説明

ピリジンおよび/またはその誘導体の環境に優しい回収方法

環境に対して害のない有機溶媒を用いるピリジンおよび/またはその誘導体のそれらの水性マスおよび/または製造反応マスからの液−液抽出による回収のためのプロセスを開示する。本プロセスはさらに、本プロセスで得られた水相およびその他の廃棄物からの溶媒の効果的な回収および再利用を含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、複素環芳香族塩基の回収の分野に関する。より具体的には、本発明は、環境に対し害のない有機溶媒の存在下での液−液抽出を利用する、ピリジンおよび/またはピリジン誘導体の、それらの水性マス(aqueous mass)および/または製造反応マス(manufacturing reaction mass)からの環境に優しい回収方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ピリジンおよびピリジン誘導体は、溶媒としても触媒としても有効に用いられている。これらは、医薬、ビタミン、香料、塗料、染料、ゴム製品、接着剤、殺虫剤や除草剤として用いられる様々な製品の合成において用いられている。
【0003】
ピリジン塩基の製造のための最も一般的な工業的な合成反応は、アルデヒドおよび/またはケトンとアンモニアの触媒縮合によるものである。この反応は、通常、350〜500℃で大気圧にてアルミノ・シリケート触媒の存在下で行われる。触媒を含む反応装置に、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド(ホルマリンの形態で)およびアンモニアを入れ、主生成物としてピリジンおよびアルキルピリジンを形成させる。当分野において、多岐にわたる、触媒、反応物質および反応条件が報告されている。"Pyridine and Pyridine Derivatives", Goe, Gerald L., Kirk-Othmer, 3rd Edition, Vol. 19, John Wiley & Sons, p. 454 (1978); "Synthetic and Natural sources of the Pyridine Ring", Bailey et al., pp. 1-252 in "Heterocyclic Compounds", Volume 14, "Pyridine and Its Derivatives", John Wiley & Sons, New York (1984)(これらは本明細書の一部を構成する)。
【0004】
水性マスに存在するピリジンおよびピリジン誘導体は、適切な方法によって抽出される。多岐にわたる方法が、ピリジンおよびピリジン誘導体の分離の問題に適用されてきた。ピリジン−水共沸混合物は、慣用技術(例えば慣用的な適当な溶媒の添加により水−ピリジン共沸混合物を分解し、分留して実質的に乾燥ピリジンを調製することにより)にしたがい分離されている。溶媒は、蒸留によりピリジンから回収され、回収カラムに戻して再利用される。
種々の溶媒を用いることによる、水溶液からのピリジンまたはピリジン誘導体の分離に関するプロセスがいくつか先行特許文献に開示されている。
【0005】
ベンゼンは、水性反応マスからピリジンおよびピコリンを回収するのに最も一般的に用いられているものである。"Ullman’s Encyclopedia of Industrial Chemistry", Vol. A22, 5th Ed.; Elvers, B., Hawkins, S., Russey, W., Schulz, G., Eds., VCH Publishers, Weinheim (1993)の"Pyridine and Pyridine Derivatives"(Shimizu et al p. 399)を参照。
【0006】
米国特許第4,883,881号は、ベンゼンを加え、得られた混合物を蒸留して実質的に無水のピリジンを回収することによる、ピリジンをピリジン−水共沸混合物から分離する方法を開示している。
【0007】
しかしながら、このプロセスにおけるベンゼンのロスは、環境保護対策費用、職場の安全、火事の危険性の増加、および有害物質の廃棄物処理経費における追加投資等の問題をもたらしている。さらに、ベンゼンの使用は、その有害性ゆえに多くの産業で禁止されている。したがって、このプロセスを特に商業的規模で実施する場合には、これらの問題を解決することが急務である。
【0008】
米国特許第2,058,435号には、ピリジンおよびその類縁体の水溶液を水に対して非溶媒の効率の良い抽出剤で抽出するプロセスが報告されている。このプロセスは、ベンゼン、トリクロロエチレン、イソプロピルエーテル、プソイドクメン、シクロヘキサン、ヘキサン等の数多くの溶媒の任意のいずれかにより、ピリジンをその水溶液から回収するものである。
【0009】
欧州特許第1,346,757号には、ハイドロフルオロポリエーテル、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボンおよび/またはペルフルオロポリエーテルおよび/またはペルフルオロカーボンとそれらの混合物から選択される、含フッ素流体からなる溶媒による液−液抽出が開示されている。
【0010】
また、例えば様々なテキストにおいて検討されているように、慣用的な考慮に十分に従い、例えば、乾燥、抽出、塩化、再蒸留等の他の慣用技術も用いることができる(例えば“Chemist's Companion", Gordon, Arnold J. et al., John Wiley and Sons (1972)を参照)。
【0011】
Park, Choon Hoらは、Journal of Applied Polymer Science (1999), 74(1), 83-89において、ポリ(アクリロニトリル−コ−ビニルリン酸)を介するパーベーパレイション分離を検討している。水溶性のピリジン溶液を脱水するため、リン酸部分を含むポリアクリロニトリル(PAN)ベースのコポリマーを合成した。膜のビニルリン酸(VP)部分と供給液中のピリジンとの間で形成した in situ 複合体によって、ポリ(アクリロニトリル−コ−ビニルリン酸(PANVP)膜の分離能力が増大した。リン酸を含むPANベースの膜はいずれも、水に対して非常に選択的であった。PANVP膜のパーベーパレション能力は、膜におけるリン酸部分の数と操作温度に依存していた。PANVP膜を用いる水/ピリジン混合物のパーベーパレーション分離は、ビニルリン酸の数と操作温度に依存して、透過物における99.8%を超える水濃度と4〜120gm-2-1の流量を示した。
【0012】
米国特許第6,087,507号は、ピリジン又はピリジン誘導体を抽出により水溶液から連続的に分離する方法を記載しており、これは超臨界流体を用いて液体媒体からピリジン物質を抽出するものである。この発明の方法は、具体的には、ピリジンまたはピリジン誘導体を、加圧下、または液体の状態で、あるいは臨界に近い状態または超臨界状態で用いる加圧した二酸化炭素により水溶液から抽出するものである。運用システムは連続運用抽出システムであり、ピリジンおよび/またはピリジン誘導体の一部または全部を水相から二酸化炭素の相へ移行させ;水相および二酸化炭素の層を互いに分離し;ピリジンおよび/またはピリジン誘導体を二酸化炭素から分離し;それによってピリジンおよび/またはピリジン誘導体を含有する抽出物が得られるというものである。ピリジンおよび/またはピリジン誘導体を二酸化炭素と接触させるのに好ましい温度は5〜80℃であり、60〜300barが好ましい圧力の範囲である。しかしながら、このプロセスは、抽出が非常に高い圧力(60〜300bar)で行われるので、工業的規模には適さない。このことは、この抽出プロセスを、工業的規模での運用に不利で大きな資本を必要とするものとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来技術に開示されるプロセスは、有害で工業的には適さない溶媒を用いるものであった。開示されている溶媒には、商業的規模の製造プロセスにおいて取り扱うには大変危険なものがある。上記従来技術に伴う問題は、知られている従来技術における上述の問題点の全てを回避するための商業的に実行可能で環境に優しいプロセスと溶媒を用いることによって克服することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明の目的は従来技術の制約に対して改善することであり、ここで本発明は、環境に対して害のない選択的な有機溶媒の存在下で液−液抽出を利用し、ピリジンおよび/またはその誘導体をそれらの水性マスおよび/または製造反応マスから回収するための改善されたプロセスを提供する。
【0015】
本発明の更なる目的は、ピリジンおよび/またはその誘導体を回収するための環境に優しいプロセスを提供することであり、本プロセスは、有機相、水相および本プロセスの間に得られた他の廃棄物から、溶媒を効果的に回収し再利用するものであり、経済的である。
【0016】
本発明のさらなる目的は、ピリジンおよび/またはその誘導体の回収のための環境に優しいプロセスを提供することであり、本プロセスは、該ピリジンおよび/またはその誘導体をその製造反応マスから回収することが可能で、該製造反応マスはピリジン、β−ピコリン、アンモニア、脂肪族アミン、アルデヒドおよびアルデヒドベースの有機不純物、他のモノアルキルピリジン、ジアルキルピリジン、トリアルキルピリジンまたは未同定の重質有機物を含んでなる。
【0017】
本発明の別の目的は、ピリジンおよび/またはその誘導体の回収のための、環境に優しく経済的なプロセスを提供することであり、本発明のこの目的は、ICHガイドラインのクラスIIIの溶媒から選択される環境に対して害のない適当な溶媒を用い、本プロセスにおいて該溶媒を回収・再利用すべく効果的に運用することにより達成される。
【0018】
本発明の更なる目的は、適切な有機溶媒を選択し、これをピリジンおよび/またはその誘導体の、液−液抽出によるその水性反応マスからの回収プロセスに利用することであり、当該溶媒は、従来技術で使用される溶媒と比較して、非毒性であり、環境に許容され得るものであり、水性媒体に混和するものである。
【0019】
これらのおよび他の目的は、以下の態様、即ち最良の実施形態にしたがって以下に記載される具体的な態様にしたがって達成されるが、本発明はその具体的な態様には限定されない。
【0020】
本発明の好ましい態様によれば、ピリジンおよび/またはその誘導体を水性マスおよび/またはその製造反応マスから回収するための環境に優しいプロセスが提供され、本プロセスは、該反応マスを有機溶媒で処理し、生じた有機相および水層を分け、該有機相を蒸留してピリジンおよび/またはその誘導体と該有機溶媒の一部を得、該水相および本プロセスの間に得られた他の廃棄物を蒸留し、エステル化して該有機溶媒をさらに回収し、本プロセスにおいて再利用することを含んでなる。
【0021】
本発明の1つの好ましい態様によれば、環境に対して害のない有機溶媒を用いる、ピリジンおよび/またはその誘導体を回収するための環境に優しいプロセスが提供され、本プロセスは、他の低沸点副生成物および高沸点副生成物ならびにアンモニアと共にピリジンおよび/またはその誘導体を含有する水性マスからアンモニアを回収し、ピリジンおよび/またはその誘導体を含有する得られた水性マスを、当該溶媒を用いて抽出し、ピリジンおよび/またはその誘導体を含有する該溶媒により形成した有機相を水相と分離し、分留によってこの有機相からピリジンおよび/またはその誘導体を回収することを含んでなる。
【0022】
本発明の他の1つの態様によれば、有機溶媒を用いる、ピリジンおよび/またはその誘導体を回収するための環境に優しいプロセスが提供され、ここで当該溶媒はICHガイドラインのクラスIIIの溶媒から選択される環境に対して害のない溶媒である。
【0023】
本発明のさらに別の態様によれば、有機溶媒を用いる、ピリジンおよび/またはその誘導体を回収するための環境に優しいプロセスが提供され、ここで当該溶媒は好ましくは酢酸アルキルから選択される。
【0024】
本発明のさらに別の態様によれば、該有機溶媒の酢酸アルキルを用いる、ピリジンおよび/またはその誘導体を回収するための環境に優しいプロセスが提供され、ここで当該プロセスは、水相から、および該酢酸アルキルの一部と本プロセスの間に生じた対応するアルカノールを含有する他の廃棄物から、さらに当該溶媒を効果的に回収し再利用する。
【0025】
本発明のさらに別の態様によれば、環境に対して害のない有機溶媒を用いる、ピリジンおよび/またはその誘導体を回収するための環境に優しいプロセスが提供され、ここで当該プロセスは、本プロセスにおいて用いた溶媒を、抽出した有機物の蒸留の間に回収し、これをピリジンおよび/またはその誘導体の回収プロセスに再利用することを含んでなる。
【0026】
本発明のさらに別の態様によれば、酢酸アルキルを用いる、ピリジンおよび/またはその誘導体を回収するための環境に優しいプロセスが提供され、ここで当該プロセスは、酢酸アルキルの加水分解によって生じたアルカノールをエステル化し、未反応の酢酸アルキルと共にこれを回収し、本プロセスにおいて再利用することを含んでなる。
【0027】
本発明のさらに別の態様によれば、酢酸アルキルを用いる、ピリジンおよび/またはその誘導体を回収するための環境に優しいプロセスが提供され、ここで当該プロセスは、高アルカリの系に起因して分解されたアルカノールをそれぞれ効果的に回収し、これを再エステル化した後に本プロセスにおいて再利用するものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書は、具体的に記載され本発明とされるものを明確に請求する特許請求の範囲を含んでいるが、本発明は、以下の本発明の詳細な記載を読み記載された実施例を検討することでより容易に理解することができる。
【0029】
環境問題(即ち、公害、地球温暖化等)が増大している近年、産業において、経済的なプロセスだけでなく、環境に優しいプロセスにも重点が置かれている。即ち、この筋書きでは、プロセスの開発において経済と環境の理念を共存させることが必要になってくる。したがって、これらの目的を本発明によって達成し、最も広い態様では、ベンゼンのような毒性の高い溶媒を用いることなく、大きな資本を必要とすることもなく、そして二酸化炭素の使用のように取り扱いの難しいプロセスを用いることなく、ピリジンおよび誘導体を抽出するプロセスを提供する。
【0030】
開示した本発明の態様は、ベンゼンのような危険な溶媒の取り扱いを回避し、また、回収に用いた溶媒を効果的に再利用するため利点を有する、ピリジンおよび/またはその誘導体の回収のためのプロセスに関する。さらに、本プロセスは、工業的に適した溶媒を使用して、本プロセスを比較的安全に、より扱い易く、経済的にするものである。このように、本発明は、これまで開示されたプロセスに伴う不便や問題点を解決するものである。
【0031】
本発明によれば、ベンゼンのような有毒な溶媒に代わるものとして酢酸アルキル(ICHガイドラインのクラスIIIの溶媒)を用いて水性反応マスからピリジンおよびピリジン誘導体を回収するプロセスを提供する。溶媒として酢酸アルキルは、毒性がなくベンゼンと比較して環境に許容され得るものである。ピリジンおよびピリジン誘導体の回収のための酢酸アルキルの使用は、投資利益は別として、環境汚染を低減し、環境保護対策に伴う経費を減少させ、職業上の安全を増大し、有毒廃棄物の処理コストを抑制する。
【0032】
本発明によれば、環境に優しい溶媒により、水性反応マスからピリジンおよび/またはピリジン誘導体を回収するためのプロセスを提供するものであり、この溶媒はピリジンおよびその誘導体に対して優れた溶媒であって水に対しては実質的に非溶媒である。抽出完了後、得られた抽出物を、分留に付し、溶媒を完全に除去しピリジンを実質的に無水状態にする。
【0033】
本発明によれば、ここで用いられるプロセスは、ピリジンおよび/またはその誘導体をその製造反応マスから実質的に無水の状態で単離することが可能である。本明細書において用いられるこの「製造反応マス」とは、ピリジンおよび/またはその誘導体の製造中に得られる反応マスを意味し、該製造反応マスは、ピリジン、β−ピコリン、アンモニア、脂肪族アミン、アルデヒドおよびアルデヒドベースの有機不純物、他のモノアルキルピリジン、ジアルキルピリジン、トリアルキルピリジン又は他の未同定の重質有機物を含み得る。
【0034】
ピリジンおよび/またはピリジン誘導体をその水性マスおよび/またはその製造反応マスから分離するためのプロセスを記載する、開示した本発明の好ましい態様は、以下の詳細な記載とプロセスフローダイアグラムを読むことでより容易に理解することができる。
【0035】
本発明は、ピリジンおよびピリジン誘導体の製造のための改良されたプロセスであって、最初にアンモニアを反応マスから大気圧下、ポット温度85〜95℃に維持して回収して反応マス中のアンモニアを最小限(望ましくは<1.6%)にすること(大量のアンモニアは溶媒の回収率を減少させ、プロセスの経済性を損なうので)を含んでなる、プロセスを提供する。回収は減圧下でも行うことができる。
【0036】
アンモニア回収後に得られた反応マスを有機溶媒、好ましくは酢酸アルキル、で抽出する。ここで用いられる酢酸アルキルは、好ましくは、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル等である。好ましくは酢酸エチルである。回収はバッチ抽出で行う。但し、連続抽出でも回収を行うことができる。ピリジンおよびピコリンに加え高沸点ピリジン塩基やいくつかの低沸点成分を含有する水性マスを、任意の公知の従来プロセスにより溶媒とともに攪拌する。室温で約30分間攪拌した後、攪拌を停止して二層を分ける。水層をピリジンおよびピコリン含量について分析する。水層[ストリーム−1]におけるピリジンおよび/またはピリジン誘導体含量が<0.1%になるまで、酢酸アルキルを用い、水層に対してこのプロセスを繰り返す。
【0037】
さらに、得られた水層を、分留カラムを用いて大気圧下で加熱する。プレカットは2層からなり、これを分けて、焼却するかまたは他のプロセスを適当に用いることによって
ピリジン塩基を含まない残留物を容易に処分することができる。酢酸アルキル/アルカノールに富むプレカットの有機層は、残留したアルカノールを、既に商業的に確立されているプロセスにより、酢酸アルキルにエステル化した後、抽出のために再利用する。プレカットの水層は適切に焼却する。
【0038】
本発明にしたがう上記のプロセスは、分留カラムを用いて有機層を蒸留する。また、dean stark装置も水層の回収のために取り付ける。酢酸アルキルにおける水の溶解のため、少量の水が有機層に存在する。プレカットは有機層と水層からなる。上述の蒸留法による酢酸アルキル/アルカノールの回収のため、水の層[ストリーム−2]を最終抽出後に得られた水層[ストリーム−1]と混合する。プレカットを単離した後、いくつかのアルカノールと共に酢酸アルキルを含有するカット−1[ストリーム−4]を回収する。次のバッチ抽出に用いる回収された酢酸アルキル中でアルカノールが好ましくは<0.2%に維持されるようインターカットの量を維持する。カット1[ストリーム−4]中のアルカノールの量が>0.2%であれば、このカットをストリーム−3と混合し、抽出段階で再利用される酢酸アルキルの回収のために、エステル化プロセスにおいて水洗の段階で加える。
【0039】
プレカットおよびカット1の回収後に蒸留を継続して溶媒を回収し、これを次のバッチ抽出に用いることができる。溶媒回収後の残留物を、分留カラムを用いて、工業的に次に行われる確立された手法にしたがって数ステップでさらに蒸留し、所望の規格のピリジンおよびピコリンを回収する。
【0040】
さらに、本発明を以下の実施例により詳細に説明する。これら実施例は、本発明の説明のために記載するものであり、本発明の限定を意図するものではない。
【実施例】
【0041】
実施例1
ピリジン、β−ピコリン反応マスからのアンモニア減少
2500gの、ピリジン、β−ピコリン水性反応マス[ピリジン−13.49(%)、β−ピコリン5.49(%)、NH37.80(%)、脂肪族アミン、アルデヒドおよびアルデヒドベースの有機不純物、他のモノアルキルピリジン、ジアルキルピリジン、トリアルキルピリジンまたは他の未反応の重質有機物質]を、ダブルフェイスコンデンサおよびNH3除去装置を取り付けた5L用の丸底フラスコに入れた。ピリジン−βピコリン反応マス中のNH3含量が1.6%未満になるまで、この反応マスを85〜95℃まで加熱した。NH3回収の後、2300gのピリジン、β−ピコリン反応マス[ピリジン−14.70(%)、β−ピコリン5.93(%)、NH31.53(%)]を得、これは酢酸エチルによる抽出に適していた。
【0042】
実施例2
NH3回収後の、ピリジンおよびβ−ピコリン反応マスからの酢酸エチルによるピリジンおよびβ−ピコリンの抽出
新しい酢酸エチル[295.0g]と、ピリジン、β−ピコリン水性反応マス[575g、ピリジン14.70(%)、β−ピコリン5.93(%)、NH31.53(%)、脂肪族アミン、アルデヒドおよびアルデヒドベースの有機不純物、他のモノアルキルピリジン、ジアルキルピリジン、トリアルキルピリジンまたは他の未同定の重質有機物質]を、サーモウェルおよびダブルサーフェスコンデンサを取り付けた2Lの丸底フラスコに入れた。この反応マスを室温で30分間攪拌した後、層分離のため分液漏斗に移した。層を分け、水層をピリジンおよびβ−ピコリン含量について分析した。水層および新しい酢酸エチル(135g)を再度入れてこの方法を繰り返した。合計9回の抽出の後[酢酸エチル295g×1および135g×8]、水層中のピリジンおよびβ−ピコリンは0.1%未満に達した[ストリーム−1]。
【0043】
実施例3
抽出に用いた溶媒の回収
抽出された有機相[1503g]を、ガラスカラム[高さ2m、直径25mm、S.S. ストラクチャードパッキングで充填]、還流分離器および水層の分離のためdean stark装置を取り付けた5L容の丸底フラスコに入れた。反応マスを還流温度70±5℃にゆっくりと加熱し、還流を2〜4時間維持した。系が安定した後、最初に2層を含むプレカットを分離した。水層[ストリーム−2]は、水に酢酸エチル(1〜5%)とエチルアミンを含有し、有機層[ストリーム−3]は酢酸エチル(95%)に微量のエチルアルコール(2〜5%)を含有していた。さらに、エチルアルコール(2〜5%)を含有する酢酸エチル(90〜95%)のインターカットを単離した[ストリーム−4]。この抽出システムに再利用するため、更に蒸留して酢酸エチル[分析値:98%、エチルアルコール<0.2%]を単離した。残留分(実質的に水を含まない)を、工業的に確立された方法に従い分留法を用いて蒸留し、所望の規格のピリジンおよびβ−ピコリンを単離した。
【0044】
実施例4
抽出システムにおいて再利用するための廃棄物ストリームからの酢酸エチルの回収
ストリーム−1とストリーム−2を合わせ、分留カラム[長さ1m、直径25mm、SSストラクチャードパッキングで充填]を用いて蒸留した。プレカットは、底温度90〜100℃までで集めた。これは2層からなる。有機層には酢酸エチル(60〜80%)およびエチルアルコール(15〜30%)を含有していた[ストリーム−5]。2〜4%の酢酸エチルおよび1〜2%のエチルアミンを含有する水層は焼却することができる。ピリジン塩基を含有しない残留した水性マスは、焼却により容易に廃棄するか、希釈目的の適当なプロセスに用いることができる。抽出のため、ストリーム−5をエステル化の後再利用した。
【0045】
実施例5
回収した酢酸エチルの再利用実験
回収した酢酸エチルの再利用を試験するため、上記プロセスの後、酢酸エチルを新たに用いて必要な処理をし、同様のキャパシティのバッチをさらに3バッチ採取した。全体として、2500gのピリジン、β−ピコリン反応マスに対し、合計1813gの酢酸エチルを新たに用いた。ここから1183gの酢酸エチル(分析値98%:EtOH<0.2%)を抽出された有機物から回収し、これを抽出ステージで再利用した。ストリーム1〜5からの回収分を含め、合計1246gの酢酸エチルを上記の方法にしたがって回収し、これを抽出ステージで再利用した。主な溶媒のロスがバッチ方式での操作上のロスに起因するため、抽出を連続方式で行えば溶媒のロスはさらに最小限にすることができる。
【0046】
特定の好ましい実施態様に関して本発明を詳細に記載したが、本発明はそれら個々の態様に限定されないことは認識すべきである。むしろ、本発明を実施するための現在の最良の形態を記載した本明細書の開示に鑑み、当業者には、数多くの修飾や変更が、本発明の範囲と精神から逸脱することなく示されるであろう。
【0047】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピリジンおよび/またはその誘導体の水性マスおよび/またはその製造反応マスからの回収のための環境に優しいプロセスであって、
該プロセスにおける酢酸アルキル有機溶媒の使用;および
該プロセスを、該溶媒が該プロセスにおいて生じた有機相、水相および廃棄物から回収可能なように運用すること
を含んでなるプロセス。
【請求項2】
以下を含んでなる、請求項1記載のプロセス:
前記水性マスおよび/または前記製造反応マスを前記酢酸アルキル有機溶媒で処理すること;
得られた有機相と水相を分けること;
該有機相を蒸留してピリジンおよび/またはその誘導体を得、該水相と該プロセスの間に生成した廃棄物を蒸留およびエステル化することによりさらに該有機溶媒を回収し、および
回収した該有機溶媒を該プロセスにおいて再利用する。
【請求項3】
前記酢酸アルキル溶媒が、ICHガイドラインのクラスIIIに従う、環境に対して害のないものである、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記溶媒が、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピルまたは酢酸メチルからなる群から選択される請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記溶媒が好ましくは酢酸エチルである請求項4記載のプロセス。

【公表番号】特表2010−503661(P2010−503661A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527962(P2009−527962)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【国際出願番号】PCT/IN2006/000456
【国際公開番号】WO2008/032334
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(506343313)ジュビラント・オルガノシス・リミテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】JUBILANT ORGANOSYS LIMITED
【Fターム(参考)】