説明

ピックアップコイル

【課題】取付対象のエンジン等から伝わる振動の影響が最小限に抑えられ、精度の高い検知結果が得られるピックアップコイルを提供する。
【解決手段】ピックアップコイル1の検知部2は、角柱形状の鉄心6と、当該鉄心6の後端部と磁気的に結合された永久磁石5と、鉄心5が貫通されたボビン8およびその周囲に巻回されたコイル9と、支持フレーム3の背部32に永久磁石5と共にネジ10により共締めされ、磁性材料で構成されたスペーサ11とを主要な構成としている。コイル9の一端および他端にはリード線4が接続され、スペーサ11よりも前方に配置された樹脂製のグロメット13を貫通するようにして外部へ引き出されている。永久磁石5、鉄心6、プレート7、ボビン8、コイル9、支持フレーム3の背部32、スペーサ11およびグロメット13は、絶縁樹脂外被12で被覆されて一体化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピックアップコイルに係り、特に、エンジンの回転数や回転位置を検出するピックアップコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、図5に示したように、前後方向に沿って配置された鉄心51と、当該鉄心51の後端部と磁気的に結合された永久磁石52と、鉄心51の外周に設けられたコイル53と、このコイル53の一端および他端と電気的に接続された一対のターミナル54と、前記鉄心51が貫通されて前記コイル53が巻回されるボビン55と、略T形状の鉄板を屈曲して形成され、長手方向の両端部にネジ穴57が開口されて取付対象に当接される底部56aおよび当該底部56aの中央端部から垂直方向に立設された背部56bから構成される支持フレーム56とを主要な構成とし、絶縁材料59で一体にモールドされたピックアップコイル50が開示されている。
【特許文献1】特公平7−9231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した従来のピックアップコイル50では、その構成部品の中でも重量物である鉄心51,永久磁石52およびコイル53の全てが、支持フレームの2つのネジ穴57を結んだ取付位置Cよりも後方に配置されているので、ピックアップコイル50の重心位置と前記取付位置Cとの間に大きな隔たりがある。したがって、エンジンの振動が前記支持フレーム56の取付位置Cからピックアップコイル50に伝達されると、後方の慣性モーメントが大きいためにピックアップコイル50が大きく振動し、検知精度が低下してしまうという技術課題があった。
【0004】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、取付対象のエンジン等から伝わる振動の影響が最小限に抑えられ、精度の高い検知結果が得られるピックアップコイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した目的を達成するために、本発明は、前後方向に沿って配置された鉄心と、この鉄心の後端と磁気的に結合された永久磁石と、鉄心に生じる磁束変化を検知するコイルと、コイルの両端に接続されたリード線と、永久磁石を後側で支持する背部を備えた支持フレームとを具備し、前記鉄心、永久磁石、コイル、リード線および支持フレームの背部が一体にモールドされ、支持フレームの露出部分に設けられた取付部で取付対象に固定されるピックアップコイルにおいて、以下の手段を講じた点に特徴がある。
【0006】
(1)ピックアップコイルの前後方向に関する重心位置を調整する重心位置調整部材を含むことを特徴とする。
【0007】
(2)ピックアップコイルの前後方向に関する重心位置が、支持フレームの取付部またはその近傍にあることを特徴とする。
【0008】
(3)重心位置調整部材が、支持フレームの取付部よりも後ろ側に配置されたことを特徴とする。
【0009】
(4)重心位置調整部材が、永久磁石と支持フレームの背部との間に配置され、前記永久磁石と共に前記背部に共締めされたことを特徴とする。
【0010】
(5)コイルのリード線が、重心位置調整部材の配置位置よりも前側でモールド外へ引き出されていることを特徴とする。
【0011】
(6)重心位置調整部材が磁性材料で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下のような効果が達成される。
(1)請求項1の発明によれば、ピックアップコイルの重心位置を、重心位置調整部材の寸法や比重を調整することで任意に設定できるようになる。したがって、ピックアップコイルの重心位置を、その振動が最小となる位置に設定すれば、精度の高い検知結果が得られるようになる。
(2)請求項2の発明によれば、ピックアップコイルの重心位置がフレーム部材の取付部に設定されるので、取付対象から当該取付部を介してピックアップコイルに振動が伝達されても、ピックアップコイルの振動を最小限に抑えられるようになり、その結果、精度の高い検知結果が得られるようになる。
(3)請求項3によれば、ピックアップコイルの重心位置を後方へ移動できるので、フレーム部材の取付部をピックアップコイルの後方にしか設けられない場合でも、当該取付部に重心位置を設定できるようになる。したがって、ピックアップコイルの設計にあたってフレーム部材の取付部の位置に関する制約が無くなり、設計の自由度が増す。
(4)請求項4の発明によれば、重心位置調整部材が永久磁石と共にフレーム部材の背部に共締めされるので、重心位置調整部材を固定するための部材の追加が不要になる。したがって、部品点数や重量の増加、さらには組立工数の増加等を最小限に抑えられるようになる。
(5)請求項5の発明によれば、リード線を重心位置調整部材の配置位置よりも前側でモールド外へ引き出すことができるので、重心位置調整部材の形状やサイズを変更する場合であっても、リード線の引き出し位置を変更する必要がない。
(6)請求項6の発明によれば、重心位置調整部材が磁性材料で形成されるので、重心位置調整部材を追加しても、鉄心や永久磁石を含む磁路が重心位置調整部材によって遮られてしまうことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明に係るピックアップコイル1を、被検物の誘導片が配置されるロータ(いずれも図示せず)の軌道と対向する正面の反対側から見込んだ後正面図であり、図2は図1のAA線における一部破断断面図である。図3は前記ピックアップコイルの側面図であり、図4はピックアップコイルの上面図である。
【0014】
本実施形態のピックアップコイル1は、樹脂被覆された検知部2と、この検知部2をエンジンまたは車体ボディ等の取り付け対象にネジ止め固定するための支持フレーム3と、前記検知部2から外部に引き出された一対のリード線4とから構成されている。前記支持フレーム3は、略T形状の鉄板を屈曲して形成され、長手方向の両端部にネジ穴30が開口されて取付対象に当接される底部31と、この底部31の中央端部から垂直方向に立設された背部32とから構成されている。
【0015】
前記ピックアップコイル1の検知部2は、図2に一例を示したように、前後方向に沿って配置された角柱形状の鉄心6と、当該鉄心6の後端部と磁気的に結合された永久磁石5と、前記永久磁石5と磁気的に結合され、磁性材料で形成されたプレート7と、前記鉄心5が貫通されたボビン8およびその周囲に巻回されたコイル9と、前記支持フレーム3の背部32に前記永久磁石5と共にネジ10により共締めされ、磁性材料で構成されたスペーサ11とを主要な構成としている。
【0016】
前記スペーサ11は、後に詳述するように、ピックアップコイル1の前後方向に関する重心位置を調整する重心位置調整手段として機能するもので、支持フレーム3の底部31に設けられた2つのネジ穴30を結んだ取付位置Y(図4参照)よりも、その中心位置が後ろ側(図2では、取付位置Yよりも下側)に配置される。
【0017】
前記コイル9の一端および他端には前記一対のリード線4が電気的に接続され、前記リード線4は、前記スペーサ11よりも前方に配置された樹脂製のグロメット13を貫通するようにして外部へ引き出されている。前記永久磁石5、鉄心6、プレート7、ボビン8、コイル9、支持フレーム3の背部32、スペーサ11およびグロメット13は、絶縁樹脂外被12で被覆されて一体化されている。
【0018】
このような構成において、エンジンに同期してロータが回転した際、その円周上に設けられた誘導片が鉄心6の先端と対向しない位置にあれば、永久磁石5の磁場は開磁路となる。これに対して、誘導片が鉄心6の先端と対向する位置を通過すると、永久磁石5の磁場は鉄心6、誘導片、ロータ、支持フレーム3およびスペーサ11を介して閉磁路となる。この開磁路から閉磁路への変化により鉄心5の磁束が大きく変化し、この変化に伴ってコイル9に大きな起電力が生じることになる。
【0019】
ここで、本実施形態では永久磁石5と支持フレーム3の背部32との間に、前後方向に関する重心位置調整部材としてのスペーサ11が挿貫されており、重量物である支持フレーム3の背部32を、同じく重量物である鉄心6やコイル9から、前記2つのネジ穴30を結んだ取付位置Yよりも後方へ離間配置できる。そして、前記スペーサ11の幅や比重を調整すれば、ピックアップコイル1の前後方向に関する重心位置を後方の任意の位置に設定できる。
【0020】
このように、本実施形態ではスペーサ11を設けたことにより、図4に一例を示したように、当該ピックアップコイル1の重心位置を、前記スペーサ11が挿貫されていない場合の位置Xよりも後方へシフトさせることができるので、取付位置Yに重心位置を一致または近付けることができる。
【0021】
したがって、支持フレーム3のネジ穴30を、ピックアップコイル1の後ろ側にしか設けられない場合であっても、ピックアップコイル1の重心位置を、前記ネジ穴30の位置またはその近傍に設定できるようになる。この結果、エンジンの振動に伴ってピックアップコイル1が振動する場合でも、その共振が最小限度に抑えられるので、精度の高いピックアップが可能になる。
【0022】
また、本実施形態では前記スペーサ11が永久磁石5と共に支持フレーム3の背部32に共締めされるので、スペーサ11を固定するための部材の追加が不要になる。したがって、部品点数や重量の増加、さらには組立工数の増加等を最小限に抑えられるようになる。しかも、本実施形態では前記スペーサ11が磁性材料で形成されるので、当該スペーサ11を追加しても、鉄心6や永久磁石5を含む磁路が当該スペーサ11によって遮られてしまうことがない。
【0023】
さらに、本実施形態では重心位置の調整量に応じてスペーサ11の形状やサイズが変更される場合に、スペーサ11の前端位置は変わらずに後端位置だけが形状やサイズの変更に応じて変位するのでピックアップコイル1の全長が伸縮することになる。ここで、本実施形態ではコイル9のリード線4を外部に引き出すためのグロメット13が前記スペーサ11よりも前側に配置されているので、スペーサ11の形状やサイズが変更される場合であっても、当該グロメット13の位置や形状を変更する必要がない。
【0024】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るピックアップコイルの後正面図である。
【図2】図1のAA線における一部破断断面図である。
【図3】本発明に係るピックアップコイルの側面図である。
【図4】本発明に係るピックアップコイルのの上面図である。
【図5】従来のピックアップコイルの一部破断断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1…ピックアップコイル,2…検知部,3…支持フレーム,4…リード線,5…永久磁石,6…鉄心,7…フレーム部材,8…ボビン,9…コイル,10…ネジ,11…スペーサ,12…絶縁樹脂外被,13…グロメット,30…ネジ穴,31…底部,32…背部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に沿って配置された鉄心と、
前記鉄心の後端と磁気的に結合された永久磁石と、
前記鉄心に生じる磁束変化を検知するコイルと、
前記コイルの両端に接続された一対のリード線と、
前記永久磁石を後側で支持する背部を備えた支持フレームとを具備し、
前記鉄心、永久磁石、コイル、リード線および支持フレームの背部が一体にモールドされ、前記支持フレームの露出部分に設けられた取付部で取付対象に固定されるピックアップコイルにおいて、
前記ピックアップコイルの前後方向に関する重心位置を調整する重心位置調整部材を含むことを特徴とするピックアップコイル。
【請求項2】
前記ピックアップコイルの前後方向に関する重心位置が、前記支持フレームの取付部またはその近傍にあることを特徴とする請求項1に記載のピックアップコイル。
【請求項3】
前記重心位置調整部材が、前記支持フレームの取付部よりも後ろ側に配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載のピックアップコイル。
【請求項4】
前記重心位置調整部材が、前記永久磁石と支持フレームの背部との間に配置され、前記永久磁石と共に前記背部に共締めされたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のピックアップコイル。
【請求項5】
前記一対のリード線が、前記重心位置調整部材の配置位置よりも前側で前記モールド外へ引き出されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のピックアップコイル。
【請求項6】
前記重心位置調整部材が磁性材料で形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のピックアップコイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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