説明

ピラゾール類の合成方法

【課題】医農薬もしくはその合成中間体として有用な1,3,4−三置換ピラゾール類を高選択的かつ安価に製造する方法を提供する。
【解決手段】選択的に合成が可能なN’−置換ヒドラジドを出発原料とし、クロロヒドラゾン中間体の環化反応を経由することにより、高選択的に1,3,4−三置換ピラゾール類が製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農園芸用殺菌剤、殺虫剤および除草剤あるいは医薬品、もしくはそれらの製造中間体として有用である1,3,4−三置換ピラゾール類の製造方法、およびその製造中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
1,3,4−三置換ピラゾール誘導体の製造方法としては、例えば特表2005−511782(特許文献1)に示されるようにα−アシル−β−アミノアクリル酸エステル類をヒドラジン類と反応させる方法が知られている。また、特開2001−322983(特許文献2)にはα−アシル−ハロアクリル酸エステル類とヒドラジン類とを反応させる例が示されている。これら方法における重大な問題点としては、ピラゾール環化工程において、異性体である1,3,5−三置換ピラゾールの生成を完全に防ぐことができないという点が挙げられる。
【0003】
一方、IZVESTIVA SIBIRSKOGO OTDELENIVA AKADEMII NAUK SSSR, SERIVA KHIMICHESKIKH NAUK、1980年、第2巻、120ページ(非特許文献1)に示されるように、一般式(2)(化1)
【0004】
【化1】

【0005】
[式中、R1はそれぞれ独立に水素原子、塩素原子、フッ素原子、炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜18のハロゲノアルキル基を表し、R2は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロ環基、置換ヘテロ環基、アリールアルキル基または置換アリールアルキル基を表す]で表されるN‘−置換ヒドラジドの製造方法は各種知られているが、このN‘窒素原子に2炭素ユニットを結合させ、例えば一般式(1)(化2)
【0006】
【化2】

【0007】
[式中、R1およびR2は前記と同様、R3は塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルコキシル基、アシルオキシ基を表し、R4はニトリル基、アルキルオキシカルボニル基を表す。]で示される化合物へと導き、引き続いて一般式(4)(化3)
【0008】
【化3】

【0009】
[式中、R1、R2、R3およびR4は前記と同様]で示される化合物へと導いた後、環化反応させた場合には反応機構上、上記のように1,3,5−三置換ピラゾールが生成するリスクが無い。
【0010】
しかしながら、このような反応はその中間体である一般式(1)で示される化合物および一般式(4)で示される化合物を含めて全く報告されていない。
【特許文献1】特表2005−511782
【特許文献2】特開2001−322983
【非特許文献1】IZVESTIVA SIBIRSKOGO OTDELENIVA AKADEMII NAUK SSSR, SERIVA KHIMICHESKIKH NAUK、1980年、第2巻、120ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は1,3,4−三置換ピラゾール類を高選択的かつ安価に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は一般式(5)(化4)
【0013】
【化4】

【0014】
[式中、R1はそれぞれ独立に水素原子、塩素原子、フッ素原子、炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜18のハロゲノアルキル基を表し、R2は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロ環基、置換ヘテロ環基、アリールアルキル基または置換アリールアルキル基を表す。]で表されるピラゾール誘導体の製造方法に関する。
【0015】
本発明で出発化合物として用いられる置換ヒドラジドは一般式(2)(化5)
【0016】
【化5】

【0017】
[式中、R1およびR2は前記と同様]で表される。
一般式(2)で示される置換ヒドラジドの製造方法は従来から知られており、例えば安価なエステル類と置換ヒドラジンを反応させることにより容易に得られる。また、例えば前記(非特許文献1)には高選択的にN‘−置換ヒドラジドを得る方法が示されている。このようにして高選択的に製造された、一般式(2)で示されるN’−置換ヒドラジドを出発化合物とした場合、本発明により開示される新規な製造方法によれば、反応機構上異性体である1,3,5−三置換ピラゾールを生じるリスクが無く、1,3,4−三置換ピラゾールのみが得られる。このため、本発明で開示される新規な製造方法は当該分野において非常に有用なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
一般式(1)(化6)
【0019】
【化6】

【0020】
[式中、R1はそれぞれ独立に水素原子、塩素原子、フッ素原子、炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜18のハロゲノアルキル基を表し、R2は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロ環基、置換ヘテロ環基、アリールアルキル基または置換アリールアルキル基を表し、R3は塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルコキシル基、アシルオキシ基を表し、R4はニトリル基、アルキルオキシカルボニル基を表す。]で表される化合物、一般式(4)(化7)
【0021】
【化7】

【0022】
[式中R1、R2、R3およびR4は前記と同様]で表される化合物、一般式(2)(化8)
【0023】
【化8】

【0024】
[式中、R1およびR2は前記と同様]で表される化合物、一般式(3)(化9)
【0025】
【化9】

【0026】
[式中、R3およびR4は前記と同様]で表される化合物、および一般式(5)(化10)
【0027】
【化10】

【0028】
[式中R1、R2およびR4は前記と同様]で表されるピラゾール誘導体において、
R1で表される炭素数1〜18のアルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを挙げることができる。また、炭素数1〜18のハロゲノアルキル基としては、例えばフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、クロロジフルオロメチル基、ブロモジフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、などを挙げることができる。また、R2で表される炭素数1〜18のアルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを挙げることができる。また、アリール基とは例えばフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などを示す。また、置換アリール基とは、置換基としてハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキレンジオキシ基、低級パーフルオロアルキル基、フェニル基、水酸基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、アセチル基、シアノ基、カルボキシル基などからなる群より選ばれた基を1から3個有するフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などを示す。
【0029】
ここで、ハロゲン原子とはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などを示す。低級アルキル基とはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基などを示す。低級アルコキシ基とはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブチルオキシ基、第二ブトキシ基、第三ブトキシ基などを示す。低級アルキレンジオキシ基とはメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基などを示す。低級パーフルオロアルキル基とはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ペンタフルオロイソプロピル基などを示す。
【0030】
また、ヘテロ環基とは環内にヘテロ原子を1から3個有する五員環または六員環へテロ環基またはそのベンゾローグ誘導体を示し、具体的な例としては、ピリジル基、ピロリル基、ピリミジル基、ピラゾリル基、インドリル基、イソインドリル基、キノリル基、ピロリジル基、ピロリジノ基などの窒素原子を含有するもの、チエニル基などの硫黄原子を含有するもの、フリル基、テトラヒドロフリル基などの酸素原子を含有するもの、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基などの窒素原子、酸素原子、硫黄原子の中から2種類以上の原子を含有するものを挙げることができる。
【0031】
また、置換ヘテロ環基とは、置換基としてハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキレンジオキシ基、低級パーフルオロアルキル基、フェニル基、水酸基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、アセチル基、シアノ基、カルボキシル基などからなる群より選ばれた基を1から3個有し、環内にヘテロ原子を1から3個有する五員環または六員環へテロ環基またはそのベンゾローグ誘導体を示す。
【0032】
ここで、ハロゲン原子とはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などを示す。低級アルキル基とはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基などを示す。低級アルコキシ基とはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブチルオキシ基、第二ブトキシ基、第三ブトキシ基などを示す。低級アルキレンジオキシ基とはメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基などを示す。低級パーフルオロアルキル基とはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ペンタフルオロイソプロピル基などを示し、ヘテロ環基の具体的な例としては、ピリジル基、ピロリル基、ピリミジル基、ピラゾリル基、インドリル基、イソインドリル基、キノリル基、ピロリジル基などの窒素原子を含有するもの、チエニル基などの硫黄原子を含有するもの、フリル基などの酸素原子を含有するもの、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基などの窒素原子、酸素原子、硫黄原子の中から2種類以上の原子を含有するものを挙げることができる。
また、アリールアルキル基とはベンジル基、フェネチル基などを示す。
【0033】
また、置換アリールアルキル基とは置換基としてハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキレンジオキシ基、低級パーフルオロアルキル基、フェニル基、水酸基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、アセチル基、シアノ基、カルボキシル基などからなる群より選ばれた基を1から3個有するベンジル基、フェネチル基などを示す。
【0034】
ここで、ハロゲン原子とはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などを示す。低級アルキル基とはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基などを示す。低級アルコキシ基とはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブチルオキシ基、第二ブトキシ基、第三ブトキシ基などを示す。低級アルキレンジオキシ基とはメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基などを示す。低級パーフルオロアルキル基とはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ペンタフルオロイソプロピル基などを示す。
【0035】
R3で表されるメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブチルオキシ基、第二ブトキシ基、第三ブトキシ基などを挙げることができる。また、アシルオキシ基としては例えばアセトキシ基、プロピオニルオキシ基、イソプロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基などを挙げることができる。
【0036】
また、R4で表されるアルキルオキシカルボニル基としては例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、第二ブトキシカルボニル基、第三ブトキシカルボニル基などを挙げることができる。
【0037】
また、一般式(4)で表される化合物はシス体あるいはトランス体のいずれか一方の化合物、または両者の任意の割合の混合物でよく、その構造は限定されない。
【0038】
本発明により開示される新規な製造方法によれば一般式(1)で表される化合物は、一般式(2)で示される化合物と一般式(3)で示される化合物を塩基の存在下または非存在下で反応させることにより得られる。
【0039】
一般式(2)で表される化合物に対して用いる塩基の当量には特に制限を設けないが、経済的観点から3当量以下とすることが望ましい。用いる塩基は無機の塩基、有機の塩基のいずれでもよい。無機の塩基としてはアルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アンモニア類等を用いることができる。有機の塩基としては、トリアルキルアミン、ピリジン類等を用いることができる。具体的には水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、液体アンモニア、アンモニア水溶液、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、コリジン、2,6−ルチジン、4−ジメチルアミノピリジンなどを挙げることができる。これらの塩基はそれぞれ単独で用いてもよいが、2種類以上を任意の割合で組み合わせて使用することもできる。
【0040】
溶媒は反応条件で不安定なものでなければ特に制限を設けないが、例えばジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化アルキル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、アセトニトリルなどを挙げることができる。
【0041】
用いる溶媒の量については特に制限を設けないが、経済的観点から一般式(2)で表される化合物の重量に対して50倍量以下とすることが好ましい。
反応温度については用いる溶媒の融点から沸点の間であれば特に制限は設けない。
【0042】
また、一般式(4)で表される化合物は一般式(1)に示される化合物を触媒の存在下、あるいは非存在下でそれ自体知られた塩素化剤と反応させることによって得られる。触媒としては、広く知られている触媒、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノンなどを用いることができる。塩素化剤としては広く知られている塩素化剤、例えばホスゲン、ホスゲン二量体、ホスゲン三量体、シュウ酸クロリド、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン、オキシ塩化リン、スルホニルクロリド類、四塩化炭素/ホスフィン類等を使用することができる。スルホニルクロリド類として具体的には、トシルクロリド、メタンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホニルクロリドなどを挙げることができる。ホスフィン類として具体的にはトリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンなどを挙げることができる。これらの塩素化剤はそれぞれ単独で用いてもよいが、2種類以上を任意の割合で組み合わせて使用することもできる。
【0043】
溶媒は反応条件で不安定なものでなければ特に制限を設けないが、例えばジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化アルキル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、アセトニトリルなどを挙げることができる。
【0044】
用いる溶媒の量については特に制限を設けないが、経済的観点から一般式(1)で表される化合物の重量に対して50倍量以下とすることが好ましい。
反応温度については用いる溶媒の融点から沸点の間であれば特に制限は設けない。
【0045】
また、一般式(5)で示されるピラゾール類は一般式(4)で示される化合物を塩基、酸、金属あるいは金属塩で処理することにより得られる。
【0046】
塩基としては、アルカリ金属アルコキシド類、水素化アルキル金属類、アルカリ金属アミド類、アルキルリチウム類等を用いることができる。アルカリ金属アルコキシド類として具体的にはナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム第三ブトキシド、カリウム第三ブトキシドなどを挙げることができる。水素化アルカリ金属類として具体的には水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等を挙げることができる。アルカリ金属アミドとして具体的にはナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド等を挙げることができる。アルキルリチウム類として具体的にはメチルリチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウム等を挙げることができる。
【0047】
酸としては例えば硫酸、塩酸および塩化水素ガス、リン酸、ポリリン酸、五酸化リンなどの無機酸類、酢酸、安息香酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸類、トシル酸、ベンゼンスルホン酸等のスルホン酸類、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、トリメチルシリルトリフレート、スカンジウムトリフレート、塩化チタン(IV)、塩化亜鉛、塩化スズ(IV)、イットリビウムトリフレートなどのルイス酸類を挙げることができる。
【0048】
金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属類、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属類、チタン、銅、亜鉛、パラジウム、ロジウム、サマリウムなどを挙げることができる。
【0049】
金属塩として例えば、塩化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、ヨウ化サマリウム等を挙げることができる。
【0050】
溶媒は反応条件で不安定なものでなければ特に制限を設けないが、例えばジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化アルキル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、アセトニトリルなどを挙げることができる。
【0051】
用いる溶媒の量については特に制限を設けないが、経済的観点から一般式(4)で表される化合物の重量に対して50倍量以下とすることが好ましい。
反応温度については用いる溶媒の融点から沸点の間であれば特に制限は設けない。
【0052】
一般式(5)で表されるピラゾール誘導体およびその塩のうちR4がニトリル基であるもの、例えば1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボニトリルはそれ自体知られた方法で加水分解し、ピラゾールカルボン酸誘導体およびその塩、例えば1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸およびその塩に変換することができる。
【0053】
本発明の一般式(1)で表されるヒドラジド誘導体、一般式(4)で表される化合物、および一般式(5)で表されるピラゾール誘導体は有機または無機の酸と容易に塩を形成し得る。その酸としては例えば、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、臭化水素、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トシル酸、トリフルオロメタンスルホン酸などを挙げることができる。
【実施例】
【0054】
以下、具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0055】
実施例 1
10gのテトラヒドロフラン中にα−クロロアクリロニトリル1.00gを溶解し、2,2,2−トリフルオロ−N’−メチルアセトヒドラジド1.62g、トリエチルアミン2.31gを加え0℃で30分間反応させた。得られた反応溶液にトルエン10gを加え水10gで洗浄した。有機層を濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5/1)で生成し、N’−(2−クロロ−2−シアノエチル)−2,2,2−トリフルオロ−N’−メチルアセトヒドラジド1.99g(収率76%)を得た。
1H−NMR(CDCl):δ=2.96(3H,s),3.54(1H,dd,J=20Hz,7Hz),3.55(1H,dd,J=20Hz,7Hz),4.50(1H,t,J=7Hz),7.99(1H,bs)
【0056】
実施例 2
3gのトルエン中にN’−(2−クロロ−2−シアノエチル)−2,2,2−トリフルオロ−N’−メチルアセトヒドラジド0.20gおよび五塩化リン0.27gを加え70℃で1時間反応させた。水1gを加えてさらに70℃で1時間撹拌して反応を停止した。室温に冷却後有機層をとり、硫酸マグネシウムを用いて乾燥後濃縮した。得られた粗生成物を薄層クロマトグラフィーにて精製し2−クロロ−3−(2−(1−クロロ−2,2,2−トリフルオロメチリデン)−1−メチルヒドラジノ)プロピオニトリル0.08g(収率37%)を得た。
1H−NMR(CDCl):δ=3.41(3H,s),3.75(1H,d,J=8Hz),4.66(1H,t,J=8Hz)
【0057】
実施例 3
5gのテトラヒドロフラン中に2−クロロ−3−(2−(1−クロロ−2,2,2−トリフルオロメチリデン)−1−メチルヒドラジノ)プロピオニトリル0.08gを溶解し0℃に冷却した。0.06gのナトリウム第三ブトキシド0.06gを加えて1時間反応させた。0℃のままトルエン5gを加えた後水5gを加えて反応を停止、有機層を分離してガスクロマトグラフィーにより1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボニトリルを定量した。反応収率は50%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)(化1)
【化1】

[式中、R1はそれぞれ独立に水素原子、塩素原子、フッ素原子、炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜18のハロゲノアルキル基を表し、R2は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロ環基、置換ヘテロ環基、アリールアルキル基または置換アリールアルキル基を表し、R3は塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルコキシル基、アシルオキシ基を表し、R4はニトリル基、アルキルオキシカルボニル基を表す。]で表される化合物およびその塩。
【請求項2】
R4がニトリル基である請求項1記載の化合物およびその塩。
【請求項3】
R3が塩素原子である請求項2記載の化合物およびその塩。
【請求項4】
R1のうち少なくとも1つがフッ素原子である請求項3記載の化合物およびその塩。
【請求項5】
R1がすべてフッ素原子である請求項4記載の化合物およびその塩。
【請求項6】
R2がメチル基である請求項5記載の化合物およびその塩。
【請求項7】
一般式(2)(化2)
【化2】

[式中、R1およびR2は前記と同様]で表される化合物を、一般式(3)(化3)
【化3】

[式中、R3およびR4は前記と同様]で表される化合物と反応させ、得られた一般式(1)で表される化合物をその塩に変換することからなる、一般式(1)で表される化合物およびその塩の製造方法。
【請求項8】
R4がニトリル基である請求項7記載の化合物およびその塩の製造方法。
【請求項9】
R3が塩素原子である請求項8記載の化合物およびその塩の製造方法。
【請求項10】
R1のうち少なくとも1つがフッ素原子である請求項9記載の化合物およびその塩の製造方法。
【請求項11】
R1がすべてフッ素原子である請求項10記載の化合物およびその塩の製造方法。
【請求項12】
R2がメチル基である請求項11記載の化合物およびその塩の製造方法。
【請求項13】
一般式(4)(化4)
【化4】

[式中、R1、R2、R3およびR4は前記と同様]で表される化合物およびその塩。
【請求項14】
R4がニトリル基である請求項13記載の化合物およびその塩。
【請求項15】
R3が塩素原子である請求項14記載の化合物およびその塩。
【請求項16】
R1のうち少なくとも1つがフッ素原子である請求項15記載の化合物およびその塩。
【請求項17】
R1がすべてフッ素原子である請求項16記載の化合物およびその塩。
【請求項18】
R2がメチル基である請求項16記載の化合物およびその塩。
【請求項19】
一般式(1)で表される化合物およびその塩と塩素化剤を反応させ、得られた一般式(4)で表される化合物をその塩に変換することからなる、一般式(4)で表される化合物およびその塩の製造方法。
【請求項20】
一般式(1)で表される化合物およびその塩が、請求項7記載の製造方法で得られたものである、一般式(4)で表される化合物およびその塩の製造方法。
【請求項21】
R4がニトリル基である請求項19または請求項20記載の化合物およびその塩の製造方法。
【請求項22】
R3が塩素原子である請求項21記載の化合物およびその塩の製造方法。
【請求項23】
R1のうち少なくとも1つがフッ素原子である請求項22記載の化合物およびその塩の製造方法。
【請求項24】
R1がすべてフッ素原子である請求項23記載の化合物およびその塩の製造方法。
【請求項25】
R2がメチル基である請求項24記載の化合物およびその塩の製造方法。
【請求項26】
一般式(4)で表される化合物を反応させ、得られた一般式(5)(化5)
【化5】

[式中R1、R2およびR4は前記と同様]で表されるピラゾール誘導体をその塩に変換することからなる、一般式(5)で表されるピラゾール誘導体、およびその塩の製造方法。
【請求項27】
一般式(4)で表される化合物およびその塩が、請求項19記載の製造方法で得られらものである、請求項26に記載の一般式(5)で表されるピラゾール誘導体およびその塩の製造方法。
【請求項28】
一般式(1)で表される化合物およびその塩が、請求項7記載の製造方法で得られたものである、請求項27に記載の一般式(5)で表されるピラゾール誘導体およびその塩の製造方法。
【請求項29】
R4がニトリル基である請求項26、請求項27または請求項28記載のピラゾール誘導体およびその塩の製造方法。
【請求項30】
R3が塩素原子である請求項29記載のピラゾール誘導体およびその塩の製造方法。
【請求項31】
R1のうち少なくとも1つがフッ素原子である請求項30記載のピラゾール誘導体およびその塩の製造方法。
【請求項32】
R1がすべてフッ素原子である請求項31記載のピラゾール誘導体およびその塩の製造方法。
【請求項33】
R2がメチル基である請求項32記載のピラゾール誘導体およびその塩の製造方法。

【公開番号】特開2009−1504(P2009−1504A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161365(P2007−161365)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】