説明

ピアノの譜面台

【課題】アップライトピアノに装着することにより、グランドピアノの譜面台とほぼ同じ高さに譜面を置くことができるピアノの譜面台を提供する。
【解決手段】鍵盤を覆う開閉自在な蓋体4bを有するアップライトピアノ4に装着するピアノの譜面台であって、アップライトピアノ4の前面板4aと開放された蓋体4bの間にほぼ垂直状態で挟着される挟着部1aと、挟着部1aの上縁に連設され、かつ開放された蓋体4bによりほぼ水平状態に支持される譜面載置部1bとより構成したもので、アップライトピアノ4に装着するだけで、グランドピアノの譜面台とほぼ同じ高さに譜面5を置くことができると共に、面倒な調整作業を必要としないため、婦女子や年配者でも容易に扱える上、挟着部1aと譜面載置部1bとからなる簡単な構成のため、安価に提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アップライトピアノに装着することにより、グランドピアノの譜面台とほぼ同じ高さに譜面を置くことができるピアノの譜面台に関する。
【背景技術】
【0002】
ピアノには、比較的小型のアップライトピアノと大型のグランドピアノがある。
これらピアノで練習したり演奏する場合譜面を使用するが、譜面を載置する譜面台は、アップライトピアノaの場合、図7に示すように鍵盤を覆う蓋体cの裏側に設けられていて、蓋体cを開放することにより、譜面台bに譜面dが載置できるようになっている。
またグランドピアノeの譜面台bは、図8に示すようにグランドピアノeの上面に起伏自在に設けられていて、斜めに起立させることにより譜面台b上に譜面dが載置できるようになっている。
このためアップライトピアノaで練習したり演奏する場合は、譜面台b上の譜面dを見る視線fが図7に示すように斜めの下方になるのに対し、グランドピアノeで練習したり演奏する場合は、譜面dを見る視線fが図8に示すように斜め上方となるため、次のような問題が生じる。
【0003】
一般にピアノを習得する場合、ピアノ教師について教習するケースが多いが、ピアノ教師は、グランドピアノを使用して生徒に教習するのに対して、一般家庭では、住宅事情等により比較的小型なアップライトピアノを使用して練習することが多い。
このためピアノ教師宅でグランドピアノを使用して練習してきた者が、家庭でアップライトピアノを使用して練習を行う場合、鍵盤から譜面dまでの高さの差から違和感を生じて、ピアノ教師宅と同様な練習ができなかったり、逆に自宅で練習した成果がピアノ教師宅で出せない等の問題が発生する。
【0004】
かかる問題を改善するため、例えば特許文献1でアップライトピアノでも譜面台の高さをグランドピアノとほぼ高さに調整できるピアノ用補助譜面台が提案されている。
前記特許文献1に記載されたピアノ用補助譜面台は、下縁部に譜面受け板を有する平板状の譜面載せ板の裏面に、案内溝に沿って上下調整自在な本体部斜度合調節用兼高さ調整具と、一端が譜面載せ板の裏面上部に固着され、他端に引っ掛け用フックが設けられた一対の長さ調整自在な帯状体を設けたもので、引っ掛けようフックをアップライトピアノの前板上部に引っ掛けて、高さ調整用具で譜面載せ板の角度を調整し、また引っ掛け用フックをグランドピアノの譜面台に引っ掛けることにより、アップライトピアノとグランドピアノとでほぼ同じ高さに譜面台を設けることができるように構成されている。
【特許文献1】実用新案登録第3041108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし前記特許文献1に記載されたピアノ用補助譜面台は、譜面載せ台に形成された案内溝に沿って上下調整自在な高さ調整用具が設けられていたり、長さ調整が自在な一対の帯状体が設けられているため、構造が複雑で製作に多くの手間がかかるため、高価となる問題がある。
また譜面載せ板の左右に設けられた帯状体の長さを調節する際、左右長さ同じにする必要があるが、ピアノを練習する者が婦女子や年配者の場合、左右長さ同じにする調節作業が難しい上、譜面載せ板の高さが所望の高さになるまで左右帯状体の長さ調節を繰り返さなければならないため、調節作業が煩雑で、かつ時間がかかる等の問題がある。
さらに譜面載せ台は、帯状体により上部が支持された構造のため、譜面をめくる毎に譜面載せ台が前後に不安定に揺動することがあり、その結果譜面がめくり難かったり、めくったページが元に戻ってしまうことがあるため、ピアノの練習や演奏に集中できない等の問題もある。
【0006】
本発明はかかる問題を改善するためになされたもので、アップライトピアノに装着することにより、グランドピアノの譜面台とほぼ同じ高さに譜面を置くことができるピアノの譜面台を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のピアノの譜面台は、鍵盤を覆う開閉自在な蓋体を有するアップライトピアノに装着するピアノの譜面台であって、アップライトピアノの前面板と開放された蓋体の間にほぼ垂直状態で挟着される挟着部と、挟着部の上縁に連設され、かつ開放された蓋体によりほぼ水平状態に支持される譜面載置部とより構成したものである。
【0008】
前記構成により、アップライトピアノの前面板と蓋体の間に挟着部を挟着して譜面載置部をほぼ水平となるように譜面台を装着したら、譜面載置部に譜面を載置することにより、譜面の高さがグランドピアノの場合とほぼ同じ高さになることから、例えばピアノ教師宅でグランドピアノにより練習していた生徒が自宅でアップライトにより予習や復習する場合でも何等違和感なく譜面を見ることができ、これによって練習に集中できることからピアノの上達を促進することがでる。
また面倒な調整作業を必要としないため、婦女子や年配者でも容易に扱える上、譜面をめくる際に譜面台が不安定に揺動することがないため、所望のページを確実にめくることができると共に、挟着部と譜面載置部とからなる簡単な構造のため安価に提供することができる。
【0009】
本発明のピアノの譜面台は、譜面載置部の前縁部に、譜面載置部に対し90〜110度の角度で斜め上方へ突出する突条部を設けたものである。
【0010】
前記構成により、譜面のページをめくる際に譜面載置部より譜面がずり落ちることがない上、譜面の下縁が突条部に強く当ることがないため譜面がめくりやすくなると共に、突条部との摩擦により譜面の下縁が傷むこともない。
【0011】
本発明のピアノの譜面台は、前面板及び蓋体が当接する挟着部の前後面及び譜面載置部の下面に、軟質材よりなる当接部材を設けたものである。
【0012】
前記構成により、譜面台を装着した際アップライトピアノの前面板や蓋体が傷つくことがない上、当接部材の摩擦力により譜面台が状で左右方向へずれることもないため、安定した状態で譜面台をアップライトピアノに装着することができる。
【0013】
本発明のピアノの譜面台は、挟着部と譜面載置部をヒンジにより折り畳み自在に蝶着したものである。
【0014】
前記構成により、譜面台をコンパクトに折り畳むことにより、箱詰めして販売する際小型の包装箱に詰め込むことができるため、包装箱のコストや、輸送、保管コストを大幅に削減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のピアノの譜面台によれば、面倒な調整作業を必要としないため、婦女子や年配者でも容易に扱える上、挟着部と譜面載置部とからなる簡単な構造のため、安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態を、図面を参照して詳述する。
図1は譜面台の斜視図、図2は同側面図、図3は使用状態の説明図、図4ないし図6は変形例の説明図である。
図1及び図2に示す譜面台本体1は、左右方向に長い長方形状の挟着部1aと、挟着部1aの上縁に連設された譜面載置部1b及び譜面載置部1bの前端縁より斜め上方に突設された突条部1cとからなり、全体が比較的軽量の木材や合成樹脂により形成されている。
譜面台本体1の挟着部1aは、使用時図3に示すようにアップライトピアノ4の前面板4aと、鍵盤(図示せず)を覆う開閉自在な蓋体4bの間にほぼ垂直な状態で挟着されるようになっており、アップライトピアノ4の前面板4aに当接する挟着部1aの後面と前面の一部及び譜面載置部1bの下面の一部に、フェルトやウレタン等の軟質材よりなる当接部材2が接着等の手段で固着されている。
【0017】
挟着部1aの裏面に設けられた当接部材2のほぼ中央部には、シール3が剥離自在に貼付されている。
このシール3には、例えば「アップライトピアノのふたをあけたときに、この面をふたのうら側に入れて下さい」等の使用法を示す説明文が印刷されており、譜面台本体1の使用時には、随時剥離できるようになっている。
挟着部1aと譜面載置部1bの下面に形成された当接部材2は、図2に示すように挟着部1aのほぼ上半分と譜面載置部1bの後半分に連続するよう設けられていて、鍵盤を覆う蓋体4bの形状がピアノメーカより異なる場合でも、蓋体4bの角部4cと前縁部4dが当接部材2に必ず当接するようになっている。
【0018】
また譜面台本体1の譜面載置部1bは、挟着部1aに対しほぼ直角となっていて、使用時ほぼ水平となるよう挟着部1aの上縁に連設されており、譜面載置部1bの上面に譜面5が載置できるようになっていると共に、譜面載置部1bの前縁に突設された突条部1cは、譜面載置部1b上に斜めに載置した譜面5がずり落ちるのを防止すると同時に、譜面載置部に載置した譜面5をめくる際に支障をきたさないように、譜面載置部1bに対する角度θが90〜110度の範囲に設定されている。
以上のように形成された譜面台本体1の左右方向の幅は、譜面5を開いた際の幅よりやや大きくなっていて、木製の場合は高級感を出すために木目がきれいな板材を使用し、かつ表面がニス等の塗料で塗装されており、譜面台本体1を樹脂により一体成形する場合は、成形品の表面に木目調の印刷を施すことにより、アップライトピアノ4に装着した際違和感が生じないように工夫されている。
【0019】
次に前記構成されたピアノの譜面台の作用を説明する。
譜面台本体1の使用に当たっては、アップライトピアノ4の鍵盤を覆う蓋体4bを開放したら、アップライトピアノ4の前面板4aと蓋体4bの間に図3に示すように譜面台本体1の挟着部1aを挟着する。
このとき挟着部1aの後面に設けられた当接部材2がアップライトピアノ4の前面板4aに当接し、挟着部1aの前面と譜面載置部1bの下面に設けられた当接部材2に蓋体4bの角部4cと前縁部4dが当接するため、前面板4aや蓋体4bを傷つけることがないと同時に、当接部材2と前面板4a間の摩擦により譜面台本体1が上下、左右方向にずれることがないため、アップライトピアノ4に対して譜面台本体1を安定した状態で装着することができる。
【0020】
次にこの状態で譜面載置部1b上に図3に示すように譜面5を載置して、所望のページを開くと、鍵盤から譜面5までの高さがグランドピアノの譜面台に載置した譜面とほぼ同じ高さになるため、グランドピアノで練習や演奏していた者でも、何等違和感を感じることなくアップライトピアノ4で練習や演奏を行うことができるようになる。
また譜面台本体1は、アップライトピアノ4の前面板4aと蓋体4bの間に挟着されているため、譜面5のページをめくる際に不安定に揺動することがなく、これによって所望のページを容易に開くことができるため、練習や演奏に集中することができると共に、譜面載置部1bの前縁に突設した突条部1cの角度θを例えば110度に設定しておけば、譜面5のページをめくる際に譜面5の下縁が突条部1cに強くこすれることがないため、ページがめくりやすくなる上、譜面5の下縁が傷むこともなくなる。
なおピアノの練習や演奏を行う際、複数の譜面を同時に使用することがある。
このような場合は予め複数の譜面台本体1を用意して、これら譜面台本体1を横方向に並べてアップライトピアノ4に装着することにより、同時に複数の譜面5を使用してピアノを練習したり、演奏することが可能になる。
【0021】
一方図4ないし図6は、譜面台本体1の変形例を示すもので、次にこの変形例を説明する。
前記実施の形態では、譜面台本体1の挟着部1aと譜面載置部1bとが一体となった場合について説明したが、一体構造の譜面台本体1では、箱詰めして販売する場合、包装箱が大きくなって、包装箱自体のコストや、輸送、保管コストが嵩む等の問題がある。
これを改善するため、図4ないし図6に示す変形例では、譜面台本体1の挟着部1aと譜面載置部1bを別体に形成して、挟着部1aの上縁部に譜面載置部1bの後縁側をヒンジ6により蝶着している。
これによって図6に示すように、ヒンジ6により挟着部1aと譜面載置部1bが重なるように折り畳むことができることから、箱詰めする場合小型の包装箱に収納できるようになるため、包装箱自体のコストや、輸送、保管に要するコストの大幅な削減が図れるようになる。
【0022】
また譜面台本体1を使用する際には、挟着部1aを開いて図4に示すようにアップライトピアノ4の前面板4aと蓋体4bの間で挟着部1aを挟着することにより、前記実施の形態と同様に使用できると共に、蓋体4bの前縁部4dにより譜面載置部1bが下方より支持されるため、譜面載置部1b上に譜面5を載置しても、譜面の重さで譜面載置部1bが下がることもない。
【0023】
なお挟着部1aと譜面載置部1bをほぼ直角に開いた状態で固定するためのストッパ手段(図示せず)をヒンジ6の近傍に設けるようにしてもよい。
また譜面台本体1を樹脂により一体成形する場合は、挟着部1aと譜面載置部1bの連設部を薄肉としてヒンジ6を形成し、このヒンジ6より挟着部1aと譜面載置部1bを折り畳めるようにしてもよく、この場合も、ヒンジ6近傍に挟着部1aと譜面載置部1bをほぼ90度に固定するストッパ手段や突起状のストッパを設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態になるピアノの譜面台の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態になるピアノの譜面台の側面図である。
【図3】本発明の実施の形態になるピアノの譜面台の使用状態の側面図である。
【図4】本発明の実施の形態になるピアノの譜面台の変形例を示す側面図である。
【図5】本発明の実施の形態になるピアノの譜面台の変形例を示す下面図である。
【図6】本発明の実施の形態になるピアノの譜面台の変形例を示す折り畳み状態の側面図である。
【図7】アップライトピアノを演奏している状態の説明図である。
【図8】グランドピアノを演奏している状態の説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 譜面台本体
1a 挟着部
1b 譜面載置部
1c 突条部
2 当接部材
4 アップライトピアノ
5 譜面
6 ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵盤を覆う開閉自在な蓋体を有するアップライトピアノに装着するピアノの譜面台であって、前記アップライトピアノの前面板と開放された前記蓋体の間にほぼ垂直状態で挟着される挟着部と、前記挟着部の上縁に連設され、かつ開放された前記蓋体によりほぼ水平状態に支持される譜面載置部とより構成したことを特徴とするピアノの譜面台。
【請求項2】
前記譜面載置部の前縁部に、前記譜面載置部に対し90〜110度の角度で斜め上方へ突出する突条部を設けてなる請求項1に記載のピアノの譜面台。
【請求項3】
前記前面板及び前記蓋体が当接する前記挟着部の前後面及び前記譜面載置部の下面に、軟質材よりなる当接部材を設けてなる請求項1または2に記載のピアノの譜面台。
【請求項4】
前記挟着部と前記譜面載置部をヒンジにより折り畳み自在に蝶着してなる請求項1ないし3の何れかに記載のピアノの譜面台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−113167(P2006−113167A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−298545(P2004−298545)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(504382154)