説明

ピリジルテトラヒドロピリジン類及びピリジルピペリジン類とそれらの製造方法

【課題】医薬品、農薬、触媒配位子、コンビナトリアルケミストリー、有機エレクトロルミネッセンス素子、電荷移動体、電子写真感光体、染料等の分野において重要な中間体となるピリジルテトラヒドロピリジン誘導体及びピリジルピペリジン誘導体とそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(III)又は(IV)で表される化合物及びその塩。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、農薬、触媒配位子、コンビナトリアルケミストリー、有機エレクトロルミネッセンス素子、電荷移動体、電子写真感光体、染料等の分野において重要な中間体となるピリジルテトラヒドロピリジン誘導体及びピリジルピペリジン誘導体とそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ピリジルテトラヒドロピリジン誘導体及びピリジルピペリジン誘導体は医薬品、農薬、触媒配位子、コンビナトリアルケミストリー、有機エレクトロルミネッセンス素子、電荷移動体、電子写真感光体、染料等の分野において有用であり、特に医薬品分野では種々開発されている。例えば、ピリジルテトラヒドロピリジン誘導体に関しては、α1A受容体拮抗剤(特許文献1、特許文献2参照;文献については後述)、5−HT1A受容体拮抗剤(特許文献3参照)、テトラベナジン拮抗剤(非特許文献1参照)、TNP阻害活性剤(特許文献4参照)、ニューロ退行性疾病治療薬(特許文献5参照)等が開示されている。また、ピリジルピペリジン誘導体に関しては、ニューロペプチドY又はY5拮抗剤(特許文献6、特許文献7参照)、コルチコトロピン放出因子阻害剤(特許文献8参照)、α1Aアドレノレセプター拮抗剤(特許文献9参照)、メタロプロテアーゼ阻害剤(特許文献10、特許文献11参照)等が開示されている。
【0003】
一方、ビピリジン類から直接ピリジルテトラヒドロピリジン誘導体又はピリジルピペリジン誘導体へ還元する方法はこれまで開発されておらず、多段階での合成が必要であった。
【0004】
テトラヒドロピリジン誘導体を製造する方法としては、例えばピペリジノールの脱水反応による合成法が開示されている(特許文献12参照)。しかし、この方法で用いられる原料のピペリジノール類縁体は、一般的に入手するのが困難であり、工業的な規模での生産には問題がある。
【0005】
【化1】

【0006】
また別法として、ハロゲン化ピリジンを用いテトラヒドロピリジン誘導体を求核置換することにより合成出来ることが知られている(特許文献13参照)。しかし、トリブチルスタンナン等の毒性の強い物質を用いるか、あるいは有機リチウム化合物若しくはグリニャール化合物等の反応性の高い原料が必要であり、工業的な規模の生産には問題がある。
【0007】
また、ビピリジン類から直接ピリジルピペリジン類を製造する方法としては、ニッケルアルミニウム合金を用いて行う方法が知られている(非特許文献2参照)。しかし、反応時間が385時間と長く、工業化するには問題がある。
【0008】
【化2】


ところで、ビピリジン類の片方の芳香環のみを選択的に還元して、ビピリジン類からピリジルピペリジン類を生産する方法は幾つか知られている。例えば、ビピリジン誘導体を過安息香酸で酸化しN−オキシド体へ誘導後、還元触媒に10%パラジウムカーボンを用い水素化反応を行うものである。しかし、この製造において、過安息香酸などの過酸化物を使用する必要があり、反応スケールを大きくすることは難しい(非特許文献3参照)。
【0009】
【化3】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第99/07695号
【特許文献2】米国特許第6,159,990号
【特許文献3】国際公開第99/03847号
【特許文献4】国際公開第01/29026号
【特許文献5】国際公開第02/42305号
【特許文献6】国際公開第01/85714号
【特許文献7】国際公開第99/48888号
【特許文献8】米国特許第6,107,301号
【特許文献9】米国特許第6,316,437号
【特許文献10】国際公開第01/62742号
【特許文献11】国際公開第02/74767号
【特許文献12】特表2003−512370号
【特許文献13】特表平11−506118号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】ウォルフレッド・エス・サアリ(Walfred S. Saari)著 “ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(The Journal of MedicinalChemistry)”、(アメリカ)、アメリカ化学協会(The American Chemical Society)、1984年、p.1182−1185
【非特許文献2】ジョージ・ルン(George Lunn)著 “ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(The Journal of OrganicChemistry)”、(アメリカ)、アメリカ化学協会(The American Chemical Society)、1992年、p.6317−6320
【非特許文献3】ジャン−クリストフ・プラークベント(Jean−Christophe Plaquevent)、イルハム・シクー(Ilhame Chichaoui)著、“ブレティン・デュ・ラ・ソシエテ・キミク・デュ・フランス(Bulletin de la Societe Chimique de France)”(フランス)、フランス化学会(Societe Chimique de France)、1996年、p.369−380
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は医薬品、農薬、触媒配位子、コンビナートリアルケミストリー、有機エレクトロルミネッセンス素子、電荷移動体、電子写真感光体、染料等の分野において有用なピリジルテトラヒドロピリジン誘導体及びピリジルピペリジン誘導体とそれらの製造方法を提供することにある。
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、医薬品や農薬、触媒配位子、コンビナートリアルケミストリー、電子写真感光体、染料等の中間体として有用なピリジルテトラヒドロピリジン誘導体及びピリジルピペリジン誘導体とそれらの製造方法を開発することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明は、以下の構成を有する。
1.
下記一般式(III)で表される化合物及びその塩。
【化4】

式(III)中、
R7はアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、エチルオキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、アセチルアミノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を表す。
R8は水素原子、又はアルキル基を表す。
R9は水素原子、アルキル基、又はアルコキシカルボニル基を表す。
2.
下記一般式(IV)で表される化合物及びその塩。
【化5】


式(IV)中、
R10はアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、アミノ基、又はアセチルアミノ基を表す。
R11は水素原子、又はアルキル基を表す。
R12は水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基を表す。
本願発明は、上記構成を有するものであるが、以下、参考のためその他についても記載した。
(1) 下記一般式(I)で表される化合物及びその塩。
【化6】


式(I)中、
R1はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルホニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオカルボニル基、ウレイド基、アミノ基、カルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、シアノ基、ヘテロ環残基、フッ素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表わす。
R2は水素原子、又はアルキル基を表す。
R1とR2とで連結して環構造を形成してもよい。
R3は水素原子、アルキル基、ホルミル基、カルボキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルホニル基、カルバモイル基、スルファモイル基を表す。
【0014】
(2) 下記一般式(II)で表される化合物及びその塩。
【化7】


式(II)中、
R4はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルホニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオカルボニル基、ウレイド基、アミノ基、カルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、シアノ基、ヘテロ環残基、フッ素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表わす。
R5は水素原子、又はアルキル基を表す。
R4とR5とで連結して環構造を形成してもよい。
R6は水素原子、アルキル基、ホルミル基、カルボキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルホニル基、カルバモイル基、スルファモイル基を表わす。但し、R4とR5とで連結してベンゼン環を形成する場合、R6はメチル基を表わさない。
【0015】
(3) 下記一般式(III)で表される化合物及びその塩。
【化8】


式(III)中、
R7はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルホニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオカルボニル基、ウレイド基、アミノ基、カルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、ヘテロ環残基を表わす。
R8は水素原子、又はアルキル基を表す。
R7とR8とで連結して環構造を形成してもよい。
R9は水素原子、アルキル基、ホルミル基、カルボキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルホニル基、カルバモイル基、スルファモイル基を表す。但し、R7が塩素原子かつR8が水素原子の場合、R9はスルホニル基を表さない。
【0016】
(4) 下記一般式(IV)で表される化合物及びその塩。
【化9】


式(IV)中、
R10はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルホニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオカルボニル基、ウレイド基、アミノ基、カルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、ヘテロ環残基、又はハロゲン原子を表わす。
R11は水素原子、又はアルキル基を表す。
R10とR11とで連結して環構造を形成してもよい。
R12は水素原子、アルキル基、ホルミル基、カルボキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルホニル基、カルバモイル基、スルファモイル基を表す。
【0017】
(5) 下記一般式(V)で表されるビピリジン誘導体とハロゲン化ベンジル類又はベンジルオキシカルボニルハライド類とを反応し、その反応物をパラジウム触媒類、白金触媒類、ルテニウム触媒類、又はロジウム触媒類を用いて還元することによる下記一般式(VI)で表される化合物の製造方法。
【化10】


式(V)・(VI)中、
R13及びR14は各々独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ホルミル基、カルボニル基、カルボキシ基、オキシカルボニル基、スルホニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオカルボニル基、ウレイド基、アミノ基、カルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、ヘテロ環残基を表わす。
R13とR14とで連結して環構造を形成してもよい。
R15は水素原子、ベンジル基又はベンジルオキシカルボニル基を表す。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、医薬品や農薬、電子写真感光体、染料等の中間体として有用なピリジルテトラヒドロピリジン誘導体及びピリジルピペリジン誘導体とそれらの製造方法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明について更に詳しく説明する。
本発明の一般式(I)〜(VI)で表される化合物において、R1〜R14が表わすアルキル基とは具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシルなどの直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜20のアルキル基を表わす。
R1、R4、R7、R10、R13及びR14が表わすアルケニル基とは、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、イコセニル、ヘキサジエニル、ドデカトリエニル等の直鎖、分岐、又は環状の炭素数2〜20のアルケニル基を表わす。
【0020】
R1、R4、R7、R10、R13及びR14が表わすアルキニル基とは、エチニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、シクロオクチニル、シクロノニニル、シクロデシニル等の直鎖、分岐又は環状の炭素数2〜20のアルキニル基を表わす。
R1、R4、R7、R10、R13及びR14が表わすアリール基とは、フェニル、ナフチル等の炭素数6〜10員の単環式又はニ環式アリール基を表わす。
R1、R4、R7、R10、R13及びR14が表わすアルコキシ基とは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、オクタデシルオキシ等の炭素数1〜20のアルコキシ基を表わす。
R1、R4、R7、R10、R13及びR14が表わすアリールオキシ基とは、フェノキシ、ナフチルオキシ等を表わす。
R1、R3、R4、R6、R7、R9、R10、R12、R13及びR14が表わすカルボニル基とは、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ラウロイル、ミリストイル、ベンゾイル、ナフトイル等を表わす。
【0021】
R1、R3、R4、R6、R7、R9、R10、R12、R13及びR14が表わすオキシカルボニル基とは、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、n−デシルオキシカルボニル、n−ヘキサデシルオキシカルボニル、フェノキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル等を表わす。
R1、R3、R4、R6、R7、R9、R10、R12、R13及びR14が表わすスルホニル基とは、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、ヘキシルスルホニル、オクチルスルホニル、ドデシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル、フェニルスルホニル、ナフチルスルホニル等を表わす。
R1、R3、R4、R6、R7、R9、R10、R12、R13及びR14が表わすカルバモイル基とは、カルバモイル;N−メチルカルバモイル、N−(tert−ブチル)カルバモイル、N−ドデシルカルバモイル、N−オクタデシルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等のモノ置換カルバモイル基;N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジヘキシルカルバモイル、N,N−ジドデシルカルバモイル、N,N−ジフェニルカルバモイル等のジ置換カルバモイル基を表わす。
R1、R3、R4、R6、R7、R9、R10、R12、R13及びR14が表わすスルファモイル基とは、スルファモイル;N−エチルスルファモイル、N−(iso−ヘキシル)スルファモイル、N−エチルスルファモイル、N−デシルスルファモイル、N−ヘキサデシルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル等のモノ置換スルファモイル基;N,N−ジメチルスルファモイル、N,N−ジブトキシスルファモイル、N,N−ジオクチルスルファモイル、N,N−テトラデシルスルファモイル、N,N−ジフェニルスルファモイル等のジ置換スルファモイル基を表わす。
【0022】
R1、R4、R7、R10、R13及びR14が表わすアルキルチオ基とは、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ、ヘプチルチオ、オクチルチオ、ノニルチオ、デシルチオ、ドデシルチオ、ヘキサデシルチオ等の炭素数1〜20のアルキルチオ基を表わす。R1、R4、R7、R10、R13及びR14が表わすアリールチオ基とは、フェニルチオ、ナフチルチオ等を表わす。
R1、R4、R7、R10、R13及びR14が表わすチオカルボニル基とは、メチルチオカルボニル、エチルチオカルボニル、ブチルチオカルボニル、オクチルチオカルボニル、デシルチオカルボニル、テトラデシルチオカルボニル、オクタデシルチオカルボニル、フェニルチオカルボニル、ナフチルチオカルボニル等を表わす。
R1、R4、R7、R10、R13及びR14が表わすウレイド基とは、ウレイド、N−メチルウレイド、N−(tert−ブチル)ウレイド、N−オクチルウレイド、N−ヘキサデシルウレイド、N−フェニルウレイド、N,N−ジエチルウレイド、N,N−ジプロピルウレイド、N,N−ジヘキシルウレイド、N,N−ジデシルウレイド、N,N−ジオクタデシルウレイド、N,N−ジフェニルウレイド等を表わす。
R1、R4、R7、R10、R13及びR14が表わすアミノ基とは、アミノ;N−メチルアミノ、N−ブチルアミノ、N−ヘキシルアミノ、N−デシルアミノ、N−テトラデシルアミノ、N−オクタデシルアミノ、N−フェニルアミノ、N−ナフチルアミノ等のモノ置換アミノ基;N,N−ジエチルアミノ、N,N−ジヘプチルアミノ、N,N−ジオクチルアミノ、N,N−ドデシルアミノ、N,N−オクタデシルアミノ、N,N−ジフェニルアミノ等のジ置換アミノ基を表わす。
【0023】
R1、R4、R7、R10、R13及びR14が表わすカルボニルアミノ基とは、アセチルアミノ、エチルカルボニルアミノ、tert−ブチルカルボニルアミノ、n−オクチルカルボニルアミノ、n−ヘキサデシルカルボニルアミノ、ベンゾイルアミノ、ナフトイルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、n−オクチルオキシカルボニルアミノ、n−ヘキサデシルオキシカルボニルアミノ等を表わす。
R7、R10、R13及びR14が表わすハロゲン原子とは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等を表わす。
R1、R4、R7、R10、R13及びR14が表わすヘテロ環残基とは、5〜10員の単環式又はニ環式の窒素、酸素及び硫黄から選択される1〜4個の原子を含有するヘテロ環基を表わし、例えば、チオフェン、フラン、ピラン、ピリジン、ピロール、ピラジン、アゼピン、アゾシン、アゾニン、アゼシン、オキサゾール、チアゾール、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアゾール、テトラゾール、イミダゾール、ピラゾール、モルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピペラジン、キノリン、イソキノリン、インドール、イソインドール、キノキサリン、フタラジン、キノリジン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、クロメン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン等を表わす。
【0024】
R1〜R14におけるこれらの置換基は更に置換基を有していてもよく、置換基としてはアルキル基、フェニル基、ヒドロキシ基、ベンジルカルボニルオキシ基が挙げられる。
【0025】
本発明の化合物において、R1及びR4は好ましくは炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、置換又は無置換のアミノ基、臭素原子、ヨウ素原子であり、より好ましくは無置換のアミノ基、臭素原子である。
R2、R5、R8、及びR11は好ましくは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基である。
R3は好ましくは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、オキシカルボニル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、アルコキシカルボニル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基、エチル基である。
R6、R9及びR12は好ましくは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、オキシカルボニル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、アルコキシカルボニル基であり、特に好ましくは水素原子、アリール置換メチル基、アリール置換アルコキシカルボニル基である。但し、R4とR5とで連結してベンゼン環を形成する場合、R6はメチル基を表わさない。また、R7が塩素原子かつR8が水素原子の場合、R9はスルホニル基を表さない。
R7、R10、R13及びR14は好ましくは炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、置換又は無置換のアミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは無置換のアミノ基、ニトロ基、臭素原子である。
【0026】
本発明の化合物は、公知の方法で塩に変換される。
ここで塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、酸付加塩などが挙げられる。具体的には、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;テトラメチルアンモニウム等のアンモニウム塩;トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ピペリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、リジン、アルギニン、N−メチル−D−グルカミン等の有機アミン塩が挙げられる。
適当な酸付加塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、グルクロン酸塩、グルコン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。
【0027】
次に、本発明の合成方法について詳しく説明する。
本発明の合成方法は出発物質の前記一般式(V)で表わされるピリジルピリジン誘導体(以下、ビピリジン誘導体と略記する)を適当な溶媒下、ハロゲン化ベンジル類又はベンジルオキシカルボニルハライド類と反応させ、次いで得られた中間体をパラジウム触媒類、白金触媒類、ルテニウム触媒類又はロジウム触媒類の少なくとも1つを用いて水素を添加し、目的物の一般式(VI)で表わされるピリジルテトラヒドロピリジン類又はピリジルピペリジン類(以下、各々ピリジルテトラヒドロピリジン類、ピリジルピペリジン類と各々略記する)に導くものである。以下にその反応式の一例として、出発物質に2,4‘−ジピリジン誘導体を用い臭化ベンジルと反応させた例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
【化11】

【0029】
出発物質のビピリジン誘導体は、種々市販されているものを利用することができる。また、公知の方法、例えば、特開2000−355580号、特開2001−261646号、特開2001−261647号等に記載の方法により合成することが可能である。
【0030】
本発明で用いられるハロゲン化ベンジル類としては、具体的にはベンジルクロライド、ベンジルブロミド、ベンジルヨージド等が挙げられる。またベンジルオキシカルボニルハライド類としては、ベンジルオキシカルボニルクロライド、ベンジルオキシカルボニルブロミド、ベンジルオキシカルボニルヨージド等が挙げられる。好ましくはベンジルクロライド、ベンジルブロミド、ベンジルオキシカルボニルクロライドであり、より好ましくはベンジルブロミドである。ハロゲン化ベンジル類の使用量はビピリジン誘導体1molに対し、好ましくは0.5〜2.0倍molであり、より好ましくは0.9〜1.2倍molである。ベンジルオキシカルボニルバライド類の使用量はビピリジン誘導体1molに対し、好ましくは0.5〜3.0倍molであり、より好ましくは1.0〜1.5倍molである。
ビピリジン誘導体とハロゲン化ベンジル又はベンジルオキシカルボニルハライド類との反応における反応温度は0〜200℃で行われ、好ましくは10〜100℃の範囲、より好ましくは20〜80℃の範囲である。これらの反応は通常24時間以内で終了し、多くの場合10分〜12時間で原料の消失が確認され、好ましくは10分〜4時間である。
【0031】
次に、得られた中間体は水素化触媒存在下、水素接触還元を行う。
本発明で用いられる水素化触媒は、パラジウム触媒類、白金触媒類、ルテニウム触媒類、又はロジウム触媒類である。具体的には、パラジウム触媒類としては、パラジウム炭素、硫黄化合物で被毒されたパラジウム炭素、パラジウム担持シリカ触媒、パラジウム担持アルミナ触媒、パラジウム担持硫酸バリウム触媒、パラジウム担持ゼオライト触媒等の担持触媒、パラジウムブラック、ラネーパラジウム、パラジウム金属、水酸化パラジウム、酸化パラジウム等が挙げられる。白金触媒類としては、白金炭素、硫黄化合物で被毒された白金炭素、白金担持シリカ触媒、白金担持アルミナ触媒等の担持触媒、白金金属、白金ブラック、二酸化白金(アダムス触媒)等が挙げられる。ルテニウム触媒類としては、ルテニウム担持シリカ、ルテニウム担持アルミナ、ルテニウム担持炭素等の担持触媒、ルテニウムブラック、塩化ルテニウム、酸化ルテニウムが等が挙げられる。ロジウム触媒類としては、ロジウム担持シリカ触媒、ロジウム担持アルミナ触媒、ロジウム担持炭素触媒等の担持触媒、ロジウム金属、ロジウムブラック、塩化ロジウム、酸化ロジウム等が挙げられる。好ましくは、硫黄化合物で被毒されたパラジウム炭素、硫黄化合物で被毒された白金炭素、二酸化白金(アダムス触媒)が用いられる。より好ましくは硫黄化合物で被毒されたパラジウム炭素が用いられる。触媒の使用量はビピリジン誘導体に対し、通常0.001〜2倍重量の範囲で使用されるが、好ましくは0.005〜1倍重量、より好ましくは0.008〜0.08倍重量の範囲である。また2種以上の触媒を混合して用いることができ、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。
【0032】
上記触媒中、本発明の化合物でピリジルテトラヒドロピリジン類を合成する場合、好ましくは、硫黄化合物で被毒されたパラジウム炭素、硫黄化合物で被毒された白金炭素、二酸化白金(アダムス触媒)が挙げられ、より好ましくは硫黄化合物で被毒されたパラジウム炭素、硫黄化合物で被毒された白金炭素である。また、ピリジルピペリジン類を合成する場合、好ましくは、パラジウム炭素、白金炭素、二酸化白金(アダムス触媒)が挙げられ、より好ましくはパラジウム炭素、二酸化白金(アダムス触媒)である。
上記触媒の使用量は、ピリジルテトラヒドロピリジン類を合成する場合、ビピリジン誘導体に対し、通常0.001〜2倍重量の範囲であり、好ましくは0.005〜1倍重量の範囲であり、より好ましくは0.008〜0.08倍重量の範囲である。ピリジルピペリジン類を合成する場合、ビピリジン誘導体に対し、通常0.001〜2倍重量の範囲であり、好ましくは0.005〜1倍重量の範囲であり、より好ましくは0.008〜0.1倍重量の範囲である。還元反応の反応温度は、通常20〜200℃で行われるが、好ましくは20〜100℃の範囲、より好ましくは30〜80℃の範囲である。
【0033】
水素源は、水素ガスを使用する他、イソプロパノール等の炭素数3〜6の二級アルコール;シクロヘキセン;1,3−シクロヘキサジエン;ヒドラジン;ホスフィン酸;ハイポホスファイトナトリウム、ハイポホスファイトカリウム等のハイポホスファイトアルカリ金属塩;インドリン;ギ酸、及びギ酸アンモニウム等のアンモニア、トリエチルアミン、アルカリ又はアルカリ土類元素、ハロゲン化水素等からなるその塩を用いることができる。これらは2種以上の水素源を混合して用いることができ、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。還元の際の水素圧は、通常10〜20,000kPaの範囲で行われ、ピリジルテトラヒドロピリジン類を合成する場合、好ましくは100〜10,000kPaの範囲であり、より好ましくは100〜1,000kPaの範囲である。ピリジルピペリジン類を合成する場合、好ましくは100〜10,000kPaの範囲であり、より好ましくは300〜1,000kPaの範囲である。これらの反応は通常24時間以内で終了し、多くの場合、30分〜12時間で原料の消失が確認される。
【0034】
反応で使用する溶媒としては、水;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族溶媒;ピリジン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの極性溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、ブタノ−ル、t−ブタノ−ルなどのアルコ−ル系溶媒;ジエチルエ−テル、ジイソプロピルエ−テル、ジブチルエ−テル、メチルt−ブチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル系溶媒等、極性、非極性溶媒を問わずいずれも利用し得る。好ましくは水、メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、ブタノ−ル、t−ブタノ−ルなどのアルコ−ル系溶媒であり、より好ましくはメタノ−ル、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ルである。また2種以上の溶媒を混合して用いることができ、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。上記反応溶媒の使用量はビピリジン誘導体に対して、1〜50倍重量の範囲で使用されるが、より好ましくは2〜30倍重量、より好ましくは5〜10倍重量の範囲である。
反応終了後、本発明の化合物であるピリジルテトラヒドロピリジン類又はピリジルピペリジン類を精製する方法としては、水と酢酸エチル又はトルエンなどの有機溶媒を用いた抽出、アルコ−ル、へキサン、トルエンなどを用いた再結晶、シリカゲル、アルミナ等を用いたカラム精製、減圧蒸留などが挙げられる。これらの方法は、単独又は2つ以上組み合わせて精製を行うことにより、目的物を高純度で得ることが可能である。
以下に具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0035】
【化12】

【0036】
【化13】

【0037】
【化14】

【0038】
【化15】

【0039】
【化16】

【0040】
また、以下に上記化合物以外の具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0041】
【化17】

【0042】
【化18】

【0043】
【化19】

【0044】
【化20】

【0045】
【化21】

【実施例】
【0046】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、構造解析は1H−NMR及びマススペクトルによって行った。
なお、実施例1〜35、39〜69(化合物番号(I)−1〜(I)−31、(II)−1〜(II)−31)、及び化合物番号(III)−23は参考例である。
【0047】
実施例1 4−(5’−メチルピリジ−2’−イル)ピペリジン((II)−1)の合成
5−メチル−2,4‘−ビピリジン10gのイソプロピルアルコール70mL溶液に臭化ベンジル10.5gを加え、50℃で5時間撹拌した。反応液に10%パラジウム炭素1.69gと酢酸アンモニウム4.53gを添加し、オートクレーブ中で窒素圧196kPaで2回置換した後、80℃、水素圧490kPaで水素ガス5400mLの吸収が終わるまで5時間吹き込んだ。窒素置換後、触媒を濾過した液を1.33kPaで14.0gになるまで減圧濃縮し、水50mLと25%水酸化ナトリウム水溶液10gを加え、酢酸エチル200mLで3回抽出し、有機層を濃縮し、析出した結晶を乾燥して、淡黄色結晶の目的物5.00gを得た。収率48% EI−MS:(m/z)176(M) 融点90.0−92.0℃
【0048】
実施例2 5−メチル−1’,2’,5’,6’−テトラヒドロ−[2,4’]−ビピリジン((I)−1)の合成
5−メチル−2,4‘−ビピリジン10gのイソプロピルアルコール70mL溶液に臭化ベンジル10.5gを加え、50℃で5時間撹拌した。反応液に2%パラジウム−S炭素1.0gとトリエチルアミン6.0gを添加し、オートクレーブ中で窒素圧196kPaで2回置換した後、80℃、水素圧196kPaで水素ガス4200mLの吸収が終わるまで3時間吹き込んだ。窒素置換の後、触媒を濾過した液を1.33kPaで18.0gになるまで減圧濃縮し、水50mLと25%水酸化ナトリウム水溶液10gを加え、酢酸エチル200mLで3回抽出した。有機層を濃縮し、得られた固体をNH修飾シリカゲル(バイオタージ・ジャパン製)に吸着させて酢酸エチルで溶出し、得られた分画を濃縮し析出した結晶を乾燥して、淡黄色結晶の目的物4.1gを得た。収率40% EI−MS:(m/z)174(M) 融点78−80℃
【0049】
実施例3 5,6−ジメチル−1’,2’,5’,6’−テトラヒドロ−[2,3’]ビピリジン((I)−32)の合成
5,6−ジメチル−2,3’−ビピリジン1gのイソプロピルアルコール15mL溶液に臭化ベンジル1.06gを加え、50℃で5時間撹拌して反応を終了させた。反応液に10%パラジウム炭素0.18gとトリエチルアミン0.59gを添加し、オートクレーブ中で窒素圧196kPaで2回置換した後、80℃、水素圧196kPaで水素ガス400mLの吸収が終わるまで3時間吹き込んだ。窒素置換後、触媒を濾過した液を1.33kPaで1.70gになるまで減圧濃縮し、水50mLと25%水酸化ナトリウム水溶液10gを加え、酢酸エチル200mLで3回抽出し、有機層を濃縮し、得られた固体をNH2修飾シリカゲル(バイオタージ・ジャパン)に吸着させ酢酸エチルで溶出し、得られた分画を濃縮し析出した結晶を乾燥して標題化合物を淡黄色結晶として0.20g得た。収率20% EI−MS:(m/z)188(M)融点102−104℃
【0050】
実施例4 1−ベンジル−4−(5’−メチル−2’−ピリジル)−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン((I)−12)の合成
5−メチル−2,4’−ビピリジン1gのイソプロピルアルコール15mL溶液に臭化ベンジル1.06gを加え、50℃で5時間撹拌した。反応液に2%白金炭素0.08gとトリエチルアミン0.59gを添加し、オートクレーブ中で窒素圧196kPaで2回置換した後、55℃、水素圧390kPaで水素ガス260mLの吸収が終わるまで3時間吹き込んだ。窒素置換後、触媒を濾過した液を1.33kPaで1.70gになるまで減圧濃縮し、水50mLと25%水酸化ナトリウム水溶液10gを加え、酢酸エチル50mLで3回抽出した。有機層を濃縮し、得られた固体を40μmシリカゲル(ジェイ・ティー・ベイカー製)に吸着させ酢酸エチルで溶出し、得られた分画を濃縮した。析出した結晶を乾燥し、目的物の淡黄色結晶0.50gを得た。収率32% EI−MS:(m/z)264(M)融点71.4−73.4℃
【0051】
同様の方法で以下の化合物を合成した。合成した化合物の構造式と、表1〜表6にその物性値を示す。なお、融点が測定できないもの等についてはNMRのスペクトルデータを表中に記載した。
【0052】
【化22】

【0053】
【化23】

【0054】
【化24】

【0055】
【化25】

【0056】
【化26】

【0057】
【化27】

【0058】
【化28】

【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】


【0063】
【表5】


【0064】
【表6】

【0065】
比較合成例1 4−(5’−メチルピリジ−2’−イル)ピペリジンの合成
5−メチル−2,4’−ビピリジン10gのイソプロピルアルコール70mL溶液に臭化ベンジル10.5gを加え、50℃で5時間撹拌した。反応液を冷却し、析出した結晶を濾取し乾燥して、淡褐色結晶18.4gを得た。得られた結晶をエタノール200mLに溶解した後、溶液を10℃まで冷却し、テトラヒドロホウ素ナトリウム4.9gを添加し、反応液を3時間還流した。その反応液を濃縮乾固し、シリカゲルカラム(ジェイ・ティー・ベイカー製40マイクロ)に通して酢酸エチルで溶出し、画分を濃縮して淡褐色結晶11.3gを得た。次に、得られた結晶をトルエン300mLに溶解し、ディーンスターク還流脱水装置を用いて反応溶液を3時間還流脱水した。反応液を室温まで冷却し、Z−クロリド(和光純薬製)を7.7g添加し、反応液を5時間還流した。反応液を濃縮乾固し、シリカゲルカラム(ジェイ・ティー・ベイカー製40マイクロ)に通してトルエンで溶出し、画分を濃縮し、淡褐色結晶6.6gを得た。この結晶を塩酸19mLに溶解し、反応溶液を3時間還流した。反応液を室温まで冷却し、反応液がpH13になるまで水酸化ナトリウムを添加し、クロロホルムで抽出した。有機層を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、無機物を濾過し得られた有機層を濃縮し、析出した結晶を乾燥して、淡黄色油状物2.6gを得た。次にこの油状物をメタノール70mLに溶解し、10%パラジウム炭素1.35gとギ酸アンモニウム2.96gを添加し、オートクレーブ中で窒素圧196kPaで2回置換した後、80℃、水素圧490kPaで水素ガス340mLの吸収が終わるまで5時間吹き込んだ。窒素置換後、触媒を濾過した液を1.33kPaで10.0gになるまで減圧濃縮し、水50mLと25%水酸化ナトリウム水溶液10gを加え、酢酸エチル200mLで3回抽出した。有機層を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、無機物を濾過して得られた有機層を濃縮し、析出した結晶を乾燥して、淡黄色油状物の目的物1.9gを得た。
【0066】
【化29】

【0067】
参考合成例1及び比較合成例1の結果を表7に示す。なお、反応時間は全工程の反応時間の総和を記載した。表中、実施例1は参考合成例1、比較例1は比較合成例1と読み替える。
【0068】
【表7】

【0069】
表7の結果から明らかなように、公知の方法を組み合わせて行った場合、本発明に比較して工程数は3倍と多く、反応時間は2.4倍もかかっている。また、収率は参考合成例1が48%なのに対し、20%と低い。このことから、本発明の製造方法が優れていることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(III)で表される化合物およびその塩。
【化1】


式(III)中、
R7はアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、エチルオキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、アセチルアミノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を表す。
R8は水素原子、又はアルキル基を表す。
R9は水素原子、アルキル基、又はアルコキシカルボニル基を表す。
【請求項2】
下記一般式(IV)で表される化合物及びその塩。
【化2】


式(IV)中、
R10はアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、アミノ基、又はアセチルアミノ基を表す。
R11は水素原子、又はアルキル基を表す。
R12は水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基を表す。

【公開番号】特開2011−42671(P2011−42671A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234080(P2010−234080)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【分割の表示】特願2005−513224(P2005−513224)の分割
【原出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【出願人】(000175607)富士フイルムファインケミカルズ株式会社 (34)
【Fターム(参考)】