説明

ビードエイペックス用ゴム組成物およびそれを用いたビードエイペックスを有するタイヤ

【課題】耐候性および耐屈曲疲労性に優れ、かつ変色を起こさないサイドウォールゴムを有する空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】左右一対のビードコア1とトロイド状カーカス2とベルト層3とトレッド4とサイドウォールゴム5よりなる空気入りタイヤにおいて、前記サイドウォールゴム5はカーカス2に隣接する内層ゴム6とその外側に配置される外層ゴム7の二層構造とし、前記外層ゴム7は、厚さが0.6〜2.0mmであり、ゴム成分として天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴムおよびブタジエンゴムからなる群から選ばれた少なくとも1種のジエン系ゴム40〜90重量%と、炭素数が4〜7のイソモノオレフィンと、パラアルキルスチレンとの共重合体をハロゲン化したゴム10〜60重量%を含むことを特徴とする空気入りタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐候性、耐屈曲疲労性が改良され、さらに長期間使用しても変色しないサイドウォールゴムを有する空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤのサイドウォールゴムは、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴムなどの二重結合の含有率の高いゴム(高不飽和ゴム)から構成されていた。しかしながら、これらの高不飽和ゴムは、主鎖に二重結合をもつため、耐オゾン性、耐熱性などが低く、長期間の保存および使用によりクラックが発生することがあった。そのため、これを防止する目的でアミン系の老化防止剤やワックスなどを配合していた。
【0003】
しかしながら、これらのアミン系老化防止剤やワックスは長期間の保存や使用中にサイドウォールゴム表面にブルームして、サイドウォールゴム表面を変色させるなどの問題があった。
【0004】
前記問題を解決する手段として、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などの耐候性のよいゴムを用いることが提案されている(特許文献1〜4など)。しかしながらEPDMは、エチレンセグメントを有するため、タイヤの使用中に温度が100℃近くまで上がったのちに、冷却されると、エチレンセグメントが結晶化を起こし、この結晶が起点となってクラックが発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭52−1761号公報
【特許文献2】特開昭56−11933号公報
【特許文献3】特開平1−297307号公報
【特許文献4】特開平8−231773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐候性および耐屈曲疲労性に優れ、かつ変色を起こさず、さらに結晶化に基づくクラックを起こさないサイドウォールゴムを有する空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
左右一対のビードコアと、前記ビードコアに両端を折り返して係止されるトロイド状カーカスと、前記カーカスのクラウン部に周方向外側に配置されるベルト層と、前記ベルト層の外側に配置されるトレッドと、前記カーカスの側部外側に配置されるサイドウォールゴムよりなる空気入りタイヤにおいて、前記サイドウォールゴムはカーカスに隣接する内層ゴムとその外側に配置される外層ゴムの2層構造とし、外層ゴムは、厚さが0.6〜2.0mmであり、ゴム成分として天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴムおよびブタジエンゴムからなる群から選ばれた少なくとも1種のジエン系ゴム40〜90重量%と、炭素数が4〜7のイソモノオレフィンと、パラアルキルスチレンの共重合体をハロゲン化したゴム10〜60重量%を含むことを特徴とする前記空気入りタイヤ、
外層ゴムのジエン系ゴムが、天然ゴムまたはイソプレンゴムと、ブタジエンゴムとからなり、ブタジエンゴムの天然ゴムまたはイソプレンゴムに対する配合比率が重量比で1以上である前記の空気入りタイヤおよび
内層ゴムの厚さが2〜8mmである前記の空気入りタイヤ
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐候性および耐屈曲疲労性に優れ、かつ変色を起こさないサイドウォールゴムを有する空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の空気入りタイヤの概略部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の構成を図1に基づいて説明する。
【0011】
本発明の空気入りタイヤは、左右一対のビードコア1と、前記ビードコアに両端を折り返して係止されるトロイド状カーカス2と、前記カーカスのクラウン部8に周方向外側に配置されるベルト層3と、前記ベルト層の外側に配置されるトレッド4と、前記カーカスの側部外側に配置されるサイドウォールゴム5よりなる。
【0012】
本発明のサイドウォールゴム5は、カーカス2に隣接する内層ゴム6とその外側に配置される外層ゴム7の二層構造からなる。
【0013】
外層ゴムは、ゴム成分として、ジエン系ゴムおよび、炭素数が4〜7のイソモノオレフィンと、パラアルキルスチレンの共重合体をハロゲン化して得られるハロゲン化共重合体ゴムとを含む。
【0014】
前記ジエン系ゴムの配合量は、40〜90重量%、好ましくは50〜80重量%、より好ましくは55〜80重量%である。前記ジエン系ゴムの配合量が40重量%未満では内層ゴム6との接着力が大きく低下してしまうと同時に耐屈曲疲労性も低下することになり、90重量%をこえると充分な耐候性が得られなくなる。
【0015】
前記ジエン系ゴムは、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴムおよびブタジエンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、低温特性の改善の点から天然ゴムまたはイソプレンゴムと、ブタジエンゴムとであることが好ましい。
【0016】
前記ジエン系ゴムとして、天然ゴムとブタジエンゴムとを用いる場合、天然ゴムに対するブタジエンゴムの配合比率は、重量比で1以上であることが好ましく、より好ましくは1〜1.8、さらに好ましくは1〜1.5である。ブタジエンゴムの配合比率が1未満では耐屈曲疲労性がわるくなり、1.8をこえると強度が大きく低下することになる。
【0017】
前記ジエン系ゴムとして、イソプレンゴムとブタジエンゴムとを用いる場合、イソプレンゴムに対するブタジエンゴムの配合比率は、重量比で1〜1.8であることが好ましく、1〜1.5であることが好ましい。
【0018】
炭素数が4〜7のイソモノオレフィンと、パラアルキルスチレンの共重合体をハロゲン化して得られるハロゲン化共重合体ゴムの配合量は、10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%、より好ましくは20〜45重量%である。前記ハロゲン化共重合体ゴムの配合量が10重量%未満では充分な耐候性が得られず、60重量%をこえると内層ゴム6との接着性が大きく低下すると同時に耐屈曲疲労性も低下する。
【0019】
前記炭素数4〜7のイソモノオレフィンは、具体的には、たとえば、イソブチレン、2−メチル−1−ブテンなどである。
【0020】
前記パラアルキルスチレンは、アルキル基の炭素数が1〜6のものが好ましい。
【0021】
ハロゲン化は、たとえば、臭素、塩素などによって、一部または全ての水素が前記ハロゲンで置換されればよいが、前記ハロゲン化共重合体のハロゲン含有率は、0.1〜5重量%であることが好ましく、0.1〜2重量%であることがより好ましい。ハロゲンの含有率が0.1%未満では加硫度が低すぎて強度が低下する傾向があり、5%をこえると加硫度が高く、硬くなる傾向がある。
【0022】
前記ハロゲン化共重合体中のパラアルキルスチレン単位の含有率は3〜20重量%であることが好ましい。パラアルキルスチレン単位の含有率が3重量%未満では内層ゴムとの接着性が低くなる傾向があり、20重量%をこえると硬度が高くなり引張特性がわるくなり、耐屈曲疲労性能が低下する傾向がある。
【0023】
前記ハロゲン化共重合体は、重量平均分子量が30万〜70万であることが好ましく、ガラス転移温度が−60〜−40℃であることが好ましい。
【0024】
外層ゴムは、たとえば、前記ゴム成分をバンバリーミキサー、ニーダーなどで混練りし、ロール、押し出し機などを用いてシート状とすることができる。
【0025】
外層ゴムの厚さは0.6〜2mm、好ましくは0.7〜1.8mm、より好ましくは0.7〜1.5mmである。外層ゴムの厚さが0.6mm未満ではクラックが生じ、2mmをこえるとコストがあがる。
【0026】
内層ゴムに用いられるゴムとしては、サイドウォール用ゴム組成物に一般に用いられている原料ゴムを、とくに限定なく使用することができる。前記ゴムとしては、たとえば、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、p−メチルスチレン−イソブチレンゴムの臭素化物などがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
内層ゴムも、外層ゴムと同様の方法で前記ゴム成分を混練りし、シート状とすることができる。内層ゴムの厚さは、とくに制限はないが、好ましくは2〜8mm、より好ましくは2〜5mmとすることができる。内層ゴムの厚さが2mm未満ではカーカスの保護的役割という機能が低くなる傾向があり、8mmをこえるとタイヤの重量が重くなるだけである。
【0028】
本発明の内層ゴムおよび外層ゴムは、前記ゴム成分のほかに、カーボンブラックなどの充填剤を含むことができる。カーボンブラックの配合量は、それぞれ、内層ゴム、外層ゴムに含まれるゴム成分100重量部に対して30〜60重量部であることが好ましい。カーボンブラックの配合量が30重量部未満では強度が低い傾向があり、60重量部をこえると硬くなりすぎる傾向がある。
【0029】
本発明の内層ゴムおよび外層ゴムは、さらに、前記ゴム成分、充填剤の他に、各種ゴム用軟化剤、ワックス、老化防止剤、金属酸化物、ステアリン酸、酸化亜鉛、加硫剤、加硫促進剤など、通常ゴム工業で使用されている各種添加剤を配合することができる。
【0030】
本発明のサイドウォールゴムは、前記内層ゴムと外層ゴムを、たとえば、重ね合わせて加硫することにより接着して得ることができる。
【実施例】
【0031】
以下、試験例および実施例にしたがって本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0032】
以下の試験例および実施例に使用した配合成分を示す。
NR:RSS♯3
BR:Nipol1200(日本ゼオン(株)製)
EXXPRO:EXXPRO 90−10(エクソン化学(株)製)
(臭素含有量約2重量%でp−メチルスチレン単位の含有率が7.5重量%のイソブチレン−p−メチルスチレン共重合体)
カーボンブラック:シーストSO(東海カーボン(株)製)
プロセスオイル:ダイアナプロセスオイルPW32(出光興産(株)製)
ワックス:サンノック(大内新興化学工業(株)製)
老化防止剤:ノクラック6C(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン)(大内新興化学工業(株)製)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製
ステアリン酸:日本油脂(株)製
硫黄:鶴見化学(株)製
加硫促進剤:ノクセラーDM(ジベンゾチアジルジスルフィド)(大内新興化学工業(株)製)
【0033】
試験例1〜9(ゴムシート)
これらの薬品を用い、表1の配合にしたがって、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を1.7Lバンバリーミキサーで混練りし、そののちロールで硫黄および加硫促進剤を混入して未加硫ゴムシートを作り、以下の試験を実施した。
【0034】
耐オゾン性
前記未加硫ゴムシートを170℃、15分間の条件で加硫し、加硫ゴムシートを作製し、JIS K6259にしたがって、温度40℃、オゾン濃度50pphm、伸長率50%、96時間の条件で試験を行なった。試験片のクラックの状態をJIS K6259にしたがって判定した。
【0035】
耐屈曲疲労性
前記未加硫ゴムシートを170℃、15分間の条件で加硫し、JIS K6260にしたがって、屈曲亀裂発生試験を行なった。試験条件は50万回繰り返し屈曲させたのちのクラックの状態を級数で評価した。級数が小さいほど耐屈曲疲労性がよい。
【0036】
接着性
前記未加硫ゴムシートと試験例8の未加硫ゴムシートを重ね合わせて170℃で15分間加硫して接着させ、2.5cm幅にカットし、接着剥離試験片を作製した。これを、50mm/分の引っ張り速度で剥離し、剥離強度を評価した。剥離強度の単位はkgf/2.5cmとして求めた。数値が大きいほど剥離強度が高く、100kgf/2.5cm以上であれば、実用的に問題がない。
【0037】
外観変色
170℃、15分間の条件で加硫した厚さ4mmのゴム板を用い、これらの試験片を雨水がかからないように屋外暴露した。30日間暴露後、外観を目視で観察し、変色の度合いを5段階で評価した。数字が小さいほど変色の度合いが大きいことを示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表1の結果より、EXXPROを規定量用いた試験例1〜7は、EXXPROを用いない試験例8に比べ外観変色が抑えられるばかりか、耐オゾン性、耐屈曲疲労性とも改善された。また、EXXPROを60重量%以上用いた試験例9では、充分な接着性が得られなかった。
【0040】
試験例10〜23(内層ゴム−外層ゴム)
表2にしたがって、試験例1〜7の未加硫ゴムシートと試験例8の未加硫ゴムシートを重ね合わせて170℃で15分間加硫し、二層構造のサンプルを作製した。これらのサンプルを用いて試験例1〜9と同様の方法で屈曲亀裂発生試験を行なった。外層ゴムの厚さが0.6mm未満では、クラックの発生の程度が大きかった。
【0041】
【表2】

【0042】
実施例1〜10および比較例1〜4(タイヤ)
つぎに、表3にしたがって、外層ゴムに試験例1〜7のゴムシート、内層ゴムに試験例8のゴムシートをもつ二層構造のサイドウォールゴムを有する215/45ZR17のサイズのタイヤを試作し、マシンで耐久試験を実施した。目視でクラックの発生がなく、30000km完走すれば合格である。表3のように、BR量よりNR量が多い場合は外層の厚さが0.6mm未満では、30000km未満でクラックが発生することが確認できた。
【0043】
【表3】

【符号の説明】
【0044】
1 ビードコア
2 トロイド状カーカス
3 ベルト層
4 トレッド
5 サイドウォールゴム
6 内層ゴム
7 外層ゴム
8 クラウン部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のビードコアと、前記ビードコアに両端を折り返して係止されるトロイド状カーカスと、前記カーカスのクラウン部に周方向外側に配置されるベルト層と、前記ベルト層の外側に配置されるトレッドと、前記カーカスの側部外側に配置されるサイドウォールゴムよりなる空気入りタイヤにおいて、前記サイドウォールゴムはカーカスに隣接する内層ゴムとその外側に配置される外層ゴムの二層構造とし、前記外層ゴムは、厚さが0.6〜2.0mmであり、ゴム成分として天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴムおよびブタジエンゴムからなる群から選ばれた少なくとも1種のジエン系ゴム40〜90重量%と、炭素数が4〜7のイソモノオレフィンと、パラアルキルスチレンとの共重合体をハロゲン化したゴム10〜60重量%を含むことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
ジエン系ゴムが、天然ゴムまたはイソプレンゴムと、ブタジエンゴムとからなり、ブタジエンゴムの天然ゴムまたはイソプレンゴムに対する配合比率が重量比で1以上である請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
内層ゴムの厚さが2〜8mmである請求項1または2記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2012−166782(P2012−166782A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−55596(P2012−55596)
【出願日】平成24年3月13日(2012.3.13)
【分割の表示】特願2000−239507(P2000−239507)の分割
【原出願日】平成12年8月8日(2000.8.8)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】