説明

ピアノのチューニングピンブッシュおよびその製造方法

【課題】乾湿の影響による寸法変化を抑制でき、それにより、チューニングピンとフレームの間に隙間が発生するのを防止し、チューニングピンを安定して保持することができるピアノのチューニングピンブッシュおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】フレーム1に設けられたピン孔4に埋め込まれ、ピン孔4に通されたチューニングピン5を支持するピアノのチューニングピンブッシュ6であって、チューニングピンブッシュ6が竹材で構成されている。また、チューニングピンブッシュ6は、チューニングピン5が貫通するピン挿通孔7を有する円筒状に形成され、竹材の繊維がチューニングピンブッシュ6の軸線方向に延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アコースティックピアノなどにおいて、フレームに設けられたピン孔に埋め込まれ、そのピン孔に通されたチューニングピンを支持するピアノのチューニングピンブッシュおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、グランドピアノやアップライトピアノなどのアコースティックピアノは、多数の弦を鍵ごとに張設するフレームを備えている。フレームは、一体の鋳造品で構成されており、例えばグランドピアノのフレームの前端部および後端部にはそれぞれ、多数のチューニングピンおよびヒッチピンが立設されており、これらのピンの間に、弦が非常に強い張力で張られている。ヒッチピンは、フレームに固定される一方、チューニングピンは、フレームに貫通した状態で、フレームの前端部が載置されたピン板に埋設されている。このようなチューニングピンの取付け構造として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。
【0003】
このチューニングピンの取付け構造において、ピン板は、カエデやブナなどの木材から成る複数の単板を積層した合板で構成されている。また、フレームには、チューニングピンよりも一回り大きな径を有する多数のピン孔が形成されており、各ピン孔の周壁とそのピン孔に貫通するチューニングピンとの間に、チューニングピンブッシュが介在されている。
【0004】
図5は、チューニングピンブッシュ(以下、本欄において「ピンブッシュ」という)の周囲を示している。同図に示すように、ピンブッシュ21は、円筒状に形成されており、その内周面がチューニングピン22の外周面に密着する一方、外周面がフレーム23のピン孔24の周壁に密着する。また、ピンブッシュ21は通常、ピン板と同種類またはシデなどの木材で構成されている。このように、ピンブッシュ21が、チューニングピン22とピン孔24の周壁との間に隙間無く介在することにより、弦の張力が作用するチューニングピン22が、弦の張力方向に傾くのを防止するとともに、チューニングピン22とピン孔24の周壁との間における周方向の摩擦力によって、チューニングピン22が回るのを防止する。したがって、ピンブッシュ21で支持されたチューニングピン22は、所定の姿勢および回転角度に保持される。
【0005】
一般に、木材は、その異方性および不均一性から、湿度や温度、特に前者の変化に伴う乾湿によって、収縮や膨張などの変形が生じやすいという特性を有する。例えば、図6(a)に示すように、ピンブッシュ21の内径が拡がるように変形すると、チューニングピン22とピンブッシュ21の間に隙間が生じ、また、同図(b)に示すように、ピンブッシュ21の外径が狭まるように変形すると、ピン孔24の周壁とピンブッシュ21の間に隙間が生じる。その結果、同図の波線矢印で示すように、チューニングピン22は、単独でまたはピンブッシュ21とともに、弦の張力によって傾いたり、回ったりすることがある。これらの場合には、弦の張力が低減するため、ピッチ(音程)が狂ってしまい、その結果、適正なピアノ音を発生させることができなくなる。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、乾湿の影響による寸法変化を抑制でき、それにより、チューニングピンとフレームの間に隙間が発生するのを防止し、チューニングピンを安定して保持することができるピアノのチューニングピンブッシュおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【特許文献1】特開平10−214079号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、フレームに設けられたピン孔に埋め込まれ、ピン孔に通されたチューニングピンを支持するピアノのチューニングピンブッシュであって、チューニングピンブッシュが竹材で構成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、フレームのピン孔に埋め込まれ、そのピン孔に通されたチューニングピンを支持するチューニングピンブッシュが、竹材で構成されている。竹材は、チューニングピンブッシュの材料として従来用いられる木材に比べて、乾湿の影響を受けにくく、高い寸法安定性を有する。したがって、このような特性を有する竹材で構成されたチューニングピンブッシュでは、乾湿の影響による寸法変化を抑制することができる。それにより、チューニングピンとフレームの間に隙間が発生するのを防止し、チューニングピンを安定して保持することができる。その結果、チューニングピンに一端部が取り付けられた弦において、適正なピッチを確保でき、調律の安定化を図ることができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のピアノのチューニングピンブッシュにおいて、チューニングピンブッシュは、チューニングピンが貫通する孔を有する円筒状に形成され、竹材の繊維がチューニングピンブッシュの軸線方向に延びていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、竹材で構成された円筒状のチューニングピンブッシュにおいて、竹材の繊維がチューニングピンブッシュの軸線方向に延びている。後述するように、竹材では、乾湿による寸法変化量が、チューニングピンブッシュの材料として従来用いられる木材に対し、繊維の長さ方向については同程度であるものの、その方向と直交する方向については約1/2〜1/3であることが実験により確認された。したがって、円筒状のチューニングピンブッシュを、竹材の繊維が軸線方向に延びるように構成することにより、乾湿の影響によるチューニングピンブッシュの径方向の寸法変化を、従来に比べて大幅に抑制することができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、フレームに設けられた断面円形のピン孔に埋め込まれ、ピン孔に通されたチューニングピンを支持するピアノのチューニングピンブッシュの製造方法であって、複数の板状の竹材を積層させることにより、積層竹材を作製する積層竹材作製工程と、作製された積層竹材を切断および/または切削加工することにより、ピン孔とほぼ同じ径を有する細長い円柱状の第1中間部材に成形する第1成形工程と、第1中間部材を、その軸線方向と直交する方向に沿って切断することにより、ピン孔とほぼ同じ長さを有する円柱状の第2中間部材に成形する第2成形工程と、第2中間部材の中央に、その軸線方向に沿って、チューニングピンの径よりも小さい径を有する孔を穿設する穿設工程と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、まず、複数の板状の竹材を積層し、それらが互いに接着した積層竹材を作製する(積層竹材作製工程)。次いで、積層竹材を、切断および/または切削加工し、フレームのピン孔とほぼ同じ径を有する細長い円柱状の第1中間部材に成形する(第1成形工程)。次いで、第1中間部材を、その軸線方向と直交する方向に沿って切断し、ピン孔とほぼ同じ長さを有する円柱状の第2中間部材に成形する(第2成形工程)。そして、第2中間部材の中央に、その軸線方向に沿って、チューニングピンの径よりも小さい径を有する孔を穿設する(穿設工程)。以上により、従来の木製のチューニングピンブッシュに比べて寸法安定性の高い円筒状の竹製のチューニングピンブッシュを、容易に得ることができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項3に係るピアノのチューニングピンブッシュの製造方法の穿設工程において、第2中間部材に孔を穿設するとともに、チューニングピンブッシュがフレームのピン孔に埋め込まれたときの孔の外側の端部を、外方に向かって径が次第に拡がるように形成することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、穿設工程において、第2中間部材に孔を穿設するとともに、チューニングピンブッシュがフレームのピン孔に埋め込まれたときの孔の外側の端部を、外方に向かって径が次第に拡がるように形成する。一般に、フレームにチューニングピンを取り付ける場合、まず、フレームのピン孔に円筒状のチューニングピンブッシュを埋め込む。次いで、フレームの表面側から、チューニングピンブッシュの孔にドリルなどを挿入し、フレームの裏面側に配置されたピン板に、チューニングピンを埋設するための埋設孔を穿設する。そして、チューニングピンを、フレームの表面側から、チューニングピンブッシュの孔を介して、ピン板の埋設孔に圧入する。これにより、チューニングピンは、チューニングピンブッシュを貫通し、ピン板に埋設された状態で、フレームに取り付けられる。
【0016】
上記のようにして、フレームに取り付けられたチューニングピンには、弦が取り付けられることで、その弦の非常に強い張力が作用する。この張力に抗して、チューニングピンを安定して保持するために、チューニングピンを、弦の張力方向と反対方向に若干傾斜した姿勢で、フレームに取り付けるのが好ましい。この場合には、前述したピン板への埋設孔の穿設の際に、チューニングブッシュの軸線方向に対し、ドリルの進行方向が若干傾斜するように、チューニングピンブッシュの孔にドリルを挿入する必要がある。前述したように、フレームのピン孔に埋め込まれたチューニングピンブッシュの孔の外側の端部が、外方に向かって径が次第に拡がるように形成されているので、その孔の端部の周壁がドリルのガイドとして機能することで、チューニングピンブッシュの軸線方向に対し、ドリルを容易に傾斜させながら、ピン板への埋設孔の穿設を行うことができる。また、チューニングピンブッシュの孔の端部を拡径する加工は、穿設工程における第2中間部材への孔開けとほぼ同時に、効率良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態によるチューニングピンブッシュを用いたグランドピアノのチューニングピンの周囲を示している。同図に示すように、このピアノは、一体の鋳造品で構成された所定形状のフレーム1を備えており、その前端部(図1の左部)がピン板2に載置されている。ピン板2は、カエデやブナなどの木材から成り、所定厚さ(例えば10mm)を有する複数(本実施形態では4枚)の単板3を、それぞれの繊維方向が互いに直交するように、交互に積層した合板で構成されている。
【0018】
フレーム1の所定位置には、多数のピン孔4(図1では1つのみ図示)が上下方向に貫通するように形成されている。各ピン孔4は、所定の径(例えば10.5mm)を有する断面円形に形成されており、このピン孔4を貫通し、かつ、前方(図1の左方)に若干傾斜した状態(同図の上下方向(鉛直方向)に対し、例えば6度傾斜)で、チューニングピン5がピン板2に埋設されている。
【0019】
このチューニングピン5は、高級炭素鋼で構成され、ピン孔4よりも小さな所定径(例えば6.75〜7.25mm)、および所定長さ(例えば64mm)を有している。チューニングピン5には、回転摩擦力を大きくするとともに保持力を強化するための細かい螺旋溝5aが形成されている。また、チューニングピン5の上部は、調律時にチューニングハンマーが入るようにほぼ四角形に加工されており、その下端部には、弦Sの一端部を挿入した状態で係止するための弦係止孔5bが設けられている。そして、弦Sは、一端部が弦係止孔5bに係止された状態で、チューニングピン5に巻き付けられ、他端部がフレーム1の後端部に立設されたヒッチピン(図示せず)に巻き掛けられた状態で、フレーム1の上側に水平に張設されている。
【0020】
また、フレーム1のピン孔4には、チューニングピンブッシュ6が埋め込まれ、そのピン孔4の周壁とチューニングピン5との間に介在している。このチューニングピンブッシュ(以下「ピンブッシュ」という)6は、竹材で構成されており、円筒状に形成されている。
【0021】
図2は、ピンブッシュ6の外観および断面を示しており、(a)がフレーム1のピン孔4への埋込み前の状態、(b)がピン孔4に埋め込まれかつチューニングピン5が貫通したときの状態を示している。同図(a)に示すように、埋込み前のピンブッシュ6は、ピン孔4の径および深さとほぼ同じ所定の外径(例えば10.5mm)および高さ(例えば8〜11mm)を有しており、中央に、チューニングピン5が挿通されるピン挿通孔7が形成されている。また、ピンブッシュ6の上下端面と外周面の境界部分には、その全周にわたり、円弧状のアールが付けられた外側アール部6a、6aが形成されている。加えて、ピンブッシュ6のピン挿通孔7の両端部において、径が外方に向かって次第に大きくなるように、円弧状のアールが付けられた内側アール部7a、7aが形成されている。また、このピンブッシュ6では、竹材の繊維がピンブッシュ6の軸線方向(図2の上下方向)に延びている。
【0022】
ここで、図3を参照しながら、ピンブッシュ6の製造方法について説明する。まず、同図(a)に示すように、複数の板状の竹材11を積層させ、接着によって一体化した積層竹材12を作製する(積層竹材作製工程)。各竹材11は、竹の素材を長さ方向に沿って切断し、板状に加工したものであり、したがって、上記の積層竹材12では、竹材の繊維が積層竹材12の長さ方向(図3(a)のL方向)に延びている。なお、詳細な実験データは省略するが、積層竹材12では、乾湿による寸法変化量が、ピンブッシュの材料として従来用いられる木材に対し、以下の実験結果が得られた。
・厚み方向(T方向):約1/2
・幅方向 (W方向):約1/3
・長さ方向(L方向):同程度
【0023】
次いで、積層竹材12を、互いに幅方向に所定間隔を隔てた複数箇所において、長さ方向に沿って切断し、切り出した各部材を切削加工することにより、図3(b)に示すように、複数の細長い円柱部材13(第1中間部材)に成形する(第1成形工程)。この成形工程により、各円柱部材13は、その径が、製造すべきピンブッシュ6の外径と同じになるように成形される。
【0024】
次いで、各円柱部材13を、その長さ方向(軸線方向)の所定間隔ごとに、長さ方向と直交する方向に沿って切断することにより、図3(c)に示すように、複数の円柱状の半製品ピンブッシュ14(第2中間部材)に成形する(第2成形工程)。この成形工程により、各半製品ピンブッシュ14は、その軸線方向の寸法が、製造すべきピンブッシュ6の高さと同じになるように成形される。
【0025】
そして、各半製品ピンブッシュ14の中央に、その軸線方向に沿ってピン挿通孔7(孔)を穿設するとともに、前記内側アール部7aを形成する(穿設工程)。この穿設工程により、ピン挿通孔7が、内側アール部7aを含めて、チューニングピン5の径よりも小さい径を有するように穿設される。また、この穿設工程に前後して、半製品ピンブッシュ14に、前記外側アール部6a、6aを形成する。
【0026】
以上により、図3(d)に示すように、ピン挿通孔7を有し、竹材の繊維が軸線方向に沿った円筒状のピンブッシュ6が製造される。
【0027】
次に、図4を参照しながら、フレーム1へのピンブッシュ6およびチューニングピン5の取付け方法について説明する。同図(a)は、両者6および5の取付け前におけるフレーム1のピン孔4およびその周囲を示している。まず、同図(b)に示すように、ピンブッシュ6を、ピン孔4に上方から圧入する。具体的には、ピンブッシュ6を、その下端面がピン孔4の内側に位置するように、フレーム1上に載置し、ハンマーなどを用いて、ピンブッシュ6をピン孔4に打ち込む。前述したように、ピンブッシュ6の端面と外周面の境界部分には、外側アール部6aが形成されているので、ピンブッシュ6を、その打込みの際に、ピン孔4上に容易にセットできるとともに、下端面側の外側アール部6aがガイドとして機能することで、ピンブッシュ6をピン孔4に容易に圧入することができる。
【0028】
次いで、図4(c)に示すように、ピンブッシュ6のピン挿通孔7を介して、ピン板2に、チューニングピン5を埋設するためのピン埋設孔15を穿設する。このピン埋設孔15は、ピン挿通孔7の径よりも大きくかつチューニングピン5の径よりも若干小さい径を有するとともに、所定長さを有し、上下方向(鉛直方向)に対し、前方(図4(c)の左方)に若干傾斜(例えば6度傾斜)している。
【0029】
このピン埋設孔15の穿設の際には、ピンブッシュ6の上方から、ドリルなどを用い、ピン挿通孔7をガイドにして、ピン埋設孔15をピン板2に開ける。前述したように、ピンブッシュ6のピン挿通孔7の両端部には、内側アール部7a、7aが形成されているので、ドリルをピン挿通孔7に挿入する際に、上端面側の内側アール部7aがガイドとして機能することで、ドリルの挿入角度および進行方向を、ピンブッシュ6の軸線方向に対し、容易に傾斜させることができ、それにより、傾斜したピン埋設孔15を容易に穿設することができる。
【0030】
なお、以上のようにして、ピンブッシュ6のピン挿通孔7を介して、ピン埋設孔15を穿設することにより、ピン挿通孔7は、図2(b)および図4(c)に示すように、径が拡大することで、ピン埋設孔15と同じ径を有するとともに、ピン埋設孔15と一直線で、ピンブッシュ6の軸線方向に対し、若干傾斜した形状になる。
【0031】
その後、ピンブッシュ6のピン挿通孔7を介して、チューニングピン5をピン板2のピン埋設孔15に圧入する。それにより、図4(d)に示すように、チューニングピン5は、ピンブッシュ6を貫通し、前方に若干傾斜した状態で、ピン板2に埋設される。以上により、フレーム1へのピンブッシュ6およびチューニングピン5の取り付けが完了する。
【0032】
以上説明したように、本実施形態によれば、ピンブッシュ6が、ピンブッシュの材料として従来用いられる木材に比べて、乾湿の影響を受けにくく、高い寸法安定性を有する竹材で構成されている。したがって、ピンブッシュ6では、乾湿の影響による寸法変化を抑制することができる。それにより、チューニングピン5とフレーム1の間に隙間が発生するのを防止し、チューニングピン5を安定して保持することができる。その結果、チューニングピン5に一端部が取り付けられた弦Sにおいて、適正なピッチを確保でき、調律の安定化を図ることができる。また、ピンブッシュ6は、竹材の繊維が軸線方向に延びているので、乾湿の影響によるピンブッシュ6の径方向の寸法変化を、従来の木製のピンブッシュに比べて大幅に抑制することができる。
【0033】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。実施形態では、グランドピアノに用いられたピンブッシュ6について説明したが、アップライトピアノのピンブッシュにも、もちろん適用することができる。また、ピンブッシュ6のピン挿通孔7の両端部にそれぞれ、内側アール部7a、7aを設けたが、ピン挿通孔7の一方の端部にのみ、設けてもよい。ただし、この場合には、内側アール部7aが上側に位置するように、ピンブッシュ6をフレーム1のピン孔4に埋め込む。また、実施形態で示したピンブッシュ6の細部の構成や、その製造方法などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態によるチューニングピンブッシュを用いたグランドピアノのチューニングピンの周囲を示す断面図である。
【図2】チューニングピンブッシュを示す外観斜視図および断面図であり、(a)は、フレームのピン孔への埋込み前の状態、(b)は、ピン孔に埋め込まれかつチューニングピンが貫通したときの状態を示す。
【図3】チューニングピンブッシュの製造方法を順に説明するための説明図である。
【図4】チューニングピンの取付け方法を順に説明するための説明図である。
【図5】フレームのピン孔の周壁とチューニングピンとの間に介在するチューニングピンブッシュ、およびその周囲を示す平面図および断面図である。
【図6】図5に対応し、乾湿によるチューニングピンブッシュの変形を説明するための説明図であり、(a)は、チューニングピンブッシュの内径が拡がった状態、(b)は、チューニングピンブッシュの外径が狭まった状態を示す。
【符号の説明】
【0035】
1 フレーム
2 ピン板
4 ピン孔
5 チューニングピン
6 チューニングピンブッシュ
7 ピン挿通孔(孔)
7a 内側アール部
11 竹材
12 積層竹材
13 円柱部材(第1中間部材)
14 半製品ピンブッシュ(第2中間部材)
15 ピン埋設孔
S 弦

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームに設けられたピン孔に埋め込まれ、当該ピン孔に通されたチューニングピンを支持するピアノのチューニングピンブッシュであって、
当該チューニングピンブッシュが竹材で構成されていることを特徴とするピアノのチューニングピンブッシュ。
【請求項2】
前記チューニングピンブッシュは、前記チューニングピンが貫通する孔を有する円筒状に形成され、前記竹材の繊維が当該チューニングピンブッシュの軸線方向に延びていることを特徴とする請求項1に記載のピアノのチューニングピンブッシュ。
【請求項3】
フレームに設けられた断面円形のピン孔に埋め込まれ、当該ピン孔に通されたチューニングピンを支持するピアノのチューニングピンブッシュの製造方法であって、
複数の板状の竹材を積層させることにより、積層竹材を作製する積層竹材作製工程と、
前記作製された積層竹材を切断および/または切削加工することにより、前記ピン孔とほぼ同じ径を有する細長い円柱状の第1中間部材に成形する第1成形工程と、
当該第1中間部材を、その軸線方向と直交する方向に沿って切断することにより、前記ピン孔とほぼ同じ長さを有する円柱状の第2中間部材に成形する第2成形工程と、
当該第2中間部材の中央に、その軸線方向に沿って、前記チューニングピンの径よりも小さい径を有する孔を穿設する穿設工程と、
を備えていることを特徴とするピアノのチューニングピンブッシュの製造方法。
【請求項4】
前記穿設工程において、前記第2中間部材に前記孔を穿設するとともに、前記チューニングピンブッシュが前記フレームの前記ピン孔に埋め込まれたときの前記孔の外側の端部を、外方に向かって径が次第に拡がるように形成することを特徴とする請求項3に記載のピアノのチューニングピンブッシュの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−237137(P2009−237137A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81712(P2008−81712)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)