説明

ピアノの音量制御装置

【課題】響板から発生するアコースティックな楽音に対し、その音質を維持しながら、音量を低減することができるピアノの音量制御装置を提供する。
【解決手段】響板から発生する楽音の音量を制御するピアノの音量制御装置10であって、鍵の押鍵情報および/またはハンマーの打弦情報を、鍵および/またはハンマーごとに検出する押鍵・打弦情報検出手段11、13と、響板から発生する楽音の音量の低減度合を設定する低減度合設定手段と、響板から発生する楽音の音量を低減するために、響板に、響板の振動を抑制する、振動を含む外力を付与するアクチュエータ7A〜7Dと、検出された押鍵情報および/または打弦情報、ならびに設定された低減度合に応じて、アクチュエータ7A〜7Dを制御するアクチュエータ制御手段16と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵の押鍵に伴うハンマーの打弦によって振動する響板から楽音を発生させるアコースティックピアノに適用され、その響板から発生するアコースティックな楽音の音量を制御するピアノの音量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アコースティックピアノでは、演奏時に発生する楽音の音量が大きいため、例えば住宅内で夜間に演奏する場合、近隣の住人にとっては騒音と感じることがあり、また、演奏者は周囲に気遣いしながら演奏しなければならないことがある。そこで近年、アコースティックピアノにデジタル音源と消音機能を組み込んだ消音ピアノが開発されている。この消音ピアノでは、アコースティックピアノとしての通常の演奏が行えるのに加えて、消音時には、鍵の押鍵に伴って回動するハンマーを打弦直前に止めることにより、響板から楽音が発生しないようにするとともに、押鍵による鍵盤の動作をセンサで検出し、その検出結果に応じて、デジタル音源から押鍵に対応する電子音による楽音を発生させるようにしている。したがって、この消音時には、消音ピアノから発生する楽音について、その音量を低減するように調整したり、ヘッドホンを用いて演奏者のみが聞けるようにしたりすることにより、演奏者は、周囲に迷惑をかけることなく演奏を行うことが可能である。
【0003】
しかし、消音ピアノによる消音時には、発生する楽音が電子音であるため、ピアノ本来のアコースティックな楽音を得ることができず、また、押鍵に伴って回動するハンマーを途中で止めるために、ピアノ本来の鍵盤のタッチ感と同一のタッチ感を得ることは困難である。
【0004】
また、従来、ピアノの響板から発生する楽音の音量を制御するための音量制御装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この音量制御装置は、ピアノの響板の裏面側に配置され、響板の振動を検出可能であるとともに響板に振動を加えるためのアクチュエータと、音量などを設定するための制御部と、入力信号に基づき、アクチュエータを駆動するための指令信号を演算する演算回路などを備えている。そして、この音量制御装置では、アクチュエータによって検出された響板の振動に対応する振動相当量と、音量の設定量とに基づき、響板から発生する楽音の音量が設定量となるよう、アクチュエータで響板を振動させる。これにより、響板から発生する楽音の音量を低減させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−56996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の音量制御装置では、響板の振動を検出し、その検出結果に基づいて、アクチュエータで響板に振動を加えるため、響板から発生する楽音を適切に低減させることは困難である。すなわち、響板の振動を検出した時点では、その振動による楽音がすでに発生し始めており、その後でその楽音の音量を低減させるような振動を響板に加えても、音量の低減を開始するまでに不可避的なタイムラグが生じるので、その間の音量を十分に低減させることができない。また、複数の鍵が短時間で押鍵されたり、複数の鍵が同時に押鍵されたりした場合、響板の振動を検出しただけでは、その検出結果から鍵ごとの楽音の振動を分離して適正に識別することが困難であり、そのため、各鍵に対応する楽音を適切に低減させることができず、低減できたとしても、その楽音の音質が変わってしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、響板から発生するアコースティックな楽音に対し、その音質を維持しながら、音量を低減することができるピアノの音量制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、複数の鍵と、複数の鍵の押鍵に伴い回動することによって弦を打弦する複数のハンマーと、複数のハンマーの打弦に伴い振動することによって楽音を発生させる響板とを備えたピアノにおいて、響板から発生する楽音の音量を制御するピアノの音量制御装置であって、鍵の押鍵情報および/またはハンマーの打弦情報を、鍵および/またはハンマーごとに検出する押鍵・打弦情報検出手段と、響板から発生する楽音の音量の低減度合を設定する低減度合設定手段と、響板から発生する楽音の音量を低減するために、響板に、響板の振動を抑制する、振動を含む外力を付与するアクチュエータと、検出された押鍵情報および/または打弦情報、ならびに設定された低減度合に応じて、アクチュエータを制御するアクチュエータ制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、通常の演奏を行う場合、鍵を押鍵することにより、それに対応するハンマーが回動することによって弦を打弦し、それに伴って振動する響板から楽音が発生する。一方、響板から発生する楽音の音量を低減するように演奏を行う場合、低減度合設定手段によって音量の低減度合を設定した状態で、演奏を行う。この場合、押鍵・打弦情報検出手段により、押鍵される鍵の押鍵情報および/または打弦するハンマーの打弦情報が、鍵および/またはハンマーごとに検出される。なお、押鍵情報には、鍵ごとに付与され、押鍵が開始された鍵を特定するためのキーナンバー、および押鍵時の鍵の速度であるキーベロシティなどが含まれており、一方、打弦情報には、ハンマーごとに付与され、押鍵に伴って打弦するハンマーを特定するためのハンマーナンバー、および打弦時のハンマーの回動速度であるハンマーベロシティなどが含まれている。
【0010】
そして、押鍵情報や打弦情報の検出後、アクチュエータ制御手段によって制御されるアクチュエータにより、検出された押鍵情報および/または打弦情報、ならびに設定された低減度合に応じて、振動を含む外力を響板に付与し、それにより、響板の振動を抑制する。この場合、押鍵情報および/または打弦情報により、押鍵に伴い回動するハンマーが打弦するタイミング、すなわち響板から楽音が発生するタイミングを得ることができ、しかも押鍵される鍵や打弦するハンマーを特定できるので、上記のタイミングに合わせて、押鍵される鍵などに適する振動を含む外力を、響板に付与することによって、楽音を発生させる響板の振動を適切に抑制することができる。それにより、響板から発生するアコースティックな楽音に対し、その音質を維持しながら、設定された低減度合に応じて、音量を低減することができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のピアノの音量制御装置において、アクチュエータ制御手段は、検出された押鍵情報および/または打弦情報に応じて、アクチュエータの作動時間を制御することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、アクチュエータの作動時間が、検出された押鍵情報および/または打弦情報に応じて制御される。通常、響板から発生する楽音は、低音側であるほど発生開始からの減衰時間が長く、また、鍵が強く押鍵されるほど、鍵の速度およびハンマーの回動速度が速くなることで、この場合も減衰時間が長くなる。したがって、例えば、低音側の鍵が押鍵されたり、鍵が強く押鍵されたりしたときには、アクチュエータの作動時間を長くし、一方、高音側の鍵が押鍵されたり、鍵が弱く押鍵されたりしたときには、アクチュエータの作動時間を短くすることにより、響板から発生する楽音を適切に低減することができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載のピアノの音量制御装置において、ピアノは、響板の表面に沿って延びるとともに表面に固定され、ハンマーの打弦による弦の振動を響板に伝達する駒を、さらに備えており、アクチュエータは、響板の裏面において、駒に対応する位置にかつ駒の長さ方向に沿って互いに間隔を隔てた状態で、音域に応じて配置された複数のアクチュエータで構成されていることを特徴とする。
【0014】
通常、ハンマーで打弦された弦の振動は、駒を介して響板に伝達され、その響板が振動することによって楽音が発生する。つまり、響板から楽音が発生する際に、その響板の振動が開始するのは、駒が固定されている部位である。したがって、上記の構成によれば、アクチュエータが、響板の裏面において、駒に対応する位置に配置されているので、響板から楽音が発生する際の響板自体の振動を効果的に抑制することができる。また、複数のアクチュエータが、駒の長さ方向に沿って互いに間隔を隔てた状態で、音域に応じて配置されているので、響板の振動を、音域に適切に対応して、効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態による音量制御装置を適用したグランドピアノを説明するための図であり、(a)はグランドピアノの全体を示す斜視図、(b)は響板の平面図である。
【図2】音量制御装置を示す回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1(a)は、本発明の一実施形態による音量制御装置を適用したグランドピアノを示している。同図に示すように、このグランドピアノ1のピアノ本体2は、一般的なグランドピアノと同様、複数(例えば88個)の鍵3aを有する鍵盤3と、鍵盤3の後部に鍵3aごとに設けられた図示しない複数のハンマーと、前後方向に水平に延びるように張設され、ハンマーによって打弦される図示しない複数の弦と、これらの弦の下方に配置された響板4と、この響板4の上面に固定された短駒5および長駒6などを備えている。
【0017】
各鍵3aは、前後方向に延びており、前後方向の中央付近に配置された図示しないバランスピンを支点として、揺動自在に構成されている。また、各ハンマーは、回動自在に構成されており、対応する鍵3aの押鍵に伴い、図示しないアクションを介して上方に回動駆動されることにより、対応する弦を下方から打弦する。さらに、響板4は、所定の厚さを有する板材からなり、図1(b)に示すように、低音側(左側)の奥行きが高音側(右側)のそれよりも長い所定形状に形成されている。短駒5および長駒6はいずれも、響板4の上面に沿って延びるように配置されており、前者5には低音域用の弦が係合する一方、後者6には低中音域から高音域用の弦が係合している。
【0018】
また、このグランドピアノ1は、押鍵時に響板4から発生する楽音の音量を低減するために、振動を含む外力を響板4に付与する複数(本実施形態では4つ)のアクチュエータ7A〜7Dと、響板4から発生する楽音の音量を低減する際に操作される操作パネル8とを、さらに備えている。
【0019】
4つのアクチュエータ7A〜7Dはいずれも、電磁式の加振器で構成されている。これらのアクチュエータ7A〜7Dは、響板4の下方に設けられた図示しない支柱に固定されており、響板4の下面であって、短駒5および長駒6の真下の所定位置に、下方から当接した状態で配置されている。具体的には、低音域の楽音の音量を低減する低音用のアクチュエータ4Aは、短駒5の長さ方向の中央付近に配置されている。また、低中音域の楽音の音量を低減する低中音用のアクチュエータ4Bは、長駒6の低音側(左側)寄りに、中高音域の楽音の音量を低減する中高音用のアクチュエータ4Cは、長駒6の長さ方向の中央付近に、高音域の楽音の音量を低減する高音用のアクチュエータ4Dは、長駒6の高音側(右側)寄りに、配置されている。
【0020】
操作パネル8は、ピアノ本体2の底部の左前端部に設けられており、楽音の音量の低減レベル(低減度合)を設定するために操作される操作ボタン8a(低減度合設定手段)や、設定された低減レベルを表示する表示器8bなどを有している。なお、上記の低減レベルは、音量の低減を行わないレベル0から、低減の度合が段階的に大きくなる最大レベル(例えばレベル10)までの間で、任意に設定できるようになっている。
【0021】
図2は、音量制御装置の回路構成を模式的に示している。同図に示すように、音量制御装置10は、鍵センサ11、鍵スキャン回路12、ハンマーセンサ13、ハンマースキャン回路14、前記操作パネル8、パネルスキャン回路15、CPU16、ROM17、RAM18、ダンピング回路21、波形メモリ22、DSP23、前記4つのアクチュエータ7A〜7D、ならびにこれらのアクチュエータ7A〜7Dにそれぞれ対応するD/A変換器24A〜24D、フィルタ25A〜25Dおよびパワーアンプ26A〜26Dなどで構成されている。なお、本実施形態では、上記の鍵センサ11およびハンマーセンサ13が、本発明の押鍵・打弦情報検出手段に相当し、上記のCPU16が、本発明のアクチュエータ制御手段に相当する。
【0022】
鍵センサ11は、光センサなどで構成され、鍵3aごとに設けられており、その検出信号に基づき、鍵スキャン回路12が、押鍵された鍵3aを特定するためのキーナンバー、および押鍵時の速度であるキーベロシティなどの押鍵情報を、CPU16に出力する。ハンマーセンサ13は、光センサなどで構成され、ハンマーごとに設けられており、その検出信号に基づき、ハンマースキャン回路14が、打弦するハンマーを特定するためのハンマーナンバー、および打弦時のハンマーの回動速度であるハンマーベロシティなどの打弦情報を、CPU16に出力する。また、パネルスキャン回路15は、操作パネル8の操作ボタン8aの操作状態を検出し、その検出結果としての音量の低減レベルをCPU16に出力する。
【0023】
CPU16は、鍵スキャン回路12からの押鍵情報やハンマースキャン回路14からの打弦情報に応じ、ROM17に記憶されている制御プログラムなどに従って、後述するダンピング信号を生成するための制御信号を生成し、ダンピング回路21に出力する。また、CPU16は、パネルスキャン回路15からの操作情報である音量の低減レベルを表す制御信号を、DSP23に出力する。
【0024】
ROM17は、CPU16で実行される制御プログラムの他、4つのアクチュエータ7A〜7Dを制御するための制御用の固定データなどを記憶している。また、RAM18は、鍵3aおよびハンマーの動作状態を表すステータス情報などを一時的に記憶するとともに、CPU16の作業領域としても使用される。
【0025】
ダンピング回路21は、CPU16からの制御信号に従って、音量を低減すべき楽音に対応する波形データを波形メモリ22から読み出し、その波形データを用いて、基本となるダンピング信号Sを生成し、DSP23に出力する。
【0026】
DSP23は、ダンピング信号Sに、CPU16からの制御信号に従って所定のダンピング効果などを付加することにより、ダンピング信号SA、SB、SCおよびSDを生成し、4つのD/A変換器24A〜24Dにそれぞれ出力する。
【0027】
これらのD/A変換器24A〜24Dは、デジタルのダンピング信号SA、SB、SCおよびSDをアナログのダンピング信号に変換した後、対応するそれぞれのフィルタ25A〜25Dに出力する。これらのフィルタ25A〜25Dは、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタまたはハイパスフィルタで構成されており、対応するそれぞれの音域に相当する周波数成分を通過させ、ダンピング信号SFA、SFB、SFCおよびSFDとして、対応するそれぞれのパワーアンプ26A〜26Dに出力する。
【0028】
これらのパワーアンプ26A〜26Dは、ダンピング信号SFA、SFB、SFCおよびSFDを所定の利得で増幅した後、対応するアクチュエータ、すなわち低音用アクチュエータ7A、低中音用アクチュエータ7B、中高音用アクチュエータ7Cおよび高音用アクチュエータ7Dにそれぞれ出力する。これにより、これらのアクチュエータ7A〜7Dが作動し、ハンマーの打弦に伴って振動する響板4に対して、振動を含む外力を付与することにより、響板4の振動を抑制する。その結果として、響板4から発生する楽音の音量が低減される。
【0029】
以上のように構成された音量制御装置10を適用したグランドピアノ1において、通常の演奏、すなわち楽音の音量を低減させずに演奏を行う場合、低減レベルをレベル0に設定した状態で、鍵3aを押鍵する。この場合、押鍵された鍵3aに対応するハンマーが回動することによって弦を打弦し、その弦の振動が短駒5または長駒6を介して響板4に伝達され、その響板4が振動することによって、アコースティックな楽音が発生する。
【0030】
一方、楽音の音量を低減するように演奏を行う場合、低減レベルをレベル0以外の所望のレベルに設定した状態で、演奏を行う。この場合、鍵3aを押鍵し、それに伴いハンマーが回動して弦を打弦するまでの鍵3aおよびハンマーの動作は、上述した通常の演奏時と同様である。したがって、この音量低減の演奏時には、通常の演奏時と同一の鍵盤3のタッチ感を得ることができる。
【0031】
また、音量低減の演奏時には、鍵センサ11で検出された押鍵情報や、ハンマーセンサ13で検出された打弦情報、および設定された低減レベルに応じて、4つのアクチュエータ7A〜7Dの少なくとも1つによって、振動を含む外力を響板4に付与し、それにより、響板4の振動を抑制する。この場合、押鍵情報や打弦情報により、押鍵に伴い回動するハンマーが打弦するタイミング、すなわち響板4から楽音が発生するタイミングを得ることができ、しかも押鍵される鍵3aや打弦するハンマーを特定できるので、上記のタイミングに合わせて、押鍵される鍵3aなどに適する振動を含む外力を、響板4に付与することによって、楽音を発生させる響板4の振動を適切に抑制することができる。それにより、響板4から発生するアコースティックな楽音に対し、その音質を維持しながら、設定された低減レベルに応じて、音量を低減することができる。
【0032】
また、アクチュエータ7A〜7Dの作動時間は、押鍵情報や打弦情報に応じて制御されるようになっている。通常、響板4から発生する楽音は、低音側であるほど発生開始からの減衰時間が長く、また、鍵3aが強く押鍵されるほど、鍵3aの速度およびハンマーの回動速度が速くなることで、この場合も減衰時間が長くなる。したがって、低音側の鍵3aが押鍵されたり、鍵3aが強く押鍵されたりしたときには、アクチュエータ7A〜7Dの作動時間を長くし、一方、高音側の鍵3aが押鍵されたり、鍵3aが弱く押鍵されたりしたときには、アクチュエータ7A〜7Dの作動時間を短くすることにより、響板4から発生する楽音を適切に低減することができる。
【0033】
さらに、アクチュエータ7A〜7Dが、響板4の裏面において、短駒5および長駒6に対応する位置に配置されているので、響板4から楽音が発生する際の響板4自体の振動を効果的に抑制することができる。また、アクチュエータ7B〜7Dが、長駒6の長さ方向に沿って互いに間隔を隔てた状態で、音域に応じて配置されているので、響板4の振動を、音域に適切に対応して、効果的に抑制することができる。
【0034】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。実施形態では、本発明の音量制御装置10を、グランドピアノ1に適用した場合について例示したが、響板を有するアップライトピアノにも、適用することが可能である。また、実施形態で示した音量制御装置10の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 グランドピアノ
2 ピアノ本体
3 鍵盤
3a 鍵
4 響板
5 短駒
6 長駒
7A 低音用のアクチュエータ
7B 低中音用のアクチュエータ
7C 中高音用のアクチュエータ
7D 高音用のアクチュエータ
8a 操作ボタン(低減度合設定手段)
11 鍵センサ
13 ハンマーセンサ
16 CPU
21 ダンピング回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鍵と、当該複数の鍵の押鍵に伴い回動することによって弦を打弦する複数のハンマーと、当該複数のハンマーの打弦に伴い振動することによって楽音を発生させる響板とを備えたピアノにおいて、前記響板から発生する楽音の音量を制御するピアノの音量制御装置であって、
前記鍵の押鍵情報および/または前記ハンマーの打弦情報を、前記鍵および/または前記ハンマーごとに検出する押鍵・打弦情報検出手段と、
前記響板から発生する楽音の音量の低減度合を設定する低減度合設定手段と、
前記響板から発生する楽音の音量を低減するために、当該響板に、当該響板の振動を抑制する、振動を含む外力を付与するアクチュエータと、
前記検出された押鍵情報および/または打弦情報、ならびに前記設定された低減度合に応じて、前記アクチュエータを制御するアクチュエータ制御手段と、
を備えていることを特徴とするピアノの音量制御装置。
【請求項2】
前記アクチュエータ制御手段は、前記検出された押鍵情報および/または打弦情報に応じて、前記アクチュエータの作動時間を制御することを特徴とする請求項1に記載のピアノの音量制御装置。
【請求項3】
前記ピアノは、前記響板の表面に沿って延びるとともに当該表面に固定され、前記ハンマーの打弦による弦の振動を当該響板に伝達する駒を、さらに備えており、
前記アクチュエータは、前記響板の裏面において、前記駒に対応する位置にかつ当該駒の長さ方向に沿って互いに間隔を隔てた状態で、音域に応じて配置された複数のアクチュエータで構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のピアノの音量制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−208381(P2012−208381A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74884(P2011−74884)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)