説明

ピリミジン誘導体および中間体の製造方法

化合物(I)を化合物(II)と反応させて、化合物(III)を得、次いで化合物(IX)と反応させて、化合物(VIII)を得た後、好ましくは酵素反応により脱保護して、化合物(XII)を得る。本発明は、酵素阻害剤として有用なピリミジン誘導体および合成中間体の有利な製造方法を提供する。(式中、Pはアルキル基等を示し、RおよびRはアルキル基等を示し、Rは置換基を有していてもよいアルキル基等を示し、Rは水素原子等を示し、Rは置換基を有していてもよいアラルキル基等を示し、Yは置換基を有していてもよいヘテロアリール基等を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、エラスターゼ阻害剤、キマーゼ阻害剤などの酵素阻害剤として有用なピリミジン誘導体およびその合成中間体の新規な製造方法に関する。
【背景技術】
一般式(XIII):

(式中、Rは水素原子、アシル基、ホルミル基等を示し、R10は置換基を有していてもよいフェニル基、アルキル基等を示し、R11は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基等を示し、R12は置換基を有していてもよいヘテロ環基、アシル基、ハロアルキル基等を示す。)で表される化合物群は、医薬品、特にエラスターゼ阻害剤、キマーゼ阻害剤などの酵素阻害剤としてリウマチ、慢性閉塞性肺疾患等の治療・予防に有用であることが報告されている(WO98/24806およびWO98/09949参照)。
一般式(XIII)で表される化合物の一つである一般式(6)で表される化合物の製造方法として、下記反応スキームに示される方法が報告されている(WO02/051815参照)。

(式中、R’は、(1)C1〜4アルキル基、(2)Cycl、または(3)Cyclによって置換されたC1〜4アルキル基(基中、Cyclは、C3〜10の単環または二環式炭素環、1〜4個の窒素原子、1〜2個の酸素原子および/または1〜2個の硫黄原子を含む3〜10員の単環または二環式複素環等を示す。)を表す。)
この方法においては、一般式(4)で表される化合物と式(5)で表される化合物をアミド化反応に付する際に、一般式(4)で表される化合物のピリミジン環の5位にアミノ基が存在するために、自らとのアミド化反応による一般式(4)で表される化合物の二量体を生じる副反応が起こり、目的とする一般式(6)で表される化合物の収率・品質が低下するという問題がある。
上記の方法において、一般式(3)で表される化合物のベンゾイル基を脱保護しないまま、一般式(3)で表される化合物と式(5)で表される化合物とのアミド化反応を行い、その後、ベンゾイル基の脱保護を行うことができれば、二量体の生成を回避することができる。しかしながら、当該アミド化反応後のベンゾイル基の脱保護においては、強塩基、還流、長時間という過酷な条件が必要である(WO02/051815の実施例4等参照)。このような条件では一般式(6)で表される化合物中の1,3,4−オキサジアゾール環が分解されるため、一般式(6)で表されるピリミジン化合物の取得は困難となる。このため、上記方法において二量化反応を回避するためには、一般式(4)で表される化合物のアミノ基を予め緩和な条件で脱保護できる保護基で保護することが考えられるが、保護、脱保護の工程がさらに必要となるため好ましくない。
一般的に、アミノ基のアシル化による保護においては、ベンゾイルのような芳香族アシルよりもアセチルのような脂肪族アシルの方が緩和な条件で加水分解ができることが知られている(Protective Groups in Organic Synthesis,2nd.Ed.,A Wiley Interscience Publication,1991,349.参照)。したがって、一般式(3)で表される化合物において5位アミノ基が脂肪族アシル基で保護された化合物が得られれば、該脂肪族アシル基を脱保護することなく、式(5)で表される化合物とアミド化した後、分解を伴わないより緩和な条件で脱保護することも可能であるかにも考えられる。
そのためには、原料に翻って、式(1)で表される化合物においてアズラクトン環の2位が脂肪族基である化合物が必要になるが、そのような化合物の効率的な製造方法は、未だ報告されていない。
本発明者等は、アズラクトン化合物の一般的製造方法として知られている、下記反応スキームに示されるErlenmeyer法を用い、アズラクトン環の2位がメチル基である、式(8)で表される化合物の合成を試みた。

しかし、この方法では副生成物が多く生成し、式(8)で表されるアズラクトン化合物は、極めて低収率でしか得られなかった。
【発明の開示】
本発明が解決しようとする課題は、酵素阻害剤として有用な後掲の一般式(XII)で表されるピリミジン誘導体またはそのN−保護体(例えば、N−ホルミル体、WO98/09949参照)およびその中間体の有利な製造方法を提供することである。
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、式(1)で表される化合物の代わりに、後掲の一般式(I)で表される化合物を用いた場合でも、意外にも、後掲の一般式(III)で表される化合物が得られることを見出した。
すなわち、アズラクトン環2位が脂肪族基である一般式(I)で表される化合物は公知化合物であり、公知の方法により安価かつ収率よく製造することができるため(Indian Journal of Chemistry,39B,2000,688−963.参照)、当該方法により、ピリミジン環5位のアミノ基が脂肪族アシルで保護された一般式(III)で表される化合物を安価かつ効率的に製造することができることを見出した。
さらには、当該化合物から製造できる後掲の一般式(VIII)で表される化合物における脱保護法を検討したところ、分解等の副反応を伴うことがない温和な条件で脱保護することができる方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)一般式(I):

(式中、Pは水素原子、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基またはハロアルキル基を示し、RおよびRは同一または異なって、それぞれ独立してアルキル基を示すか、または隣接する窒素原子と一緒になって脂肪族複素環を形成してもよく、波線はシス体若しくはトランス体またはそれらの混合物であることを示す。)で表される化合物(以下、化合物(I)ともいう。)を一般式(II):

(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を示し、Rは水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す。)で表される化合物(以下、化合物(II)ともいう。)またはその塩と反応させることを特徴とする、一般式(III):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(III)ともいう。)またはその塩の製造方法。
(2)化合物(I)を化合物(II)またはその塩と反応させて、化合物(III)またはその塩を得;
得られた化合物(III)またはその塩を、Rが水素原子以外の場合は水素原子に変換した後、N−ヒドロキシスクシンイミドと縮合させることを特徴とする、一般式(IV):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(IV)ともいう。)の製造方法。
(3)Pがメチル基、エチル基またはベンジル基である、上記(1)または(2)記載の製造方法。
(4)Rが置換基を有していてもよいフェニル基またはメチル基である、上記(1)または(2)記載の製造方法。
(5)Rが水素原子、メチル基またはtert−ブチル基である、上記(1)または(2)記載の製造方法。
(6)下記工程(a)、(b)および(c)を含むことを特徴とする、一般式(VI):

〔式中、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示し、Rは水素原子、水酸基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基または−N(R)−OR(ここで、RおよびRは同一または異なって、それぞれ独立して、アルキル基を示す。)を示し、他の各記号は前記と同意義を示す。〕で表される化合物(以下、化合物(VI)ともいう。)またはその塩の製造方法;
工程(a):化合物(I)を化合物(II)またはその塩と反応させて、化合物(III)またはその塩を得;
工程(b):得られた化合物(III)またはその塩を、Rが水素原子以外の場合は水素原子に変換した後、N−ヒドロキシスクシンイミドと縮合させて、化合物(IV)を得;
工程(c):得られた化合物(IV)と一般式(V):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(V)ともいう。)またはその塩とを反応させて、化合物(VI)またはその塩を得る。
(7)化合物(I)を化合物(II)またはその塩と反応させて、化合物(III)またはその塩を得、
得られた化合物(III)またはその塩を、Rが水素原子以外の場合は水素原子に変換した後、化合物(V)またはその塩と縮合させることを特徴とする、化合物(VI)またはその塩の製造方法。
(8)Pがメチル基、エチル基またはベンジル基である、上記(6)または(7)記載の製造方法。
(9)Rが置換基を有していてもよいフェニル基またはメチル基である、上記(6)または(7)記載の製造方法。
(10)Rが水素原子、メチル基またはtert−ブチル基である、上記(6)または(7)記載の製造方法。
(11)上記(6)〜(10)のいずれか一の製造方法により得られる化合物(VI)またはその塩を脱保護することを特徴とする、一般式(VII):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(VII)ともいう。)またはその塩の製造方法。
(12)酵素反応により脱保護することを特徴とする、上記(11)記載の製造方法。
(13)酸性条件により脱保護することを特徴とする、上記(11)記載の製造方法。
(14)下記工程(h)、(i)および(j)を含むことを特徴とする、一般式(XII):

(式中、Yは置換基を有していてもよいヘテロ環基、置換基を有していてもよいアシル基またはハロアルキル基を示し、他の各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XII)ともいう。)またはその塩の製造方法;
工程(h):上記(11)〜(13)のいずれか一に記載の方法によって得られる化合物(VII)またはその塩のアミノ基を保護して、一般式(X):

(式中、Qはアシル基以外のアミノ基の保護基を示し、他の各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(X)ともいう。)またはその塩を得;
工程(i):得られた化合物(X)またはその塩のRで表される基をYで表される基に変換して、一般式(XI):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XI)ともいう。)またはその塩を得;
工程(j):得られた化合物(XI)またはその塩を脱保護して、化合物(XII)またはその塩を得る。
(15)下記工程(a)、(b)、(c)および(e)を含むことを特徴とする、一般式(VIII):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(VIII)ともいう。)またはその塩の製造方法;
工程(a):化合物(I)を化合物(II)またはその塩と反応させて、化合物(III)またはその塩を得;
工程(b):得られた化合物(III)またはその塩を、Rが水素原子以外の場合は水素原子に変換した後、N−ヒドロキシスクシンイミドと縮合させて、化合物(IV)を得;
工程(c):得られた化合物(IV)と化合物(V)またはその塩とを反応させて、化合物(VI)またはその塩を得;
工程(e):得られた化合物(VI)またはその塩のRで表される基をYで表される基に変換して、化合物(VIII)またはその塩を得る。
(16)下記工程(a)、(d)および(e)を含むことを特徴とする、化合物(VIII)またはその塩の製造方法;
工程(a):化合物(I)を化合物(II)またはその塩と反応させて、化合物(III)またはその塩を得;
工程(d):得られた化合物(III)またはその塩を、Rが水素原子以外の場合は水素原子に変換した後、化合物(V)またはその塩と縮合させて、化合物(VI)またはその塩を得;
工程(e):得られた化合物(VI)またはその塩のRで表される基をYで表される基に変換して、化合物(VIII)またはその塩を得る。
(17)化合物(I)を化合物(II)またはその塩と反応させて、化合物(III)またはその塩を得、
得られた化合物(III)またはその塩を、Rが水素原子以外の場合は水素原子に変換した後、一般式(IX):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(IX)ともいう。)またはその塩と縮合させることを特徴とする、化合物(VIII)またはその塩の製造方法。
(18)Pがメチル基、エチル基またはベンジル基である、上記(15)〜(17)のいずれか一に記載の製造方法。
(19)Rが置換基を有していてもよいフェニル基またはメチル基である、上記(15)〜(17)のいずれか一に記載の製造方法。
(20)Rが水素原子、メチル基またはtert−ブチル基である、上記(15)〜(17)のいずれか一に記載の製造方法。
(21)上記(15)〜(20)のいずれかーの製造方法により得られる化合物(VIII)またはその塩を脱保護することを特徴とする、化合物(XII)またはその塩の製造方法。
(22)酵素反応により脱保護することを特徴とする、上記(21)記載の製造方法。
(23)酸性条件により脱保護することを特徴とする、上記(21)記載の製造方法。
発明の詳細な説明
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明に使用される記号の定義は、以下のとおりである。
P、R、R、R、RおよびRにおける「アルキル基」とは、炭素数が好ましくは1〜20、より好ましくは1〜7である、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ラウリル基などが挙げられる。中でも、メチル基、エチル基が好ましい。
およびRにおける「置換基を有していてもよいアルキル基」とは、下記置換基で1またはそれ以上置換されていてもよい上記アルキル基をいい、ここでいう置換基としては、例えば、ニトロ基、直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基(炭素数:1〜6、例:メトキシ基など)、ハロゲン原子(例:塩素原子、フッ素原子など)、水酸基などが挙げられる。
Pにおける「アルケニル基」とは、炭素数が好ましくは2〜20、より好ましくは2〜7である、直鎖状または分岐鎖状のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、ホモアリル基、オレイル基などが挙げられ、中でもビニル基、アリル基が好ましい。
における「置換基を有していてもよいアリール基」とは、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜8の炭素数を有するアリール基であり、当該アリール基は下記置換基で1またはそれ以上置換されていてもよい。ここでいう置換基としては、例えば、ニトロ基、直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基(炭素数:1〜6、例:メトキシ基)、ハロゲン原子(例:塩素原子、フッ素原子など)、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基(好ましい炭素数:1〜4、例:メチル基、エチル基、プロピル基など)、水酸基などが挙げられ、Rの「置換基を有していてもよいフェニル基」における置換基も同様なものが挙げられる。置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいフェニル基の具体例としては、フェニル基、o−、m−又はp−ニトロフェニル基、o−、m−又はp−メトキシフェニル基、o−、m−又はp−クロロフェニル基、o−、m−又はp−フルオロフェニル基、o−、m−又はp−トリル基などが挙げられ、中でもフェニル基、p−フルオロフェニル基、p−トリル基が好ましい。
における「アラルキル基」とは、アリール部が好ましくは6〜12、より好ましくは6〜8の炭素数を有するアリール基であり、アルキル部が好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3の炭素数を有する、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であるアラルキル基を示す。アラルキル基の具体例としては、ベンジル基が好ましい。
PおよびRにおける「置換基を有していてもよいアラルキル基」とは、下記置換基で1またはそれ以上置換されていてもよい上記アラルキル基をいい、ここでいう置換基としては、例えば、ニトロ基、直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基(炭素数:1〜6、例:メトキシ基など)、ハロゲン原子(例:塩素原子、フッ素原子など)、水酸基などが挙げられる。
PおよびYにおける「ハロアルキル基」とは、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)が1または2以上置換した、炭素数が好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3の直鎖または分岐鎖状アルキル基であり、例えばトリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、クロロメチル基などが挙げられ、好ましくはトリフルオロメチル基である。
およびRが隣接する窒素原子と一緒になって形成してもよい「脂肪族複素環」とは、炭素原子と少なくとも1個の窒素原子を含み、それ以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1〜3個含んでもよい、5〜6員の脂肪族複素環、例えばピロリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン等が挙げられる。
における「アルコキシ基」とは、炭素数が好ましくは1〜20、より好ましくは1〜7である、直鎖状または分岐鎖状のアルコキシであり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ラウリルオキシ基などが挙げられる。中でも、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
における「アラルキルオキシ基」とは、上記で定義されたアラルキル部を有するアラルキルオキシ基が挙げられ、例えば、ベンジルオキシ基、p−ニトロベンジルオキシ基等が挙げられる。
Yにおける「置換基を有していてもよいヘテロ環基」の「ヘテロ環基」とは、炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1〜5個含む5〜6員の複素環基、及びその縮合ヘテロ環基等であり、例えばピロリル基(1−、2−又は3−ピロリル基)、フリル基(2−又は3−フリル基)、チエニル基(2−又は3−チエニル基)、イミダゾリル基(1−、2−、4−又は5−イミダゾリル基)、オキサゾリル基(2−、4−又は5−オキサゾリル基)、チアゾリル基(2−、4−又は5−チアゾリル基)、ピラゾリル基(1−3−、4−又は5−ピラゾリル基)、イソキサゾリル基(3−、4−又は5−イソオキサゾリル基)、イソチアゾリル基(3−、4−又は5−イソチアゾリル基)、オキサジアゾリル基(1,2,4−オキサジアゾール−3又は5−イル基、1,3,4−オキサジアゾール−2−イル基、1,2,5−オキサジアゾール−3−イル基)、チアジアゾリル基、(1,2,4−チアジアゾール−3又は5−イル基、1,3,4−チアジアゾール−2−イル基、1,2,5−チアジアゾール−3−イル基)、トリアゾリル基(1,2,4−トリアゾール−1、3、4又は5−イル基、1,2,3−トリアゾール−1、2又は4−イル基)、インドリル基(1−、2−、3−、4−、5−、6−又は7−インドリル基)、ベンゾフリル基(2−、3−、4−、5−、6−又は7−ベンゾフリル基)、ベンゾチエニル基(2−、3−、4−、5−、6−又は7−ベンゾチエニル基)、ベンズイミダゾリル基(1−、2−、4−、5−、6−又は7−ベンズイミダゾリル基)、ベンゾオキサゾリル基(2−、4−、5−、6−又は7−ベンゾオキサゾリル基)、ベンゾチアゾリル基(2−、4−、5−、6−又は7−ベンゾチアゾリル基)、ピリジル基(2−、3−又は4−ピリジル基)、ピリジン−1−オキシド基(2−、3−又は4−ピリジン−1−オキシド基)、ピリミジニル基(2−、4−又は5−ピリミジニル基)、テトラゾリル基(1H−テトラゾール−1又は5−イル基、2H−テトラゾール−2又は5−イル基)、キノリル基(2−、3−、4−、5−、6−、7−又は8−キノリル基)又はイソキノリル基(1−、3−、4−、5−、6−、7−又は8−イソキノリル基)、ピロリジニル基(1−、2−又は3−ピロリジニル基)、ピラゾリジニル基(1−、3−又は4−ピラゾリジニル基)、イミダゾリジニル基(1−、2−又は4−イミダゾリジニル基)、ピロリニル基(1−、2−又は3−ピロリニル基)、ピラゾリニル基(1−、3−又は4−ピラゾリニル基)、イミダゾリニル基(1−、2−、4−又は5−イミダゾリニル基)、テトラヒドロフリル基(2−又は3−テトラヒドロフリル基)、テトラヒドロチエニル基(2−又は3−テトラヒドロチエニル基)、チアゾリジニル基(2−、3−、4−又は5−チアゾリジニル基)、ピペリジニル基(1−、2−、3−又は4−ピペリジニル基)、ピペラジニル基(1−又は2−ピペラジニル基)、テトラヒドロピラニル基(2−、3−又は4−テトラヒドロピラニル基)、モルホリニル基(2−、3−又は4−モルホリニル基)、チオモルホリニル基(2−、3−又は4−チオモルホリニル基)、ジオキソラニル基(2−又は4−ジオキソラニル基)、ホモピペリジニル基(1−、2−、3−又は4−ホモピペリジニル基)、ホモピペラジニル基(1−、2−、5−又は6−ホモピペラジニル基)、インドリニル基(1−、2−、3−、4−、5−、6−又は7−インドリニル基)、クロマニル基(2−、3−、4−、5−、6−、7−又は8−クロマニル基)等が挙げられ、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基が好ましく、1,3,4−オキサジアゾール−2−イル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基がより好ましい。
当該ヘテロ環基は下記置換基で1またはそれ以上置換されていてもよい。ここでいう置換基としては、例えば、ニトロ基、直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基(好ましい炭素数:1〜6、例:メトキシ基など)、ハロゲン原子(例:塩素原子、フッ素原子など)、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基(好ましい炭素数:1〜4、例:メチル基、エチル基、プロピル基など)、アルコキシカルボニル基(例:メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)などが挙げられる。
置換基を有していてもよいヘテロ環基の具体例としては、5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル基、2−チアゾリル基、5−メトキシカルボニルベンゾオキサゾール−2−イル基などが挙げられ、中でも5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル基が好ましい。
Yにおける「置換基を有していてもよいアシル基」の「アシル基」とは、炭素数が好ましくは1〜20である、直鎖状または分岐鎖状のアシル基であり、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基などが挙げられる。当該アシル基は下記置換基で1またはそれ以上置換されていてもよい。ここでいう置換基としては、例えば、ニトロ基、直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基(好ましい炭素数:1〜6、例:メトキシ基)、ハロゲン原子(例:塩素原子、フッ素原子など)、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基(好ましい炭素数:1〜4、例:メチル基、エチル基、プロピル基など)、2−ピリジルオキシ基などが挙げられる。「置換基を有していてもよいアシル基」の好適な具体例としては、4−(2−ピリジルオキシ)ブチリル基が挙げられる。
Qにおける「アシル基以外のアミノ基の保護基」とは、アシル基以外であれば特に制限はなく、例えばベンジルオキシカルボニル基(Cbz基)、tert−ブトキシカルボニル基(Boc基)、メトキシカルボニル基(Moc基)、9−フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc基)等が挙げられる。なかでも、緩和な条件で脱保護できるCbz基、Boc基等が好ましい。
次に、各記号の好ましい態様について説明する。
Pはアルキル基または置換基を有していてもよいアラルキル基が好ましく、メチル基、エチル基またはベンジル基がより好ましい。
はフェニル基、p−フルオロフェニル基またはメチル基が好ましい。
は水素原子またはアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基またはtert−ブチル基がより好ましい。
は置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアラルキル基が好ましく、メチル基、イソプロピル基またはベンジル基がより好ましい。
は水素原子、水酸基、メトキシ基、tert−ブトキシ基、ベンジルオキシ塞または−N(R)−OR(各記号は前記と同意義を示す)が好ましく、水素原子、メトキシ基、ベンジルオキシ基または−N(Me)−OMeがより好ましい。
Yは、5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル基、2−チアゾリル基、トリフルオロメチル基、4−(2−ピリジルオキシ)ブチリル基または5−メトキシカルボニルベンゾオキサゾール−2−イル基が好ましい。
一般式(II)、(III)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)および(XII)で表される化合物は、酸性の基を有する場合、アルカリ金属塩(たとえば、カリウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩など)、有機アミン塩(たとえば、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩など)などの塩を形成でき、塩基性の基を有する場合、無機酸塩(たとえば、塩酸塩、硫酸塩など)、有機酸塩(たとえば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トシル酸塩、メシル酸塩など)などの塩を形成することができる。
本発明の製造方法は、次の反応スキームに表される。

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)
すなわち本発明は、上記反応スキームに示される工程(a)〜(k)の一部を含む、一般式(III)、(IV)、(VI)、(VII)、(VIII)または(XII)で表される化合物の製造方法であり、所望の化合物を製造するための好適なルートを適宜選択すればよい。
本発明の製造方法は、ピリミジン環5位のアミノ基が脂肪族アシルで保護された化合物(III)を製造するための新規合成ルート、工程(a)を含んでおり、当該工程により、化合物(III)を効率的に製造することができる。
当該化合物(III)を酵素阻害剤またはその有用な中間体であるピリミジン化合物(XII)または(VII)の原料とすることにより、ピリミジン環の5位のアミノ基が緩和な条件で脱保護できる脂肪族アシルで保護された合成中間体である化合物(IV)、(VI)および(VIII)を経由することができるため、工程(g)または(k)で分解等を伴うことなく脱保護できる。
このため、工程(b)、(c)、(d)、(e)および(f)に先立って脱保護する必要がなく、遊離のアミノ基のまま縮合反応を行うことによる二量化などの副反応を回避することができ、また、二量化を回避するための保護基の架け替えの必要がないので、より短い工程で、効率的に、高品質の化合物(VII)または化合物(XII)を製造することができる。
また本発明では、化合物(III)を原料とすることにより、最終脱保護工程である工程(g)または(k)において、酵素反応により脱保護できることが見出された。当該酵素反応は、中性付近で室温攪拌という緩和な条件で、高収率に進行するので、本発明に好適に適用できる。
さらには、弱酸性、室温付近という温和な条件で、分解等の副反応を伴うことなく、脱保護反応が高収率で進行することを併せて見出した。
以下に、工程(a)〜(k)について説明する。
1.工程(a)
工程(a)は、化合物(I)を化合物(II)またはその塩と反応させて、化合物(III)またはその塩を得る方法である。この反応は、溶媒中で行い、具体的には、例えば、化合物(II)またはその溶液に化合物(I)またはその溶液を加え(溶液の場合には好ましくは滴下し)、加熱撹拌する。添加順序はこの逆または同時であってもよい。
化合物(II)は、Rがアルキル基またはアラルキル基の場合、フリー体では分解する傾向にあり、固体としては通常、安定な塩の形態で単離される。化合物(II)の塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、トリフルオロ酢酸塩などの酸付加塩が挙げられる。尚、化合物(II)において、Rが水素原子の場合は、分子中のイミノ基と塩を形成して安定に存在し、またナトリウム塩、カリウム塩等の塩基付加塩としても安定に存在する。従って、フリー体である化合物(II)を化合物(I)と反応させる場合、化合物(II)を塩基付加塩とするのに必要な量の塩基(例えば、ナトリウムエトキシド、カリウムブトキシド、ナトリウムメトキシドなどのアルコキシド化合物)を用いるのが好ましい。
工程(a)において、これら化合物(II)の酸付加塩は、溶媒中で塩基を用いて中和し、一旦フリー体に変換した後に化合物(I)と反応させるのが好ましい。反応前に一旦フリー体とせず、例えば溶媒中に化合物(II)の塩及び化合物(I)を溶解し、塩基を添加して反応させることもできるが、この場合、目的物である化合物(III)の収率が低下する。中和に用いる塩基としては、特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどを挙げることができる。これらの塩基は水溶液として用いてもよい。中和は通常溶媒中で行われ、溶媒としては、トルエン、酢酸エチル等を用いることができ、この場合、塩基を溶解させるための水を加えるのが好ましく、有機層に抽出された化合物(II)のフリー体を分液して用いることができる。塩基の使用量は化合物(II)の塩をフリー体に変換できる量であれば特に限定はないが、経済上の観念から化合物(II)に対して3当量以下とするのが好ましい。
工程(a)で用いうる溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えば、酢酸エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチルなど)、炭化水素類(例えば、トルエン、ベンゼン、キシレンなど)、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノールなど)、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を併用してもよく、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましい。溶媒の使用量は、化合物(I)に対して、通常2〜50倍重量であり、好ましくは5〜20倍重量である。
化合物(II)の使用量は、化合物(I)に対して、通常0.9〜3当量、好ましくは1〜1.3当量である。
化合物(I)と化合物(II)との反応は、通常0℃から用いる溶媒のリフラックス温度の範囲内(好ましくは60〜130℃)で行う。当該反応は、上記温度範囲内で、通常2時間〜30時間(好ましくは5時間〜20時間)で終了する。
化合物(III)の単離精製は常法で行うことができる。例えば、反応終了後、反応液を酸性水溶液(例えば、塩酸、硫酸など)、アルカリ水溶液(例えば、飽和重曹水、食塩水など)で順次洗浄し、分液して得られた有機層を濃縮することにより、化合物(III)を単離することができる。さらに、これに晶析溶媒(例えば、エーテル類(例:ジエチルエーテル、THFなど)、アセトン、アセトニトリル、炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタンなど)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、水またはこれらの混合溶媒など)を加えて晶析させるか、あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、化合物(III)を精製することができるがこれらに限定されない。
2.工程(b)
工程(b)は、化合物(II1)またはその塩を、化合物(III)におけるRが水素原子以外の場合は加水分解等により、カルボン酸体に変換した後、N−ヒドロキシスクシンイミドと縮合させて、化合物(IV)を得る方法である。
化合物(IV)は、後の工程(c)のように各種アミン類とそのままアミド化することができるので、汎用性のある中間体として便利であり、また、アミノ酸のようなフリーのカルボキシル基を有するアミン類とカルボキシル基を保護することなく縮合することができるという利点がある。
化合物(II1)のRが水素原子以外、すなわち、アルキル基またはアラルキル基の場合は、加水分解、酸処理、水素添加等することにより、まずカルボン酸の形態(R=水素原子、以下、単にカルボン酸体ともいう。)にする。当該加水分解、酸処理、水素添加等は、当業者に公知の方法で行えばよい。例えば、加水分解は、メタノールまたはエタノールのようなアルコールあるいは水と混合溶媒中、塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)または酸(例えば、塩酸、硫酸等)と反応させることにより行うことができるが、これに限定されない。
例えば、Rがtert−ブチル基等の場合は、酸処理を行うことによりカルボン酸体にすることができ、例えば有機溶媒中、トリフルオロ酢酸等の酸で処理することにより行うことができる。
また、Rがベンジル等の場合は、水素化分解を行うことによりカルボン酸体にすることができ、例えばパラジウム炭素等の触媒の存在下、接触還元することにより行うことができる。
カルボン酸体とN−ヒドロキシスクシンイミドとを縮合させる方法としては、当業者に公知の方法で行えばよく、特に限定されない。例えば、カルボン酸体を塩化チオニル、五塩化リン等の塩素化剤と反応させて酸塩化物に導いた後、N−ヒドロキシスクシンイミドと縮合させてもよいが、化合物(III)の分子内に第1アミドが存在するため、縮合剤によりカルボン酸体を活性化した後に、N−ヒドロキシスクシンイミドと縮合させる方法が好ましい。
以下に、好ましい態様を挙げて説明するが、工程(b)はこの態様に何ら限定されるものではない。
好ましい態様としては具体的には、溶媒中においてカルボン酸体を活性化剤で活性化した後、N−ヒドロキシスクシンイミドと縮合させる。
活性化剤としては、例えばクロロギ酸エステル(例えば、クロロギ酸エチル、クロロギ酸イソブチル、クロロギ酸メチル等)、カルボジイミド類(例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(EDC)等)、カルボジイミダゾール(CDI)、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)等が挙げられるが、これらに限定されない。このうち、クロロギ酸エステル、DCC、EDC等が好ましく、クロロギ酸エチル、クロロギ酸イソブチルが特に好ましい。
活性化剤の使用量は、カルボン酸体に対して、通常0.9〜1.5当量、好ましくは1〜1.3当量である。
カルボン酸体の活性化する際に、必要に応じ塩基を添加してもよい。そのような塩基としては、無機塩基(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)または有機塩基(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、ピペリジン等)が挙げられ、有機塩基、特にN−メチルモルホリン、トリエチルアミン、ピリジンが好ましい。
当該塩基の使用量は、カルボン酸体に対して、通常0.9〜2当量、好ましくは1〜1.5当量である。
カルボン酸体の活性化に使用される溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えば、酢酸エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチルなど)、炭化水素類(例えば、トルエン、ベンゼン、キシレンなど)、アセトニトリル、THF、ジクロロメタン、メチル−tert−ブチルエーテル等などが挙げられ、これらは1種または2種以上を併用してもよく、アセトニトリル、THF、酢酸エチル等の単独または混合溶媒がより好ましい。溶媒の使用量は、カルボン酸体に対して、通常3〜50倍重量であり、好ましくは5〜20倍重量である。
カルボン酸体の活性化は、通常−40℃から用いる溶媒のリフラックス温度の範囲内(好ましくは−10〜10℃)で行う。当該活性化は、上記温度範囲内で、通常5分〜3時間(好ましくは10分〜1時間)で終了する。
カルボン酸体の活性化の後に、反応混合物にN−ヒドロキシスクシンイミドを添加する。添加順序はこの逆または同時であってもよい。
N−ヒドロキシスクシンイミドの使用量は、カルボン酸体に対して、通常0.9〜2当量、好ましくは1〜1.3当量である。
N−ヒドロキシスクシンイミドとの縮合は、通常−50〜40℃の範囲内(好ましくは−20〜20℃)で行う。当該縮合は、上記温度範囲内で、通常1時間〜20時間(好ましくは2時間〜5時間)で終了する。
化合物(IV)の単離精製は常法で行うことができる。例えば、反応終了後、反応液を酸性水溶液(例えば、塩酸、硫酸など)、アルカリ水溶液(例えば、飽和重曹水、食塩水など)で順次洗浄し、分液して得られた有機層を濃縮することにより、化合物(IV)を単離することができる。さらに、これに晶析溶媒(例えば、エーテル類(例:ジエチルエーテル、THFなど)、アセトン、アセトニトリル、炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタンなど)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、水またはこれらの混合溶媒など)等を加えて晶析させるか、あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、化合物(IV)を精製することができるが、これらに限定されない。
3.工程(c)
工程(c)は、化合物(IV)と化合物(V)またはその塩とを反応させて、化合物(VI)またはその塩を得る方法である。詳細には、例えば溶媒中において、化合物(V)の溶液に、化合物(IV)またはその溶液を添加することにより行うことができるが、添加順序はこの逆または同時であってもよい。
工程(c)は、化合物(V)においてRが水酸基である場合も、化合物(V)の自己重合等の副反応を伴うことなく行い得るという利点がある。
したがって、工程(c)における化合物(V)は、Rが水酸基である、すなわちフリーのアミノ酸を好適に適用することができる。
工程(c)で用いうる溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えば、水、酢酸エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチルなど)、アセトニトリル、THF、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトンなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を併用してもよく、水、アセトニトリル、THF等の単独または混合溶媒がより好ましい。溶媒の使用量は、化合物(IV)に対して、通常2〜50倍重量であり、好ましくは5〜20倍重量である。
化合物(V)が、フリーのアミノ酸である場合は、予めアルカリ性水溶液(例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等)でpH5〜10の水溶液として用いるのが好ましい。なお、当該水溶液の水の量は、溶媒の使用量に含まれる。
化合物(V)の使用量は、化合物(IV)に対して、通常0.8〜2当量、好ましくは1〜1.5当量である。
工程(c)は、通常−20℃から用いる溶媒のリフラックス温度(好ましくは0〜30℃)の範囲内で行う。当該反応は、上記温度範囲内で、通常30分〜一晩(好ましくは1時間〜10時間)で終了する。
化合物(VI)のRが水酸基の場合は、カルボン酸塩の形態で存在しているため、反応混合物に酸(例えば、塩酸、硫酸等)を加え、pHを3以下にした後、例えば、反応混合物を濃縮するかまたは晶析溶媒(例えば、エーテル類(例:ジエチルエーテル、THFなど)、アセトン、アセトニトリル、炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタンなど)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、水またはこれらの混合溶媒など)を加えて晶析させるか、あるいはシリカゲルカムクロマトグラフィーに付すことにより、化合物(VI)のフリー体を精製することができるが、これらに限定されない。
化合物(VI)でRが水酸基以外の場合は、常法により単離精製することができる。例えば、反応終了後、反応液を酸性水溶液(例えば、塩酸、硫酸など)、アルカリ水溶液(例えば、飽和重曹水、食塩水など)で順次洗浄し、分液して得られた有機層を濃縮することにより、化合物(VI)を単離することができる。さらに、これに晶析溶媒(例えば、エーテル類(例:ジエチルエーテル、THFなど)、アセトン、アセトニトリル、炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタンなど)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、水またはこれらの混合溶媒など)を加えて晶析させるか、あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、化合物(VI)を精製することができるが、これらに限定されない。
4.工程(d)
工程(d)は、化合物(III)またはその塩を、化合物(III)におけるRが水素原子以外の場合は、カルボン酸体に変換した後、化合物(V)と縮合させて、化合物(VI)またはその塩を得る方法である。
工程(c)および工程(d)で合成される化合物(VI)は、後述の工程(e)において、化合物(V)のアミノ基が保護された状態でRで表される基をYで表される基に変換することができるので、酵素阻害剤である化合物(XII)を効率的に製造し得る合成中間体として有用である。
工程(d)においては、化合物(V)のRが水酸基である場合は、自己重合等の副反応を起こし得るので好ましくない。
したがって、工程(d)は、化合物(V)のRが水酸基以外、すなわち、水素原子、アルコキシ基、アラルキルオキシ基または−N(R)−OR(式中、各記号は前記と同意義を示す。)である場合に好適に適用できる。
化合物(III)のRが水素原子以外、すなわち、アルキル基またはアラルキル基の場合は、工程(b)の場合と同様の方法により、まずカルボン酸体にする。
カルボン酸体と化合物(V)を縮合させる方法としては、工程(b)のカルボン酸体とN−ヒドロキシスクシンイミドを縮合させる方法において、N−ヒドロキシスクシンイミドの代わりに化合物(V)またはその塩を用いて、同様の条件により行うことができる。
すなわち、好ましい態様としては、溶媒中においてカルボン酸体を活性化剤で活性化した後、化合物(V)またはその塩と縮合させることによって、化合物(VI)を製造することができる。
以下に、当該態様について説明するが、工程(d)はこの態様に何ら限定されるものではない。
活性化剤としては、工程(b)と同様のものが挙げられ、クロロギ酸エステル、特にクロロギ酸エチル、クロロギ酸メチル、クロロギ酸イソブチル等が好ましい。
活性化剤の使用量は、カルボン酸体に対して、通常0.9〜1.5当量、好ましくは1〜1.2当量である。
カルボン酸体を活性化する際に、必要に応じ塩基を添加してもよい。そのような塩基としては、工程(b)と同様の塩基が挙げられ、N−メチルモルホリン、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジンが好ましい。
当該塩基の使用量は、カルボン酸体に対して、通常0.9〜2当量、好ましくは1〜1.2当量である。
カルボン酸体の活性化に使用される溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えば、酢酸エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチルなど)、炭化水素類(例えば、トルエン、ベンゼン、キシレンなど)、アセトニトリル、THF、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム等)、エーテル系溶媒(例えば、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル等)等などが挙げられ、これらは1種または2種以上を併用してもよく、アセトニトリル、THF、酢酸エチル、メチル−tert−ブチルエーテル等の単独または混合溶媒がより好ましい。溶媒の使用量は、カルボン酸体に対して、通常3〜50倍重量であり、好ましくは5〜20倍重量である。
カルボン酸体の活性化は、通常−50〜40℃の範囲内(好ましくは−20〜20℃)で行う。当該活性化は、上記温度範囲内で、通常5分〜5時間(好ましくは15分〜2時間)で終了する。
カルボン酸体の活性化の後に、反応混合物に化合物(V)を添加する。添加順序はこの逆または同時であってもよい。
化合物(V)の使用量は、カルボン酸体に対して、通常0.9〜3当量、好ましくは1〜1.5当量である。
化合物(V)が塩の形態のとき、中和のためにカルボン酸体を活性化する際に用いた塩基と同様の塩基を併せて添加するのが好ましい。
当該塩基の使用量は、化合物(V)に対して、通常0.9〜2当量、好ましくは1〜1.5当量である。
化合物(V)との縮合は、通常−50〜40℃の範囲内(好ましくは−20〜20℃)で行う。当該縮合は、上記温度範囲内で、通常0.5時間〜20時間(好ましくは1時間〜3時間)で終了する。
化合物(VI)の単離精製は常法で行うことができる。例えば、反応終了後、反応液を酸性水溶液(例えば、塩酸、硫酸など)、アルカリ水溶液(例えば、飽和重曹水、食塩水など)で順次洗浄し、分液して得られた有機層を濃縮することにより、化合物(VI)を単離することができる。さらに、これに晶析溶媒(例えば、エーテル類(例:ジエチルエーテル、THFなど)、アセトン、アセトニトリル、炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタンなど)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、水またはこれらの混合溶媒など)等を加えて晶析させるか、あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、化合物(II)を精製することができるが、これらに限定されない。
工程(c)および工程(d)の原料である化合物(V)は、市販のアミノ酸類が用いられ、あるいはそれらを公知の方法によってエステル化するか、または、公知の方法によって、一般式:NH(R)−OR(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表されるヒドロキシルアミン誘導体と縮合することによって製造することができる。
5.工程(e)
工程(e)は、化合物(VI)またはその塩のRで表される基をYで表される基に変換して、化合物(VIII)またはその塩を得る方法である。
工程(e)は、上述したように、化合物(VI)から、アミノ基が保護された状態で、Rで表される基をYで表される基に変換して、化合物(VIII)を製造し得るので、化合物(XII)を効率的に製造することができ、有利な反応ルートの一つとなり得る。
工程(e)は、Yの態様により、Rで表される基をYで表される基に変換する方法が異なるので、以下に場合分けして説明する。
5−1.Yが置換基を有していてもよいヘテロ環基である場合(以下、工程(e−1)ともいう。)
工程(e−1)は、以下の反応スキームに表すように、Rで表される基をヘテロ環基に変換する方法であり、具体的には、溶媒中において化合物(VI)を一般式(XIV a):Y−M〔式中、Yは置換基を有していてもよいヘテロ環基を示し、Mはリチウ厶またはMgX(ここで、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。)を示す。〕で表される試薬(以下、試薬(XIV a)ともいう。)と反応させて、Yが置換基を有していてもよいヘテロ環基である一般式(VIII a)で表される化合物(以下、化合物(VIII a)ともいう。)を得ることができる。

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)
工程(e−1)における化合物(VI)のRは、化合物(VIII a)にさらに試薬(XIV a)が反応するのを防ぐために、−N(R)−OR(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される基であるのが好ましい。
試薬(XIV a)は、一般式:Y−HまたはY−X(式中、各記号は前記と同意義を示す)で表される化合物をアルキルリチウム類(例えば、n−ブチルリチウム、メチルリチウム等)またはリチウムアミド類(例えば、リチウムジイソプロピルアミド等)とエーテル系溶媒(例えば、THF、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル(MTBE)等)中、−90〜20℃で反応させるか、あるいは一般式:Y−X(式中、各記号は前記と同意義を示す)で表される化合物をマグネシウムと通常のグリニャール試薬を生成させる条件で反応させることにより、得ることができる。
工程(e−1)で用いうる溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えばエーテル系溶媒(例えば、THF、ジエチルエーテル、MTBE等)、炭化水素系溶媒(例えば、n−ヘキサン、トルエン等)等が挙げられ、これらは1種または2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、化合物(VI)に対して、通常5〜50倍重量であり、好ましくは8〜20倍重量である。
試薬(XIV a)の使用量は、化合物(VI)に対して、通常1〜10当量、好ましくは1〜6当量である。
工程(e−1)は、通常−90〜30℃(好ましくは−80〜−20℃)の範囲内で行う。当該反応は、上記温度範囲内で、通常10分〜5時間(好ましくは30分〜2時間)で終了する。
また、Rが水素原子の場合は、化合物(VIII a)の還元体(アルコール体)が得られるので、公知の方法(例えば、デスマーティン試薬、スワン酸化、Pfitzner−Moffatt酸化等)により酸化することにより化合物(VIII a)へと導くことができる。
5−2.Rが水素原子であり、Yが、一般式(XV):

(式中、点線は二重結合または単結合を示し、Zは酸素原子または硫黄原子を示し、R13およびR14は同一または異なって、ヘテロ環基の置換基に相当する基を示すか、または隣接する炭素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい同素環または複素環を形成してもよい。)で表されるヘテロ環基(以下、ヘテロ環基(XV)ともいう。)である場合(以下、工程(e−2)ともいう。)
が水素原子である場合は、Journal of Medicinal Chemistry,44(8),1286−1296(2001)に記載の方法に準じて、以下の工程(e−2a)〜(e−2e)により、化合物(VI)のR(水素原子)をヘテロ環基(XV)に変換することができる。
すなわち、下記反応スキームに示すように、
工程(e−2a):Rが水素原子である一般式(VI a)で表される化合物(以下、化合物(VI a)ともいう。)またはその塩を一般式(XVI)で表されるシアノヒドリン(以下、シアノヒドリン(XVI)ともいう。)に変換し;
工程(e−2b):得られたシアノヒドリン(XII)またはその塩を一般式(XVIII)で表されるイミデート(以下、イミデート(XVIII)ともいう。)またはその塩に変換し;
工程(e−2c):得られたイミデート(XVIII)またはその塩を、一般式(XV a)で表される化合物(以下、化合物(XV a)ともいう。)またはその塩と反応させて、一般式(XIX)で表される化合物(以下、化合物(XIX)ともいう。)またはその塩を得;
あるいは、
工程(e−2d):化合物(VI a)またはその塩を一般式(XV b)で表される化合物(以下、化合物(XV b)ともいう。)と反応させて、化合物(XIX)またはその塩を得;
工程(e−2e):得られた化合物(XIX)またはその塩を酸化することにより、Yがヘテロ環基(XV)である一般式(VIII b)で表される化合物(以下、化合物(VIII b)ともいう。)を得ることができる。

(式中、R15はトリアルキルシリル基を示し、R16はアルキル基を示し、他の各記号および点線は前記と同意義を示す。)
13およびR14における「ヘテロ環基の置換基に相当する基」とは、Yにおける「置換基を有していてもよいヘテロ環基」の置換基に相当するものであり、具体的には、例えば、ニトロ基、直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基(炭素数:1〜6、例:メトキシ基など)、ハロゲン原子(例:塩素原子、フッ素原子など)、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基(好ましい炭素数:1〜4、例:メチル基、エチル基、プロピル基など)、アルコキシカルボニル基(例:メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)などが挙げられる。
13およびR14が一緒になって形成してもよい同素環としては、例えばベンゼン、ナフタレン、シクロヘキサン等が挙げられる。
13およびR14が一緒になって形成してもよい複素環としては、例えばピリジン、ピペリジン等が挙げられる。
当該同素環および複素環が有してもよい置換基としては、上記「ヘテロ環基の置換基に相当する基」と同様のものが挙げられる。
15における「トリアルキルシリル基」とは、同一または異なるアルキル基で置換されたシリル基であり、例えばトリメチルシリル基等が挙げられる。
16における「アルキル基」とは、炭素数が好ましくは1〜3である、直鎖状または分岐鎖状のアルキルであり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基等が挙げられ、メチル基、エチル基が好ましい。
5−2−1.工程(e−2a)
工程(e−2a)は、例えば溶媒中において、化合物(VI a)をシアノヒドリン類および塩基と反応させることにより実現される。
工程(e−2a)で用いうる溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えばジクロロメタン、THF、ジエチルエーテル等が挙げられ、これらは1種または2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、化合物(VI a)に対して、通常5〜50倍重量であり、好ましくは8〜20倍重量である。
シアノヒドリン類としては、例えばアセトンシアノヒドリン等が挙げられる。シアノヒドリン類の使用量は、化合物(VI a)に対して、通常0.8〜5当量、好ましくは1〜3当量である。
塩基としては、例えばトリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン等が挙げられ、トリエチルアミンが好ましい。塩基の使用量は、化合物(VI a)に対して、通常0.5〜3当量、好ましくは0.6〜2当量である。
工程(e−2a)は、通常0〜50℃(好ましくは10〜30℃)の範囲内で行う。当該反応は、上記温度範囲内で、通常30分〜24時間(好ましくは1時間〜8時間)で終了する。
工程(e−2a)で得られるシアノヒドリン(XVI)の単離精製は常法で行うことができる。例えば、反応終了後、反応液を食塩水等で洗浄し、分液して得られた有機層を濃縮することにより、シアノヒドリン(XVI)を単離することができる。さらに、晶析させるか、あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、シアノヒドリン(XVI)を精製することができるが、これらに限定されない。
5−2−2.工程(e−2b)
工程(e−2b)は、例えば溶媒の存在または非存在下、シアノヒドリン(XVI)を、一般式(XVII):R16OH(式中、R16は前記と同意義を示す。)で表されるアルコール(以下、アルコール(XVII)ともいう。)および塩酸と反応させることにより実現される。
工程(e−2b)で用いうる溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、THF等が挙げられ、これらは1種または2種以上を併用してもよい。溶媒を使用する場合、その使用量は、シアノヒドリン(XVI)に対して、通常5〜50倍重量であり、好ましくは8〜20倍重量である。
アルコール(XVII)としては、具体的にはメタノール、エタノール、プロパノールが挙げられ、メタノールまたはエタノールが好ましい。アルコール(XVII)の使用量は、シアノヒドリン(XVI)に対して、通常0.1〜50当量であり、好ましくは1〜20当量である。
塩酸は、ガスとして反応系に導入しても良いし、アルコール(XVII)の溶液として添加してもよく、また、塩化アセチル、トリメチルシリルクロリド等を添加して系中で発生させてもよい。塩酸の使用量は、シアノヒドリン(XVI)に対して、通常2〜50当量、好ましくは5〜30当量である。
工程(e−2b)は、通常−20〜30℃(好ましくは0〜20℃)の範囲内で行う。当該反応は、上記温度範囲内で、通常30分〜24時間(好ましくは1時間〜16時間)で終了する。
工程(e−2b)で得られるイミデート(XVIII)は、常法により単離精製することができるが、特に精製することなく次工程に供することもできる。
5−2−3.工程(e−2c)
工程(e−2c)は、例えば溶媒中において、イミデート(XVIII)を化合物(XV a)と反応させることにより実現される。
工程(e−2c)で用いうる溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えば、エタノール、アセトニトリル、THF等が挙げられ、これらは1種または2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、イミデート(XVIII)に対して、通常5〜50倍重量であり、好ましくは8〜20倍重量である。
化合物(XV a)としては、具体的には、2−アミノフェノール、2−アミノチオフェノール、2−アミノ−3−ヒドロキシピリジン、3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸メチル、アミノエタノール等が挙げられ、3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸メチルが好ましい。化合物(XV a)の使用量は、イミデート(XVIII)に対して、通常0.8〜2当量、好ましくは1〜1.5当量である。
工程(e−2c)において、反応を促進させるために塩基を添加してもよい。当該塩基としては例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン等が挙げられ、トリエチルアミンが好ましい。当該塩基の使用量は、イミデート(XVIII)に対して、通常0.5〜5当量、好ましくは1〜3当量である。
工程(e−2c)は、通常0℃から用いる溶媒のリフラックス温度(好ましくは30℃〜リフラックス)の範囲内で行う。当該反応は、上記温度範囲内で、通常30分〜24時間(好ましくは1時間〜8時間)で終了する。
5−2−4.工程(e−2d)
工程(e−2d)は、例えば下記スキームに示すように、溶媒中において、化合物(VI a)を化合物(XV b)と反応させて、一般式(XIX’)で表される化合物(以下、化合物(XIX’)ともいう。)を得、得られた化合物(XIX’)のシリルエーテルを脱保護することにより実現される。

(式中、各記号および点線は前記と同意義を示す。)
工程(e−2d)で用いうる溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えばジクロロメタン、クロロホルム、THF等が挙げられ、これらは1種または2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、化合物(VI a)に対して、通常5〜50倍重量であり、好ましくは8〜20倍重量である。
化合物(XV b)としては、具体的には、2−トリメチルシリルチアゾール、2−トリメチルシリルオキサゾール等が挙げられ、2−トリメチルシリルチアゾールが好ましい。化合物(XV b)の使用量は、化合物(VI a)に対して、通常0.8〜3当量、好ましくは1〜1.5当量である。
化合物(XV b)は、J.Org.Chem.58,3196(1993)記載の方法によって得ることができ、また、市販品を用いてもよい。
工程(e−2d)は、通常0〜50℃(好ましくは10〜30℃)の範囲内で行う。当該反応は、上記温度範囲内で、通常30分〜24時間(好ましくは1時間〜8時間)で終了する。
得られた化合物(XIX’)の脱保護は、上記反応溶液に酸(例えば、塩酸、メタンスルホン酸等)またはフッ化物塩(例えば、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム等)を添加すればよい。
酸またはフッ化物塩の使用量は、化合物(VI a)に対して、通常1〜10当量、好ましくは1〜3当量である。
当該脱保護反応は、通常0〜50℃(好ましくは10〜30℃)の範囲内で行う。当該反応は、上記温度範囲内で、通常30分〜24時間(好ましくは30分〜8時間)で終了する。
工程(e−2c)または工程(e−2d)で得られる化合物(XIX)の単離精製は常法で行うことができる。例えば、反応終了後、反応液を酸性水溶液(例えば、塩酸、硫酸など)、アルカリ水溶液(例えば、飽和重曹水、食塩水など)で順次洗浄し、分液して得られた有機層を濃縮することにより、化合物(XIX)を単離することができる。さらに、晶析させるか、あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、化合物(XIX)を精製することができるが、これらに限定されない。
5−2−5.工程(e−2e)
工程(e−2e)は、化合物(XIX)を公知の様々な方法(例えば、デスマーティン試薬、スワン酸化、Pfitzner−Moffatt酸化等)により酸化することにより化合物(VI b)を得る方法である。
以下に、好ましい態様であるPfitzner−Moffatt酸化(J.Med.Chem.,30,1617−1622(1987)参照)について説明するが、工程(e−2e)は、これに限定されるものではない。
工程(e−2e)におけるPfitzner−Moffatt酸化は、例えばジメチルスルホキシドと他の溶媒中において、化合物(XIX)をカルボジイミド系縮合剤および酸と反応させることにより実現される。
当該酸化反応で用いうる溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えばトルエン、クロロホルム、ジクロロメタン等が挙げられ、これらは1種または2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、化合物(XIX)に対して、通常5〜50倍重量であり、好ましくは8〜20倍重量である。
ジメチルスルホキシドの使用量は、化合物(XIX)に対して、通常2〜100当量、好ましくは2〜80当量である。
カルボジイミド系縮合剤としては、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)等が挙げられ、EDCが好ましい。カルボジイミド系縮合剤の使用量は、化合物(XIX)に対して、通常1〜5当量、好ましくは1〜3当量である。
酸としては、例えばジクロロ酢酸、クロロ酢酸等が挙げられ、ジクロロ酢酸が好ましい。酸の使用量は、化合物(XIX)に対して、通常0.8〜10当量、好ましくは1〜3当量である。
当該酸化反応は、通常0〜30℃(好ましくは0〜20℃)の範囲内で行う。当該反応は、上記温度範囲内で、通常30分〜24時間(好ましくは1時間〜5時間)で終了する。
5−3.Rが水素原子であり、Yが置換基を有していてもよいアシル基である場合(以下、工程(e−3)ともいう。)
が水素原子である場合は、WO98/09949に記載の方法に準じて、以下の工稈(e−3a)〜(e−3g)により、化合物(VI)のR(水素原子)を置換基を有していてもよいアシル基に変換することができる。
すなわち、下記反応スキームに示すように、
工程(e−3a):化合物(VI a)またはその塩を、工程(g−2a)と同様の方法により、シアノヒドリン(XVI)またはその塩に変換し;
工程(e−3b):得られたシアノヒドリン(XVI)またはその塩を加水分解することにより、一般式(XX)で表される化合物(以下、化合物(XX)ともいう。)またはその塩を得;
工程(e−3c):得られた化合物(XX)またはその塩を、N,O−ジメチルヒドロキシルアミンまたはその塩と反応させて、一般式(XXI)で表される化合物(以下、化合物(XXI)ともいう。)またはその塩を得;
工程(e−3d):得られた化合物(XXI)またはその塩にオキサゾリジン環を形成させることにより、一般式(XXII)で表される化合物(以下、化合物(XXII)ともいう。)またはその塩を得;
工程(e−3e):得られた化合物(XXII)またはその塩を一般式(XIV b)で表される試薬(以下、試薬(XIV b)ともいう。)と反応させて、一般式(XXIII)で表される化合物(以下、化合物(XXIII)ともいう。)またはその塩を得;
工程(e−3f):得られた化合物(XXIII)またはその塩のオキサゾリジン環を開環することにより、一般式(XXIV)で表される化合物(以下、化合物(XXIV)ともいう。)またはその塩を得;
工程(e−3g):得られた化合物(XXIV)またはその塩を酸化することにより、Yが置換基を有していてもよいアシル基である一般式(VIII c)で表される化合物(以下、化合物(VIII c)ともいう。)を得ることができる。

(式中、R17はYで示される置換基を有していてもよいアシル基からカルボニル基を除いて形成される基を示し、他の各記号は前記と同意義を示す。)
17における「置換基を有していてもよいアシル基からカルボニル基を除いて形成される基」とは、例えば3−(2−ピリジルオキシ)プロピル基等が挙げられる。
5−3−1.工程(e−3a)
工程(e−3a)においては、工程(e−2a)と同様の方法により、化合物(VI a)から、シアノヒドリン(XVI)が得られる。
5−3−2.工程(e−3b)
工程(e−3b)は、例えば溶媒中において、シアノヒドリン(XVI)を酸で加水分解することにより実現される。
工程(e−3b)で用いうる溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えば1,4−ジオキサン、THF、MTBE等が挙げられ、これらは1種または2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、シアノヒドリン(XVI)に対して、通常5〜50倍重量であり、好ましくは8〜20倍重量である。
酸としては、例えば塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられ、塩酸が好ましい。酸の使用量は、シアノヒドリン(XVI)に対して、通常3〜100当量、好ましくは5〜30当量である。
工程(e−3b)は、通常0℃から用いる溶媒のリフラックス温度(好ましくは5〜60℃)の範囲内で行う。当該反応は、上記温度範囲内で、通常30分〜24時間(好ましくは1時間〜16時間)で終了する。
工程(e−3b)で得られる化合物(XX)の単離精製は常法で行うことができる。例えば、反応終了後、反応液を酸性水溶液(例えば、塩酸、硫酸など)で洗浄し、分液して得られた有機層を濃縮することにより、化合物(XX)を単離することができる。さらに、晶析させるか、あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、化合物(XX)を精製することができるが、これらに限定されない。
5−3−3.工程(e−3c)
工程(e−3c)は、例えば溶媒中において、化合物(XX)とN,O−ジメチルヒドロキシルアミンを縮合剤で縮合させることにより、実現される。
工程(e−3c)で用いうる溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えばジクロロメタン、THF、ジエチルエーテル等が挙げられ、これらは1種または2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、化合物(XX)に対して、通常5〜50倍重量であり、好ましくは8〜20倍重量である。
縮合剤としては、例えばカルボジイミド系縮合剤(例えば、DCC、EDC等)、クロロギ酸エステル(例えば、クロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸イソブチル等)等が挙げられる。
当該縮合反応は、通常−20〜20℃(好ましくは0〜10℃)の範囲内で行う。当該反応は、上記温度範囲内で、通常15分〜16時間(好ましくは0.5時間〜2時間)で終了する。
工程(e−3c)で得られる化合物(XXI)の単離精製は常法で行うことができる。例えば、反応終了後、反応液を酸性水溶液(例えば、塩酸、硫酸など)、アルカリ水溶液(例えば、飽和重曹水、食塩水など)で順次洗浄し、分液して得られた有機層を濃縮することにより、化合物(XXI)を単離することができる。さらに、晶析させるか、あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、化合物(XXI)を精製することができるが、これらに限定されない。
5−3−4.工程(e−3d)
工程(e−3d)は、例えば溶媒中または無溶媒において、化合物(XXI)とアセトンジメチルアセタールを酸の存在下反応させることにより実現される。
工程(e−3d)で用いうる溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えばアセトン、酢酸エチル、THF等が挙げられ、これらは1種または2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、化合物(XXI)に対して、通常5〜50倍重量であり、好ましくは8〜20倍重量である。
アセトンジメチルアセタールの使用量は、化合物(XXI)に対して、通常1〜5当量、好ましくは1〜3当量である。
酸としては、例えばp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸等が挙げられ、p−トルエンスルホン酸が好ましい。酸の使用量は、化合物(XXI)に対して、通常0.1〜3当量、好ましくは0.3〜2当量である。
工程(e−3d)は、通常−20〜40℃(好ましくは0〜20℃)の範囲内で行う。当該反応は、上記温度範囲内で、通常30分〜24時間(好ましくは1時間〜16時間)で終了する。
工程(e−3d)で得られる化合物(XXII)の単離精製は常法で行うことができる。例えば、反応終了後、反応液を酸性水溶液(例えば、塩酸、硫酸など)、アルカリ水溶液(例えば、飽和重曹水、食塩水など)で順次洗浄し、分液して得られた有機層を濃縮することにより、化合物(XXII)を単離することができる。さらに、晶析させるか、あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、化合物(XXII)を精製することができるが、これらに限定されない。
5−3−5.工程(e−3e)
工程(e−3e)は、例えば溶媒中において、化合物(XXII)を試薬(XIV b)と反応させることにより、実現される。
工程(e−3e)で用いうる溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えばエーテル系溶媒(例えばTHF、ジエチルエーテル、MTBE等)、ハロゲン系溶媒(例えばクロロホルム、ジクロロメタン等)等が挙げられ、これらは1種または2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、化合物(XXII)に対して、通常5〜50倍重量であり、好ましくは8〜20倍重量である。
試薬(XIV b)は、一般式R17−X(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物から、上述の工程(e−1)における試薬(XIV a)と同様の方法により調製することができ、例えば、3−(2−ピリジルオキシ)プロピルマグネシウムブロミド、3−(2−ピリジルオキシ)プロピルリチウム等が好ましい。試薬(XIV b)の使用量は、化合物(XXII)に対して、通常1〜5当量、好ましくは1〜3当量である。
工程(e−3e)は、通常−80〜40℃(好ましくは−78〜20℃)の範囲内で行う。当該反応は、上記温度範囲内で、通常15分〜24時間(好ましくは1時間〜16時間)で終了する。
工程(e−3e)で得られる化合物(XXIII)の単離精製は常法で行うことができる。例えば、反応終了後、反応液を酸性水溶液(例えば、塩酸、硫酸など)、アルカリ水溶液(例えば、飽和重曹水、食塩水など)で順次洗浄し、分液して得られた有機層を濃縮することにより、化合物(XXIII)を単離することができる。さらに、晶析させるか、あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、化合物(XXIII)を精製することができるが、これらに限定されない。
5−3−6.工程(e−3f)
工程(e−3f)は、例えば溶媒中において、化合物(XXIII)を酸と反応させることにより、実現される。
工程(e−3f)で用いうる溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えば水、メタノール、エタノール等が挙げられ、これらは1種または2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、化合物(XXIII)に対して、通常5〜50倍重量であり、好ましくは8〜20倍重量である。
酸としては、例えば塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等が挙げられ、p−トルエンスルホン酸、硫酸が好ましい。酸の使用量は、化合物(XXIII)に対して、通常0.2〜30当量、好ましくは1〜20当量である。
工程(e−3f)は、通常20℃から用いる溶媒のリフラックス温度の範囲内で行う。当該反応は、上記温度範囲内で、通常30分〜24時間(好ましくは3時間〜16時間)で終了する。
工程(e−3f)で得られる化合物(XXIV)の単離精製は常法で行うことができる。例えば、反応終了後、反応液を酸性水溶液(例えば、塩酸、硫酸など)、アルカリ水溶液(例えば、飽和重曹水、食塩水など)で順次洗浄し、分液して得られた有機層を濃縮することにより、化合物(XXIV)を単離することができる。さらに、晶析させるか、あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、化合物(XXIV)を精製することができるが、これらに限定されない。
5−3−7.工程(e−3g)
工程(e−3g)において、工程(e−2e)と同様の方法(例えば、デスマーティン試薬、スワン酸化、Pfitzner−Moffatt酸化等)により、化合物(XXIV)を化合物(VIII c)へと導くことができる。
5−4.Rが水酸基であり、Yがトリフルオロメチル基である場合(以下、工程(e−4)ともいう。)
が水酸基である場合は、Tetrahedron Lett.,36(42),7761−7764(1995)に記載の方法に準じて、下記の工程(g−4a)〜(g−4d)により、化合物(VI)のR(水酸基)をトリフルオロメチル基に変換することができる。
すなわち、下記スキームに示すように、
工程(e−4a):Rが水酸基である一般式(VI b)で表される化合物(以下、化合物(VI b)ともいう。)またはその塩と一般式(XXV):R18CHO(式中、R18は水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基等)、置換基を有していてもよいアリール基(例えば、p−メトキシフェニル基等)等を示す。)で表されるアルデヒド(以下、アルデヒド(XXV)ともいう。)とを反応させて、一般式(XXVI)で表される化合物(以下、化合物(XXVI)ともいう。)またはその塩を得;
工程(e−4b):得られた化合物(XXVI)またはその塩をトリメチル(トリフルオロメチル)シランと反応させて、一般式(XXVII)で表される化合物(以下、化合物(XXVII)ともいう。)またはその塩を得;
工程(e−4c):得られた化合物(XXVII)またはその塩のトリメチルシリル基を脱保護して、一般式(XXVIII)で表される化合物(以下、化合物(XXVIII)ともいう。)またはその塩を得;
工程(e−4d):得られた化合物(XXVIII)またはその塩のオキサゾリジン環を開環することにより、Yがトリフルオロメチル基である一般式(VIII d)で表される化合物(以下、化合物(VIII d)ともいう。)を得ることができる。

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)
5−4−1.工程(e−4a)
工程(e−4a)は、例えば溶媒中において、酸の存在下、化合物(VI b)とアルデヒド(XXV)とを脱水反応することにより実現される。脱水反応は、例えばディーンスターク管を用いて、系内から水と溶媒とを共沸させ、溶媒のみを系内に戻すことにより行うことができる。
工程(e−4a)で用いうる溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、クロロホルム、ジエチルエーテル、アセトニトリル等が挙げられ、これらは1種または2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、化合物(VI b)に対して、通常5〜50倍重量であり、好ましくは8〜20倍重量である。
酸としては、例えばp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等が挙げられ、p−トルエンスルホン酸が好ましい。酸の使用量は、化合物(VI b)に対して、通常0.01〜5当量、好ましくは0.03〜1当量である。
アルデヒド(XXV)としては、例えばパラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等が挙げられ、パラホルムアルデヒドが好ましい。アルデヒドは(XXV)の使用量は、化合物(VI b)に対して、通常1〜5当量、好ましくは1〜3当量である。
工程(e−4a)は、通常、用いる溶媒のリフラックス温度で行う。当該反応は、上記温度範囲内で、通常30分〜24時間(好ましくは1時間〜16時間)で終了する。
工程(e−4a)で得られる化合物(XXVI)の単離精製は常法で行うことができる。例えば、反応終了後、反応液を酸性水溶液(例えば、塩酸、硫酸など)で洗浄し、分液して得られた有機層を濃縮することにより、化合物(XXVI)を単離することができる。さらに、晶析させるか、あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、化合物(XXVI)を精製することができるが、これらに限定されない。
5−4−2.工程(e−4b)
工程(e−4b)は、例えば溶媒中において、フッ化物塩の存在下、化合物(XXVI)をトリメチル(トリフルオロメチル)シランと反応させることにより実現される。この場合、反応促進のために反応系を超音波にかけるのが好ましい。
工程(e−4b)で用いうる溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えばTHF、MTBE等が挙げられ、これらは1種または2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、化合物(XXVI)に対して、通常5〜50倍重量であり、好ましくは8〜20倍重量である。
フッ化物塩としては、例えばフッ化セシウム、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム等が挙げられ、フッ化セシウムが好ましい。フッ化物塩の使用量は触媒量でよく、化合物(XXVI)に対して、通常1〜5当量、好ましくは1〜2当量である。
トリメチル(トリフルオロメチル)シランの使用量は、化合物(XXVI)に対して、通常0.8〜5当量、好ましくは1〜2当量である。
工程(e−4b)は、通常0〜80℃(好ましくは5〜40℃)の範囲内で行う。当該反応は、上記温度範囲内で、通常30分〜24時間(好ましくは1時間〜16時間)で終了する。
工程(e−4b)で得られる化合物(XXVII)の単離精製は常法で行うことができる。例えば、反応終了後、反応液を酸性水溶液(例えば、塩酸、硫酸など)で洗浄し、分液して得られた有機層を濃縮することにより、化合物(XXVII)を単離することができる。さらに、晶析させるか、あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、化合物(XXVII)を精製することができるがこれらに限定されない。
5−4−3.工程(e−4c)
工程(e−4c)は、例えば溶媒中において、化合物(XXVII)をフッ化物塩で処理することにより実現される。この場合、反応促進のために反応系を超音波にかけるのが好ましい。
工程(e−4c)で用いうる溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えばTHF、MTBE、ジクロロメタン、クロロホルム等が挙げられ、これらは1種または2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、化合物(XXVII)に対して、通常5〜50倍重量であり、好ましくは8〜20倍重量である。
フッ化物塩としては、例えばフッ化セシウム、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム等が挙げられ、フッ化セシウムが好ましい。フッ化物塩の使用量は、化合物(XXVII)に対して、通常1〜5当量、好ましくは1〜2当量である。
工程(e−4c)は、通常0〜80℃(好ましくは0〜40℃)の範囲内で行う。当該反応は、上記温度範囲内で、通常30分〜24時間(好ましくは1時間〜16時間)で終了する。
工程(e−4c)で得られる化合物(XXVIII)の単離精製は常法で行うことができる。例えば、反応終了後、反応液を酸性水溶液(例えば、塩酸、硫酸など)で洗浄し、分液して得られた有機層を濃縮することにより、化合物(XXVIII)を単離することができる。さらに、晶析させるか、あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、化合物(XXVIII)を精製することができるが、これらに限定されない。
5−4−4.工程(e−4d)
工程(e−4d)は、例えば溶媒中において、化合物(XXVIII)を酸で処理することにより実現される。
工程(e−4d)で用いうる溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えばアセトニトリル、THF、酢酸エチル、クロロホルム等が挙げられ、これらは1種または2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、化合物(XXVIII)に対して、通常5〜50倍重量であり、好ましくは8〜20倍重量である。
酸としては、例えば強酸性イオン交換樹脂(例えば、アンバライト(登録商標)R−120、アンバリスト(登録商標)等)等が挙げられ、強酸性イオン交換樹脂が好ましい。酸の使用量は、化合物(XXVIII)に対して、通常0.1〜100倍重量、好ましくは0.5〜20倍重量である。
工程(e−4d)は、通常0〜80℃(好ましくは20〜50℃)の範囲内で行う。当該反応は、上記温度範囲内で、通常30分〜24時間(好ましくは好ましくは1時間〜16時間)で終了する。
5−5.Rが水素原子であり、Yがトリフルオロメチル基である場合(以下、工程(e−5)ともいう。)
が水酸基である場合は、Tetrahedron Lett.,36(42),7761−7764(1995)に記載の方法に準じて、下記の工程(e−5a)〜(e−5c)により、化合物(VI)のR(水素原子)をトリフルオロメチル基に変換することができる。
すなわち、下記スキームに示すように、
工程(e−5a):化合物(VI a)またはその塩をトリメチル(トリフルオロメチル)シランと反応させて、一般式(XXIX)で表される化合物またはその塩を得;
工程(e−5b):得られた一般式(XXIX)で表される化合物またはその塩のトリメチルシリル基を脱保護して、一般式(XXX)で表される化合物またはその塩を得;
工程(e−5c):得られた一般式(XXX)で表される化合物またはその塩を酸化して、化合物(VIII d)を得ることができる。

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)
工程(e−5a)は工程(e−4b)と、工程(e−5b)は工程(e−4c)と、工程(e−5c)は工程(e−2e)とそれぞれ同様の方法、条件でおこなうことができる。
以上、工程(e−1)〜(e−5)で得られる化合物(VIII)の単離精製は常法で行うことができる。例えば、反応終了後、反応液を酸性水溶液(例えば、塩酸、硫酸など)、アルカリ水溶液(例えば、飽和重曹水、食塩水など)で順次洗浄し、分液して得られた有機層を濃縮することにより、化合物(VIII)を単離することができる。さらに、これに晶析溶媒(例えば、エーテル類(例:ジエチルエーテル、THFなど)、アセトン、アセトニトリル、炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタンなど)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、酢酸エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、水またはこれらの混合溶媒など)を加えて晶析させるか、あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、化合物(VIII)を精製することができるが、これらに限定されない。
6.工程(f)
工程(f)は、化合物(III)またはその塩を、化合物(III)におけるRが水素原子以外の場合は、カルボン酸体に変換した後、化合物(IX)と縮合させて、化合物(VIII)またはその塩を得る方法である。
工程(f)は、化合物(III)と化合物(IX)を直接縮合させることにより、短工程で、化合物(VIII)を製造することができるという利点がある。
化合物(III)のRが水素原子以外、すなわち、アルキル基またはアラルキル基の場合は、工程(b)の場合と同様の方法により、まずカルボン酸体にする。
カルボン酸体と化合物(IX)を縮合させる方法としては、工程(b)のカルボン酸体とN−ヒドロキシスクシンイミドを縮合させる方法において、N−ヒドロキシスクシンイミドの代わりに化合物(IX)またはその塩を用いて、同様の条件により行うことができる。
すなわち、好ましい態様としては、溶媒中においてカルボン酸体を活性化剤で活性化した後、化合物(IX)またはその塩と縮合させることによって、化合物(VIII)を製造することができる。
以下に、当該態様について説明するが、工程(f)はこの態様に何ら限定されるものではない。
活性化剤としては、工程(b)と同様のものが挙げられ、クロロギ酸エステル、特に、クロロギ酸エチル、クロロギ酸メチル、クロロギ酸イソブチル等が好ましい。
活性化剤の使用量は、カルボン酸体に対して、通常0.9〜1.5当量、好ましくは1〜1.2当量である。
カルボン酸体を活性化する際に、必要に応じ塩基を添加してもよい。そのような塩基としては、工程(b)と同様の塩基が挙げられ、N−メチルモルホリン、トリエチルアミン、ピリジンが好ましい。
当該塩基の使用量は、カルボン酸体に対して、通常0.9〜2当量、好ましくは1〜1.3当量である。
カルボン酸体の活性化に使用される溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えば、酢酸エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチルなど)、炭化水素類(例えば、トルエン、ベンゼン、キシレンなど)、アセトニトリル、THF、ハロゲン系溶媒(例えばジクロロメタン、ジクロロエタン等)等などが挙げられ、これらは1種または2種以上を併用してもよく、アセトニトリル、THF等の単独または混合溶媒がより好ましい。溶媒の使用量は、カルボン酸体に対して、通常3〜50倍重量であり、好ましくは5〜20倍重量である。
カルボン酸体の活性化は、通常−30〜40℃範囲内(好ましくは0〜30℃)で行う。当該活性化は、上記温度範囲内で、通常5分〜5時間(好ましくは10分〜2時間)で終了する。
カルボン酸体の活性化の後に、反応混合物に化合物(IX)を添加する。添加順序はこの逆または同時であってもよい。
化合物(IX)の使用量は、カルボン酸体に対して、通常0.9〜2当量、好ましくは1〜1.2当量である。
化合物(IX)が塩の形態のときは、中和のためにカルボン酸体を活性化する際に用いた塩基と同様の塩基を併せて添加するのが好ましい。
当該塩基の使用量は、化合物(IX)に対して、通常0.9〜2当量、好ましくは1〜1.2当量である。
化合物(IX)との縮合は、通常−30〜40℃範囲内(好ましくは−20〜30℃)で行う。当該縮合は、上記温度範囲内で、通常0.5時間〜5時間(好ましくは1時間〜3時間)で終了する。
化合物(VIII)の単離精製は常法で行うことができる。例えば、反応終了後、反応液を酸性水溶液(例えば、塩酸、硫酸など)、アルカリ水溶液(例えば、飽和重曹水、食塩水など)で順次洗浄し、分液して得られた有機層を濃縮することにより、化合物(VIII)を単離することができる。さらに、これに晶析溶媒(例えば、エーテル類(例:ジエチルエーテル、THFなど)、アセトン、アセトニトリル、炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタンなど)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、水またはこれらの混合溶媒など)等を加えて晶析させるか、あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、化合物(VIII)を精製することができるが、これらに限定されない。
工程(f)の原料である化合物(IX)は、化合物(V)を原料とし、アミノ基を公知の方法によりベンジルオキシカルボニルまたはtert−ブトキシカルボニル等で保護した後、上記工程(e)と同様な方法により、Rで表される基をYで表される基に変換した後、公知の方法により脱保護することにより合成することができる。
7.工程(g)
工程(g)は、化合物(VI)のピリミジン環5位のP−C(=O)−(式中、Pは前記と同意義を示す。)を脱保護して、化合物(VII)またはその塩を得る方法である。
当該脱保護反応は、当業者に公知の方法、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis,2nd.Ed.,A Wiley Interscience Publication,1991.に記載のアミドの脱保護法を制限なく適用することができるが、分解等の副反応を回避するためには温和な条件が好ましい。
工程(g)の好ましい態様としては、(1)酵素反応による脱保護〔以下、工程(g−1)ともいう。〕または(2)酸性条件による脱保護〔以下、工程(g−2)ともいう。〕が挙げられる。以下に、工程(g−1)および工程(g−2)について具体的に説明するが、工程(g)はこれらの態様に限定されるものではない。
7−1.工程(g−1)
工程(g−1)では、例えば溶媒中において、化合物(VI)と酵素を反応させることにより、脱保護して、化合物(VII)を製造することができる。
工程(g−1)に使用される酵素としては、ピリミジン環5位のP−C(=O)−(式中、Pは前記と同意義を示す。)を脱保護し得るものであれば特に限定はなく、細菌類、放線菌類、菌類などの微生物または動植物に由来する従来公知の酵素、例えば、ペニシリンアミダーゼ、ペニシリンアシラーゼ等が挙げられる。
また、酵素として樹脂等に固定化したものを用いることが、化合物との分離が容易であり、再利用もし易いことから好ましい。これらの酵素または固定化酵素は、市販品を用いることができる。
酵素または菌体処理液の使用量は、目的とする効果を発揮する量(有効量)であればよく、この有効量は当業者であれば簡単な予備試験により容易に求められるが、例えば市販品の酵素溶液の場合は、基質となる化合物(VI)1gに対して、0.01ml〜2mlである。
原料の化合物(VI)の保護基は、使用する酵素の基質特性により、適宜選択すれば良いが、好適な酵素であるペニシリンアミダーゼである場合は、Pがベンジルである、フェニルアセチル基が好ましい。
工程(g−1)で用いうる溶媒としては、水または水に親水性溶媒を酵素活性が損なわれない範囲で混合して用いることができ、水のみを用いるのが好ましい。親水性溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、THF、アセトン等の一種または2種以上を用いることができる。溶媒の使用量は、化合物(VI)に対して、通常5〜200倍重量であり、好ましくは10〜100倍重量である。
当該溶媒は、リン酸二水素カリウム、リン酸一水素カリウム等の緩衝成分によって、酵素に至適なpH(例えばpH6〜8等程度)に調整するのが好ましい。
緩衝成分の溶媒中における濃度は、酵素反応を阻害しない範囲であれば特に限定はないが、0.001M〜0.2M程度である。また、反応中、適宜塩基を添加する等して、pHを調整してもよい。
工程(g−1)では、必要に応じ、反応を促進するために界面活性剤を添加してもよい。そのような界面活性剤としては、例えばトリトンX−100(TritonX−100(登録商標))、ツィーン(Tween(登録商標))等が挙げられ、トリトンX−100が好ましい。当該界面活性剤の使用量は、化合物(VI)に対して、通常0.001〜0.05倍重量、好ましくは0.01〜0.05倍重量である。
工程(g−1)は、通常20〜50℃(好ましくは30〜40℃)の範囲内で行う。当該反応は、上記温度範囲内で、通常30分〜一週間(好ましくは1時間〜20時間)で終了する。
反応終了後、得られた化合物(VII)は、常法により酵素と分離することができる。例えば、固定化酵素の場合は、化合物(VII)の可溶性溶媒(例えば、アセトニトリル等)を必要に応じて加え、濾過することにより、化合物(VII)を濾液中に分離することができる。また、固定化されていない酵素の場合は、必要に応じ反応混合物中に水を加えて化合物(VII)を析出させて、濾過することにより化合物(VII)を濾過物として分離することができるが、これらに限定されるものではない。
分離された化合物(VII)は、例えばこれに晶析溶媒(例えば、エーテル類(例:ジエチルエーテル、THFなど)、アセトン、アセトニトリル、炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタンなど)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、水またはこれらの混合溶媒など)を加えて晶析させるか、あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、化合物(VII)を精製することができるが、これらに限定されない。
7−2.工程(g−2)
工程(g−2)では、例えば溶媒中において、化合物(VI)に酸を添加して反応させることにより脱保護して、化合物(VII)を製造することができる。添加順序は、この逆または同時であってもよい。
工程(g−2)で用いうる溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよいが、酸を使用する場合は少なくとも、水、アルコール等のプロトン性溶媒が存在していることが必要である。溶媒としては、例えば、酢酸エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチルなど)、炭化水素類(例えば、トルエン、ベンゼン、キシレンなど)、アセトニトリル、THF、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノールなど)、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を併用してもよく、メタノール、エタノール、アセトニトリル、イソプロピルアルコール、水等が好ましく、中でもメタノール、アセトニトリル、水等の単独または混合溶媒が好ましい。溶媒の使用量は化合物(VI)に対して、通常3〜50倍重量であり、好ましくは5〜20倍重量である。
工程(g−2)に使用する酸としては、無機酸(例えば塩酸、硫酸等)、有機酸(例えばメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等)等が挙げられ、好ましくは塩酸等である。
酸の使用量は、化合物(VI)に対して、通常1〜50当量、好ましくは3〜10当量である。
酸は、使用する溶媒の溶液として使用するのが好ましく、溶媒と酸の使用量が上記範囲になるように添加すればよい。
工程(g−2)は、通常0℃から用いる溶媒のリフラックス温度(好ましくは20〜60℃)の範囲内で行う。当該反応は、上記温度範囲内で、通常60分〜一晩(好ましくは1時間〜5時間)で終了する。
反応終了後、化合物(VII)は、使用した酸との塩の形態で反応混合物中に存在している。したがって、反応混合物を濃縮することにより当該酸付加塩を単離することができる。単離した酸付加塩は、これに晶析溶媒(例えば、エーテル類(例:ジエチルエーテル、THFなど)、アセトン、アセトニトリル、炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタンなど)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、水またはこれらの混合溶媒など)を加えて晶析させることにより、化合物(VII)の酸付加塩を精製することができる。
化合物(VII)のフリー体を単離するには、水、アルコール等のプロトン性溶媒中でアルカリ添加したり、反応終了後、反応液をアルカリ水溶液(例えば、飽和重曹水、食塩水など)で洗浄し、分液して得られた有機層を濃縮することにより、化合物(VII)を単離することができる。さらに、これに晶析溶媒(例えば、エーテル類(例:ジエチルエーテル、THFなど)、アセトン、アセトニトリル、炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタンなど)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、水またはこれらの混合溶媒など)等を加えて晶析させるか、あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、化合物(VII)のフリー体を精製することができるが、これらに限定されない。
工程(g)で製造される化合物(VII)は、化合物(XII)の他、他の酵素阻害剤を製造するための汎用性の高い合成中間体として有用である(J.Med.Chem.,2001,44,1286−1296参照)。
例えば、以下に説明する工程(h)、(i)および(j)により、化合物(XII)を製造することができる。
8.工程(h)
工程(h)は、公知の方法、例えばProtective Groups in Organic Synthesis,2nd.Ed.,A Wiley Interscience Publication,1991.の第309頁以降に列挙された方法により、化合物(VII)のアミノ基をアシル基以外で保護することにより、化合物(X)またはその塩を得る方法である。
以下に、工程(h)の好ましい態様であるCbz基による保護について説明するが、工程(h)はこれに限定されるものではない。
Cbz基による保護は、例えば溶媒中、化合物(VII)をベンジルオキシカルボニル化剤(以下、Cbz化剤という。)と反応させることにより実現される。
当該保護反応で用いうる溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えば水、アセトニトリル、酢酸エチル、THF、クロロホルム等が挙げられ、これらは1種または2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、化合物(VII)に対して、通常5〜50倍重量であり、好ましくは8〜20倍重量である。
Cbz化剤としては、例えばベンジルオキシカルボニルクロリド等が挙げられる。Cbz化剤の使用量は、化合物(VII)に対して、通常0.9〜2当量、好ましくは1〜1.3当量である。
当該保護反応においては、塩基(例えば水酸化ナトリウム、トリエチルアミン、ピリジン、炭酸ナトリウム等)を添加してもよい。塩基の使用量は、化合物(VII)に対して、通常0.9〜3当量、好ましくは1〜1.5当量である。
当該保護反応は、通常−20〜40℃(好ましくは0〜20℃)の範囲内で行う。当該反応は、上記温度範囲内で、通常30分〜24時間(好ましくは1時間〜16時間)で終了する。
得られる化合物(X)の単離精製は常法で行うことができる。例えば、反応終了後、反応液を酸性水溶液(例えば、塩酸、硫酸など)、アルカリ水溶液(例えば、飽和重曹水、食塩水など)で順次洗浄し、分液して得られた有機層を濃縮することにより、化合物(X)を単離することができる。さらに、晶析させるか、あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、化合物(X)を精製することができるが、これらに限定されない。
9.工程(i)
工程(i)は、化合物(X)またはその塩のRで表される基をYで表される基に変換して、化合物(XI)またはその塩を得る工程である。
工程(i)は、上記工程(g)と同様の方法および反応条件で行うことができる。
10.工程(j)
工程(j)は、公知の方法、例えばProtective Groups in Organic Synthesis,2nd.Ed.,A Wiley Interscience Publication,1991.の第309頁以降に列挙された方法により、化合物(XI)またはその塩の保護基Qを脱保護して、化合物(XII)またはその塩を得る方法である。
以下に工程(j)の好ましい態様である、QがCbz基である場合の脱保護について説明するが、工程(j)はこれに限定されるものではない。
Cbz基の脱保護反応は、例えば溶媒中において、化合物(XI)を水素化分解することにより実現される。
当該水素化分解反応で用いうる溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えばエタノール、メタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、THF等が挙げられ、これらは1種または2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、化合物(XI)に対して、通常5〜50倍重量であり、好ましくは8〜20倍重量である。
水素化分解反応に用いられる触媒としては、例えばパラジウム炭素、水酸化パラジウム等が挙げられる。当該触媒の使用量は、化合物(XI)に対して、通常0.01〜0.5倍重量、好ましくは0.05〜0.2倍重量である。
水素化分解反応においては反応促進のため、酸(例えば塩酸、メタンスルホン酸等)を添加してもよい。酸の使用量は、化合物(XI)に対して、通常0.05〜1.5当量、好ましくは0.1〜1当量である。
当該反応は、通常10〜80℃(好ましくは20〜50℃)の範囲内で行う。当該反応は、上記温度範囲内で、通常30分〜24時間(好ましくは1時間〜16時間)で終了する。
得られる化合物(XII)の単離精製は常法で行うことができる。例えば、反応終了後、濾過等により触媒を除去し、水、アルコール等のプロトン性溶媒中でアルカリ添加したり、アルカリ水溶液(例えば、飽和重曹水、食塩水など)で洗浄し、分液して得られた有機層を濃縮することにより、化合物(XII)を単離することができる。さらに、これに晶析溶媒(例えば、エーテル類(例:ジエチルエーテル、THFなど)、アセトン、アセトニトリル、炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタンなど)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、水またはこれらの混合溶媒など)等を加えて晶析させるか、あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、化合物(XII)のフリー体を精製することができるが、これらに限定されない。
11.工程(k)
工程(k)は、化合物(VIII)のピリミジン環5位のP−C(=O)−(式中Pは前記と同意義を示す。)を脱保護して、化合物(XII)またはその塩を得る方法である。
当該脱保護反応は、当業者に公知の方法、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis,2nd.Ed.,A Wiley Interscience Publication,1991.に記載のアミドの脱保護法を制限なく適用することができるが、分解等の副反応を回避するためには温和な条件、例えば上記の工程(g)と同様の条件によって行うことが好ましい。
工程(k)の好ましい態様としては工程(g)と同様に、(1)酵素反応による脱保護〔以下、工程(k−1)ともいう。〕または(2)酸性条件による脱保護〔以下、工程(k−2)ともいう。〕が挙げられる。以下に、工程(k−1)および工程(k−2)について具体的に説明するが、工程(k)はこれらの態様に限定されるものではない。
11−1.工程(k−1)
工程(k−1)では、例えば溶媒中において、化合物(VIII)と酵素を反応させることにより、脱保護して、化合物(XII)を製造することができる。
工程(k−1)に使用される酵素としては、工程(g−1)と同様なものが挙げられ、ペニシリンアミダーゼ、ペニシリンアシラーゼ等が好ましい。
また、酵素として樹脂等に固定化したものを用いることが、工程(g−1)と同様好ましい。
酵素または菌体処理液の使用量は、目的とする効果を発揮する量(有効量)であればよく、この有効量は当業者であれば簡単な予備試験により容易に求められるが、例えば市販品酵素溶液の場合は、基質となる化合物(VIII)1gに対して、0.01ml〜2mlである。
原料の化合物(VIII)の保護基は、使用する酵素の基質特性により、適宜選択すれば良いが、好適な酵素であるペニシリンアミダーゼである場合は、Pがベンジルである、フェニルアセチルが好ましい。
工程(k−1)で用いうる溶媒としては、水または水に親水性溶媒を酵素活性が損なわれない範囲で混合して用いることができ、水のみを用いるのが好ましい。好適な親水性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、アセトン等の1種または2種以上を用いることができる。溶媒の使用量は、化合物(VIII)に対して、通常5〜200倍重量であり、好ましくは10〜100倍重量である。
当該溶媒は、リン酸2水素カリウム、リン酸一水素カリウム等の緩衝成分によって、酵素に至適なpH(例えばpH6〜8等程度)に調整するのが好ましい。
緩衝成分の溶媒中における濃度は、酵素反応を阻害しない範囲であれば特に限定はないが、0.001M〜0.2M程度である。
また、反応中、適宜塩基を添加する等して、pHを調整してもよい。
工程(k−1)では、必要に応じ、反応を促進するために界面活性剤を添加してもよい。そのような界面活性剤としては、例えばトリトンX−100(TritonX−100(登録商標))、ツィーン(Tween(登録商標))等が挙げられ、トリトンX−100が好ましい。当該界面活性剤の使用量は、化合物(VIII)に対して、通常0.001〜0.05倍重量、好ましくは0.01〜0.05倍重量である。
工程(k−1)は、通常20〜50℃(好ましくは30〜40℃)の範囲内で行う。当該反応は、上記温度範囲内で、通常30分〜一週間(好ましくは1時間〜20時間)で終了する。
反応終了後、得られた化合物(XII)は、常法により酵素と分離することができる。例えば、固定化酵素の場合は、化合物(XII)の可溶性溶媒(例えば、アセトニトリル等)を必要に応じて加え、濾過することにより、化合物(XII)を濾液中に分離することができる。また、固定化されていない酵素の場合は、必要に応じ反応混合物中に水を加えて化合物(XII)を析出させて、濾過することにより化合物(XII)を濾液物として分離することができるが、これに限定されるものではない。
分離された化合物(XII)は、例えばこれに晶析溶媒(例えば、エーテル類(例:ジエチルエーテル、THFなど)、アセトン、アセトニトリル、炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタンなど)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、水またはこれらの混合溶媒など)を加えて晶析させるか、あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、化合物(XII)を精製することができるが、これらに限定されない。
11−2.工程(k−2)
工程(k−2)では、例えば溶媒中において、化合物(VIII)に酸を添加して反応させることにより脱保護して、化合物(XII)を製造することができる。添加順序は、この逆または同時であってもよい。
工程(k−2)で用いうる溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよいが、酸を使用する場合は少なくとも、水、アルコール等のプロトン性溶媒が存在していることが必要である。溶媒としては、例えば、酢酸エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチルなど)、炭化水素類(例えば、トルエン、ベンゼン、キシレンなど)、アセトニトリル、THF、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノールなど)、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を併用してもよく、メタノール、エタノール、アセトニトリル、イソプロピルアルコール、水等が好ましく、中でもメタノール、アセトニトリル、水等の単独または混合溶媒が好ましい。溶媒の使用量は、化合物(VIII)に対して、通常3〜50倍重量であり、好ましくは5〜20倍重量である。
工程(k−2)に使用する酸としては、無機酸(例えば塩酸、硫酸等)、有機酸(例えばメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等)等が挙げられ、好ましくは塩酸等である。
酸の使用量は、化合物(VIII)に対して、通常1〜50当量、好ましくは3〜10当量である。
酸は、使用する溶媒の溶液として使用するのが好ましく、溶媒と酸の使用量が上記範囲になるように添加すればよい。
工程(k−2)は、通常0℃から用いる溶媒のリフラックス温度(好ましくは20〜60℃)の範囲内で行う。当該反応は、上記温度範囲内で、通常60分〜一晩(好ましくは1時間〜5時間)で終了する。
反応終了後、化合物(XII)は、使用した酸との塩の形態で反応混合物中に存在している。したがって、反応混合物を濃縮することにより当該酸付加塩を単離することができる。単離した酸付加塩は、これに晶析溶媒(例えば、エーテル類(例:ジエチルエーテル、THFなど)、アセトン、アセトニトリル、炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタンなど)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、アルコール類(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、水またはこれらの混合溶媒など)を加えて晶析させることにより、化合物(XII)の酸付加塩を精製することができる。
化合物(XII)のフリー体を単離するには、水、アルコール等のプロトン性溶媒中でアルカリ添加したり、反応終了後、反応液をアルカリ水溶液(例えば、飽和重曹水、食塩水など)で洗浄し、分液して得られた有機層を濃縮することにより、化合物(XII)を単離することができる。さらに、これに晶析溶媒(例えばエーテル類(例:ジエチルエーテル、THFなど)、アセトン、アセトニトリル炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタンなど)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、水またはこれらの混合溶媒など)等を加えて晶析させるか、あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、化合物(XII)のフリー体を精製することができるが、これらに限定されない。
【実施例】
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
参考例1
4−(N,N−ジメチルアミノメチレン)−2−メチル−5−オキサゾリノン
N−アセチルグリシン(20.0g,171mmol)に、オキシ塩化リン(67.0g,437mmol)とN,N−ジメチルホルムアミド(33.0g,451mmol)を氷浴中で加え、45℃にて1.5時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、28%アンモニア水(150ml)中に10℃以下を保ちながら滴下した。氷浴下1時間攪拌して析出物を濾集し、得られた結晶を水、エタノールで順次洗浄した後、乾燥し、表題化合物の結晶(20.2g,131mmol)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:2.21(3H,s),3.18(3H,m),3.47(3H,s),6.96(1H,s).
MS(ESI)m/z[MH]+155.2
参考例2
2−ベンジル−4−(N,N−ジメチルアミノメチレン)−5−オキサゾリノン
フェナセツル酸(10.0g,51.8mmol)にクロロホルム(30.0ml)、オキシ塩化リン(20.0g,130mmol)およびN,N−ジメチルホルムアミド(10.0g,137mmol)を氷浴中で加え、45℃にて1.5時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、28%アンモニア水(65ml)中に10℃以下を保ちながら滴下した。クロロホルムにて抽出し、有機層を水と飽和食塩水にて洗浄後、濃縮乾固した。濃縮物をイソプロピルアルコールにて洗浄して、析出物を濾過し、イソプロピルアルコールで洗浄後、乾燥して、表題化合物の結晶(9.90g,43.3mmol)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:3.17(3H,s),3.48(3H,m),3.83(2H,s),6.97(1H,s),7.23−7.36(5H,m)
MS(ESI)m/z[MH]+231.5
参考例3
2−メチル−4−(モルホリノメチレン)−5−オキサゾリノン
N−アセチルグリシン(0.50g,4.27mmol)に、オキシ塩化リン(995μl,10.7mmol)とN−ホルミルモルホリン(1.23g,10.7mmol)を氷浴中で加え、45℃にて1.5時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、28%アンモニア水(5ml)と水(5ml)中に10℃以下を保ちながら滴下した。氷浴下1時間攪拌して析出物を濾集し、得られた結晶を水、エタノールで順次洗浄した後、乾燥し、表題化合物の結晶(0.52g,2.65mmol)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:2.21(3H,s),3.47(2H,br),3.79(4H,t,J=4.8Hz),4.27(2H,s),6.92(1H,s)
MS(ESI)m/z[MH]+196.9
参考例4
2−ベンジル−4−(N,N−ジメチルアミノメチレン)−5−オキサゾリノン
フェナセツル酸(1.00g,5.18mmol)にトルエン(10.0ml)とN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.07g,5.19mmol)を加えて、室温で一晩攪拌した。析出物を濾去して、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(0.68g,5.71mmol)を加え、終夜攪拌した。反応混合物を飽和食塩水にて洗浄し、濃縮乾固させた。濃縮物にイソプロピルアルコールを加え、晶析し、析出物を濾過した。イソプロピルアルコールで洗浄後、減圧乾燥し、表題化合物の結晶(0.78g,3.39mmol)を得た。
[実施例1]
(5−アセチルアミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)酢酸
N−(カルボキシメチル)フェニルアミジン(108mg,0.61mmol)と28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液(117mg,0.61mmol)をメタノール(3ml)中で攪拌させ、濃縮乾固した。N,N−ジメチルホルムアミド(3ml)と4−(N,N−ジメチルアミノメチレン)−2−メチル−5−オキサゾリノン(94.0mg,0.61mmol)を加えて130℃で終夜攪拌させた。溶媒を留去して、酢酸エチルと水を加えて分液した。水層に酢酸エチルを加えて塩酸水溶液にてpH2.0に調整して抽出した。有機層を濃縮乾固して、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、表題化合物の結晶(54.0mg,0.19mmol)を得た。
H−NMR(DMSO−d)δ:2.15(3H,s),4.52(2H,s),7.48−7.56(5H,m),8.83(1H,s),9.58(1H,s)
MS(ESI)m/z[MH]+288.2,[MH]−286.1
[実施例2]
5−アセチルアミノ−6−オキソ−2−フェニル−1−(スクシンイミドオキシカルボニルメチル)−1,6−ジヒドロピリミジン
(5−アセチルアミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)酢酸(300mg,1.04mmol)、アセトニトリル(5ml)およびN−メチルモルホリン(121mg,1.20mmol)を混合し、クロロギ酸エチル(125mg,1.15mmol)を加え、水冷下で30分攪拌した。N−ヒドロキシスクシンイミド(148mg,1.29mmol)を加えて5時間攪拌した。反応混合物を減圧濃縮して、酢酸エチルを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて順次洗浄し、濃縮乾固した。水(5ml)でスラリー洗浄して析出物を濾過し、結晶を乾燥させ、表題化合物を色結晶(0.31g,0.81mmol)として得た。
H−NMR(CDCl)δ:2.23(3H,s),2.88(4H,s),4.94(2H,s),7.50−7.56(5H,m),8.04(1H,s),9.10(1H,s)
MS(ESI)m/z[MH]+385.2,[MH]−383.2
[実施例3]
(S)−2−[2−(5−アセチルアミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)アセチルアミノ]−3−フェニルプロピオン酸
L−フェニルアラニン(100mg,0.61mmol)を50%アセトニトリル水(3ml)に加え、6N水酸化ナトリウム水溶液にてpH8に調整して溶解させた。この溶液に、5−アセチルアミノ−6−オキソ−2−フェニル−1−(スクシンイミドオキシカルボニルメチル)−1,6−ジヒドロピリミジン(176mg,0.46mmol)をアセトニトリル(1ml)に溶かして氷冷下滴下し、室温で3時間攪拌した。反応液を濃縮して塩酸水溶液にてpH2に調整して晶析して2時間攪拌した。更に析出物を濾過して洗浄し、減圧乾燥して、表題化合物を白色結晶(190mg,0.44mmol)として得た。
H−NMR(DMSO−d)δ:2.14(3H,s),2.84−2.87(1H,dd,J1=13.8Hz,J2=5.0Hz),3.01(1H,dd,J1=13.8Hz,J2=8.7Hz),4.41−4.48(3H,m),7.12−7.14(2H,d,J=7.8Hz),7.21−7.25(3H,m),7.43−7.52(5H,m),8.53(1H,d,J=7.8Hz),8.80(1H,s),9.52(1H,s)
MS(ESI)m/z[MH]+435.2,[MH]−433.3
[実施例4]
(S)−2−[(6−オキソ−2−フェニル−5−フェニルアセチルアミノ−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)アセチルアミノ]−3−フェニルプロピオン酸
5−アセチルアミノ−6−オキソ−2−フェニル−1−(スクシンイミドオキシカルボニルメチル)−1,6−ジヒドロピリミジンの代わりに、6−オキソ−2−フェニル−5−フェニルアセチルアミノ−1−(スクシンイミドオキシカルボニルメチル)−1,6−ジヒドロピリミジンを用いたこと以外は、実施例3と同様に行い、表題化合物の結晶を得た。
H−NMR(DMSO−d)δ:2.85(1H,dd,J1=14.1Hz,J2=5.1Hz),3.02(1H,dd,J1=14.1Hz,J2=5.1Hz),3.83(2H,s),4.45(3H,m),7.15−7.52(15H,m),8.53(1H,d,J=7.8Hz),8.80(1H,s),9.64(1H,s)
MS(ESI)m/z[MH]+511.3,[MH]−509.4
[実施例5]
(S)−2−[2−(5−アセチルアミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)アセチルアミノ]−3−メチル酪酸メチル
(5−アセチルアミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)酢酸(250mg,0.87mmol)に、テトラヒドロフラン(5ml)およびN−メチルモルホリン(0.10ml,0.91mmol)を添加して溶解し、氷冷下でクロロギ酸エチル(85.3μl,0.91mmol)を加え、20分間攪拌した。L−バリンメチルエステル塩酸塩(146mg,0.87mmol)およびN−メチルモルホリン(0.10ml,0.91mmol)を加えて2時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え、1N塩酸水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて順次洗浄し、有機層を濃縮乾固して、表題化合物(0.18g,0.45mmol)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:0.92(3H,d,J=6.9Hz),0.94(3H,d,J=6.9Hz),2.16−2.19(1H,m),2.21(3H,S),3.75(3H,s),4.58(3H,m),6.37(1H,d,J=8.6Hz),7.43−7.50(3H,m),7.55−7.57(2H,m),8.01(1H,s)9.10(1H,s)
[実施例6]
N−[2−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−1−メチル−2−オキソエチル]−(6−オキソ−2−フェニル−5−フェニルアセチルアミノ−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)アセトアミド
(6−オキソ−2−フェニル−5−フェニルアセチルアミノ−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)酢酸(600mg,1.65mmol)に、テトラヒドロフラン(8ml)およびN−メチルモルホリン(0.20ml,1.82mmol)を添加して溶解し、氷冷下でクロロギ酸エチル(0.165ml,1.73mmol)を加え、20分間攪拌した。2−アミノ−1−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−1−プロパノン塩酸塩(386mg,1.65mmol)およびN−メチルモルホリン(0.20ml,1.82mmol)を加えて1時間攪拌した。反応液にメチル−tert−ブチルエーテルを加え、1N塩酸水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水にて順次洗浄し、有機層を濃縮乾固して、表題化合物(0.61g,1.12mmol)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.48(9H,s),1.53(3H,d,J=4.2Hz),3.76(2H,s),4.57(2H,s),5.43−5.51(1H,m),6.76(1H,d,J=6.8Hz),7.25−7.32(5H,m),7.43−7.53(5H,m),8.05(1H,s),9.09(1H,s)
MS(ESI)m/z[MH]+543.4,[MH]−541.4
[実施例7]
N−[2−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−1−メチル−2−オキソエチル]−(5−アセチルアミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)アセトアミド
(6−オキソ−2−フェニル−5−フェニルアセチルアミノ−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)酢酸の代わりに(5−アセチルアミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)酢酸を用いたこと以外は、実施例6と同様に行い、表題化合物を得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.48(9H,s),1.59(3H,d,J=7.3Hz),2.23(3H,s),4.62(2H,s),5.48−5.54(1H,m),6.79(1H,d,J=6.9Hz),7.47−7.56(5H,m),8.02(1H,s),9.08(1H,s)
MS(ESI)m/z[MH]+467.2,[MH]−465.4
[実施例8]
N−[2−メチル−1−(2−チアゾリルカルボニル)プロピル]−(6−オキソ−2−フェニル−5−フェニルアセチルアミノ−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)アセトアミド
(6−オキソ−2−フェニル−5−フェニルアセチルアミノ−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)酢酸(400mg,1.10mmol)に、テトラヒドロフラン(6ml)およびN−メチルモルホリン(0.133ml,1.21mmol)を添加して溶解し、氷冷下でクロロギ酸エチル(0.11ml,1.15mmol)を加え、20分間攪拌した。2−アミノ−3−メチル−1−(2−チアゾリル)−1−ブタノン塩酸塩(250mg,1.13mmol)およびN−メチルモルホリン(0.133ml,1.21mmol)を加えて1時間攪拌した。反応液にエチル−tert−ブチルエーテルを加え、1N塩酸水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水にて順次洗浄し、有機層を濃縮乾固して、表題化合物(556mg,1.05mmol)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:0.76(3H,d,J=6.8Hz),0.99(3H,d,J=6.8Hz),2.37−2.45(1H,m),3.75(2H,s),4.11(1H,dd,J1=14.3Hz,J2=7.1Hz),4.60−4.70(2H,m),5.65−5.68(1H,dd,J1=8.9Hz,J2=4.9Hz),7.05(1H,d,J=8.9Hz),7.23−7.53(10H,m),7.69(1H,d,J=3.0Hz),7.99(1H,d,J=3.0Hz),8.16(1H,s),9.08(1H,s)
MS(ESI)m/z[MH]+530.3,[MH]−528.3
[実施例9]
N−[2−メチル−1−(2−チアゾリルカルボニル)プロピル]−(5−アセチルアミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)アセトアミド
(6−オキソ−2−フェニル−5−フェニルアセチルアミノ−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)酢酸の代わりに(5−アセチルアミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)酢酸を用いたこと以外は、実施例8と同様に行い、表題化合物を得た。
H−NMR(CDCl)δ:0.84(3H,d,J=6.9Hz),1.05(3H,d,J=6.9Hz),2.22(3H,s),2.48(1H,m),4.61(1H,d,J=16Hz),4.68(1H,d,J=16Hz),5,67(1H,dd,J1=8.8Hz,J2=4.8Hz),6.78(1H,d,J=8.8Hz),7.41−7.46(3H,m),7.54−7.56(2H,m),7.73(1H,d,J=3.0Hz),8.00(1H,s),8.04(1H,d,J=3.0Hz),9.09(1H,s)
MS(ESI)m/z[MH]+454.2,[MH]−452.4
[実施例10]
(S)−N−[1−ベンジル−3−クロロ−2−オキソプロピル]−(5−アセチルアミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)アセトアミド
(6−オキソ−2−フェニル−5−フェニルアセチルアミノ−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)酢酸の代わりに(5−アセチルアミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)酢酸、2−アミノ−1−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−1−プロパノン塩酸塩の代わりに(S)−3−アミノ−1−クロロ−4−フェニル−2−ブタノン塩酸塩を用いたこと以外は、実施例6と同様に行い、表題化合物を得た。
H−NMR(CDCl)δ:2.24(3H,s),3.02−3.07(1H,dd,J1=14.0Hz,J2=6.9Hz),3.10−3.16(1H,dd,J1=14.0Hz,J2=6.9Hz),4.00(1H,d,J=16.1Hz),4.15(1H,d,J=16.1Hz)4.48(1H,d,J=15.6Hz),4.56(1H,d,J=15.6Hz),4.98−5.03(1H,m),6.51(1H,d,J=7.2Hz),7.10−7.12(2H,m),7.26−7.29(3H,m),7.45−7.49(5H,m),7.96(1H,s),9.10(1H,s)
MS(ESI)m/z[MH]+467.2,[MH]−465.2
[実施例11]
(S)−2−[(5−アミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)アセチルアミノ]−3−フェニルプロピオン酸
(S)−2−[(6−オキソ−2−フェニル−5−フェニルアセチルアミノ−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)アセチルアミノ]−3−フェニルプロピオン酸(135mg,0.264mmol)に、水(10ml)とリン酸二水素カリウム(155mg,1.14mmol)を加え、水酸化ナトリウム水溶液でpH7.6に調整し、ペニシリンアミダ−ゼビーズ(シグマ社製,23.0mg)を加えて、37℃終夜攪拌させた。得られた反応液にアセトニトリルを加えて、析出物を濾去し、濾液を濃縮した。塩酸水溶液を加えてpH2.0に調整し、晶析させた。析出物を濾過、洗浄、減圧乾燥し、表題化合物の結晶(85.0mg,0.217mmol)を得た。
H−NMR(DMSO−d)δ:2.83−2.88(1H,m),3.00−3.03(1H,m),4.33−4.47(3H,m),5.14(2H,br),7.14−7.45(10H,m),8.44(1H,d,J=7.8Hz)
MS(ESI)m/z[MH]+393.3,[MH]−391.2
[実施例12]
N−[2−メチル−1−(2−チアゾリルカルボニル)プロピル]−(5−アミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)アセトアミド
N−[2−メチル−1−(2−チアゾリルカルボニル)プロピル]−(6−オキソ−2−フェニル−5−フェニルアセチルアミノ−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)アセトアミド(150mg,0.283mmol)を0.05Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.4,15.0ml)に懸濁させ、トリトンX−100(登録商標)(2.00μl)とペニシリンアミダーゼ水溶液(シグマ社製)を加えて、37℃で5日間攪拌した。得られた反応液の析出物を濾過、洗浄、減圧乾燥し、表題化合物を結晶(114mg,0.277mmol)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:0.84(3H,d,J=6.8Hz),1.05(3H,d,J=6.82Hz),2.45−2.50(1H,m),4.04(2H,s),4.58(1H,d,J=15.5Hz),4.66(1H,d,J=15.5Hz),5.64(1H,dd,J1=8.9Hz,J2=4.8Hz),6.88(1H,d,J=8.9Hz),7.40−7.52(6H,m),7.72(1H,d,J=3.1Hz),8.03(1H,d,J=3.1Hz)
MS(ESI)m/z[MH]+412.2,[MH]−410.0
[実施例13]
N−[2−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−1−メチル−2−オキソエチル]−(5−アミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)アセトアミド
N−[2−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−1−メチル−2−オキソエチル]−(6−オキソ−2−フェニル−5−フェニルアセチルアミノ−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)アセトアミド(150mg,0.277mmol)を0.05Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.4,15.0ml)に懸濁させ、トリトンX−100(登録商標)(2.00μl)とペニシリンアミダーゼ水溶液(シグマ社製)を加えて、37℃で終夜攪拌した。得られた反応液の析出物を濾過、洗浄、減圧乾燥し、表題化合物の結晶(114mg,0.269mmol)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.48(9H,s),1.57(3H,d,J=7.3Hz),4.48(1H,d,J=15.5Hz),4.64(1H,d,J=15.5Hz),4.47(1H,m),7.01(1H,d,J=6.6Hz),7.43−7.53(6H,m)
MS(ESI)m/z[MH]+425.3,[MH]−423.1
[実施例14]
(S)−2−[(5−アミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)アセチルアミノ]−3−メチル酪酸メチル 塩酸塩
(S)−2−[(5−アセチルアミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)アセチルアミノ]−3−メチル酪酸メチル(100mg,0.25mmol)をメタノール(5ml)に溶解させ、10%塩化水素メタノール溶液(0.5ml)を加えて室温で終夜攪拌した。反応混合物を濃縮乾固し、メチル−tert−ブチルエーテルを加え、濾過、メチル−tert−ブチルエーテルで洗浄、乾燥して、表題化合物の結晶(90.0mg,0.228mmol)を得た。
H−NMR(DMSO−d)δ:0.80(3H,d,J=3.0Hz),0.82(3H,d,J=3.0Hz),1.97−2.02(1H,m),3.64(3H,s),4.20(1H,dd,J1=8.4Hz,J2=6.2Hz),4.53(2H,s),7.37(1H,s),7.48−7.55(5H,m),8.51(1H,d,J=8.4Hz)
MS(ESI)m/z[MH]+359.4,[MH]−393.1
[実施例15]
N−[2−メチル−1−(2−チアゾリルカルボニル)プロピル]−(5−アミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)アセトアミド 塩酸塩
N−[2−メチル−1−(2−チアゾリルカルボニル)プロピル]−(5−アセチルアミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)アセトアミド(100mg,0.220mmol)をメタノール(5ml)に溶解させ、10%塩化水素メタノール溶液(0.5ml)を加えて60℃で終夜攪拌した。反応混合物を濃縮乾固し、メチル−tert−ブチルエーテルを加え、濾過、メチル−tert−ブチルエーテルで洗浄、乾燥して、表題化合物の結晶(93.0mg,0.208mmol)を得た。
H−NMR(DMSO−d)δ:0.80(3H,d,J=6.9Hz),0.87(3H,d,J=6.9Hz),2.28−2.33(1H,m),4.62(2H,s),5.45(1H,dd,J1=8.1Hz,J2=5.5Hz),7.51−7.62(6H,m),8.20(1H,d,J=3.0Hz),8.30(1H,d,J=3.0Hz),8.75(1H,d,J=8.1Hz)
MS(ESI)m/z[MH]+412.3,[MH]−446.2
[実施例16]
(S)−N−[1−ベンジル−3−クロロ−2−オキソプロピル]−(5−アミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)アセトアミド 塩酸塩
(S)−2−[(5−アセチルアミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)アセチルアミノ]−3−メチル酪酸メチルの代わりに(S)−N−[1−ベンジル−3−クロロ−2−オキソプロピル]−(5−アセチルアミノ−6−オキソ−2−フェニル−1,6−ジヒドロピリミジン−1−イル)アセトアミドを用いたこと以外は、実施例14と同様に行い、表題化合物の結晶を得た。
H−NMR(DMSO−d)δ:2.78−2.84(1H,m),3.07−3.11(1H,m),4.43(2H,s),4.55−4.60(3H,m),7.13−7.23(5H,m),7.43−7.58(5H,m),7.59−7.60(1H,m),8.96(1H,d,J=7.4Hz)
MS(ESI)m/z[MH]+425.2,[MH]−459.2
【産業上の利用可能性】
本発明は、化合物(VII)の効率的製造方法を提供し、該化合物を原料化合物あるいは中間化合物として経由することにより、酵素阻害剤として有用な最終目的化合物である化合物(XII)またはそのN−保護体を有利に製造する方法を提供する。
本発明の方法により製造される化合物(VIII)は、ピリミジン環の5位のアミノ基が緩和な条件で脱保護できる保護基で保護されているため、化合物(XII)に至る最終段階で生成物の分解などを惹起することなく容易に脱保護することができる。
したがって、本発明の製造方法は、ピリミジン環の5位がベンゾイル基で保護された中間化合物を使用する従来法におけるように、アミド化反応に先立って保護基の脱保護を行う必要がなく、その結果、ピリミジン環の5位のアミノ基が遊離状態のままでアミド化反応を行うことによる二量化などの副反応を抑制し、高品質の目的化合物を高収率で得ることができる。
本出願は、日本で出願された特願2003−374043を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):

(式中、Pは水素原子、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基またはハロアルキル基を示し、RおよびRは同一または異なって、それぞれ独立してアルキル基を示すか、または隣接する窒素原子と一緒になって脂肪族複素環を形成してもよく、波線はシス体若しくはトランス体またはそれらの混合物であることを示す。)で表される化合物を一般式(II):

(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を示し、Rは水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す。)で表される化合物またはその塩と反応させることを特徴とする、一般式(III):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物またはその塩の製造方法。
【請求項2】
一般式(I):

(式中、Pは水素原子、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基またはハロアルキル基を示し、RおよびRは同一または異なって、それぞれ独立してアルキル基を示すか、または隣接する窒素原子と一緒になって脂肪族複素環を形成してもよく、波線はシス体若しくはトランス体またはそれらの混合物であることを示す。)で表される化合物を一般式(II):

(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を示し、Rは水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す。)で表される化合物またはその塩と反応させて、一般式(III):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物またはその塩を得;
得られた一般式(III)で表される化合物またはその塩を、Rが水素原子以外の場合は水素原子に変換した後、N−ヒドロキシスクシンイミドと縮合させることを特徴とする、一般式(IV):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物の製造方法。
【請求項3】
Pがメチル基、エチル基またはベンジル基である、請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
が置換基を有していてもよいフェニル基またはメチル基である、請求項1または2記載の製造方法。
【請求項5】
が水素原子、メチル基またはtert−ブチル基である、請求項1または2記載の製造方法。
【請求項6】
下記工程(a)、(b)および(c)を含むことを特徴とする、一般式(VI):

〔式中、Pは水素原子、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基またはハロアルキル基を示し、Rは置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を示し、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示し、Rは水素原子、水酸基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基または−N(R)−OR(ここで、RおよびRは同一または異なって、それぞれ独立して、アルキル基を示す。)を示す。〕で表される化合物またはその塩の製造方法;
工程(a):一般式(I):

(式中、Pは前記と同意義を示し、RおよびRは同一または異なって、それぞれ独立してアルキル基を示すか、または隣接する窒素原子と一緒になって脂肪族複素環を形成してもよく、波線はシス体若しくはトランス体またはそれらの混合物であることを示す。)で表される化合物を一般式(II):

(式中、Rは前記と同意義を示し、Rは水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す。)で表される化合物またはその塩と反応させて、一般式(III):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物またはその塩を得;
工程(b):得られた一般式(III)で表される化合物またはその塩を、Rが水素原子以外の場合は水素原子に変換した後、N−ヒドロキシスクシンイミドと縮合させて、一般式(IV):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物を得;
工程(c):得られた一般式(IV)で表される化合物と一般式(V):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物またはその塩とを反応させて、上記一般式(VI)で表される化合物またはその塩を得る。
【請求項7】
一般式(I):

(式中、Pは水素原子、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基またはハロアルキル基を示し、RおよびRは同一または異なって、それぞれ独立してアルキル基を示すか、または隣接する窒素原子と一緒になって脂肪族複素環を形成してもよく、波線はシス体若しくはトランス体またはそれらの混合物であることを示す。)で表される化合物を一般式(II):

(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を示し、Rは水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す。)で表される化合物またはその塩と反応させて、一般式(III):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物またはその塩を得、
得られた一般式(III)で表される化合物またはその塩を、Rが水素原子以外の場合は水素原子に変換した後、一般式(V):

(式中、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示し、Rは水素原子、水酸基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基または−N(R)−OR(ここで、RおよびRは同一または異なって、それぞれ独立して、アルキル基を示す。)を示す。)で表される化合物またはその塩と縮合させることを特徴とする、一般式(VI):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物またはその塩の製造方法。
【請求項8】
Pがメチル基、エチル基またはベンジル基である、請求項6または7記載の製造方法。
【請求項9】
が置換基を有していてもよいフェニル基またはメチル基である、請求項6または7記載の製造方法。
【請求項10】
が水素原子、メチル基またはtert−ブチル基である、請求項6または7記載の製造方法。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか一項の製造方法により得られる一般式(VI):

〔式中、Pは水素原子、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基またはハロアルキル基を示し、Rは置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を示し、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示し、Rは水素原子、水酸基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基または−N(R)−OR(ここで、RおよびRは同一または異なって、それぞれ独立して、アルキル基を示す。)を示す。〕で表される化合物またはその塩を脱保護することを特徴とする、一般式(VII):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物またはその塩の製造方法。
【請求項12】
酵素反応により脱保護することを特徴とする、請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
酸性条件により脱保護することを特徴とする、請求項11記載の製造方法。
【請求項14】
下記工程(h)、(i)および(j)を含むことを特徴とする、一般式(XII):

(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を示し、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示し、Yは置換基を有していてもよいヘテロ環基、置換基を有していてもよいアシル基またはハロアルキル基を示す。)で表される化合物またはその塩の製造方法;
工程(h):請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法によって得られる一般式(VII):

〔式中、Rは水素原子、水酸基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基または−N(R)−OR(ここで、RおよびRは同一または異なって、それぞれ独立して、アルキル基を示す。)を示し、他の各記号は前記と同意義を示す。〕で表される化合物またはその塩のアミノ基を保護して、一般式(X):

(式中、Qはアシル基以外のアミノ基の保護基を示し、他の各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物またはその塩を得;
工程(i):得られた一般式(X)で表される化合物またはその塩のRで表される基をYで表される基に変換して、一般式(XI):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物またはその塩を得;
工程(j):得られた一般式(XI)で表される化合物またはその塩を脱保護して、上記一般式(XII)で表される化合物またはその塩を得る。
【請求項15】
下記工程(a)、(b)、(c)および(e)を含むことを特徴とする、一般式(VIII):

(式中、Pは水素原子、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基またはハロアルキル基を示し、Rは置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を示し、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示し、Yは置換基を有していてもよいヘテロ環基、置換基を有していてもよいアシル基またはハロアルキル基を示す。)で表される化合物またはその塩の製造方法;工程(a):一般式(I):

(式中、Pは前記と同意義を示し、RおよびRは同一または異なって、それぞれ独立してアルキル基を示すか、または隣接する窒素原子と一緒になって脂肪族複素環を形成してもよく、波線はシス体若しくはトランス体またはそれらの混合物であることを示す。)で表される化合物を一般式(II):

(式中、Rは前記と同意義を示し、Rは水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す。)で表される化合物またはその塩と反応させて、一般式(III):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物またはその塩を得;
工程(b):得られた一般式(III)で表される化合物またはその塩を、Rが水素原子以外の場合は水素原子に変換した後、N−ヒドロキシスクシンイミドと縮合させて、一般式(IV):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物を得;
工程(c):得られた一般式(IV)で表される化合物と一般式(V):

〔式中、Rは前記と同意義を示し、Rは水素原子、水酸基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基または−N(R)−OR(ここで、RおよびRは同一または異なって、それぞれ独立して、アルキル基を示す。)を示す。〕で表される化合物またはその塩とを反応させて、一般式(VI):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物またはその塩を得;
工程(e):得られた一般式(VI)で表される化合物またはその塩のRで表される基をYで表される基に変換して、上記一般式(VIII)で表される化合物またはその塩を得る。
【請求項16】
下記工程(a)、(d)および(e)を含むことを特徴とする、一般式(VIII):

(式中、Pは水素原子、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基またはハロアルキル基を示し、Rは置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を示し、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示し、Yは置換基を有していてもよいヘテロ環基、置換基を有していてもよいアシル基またはハロアルキル基を示す。)で表される化合物またはその塩の製造方法;工程(a):一般式(I):

(式中、Pは前記と同意義を示し、RおよびRは同一または異なって、それぞれ独立してアルキル基を示すか、または隣接する窒素原子と一緒になって脂肪族複素環を形成してもよく、波線はシス体若しくはトランス体またはそれらの混合物であることを示す。)で表される化合物を一般式(II):

(式中、Rは前記と同意義を示し、Rは水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す。)で表される化合物またはその塩と反応させて、一般式(III):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物またはその塩を得;
工程(d):得られた一般式(III)で表される化合物またはその塩を、Rが水素原子以外の場合は水素原子に変換した後、一般式(V):

〔式中、Rは前記と同意義を示し、Rは水素原子、水酸基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基または−N(R)−OR(ここで、RおよびRは同一または異なって、それぞれ独立して、アルキル基を示す。)を示す。〕で表される化合物またはその塩と縮合させて、一般式(VI):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物またはその塩を得;
工程(e):得られた一般式(VI)で表される化合物またはその塩のRで表される基をYで表される基に変換して、上記一般式(VIII)で表される化合物またはその塩を得る。
【請求項17】
一般式(I):

(式中、Pは水素原子、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基またはハロアルキル基を示し、RおよびRは同一または異なって、それぞれ独立してアルキル基を示すか、または隣接する窒素原子と一緒になって脂肪族複素環を形成してもよく、波線はシス体若しくはトランス体またはそれらの混合物であることを示す。)で表される化合物を一般式(II):

(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を示し、Rは水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す。)で表される化合物またはその塩と反応させて、一般式(III):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物またはその塩を得、
得られた一般式(III)で表される化合物またはその塩を、Rが水素原子以外の場合は水素原子に変換した後、一般式(IX):

(式中、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示し、Yは置換基を有していてもよいヘテロ環基、置換基を有していてもよいアシル基またはハロアルキル基を示す。)で表される化合物またはその塩と縮合させることを特徴とする、上記一般式(VIII):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物またはその塩の製造方法。
【請求項18】
Pがメチル基、エチル基またはベンジル基である、請求項15〜17のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項19】
が置換基を有していてもよいフェニル基またはメチル基である、請求項15〜17のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項20】
が水素原子、メチル基またはtert−ブチル基である、請求項15〜17のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項21】
請求項15〜20のいずれか一項の製造方法により得られる一般式(VIII):

(式中、Pは水素原子、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基またはハロアルキル基を示し、Rは置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を示し、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示し、Yは置換基を有していてもよいヘテロ環基、置換基を有していてもよいアシル基またはハロアルキル基を示す。)で表される化合物またはその塩を脱保護することを特徴とする、一般式(XII):

(式中、各記号は前記と同意義を示す。)で表される化合物またはその塩の製造方法。
【請求項22】
酵素反応により脱保護することを特徴とする、請求項21記載の製造方法。
【請求項23】
酸性条件により脱保護することを特徴とする、請求項21記載の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/042499
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【発行日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515220(P2005−515220)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016621
【国際出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】