説明

ビーム照射装置

【課題】光検出器上におけるサーボ光の理想軌道を線形に近づけることができ、且つ、サーボ光によるミラーの制御を円滑に行うことができるビーム照射装置を提供する。
【解決手段】ビーム照射装置は、走査用レーザ光を出射する走査用レーザ光源201と、サーボ光を出射する半導体レーザ301と、走査用レーザ光とサーボ光の進行方向を一致させるダイクロイックミラー401と、走査用レーザ光を走査させるミラー150と、サーボ光を分離するダイクロイックミラー402と、サーボ光を受光するPSD311と、PSD311からの信号に基づいて位置検出信号を生成する位置信号生成回路8と、位置検出信号に基づいてミラー150を駆動するマイコン12とを備える。走査用レーザ光とサーボ光がミラー150に入射するため、走査用レーザ光が目標領域を水平に走査すると、サーボ光はPSD311上を線形に走査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標領域にレーザ光を照射するビーム照射装置に関し、特に、目標領域にレーザ光を照射したときの反射光をもとに、目標領域内における障害物の有無や障害物までの距離を検出する、いわゆるレーザレーダに搭載されるビーム照射装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、走行時の安全性を高めるために、走行方向前方にレーザ光を照射し、その反射光の状態から、目標領域内における障害物の有無や障害物までの距離を検出するレーザレーダが、家庭用乗用車等に搭載されている。一般に、レーザレーダは、レーザ光を目標領域内でスキャンさせ、各スキャン位置における反射光の有無から、各スキャン位置における障害物の有無を検出する。さらに、各スキャン位置におけるレーザ光の照射タイミングから反射光の受光タイミングまでの所要時間をもとに、そのスキャン位置における障害物までの距離が検出される。
【0003】
目標領域においてレーザ光をスキャンさせるための構成として、ミラーを2軸駆動する構成を用いることができる(特許文献1)。このスキャン機構では、レーザ光を水平方向斜めからミラーに入射させる。ミラーを水平方向と鉛直方向に2軸駆動することにより、レーザ光が目標領域を走査する。
【0004】
ミラーの駆動制御は、たとえば、ミラーと一体的に駆動される透過板を介して、サーボ光をPSD(Position Sensitive Detector)等の光検出器で受光することによって行われる。この場合、予め設定された理想の受光位置とサーボ光の実際の受光位置とが比較され、両者の差分に応じて、ミラーが2軸駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−175856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記スキャン機構において、レーザ光を目標領域において水平に走査させる場合、ミラーは、水平方向のみならず鉛直方向にも回動される。このため、光検出器上におけるサーボ光の理想の受光位置の軌道(理想軌道)は、非線形な形状になり易い。このように理想軌道が非線形になると、理想軌道を規定するために、多数のテーブル値をメモリに保持しておく必要がある。また、多数のテーブル値に基づいて、サーボ光を理想の受光位置に近付けるよう制御するためには、複雑かつ頻繁な演算処理が必要となり、処理負担が大きくなってしまう。
【0007】
かかる問題は、サーボ光の理想軌道を線形に近づけることにより解消できる。そのための方法として、目標領域に照射されるレーザ光の一部をビームスプリッタ等により分離し、分離されたレーザ光をサーボ光として用いる構成を採ることができる。しかしながら、レーザ光は、目標領域に連続的に照射されず、所定のタイミングで間欠的に照射される。このため、この構成では、光検出器に対するサーボ光の照射も間欠的なものとなる。ところが、目標領域におけるレーザ光の照射期間は、通常、極めて微小(数10nsec程度)に設定されるため、このように微小な期間しか発光されないレーザ光をサーボ光として利用して制御を行うのは、極めて困難である。さらに、この構成では、レーザ光の一部が
分離されるため、目標領域におけるレーザ光のパワーを損ねる惧れがある。
【0008】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、光検出器上におけるサーボ光の理想軌道を線形に近づけることができ、且つ、サーボ光によるミラーの制御を円滑に行うことができるビーム照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るビーム照射装置は、レーザ光を出射する第1のレーザ光源と、サーボ光を出射する第2のレーザ光源と、前記レーザ光と前記サーボ光の進行方向を一致させる第1の光学素子と、前記第1の光学素子を経由した前記レーザ光および前記サーボ光が入射するともに、目標領域において前記レーザ光を走査させるアクチュエータと、前記アクチュエータを経由した前記サーボ光を前記レーザ光から分離する第2の光学素子と、前記第2の光学素子によって分離された前記サーボ光を受光して受光位置に応じた第1の検出信号を出力する第1の光検出器と、前記第1の検出信号に基づいて位置検出信号を生成する信号処理部と、前記位置検出信号に基づいて前記アクチュエータを制御する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光検出器上におけるサーボ光の理想軌道を線形に近づけることができ、且つ、サーボ光によるミラーの制御を円滑に行うことができるビーム照射装置を提供することができる。
【0011】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態に係るミラーアクチュエータの分解斜視図を示す図である。
【図2】実施の形態に係るミラーアクチュエータの組立過程を示す図である。
【図3】実施の形態に係るミラーアクチュエータの組立過程を示す図である。
【図4】実施の形態に係るビーム照射装置の光学系を示す図である。
【図5】実施の形態に係るビーム照射装置の光学系を示す図である。
【図6】実施の形態に係るPSDの構成を示す図である。
【図7】実施の形態に係る位置検出信号の生成方法を説明する図である。
【図8】実施の形態に係るミラーの駆動状態と目標領域における走査用レーザ光の軌道およびPSD上におけるサーボ光の軌道との関係を示す図である。
【図9】実施の形態に係るビーム照射装置の回路構成を示す図である。
【図10】実施の形態に係るノイズキャンセル回路の構成を示す図である。
【図11】実施の形態に係るノイズキャンセル回路の制御動作フローを示す図である。
【図12】実施の形態に係るミラーアクチュエータの制御方法を説明する図である。
【図13】実施の形態の変更例に係るマイコンの補間制御処理フローを示す図である。
【図14】実施の形態の変更例に係るビーム照射装置の回路とマイコンの構成を示す図である。
【図15】実施の形態の変更例に係るマイコンの照射位置信号の生成および補間制御処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本実施の形態に係るミラーアクチュエータ100の分解斜視図である。
【0014】
ミラーアクチュエータ100は、チルトユニット110と、パンユニット120と、マ
グネットユニット130と、ヨークユニット140と、ミラー150を備えている。
【0015】
チルトユニット110は、支軸111と、チルトフレーム112と、2つのチルトコイル113とを備えている。支軸111には、両端部近傍に2つの溝111aが形成されている。これら溝111aには、Eリング117a、117bが嵌め込まれる。
【0016】
チルトフレーム112には、左右に、チルトコイル113を装着するためのコイル装着部112aが形成されている。また、チルトフレーム112には、支軸111を嵌め込むための溝112bと、上下に並ぶ2つの孔112cが形成されている。
【0017】
支軸111は、両端に軸受け116a、116b、Eリング117a、117bおよびポリスライダーワッシャ118が取り付けられた状態で、チルトフレーム112に形成された溝112bに嵌め込まれ、接着固定される。さらに、チルトフレーム112の2つの孔112cに、それぞれ、上下から軸受け112dが嵌め込まれる。これにより、図2(a)に示すように、チルトユニット110の組み立てが完了する。なお、図2(a)には、支軸111に、軸受け116a、116bと、Eリング117a、117bと、3つのポリスライダーワッシャ118が装着された状態が示されている。
【0018】
完成したチルトユニット110には、後述の如くして、パンユニット120が装着される。その後、チルトユニット110は、軸受け116a、116bと、Eリング117a、117bと、ポリスライダーワッシャ118と、軸固定部材142を用いて、後述の如く、ヨーク141に取り付けられる。
【0019】
図1に戻り、パンユニット120は、パンフレーム121と、支軸122と、パンコイル123を備えている。パンフレーム121には、凹部121aを挟んで上板部121bと下板部121cが形成されている。これら上板部121bと下板部121cには、支軸122を通すための孔121dが上下に並ぶように形成されている。また、上板部121bと下板部121cの前面には、ミラー150を嵌め込むための段部121eが形成されている。
【0020】
なお、パンフレーム121の背面には、パンコイル123を装着するためのコイル装着部(図示せず)が形成されている。
【0021】
マグネットユニット130は、フレーム131と、2つのパンマグネット133と、8つのチルトマグネット132とを備えている。フレーム131は、前側に凹部131aを有する形状となっている。フレーム131の上板部131bには、前後方向に、2つの切り欠き131cが形成され、さらに、中央に、ネジ穴131dが形成されている。8つのチルトマグネット132は、フレーム131の左右の内側面に、上下2段に分けて装着されている。また、2つのパンマグネット133は、図示の如く、フレーム131の内側面に、前後方向に傾くように装着されている。
【0022】
ヨークユニット140は、ヨーク141と、軸固定部材142を備えている。ヨーク141は、磁性部材からなっている。ヨーク141には、左右に壁部141aが形成され、これら壁部141aの下端には、チルトユニット110の支軸111を装着するための凹部141bが形成されている。ヨーク141の上部には上下に貫通する2つのネジ穴141cが形成され、さらに、マグネットユニット130のネジ穴131dに対応する位置に、孔141dが形成されている。2つの壁部141aの内側面間の距離は、支軸111の2つの溝111a間の距離よりも大きくなっている。
【0023】
軸固定部材142は、可撓性を有する金属性の薄板部材である。軸固定部材142の前
側には、板ばね部142a、142bが形成され、これら板ばね部142a、142bの下端には、それぞれ、チルトユニット110の軸受け116a、116bの脱落を規制するための受け部142c、142dが形成されている。また、軸固定部材142の上板部には、ヨーク141側の2つのネジ穴141cに対応する位置にそれぞれ孔142eが形成され、さらに、ヨーク141側の孔141dに対応する位置に孔142fが形成されている。
【0024】
ミラーアクチュエータ100の組み立て時には、上記の如くして、図2(a)に示すチルトユニット110が組み立てられる。その後、チルトフレーム112がパンフレーム121の凹部121a内に収容される。このとき、2つの軸受け112dおよび3つのポリスライダーワッシャ112eと、パンフレーム121の孔121dとが上下に並ぶように、パンフレーム121が位置づけられる。そして、その状態で、2つの軸受け112dとパンフレーム121の孔121dに、支軸122が通され、支軸122がパンフレーム121に接着剤により固定される。これにより、図2(b)に示す構成体が形成される。この状態で、パンフレーム121は、支軸122の周りに回動可能となり、また、支軸122に沿って上下に僅かに移動可能となる。
【0025】
こうしてパンユニット120が装着された後、パンフレーム121の段部121eにミラー150が嵌め込まれて固定される。その後、チルトユニット110の支軸111の両端に装着された軸受け116a、116bを、図1に示すヨーク141の凹部141bに嵌め込む。そして、この状態で、軸受け116a、116bが凹部141bから脱落しないように、軸固定部材142をヨーク141に装着する。すなわち、受け部142cが軸受け116aを下から支え、且つ、受け部142dが軸受け116bを前方から挟むようにして軸固定部材142をヨーク141に装着する。この状態で、軸固定部材142の2つの孔142eを介して2つのネジ143をヨーク141のネジ穴141cに螺着する。これにより、図2(b)に示す構成体がヨークユニット140に装着される。
【0026】
こうして、図3(a)に示す構成体が完成する。この状態で、チルトフレーム112は、パンフレーム121と一体的に、支軸111の周りに回動可能となる。
【0027】
こうして組み立てられた図3(a)の構成体は、ヨーク141の2つの壁部141aが、それぞれ、マグネットユニット130側のフレーム131の切り欠き131cに挿入されるようにして、マグネットユニット130に装着される。そして、この状態で、軸固定部材142の孔142fを介して、ネジ144が、ヨーク141の孔141dとマグネットユニット130のネジ穴131dに螺着される。これにより、図3(a)に示す構成体が、マグネットユニット130に固着される。こうして、図3(b)に示すように、ミラーアクチュエータ100の組み立てが完了する。
【0028】
図3(b)に示す組み立て状態において、パンフレーム121が支軸122を軸として回動すると、これに伴ってミラー150が回動する。また、チルトフレーム112が支軸111を軸として回動すると、これに伴ってパンユニット120が回動し、パンユニット120と一体的にミラー150が回動する。このように、ミラー150は、互いに直交する支軸111によって回動可能に支持され、チルトコイル113およびパンコイル123への通電によって、支軸111の周りに回動する。
【0029】
図3(b)に示すアセンブル状態において、8個のチルトマグネット132は、チルトコイル113に電流を印加することにより、チルトフレーム112に支軸111を軸とする回動力が生じるよう、配置および極性が調整されている。したがって、チルトコイル113に電流を印加すると、チルトコイル113に生じる電磁駆動力によって、チルトフレーム112が、支軸111を軸として回動し、これに伴って、ミラー150が回動する。
【0030】
また、図3(b)に示すアセンブル状態において、2個のパンマグネット133は、パンコイル123に電流を印加することにより、パンフレーム121に支軸122を軸とする回動力が生じるよう、配置および極性が調整されている。したがって、パンコイル123に電流を印加すると、パンコイル123に生じる電磁駆動力によって、パンフレーム121が、支軸122を軸として回動し、これに伴って、ミラー150が回動する。
【0031】
図4は、ミラーアクチュエータ100が装着された状態の光学系の構成を示す図である。
【0032】
図4において、500は、光学系を支持するベースである。ベース500の上面には、走査用レーザ光源201と、ビーム整形レンズ202と、半導体レーザ301と、集光レンズ302と、PSD(Position Sensitive Detector)311と、高速フォトダイオード312と、ダイクロイックミラー401、402とが配置されている。なお、集光レンズ302の後段には、アパーチャ303と、ND(ニュートラルデンシティ)フィルタ304(図4には図示せず)が配されている。
【0033】
図5(a)は、ベース500の一部上面図である。
【0034】
図5(a)を参照して、走査用レーザ光源201は、900nm程度の波長のレーザ光を出射する。走査用レーザ光源201は、ベース500の上面に配された回路基板201aに装着されている。また、走査用レーザ光源201は、光軸が水平方向と平行となるように配置されている。ビーム整形レンズ202は、走査用レーザ光源201から出射されたレーザ光(以下、「走査用レーザ光」という)を所定の形状に整形する。
【0035】
半導体レーザ301は、走査用レーザ光源201と異なる波長(たとえば、650nm程度)のレーザ光を出射する。半導体レーザ301は、ベース500の上面に配された回路基板301aに装着されている。また、半導体レーザ301は、光軸が水平方向と平行となるように配置されている。集光レンズ302は、半導体レーザ301から出射されたレーザ光(以下、「サーボ光」という)をPSD311の受光面上に収束させる。アパーチャ303は、サーボ光のビーム径を絞りこみ、NDフィルタ304は、サーボ光を減光する。
【0036】
PSD311は、サーボ光の受光位置に応じた信号を出力する。PSD311は、ベース500の上面に配された回路基板311aに装着されている。高速フォトダイオード312は、受光光量に応じた信号を出力する。高速フォトダイオード312は、ベース500の上面に配された回路基板312aに装着されている。高速フォトダイオード312は、PSD311の横に並ぶように配置されている。
【0037】
走査用レーザ光源201と半導体レーザ301は、それぞれの光軸が互いに直交するように配置されている。また、走査用レーザ光源201と半導体レーザ301の光軸が直交する位置に、ダイクロイックミラー401が配置されている。ダイクロイックミラー401は、走査用レーザ光源201と半導体レーザ301の光軸に対して、それぞれ、45度傾いている。
【0038】
ダイクロイックミラー401は、入射された光のうち、走査用レーザ光源201から出射されたレーザ光を透過し、半導体レーザ301から出射されたサーボ光を反射する。かかるダイクロイックミラー401の作用により、走査用レーザ光とサーボ光は、ダイクロイックミラー401を通ると、互いの光軸が整合される。ダイクロイックミラー402は、入射された光のうち、走査用レーザ光を透過し、サーボ光を反射する。これにより、サ
ーボ光が走査用レーザ光から分離される。分離されたサーボ光は、PSD311に入射する。PSD311の受光面は、ダイクロイックミラー402の受光面に対して、水平方向に45度傾いている。
【0039】
ミラーアクチュエータ100は、ミラー150が中立位置にあるときに、ダイクロイックミラー401を経由した走査用レーザ光およびサーボ光がミラー150のミラー面に対し水平方向において45度の入射角で入射するよう配置されている。なお、「中立位置」とは、ミラー面が鉛直方向に対し平行で、且つ、走査用レーザ光およびサーボ光がミラー面に対し水平方向において45度の入射角で入射するときのミラー150の位置をいう。ミラー150が中立位置にあるとき、走査用レーザ光とサーボ光の光軸は、ダイクロイックミラー402の受光面に対して、45度の角度を持つ。ミラーアクチュエータ100によってミラー150が駆動されると、走査用レーザ光が目標領域内においてスキャンされる。このとき、同時に、サーボ光がPSD311の受光面上を走査する。
【0040】
図5(b)は、ミラー150の回動位置とサーボ光の光路の関係を模式的に示す図、図5(c)は、ミラー150の回動位置と走査用レーザ光の光路の関係を模式的に示す図である。なお、同図(b)、(c)では、便宜上、同図(a)のミラー150、走査用レーザ光源201、半導体レーザ301、PSD311、ダイクロイックミラー401、402のみが図示されている。
【0041】
図5(b)を参照して、サーボ光は、2つのダイクロイックミラー401、402とミラー150によって反射され、PSD311に受光される。ここで、ミラー150が破線の位置から矢印のように回動すると、サーボ光の光路が図中の点線から実線のように変化し、PSD311上におけるサーボ光の受光位置が変化する。これにより、PSD311にて検出されるサーボ光の受光位置によって、ミラー150の回動位置を検出することができる。
【0042】
図5(c)を参照して、走査用レーザ光は、ダイクロイックミラー401を透過し、ミラー150によって反射され、さらに、ダイクロイックミラー402を透過して、目標領域に照射される。ここで、ミラー150が破線の位置から矢印のように回動すると、走査用レーザ光の光路が図中の点線から実線のように変化し、走査用レーザ光の進行方向が変化する。これにより、走査用レーザ光が目標領域内においてスキャンされる。
【0043】
ここで、ミラー150の回動位置と、目標領域における走査用レーザ光の走査位置は、一対一に対応する。また、ミラー150の回動位置とPSD311上におけるサーボ光の照射位置も、1対1に対応する。よって、PSD311からの信号をもとに目標領域における走査用レーザ光の走査位置を容易に検出することができる。
【0044】
図6(a)は、PSD311の構成を示す図(側断面図)、図6(b)はPSD311の受光面を示す図である。
【0045】
図6(a)を参照して、PSD311は、N型高抵抗シリコン基板の表面に、受光面と抵抗層を兼ねたP型抵抗層を形成した構造となっている。抵抗層表面には、同図(b)の横方向における光電流を出力するための電極X1、X2と、縦方向における光電流を出力するための電極Y1、Y2(同図(a)では図示省略)が形成されている。また、裏面側には共通電極が形成されている。
【0046】
受光面にレーザ光が照射されると、照射位置に光量に比例した電荷が発生する。この電荷は光電流として抵抗層に到達し、各電極までの距離に逆比例して分割されて、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される。ここで、電極X1、X2、Y1、Y2から出力され
る電流は、レーザ光の照射位置から各電極までの距離に逆比例して分割された大きさを有している。よって、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流値をもとに、受光面上における光の照射位置を検出することができる。
【0047】
たとえば、図7の位置Pにサーボ光が照射されたとする。この場合、受光面のセンターを基準点とする位置Pの座標(x,y)は、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流量をそれぞれIx1、Ix2、Iy1、Iy2、X方向およびY方向における電極間の距離をLx、Lyとすると、たとえば、以下の式によって算出される。
【0048】
【数1】

【0049】
図8は、ミラー150の駆動状態と目標領域における走査用レーザ光の軌道およびPSD311上におけるサーボ光の軌道との関係を模式的に示す図である。図8(b)は、ミラー150の駆動状態を示し、図8(a)、(c)は、それぞれ、目標領域における走査用レーザ光の軌道およびPSD311上におけるサーボ光の軌道を示す。なお、本実施の形態において、走査用レーザ光の走査は、目標領域において水平方向に伸びた3つの走査軌道に沿って行われる。以下では、支軸122を軸とするミラー150の回動方向をPan方向といい、支軸111を軸とするミラー150の回動方向をTilt方向という。
【0050】
各図の中段のラインは、ミラー150を、中立位置から水平方向にのみ回動させた場合を示している。また、図中の破線は、Pan方向のミラーの回動位置が中立位置と同じ位置にある場合を示している。各図の中段のラインよりも上の領域では、ミラー150が水平方向よりも上を向いており、中段のラインよりも下の領域では、ミラー150が水平方向よりも下を向いている。
【0051】
目標領域における走査用レーザ光の軌道(以下、「走査軌道」という)が曲線状になると、目標領域内における障害物の検出精度が低下する惧れがある。このため、目標領域における走査軌道La1〜La3は、同図(a)に示すように、水平方向に直線状(線形)になるのが望ましい。
【0052】
このように走査軌道La1〜La3を水平方向に直線状とするには、ミラー150を、同図(b)に示すように駆動する必要がある。すなわち、Pan方向の回動に伴い、ミラー150を、Tilt方向にも駆動する必要がある。
【0053】
本実施の形態では、走査用レーザ光の光軸とサーボ光の光軸が一致するため、走査用レーザ光とサーボ光が、ミラー150の駆動によって、同じ挙動を取る。このため、走査用レーザ光を同図(a)のように水平に走査させると、PSD311の受光面上におけるサーボ光の軌道(以下、「照射軌道」という)は、同図(c)中のLc1〜Lc3のように直線状(線形)になる。
【0054】
したがって、PSD311上におけるサーボ光の照射位置が、同図(c)に示す照射軌道Lc1〜Lc3を追従するように、ミラーアクチュエータ100を制御することで、目標領域における走査軌道La1〜La3は、同図(a)に示す如く水平方向に直線状(線形)となる。
【0055】
なお、本実施の形態では、走査用レーザ光の光軸とサーボ光の光軸とを一致させたが、ダイクロイックミラー401を通った後の走査用レーザ光の光軸とサーボ光の光軸が平行であれば、上記と同様、PSD311上におけるサーボ光の走査軌道を線形にすることができる。すなわち、ダイクロイックミラー401を通った後の走査用レーザ光と前記サーボ光の進行方向が一致していれば、走査用レーザ光を目標領域において水平に走査させたときのPSD311上におけるサーボ光の走査軌道を線形にすることができる。
【0056】
ところで、本実施の形態では、図5(a)に示すように、PSD311が、走査用レーザ光源201に対面するよう配置されているため、走査用レーザ光の一部が迷光となってPSD311に入射することが起こり得る。走査用レーザ光源201の発光強度(数10W程度)は、PSD311に入射する際のサーボ光の強度(数10μW程度)に比べて顕著に大きいため、このように迷光がPSD311に入射すると、PSD311から出力される信号が劣化する。また、このように迷光がPSD311に入射すると、PSD311から高レベルの電流信号が出力され、この電流信号が後段側の回路に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0057】
本実施の形態では、かかる迷光の影響を抑えるため、PSD311に隣接した位置に、高速フォトダイオード312が配されている。高速フォトダイオード312を用いた迷光の影響を抑制するための構成については、図9および図10を参照して説明する。
【0058】
図9は、本実施の形態に係るビーム照射装置の回路構成を示す図である。なお、同図には、便宜上、図5(a)に示す走査用レーザ光とサーボ光のための光学系1が、その主要な構成とともに示されている。
【0059】
図示の如く、ビーム照射装置は、ノイズキャンセル回路2と、I/V変換回路3〜7と、位置信号生成回路8と、マイコン12と、走査レーザ駆動回路13と、サーボレーザ駆動回路14と、アクチュエータ駆動回路15とを備えている。
【0060】
半導体レーザ301から出射されたサーボ光は、上記の如く、ダイクロイックミラー401、402と、ミラー150によって反射された後、PSD311の受光面に入射される。これにより、サーボ光の照射位置に応じた電流信号Ix1、Ix2、Iy1、Iy2(図5中の電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流信号)がPSD311から出力され、それぞれ、ノイズキャンセル回路2に入力される。
【0061】
走査用レーザ光源201から出射された走査用レーザ光にかかる迷光が、高速フォトダイオード312に入射されると、迷光の光量に応じた電流信号が高速フォトダイオード312から出力され、I/V変換回路3に入力される。
【0062】
I/V変換回路3は、アナログ回路からなっており、高速フォトダイオード312から出力される電流信号を電圧信号(以下、「モニタ電圧信号」という)に変換し、ノイズキャンセル回路2に出力する。
【0063】
ノイズキャンセル回路2は、I/V変換回路3から出力されるモニタ電圧信号を受信する。ノイズキャンセル回路2は、受信したモニタ電圧信号が、一定の閾値を超えると、PSD311から出力される電流信号を遮断し、一定の閾値を超えない場合には、PSD3
11から出力される電流信号をI/V変換回路4〜7へ出力する。
【0064】
I/V変換回路4〜7は、アナログ回路からなっており、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流信号Ix1、Ix2、Iy1、Iy2を電圧信号(以下、「位置電圧信号」という)に変換し、位置信号生成回路8に出力する。
【0065】
位置信号生成回路8は、アナログ回路からなっており、I/V変換回路4〜7から出力される位置電圧信号を図5で参照して説明した式(1)、(2)に基づき、X軸およびY軸方向の照射位置を示す信号を生成する。かかる照射位置信号は、A/D変換回路10、11に出力される。
【0066】
A/D変換回路10、11は、位置信号生成回路8から出力される照射位置信号をデジタル信号に変換し、マイコン12に出力する。
【0067】
マイコン12は、位置信号生成回路8から出力される信号に基づき、目標領域における走査用レーザ光の走査位置を検出し、ミラーアクチュエータ100の駆動制御や、走査用レーザ光源201と半導体レーザ301の駆動制御等を実行する。
【0068】
すなわち、マイコン12は、走査位置が所定の位置に到達したタイミングで、パルス駆動信号を、走査レーザ駆動回路13に出力する。これにより、走査用レーザ光源201がパルス発光され、目標領域にレーザ光が照射される。
【0069】
また、マイコン12は、図8(a)に示す走査軌道La1〜La3を走査用レーザ光が追従するよう、アクチュエータ駆動回路15に、サーボ信号(Pan方向およびTilt方向の駆動信号)を出力する。具体的には、マイコン12は、図8(c)に示す照射軌道Lc1〜Lc3を走査用レーザ光が追従するよう、アクチュエータ駆動回路15に、サーボ信号(Pan方向およびTilt方向の駆動信号)を出力する。これを受けてアクチュエータ駆動回路15は、ミラーアクチュエータ100を駆動し、これにより、走査用レーザ光が所期の軌道に追従するよう目標領域を走査する。さらに、マイコン12は、サーボレーザ駆動回路14に制御信号を出力する。これにより、半導体レーザ301が、一定パワーレベルにて連続的に発光される。
【0070】
本実施の形態では、一定周期T毎に、ミラーアクチュエータ100の制御が行われる。マイコン12には、各制御タイミングにおけるPSD311上の理想の照射位置(以下、「目標照射位置」という)が保持されている。かかる目標照射位置は、走査用レーザ光が適正な走査軌道上に沿って水平方向に走査されるときのサーボ光の照射軌道(図8(c)参照)上に位置している。マイコン12は、かかる照射軌道に沿ってサーボ光の照射位置が進むよう、ミラーアクチュエータ100を駆動する。
【0071】
図9の構成において、ノイズキャンセル回路2は、走査用レーザ光が迷光となってPSD311に入射したときの悪影響を抑制するために配されている。上述のように、高パワーの走査用レーザ光が迷光となってPSD311に入射すると、高レベルの電流信号がPSD311から出力される。図9の構成において、ノイズキャンセル回路2が配されていないと、この電流信号は、I/V変換回路4〜7に直接入力される。ところが、I/V変換回路4〜7はアナログ回路であるため、このように迷光による高レベルの電流信号がI/V変換回路4〜7に入力されると、I/V変換回路4〜7において不要輻射や反射等が起こり、I/V変換回路4〜7の動作が不安定になる惧れがある。また、図9の構成では、位置信号生成回路8もアナログ回路からなっているため、迷光による高レベルの電流信号による影響は、位置信号生成回路8にも波及する。このため、位置信号生成回路8の動作が、迷光による高レベルの電流信号によって不安定になる惧れがある。
【0072】
そこで、図9の構成では、I/V変換回路4〜7の前段にノイズキャンセル回路2を配置し、迷光による高レベルの電流信号がI/V変換回路4〜7に入力されないようになっている。
【0073】
図10は、ノイズキャンセル回路2の回路構成を示す図である。
【0074】
図示の如く、ノイズキャンセル回路2は、比較回路21と、スイッチング回路22〜25とを備える。
【0075】
スイッチング回路22は、それぞれ端子22a、22bを備えている。端子22aは、PSD311からI/V変換回路4〜7への出力ラインに接続されており、端子22bは、GND(グランド)に接続されている。また、他のスイッチング回路23〜25についてもスイッチング回路22と同様に構成されている。
【0076】
比較回路21は、I/V変換回路3によって変換されたモニタ電圧信号と閾値Vshとを比較し、モニタ電圧信号が閾値Vshを超えるときに、エラー信号をスイッチング回路22〜25へ出力する。
【0077】
スイッチング回路22〜25は、比較回路21からエラー信号を受信すると、端子22aと端子22bを導通させ、PSD311から入力された電流信号をGND(グランド)へと導く。こうして、I/V変換回路4〜7に対する電流信号の供給が一時的に遮断される。
【0078】
図11は、迷光受光時におけるノイズキャンセル回路の動作を示すフローチャートである。
【0079】
高速フォトダイオード312が迷光を受光すると(S11:YES)、I/V変換回路3によって変換されたモニタ電圧信号が取得され(S12)、取得されたモニタ電圧信号が閾値Vshを超えたかが、比較回路21により判別される(S13)。モニタ電圧信号が閾値Vshを超えると(S13:YES)、比較回路21からエラー信号が出力され、スイッチング回路22〜25により、一時的に、I/V変換回路4〜7に対する電流信号の供給が遮断される(S14)。
【0080】
これにより、PSD311に迷光等が入射された場合においても、PSD311に隣接した位置に配置された高速フォトダイオード312が迷光を検知し、ノイズキャンセル回路2によって、迷光による高レベルの電流信号を遮断することができる。したがって、I/V変換回路4〜7および位置信号生成回路8における迷光による悪影響(不要輻射や反射等)を抑えることができる。なお、迷光が、走査用レーザ光源201以外の原因によるものであっても、同様に、迷光による悪影響を回避できる。
【0081】
図12は、ミラーアクチュエータ100の制御方法を説明する図である。図中、Pn〜Pn+3は、それぞれ、制御タイミングtn〜tn+3における目標照射位置であり、Qn〜Qn+3は、それぞれ、制御タイミングtn〜tn+3におけるサーボ光の実際の照射位置である。
【0082】
ある制御タイミングtnにおけるサーボ光の実際の照射位置Qnが、目標照射位置PnからX軸方向にXn、Y軸方向にYnずれていると、マイコン12は、ずれ量Xn、Ynに基づくPID制御により、次の制御タイミングにおいて照射位置Qn+1を目標照射位置Pn+1により接近させるためのPan方向およびTilt方向の制御信号を生成し、
生成した制御信号をアクチュエータ駆動回路15に出力する。同様に、制御タイミングtn+1において、マイコン12は、ずれ量Xn+1、Yn+1に基づくPID制御により、Pan方向およびTilt方向の制御信号を生成し、生成した制御信号をアクチュエータ駆動回路15に出力する。
【0083】
制御タイミングtn+2は、走査用レーザ光の出射タイミングtsと重なっている。このとき、PSD311が走査用レーザ光の迷光を受光すると、上記のように、ノイズキャンセル回路2により、PSD311からの電流信号が遮断される。この場合、位置信号生成回路8は、I/V変換回路4〜6からそれぞれグランドレベルの位置電圧信号を受けるため、原点位置(ミラー150の中立位置)の照射位置信号を生成する。マイコン12は、原点位置Pと目標照射位置Pn+2のずれ量Xmに基づくPID制御により、Pan方向の制御信号を生成し、生成した制御信号をアクチュエータ駆動回路15に出力する。これにより、ミラー150は、実際の照射位置Qn+2からのずれ量Xn+2、Yn+2とは異なった位置へ補正するよう動作するが、走査用レーザ光のパルス発光期間(数10nsec程度)は、極めて微小であり、また、PID制御によって制御タイミングtn+2より前の制御タイミングにおける補正値が引き継がれるため、サーボ信号が一時的に遮断されることによる影響は軽微である。
【0084】
なお、走査用レーザ光の出射タイミングtsと制御タイミングtn+2が重なる場合に、マイコン12にて、位置信号生成回路8から入力されたX成分とY成分の照射位置信号を、直前のタイミングtn+1における照射位置信号で補間してもよい。
【0085】
図13は、この場合のマイコン12の処理を示すフローチャートである。
【0086】
マイコン12は、制御タイミングtn+2になると(S21)、走査用レーザ光の出射タイミングtsと重なるかを判定する(S22)。具体的には、制御タイミングtn+2が、出射タイミングtsから所定の時間Δtの間に含まれるかが判定される。ここで、時間Δtは、走査用レーザの発光期間よりもやや長く設定される。
【0087】
制御タイミングtn+2が走査用レーザ光の出射タイミングtsと重ならない場合(S22:NO)、マイコン12は、照射位置信号X、Yを位置信号生成回路8から取得する(S23)。他方、制御タイミングtn+2が走査用レーザ光の出射タイミングtsと重なると(S22:YES)、マイコン12は、照射位置信号X、Yを前回の制御タイミングtn+1における照射位置信号で補間する(S24)。すなわち、マイコン12は、今回の照射位置信号X、Yとして前回の制御タイミングtn+1における照射位置信号を用いる。これにより、マイコン12は、当該制御タイミングtn+2におけるサーボ信号(Pan方向およびTilt方向の制御信号)を、直前の制御タイミングtn+1における照射位置信号に基づきPID制御により生成し、生成したサーボ信号をアクチュエータ駆動回路15に出力する。
【0088】
ステップS24にて補間された照射位置信号またはステップS23にて位置信号生成回路8から取得された照射位置信号は、当該制御タイミングtn+2における照射位置信号として、マイコン12の内蔵メモリに保持される(S25)。保持された照射位置信号は、次回の制御タイミングtn+3において、処理がステップS23に進んだときに、直前の制御タイミングの照射位置信号として用いられる。
【0089】
これにより、走査用レーザ光の発光タイミング時に、PSD311が迷光を受光した場合においても、走査用レーザ光を目標領域において適正に走査させることができる。
【0090】
このように、マイコン12は、制御タイミングごとに、Pan方向およびTilt方向
の制御信号を生成して、アクチュエータ駆動回路15に出力する。アクチュエータ駆動回路15は、入力されたPan方向およびTilt方向の制御信号に応じて、ミラー150を、Pan方向およびTilt方向に駆動する。これにより、ミラー150は、図8(b)のように駆動される。
【0091】
以上、本実施の形態によれば、走査用レーザ光源201とは別に半導体レーザ301が配されているため、走査用レーザ光のパワーを損ねずに、サーボ光をPSD311に導くことができる。また、サーボ光を連続的に発光できるため、適切に、ミラーアクチュエータ100に対するサーボを実行することができる。
【0092】
また、本実施の形態によれば、ダイクロイックミラー401により、走査用レーザ光とサーボ光の光軸が一致されるため、図8(c)に示すように、PSD311上におけるサーボ光の照射軌道Lc1〜Lc3を直線状(線形)とすることができる。これにより、照射軌道Lc1〜Lc3を規定するためにマイコン12に保持されるべき目標照射位置の数を少なくすることができ、目標照射位置を規定するテーブルを簡素なものにすることができる。また、目標照射位置と実際の照射位置との間の差分の算出およびそれに基づく制御処理の頻度を削減でき、マイコン12の処理負担を軽減することができる。
【0093】
なお、マイコン12に目標照射位置をテーブル値として保持せずに、各制御タイミングにおける目標照射位置Pnを、マイコン12により、演算により求めてもよい。本実施の形態では、サーボ光の照射軌道が直線状(線形)となるため、各制御タイミングにおける目標照射位置Pnは簡単な演算により求めることができる。
【0094】
また、本実施の形態によれば、PSD311が走査用レーザ光源201による迷光等を受光した場合、PSD311に隣接した位置に配置された高速フォトダイオード312にて、迷光が検出される。高速フォトダイオード312にて、迷光を検出した場合、迷光の光量に応じたモニタ電圧信号がノイズキャンセル回路2に出力され、モニタ電圧信号が閾値Vshを超える場合に、ノイズキャンセル回路2によって、迷光による高レベルの電流信号が一時的に遮断される。さらに、電流信号が遮断された場合においても、マイコン12によってPID制御が実施されるため、ミラー150が大きく振られることはない。よって、走査用レーザ光源がサーボ光の光検出器に対面する配置にあっても、I/V変換回路4〜7、位置信号生成回路8に対する迷光の影響を回避しながら、走査用レーザ光を目標領域において適正に走査させることができる。
【0095】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記以外に種々の変更が可能である。
【0096】
たとえば、上記実施の形態の変更例として、走査用レーザ光の出射タイミングtsと制御タイミングtn+2が重なる場合に、マイコン12にて、位置信号生成回路8から入力されたX成分とY成分の照射位置信号を、直前のタイミングtn+1における照射位置信号で補間してもよいことに言及した(図13)。しかしながら、このように、照射位置信号の補間を、制御タイミングと走査用レーザ光の出射タイミングとが重なった場合に行う方法に代えて、高速フォトダイオード312からの信号に基づいて迷光がPSD311に入射した期間を把握し、この期間において補間を行うようにしてもよい。
【0097】
図14は、高速フォトダイオード312からの信号に基づいて補間を行う場合の回路構成である。なお、同図中のノイズキャンセル回路2は、図10と同様に構成されている。
【0098】
図14に示す如く、本構成例では、A/D変換回路16が、ノイズキャンセル回路2と並列の位置に接続されている。また、A/D変換回路17〜20が、I/V変換回路4〜
7とマイコン12との間に接続されている。なお、本変更例では、図9の構成に比べて位置信号生成回路8が省略されている。すなわち、本構成例では、マイコン12におけるデジタル演算処理にて、照射位置信号の生成が行われる。
【0099】
高速フォトダイオード312から出力される電流信号は、I/V変換回路3によって電圧信号(モニタ電圧信号)に変換され、ノイズキャンセル回路2とA/D変換回路16に出力される。モニタ電圧信号によるノイズキャンセル回路2の動作は、図9の場合と同様である。
【0100】
A/D変換回路16は、I/V変換回路3により電圧信号に変換されたモニタ電圧信号をデジタル信号(以下、「デジタルモニタ信号」という)に変換し、マイコン12に出力する。
【0101】
上記実施の形態と同様、I/V変換回路4〜7は、アナログ回路からなっており、PSD311から出力されるサーボ光の照射位置に応じた電流信号(X1出力、X2出力、Y1出力、Y2出力)を電圧信号(位置電圧信号)に変換する。変換された位置電圧信号は、A/D変換回路17〜20に出力される。
【0102】
A/D変換回路17〜20は、I/V変換回路4〜7から出力される位置電圧信号をデジタル信号(以下、「デジタル位置信号」という)に変換し、マイコン12に出力する。
【0103】
マイコン12は、A/D変換回路17〜20から出力される位置信号から、上記式(1)、(2)に基づき、X軸およびY軸方向の照射位置を示す照射位置信号を生成する。そして、マイコン12は、生成した照射位置信号に基づき、目標領域における走査用レーザ光の走査位置を検出し、図12を参照して説明したように、ミラーアクチュエータ100の駆動制御を実行し、さらに、走査用レーザ光源201と半導体レーザ301の駆動制御等を実行する。
【0104】
さらに、図12に示す制御において、マイコン12は、A/D変換回路16から出力されたデジタルモニタ信号に基づき、照射位置信号の補間制御を行う。
【0105】
図15は、マイコン12の照射位置信号の生成および補間制御処理を示すフローチャートである。
【0106】
高速フォトダイオード312が迷光を受光すると、I/V変換回路3からの電圧信号が大きくなり、A/D変換回路10によってデジタル変換されたデジタルモニタ信号が大きくなる。マイコン12は、制御タイミングTkになると(S31:YES)、A/D変換回路16から入力されたデジタルモニタ信号が閾値Vshaを超えたかを判定する(S32)。デジタルモニタ信号が閾値Vshaを超えると(S32:YES)、マイコン12は、照射位置信号X、Yを一回前の制御タイミングTk−1における照射位置信号で補間する(S33)。デジタルモニタ信号が閾値Vshaを超えない場合(S32:NO)、A/D変換回路17〜20から入力されたデジタル位置信号から照射位置信号X、Yを生成する(S34)。これにより、マイコン12は、当該制御タイミングTkにおけるサーボ信号(Pan方向およびTilt方向の制御信号)を、直前の制御タイミングTk−1における照射位置信号に基づきPID制御により生成し、生成したサーボ信号をアクチュエータ駆動回路15に出力する。
【0107】
ステップS33にて補間された照射位置信号またはステップS34にて生成された照射位置信号は、当該制御タイミングTkにおける照射位置信号として、マイコン12の内蔵メモリに保持される(S35)。保持された照射位置信号は、次回の制御タイミングTk
+1において、処理がステップS33に進んだときに、一回前の制御タイミングの照射位置信号として用いられる。
【0108】
図14および図15の構成例によれば、上記実施の形態と同様、I/V変換回路4〜7に対する迷光の影響を回避しながら、走査用レーザ光を目標領域において適正に走査させることができる。さらに、この構成例では、高速フォトダイオード312の受光量が大きくなって、ノイズキャンセル回路2によってグランドレベルの信号がI/V変換回路4〜7に供給されたような場合にも、一回前の制御タイミングにおける照射位置信号を用いて制御がおこなわれるため、安定した制御動作を実現することができる。なお、この構成例では、走査レーザ光の発光タイミングに拘わらず、高速フォトダイオード312からの出力信号が大きくなったことによって補間が行われるため、走査用レーザ光以外が原因の迷光によっても、照射位置信号の補間を行うことができる。また、この構成例では、高速フォトダイオード312が迷光を受光すると補間が行われるため、迷光が受光された制御タイミングにおいて、照射位置信号の生成処理を停止させることができ、回路の処理負担を軽減することができる。
【0109】
なお、図14の構成例では、迷光の受光時に、一回前の制御タイミングにおける照射位置信号を用いてサーボ信号を生成するようにしたが、迷光の受光時に、一回前の制御タイミングにおけるA/D変換回路17〜20の出力値を用いてサーボ信号を生成するようにしてもよい。この場合、マイコン12は、制御タイミングTkにおいて、A/D変換回路16から入力されるデジタルモニタ信号が閾値Vshaを超えると、A/D変換回路17〜18から入力される電圧信号(デジタル電圧信号)を、一回前の制御タイミングTk−1においてA/D変換回路17〜18から入力されたデジタル電圧信号で補間する。そして、マイコン12は、補間したデジタル電圧信号を用いて照射位置信号を生成し、生成した照射位置信号に基づいて、ミラーアクチュエータ100を制御するためのサーボ信号を生成する。
【0110】
また、上記実施の形態では、走査用レーザ光源201と半導体レーザ301のそれぞれの光軸が互いに直交するよう走査用レーザ光源201と半導体レーザ301を配置し、ダイクロイックミラーにて、走査用レーザ光とサーボ光の進行方向を一致させたが、サーボ光が斜めに入射するように配置した屈折レンズにて、走査用レーザ光と前記サーボ光の進行方向を一致させてもよい。
【0111】
また、上記実施の形態では、サーボ光の光源として半導体レーザ301を用いたが、これに替えて、LED(Light Emitting Diode)を用いることもできる。
【0112】
また、上記実施の形態では、迷光の光量の検出に高速フォトダイオード312を用いたが、これに替えて、フォトトランジスタを用いることもできる。
【0113】
なお、上記実施の形態では、サーボ光を受光する光検出器としてPSD311を用いたが、これに替えて、4分割センサを用いることもできる。
【0114】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0115】
2 … ノイズキャンセル回路(制御補正部)
4〜7 … I/V変換回路(信号処理部)
8 … 位置信号生成回路(信号処理部)
12 … マイコン(制御部)
22 … スイッチング回路(遮断部)
100 … ミラーアクチュエータ(アクチュエータ)
201 … 走査用レーザ光源(第1のレーザ光源)
301 … 半導体レーザ(第2のレーザ光源)
311 … PSD(第1の光検出器)
312 … 高速フォトダイオード(第2の光検出器)
401 … ダイクロイックミラー(第1の光学素子、第1のダイクロイックミラー)
402 … ダイクロイックミラー(第2の光学素子、第2のダイクロイックミラー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射する第1のレーザ光源と、
サーボ光を出射する第2のレーザ光源と、
前記レーザ光と前記サーボ光の進行方向を一致させる第1の光学素子と、
前記第1の光学素子を経由した前記レーザ光および前記サーボ光が入射するともに、目標領域において前記レーザ光を走査させるアクチュエータと、
前記アクチュエータを経由した前記サーボ光を前記レーザ光から分離する第2の光学素子と、
前記第2の光学素子によって分離された前記サーボ光を受光して受光位置に応じた第1の検出信号を出力する第1の光検出器と、
前記第1の検出信号に基づいて位置検出信号を生成する信号処理部と、
前記位置検出信号に基づいて前記アクチュエータを制御する制御部と、を備える、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項2】
請求項1に記載のビーム照射装置において、
前記第1の光学素子は、前記サーボ光の光路が前記レーザ光の光路に直交する位置に配置されるとともに、これら2つの光路を統合する第1のダイクロイックミラーであり、
前記第2の光学素子は、前記サーボの光路を前記レーザ光の光路から分離する第2のダイクロイックミラーである、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のビーム照射装置において、
受光光量に応じた第2の検出信号を出力する第2の光検出器が前記第1の検出器に隣接した位置に配され、
前記第2の検出信号が所定の閾値を超えると、前記第1の検出信号に基づく前記アクチュエータの制御を中止するための制御補正部を備える、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項4】
請求項3に記載のビーム照射装置において、
前記制御補正部は、前記信号処理部に対して前記第1の検出信号を遮断する遮断部を備え、前記第2の検出信号が前記閾値を超えると、前記遮断部によって、前記第1の検出信号を遮断する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載のビーム照射装置において、
前記制御補正部は、前記第2の検出信号が前記閾値を超えると、前記第2の検出信号が前記閾値を超える前の前記第1の検出信号に基づいて、前記アクチュエータを制御する、ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項6】
請求項5に記載のビーム照射装置において、
前記制御補正部は、前記第2の検出信号が前記閾値を超えると、直前の制御タイミングにおける前記位置検出信号を用いて、前記アクチュエータを制御する、
ことを特徴とするビーム照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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