.H.S.Atlanta;1975:25−62)。血液の収集および凝固(室温で少なくとも30分)後、血清が分離され、そして滴定まで凍結保存(−20℃)された。抗体滴定は、2並列で行われた。サンプルに帰せられるタイターは、2つの測定値の幾何平均であった。ワクチン接種前,後の血清が同時に滴定された。
【0054】
鼻洗浄サンプル
鼻洗浄サンプルの収集のために、予備加温(37℃)された食塩水6mlが、一方の鼻孔内に鼻鏡制御下で適用された。被験者は、洗浄用流体が流れるように、60°角に彼らの頭を傾けるよう求められた。収集された洗浄液は第2の鼻鏡に適用され、これが同条件下で洗浄された。サンプルには保存液が添加された(サンプル容量の1/100)。保存液は、100mM Tris−HClバッファー、pH8中に溶解されたウシ血清アルブミン10mg/mlを含有した。サンプルは,直接,低速遠心によって清澄化され(800xgで10分)、一定分量に分けられ(後のサンプルの反復融解を避けるために)、そして−80℃に移行するまでドライアイス上に置かれた。
【0055】
鼻洗浄サンプル中のIgAレベルはELISAによって決定され、そしてWilcoxon検定により統計学的に解析された。インフルエンザワクチンは、96穴プレートにおいてコーティング抗原として使用された。非特異的結合部位はブロッキングバッファーとのインキュベーションによってブロックされた。鼻洗浄液が、96穴プレート上の抗原へのインフルエンザ特異的抗体の吸着のために、ブロッキングバッファー中2倍希釈液(1サンプルについて12希釈液)において適用された。96穴プレートは、酵素共役抗ヒト抗体(共役されたセイヨウワサビ・ペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)とのインキュベーション前に洗浄された。未結合の抗ヒト抗体は洗浄によって除去され、そしてインフルエンザ株特異的抗体の量が、酵素反応のための基質の添加後の光学濃度を測定することによって決定された。
【0056】
ワクチン調合物
インフルエンザワクチンの2種の異なる調合物がこの研究において使用された。両調合物は、0.2mlの1用量当たり1株について30mcgの用量レベルにおいて、2005年度の南半球に対してWHOによって推薦されたウイルス抗原を含有した(参照、WHO.Recommended composition of influenza virus vaccines for use in the 2005 influenza season.Weekly Epidem Rec.2004;79:369−376)。
−A/New Caledonia/20/99(H1N1)様株
−A/Wellington/1/2004(H3N2)様株
−B/Shanghai/361/2002様株
【0057】
簡単に言えば、30〜40%スクロース溶液中の不活化インフルエンザウイルスが遠心によって沈降された。ウイルスは、洗剤オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル(OEG)を含有するバッファー中に再懸濁され、溶解された。続いて、ウイルスのヌクレオキャプシドが超遠心によって除去された。OEG含有上澄液は、OEG含有バッファー中リポペプチドP3CSK4によるか、またはLPPを含有しない再構成ウイルス膜の場合にはOEG含有バッファーのみにより調節された(P3CSK4:N−パルミトイル−S−[2,3−ビス(パルミトイルオキシ)−(2RS)−プロピル]−[R]−システイニル−[S]−セリル−[S]−リジル−[S]−リジル−[S]−リジル−[S]−リジン)。OEGは疎水性樹脂への吸着によって除去された。これにより、LPP含有またはLPPを含有しない再構成ウイルス膜(それらの膜中にHAとNAを有し、そして場合によっては、それらの膜中にLPPを有する再構成ウイルス粒子)の形成をもたらした。OEGの除去後、ビロソームは、0.22μmの孔径を有するPVDFメンブランを通して濾過された。
【0058】
ウイルスの各株について、LPPを含有するかまたは含有しない別々の調製物が作成された(表6)。添加されたLPP量は、1:0.7(w/w)のHA/LPP比に対応した。
【0059】
【表9】

【0060】
【表10】

【0061】
Lowryアッセイ、原理:タンパク質は、アルカリ性硫酸銅およびFolin−ciocalteuフェノール試薬による処理後に青色を形成する。タンパク質含量は、参考としてアルブミンBSA標準を使用して、750nmにおける吸収から決定された。
Lowry,OH,NJ Rosebrough,AL Farr,and RJ Randall.J.Biol.Chem.193:265.1951.
Oostra,GM,NS Mathewson,and GN Catravas.Anal.Biochem.89:31.1978.
Stoscheck,CM.Quantitation of Protein.Methods in Enzymology 182:50−69(1990).
Hartree,EF.Anal.Biochem.48:422−427(1972)
PhEur:monograph 2053 and section 2.7.1
原理:各リン脂質は1個のリン原子を含有し、これはリン脂質の定量のために使用することができる。リン脂質は、過塩素酸によって分解され、そして生成されたリン酸イオンがモリブデン酸塩によって錯体化され、これがアスコルビン酸によって還元されて青色生成物を生じる。着色は812nmにおいて分光光度計により測定される。サンプル中のリン脂質の量はホスフェートカリブレーター(phosphate calibrator)を含むことによって定量される。
Ames BN.Assay of inorganic phosphate,total phosphate and phosphatases.Meth.Enzymol.1966;8:115−118
Boettcher CJF,van Gent CM & Pries C.A rapid and sensitive sub−micro phosphorus determination.Anal.Chim.Acta 1961;24:203−204
Ph.Eur.2.6.14
オボアルブミンELISAは、捕捉のための固定化ポリクローナル抗オボアルブミン抗体および検出系としての抗オボアルブミン−HRPコンジュゲートを使用する直接サンドイッチ酵素イムノアッセイである。コンジュゲートおよびサンプルが同時にインキュベートされる。未結合成分は洗浄段階によって除去される。基質(TMBおよびH)がウェルに添加される。ウェル中の特異的に結合されたコンジュゲートの存在は、青色の発色によって示される。硫酸が基質に添加されて反応を停止し、そしてこれが黄色への生成物における着色変化をもたらす。吸光度(OD)が450nmにおいて読まれる。最適の結果のために、620nmにおける参考フィルターが使用される。標準曲線は、アッセイに含まれるオボアルブミン標準(0.3〜20.0ng/ml)の応答値から作成される。未知のサンプルの濃度は、標準曲線から内挿することができる。
monograph 0869および2053による:一価のプールされた回収物(harvest)の純度は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって試験された。電気泳動:Ph.Eur 2.2.31による。
【0062】
効能
各ウイルス株について、15日目のlog変換HI抗体タイターおよび15日目の鼻IgA抗体タイターが、両側有意水準0.05において、Wilcoxonの順位和検定によって2つのワクチン接種群間で比較された。
【0063】
また、15日目におけるHI抗体タイターが、1ウイルス株および1ワクチン接種群に
ついて次の3種のパラメーターを計算することによって分析された:
− セロプロテクション率(seroprotection rate),HIタイター≧40として定義されるセロプロテクションによる、
− セロコンバージョン率(seroconversion rate)、ワクチン接種前HIタイター<10およびワクチン接種後HIタイター≧40、またはワクチン接種前HIタイター≧10かつ少なくとも4倍のHIタイターにおける上昇として定義されるセロコンバージョンによる、
− 平均倍増、すなわち、HIタイターにおける倍増の幾何平均。
【0064】
効能データは、per−protocolおよびintent−to−treat原理の両方にしたがって分析された。しかしながら、これが、いわゆるproof−of−principle研究であったならば、per−protocol分析が第1次の分析とみなされた。intent−to−treatサンプルは、若干のワクチン接種後の効能データをもつワクチン接種被験者によって構成された。per−protocolサンプルは、そのプロトコールを終了し、かつ、その者について重大なプロトコール違反(violation)が生じなかったワクチン接種被験者によって構成された。重大な違反は(なかんずく)、基準に合致するか、しないか(in−or exclusion)の違反および禁じられた投薬の使用:を含む。さらにまた、研究所確認の併発インフルエンザ感染を有する被験者および第1次効能データを失っている被験者も、per−protocolサンプルから排除された。被験者がper−protocolサンプルから排除されるべきか排除されるべきではないかは、研究データベースが明らかにされる前に決定された。
【0065】
【表11】

【0066】
【表12】

【0067】
【表13】

【0068】
【表14】

【0069】
結論
予期せぬことに、また同じワクチンバッチにより得られた前臨床データ(実施例1)に反して、そしてWO04/110486および臨床データ(Gluck U,Gebbers JO,Gluck R,Phase 1 evaluation of intranasal virosomal influenza vaccine with and without Eschrichia coli heat−labile toxin in adult volunteers.J Virol.1999 Sep;73(9):7780−6)に記述されたように、インフルエンザワクチンに関するCHMP基準に一致している満足される全身性免疫応答が、アジュバント無添加の再構成ビロソームインフルエンザワクチンにより1回のみワクチン接種されたヒトのグループにおいて観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスエンベロープが完全にインフルエンザウイルス粒子に由来し、脂質が外部起源から再構成ビロソームに付加されず、ビロソームがインフルエンザ抗原ヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼまたはそれらの誘導体を含み、別個のアジュバントおよび/または免疫刺激剤が組成物に添加されず、そして組成物は鼻内または吸入投与調合物として設計され、組成物が、ヒトに対する調合物の単回の鼻内または吸入投与がインフルエンザ抗原ヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼまたはそれらの誘導体に対する全身性および/または局所性免疫応答を誘導することができることを特徴とする、該ウイルスの再構成エンベロープを含むインフルエンザビロソームを含んでなる組成物。
【請求項2】
1鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの用量が30μg以下かまたはそれに等しい、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
また、調合物の単回の鼻内または吸入投与が細胞傷害性リンパ球応答を誘導することができる、請求項1または2のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項4】
免疫応答がインフルエンザワクチンに関するCHMP基準に一致している、請求項1〜3のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項5】
免疫応答が、成人では>70%および/または老人では>60%のセロプロテクション率、成人では>40%および/または老人では>30%のセロコンバージョン率、および成人では>2.5および/または老人では>2.0の平均倍増の1つ以上を提供する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
1鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの用量が25μg以下かまたはそれに等しい、請求項2〜5のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項7】
1鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの用量が20μg以下かまたはそれに等しい、請求項2〜5のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項8】
1鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの用量が15μg以下かまたはそれに等しい、請求項2〜5のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項9】
1鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの用量が10μg以下かまたはそれに等しい、請求項2〜5のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項10】
1鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの用量が5μg以下かまたはそれに等しい、請求項2〜5のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項11】
組成物が鼻内または吸入投与のための製薬学的担体を含んでなるワクチン調合物である、請求項1〜10のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項12】
ウイルスエンベロープが完全にインフルエンザウイルス粒子に由来し、脂質が外部起源から再構成ビロソームに付加されず、ビロソームがインフルエンザ抗原ヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼまたはそれらの誘導体を含み、そして別個のアジュバントおよび/または免疫刺激剤が組成物に添加されない、鼻内または吸入投与のための組成物の製造のための該ウイルスの再構成エンベロープを含むインフルエンザビロソームの使用であって、組成物が、ヒトに対する組成物の単回の鼻内または吸入投与がインフルエンザ抗原ヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼまたはそれらの誘導体に対する全身
性および/または局所性免疫応答の誘導のために十分であることを特徴とする、上記使用。
【請求項13】
1鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの用量が30μg以下かまたはそれに等しい、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
また、組成物の単回の鼻内または吸入投与が細胞傷害性リンパ球応答を誘導する、請求項12または13のいずれか1つに記載の使用。
【請求項15】
免疫応答がインフルエンザワクチンに関するCHMP基準に一致している、請求項12〜14のいずれか1つに記載の使用。
【請求項16】
免疫応答が、成人では>70%および/または老人では>60%のセロプロテクション率、成人では>40%および/または老人では>30%のセロコンバージョン率、および成人では>2.5および/または老人では>2.0の平均倍増の1つ以上を提供する、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
1鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの用量が25μg以下かまたはそれに等しい、請求項13〜16のいずれか1つに記載の使用。
【請求項18】
1鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの用量が20μg以下かまたはそれに等しい、請求項13〜16のいずれか1つに記載の使用。
【請求項19】
1鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの用量が15μg以下かまたはそれに等しい、請求項13〜16のいずれか1つに記載の使用。
【請求項20】
1鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの用量が10μg以下かまたはそれに等しい、請求項13〜16のいずれか1つに記載の使用。
【請求項21】
1鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの用量が5μg以下かまたはそれに等しい、請求項13〜16のいずれか1つに記載の使用。
【請求項22】
製造された組成物がワクチン調合物である、請求項12〜21のいずれか1つに記載の使用。
【請求項23】
ウイルスエンベロープが完全にインフルエンザウイルス粒子に由来し、脂質が外部起源から再構成ビロソームに付加されず、ビロソームがインフルエンザ抗原ヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼまたはそれらの誘導体を含み、別個のアジュバントおよび/または免疫刺激剤が組成物に添加されない、該ウイルスの再構成エンベロープを含むインフルエンザビロソームの組成物を含んでなるワクチン調合物であって、ワクチンは、ワクチンがヒトに対する単回の鼻内または吸入投与のための設計されることを特徴とし、そして1単回の鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの用量が30μg以下かまたはそれに等しい、上記ワクチン調合物。
【請求項24】
1単回の鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの用量が25μg以下かまたはそれに等しい、請求項23に記載のワクチン調合物。
【請求項25】
1単回の鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの用量が20μg以下かまたはそれに等しい、請求項23に記載のワクチン調合物。
【請求項26】
1単回の鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの用量が15μg以下かまたはそれに等しい、請求項23に記載のワクチン調合物。
【請求項27】
1単回の鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの用量が10μg以下かまたはそれに等しい、請求項23に記載のワクチン調合物。
【請求項28】
1単回の鼻内または吸入投与当たり1ウイルス株についてのヘマグルチニンの用量が5μg以下かまたはそれに等しい、請求項23に記載のワクチン調合物。
【請求項29】
調合物の単回の鼻内または吸入投与が、インフルエンザ抗原ヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼまたはそれらの誘導体に対する全身性免疫応答、インフルエンザ抗原ヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼまたはそれらの誘導体に対する局所性免疫応答、および細胞傷害性リンパ球仲介免疫応答の1つ以上を含む免疫応答を該ヒトにおいて誘導することができる、請求項23〜28のいずれか1つに記載のワクチン調合物。
【請求項30】
免疫応答がインフルエンザワクチンに関するCHMP基準に一致している、請求項29に記載のワクチン調合物。
【請求項31】
免疫応答が、成人では>70%および/または老人では>60%のセロプロテクション率、成人では>40%および/または老人では>30%のセロコンバージョン率、および成人では>2.5および/または老人では>2.0の平均倍増の1つ以上を提供する、請求項30に記載のワクチン調合物。
【請求項32】
請求項23〜31のいずれか1つに記載のワクチン調合物およびワクチンのエアゾル化のための機構を含んでなる鼻内または吸入投与のためのデバイス。
【請求項33】
単回の鼻内または吸入投与のためのワクチン調合物のある量を含有する、請求項32に記載のデバイス。
【請求項34】
使い捨てできる、請求項32または33のいずれか1つに記載のデバイス。

【公表番号】特表2009−530351(P2009−530351A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500864(P2009−500864)
【出願日】平成19年3月21日(2007.3.21)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052690
【国際公開番号】WO2007/107585
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(508282960)
【Fターム(参考)】