説明

ピアノローラースキン用部材

【課題】天然皮革に勝るとも劣らないピアノローラースキン素材を開発すべく鋭意検討した結果、鹿皮に十分に匹敵し得る素材開発に成功したものであるとともに、人工素材としての特徴を生かし、鹿皮にない均一性に優れた特性を有するピアノローラースキン部材を提供する。
【解決手段】1デシテックス以下の繊維と高分子弾性体からなる極細繊維断面を有する人工皮革素材において、該素材がシリコーン系樹脂を含侵してなり、圧縮率が10〜20%、圧縮弾性率が80〜98%であることを特徴とするピアノローラースキン用部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピアノローラースキン用部材に関する。さらに詳しくは、ピアノ一般に使用される高級鹿皮に優るピアノローラースキン用部材を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ピアノアクションスキン用部材として鹿皮は不可欠のものとして利用されてきた。しかし、グランドピアノ1台に鹿2〜3頭が使用されており、自然保護・動物保護問題が大きくクローズアップされてきた。近年では、鹿皮が極めて入手し難くなり、かつ厚さ、密度のそろったピアノローラースキンに求められる高品質なものは特に入手困難となってきている。このため、人工皮革素材による代替の検討が一部なされている(例えば特許文献1参照)が、代替可能なレベルに到達しておらず、従来の人工皮革素材はピアノの生命とも言える音質、鍵盤のタッチ、質感においていずれも鹿皮に劣る。本発明は、新しいピアノローラースキン素材を開発すべく検討した結果、鹿皮に十分置替え得る素材の開発に成功したもので、鹿皮にない均一した優れた特性を有する素材を提供せんとするものである。
【特許文献1】実開平1−19190
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記の現状に鑑み、天然皮革に勝るとも劣らないピアノローラースキン素材を開発すべく鋭意検討した結果、鹿皮に十分に匹敵し得る素材開発に成功したものであるとともに、人工素材としての特徴を生かし、鹿皮にない均一性に優れた特性を有するピアノアクション部材を提供せんとするものである。
【0004】
さらに詳しくは、人工皮革素材からなる、音質、鍵盤のタッチ、質感に優れたピアノローラースキン用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記した課題を解決するために、次の構成を有するものである。
【0006】
すなわち、1デシテックス以下の繊維と高分子弾性体からなる極細繊維断面を有する人工皮革素材において、該素材がシリコーン系樹脂を含侵してなり、圧縮率が10〜20%、圧縮弾性率が80〜98%であることを特徴とするピアノローラースキン用部材である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、特定繊度の繊維と高分子弾性体からなる人工皮革素材と独特のヌメリ感のあるシリコーン系樹脂との組合せにより、鹿皮に匹敵する今までにないピアノローラースキン用部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明について、望ましい実施の形態とともに詳細に説明する。
【0009】
本発明においては、0.01デシテックス以上1デシテックス以下の繊維を用いる。0.01デシテックス未満では、圧縮率が大きく、摩擦係数が小さいため、鍵盤のタッチが軽くなり、ピアニストの感情を鍵盤に伝えることが難しい。1デシテックスを超えると圧縮率が小さく摩擦係数が大きいため、鍵盤のタッチは重く、ピアニストの連打に大きく影響し、音質にも悪い影響を与える。
【0010】
本発明では構成する単繊維の太さが1デシテックス以下であることが重要である。鹿革様性能を発現させるためには、1デシテックスを超える太さ、0.01デシテックス未満の太さの繊維では難しく、特に圧縮率、摩擦係数などピアノのタッチ、音質に関わるところでの再現が難しく好ましくない。
【0011】
かかる繊維としては、好ましくはポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリプロピレンなどの従来公知の繊維形成可能な合成樹脂を用いることが好ましい。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートなどが挙げられ、ポリアミドとしては、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−12などが挙げられる。中でもポリエチレンテレフタレート及びナイロン−6が、工程性、コスト面で好ましい。
【0012】
本発明の人工皮革を構成する高分子弾性体は、本発明の圧縮率、圧縮弾性率の要件を満たす範囲に入る構成とできるものであれば特に限定はされず、ポリウレタンエラストマー、アクリロニトリル、ブタジエンラバー、天然ゴム、ポリ塩化ビニルなど、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、シリコーン系樹脂からなる弾性体が好適に使用できる。素材の加工性および製品品位などの観点からウレタン系樹脂が好ましく、特に平均分子量500〜3000のポリウレタン系樹脂が好ましく用いられる。またポリエステルジオール系樹脂、ポリエーテルジオール系樹脂、ポリカーボネートジオール系樹脂のいずれかを含有してなるウレタン系樹脂も好ましく用いることができる。耐久性の観点から全ポリマージオール中ポリカーボネートジオールを30重量%以上含有してなるウレタン樹脂を用いるのがさらに好ましい。
【0013】
本発明で使用する高分子弾性体は、部材中5〜35重量%含有されることが好ましい。35重量%を超えるとカサカサとしたドライなタッチになり、5重量%未満では、耐久性の点で劣る場合があるためである。本発明の部材はシリコーン系樹脂を含浸してなる。
【0014】
本発明部材に使用するシリコーン系樹脂とは、鹿皮の風合いにより近づけるために用いるものであり、ジメチルシリコーン、アミノ変性、エーテル変性、エポキシ変性、アルコール変性、カルボキシル変性などの各種変性シリコーンが好適に利用できるが、なかでもアミノ変性シリコーン剤が、柔軟効果に優れ、超ソフト感、ドレ−プ性、ストレッチバック性を示すため好ましく用いられる。アミノ変性シリコーンの超ソフト感が鹿皮のもつヌメリ感に匹敵し、滑らかで流れるような音質をつくりだすことができるようになるのである。かくして得られたものはピアノローラースキンとして鹿皮にも優るとも劣らない特性を有するのみならず、その安定性、耐久性、温湿度の影響のなさ、加工性においてより優れた性質を有し、今までの人工皮革のピアノローラースキン部材では困難であったピアニストの感情を鍵盤に伝えることを可能とするものである。
【0015】
本発明のシリコーン系樹脂の付着量は、部材中0.1〜5重量%とすることが好ましい。5重量%を超えるとネバネバとしたヌメリ感となり、音質に大きな影響を与え、0.1重量%未満ではソフトな風合いが得られず、鹿革のもつ音質をつくりだすことができない傾向がある。
【0016】
本発明のピアノローラースキン用部材の圧縮率は10〜20%、圧縮弾性率は80〜98%であることが必要である。
【0017】
圧縮率および圧縮弾性率は、ジャックや鍵盤などの運動の余勢の吸収に大きく作用するものであり、アフタータッチの決め手となる。圧縮率が10%未満もしくは20%を超えた場合、また圧縮弾性率が80%未満98%を超えると、指に伝わるジャックや鍵盤の重さの変化がはっきり感じられず、歯切れの悪い音になり、連打性に欠ける。
【0018】
圧縮特性の評価方法は、標準圧力4.9mkPa(50gf/cm2)の下で厚さ(mm)を計り、次に29.4kPa(300gf/cm2)の一定圧力の下で30秒間放置して厚さ(mm)を計る。次に、加えた圧力を除き30秒間放置した後、再び標準圧力下で厚さ(mm)を計る。
【0019】
圧縮率(%)および圧縮弾性率(%)の求め方は下記の通りである。
【0020】
Cr={(T0−T1)/T0} ×100
Ce={(T0’−T1)/(T0−T1)} ×100
Cr:圧縮率(%)
Ce:圧縮弾性率(%)
T0 :標準圧力を加えたときの厚さ(mm)
T1 :一定圧力を加え30秒間放置後の厚さ(mm)
T0’:圧力を除き、30秒間放置後の標準圧力下の厚さ
また、本発明部材の見かけ密度(1)、厚み(2)、摩擦係数(3)がそれぞれ
(1)見かけ密度: 0.3〜0.65g/cm3
(2)厚み: 1.0〜3.0mm、
(3)摩擦係数: 1.0μg以下、
であることが好ましい。
【0021】
見かけ密度が、0.3g/cm3未満ではタッチが軽くなりすぎ、高速に連打した時の音の追従性が悪くなり好ましくない。また0.65g/cm3を超えると緩衝作用がなくタッチが硬い感じになり好ましくない。
【0022】
見掛け密度は該不織布繊維成分の熱収縮率、混綿率、交絡度、収縮工程の加熱温度条件よって調節することができる。厚さは、1.0mm未満になると、芯材の影響がで、3.0mmを超えると加工性の点で問題となる。厚さは、厚み測定器(株式会社大栄科学精器製作所、商品名PEACOCKモデルH)を使用し測定する。摩擦係数は、連打性に大きな影響がある。優れた滑りの表面性を得るには、摩擦係数が1.0μg以下が好ましい。摩擦係数は接触体及びその表面状態により著しく異なるものである。ピアノローラースキンと接触するジャックに一般に使用されている木板上に細かい凹凸をランダムにつけた状態の木板を接触体としたときの摩擦係数の測定方法は、幅5cm長さ10cmのサンプルが300gの加重で平面接触する可動体をとりつけこの可動体を4.8cm/minの一定速度で引っ張った時の抵抗値から読み取る。摩擦係数が1.0を超えると、重くて音切れが鈍くなって高速連打がしにくく、また弱打および強打での効果が少なくなる。
【0023】
さらに、本発明の引張強力(1)、引張伸度(2)、引裂強力(3)がそれぞれ
(1)タテ:300N/cm以上、ヨコ:220N/cm以上、
(2)タテ:70〜130%、ヨコ:110〜190%、
(3)タテ・ヨコ:70N以上、
であることが好ましい。上記以外の特性値の場合、音に雑音が入り、鍵盤を連打したときに、響きのないかすれた音が発生する。
【0024】
引張強力、引張伸度の測定方法は、2cm×20cmの試験片をタテ、ヨコ方向にそれぞれ採取し、自動記録装置定速伸長形(インストロン形)引張試験機を用い、つかみ間隔を10cmとして、目付の1/100の荷重をかけ試験片をつかみに固定し、 試験片を150mm/分の引張速度で引っ張り、チャート紙から試験片が切断したときの最大荷重(N)と、その伸度を読みとることにより測定する。
【0025】
引裂強力の測定方法は、2.5cm×10cmの試験片をタテ、ヨコ方向に採取し、短辺 の中央に辺と直角に7cmの切れ目を入れ、幅5cm以上のつかみを有する定速伸長形(インストロン形)引張試験機を用い、つかみ間隔を10cmとし、図1のように各舌片をつかみと直角にはさみ固定する。そして引張速度150mm/分で試験片を引裂き、その時示す最大荷重を読みとることにより測定する。
【0026】
本発明部材の剛軟度は、タテ120mm以下ヨコ85mm以下が好ましい。剛軟度がもっとも大きく影響するのが加工性の面である。図2のピアノローラースキンが示すように、芯のウールフェルトの上に沿うように巻かれる。タテ120mm以上ヨコ85以上だとドレープ性に欠け、シワおよびたるみが生じ、タッチに違和感が発生する。
【0027】
測定方法は、2cm×20cmの試験片をタテ、ヨコ方向にそれぞれ採取し、一端が45度の斜面をもったカンチレバー形試験機を用い、試験片表を上にして短辺を試験機のスケール基線(傾斜面とその水平面の交線)に合わせておく。試験片の上に試験片押さえ治具を起き、試験片押さえ治具の取手を軽く押さえながら、試験片を斜面の方向に約1cm/秒の速度でゆるやかに滑らす。試験片の一端が斜面と接触した時、他端の位置をスケールで読みとる。
【0028】
本発明のピアノローラースキン用部材の製造方法の一態様について以下に説明する。例えば、海島紡糸法によりポリスチレンを海成分、ポリエステルを島成分とする複合繊維を紡糸し、該複合繊維を用いて、スパンボンド、メルトブロー、抄紙法、カードとクロスラッパーとを組み合わせた方法等により繊維ウエブを形成し、該繊維ウエブを用いて、ニードルパンチ処理あるいはウオータージェットパンチ処理などの絡合処理により、絡合不織布を形成する。なお、該絡合処理については、ニードルパンチ処理が繊維の高絡合化による繊維の高密度化(緻密な立毛面形成)の観点から好ましく採用される。
【0029】
次に、複合繊維の海成分を、溶剤抽出または熱分解等の方法で除去する。その際、高分子弾性体が付与される前または後で溶剤抽出させる方法が、海成分除去効率の観点から好ましく採用される。高分子弾性体としては、ポリウレタンエラストマー、アクリロニトリル、ブタジエンラバー、天然ゴム、ポリ塩化ビニルなどを使用することができる。また、高分子弾性体の付与方法としては、高分子弾性体を塗布あるいは含浸して乾燥、固着させる方法等を採用することができる。
【0030】
続いて、高分子弾性体を付与した不織布に対して、表面をサンドペーパーなどを用いて起毛処理することにより、立毛面を有する人工皮革基布を得ることができる。
【0031】
本発明において、上記人工皮革基布に対して染色処理を施す方法としては、特に限定されるものではなく、通常の方法を用いることができる。例えば、ジッガー染色機や液流染色機を用いた液流染色処理、連続染色機を用いたサーモゾル染色処理等の浸染処理ならびに、ローラー捺染、スクリーン捺染、インクジェット方式捺染、昇華捺染、真空昇華捺染等による立毛面への捺染処理等を用いることができる。中でも、風合い等の品位面から液流染色機を用いることが好ましい。
【0032】
シリコーン系樹脂の付与方法としては、例えばシリコーン系樹脂溶液に人工皮革基布を浸漬し余分な溶液ロールにより取り除くディップ−ニップ法を採用することができる。
【実施例】
【0033】
本発明を実施例で詳細に説明する。
(実施例1)
3.11デシテックス、51mm島成分がポリエチレンテレフタレート、海成分がポリスチレンからなる高分子配列体繊維(島成分の重量比55%、島数36)を用いて形成したニードルパンチ不織布に、収縮・PVA含浸付与し、これをトリクロエチレンに漬け、マングルで絞りポリスチレン成分を除去する。(このときの単繊度は、0.048デシテックス,PVA含有率はポリエチレンテレフタレートの重量に対し27%)このシートにポリウレタンを含浸付与し、湿式凝固した後PVAを抽出する(ウレタン含有率はポリエチレンテレフタレートの重量に対し30%)。 バフィングm/cにて立毛処理後、染色加工を行い、さらにこれにアミノ変性シリコーンをディップ−ニップ法で付与した。これの見掛け密度は、0.36g/cm3、厚み1.9mm、摩擦係数0.5μg、圧縮率(%)=12.1、弾性率(%)=89.3、シリコーン含有率0.4%であった。なお、シリコーン樹脂組成物の付着量(固形分)は、加工前後の重量変化により算出した。得られた人工皮革をグランドピアノのローラースキンに用いて実際のピアノに組み込み、ピアニスト3名の試弾評価を実施した。評価結果を表1に示す。ピアニストの評価結果は優れたものであった。
(実施例2)
表1に示すようにポリエチレンテレフタレートの代わりにアクリル繊維を用いる以外は、実施例1と同様に行った。得られたピアノローラースキンの評価結果を表1に示す。実施例1と同様ピアニストの評価結果は優れたものであった。
(実施例3)
表1に示すようにポリエチレンテレフタレートの代わりにナイロン−6繊維を用いる以外は、実施例1と同様に行った。得られたピアノローラースキンの評価結果を表1に示す。実施例1と同様ピアニストの評価結果は優れたものであった。
(実施例4)
表1に示すようにアミノ変性シリコーンの代わりにエーテル変性シリコーンを用いる以外は、実施例1と同様に行った。得られたピアノローラースキンの評価結果を表1に示す。実施例1と同様ピアニストの評価結果は優れたものであった。
(実施例5)
表1に示すようにポリエチレンテレフタレートの代わりにアクリル繊維を、アミノ変性シリコーンの代わりにエーテル変性シリコーンを用いる以外は、実施例1と同様に行った。得られたピアノローラースキンの評価結果を表1に示す。実施例1と同様ピアニストの評価結果は優れたものであった。
(実施例6)
表1に示すようにポリエチレンテレフタレートの代わりにナイロン−6繊維を、アミノ変性シリコーンの代わりにエーテル変性シリコーンを用いる以外は、実施例1と同様に行った。得られたピアノローラースキンの評価結果を表1に示す。実施例1と同様ピアニストの評価結果は優れたものであった。
(実施例7)
表1に示すようにポリウレタン弾性体の代わりにアクリロニトリル弾性体を用いる以外は、実施例1と同様に行った。得られたピアノローラースキンの評価結果を表1に示す。実施例1と同様ピアニストの評価結果は優れたものであった。
(実施例8)
表1に示すようにポリエチレンテレフタレートの代わりにアクリル繊維を、ポリウレタン弾性体の代わりにアクリロニトリル弾性体を用いる以外は、実施例1と同様に行った。得られたピアノローラースキンの評価結果を表1に示す。実施例1と同様ピアニストの評価結果は優れたものであった。
(実施例9)
表1に示すようにポリエチレンテレフタレートの代わりにナイロン−6繊維を、ポリウレタン弾性体の代わりにアクリロニトリル弾性体を用いる以外は、実施例1と同様に行った。得られたピアノローラースキンの評価結果を表1に示す。実施例1と同様ピアニストの評価結果は優れたものであった。
(実施例10)
表1に示すようにポリウレタン弾性体の代わりにアクリロニトリル弾性体を、アミノ変性シリコーンの代わりにエーテル変性シリコーンを用いる以外は、実施例1と同様に行った。得られたピアノローラースキンの評価結果を表1に示す。実施例1と同様ピアニストの評価結果は優れたものであった。
(実施例11)
表1に示すようにポリエチレンテレフタレートの代わりにアクリル繊維を、ポリウレタン弾性体の代わりにアクリロニトリル弾性体を、アミノ変性シリコーンの代わりにエーテル変性シリコーンを用いる以外は、実施例1と同様に行った。得られたピアノローラースキンの評価結果を表1に示す。実施例1と同様ピアニストの評価結果は優れたものであった。
(実施例12)
表1に示すようにポリエチレンテレフタレートの代わりにナイロン−6繊維を、ポリウレタン弾性体の代わりにアクリロニトリル弾性体を、アミノ変性シリコーンの代わりにエーテル変性シリコーンを用いる以外は、実施例1と同様に行った。得られたピアノローラースキンの評価結果を表1に示す。実施例1と同様ピアニストの評価結果は優れたものであった。
(比較例1)
表1に示すようにシリコーン樹脂を付与しない以外は、実施例1と同様に行った。得られたピアノローラースキンの評価結果を表1に示す。ピアニストの試弾評価結果は、一様にタッチが軽くなりすぎ、高速時の追従性が悪いとの評価であった。
(比較例2)
表1に示すようにバフィングm/cにて立毛処理前に、幅方向にスライス処理を行った以外は、実施例1と同様に行った。得られたピアノローラースキンの評価結果を表1に示す。ピアニストの試弾評価結果は、雑音が発生し、ローラースキンのウールフェルトの影響を大きく受け、ごつごつしたタッチとの評価であった。
(比較例3)
表1に示すように繊維の単繊度を0.048デシテックスの代わりに2デシテックスを用いる以外は、実施例1と同様に行った。得られたピアノローラースキンの評価結果を表1に示す。ピアニストの試弾評価結果は、ピアニッシモの許容範囲がせまく、雑音がまじりカサカサするとの評価であった。
(比較例4)
表1に示すように実施例1を染色加工を行う前に、減量加工を実施した以外は、実施例1と同様に行った。得られたピアノローラースキンの評価結果を表1に示す。ピアニストの試弾評価結果は、タッチが軽く、ピアニッシモの高速連打がしにくいと評価であった。
【0034】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】引裂強力を測定する装置の概略図である。
【図2】ウールフェルトの芯に巻かれた状態のピアノローラースキンの断面図である。
【符号の説明】
【0036】
A:ピアノローラースキン
B:ウールフェルトの芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.01デシテックス以上1デシテックス以下の繊維と高分子弾性体からなる立段面を有する人工皮革素材において、該素材がシリコーン系樹脂を含浸してなり、圧縮率が10〜20%、圧縮弾性率が80〜98%であることを特徴とするピアノローラースキン用部材。
【請求項2】
部材の、見かけ密度(1)、厚み(2)、摩擦係数(3)がそれぞれ
(1)見かけ密度: 0.3〜0.65g/cm3
(2)厚み: 1.0〜3.0mm
(3)摩擦係数: 1.0μg以下、
であることを特徴とする請求項1に記載のピアノローラースキン用部材。
【請求項3】
該部材の引張強力(1)、引張伸度(2)、引裂強力(3)がそれぞれ
(1)タテ:300N/cm以上、ヨコ:220N/cm以上、
(2)タテ:70〜130%、ヨコ:110〜190%、
(3)タテ・ヨコ:70N以上、
であることを特徴とする請求項1または2に記載のピアノローラースキン用部材。
【請求項4】
剛軟度が、タテ120mm以下、ヨコ85mm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のピアノローラースキン用部材。
【請求項5】
該高分子弾性体がポリウレタン系樹脂であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のピアノローラースキン用部材。
【請求項6】
該シリコーン系樹脂がアミノ変性シリコーン樹脂であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のピアノローラースキン用部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−235644(P2009−235644A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85855(P2008−85855)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】