説明

ビールテイスト飲料、及び、その製造方法

【課題】甘味、酸味、苦味のばらつき感を抑えたノンアルコールビールテイスト飲料を提供する。
【解決手段】甘味料と酸味料と苦味料を含有する飲料に、グルコン酸ナトリウムを含有させることで甘味、酸味、苦味のばらつき感を抑えたノンアルコールビールテイスト飲料とする。酸味料としてクエン酸、リンゴ酸、酢酸、酒石酸、グルコノデルタラクトン、リン酸、コハク酸、アスコルビン酸、フィチン酸、乳酸又はそれらの塩から選ばれる1以上を、苦味料としてホップ由来の苦味物質、カフェイン、ゲンチアナ抽出物、ペプチド類、テオブロミン、アロイン、ナリンジン、ニガヨモギ抽出物、β−グルコオリゴ糖、キナ抽出物から選ばれる1以上を、甘味料として果汁、糖類又は高甘味度甘味料を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビールテイスト飲料、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年ビールテイスト飲料の需要が増している。
例えば、車等の運転、妊娠、授乳などの理由で、アルコール飲料を飲む機会にいながらアルコール飲料を飲めない状況においては、アルコール飲料の代替品としてビールテイスト飲料の需要がある。
日本の酒税法における酒類の定義は、「アルコール1度以上の飲料」であるが、これまでのビールテイスト飲料の多くは、この定義にあてはまらない飲料であるものの1度未満のアルコールを含んでおり、実際には飲用量や飲んだ人の体質、体調により酔いは生じていた。
このような状況において、酔いを生じる心配がなく、安心して飲むことができる、「アルコールを全く含まないタイプ」のノンアルコールビールテイスト飲料の需要が生じ、実際に販売されている。
【0003】
このようなアルコールを全く含まないタイプのノンアルコールビールテイスト飲料(以下、単にノンアルコールビールテイスト飲料と記載)の製法として、麦汁や麦芽エキスを発酵工程を経ず、甘味料、酸味料、苦味料、さらに香料などを添加してビールテイストに仕上げる製法がある。
しかしながら、この製法では、発酵工程を経ないため、ビール製法において発酵によって生じさせるところの複雑な香味を各種の物質によって構成しなければならず、たとえば甘味料、酸味料、苦味料にて香味を構成した場合には、味がばらばらに感じられ、香味のまとまり感が無い(ばらつき感がある)といった欠点が生じていた。
【0004】
他方、アルコールを全く含まない清涼飲料の分野において、甘味と酸味と苦味のバランスを対象としたものについて開示する文献が存在する(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−250503号公報
【特許文献2】特開2004−357596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、麦芽エキス及び糖類を添加してなるノンアルコールの香味良好なビール風味の炭酸飲料であるが、通常のビール製法で製造したビールについて、低温真空蒸留法で脱アルコールし、濃縮したもの、つまりは、ビールの脱アルコール濃縮液を用いている。
【0007】
また、特許文献2は、甘味と酸味に苦味を合わせ有し、継続して飲用する事により、その嗜好性が向上する清涼飲料とその製法について開示するものであるが、ノンアルコールビールテイスト飲料の製法について開示するものではない。また、この飲料は、甘味と酸味に苦味を合わせ有するが、このような香味を与える原料を添加した際の香味のばらつき感については記載されていない。
【0008】
本発明の発明者らはノンアルコールビールテイスト飲料において、単に甘味料、酸味料、苦味料を選択して構成するだけでは解決されていなかった香味のばらつき感という問題に対し、種々の検討を重ねた結果、特定の酸味料とグルコン酸ナトリウムの併用によって解決できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1に記載のごとく、
甘味料と酸味料と苦味料を含有する飲料に、グルコン酸ナトリウムを含有させることで甘味、酸味、苦味のばらつき感を抑えたノンアルコールビールテイスト飲料とする。
【0011】
また、請求項2に記載のごとく、
酸味料がクエン酸、リンゴ酸、酢酸、酒石酸、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、リン酸、コハク酸、アスコルビン酸、フィチン酸、乳酸又はそれらの塩(グルコン酸ナトリウムを除く)から選ばれる1以上である、こととするものである。
【0012】
また、請求項3に記載のごとく、
苦味料が、ホップ由来の苦味物質、カフェイン、ゲンチアナ抽出物、ペプチド類、テオブロミン、アロイン、ナリンジン、ニガヨモギ抽出物、β−グルコオリゴ糖、キナ抽出物から選ばれる1以上である、こととするものである。
【0013】
また、請求項4に記載のごとく、
甘味料が果汁、糖類又は高甘味度甘味料である、こととするものである。
【0014】
また、請求項5に記載のごとく、
甘味料としてアセスルファムKを20〜80ppm含有する、こととするものである。
【0015】
また、請求項6に記載のごとく、
酸味料がリン酸、コハク酸、乳酸を含む、こととするものである。
【0016】
また、請求項7に記載のごとく、
酸味料がリン酸、コハク酸、乳酸の組み合わせである、こととするものである。
【0017】
また、請求項8に記載のごとく、
酸味料がリン酸、コハク酸、乳酸の組み合わせであり、酸味料濃度の合計がクエン酸換算で0.03〜0.10g/100mlである、こととするものである。
【0018】
また、請求項9に記載のごとく、
酸味料がリン酸、コハク酸、乳酸の組み合わせであって、
それぞれの濃度が、
a.リン酸が200〜500ppm含有
b.コハク酸が50〜200ppm含有
c.乳酸が20〜80ppm含有
である、こととするものである。
【0019】
また、請求項10に記載のごとく、
グルコン酸ナトリウム濃度が50〜200ppm含有であることとするものである。
【0020】
また、請求項11に記載のごとく、
請求項1〜10のいずれかに記載のノンアルコールビールテイスト飲料の製造方法であって、
甘味料、酸味料、苦味料、グルコン酸ナトリウム及び水分を混合する、ノンアルコールビールテイスト飲料の製造方法とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、満足感のある飲み応えでスッキリ爽快に飲むことができるノンアルコールビールテイスト飲料を得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、甘味料と酸味料と苦味料を含有する飲料に、グルコン酸ナトリウムを含有させることで甘味、酸味、苦味のばらつき感を抑えたノンアルコールビールテイスト飲料を実現するものである。
【0023】
本発明に使用される甘味料としては、果汁、糖類又は高甘味度甘味料が上げられる。
上記果汁としては、オレンジ等の柑橘類の他、リンゴ、ナシ、モモ、ブドウ、イチゴ、キウイ、パインアップル等が挙げられる。
上記糖類としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類または糖アルコール類が挙げられる。
単糖類としては、ぶどう糖、果糖、木糖、ソルボース、ガラクトース又は異性化糖などが挙げられ、二糖類としては、蔗糖、麦芽糖、乳糖、異性化乳糖又はパラチノースなどが挙げられる。オリゴ糖類としては、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー又はパラチノースなどが挙げられる。上記糖アルコール類としては、例えば、エリスリトール、ソルビトール,キシリトール,マンニトール等の単糖アルコール類、マルチトール,イソマルチトール,ラクチトール等の2糖アルコール類、マルトトリイトール,イソマルトトリイトール,パニトール等の3糖アルコール類、オリゴ糖アルコール等の4糖以上アルコール類、粉末還元麦芽糖水飴などが挙げられる。
高甘味度甘味料としては、アスパルテーム、ステビア、酵素処理ステビア、ソーマチン、スクラロース、アセスルファムKなどが挙げられる。
【0024】
また、これらの甘味料は、単独で使用されてもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。特に、詳しくは後述の実施例でも記載するが、アセスルファムKを用いた場合において、他の特定の酸味料、苦味料との組み合わせにより、甘味、酸味、苦味のばらつき感を抑えられることが確認されている。
【0025】
また、本発明に使用される酸味料としては、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、酒石酸、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、リン酸、コハク酸、アスコルビン酸、フィチン酸、乳酸又はそれらの塩(グルコン酸ナトリウムを除く)などが挙げられる。特に、詳しくは後述の実施例でも記載するが、使用する酸味料として、リン酸、コハク酸、乳酸の組み合わせを用いた場合には、他の特定の甘味料、苦味料との組み合わせにより、甘味、酸味、苦味のばらつき感を抑えられることが確認されている。
【0026】
また、本発明に使用される苦味料としては、ホップ由来の苦味物質、カフェイン、ゲンチアナ抽出物、ペプチド類、テオブロミン、アロイン、ナリンジン、ニガヨモギ抽出物、β−グルコオリゴ糖、キナ抽出物などが挙げられる。
本発明においては、詳しくは後述の実施例でも記載するが、上記苦味料がホップ由来の苦味物質(ホップエキス)であるか、または少なくともホップ由来の苦味物質とその他の苦味料との組み合わせとすることが、ビールテイスト飲料という性質を踏まえると好ましいと考えられる。
なお、ホップ由来の苦味物質としてはホップからの水、有機溶媒、二酸化炭素等による抽出物が上げられる。
【0027】
さらに、ノンアルコールビールテイスト飲料の原料として、食物繊維も添加可能である。食物繊維としては、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、分岐マルトデキストリン、イヌリン、グアーガム分解物などが挙げられる。
【0028】
また、本発明のノンアルコールビールテイスト飲料は、以上に述べた、甘味料、酸味料、苦味料、グルコン酸ナトリウムおよび水を混合し他物に対し、炭酸ガスを付与することによって製造できる。炭酸ガスの付与は、一般的な炭酸飲料と同様の方法によって行われる。例えば最新・ソフトドリンクス(最新・ソフトドリンクス編集委員会,株式会社光琳,2003,p.309−310,ISBN4−7712−0022−X)に記載の方法である。ガス容(gas volume)は2.0〜4.0が好適である。
【0029】
さらに、本発明のノンアルコールビールテイスト飲料の原料として、その他の材料、例えば色素、香料、ビタミン等飲料に使用可能な成分の1種以上を配合しても良い。製造された飲料は公知の形態、すなわち瓶、缶、ペットボトル等の各種容器に充填して供給販売することが出来る。
【実施例1】
【0030】
<酸味料の組み合わせによる比較>
まず、甘味料にアセスルファムK、苦味料にホップエキス(ホップ由来の苦味物質)を使用することとし、適切な酸味料の組み合わせを検討した。ベース液となるものを、以下の処方で作成した。なお、甘味料として使用されるアセスルファムKは、製造されたノンアルコールビールテイスト飲料において、20〜80ppmで含有されることが想定される。
【表1】

【0031】
得られたベース液に酸味料を各サンプルNo.における組み合わせで添加し、得られた液に対し、ガス容2.6となるように炭酸ガスを付与した。得られた液を、サンプルNo.1〜3とする。
【表2】

【0032】
得られた各サンプルに対し、評価項目は以下のように設定し、訓練を受けた社内パネリスト10名で官能評価を行った。結果を表に示す。
<官能評価基準:評価項目>
【表3】

【0033】
【表4】

【0034】
【表5】

【0035】
【表6】

【0036】
以上の表6に示される官能評価結果から、酸味料として、サンプルNo.1のリン酸、コハク酸、乳酸の組み合わせが最も高い評価が得られた。
なお、酸味料濃度については、その合計がクエン酸換算で0.03〜0.10g/100mlとされることが想定される。特に、サンプルNo.1の酸味料の組み合わせの場合においては、リン酸が200〜500ppm、コハク酸が50〜200ppm、乳酸が20〜80ppm、の範囲でそれぞれ含有されるものが実際に利用されることが想定される。
【実施例2】
【0037】
<グルコン酸ナトリウムの添加濃度による比較>
上記実施例1で確認されたように、酸味のバランスはとれたが、甘味、酸味、苦味のばらつき感が感じられた為、これらの味のばらつき感を抑えるための「まとめ料」の添加によるばらつき感の改善を検討した。この「まとめ料」の候補として、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等の成分で検討した結果、グルコン酸ナトリウムが好適であったので、その添加濃度を検討した。
なお、グルコン酸ナトリウムは、果汁から発見されたクエン酸等と比較して、発見の歴史や工業生産の歴史が浅い有機酸であり、飲料への適用については、いまだ応用の可能性を秘めた有機酸であるといえる。
【0038】
実施例1で得たベース液に実施例1で最も評価が高かったサンプルNo.1の酸味料の組み合わせ、及び、濃度の液を調合した。
これにグルコン酸ナトリウムを30〜300ppmの範囲で添加した後、炭酸ガスを付与しガス容2.6の5種のサンプルを得た。得られた各サンプルの官能評価を行った。評価基準、パネリストは実施例1に同じ。結果を表に示す。
【0039】
【表7】

【0040】
以上の結果から、グルコン酸ナトリウムを50〜200ppmの濃度で添加したものが甘味、酸味、苦味のばらつき感が少ないとの結果が得られた。つまり、特定の甘味料、酸味料、苦味料の組み合わせからなる液について、グルコン酸ナトリウムを特定の濃度で添加することにより、甘味、酸味、苦味のばらつき感を抑えることができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、甘味、酸味、苦味のまとまり感のある(ばらつき感を抑えた)ノンアルコールビールテイスト飲料、及び、その製法として幅広く適用可能であり、アルコールを飲むことができない様々な状況においても、酔いを生じる心配がなく、安心して飲むことができる、といった消費者のニーズに応えることが可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
甘味料と酸味料と苦味料を含有する飲料に、グルコン酸ナトリウムを含有させることで甘味、酸味、苦味のばらつき感を抑えたノンアルコールビールテイスト飲料。
【請求項2】
酸味料がクエン酸、リンゴ酸、酢酸、酒石酸、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、リン酸、コハク酸、アスコルビン酸、フィチン酸、乳酸又はそれらの塩(グルコン酸ナトリウムを除く)から選ばれる1以上であることを特徴とする請求項1に記載のノンアルコールビールテイスト飲料。
【請求項3】
苦味料が、ホップ由来の苦味物質、カフェイン、ゲンチアナ抽出物、ペプチド類、テオブロミン、アロイン、ナリンジン、ニガヨモギ抽出物、β−グルコオリゴ糖、キナ抽出物から選ばれる1以上である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のノンアルコールビールテイスト飲料。
【請求項4】
甘味料が果汁、糖類又は高甘味度甘味料である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のノンアルコールビールテイスト飲料。
【請求項5】
甘味料としてアセスルファムKを20〜80ppm含有する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載のノンアルコールビールテイスト飲料。
【請求項6】
酸味料がリン酸、コハク酸、乳酸を含む、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5に記載のノンアルコールビールテイスト飲料。
【請求項7】
酸味料がリン酸、コハク酸、乳酸の組み合わせである、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載のノンアルコールビールテイスト飲料。
【請求項8】
酸味料がリン酸、コハク酸、乳酸の組み合わせであり、酸味料濃度の合計がクエン酸換算で0.03〜0.10g/100mlである、
ことを特徴とする請求項7に記載のノンアルコールビールテイスト飲料。
【請求項9】
酸味料がリン酸、コハク酸、乳酸の組み合わせであって、
それぞれの濃度が、
a.リン酸が200〜500ppm含有
b.コハク酸が50〜200ppm含有
c.乳酸が20〜80ppm含有
であることを特徴とする請求項7に記載のノンアルコールビールテイスト飲料。
【請求項10】
グルコン酸ナトリウム濃度が50〜200ppm含有である、
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のノンアルコールビールテイスト飲料。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のノンアルコールビールテイスト飲料の製造方法であって、
甘味料、酸味料、苦味料、グルコン酸ナトリウム及び水分を混合する、ノンアルコールビールテイスト飲料の製造方法。