説明

ピリミジン誘導体またはその塩の製造法

【課題】一酸化窒素の産生阻害活性を有する化合物を製造するための中間体として有用なピリミジン誘導体Iの新規製造法の提供。
【解決手段】6−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジノール等を出発原料として、適当な溶媒中で、ハロゲン化を施し、生成した塩に、アルカリ金属アルコキシドの存在化、ピペリジン化合物を反応させるなどの過程を経て、一般式I


[式中、R1は水素または適当な置換基を表す]で示されるピリジミン誘導体またはその塩を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば一酸化窒素(NO)の産生に対して強い阻害活性を有する新規で有用なペプチド化合物を製造するための中間体として有用な公知のピリミジン誘導体(I)の新規製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物(II)を原料化合物として使用したピリミジン誘導体(I)の製造法はWO02/055541号公報、特に製造例27、続く実施例41に具体的に記載されている。
【0003】
しかしながら、この製造法は環境負荷が大きくなること等より、大量生産には不向きである。
産業上の利用の可能性
本発明は、ピリミジン誘導体(I)の新規な工業的製造法を提供するものである。
【発明の開示】
【0004】
本発明は一般式:
【0005】
【化1】

【0006】
[式中、R1は水素または適当な置換基を意味する]
で示されるピリミジン誘導体(I)またはその塩の製造法に関する。
【0007】
本発明によるピリミジン誘導体(I)またはその塩の製造法は下記の通りである。
製造法:
【0008】
【化2】

【0009】
[式中、Rは前と同じ意味であり、Rはアミノ保護基、Xはハロゲンを意味する]
本発明の発明者等は、ピリミジン誘導体(I)の新規製造法についての種々の研究の結果、化合物(II)に適当な溶媒中、ハロゲン化を施して得られる化合物(III)に、アルカリ金属アルコキシドの存在下、化合物(IV)を反応させて得られる化合物(V)をアミノ保護基の脱離反応に付して目的とするピリミジン誘導体(I)が得られることを見出した。
本発明は、安価な原料を用い、さらに、従来法で使用された危険物第5類に属するDIAD(diisopropylazodicarboxylate)の使用を回避していること、また、公園反応を経由しないため、オレフィン体が生成しないこと等、従来法より大幅に工業化製造に対応した合成ルートである。
本発明で得られるピリミジン誘導体(I)の塩としては、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などの無機塩基との塩、例えばトリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルジアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩等の有機アミン塩などの有機塩基との塩のような塩基との塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸付加塩、例えばぎ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩等の有機酸付加塩のような酸との塩等が挙げられる。
【0010】
本発明で得られるピリミジン誘導体(I)およびその塩は、例えば一酸化窒素(NO)の産生に対して強い阻害活性を有する新規で有用なペプチド化合物を製造するための中間体として有用である。
【0011】
このピリミジン誘導体(I)及びその塩からは、WO02/055541号公報に記載された最終目的化合物の一部を製造することができ、ヒト及び動物における、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)や喘息などの呼吸系疾患;心血管虚血、心筋炎、心不全、低血圧及びアテローム性動脈硬化症などの心血管系疾患;糖尿病(例えば、インスリン依存性糖尿病など)、糖尿病の合併症(例えば、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害など)及び痛風などの内分泌系疾患;糸球体腎炎や腎不全などの腎疾患;消化性潰瘍や炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎や慢性大腸炎など)などの胃腸系疾患;膵炎などの膵疾患;肝炎や肝硬変などの肝疾患;滑膜炎、関節炎、変形性関節症、骨粗鬆症などの骨や関節の疾患;慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス及び多発性硬化症などの自己免疫疾患;皮膚炎や湿疹などの皮膚疾患;充実性腫瘍や転移などの癌;臓器移植による拒絶反応;ショック(例えば、敗血症ショックなど);敗血症誘発全身性炎症反応症候群;並びに、男性性機能障害(例えば、勃起機能障害)及び女性性機能障害(例えば、陰核障害に関連するオルガズム機能障害)などの性機能障害を含むNO媒介性疾患の予防又は治療のための医薬として有用であり、このペプチド化合物またはその塩はピリミジン誘導体(I)またはその塩をWO02/055541号公報に記載された方法により製造することができる。
【0012】
この明細書の前述の及び後述の記載において、定義の範囲内に包含される種々の適当な例が以下に詳しく説明される。
【0013】
この明細書で用いられる「低級」という用語は、別段の指示のない限り1〜6個の炭素原子を意味するものとする。
【0014】
適当な「ハロゲン」としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。
【0015】
「適当な置換基」としては、モノ(もしくはジもしくはトリ)ハロ(低級)アルキル基(たとえばクロロメチル、ブロモメチル、クロロプロピル、1,2−ジクロロエチル、1,2−ジブロモエチル、2,2−ジクロロエチル、トリフルオロメチル、1,2,2−トリクロロエチル、等)、低級アルコキシ基(たとえばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、等)、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、低級アルキル(たとえばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、等)等が挙げられる。
適切な「アミノ保護基」としては、例えば、アシル、及びモノ(又はジ又はトリ)アリール(低級)アルキル、例えば、モノ(又はジ又はトリ)フェニル(低級)アルキル(例えば、ベンジル、トリチルなど)などの従来の保護基が挙げられる。該アシルの適切な例としては、1〜3個のハロゲン原子によって置換されていてもよい低級アルカノイル(例えば、ホルミル、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、2−メチルプロパノイル、ペンタノイル、2,2−ジメチルプロパノイル、ヘキサノイル、トリクロロアセチル、トリフルオロアセチルなど)、低級アルコキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、tert−ぺンチルオキシカルボニルなど)、アリール(低級)アルコキシカルボニル[例えば、フェニル(低級)アルコキシカルボニル(例えば、ベンジルオキシカルボニルなど)など]などの脂肪族アシルが挙げられる。
【0016】
この発明のピリミジン誘導体(I)の製造法を以下に詳しく説明する。
製造法:
ピリミジン誘導体(I)またはその塩は、化合物(II)またはその塩に適当な溶媒中、ハロゲン化を施して得られる化合物(III)またはその塩に、アルカリ金属アルコキシドの存在下、化合物(IV)またはその塩を反応させて得られる化合物(V)またはその塩をアミノ保護基の脱離反応に付すことによって製造することができる。化合物(II)、(III)、(IV)および(V)の適当な塩としては、化合物(I)で例示した様な酸との塩等があげられる。
【0017】
使用されるハロゲン化剤としては、例えば3塩化燐、5塩化燐等が挙げられる。また、使用されるアルカリ金属アルコキシドとしては、例えば、カリウム第3級ブトキシド等が挙げられる。
【0018】
それぞれの反応は、実施例記載の溶媒または、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、メタノール、エタノール等の反応に悪影響を及ぼさない慣用の溶媒の存在下又は不存在下に行われる。反応温度は特に限定されないが、通常、室温ないし加熱下に行われる。
アミノ保護基の脱離反応は、加水分解、還元などの従来の方法が挙げられる。
【0019】
本発明による、化合物(II)またはその塩からピリミジン誘導体(I)またはその塩の製造は、途中単離精製することなく連続して行うことができる。
【0020】
以下、本発明を実施例によって説明する。
[実施例]
実施例1
6−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジノール(20.0g)のDMF(100ml)溶液にPOCl(21.9g)を0〜20℃で滴下した。5時間室温で攪拌後、0〜30℃で反応液を水(100ml)に注加した。混液を24%NaOH水溶液(約60ml)によって0〜25℃でpH4.5〜5.0に調節した。トルエン(60ml)で抽出後、水層をトルエン(60ml)で再抽出した。有機層を合わせて、20%食塩水(40ml)で洗浄した。得られた4−クロロ−6−トリフルオロメチルピリミジンを含む有機層は溶液(約128ml)のまま次工程で使用した。
1−ベンジル−4−ヒドロキシピペリジン(5.00g)のTHF(50ml)溶液にtBuOK(3.52g)を0〜5℃で加えた。続けて4−クロロ−6−トリフルオロメチルピリミジンのトルエン溶液を0〜10℃で滴下後、反応液を室温で3.5時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、酢酸エチル(50ml)、水(50ml)を加え分液した。有機層を20%食塩水(25ml)で洗浄した。有機層を減圧濃縮し、オイル状の4−[1−ベンジル−4−ピペリジニルオキシ]−6−トリフルオロメチルピリミジンを得た。
1H NMR (CDCl3, 200MHz): δ 8.83 (s, 1H, CH pyrimidine), 7.40-7.20 (m, 5H, Ph), 7.04 (s, 1H, CH pyrimidine), 5.40-5.10 (m, 1H, CH piperidine), 3.54 (s, 2H, PhCH2), 2.88-2.60 (m, 2H, piperidine), 2.45-2.22 (m, 2H, piperidine), 1.95-1.73 (m, 2H, piperidine)
【0021】
得られた4−[1−ベンジル−4−ピペリジニルオキシ]−6−トリフルオロメチルピリミジンをメタノール(25ml)に溶解させ、濃縮する操作を2回繰り返した。その後、室温でメタノール(75ml)に溶解させ、濃塩酸(1.0ml)、10%Pd/C(50%wet、20wt%)を加え、水素雰囲気下20時間攪拌した。反応終了後、濾過し、メタノール(25ml)で洗浄した。その後、濾液を減圧濃縮した。酢酸エチル(50ml)を注加し、塩化水素の酢酸エチル溶液(4規定、10ml)を室温で注加した。減圧濃縮後、酢酸エチル(25ml)を注加し、0〜5℃に冷却した後に1時間攪拌し、濾過した。酢酸エチル(15ml)で洗浄後、乾燥し、4−(4−ピペリジニルオキシ)−6−トリフルオロメチルピリミジン・塩酸塩(6.34g)を白色粉末として得た。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
【化1】

[式中、R1は水素または適当な置換基を意味する]
で示される化合物またはその塩に適当な溶媒中、ハロゲン化を施して得られる、式:
【化2】

[式中、R1は前と同じ意味であり、Xはハロゲンを意味する]
で示される化合物またはその塩に、アルカリ金属アルコキシドの存在下、式:
【化3】

[式中、R2はアミノ保護基を意味する]
で示される化合物またはその塩を反応させて得られる、式:
【化4】

[式中、R1およびR2はそれぞれ前と同じ意味である]
で示される化合物またはその塩をアミノ保護基の脱離反応に付して、一般式:
【化5】

[式中、R1は前と同じ意味]
で示されるピリジミン誘導体またはその塩を得ることを特徴とするピリミジン誘導体またはその塩の製造法。