説明

ピストンに直接取り付けられたカバープレートを備えたトルクコンバータ

【課題】別個のリベット又はスペーサボルトを用いることなくカバープレートをピストンに直接に取り付けることにより、空間を節約する。
【解決手段】タービンと、ピストンを有するロックアップクラッチと、少なくとも1つのカバープレートを有するダンパとが設けられており、カバープレートが直接にピストンに取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して液圧式トルクコンバータ、特にロックアップクラッチを有する液圧式トルクコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
引用したことにより本明細書に記載されたものとする米国特許第4693348号明細書、米国特許第6325191号明細書、及び米国特許第6615962号明細書には、ロックアップクラッチを備えた液圧式トルクコンバータが記載されている。
【0003】
図1は、エンジンからトルクを受け取るためにクランクシャフト14に回転不能に結合されたハウジング12を有する従来の液圧式トルクコンバータ10の例を示している。ハウジング12は、固定されかつシールされた、例えば溶接された同軸的なシェル16及び18を有する。ハウジング12には、ハウジング12と同軸でかつハウジング12の角速度を共有するポンプ20が取り付けられている。
【0004】
ハウジング12には、ハウジング12に関して回転可能なタービン22と、ポンプ20とタービン22との間に据え付けられたステータ24とが収容されている。タービン22はタービンハブ26に回転不能に結合されており、タービンハブ26は、スプライン30によってトランスミッションの入力シャフト28に回転不能に結合されている。ステータ24は、スプライン34によって中空の、回転しないステータシャフト36に結合された一方向クラッチ32に取り付けられている。
【0005】
従来のトルクコンバータ10は、さらに、ハウジング12とタービンハブ26との間で直接にトルクを伝達するために係合させられることができるロックアップクラッチ38を有する。これは、ハウジング12の摩擦面44と接触したピストン42の摩擦面40を位置決めすることによって達成される。ピストン42は、タービンハブ26の周囲を周方向及び軸方向に可動である。タービンハブ26に対するピストン42の軸方向移動は、ピストン42のそれぞれの軸方向の側における作動流体領域45及び46の圧力差を生ぜしめることによって達成される。
【0006】
ロックアップクラッチ38はねじれ振動ダンパ48をも有しており、このねじれ振動ダンパは、駆動プレート50と、カバープレート52,54と、コイルばねのグループ又はその他の弾性エネルギ貯蔵装置56と、リベット又はスペーサボルト58とを有している。駆動プレート50は、スプライン又は突出部60によってピストン42に結合されている。カバープレート52,54は、ばね56を保持しており、リベット又はスペーサボルト58によって一緒に保持されている。カバープレート52,54は、タービン22及びタービンハブ26に堅固に結合されている。カバープレート52,54と駆動プレート50との相対周方向移動は、ばね56を圧縮又は圧縮解除する。これにより、ねじれダンパ48は、例えばクランクシャフト14又はエンジンから伝わるねじれ振動からタービンハブ26を隔離する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、別個のリベット又はスペーサボルトを用いることなくカバープレートをピストンに直接に取り付けることにより、空間を節約することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、タービンと、ピストンを有するロックアップクラッチと、少なくとも1つのカバープレートを有するダンパが設けられており、カバープレートが直接ピストンに取り付けられているトルクコンバータを提供する。
【0009】
本発明は、カバープレートに設けられた孔にピストンの区分を通過させるステップと、孔においてピストンをカバープレートに取り付けるステップとを含むトルクコンバータを組み立てる方法をも提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、図面を用いて1つの実施形態に関してさらに説明される。
【0011】
図2は、本発明を具体化するトルクコンバータ110の区分を示している。トルクコンバータ110は、エンジンのクランクシャフトに結合されたハウジングシェル116を有する。ハウジングシェル116内には、タービンハブ126に堅固に結合されたタービン122が設けられている。タービンハブ126は、例えばスプライン130によってトランスミッションの入力シャフト128に回転不能に結合されている。つまり、エンジンは入力シャフト128を中心軸線CAを中心に回転させる。
【0012】
トルクコンバータ110は、さらに、ハウジングシェル116とタービンハブ126との間で直接にトルクを伝達するために係合させられることができるロックアップクラッチ138を有する。この係合は、ピストン142の摩擦面140をハウジングシェル116の摩擦面144と接触して位置決めすることによって達成される。ピストン142は、タービンハブ126の周囲を周方向及び軸方向に可動である。タービンハブ126に対するピストン142の軸方向移動は、ピストン142のそれぞれの軸方向の側における作動流体領域145及び146の圧力差を生ぜしめることによって達成される。
【0013】
ロックアップクラッチ138は、例えばクランクシャフト又はエンジンによって生ぜしめられるねじれ振動からタービンハブ126を隔離するためのねじれ振動ダンパ148を有する。ダンパ148は、コイルばね又はその他の弾性エネルギ貯蔵装置156の配列と、弾性エネルギ貯蔵装置156を保持するカバープレート152,154とを有する。カバープレート152,154は、ピストン142の外周面172から突出したリベット170によってピストン142に結合されている。フランジ174は、例えばスプライン176によってタービンハブ126に回転不能に結合されている。カバープレート152,154とフランジ174との相対移動はばね156を圧縮又は圧縮解除する。
【0014】
図3は、組立て前における、(概して、環状であることを示すために湾曲して示された)ピストン142の外側部分の区分と、カバープレート152,154とを示している。ピストン142の外面172は、交互に設けられた肩部178及び180を有する凹凸のあるジオメトリを備えてスタンピングされており、肩部はそれぞれピストン142の全体から軸方向距離X1及びX2だけ延びており、X1がX2よりも大きい。さらにリベット170及び171が軸方向に突出しており、リベットはそれぞれ断面が矩形であり、肩部178及び180に取り付けられている。リベット170及び171は、それぞれピストン142の全体から軸方向距離X3及びX4だけ延びており、X3はX4よりも大きい。距離X1はX2とX4との間であることができる。カバープレート152,154は、ばね156を保持するための切欠き185,187を有する。
【0015】
カバープレート152,154は、ピストン142の凹凸のあるジオメトリ及びリベット170,171を受容するための孔182,186及びスロット184を有する。内側のカバープレート152は、リベット171と同じ断面の孔182と、肩部178と同じ断面のスロット184とを有する。内側のカバープレート152は、肩部180に設けられたリベット171が孔182を貫通し、肩部178がスロット184を貫通するように、ピストン142に組み付けられる。外側のカバープレート154は、リベット170と同じ断面の孔186を有する。外側のカバープレート154は、肩部178に設けられたリベット170が孔186を貫通するようにピストン142に組み付けられる。外側のカバープレート152が適切にピストン142に着座させられると、リベット172が圧潰され、カバープレート152を所定の位置に固定する。次に、カバープレート154がピストン142に着座させられると、リベット170が圧潰され、カバープレート154を所定の位置に固定する。リベット171は、カバープレート154が着座させられる前に圧潰されている。
【0016】
カバープレート152,154を直接ピストン142に取り付けることは、有利には、図2に示されたタービンアセンブリ188を平衡させるための空間を節約する。タービンアセンブリ188は、一般的に、タービンシェル192の外面190に取り付けられたおもりによって平衡される。おもりは一般的に、タービンシェル192に対して垂直に組み立てられるので、従来のダンパ、例えば48は、おもりの所望の配置を妨害するおそれがある。リベット170,171によってカバープレート152,154を直接ピストン142に取り付けることによって、ダンパ48と平衡おもりとの妨害の問題は有利には回避されることができる。
【0017】
カバープレート152,154を直接ピストン142に取り付けることは、有利にはカバープレート152,154を一緒に保持するための別個のリベット又はスペーサボルトの使用をも回避する。幾つかの態様において、しばしばばね56の半径方向外側に、リベット又はスペーサボルトが所望の位置に位置決めされるための十分な半径方向空間は存在しない。カバープレート152,154を直接ピストン142に固定することにより、有利には別個のリベット又はスペーサボルトは必要とされず、付加的な空間を節約する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の液圧式トルクコンバータの断面図である。
【図2】本発明の1つの実施形態の断面図である。
【図3】本発明の1つの実施形態の分解図である。
【符号の説明】
【0019】
110 トルクコンバータ、 116 ハウジングシェル、 126 タービンハブ、 128 入力シャフト、 130 スプライン、 138 ロックアップクラッチ、 140 摩擦面、 142 ピストン、 144 摩擦面、 145,146 作動流体領域、 148 ダンパ、 152,154 カバープレート、 156 弾性エネルギ貯蔵装置、 170,171 リベット、 172 外面、 174 フランジ、 176 スプライン、 178,180 肩部、 182,186 孔、 184 スロット、 185,187 切欠き、 188 タービンアセンブリ、 192 タービンシェル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクコンバータにおいて、
タービンと、
ピストンを有するロックアップクラッチと、
少なくとも1つのカバープレートを有するダンパとが設けられており、カバープレートが直接にピストンに取り付けられていることを特徴とする、トルクコンバータ。
【請求項2】
ピストンが、軸方向に延びたリベットを有しており、カバープレートが、孔を有しており、リベットが孔を貫通している、請求項1記載のトルクコンバータ。
【請求項3】
ダンパが、直接にピストンに取り付けられた第2のカバープレートを有する、請求項1記載のトルクコンバータ。
【請求項4】
ピストンが、軸方向に延びた複数のリベットを有しており、第1のリベットが、軸方向に第1の距離だけ延びており、第2のリベットが、軸方向に第2の距離だけ延びており、第1の距離が第2の距離よりも大きい、請求項3記載のトルクコンバータ。
【請求項5】
第1のカバープレートが、第1のリベットを受容する第1の孔を有しており、第2のカバープレートが、第2のリベットを受容する第2の孔を有している、請求項4記載のトルクコンバータ。
【請求項6】
第1のカバープレートが第1のスロットを有しており、第1のリベットが、第1のスロットを貫通している、請求項5記載のトルクコンバータ。
【請求項7】
第1のリベットが第1の肩部から延びており、第1の肩部が、第1のスロットに嵌合している、請求項6記載のトルクコンバータ。
【請求項8】
請求項1に記載のトルクコンバータを組み立てる方法において、
ピストンの区分を、カバープレートに設けられた孔に貫通させるステップと、
該孔においてピストンをカバープレートに取り付けるステップとを含むことを特徴とする、請求項1に記載のトルクコンバータを組み立てる方法。
【請求項9】
前記区分がリベットであり、取り付けるステップが、リベットを圧壊することを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
第2のプレートが取り付けられる前に第1のリベットが圧壊される、請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−19774(P2009−19774A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182511(P2008−182511)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Germany