説明

ピッチ付着試験機

【課題】供試液中のピッチを均一な条件下で的確に、かつ、効率的にろ過試験片に付着させることができるピッチ付着試験機を提供する。
【解決手段】供試液を収容した容器本体1内で脱水槽3が回転すると、その回転による遠心力を受けた供試液が脱水槽3の内側から外側の容器本体1の内壁面に向かって流動する。この供試液は、容器本体1の内壁面に沿って旋回することにより、その内壁面の下部から突出する一対のバッフル板4,4に衝突して攪拌されつつ容器本体1の内壁面に沿って上方に流動する。そして、この供試液は、容器蓋2の内天面の周辺部から突出する一対のガイド板5,5に案内されつつ脱水槽3の内側に向かって還流し、こうして供試液が容器蓋2で塞がれた容器本体1内を循環する。その際、脱水槽3の内周面に装着されたろ過試験片により供試液がろ過されて供試液中のピッチがろ過試験片に付着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として製紙用のピッチコントロール剤の評価のために使用されるピッチ付着試験機に関し、詳しくは、供試液中のピッチをろ過試験片に付着させるピッチ付着試験機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パルプや紙の製造工程では、原料中の天然樹脂などに由来する粘着性のピッチや、古紙由来の合成樹脂などのスティッキー(以下ピッチという)が凝縮してワイヤーやフェルトなどに付着すると、これに起因して種々のピッチトラブルが発生する。そこで、パルプや紙の製造工程では、ピッチトラブルを軽減するために、通常、種々のピッチコントロール剤が使用されている(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
一方、このようなピッチコントロール剤の評価に使用可能なピッチ付着試験機が従来一般に知られている(例えば非特許文献1、2参照)。ここで、非特許文献1に記載されているピッチ付着試験機は、ビーカに収容されたピッチを含む供試液中と、その上方空間との間を循環移動するループ状のフェルト製ベルトを備えたものであり、供試液中のピッチをフェルト製ベルトに付着させるように構成されている。
【0004】
また、非特許文献2に記載されているピッチ付着試験機は、1/4円形の枠に製紙用金網を張った複数の羽根をらせん状に配置して回転軸に取り付けたものであり、ガラス容器に収容されたピッチを含む供試液中で複数の羽根を回転軸廻りに回転させることにより、供試液中のピッチを各羽根の製紙用金網に付着させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−263385号公報
【特許文献2】特開2008−007862号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】紙パ技協誌 第40巻第1号(昭和61年1月) 第72頁
【非特許文献2】J.TAPPI No.11(昭和58年3月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、非特許文献1に記載されたピッチ付着試験機は、ピッチを含む供試液中と、その上方空間との間を単に循環移動するフェルト製ベルトにピッチを付着させるものであるため、ピッチの付着効率が極めて低いという問題がある。
【0008】
また、非特許文献2に記載されたピッチ付着試験機は、らせん状に配置された複数の羽根を供試液中で回転させることにより、供試液中のピッチを各羽根の製紙用金網に付着させるものであり、ピッチの付着効率が低いという問題がある。
【0009】
さらに、非特許文献1および非特許文献2に記載されたピッチ付着試験機では、供試液が均一に攪拌されず、しかも供試液が蒸発する恐れがあるため、供試液中のピッチを均一な条件下で的確にフェルト製ベルトや製紙用金網に付着させることが困難である。
【0010】
本発明は、このような従来技術の問題点に対応してなされたものであり、供試液中のピッチを均一な条件下で的確に、かつ、効率的にろ過試験片に付着させることができるピッチ付着試験機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決するため、本発明に係るピッチ付着試験機は、供試液をろ過試験片によりろ過して供試液中のピッチをろ過試験片に付着させるピッチ付着試験機であって、供試液を収容する容器本体およびその開口部を塞ぐ容器蓋と、ろ過試験片を内周面に装着して蓋付き容器内で回転する脱水槽と、脱水槽の内側から外側に流動した供試液を攪拌するように容器本体の内壁面から突出するバッフル板と、脱水槽の外側に流動した供試液を脱水槽の内側に還流させるように容器蓋の内天面および/または容器本体の内壁面から突出するガイド板とを備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るピッチ付着試験機では、供試液を収容した容器本体内で脱水槽が回転すると、その回転による遠心力を受けた供試液が脱水槽の内側から外側の容器本体の内壁面に向かって流動する。この供試液は、容器本体の内壁面に沿って旋回することにより、その内壁面から突出するバッフル板に衝突して攪拌されつつ容器本体の内壁面に沿って上方に流動する。そして、この供試液は、容器蓋の内天面および/または容器本体の内壁面から突出するガイド板に案内されつつ脱水槽の内側に向かって還流し、こうして供試液が容器蓋で塞がれた容器本体内を循環する。その際、脱水槽の内壁面に装着されたろ過試験片により供試液がろ過されて供試液中のピッチがろ過試験片に付着する。
【0013】
本発明に係るピッチ付着試験機において、バッフル板が容器本体の内壁面下部の複数部位から突出しており、各バッフル板がその突出部位の周方向に等間隔で配置されていると、供試液が均一に攪拌されつつ容器本体の上方に向かって偏りなく円滑に流動するので好ましい。
【0014】
また、ガイド板が容器蓋の内天面周辺部および/または容器本体の内壁面上部の複数部位から突出しており、各ガイド板がその突出部位の周方向に等間隔で配置されていると、供試液が脱水槽の内側に向かって偏りなく円滑に還流するので好ましい。
【0015】
さらに、回転数が可変に制御される電動モータにより脱水槽が回転駆動される構成であると、供試液が脱水槽の内側に向かって的確に流動するように脱水槽の回転数を調整することができるので好ましい。さらに、この電動モータが容器本体の下面に付設されていると、可搬性が向上するので好ましい。
【0016】
ここで、ろ過試験片が製紙用ワイヤーであると、それを使用する製紙工程における製紙用ワイヤーへのピッチの付着状況を的確に予測することができるので好ましい。
【0017】
また、バッフル板および/またはガイド板が電位計の電極を構成していると、電位計の測定電位の変化に応じて供試液中のピッチの減少量を推定することが可能となるので好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るピッチ付着試験機では、供試液を収容した容器本体内で脱水槽が回転すると、供試液が脱水槽の内側から外側の容器本体の内壁面に向かって流動しつつ容器本体の内周面に沿って旋回し、容器本体の内壁面から突出するバッフル板に衝突して攪拌されつつ容器本体の内壁面に沿って上方に流動する。この供試液は、容器蓋の内天面または容器本体の内壁面から突出するガイド板に案内されつつ脱水槽の内側に向かって還流し、こうして供試液が容器蓋で塞がれた容器本体内を循環する。その際、脱水槽の内壁面に装着されたろ過試験片により供試液がろ過されて供試液中のピッチがろ過試験片に付着する。
【0019】
すなわち、本発明に係るピッチ付着試験機では、バッフル板により攪拌された均一な供試液がガイド板によって容器本体内を循環し、この供試液がろ過試験片によりろ過されて供試液中のピッチがろ過試験片に付着する。従って、本発明によれば、供試液中のピッチを均一な条件下で的確に、かつ、効率的にろ過試験片に付着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係るピッチ付着試験機の主要部の縦断面図である。
【図2】図1に示した主要部を垂直軸周りに90度回転した縦断面図である。
【図3】図1に示した脱水槽の脱水筒に対するバッフル板およびガイド板の突出状態を模式的に示す平面図である。
【図4】第1実施形態に係るピッチ付着試験機の全体構成を示す側面図である。
【図5】第2実施形態に係るピッチ付着試験機の全体構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照して本発明に係るピッチ付着試験機の第1実施形態および第2実施形態を順次説明する。第1実施形態および第2実施形態のピッチ付着試験機は、供試液をろ過試験片によりろ過して供試液中のピッチをろ過試験片に付着させるピッチ付着試験機である。このピッチ付着試験機は、例えば製紙工場において、製紙工程で発生する各種のピッチトラブルを軽減するために使用される製紙用のピッチコントロール剤の効能を評価するために使用される。
【0022】
まず、第1実施形態に係るピッチ付着試験機の構成を説明する。このピッチ付着試験機は、図1および図2に示すように、供試液を収容する容器本体1およびその開口部を塞ぐ容器蓋2と、ろ過試験片(図示省略)を内壁面に装着して容器本体1内で回転する脱水槽3と、脱水槽3の回転によりその内側から外側に流動した供試液を攪拌するように容器本体1の内壁面の下部から突出するバッフル板4と、脱水槽3の外側に流動した供試液を脱水槽3の内側に還流させるように容器蓋2の内天面の周辺部から突出するガイド板5とを備えている。
【0023】
供試液は、溶媒(例えばトルエン)にピッチを溶解し、これを水と攪拌混合したものである。この供試液には、評価対象となるピッチコントロール剤が添加される。なお、供試液に含まれるピッチは、例えば製紙工場における製紙工程で製紙用ワイヤーやフェルトなどに付着した粘着物質を混合溶媒(例えばトルエンとエタノール)を用いて抽出し、これをろ過した後に濃縮して得たものである。
【0024】
ろ過試験片は、例えば製紙工場における製紙工程で使用されている製紙用ワイヤーからなり、脱水槽3の内壁面の高さおよび周長に対応した所定の幅および長さを有する長方形(例えば幅4.5cm、長さ24cm)に予め裁断されている。このろ過試験片は、ピッチ付着試験後の乾燥重量W1と比較するために、ピッチ付着試験前の乾燥重量W0が予め測定されている。
【0025】
容器本体1は、容量が750ml程度の円筒容器であり、その内底面の中心部には、脱水槽3の回転軸6の下端部を嵌合して回転自在に支持する軸受凹部1Aが形成されている。また、容器本体1の外壁面の上部には、容器蓋2を確実に装着するための環状ビード1Bが形成されている。この容器本体1は、耐腐食性の高いステンレススチール(SUS)で構成されている。
【0026】
容器蓋2は、例えば透明なテフロン樹脂によりキャップ状に成形されており、その中心部には、脱水槽3の回転軸6を貫通状態で回転自在に支持する軸受孔2Aが成形されている。また、容器蓋2の内壁面には、容器本体1の環状ビード1Bに着脱自在に係合する環状溝2Bが成形されている。
【0027】
脱水槽3は、中心部に回転軸6の下端部が貫通状態で固定された円形トレイ状の底板3Aと、底板3Aの周壁部の内側に下端部が嵌合状態で固定された円筒状の脱水筒3Bとで構成されている。脱水筒3Bは、いわゆるパンチングメタルで構成されており、例えば円形の多数の脱水孔3Cを有する。なお、底板3Aには、図示しない複数の水抜き穴が形成されている。
【0028】
この脱水槽3の底板3A、脱水筒3Bおよび回転軸6は、それぞれ耐腐食性の高いステンレススチール(SUS)で構成されている。そして、脱水筒3Bは、カシメ付けやロウ付けにより底板3Aに固定されている。また、回転軸6は、ロウ付けやその他の締結手段により底板3Aに固定されている。
【0029】
バッフル板4は、図1に示すように、縦長の長方形の板片の長辺側を固定部4AとしてL字形に折り曲げたものであり、耐腐食性の高いステンレススチール(SUS)で構成されている。このバッフル板4は、容器本体1の内壁面の下部に固定部4Aがボルト・ナットBNを介して固定されている。なお、固定部4Aは、容器本体1の内壁面の下部にロウ付け固定されていてもよい。
【0030】
このようなバッフル板4は、容器本体1の内壁面の周方向に等間隔を開けて一対配置されており、それぞれ脱水筒3Bの外壁面に向かって突出している。すなわち、一対のバッフル板4,4は、図3に示すように、容器本体1の直径方向に沿って脱水筒3Bの外壁面に向かって突出している。
【0031】
ガイド板5は、図2に示すように、横長の長方形の板片の長辺側を固定部5AとしてL字形に折り曲げたものであり、耐腐食性の高いステンレススチール(SUS)で構成されている。このガイド板5は、容器蓋2の内天面の周辺部に固定部5Aがボルト・ナットBNを介して固定されている。
【0032】
このようなガイド板5は、容器蓋2の内天面の周辺部の周方向に等間隔を開けて一対配置されており、それぞれ脱水筒3Bの上端部に向かって突出している。すなわち、一対のガイド板5,5は、図3に示すように、脱水筒3Bの直径方向に沿ってその外側から内側に跨る状態で脱水筒3Bの上端部に向かって突出している。
【0033】
ここで、図4に示すように、第1実施形態のピッチ付着試験機は、脱水槽3の回転駆動機構として、容器本体1を挟み込んで支柱7に支持する支持アーム8と、支柱7に支持されて容器本体1の上方に配置された駆動ヘッド9と、容器蓋2から上方に突出する回転軸6の上端部を把持した状態で駆動ヘッド9に内蔵された電動モータ10により回転駆動される回転チャック11と、電動モータ10の回転方向を制御し、かつ、回転数を可変に制御するコントローラ12とを備えている。このコントローラ14は、例えば駆動ヘッド9に付設されており、図示しない商用電源に接続される。
【0034】
続いて、第1実施形態に係るピッチ付着試験機の使用例を説明する。このピッチ付着試験機は、供試液をろ過試験片によりろ過して供試液中のピッチをろ過試験片に付着させるものであり、ピッチコントロール剤が供試液に添加されていない場合にろ過試験片に付着するピッチの重量と、評価対象となるピッチコントロール剤が供試液に添加されている場合にろ過試験片に付着するピッチの重量とを比較することにより、ピッチコントロール剤の効能を評価するために使用される。なお、ろ過試験片に付着するピッチの重量は、ピッチ付着試験後のろ過試験片の乾燥重量W1からピッチ付着試験前のろ過試験片の乾燥重量W0を差し引いて求める。
【0035】
ここで、第1実施形態のピッチ付着試験機では、ピッチ付着試験の準備として、図1に示した容器蓋2を容器本体1から取り外し、脱水槽3の脱水筒3Bの内壁面に沿ってろ過試験片を装着すると共に、容器本体1内に供試液を投入する。そして、容器本体1に容器蓋2を装着した後、図4に示した支持アーム8により容器本体1を駆動ヘッド9の下方に支持し、容器蓋2から上方に突出する回転軸6の上端部を回転チャック11で把持する。
【0036】
このような準備状態でコントローラ12の操作により電動モータ10の回転を制御して回転チャック11を回転駆動する。ここで、回転チャック11が例えば左回転すると、図1および図2に示した脱水槽3が回転軸6と共に図3に実線矢印で示す方向に回転し、その回転による遠心力を受けた供試液が図3に点線矢印で示すように脱水槽3の脱水筒3Bの内側から外側の容器本体1の内壁面に向かって流動する。
【0037】
この供試液は、容器本体1の内壁面に沿って旋回することにより、その内壁面の下部から突出する一対のバッフル板4,4に衝突して攪拌されつつ、図1および図2に点線矢印で示すように容器本体1の内壁面に沿って上方に流動する。そして、この供試液は、容器蓋2の内天面の周辺部から突出する一対のガイド板5,5に案内されつつ、図3に太破線矢印で示すように脱水槽3の脱水筒3Bの内側に向かって還流する。
【0038】
ここで、脱水筒3Bの内側に向かう供試液の還流状況は、脱水槽3の回転数に応じて変化するから、透明な容器蓋2を通して供試液の還流状況を観察し、供試液が脱水槽3の脱水筒3Bの内側に向かって確実に還流するように脱水槽3の回転数を調整する。すなわち、図4に示したコントローラ12の操作により、電動モータ10の回転数を可変に制御して回転チャック11の回転数を調整する。
【0039】
この調整操作により、容器蓋2で塞がれた容器本体1内を供試液が確実に循環し、脱水槽3の脱水筒3Bの内壁面に装着されたろ過試験片により供試液が効率的にろ過されて供試液中のピッチが的確にろ過試験片に付着する。
【0040】
すなわち、第1実施形態に係るピッチ付着試験機では、一対のバッフル板4,4により均一に攪拌された供試液が容器本体1の上方に向かって偏りなく円滑に流動し、この供試液が一対のガイド板5,5により脱水槽3の脱水筒3Bの内側に向かって偏りなく円滑に還流して容器本体1内を確実に循環する。そして、この供試液が製紙用ワイヤーからなるろ過試験片により効率的にろ過されて供試液中のピッチが的確にろ過試験片に付着する。従って、第1実施形態のピッチ付着試験機によれば、供試液中のピッチを均一な条件下で効率的に、かつ、的確にろ過試験片に付着させることができる。
【0041】
つぎに、本発明の第2実施形態に係るピッチ付着試験機の構成を説明する。このピッチ付着試験機は、図4に示した第1実施形態のピッチ付着試験機における脱水槽3の回転駆動機構を変更したものであり、その他の構成部分は第1実施形態のピッチ付着試験機とほぼ同様であるため、同様の構成部分については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0042】
図5に示すように、第2実施形態のピッチ付着試験機は、脱水槽3の回転駆動機構として、容器本体1の下面に付設された電動モータ13と、電動モータ13の回転方向を制御し、かつ、回転数を可変に制御するコントローラ14とを備えている。このコントローラ14は、容器本体1の外壁面の適所に付設されており、図示しない商用電源またはバッテリーに接続される。
【0043】
ここで、電動モータ13の設置スペースを確保するため、容器本体1の下面には、電動モータ13を囲む三脚などの支持脚15が固定されている。また、電動モータ13により回転駆動されるように、脱水槽3の回転軸6の下端部は、容器本体1の底部の中心部に装着されたオイルシール16を貫通して容器本体1の下方に突出しており、その下端部がカップリング17を介して電動モータ13の回転軸に連結されている。そして、この回転軸6の上端部は、容器蓋2の内天面の中心部に成形されたボス部2Cに嵌合して回転自在に支持されている。
【0044】
以上のように構成された第2実施形態のピッチ付着試験機では、図5に示したコントローラ14の操作により電動モータ13の回転を制御して回転軸6を回転駆動すると、脱水槽3が容器本体1内で回転する。従って、第2実施形態のピッチ付着試験機においても、供試液中のピッチを均一な条件下で効率的に、かつ、的確にろ過試験片に付着させることができる。加えて、第2実施形態のピッチ付着試験機によれば、電動モータ13およびコントローラ14が容器本体1に付設されているため、可搬性に優れる。
【0045】
本発明のピッチ付着試験機は、前述した第1実施形態および第2実施形態に限定されるものではない。例えば、容器蓋2の内天面の周辺部にボルト・ナットBNを介して固定されたガイド板5は、その突出部位の周方向に等間隔で配置される3個以上のガイド板とすることができる。このガイド板5は、容器蓋2と一体に成形されていてもよいし、容器本体1の内壁面の上部にロウ付け固定されていてもよい。そして、このガイド板5は、脱水筒3Bの中心部に向けて供試液を円滑に案内するように湾曲した形状とすることができる。
【0046】
また、容器本体1の内壁面の下部にボルト・ナットBNを介して固定されたバッフル板4は、その突出部位の周方向に等間隔で配置される3個以上のバッフル板とすることができる。このバッフル板4は、供試液が容器本体1の内壁面に沿って円滑に上方に流動できるように、供試液の旋回方向に対し傾斜して設置されていてもよい。
【0047】
さらに、一対のバッフル板4,4および一対のガイド板5,5のうちから選択される任意の2つを電位計の電極として構成することができる。例えば、一対のバッフル板4,4を電極としてそれぞれ図示しないリード線を介して電位計に接続すると、電位計の測定電位の変化に応じて供試液中のピッチの減少量を推定することが可能となる。
【0048】
また、容器蓋2はテフロン樹脂に限らずその他の透明樹脂製であってもよいし、ガラス製であってもよい。容器蓋2が可撓性のない合成樹脂やガラスで構成される場合、容器本体1の環状ビード1Bは形成されないものとし、これに対応して容器蓋2の環状溝2Bも成形されないものとする。
【0049】
さらに、容器本体1はステンレススチール製に限らず、防錆塗装の施されたスチール製や合成樹脂製としてもよい。容器本体1が合成樹脂製とされる場合、バッフル板4やガイド板5は、容器本体1と一体に成形することができる。
【0050】
また、容器本体1の底部には供試液を排出するためのドレンコックを設けてもよいし、容器蓋2には供試液を注入するための注入口を設けてもよい。
【0051】
ここで、第1実施形態または第2実施形態のピッチ付着試験機を使用したピッチ付着試験において、ろ過試験片に付着したピッチの付着量は、蛍光剤含有のシリカゲルをろ過試験片に振りかけ、これをUVランプと呼称される紫外線ランプで照射することにより目視観察することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 …容器本体
1A…軸受凹部
1B…環状ビード
2 …容器蓋
2A…軸受孔
2B…環状溝
2C…ボス部
3 …脱水槽
3A…底板
3B…脱水筒
3C…脱水孔
4 …バッフル板
4A…固定部
5 …ガイド板
5A…固定部
6 …回転軸
7 …支柱
8 …支持アーム
9 …駆動ヘッド
10 …電動モータ
11 …回転チャック
12 …コントローラ
13 …電動モータ
14 …コントローラ
15 …支持脚
16 …オイルシール
17 …カップリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試液をろ過試験片によりろ過して供試液中のピッチをろ過試験片に付着させるピッチ付着試験機であって、
供試液を収容する容器本体およびその開口部を塞ぐ容器蓋と、
ろ過試験片を内壁面に装着して容器本体内で回転する脱水槽と、
脱水槽の回転によりその内側から外側に流動した供試液を攪拌するように容器本体の内壁面から突出するバッフル板と、
脱水槽の外側に流動した供試液を脱水槽の内側に還流させるように容器蓋の内天面および/または容器本体の内壁面から突出するガイド板とを備えていることを特徴とするピッチ付着試験機。
【請求項2】
前記バッフル板が前記容器本体の内壁面下部の複数部位から突出しており、各バッフル板がその突出部位の周方向に等間隔で配置されていることを特徴とする請求項1に記載のピッチ付着試験機。
【請求項3】
前記ガイド板が前記容器蓋の内天面周辺部および/または前記容器本体の内壁面上部の複数部位から突出しており、各ガイド板がその突出部位の周方向に等間隔で配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のピッチ付着試験機。
【請求項4】
前記脱水槽は、回転数が可変に制御される電動モータにより回転駆動されることを特徴とする請求項1〜3の何れか1の請求項に記載のピッチ付着試験機。
【請求項5】
前記電動モータが前記容器本体の下面に付設されていることを特徴とする請求項4に記載のピッチ付着試験機。
【請求項6】
前記バッフル板および/またはガイド板が電位計の電極を構成していることを特徴とする請求項1〜5の何れか1の請求項に記載のピッチ付着試験機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−80162(P2011−80162A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231686(P2009−231686)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000135760)株式会社パーマケム・アジア (17)
【Fターム(参考)】