説明

ピアスナットの固着方法

【課題】ピアスナットを小型化でき、しかも穴抜きダイスにかしめ突起を設ける必要が無く、ダイス寿命を延ばすことができる。
【解決手段】ナット本体2のねじ孔3を含む中央部に突設した、穴抜きパンチとして働くパイロット部4で穴抜きダイス20上に載置した金属板10を穴抜き加工して、金属板10に固着されるピアスナット1の固着方法であって、パイロット部4の高さは、金属板10の板厚より小さくし、パイロット部4が金属板10に打ち込まれ、穴抜き加工のせん断が完了したとき、ナット本体2の座面2aが金属板10の表面に当接すると共に、金属板10の穴抜き開口部11の周側面部分がパイロット部4の外周面に喰い込んで、ピアスナット1が金属板10に固着され、パイロット部4の端面6は金属板10を貫通せずに、該金属板10の裏面より内側に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナット本体のねじ孔を含む中央部に、穴抜きパンチとして働くパイロット部が突設され、前記パイロット部で穴抜きダイス上に載置した金属板を穴抜き加工して、前記金属板に固着されるピアスナットの固着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のピアスナットは、前記パイロット部が前記金属板を打ち抜いて貫通し、打ち抜いた貫通孔の周縁部をかしめて前記金属板に固着されるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1及び特許文献2等により知られている矩形状タイプのピアスナット(通称、ユニバーサルタイプ又はフラットタイプ)が、最も基本的な構造であるが、大型で、かつ、前記金属板を打ち抜いて貫通した前記パイロット部が前記金属板の下面から突出して、ねじ締結作業に支障とならないように、ナット打ち込み部の金属板部分にエンボス加工(特許文献1の図5参照)を必要とする等の理由で、現在は殆ど使用されていない。
【0004】
一方、ナット本体の外周縁に沿って前記パイロット部を囲むように突出する側壁を設けて、前記パイロット部と前記側壁との間に環状溝を形成し、かつ、回転抗力(ピアスナットの回転運動を妨げる力)を向上させるために、前記ナット本体を四角形又は六角形にして前記環状溝の輪郭形状を非円形としたピアスナットは、ハイストレスタイプ(又は凹型)のピアスナットとして、例えば特許文献3、特許文献4及び特許文献5等により知られている。
【0005】
上記したハイストレスタイプ(又は凹型)のピアスナットは、金属板を打ち抜き貫通する前記パイロット部の高さが金属板の板厚より大きくなり、また、前記環状溝を設けるため、ピアスナット全体が大型になる。しかも、前記パイロット部で打ち抜いた前記金属板の打ち抜き孔周縁部を前記環状溝に圧入するため、穴抜きダイスの上面にかしめ突起を設ける必要があり、該かしめ突起は、前記金属板が厚くなれば破損の頻度が極端に増すという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ナット本体の中央部に突設するパイロット部が金属板を打ち抜いて貫通するという従来のピアスナットの概念を変え、前記パイロット部の高さは前記金属板の板厚より小さくして、前記金属板に打ち込んだ前記パイロット部は前記金属板を貫通せず、穴抜き加工はせん断完了までとすることで、ピアスナットを小型化でき、しかも前記穴抜きダイスにかしめ突起を設ける必要が無く、ダイス寿命を延ばすことができ、特に板厚の大きい金属板に固着するのに適合したピアスナットの固着方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、次のような技術的手段を採用したものである。
【0008】
請求項1に係る発明は、ナット本体のねじ孔を含む中央部に、穴抜きパンチとして働くパイロット部が突設され、前記パイロット部で穴抜きダイス上に載置した金属板を穴抜き加工して、前記金属板に固着されるピアスナットの固着方法であって、前記パイロット部の高さ(H)は、前記金属板の板厚(T)より小さく設定し、前記パイロット部が前記金属板に打ち込まれ、穴抜き加工のせん断が完了したとき、前記ナット本体の座面が前記金属板の表面に当接すると共に、前記金属板の穴抜き開口部の周側面部分が前記パイロット部の外周面に喰い込んで、前記ピアスナットが前記金属板に固着され、前記パイロット部の端面は前記金属板を貫通せずに、該金属板の裏面より内側に位置し、さらに、前記パイロット部の穴抜き加工により生じた抜きスラグは前記金属板の前記穴抜き開口部と前記穴抜きダイスの前記抜き穴との間に残存しており、続いて、前記ピアスナットの前記ねじ孔に対して上下動自在に配設された突き出しピンで前記抜きスラグを下方へ押し出し、前記穴抜きダイスの前記抜き穴に排出することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、ナット本体のねじ孔を含む中央部に、穴抜きパンチとして働くパイロット部が突設され、前記パイロット部で穴抜きダイス上に載置した金属板を穴抜き加工して、前記金属板に固着されるピアスナットの固着方法であって、前記パイロット部の高さ(H)は、前記金属板の板厚(T)の60%〜90%に設定し、前記パイロット部の外径(D1)と、前記穴抜きダイスの抜き穴の内径(D2)との寸法差の半分、すなわち(D2−D1)/2をクリアランス(C)と定め、前記パイロット部による穴抜き加工のせん断が、前記金属板の板厚(T)の50%前後で完了するように、前記クリアランス(C)を設定し、前記パイロット部が前記金属板に打ち込まれ、穴抜き加工のせん断が完了したとき、前記ナット本体の座面が前記金属板の表面に当接すると共に、前記金属板の穴抜き開口部の周側面部分が前記パイロット部の外周面に喰い込んで、前記ピアスナットが前記金属板に固着され、前記パイロット部の端面は前記金属板を貫通せずに、該金属板の裏面より内側に位置し、さらに、前記パイロット部の穴抜き加工により生じた抜きスラグは前記金属板の前記穴抜き開口部と前記穴抜きダイスの前記抜き穴との間に残存しており、続いて、前記ピアスナットの前記ねじ孔に対して上下動自在に配設された突き出しピンで前記抜きスラグを下方へ押し出し、前記穴抜きダイスの前記抜き穴に排出することを特徴とする。
【0010】
前記クリアランス(C)は、概ね板厚(T)の7%〜16%に設定される。
【0011】
前記ピアスナットは、前記パイロット部の外周面が、端面から前記ナット本体の座面に向けて僅かに縮径するテーパに形成されていると共に、該外周面に多数の凹溝が設けられている。
【0012】
本発明のピアスナット固着方法に適合する前記金属板は、板厚(T)が3.0mm〜12.0mmの比較的厚い鋼板である。
【発明の効果】
【0013】
上述のように、本発明の固着方法によれば、ピアスナットのパイロット部の高さを、固着する金属板の板厚より小さくし、かつ、ナット本体の座面には環状溝等の凹部を設けないので、ピアスナットを小型化でき、かつ、前記パイロット部が前記金属板の裏面に突出しないので、ねじ締結作業に好都合である。
【0014】
しかも、前記金属板に打ち込んだ前記パイロット部は前記金属板を貫通せず、せん断が完了すると穴抜き工程は終了するので、本発明の固着方法は、板厚(T)が3.0mm〜12.0mmの比較的厚い鋼板にピアスナットを固着するのに適している。
【0015】
さらに、前記穴抜きダイスにかしめ突起を設ける必要が無くなるので、ダイス寿命が大幅に延びる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る固着方法に使用するピアスナットを示しており、(a)は頂面側から見た斜視図、(b)は底面側から見た斜視図である。
【図2】(a)は同上ピアスナットの一部縦断正面図、(b)は同上ピアスナットの底面図である。
【図3】同上ピアスナットと、該ピアスナットを固着する金属板と、穴抜きダイスとの位置関係と寸法関係を示す説明図である。
【図4】図3のクリアランス(C)を設定する測定試験の説明図であり、(a)は加圧棒によりピアスナットを加圧する準備状態を示し、(b)はピアスナットのパイロット部によるせん断完了状態を示し、(c)はピアスナットの穴抜き完了状態を示している。
【図5】図4に示した測定試験における加圧棒によるピアスナットに対する加圧力の変化を示す線図である。
【図6】同上ピアスナットの穴抜き固着工程を示す説明図であり、(a)は穴抜き開始状態を示し、(b)はせん断完了及び固着状態を示し、(c)は穴抜き完了状態を示している。
【図7】本発明に係る固着方法に使用するピアスナットの変形例で、ナット本体が円柱状の丸型タイプのピアスナットであり、(a)は平面図、(b)は一部縦断正面図、(c)は底面図である。
【図8】本発明に係る固着方法に使用するピアスナットの変形例で、ナット本体が四角形の角型タイプのピアスナットであり、(a)は平面図、(b)は一部縦断正面図、(c)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0018】
図1及び図2は、本発明に係る固着方法に使用するピアスナット1を示している。該ピアスナット1は、ナット本体2が四角ナットの角部に丸みを付けた角丸四角型で、該ナット本体2のねじ孔3を含む中央部に、穴抜きパンチとして働く円筒状のパイロット部4が突設されている。該パイロット部4の外周面5は、端面6から根元、すなわちナット本体2の座面2aに向けて僅かに縮径するテーパに形成されている。また、外周面5には、周方向に等間隔をおいて、かつ軸線とほぼ平行に延びる多数の凹溝7が設けられており、各凹溝7は断面形状が浅い円弧状に形成されている。
【0019】
図3は、上述したピアスナット1と、該ピアスナット1を固着する金属板10と、穴抜きダイス20との位置関係と寸法関係を示している。
【0020】
本発明による固着方法は、穴抜きダイス20の上面に載置した金属板10にピアスナット1のパイロット部4を打ち込み、該パイロット部4により穴抜き加工して、金属板10に固着するが、パイロット部4の高さ(H)は、金属板10の板厚(T)より小さくして、金属板10を貫通させずにパイロット部4による穴抜き加工はせん断が完了するまでとする。そのため、パイロット部4の高さ(H)は、金属板10に十分なクリンチ力を確保して固着させるため、板厚(T)の60%を基準にして、金属板10を貫通しない範囲で板厚(T)の60%〜90%に設定する。一方、金属板10に穴抜き加工する場合、せん断と破断が発生するが、せん断が完了した時点で実質的な穴抜き加工は終了する。その際、せん断長さはパイロッド部4の外径(D1)と穴抜きダイス20の抜き穴21の内径(D2)との寸法差の半分、すなわち(D2−D1)/2により定まるクリアランス(C)の大きさで決定される。クリアランス(C)が小さい場合はせん断長さが大きくなり、クリアランス(C)が大きい場合にはせん断長さは小さくなる。本発明においては、パイロット部4の高さ(H)を考慮して、パイロット部4による穴抜き加工のせん断が、金属板10の板厚(T)の50%前後で完了するようにクリアランス(C)を設定する。
【0021】
図4は、クリアランス(C)を設定する測定試験の説明図である。穴抜きダイス2は、ピアスナット1のパイロット部4の外径(D1)より大きい内径(D2)の抜き穴21を有し、該穴抜きダイス20の上面に載置した金属板10に対してピアスナット1を穴抜きダイス20と同軸上に位置決めし、該ピアスナット1に当接した加圧棒30を図示しない万能試験機で加圧して、パイロット部4を金属板10に打ち込んで穴抜き加工する。加圧棒30の加圧力を増していくと、パイロット部4による穴抜き加工が進行し、図4(b)に示すように、せん断が完了すると、加圧棒30の加圧力が急激に低下し、実質的に穴抜き加工は終了する。このパイロット部4による穴抜き加工によって金属板10に穴抜き開口部11と抜きスラグ12が生じる。
【0022】
さらに、加圧棒30を押し下げると、ピアスナット1に対する加圧力が増して(図5参照)、ナット本体2の座面2aが金属板10に押圧されると共に、パイロット部4が穴抜き開口部11にかしめられて金属板10に固着される。一方、穴抜き加工によって生じた抜きスラグ12の外周面にはせん断面13と破断面14が発生するので、図4(c)のように、図示しないピンにより突き出した抜きスラグ12のせん断面13の長さ(L)を測定する。
【0023】
上記した試験測定を抜き穴21の内径(D2)の異なる穴抜きダイス20を用いて繰り返し行ない、抜きスラグ12のせん断面13の長さ(L)が、金属板10の板厚(T)の約50%になる内径(D2)を有する抜き穴21の穴抜きダイス20を選定する。このようにして選定した穴抜きダイス20の抜き穴21の内径(D2)とパイロット部4の外径(D1)との寸法差の半分、すなわち(D2−D1)/2により定まる図3のクリアランス(C)が最適クリアランスとなる。該クリアランス(C)は、金属板10の材質によっても、異なるが、上述した測定試験の結果、概ね板厚(T)の7%〜16%の範囲であることが分かった。
【実施例】
【0024】
ピアスナット1のパイロット部4の外径D1:22.4mm
【0025】
ピアスナット1のパイロット部4の高さH:5.0mm
【0026】
穴抜きダイス20の抜き穴21の内径D2:24.5mm
【0027】
金属板10が鋼板で、強度:880Mpa,板厚T:8.0mm
【0028】
クリアランスC:1.05mm(板厚T:8.0mmの13.1%)
【0029】
上記のように設定して、穴抜きダイス20の上面に載置した金属板10にピアスナット1のパイロット部4を打ち込み、穴抜き固着したとき、せん断荷重は29トンで、抜きスラグ12のせん断面13の長さ(L)が金属板10の板厚(T)の約50%であった。また、抜きスラグ12を突き出す落下荷重は、100kg程度であった。
【0030】
図6は、上記のようにして選定した穴抜きダイス20を用いてピアスナット1を金属板10に固着する穴抜き固着工程を示しており、金属板10は穴抜きダイス20の上面に載置され、ピアスナット1はパイロット部4の端面6を金属板10に当接して穴抜きダイス20と同軸上に位置決め支持された状態で、円筒状の打込みパンチ25により加圧してパイロット部4が金属板10に打ち込まれる。打込みパンチ25には、ピアスナット1のねじ穴2に対して上下動自在に配設される突き出しピン26が嵌装されている。
【0031】
図6(a)は、パイロット部4が金属板10に打ち込まれ、穴抜き加工の開始状態を示しており、パイロット部4の端面6周縁と穴抜きダイス20の抜き穴21の上端開口縁21aとの間でせん断が発生している。
【0032】
図6(b)は、さらに打込みパンチ25の加圧力を増し、パイロット部4がさらに金属板10に打ち込まれて、穴抜き加工のせん断が完了した状態を示しており、金属板10に穴抜き開口部11が形成されると共に、抜きスラグ12が生じる。この状態において、ピアスナット1をさらに加圧すると、ナット本体2の座面2aが金属板10の表面に押圧されると共に、穴抜き開口部11がパイロット部4の外周面に喰い込んで金属板10にピアスナット1が固着される。このとき、パイロット部4の外周面5が端面6から座面2aに向けて僅かに縮径するテーパに形成され、かつ、周方向へ等間隔をおいて軸方向へ延びる多数の凹溝7が外周面5に設けられているので、金属板10に固着されたピアスナット1は十分な引き抜き抗力と回転抗力が得られる。また、パイロット部4の端面6は金属板10を貫通せずに、金属板10の裏面より内側に位置してる。このようにパイロット部4が金属板10を貫通しないでピアスナット1が固着されると、金属板10の裏面側からボルト等の雄ねじをねじ孔3に螺合してねじ締結する際に好都合である。
【0033】
一方、抜きスラグ12は、外周面に金属板10の板厚(T)の約50%の長さ(L)を有するせん断面13と破断面14とが形成されていて、金属板10の穴抜き開口部11と穴抜きダイス20の抜き穴21との間に残存している。
【0034】
続いて、図6(c)に示すように、打込みパンチ25に上下動可能に嵌装した突き出しピン26が下降して、抜きスラグ12を突き出し、穴抜きダイス20の抜き穴21から排出穴22を通じて排出して、ピアスナット1の穴抜き固着工程が完了する。
【0035】
図7及び図8は、本発明に係る固着方法に使用するピアスナットの変形例を示しており、図7はナット本体が円柱状の丸型タイプであり、図8はナット本体が四角形の角型タイプである。
【符号の説明】
【0036】
1 ピアスナット
2 ナット本体
2a 座面
3 ねじ孔
4 パイロット部
5 外周面
6 端面
7 凹溝
10 金属板
11 穴抜き開口部
12 抜きスラグ
13 せん断面
14 破断面
20 穴抜きダイス
21 抜き穴
21a 抜き穴21の上端開口縁
22 排出口
25 打込みパンチ
26 突き出しピン
H パイロット部4の高さ
T 金属板10の板厚
D1 パイロット部4の外径
D2 穴抜きダイス20の抜き穴21の内径
C クリアランス
L せん断面13の長さ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【特許文献1】米国特許第2,707,322号明細書
【特許文献2】米国特許第3,152,628号明細書
【特許文献3】特公平8−29392号公報
【特許文献4】特許第2816645号公報
【特許文献5】特許第3124357号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナット本体のねじ孔を含む中央部に、穴抜きパンチとして働くパイロット部が突設され、前記パイロット部で穴抜きダイス上に載置した金属板を穴抜き加工して、前記金属板に固着されるピアスナットの固着方法であって、
前記パイロット部の高さ(H)は、前記金属板の板厚(T)より小さく設定し、
前記パイロット部が前記金属板に打ち込まれ、穴抜き加工のせん断が完了したとき、前記ナット本体の座面が前記金属板の表面に当接すると共に、前記金属板の穴抜き開口部の周側面部分が前記パイロット部の外周面に喰い込んで、前記ピアスナットが前記金属板に固着され、前記パイロット部の端面は前記金属板を貫通せずに、該金属板の裏面より内側に位置し、さらに、前記パイロット部の穴抜き加工により生じた抜きスラグは前記金属板の前記穴抜き開口部と前記穴抜きダイスの前記抜き穴との間に残存しており、
続いて、前記ピアスナットの前記ねじ孔に対して上下動自在に配設された突き出しピンで前記抜きスラグを下方へ押し出し、前記穴抜きダイスの前記抜き穴に排出することを特徴とするピアスナットの固着方法。
【請求項2】
ナット本体のねじ孔を含む中央部に、穴抜きパンチとして働くパイロット部が突設され、前記パイロット部で穴抜きダイス上に載置した金属板を穴抜き加工して、前記金属板に固着されるピアスナットの固着方法であって、
前記パイロット部の高さ(H)は、前記金属板の板厚(T)の60%〜90%に設定し、
前記パイロット部の外径(D1)と、前記穴抜きダイスの抜き穴の内径(D2)との寸法差の半分、すなわち(D2−D1)/2をクリアランス(C)と定め、前記パイロット部による穴抜き加工のせん断が、前記金属板の板厚(T)の50%前後で完了するように、前記クリアランス(C)を設定し、
前記パイロット部が前記金属板に打ち込まれ、穴抜き加工のせん断が完了したとき、前記ナット本体の座面が前記金属板の表面に当接すると共に、前記金属板の穴抜き開口部の周側面部分が前記パイロット部の外周面に喰い込んで、前記ピアスナットが前記金属板に固着され、前記パイロット部の端面は前記金属板を貫通せずに、該金属板の裏面より内側に位置し、さらに、前記パイロット部の穴抜き加工により生じた抜きスラグは前記金属板の前記穴抜き開口部と前記穴抜きダイスの前記抜き穴との間に残存しており、
続いて、前記ピアスナットの前記ねじ孔に対して上下動自在に配設された突き出しピンで前記抜きスラグを下方へ押し出し、前記穴抜きダイスの前記抜き穴に排出することを特徴とするピアスナットの固着方法。
【請求項3】
前記クリアランス(C)が前記金属板の板厚(T)の7%〜16%であることを特徴とする請求項2記載のピアスナットの固着方法。
【請求項4】
前記パイロット部の外周面が、端面から前記ナット本体の座面に向けて僅かに縮径するテーパに形成されていると共に、該外周面に多数の凹溝が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のピアスナットの固着方法。
【請求項5】
前記金属板が、板厚(T)3.0mm〜12.0mmの鋼板であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のピアスナットの固着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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