ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップ
【課題】開封が容易で、かつ指部の圧痛が無いピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを提供する。
【解決手段】ピルファープルーフバンドは、破断を容易にする引き剥がし開始部と前記引き剥がし開始部に延設されたツマミとを付設し、前記ツマミは、その内周に形成された複数の凸部の頂部および前記頂部のツマミ後端側に形成されたツマミ接続部とによってピルファープルーフバンドに固定されることを特徴とするピルファープルーフバンド付きオーバーキャップである。
【解決手段】ピルファープルーフバンドは、破断を容易にする引き剥がし開始部と前記引き剥がし開始部に延設されたツマミとを付設し、前記ツマミは、その内周に形成された複数の凸部の頂部および前記頂部のツマミ後端側に形成されたツマミ接続部とによってピルファープルーフバンドに固定されることを特徴とするピルファープルーフバンド付きオーバーキャップである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉ミルク等の固形状食品入り缶容器に装着するオーバーキャップであり、不正開封を容易に検知できるピルファープルーフバンドが付設され、かつ容易にピルファープルーフバンドを除去できるピルファープルーフバンド付きオーバーキャップおよび該オーバーキャップを装着したオーバーキャップ付き固形状食品入り缶容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉ミルク等の比較的口径の大きい缶には、開缶後の包装内容物への湿気・臭い等の浸入、付着等を防止するためにいわゆるオーバーキャップが併用されている。また、流通段階の不正開封を防止するため、ピルファープルーフバンドが付設されるオーバーキャップも多用されている。ピルファープルーフバンドの有無により商品の開封の有無を判断する不正開封防止の効果を奏するものである。
【0003】
このようなピルファープルーフバンド付きオーバーキャップとして、盤状の蓋本体と、前記蓋本体の縁部から下方に連設され、内部に筒状缶容器のフランジ部の外形に沿って係合される溝部を備えるスカート部と、前記スカート部の下端に連設されたピルファープルーフバンドと、該ピルファープルーフバンドの下端に連設された、周方向に並ぶ複数の折り返し羽根を備え、前記スカート部とピルファープルーフバンドの間には引き裂き可能な薄肉部が形成され、ピルファープルーフバンドにはピルファープルーフバンド把持用ツマミが設けられていることを特徴とするオーバーキャップがある(特許文献1)。折り返し羽根をピルファープルーフバンドの内側に折り曲げた状態でオーバーキャップを包装内容物の入った筒状缶に嵌合させることで、従来のようにピルファープルーフバンドの下端に指先を引っかけてオーバーキャップを円筒状缶から取り外すことができないピルファープルーフ性を確保できる、という。
【0004】
また、容器天面部と略同一形状の蓋本体と、該蓋本体の縁部の全周にわたって下方に延出し、前記突部に掛け止める掛止部を内側に有する第1スカート部とを備えるオーバーキャップであって、前記第1スカート部に連続して下方に延設されるとともに、前記容器の側部に向かって内傾して設けられる連結部と、該連結部に連続して下方に延設されるとともに、前記容器の側部に沿って設けられる第2スカート部とを備えることを特徴とする、オーバーキャップもある(特許文献2)。該構成によれば、連結部で容器の側部に近接し、それに連続した第2スカート部が容器の側部に沿って配設されるため、未開封時に容器に密着して外しにくいオーバーキャップを提供できるという。特許文献2記載のオーバーキャップでは、前記第1スカート部と第2スカート部との連設部がピルファープルーフバンドとなっており、引き剥がし開始部に延設してツマミが連設されている。本願明細書の図15のオーバーキャップの平面図に示すように、特許文献2記載のオーバーキャップには、ピルファープルーフバンド(109)の引き剥がし開始部(112)が薄肉部で形成され、引き剥がし開始部(112)に隣接してツマミ(111)がピルファープルーフバンド(109)と一体に設けられている態様が示されている。ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップは、未開封時には缶容器に安定して装着され、ピルファープルーフバンドを除去することで、開封の事実を知らせるものであるから、ピルファープルーフバンドを除去する際には、これを容易に除去できる必要がある。このため、ツマミ(111)にはピルファープルーフバンド(109)に向かって6〜7個のリブが形成され、ツマミ(111)の把持を容易にしている。なお、引き剥がし開始部(112)に隣接して形成されるツマミ(111)は、前記複数のリブを形成する凸部を連設部(111A)としてピルファープルーフバンド(109)の円周に沿って本体に固定されている。ツマミ(111)が複数の連設部(111A)を介してピルファープルーフバンド(109)の円周に沿って本体に固定されている態様を図16に示す。ツマミ(111)の先端(111C)をめくるようにしてピルファープルーフバンド(109)から引き離すと、連設部(111A)が破断されるとともに引き剥がし開始部(112)が破断され、ピルファープルーフバンド(109)が除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−161325号公報
【特許文献2】特開2006−282199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図16に示すように、ツマミ(111)に形成される凸部は、ツマミ(111)側を裾野としてピルファープルーフバンド(109)に向かって頂部を形成する凸部であり、この頂部がピルファープルーフバンド(109)と連設して連設部(111A)を形成している。ツマミ(111)を引張って連設部(111A)を破断すると、連設部(111A)が順次破断され、前記破断部を頂点とする凸部からなるリブが形成される。このような凸部は、ツマミのすべり防止には好適であるが、更にツマミ(111)を引っ張ってピルファープルーフバンド(109)を除去する際には、この凸部を指で押圧する必要があり、押圧する指に圧痛を感じる場合がある。したがって、開封時に圧痛がない、ツマミの開発が望まれる。
【0007】
また、ツマミ(111)側を裾野とする凸部が形成され、この凸部の先端がピルファープルーフバンド(109)に接触して連設部(111A)を形成する場合、ツマミとピルファープルーフバンドとの連設部(111A)の破断を容易にするために、前記連設部は、ツマミ(111)の上端側でのみピルファープルーフバンド(109)と接触する構成となる。すなわち、図17に示すように、ツマミ(111)の下端から上端に向かって肉厚部が形成され、この肉厚部が連設部(111A)となってツマミ(111)の上端部でピルファープルーフバンド(109)に固定される。このため、ツマミ(111)を離脱するために、肉厚の連設部(111A)を破断しうる強い引っ張り力が必要となっている。このため、弱い力でもツマミを引っ張って開封できるピルファープルーフバンドの開発が望まれる。
【0008】
一方、ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップは、射出成形によって製造されるが、ツマミとピルファープルーフバンドとの固定が十分でないと、製品を金型からはずす際にツマミ(111)がピルファープルーフバンド(109)から分離し、製品とすることができない。したがって、離型時にツマミとピルファープルーフバンドとが安定して固定されるピルファープルーフバンドの開発が望まれる。
【0009】
一方、ツマミは、ピルファープルーフバンド(109)を除去するために付設されたものであり、把持が容易でないとこのような引張りを効率的に行うことができない。したがって、引っ張り時に把持が容易なツマミの開発が望まれる。
【0010】
また、ピルファープルーフバンドは、本来、不正開封を検知するものであるから、ピルファープルーフバンドを切除することなくオーバーキャップを缶容器から外し、再度オーバーキャップを元に戻すことができると、外観からは、オーバーキャップが一旦取り外されたことがわからず、不正開封を検知することができない。したがって、缶容器との固定安定性に優れるピルファープルーフバンド付きオーバーキャップ、およびオーバーキャップ付き固形状食品入り缶容器の開発が望まれる。
【0011】
加えて、オーバーキャップは、使用の都度缶容器から脱着されるものであって、偏平であるため繰り返し使用によって直径線上に亀裂が入り、または破損される場合がある。このような破損は内容物の保存性を著しく低下するため、回避する必要がある。
【0012】
上記現状に鑑み、本発明は、不正開封を効率的に予防しうるピルファープルーフバンドが付設されたオーバーキャップを提供することを目的とする。
また、本発明は、開封時にツマミを介して容易にピルファープルーフバンドを除去しうるオーバーキャップを提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、繰り返し使用によっても破損が少ないピルファープルーフバンドが付設されたオーバーキャップを提供することを目的とする。
また、本発明は、上記オーバーキャップが装着されたオーバーキャップ付き固形状食品入り缶容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、ピルファープルーフバンドに付設されるツマミの構造を詳細に検討した結果、ツマミの内周に複数の凸部を形成し、前記複数の凸部の頂部および前記頂部のツマミ後端側に形成されたツマミ接続部とによってツマミと前記凸部とを連設すれば、離型時にもツマミとピルファープルーフバンドとを安定して固定することができ、開封時にはツマミを容易に剥離することができ、かつツマミとピルファープルーフバンドとの連設部が破断した際に発生するツマミ側の凸部の頂部近傍に平坦部を形成できるため開封時の指部の押圧による圧痛を抑制できること、前記ツマミの端部にR状の突起を形成すればツマミを把持した際のすべりを防止することができ、かつ端部の丸みによって触りが柔らかくなること、前記凸部の連設部を、オーバーキャップ本体とピルファープルーフバンドとを連設する肉薄部と同位置に形成すれば、ピルファープルーフバンドの分離方向と同一であるためオーバーキャップ本体から容易にピルファープルーフバンドを除去できること、このようなピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを装着する缶容器の形状を特定することで、缶容器とピルファープルーフバンド付きオーバーキャップとの固定安定性に優れるオーバーキャップ付き固形状食品入り缶容器となることを見出し、本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、本発明は、オーバーキャップ本体と、前記オーバーキャップ本体の下端に肉薄部を介して連設されるピルファープルーフバンドとからなり、前記ピルファープルーフバンドは、破断を容易にする引き剥がし開始部と前記引き剥がし開始部に延設されたツマミとを付設し、前記ツマミは、前記ツマミの内周に形成された複数の凸部の頂部および前記頂部のツマミ後端側に形成されたツマミ接続部とによってピルファープルーフバンドに固定されることを特徴とする、ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを提供するものである。
【0016】
また、本発明は、上記ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップが装着されたオーバーキャップ付き固形状食品入り缶容器を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップは、ピルファープルーフバンドに付設されるツマミが、ツマミの内周に形成された複数の凸部の頂部および前記頂部のツマミ後端側に形成されたツマミ接続部とによって固定されるため、離型時にもツマミが剥離されることがない。なお、前記凸部の後端部側に形成されるツマミ接続部によって凸部の頂部近傍に平坦部を形成できるため、従来のツマミの内側にリブが形成される場合に生じる開封時の指部の圧痛を防止することができる。
【0018】
本発明では、ツマミの開放端部にR状の突起が形成されるため、ツマミを安定して把持することができる。
また、前記オーバーキャップ本体は、天面部と前記天面部の縁部から下方に連設される側壁部とからなり、前記側壁部の内側にその下端から上端に向かう複数の凹部が形成されるため装着時に内部の空気が逸脱し、簡便に装着することができる。また、前記凹部は天面部の直径線上に存在しないため脱着時に二つ折りせず平面を維持できるため、折り曲げによる破損を効率的に回避することができる。
【0019】
また、本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップは、高密度ポリエチレン樹脂に対して所定量の低密度ポリエチレン樹脂を配合した混合物で構成されるため、柔軟性を有するとともに剛性を確保できるため、前記ツマミによるピルファープルーフバンドの離脱を容易に行うことができ、かつ脱着時の機械的強度を高く維持することができる。
【0020】
また、本発明のオーバーキャップ付き固形状食品入り缶容器は、ピルファープルーフバンドと缶容器との密着性に優れ、不正開封防止効果に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの一例を示す図である。図1(a)は、その平面図であり、図1(b)は側面図、図1(c)は底面図である。
【図2】本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの底面図であって、ツマミ(4)の部分拡大図である。
【図3】ツマミ内周に形成した凸部が、その前端および後端でツマミに固定する態様を示す図である。
【図4】本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの底面図であって、ツマミ(4)の部分拡大図であり、ツマミ内周に形成した凸部が、その凸部の頂部とその後端でツマミに固定する態様を示す図である。
【図5】本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの部分断面図である。
【図6】薄肉で構成される引き剥がし開始部(3c)を含むピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの縦断面図である。
【図7】本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを装着しうる缶容器を説明する図である。
【図8】缶容器に本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを装着した部分断面図である。
【図9】缶容器に本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを装着した他の態様の部分断面図である。
【図10】本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを缶容器に装着した斜視部分断面図である。
【図11】ピルファープルーフバンドを除去した後の缶容器とオーバーキャップとを説明する図である。
【図12】本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの横断面図であり、オーバーキャップ本体の内部構造を説明する図である。
【図13】本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップ本体の底面図であり、側壁部の5箇所に凹部が形成される態様を示す図である。
【図14】図13の凹部の拡大図であり、凹部の底部がRの丸みを有する態様を示す図である。
【図15】特許文献2記載のオーバーキャップのツマミの形状を説明する図である。
【図16】従来のピルファープルーフバンドに付設されるツマミが複数の連設部を介してピルファープルーフバンドに固定されている態様を説明する図である。
【図17】従来のピルファープルーフバンドに付設されるツマミとピルファープルーフバンドとの連設部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第一は、オーバーキャップ本体と、前記オーバーキャップ本体の下端に肉薄部を介して連設されるピルファープルーフバンドとからなり、前記ピルファープルーフバンドは、破断を容易にする引き剥がし開始部と前記引き剥がし開始部に延設されたツマミとを付設し、前記ツマミは、ツマミの内周に形成された複数の凸部の頂部および前記頂部のツマミ後端側に形成されたツマミ接続部とによってピルファープルーフバンドに固定されることを特徴とする、ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップである。以下、詳細に説明する。
【0023】
本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの好適な態様の一例を図1に示す。図1(a)は、ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの平面図であり、図1(b)は部分側面断面図、図1(c)は底面図である。図1(a)に示すように、ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップは、平面視円形のオーバーキャップ本体(2)を有する。また、図1(b)に示すように、オーバーキャップ本体(2)とピルファープルーフバンド(3)とは、オーバーキャップ本体(2)の下端に形成した肉薄部(5)を介して連設され一体に成形される。また、図1(c)に示すように、ピルファープルーフバンド(3)の外周に沿うようにツマミ(4)が固定される。該ツマミ(4)は、ピルファープルーフバンド(3)の破断を容易にする引き剥がし開始部(3c)に延設して形成される。オーバーキャップ本体(2)の初期開封時、前記ツマミ(4)をつまんで円周方向へと引くと前記引き剥がし開始部(3c)が破断されるとともに円周方向に沿って肉薄部(5)を破断しつつピルファープルーフバンド(3)を切除することができる。
【0024】
図2に、ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの底面図であって、ツマミ(4)の部分拡大図を示す。ピルファープルーフバンド(3)には、薄肉で構成される引き剥がし開始部(3c)が形成され、ツマミ(4)の端部が該開始部(3c)に延設される。
【0025】
このツマミ(4)は、ツマミ(4)の内周に沿って形成された複数の凸部(4a)によってピルファープルーフバンド(3)に固定され、より詳細には、前記ツマミ(4)は、前記凸部(4a)の頂部と前記頂部のツマミ後端側(引き剥がし開始部(3c)側)に形成されたツマミ接続部(4c)とによってピルファープルーフバンドに固定されている。なお、本発明において、「ツマミの内周に形成された凸部」とは、ツマミを裾野としてピルファープルーフバンドに向かって頂部を形成する凸部を意味する。単に、凸部(4a)の頂点で点接触するようにピルファープルーフバンド(3)と連設する場合には接着が弱く、射出成形などでピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを成形した後に金型から成形品を取り出す際にツマミ(4)がピルファープルーフバンド(3)から外れる場合がある。一方、ツマミの開放端部(4b)を前端、引き剥がし開始部(3c)側を後端とする場合に、図3に示すように凸部(4a)の前端と後端との双方にツマミ接続部(4c)を形成すると、ツマミ(4)を剥離する際に大きな剥離力が必要となる。これに対し、図4(a)に示すように、凸部(4a)の後端側にのみツマミ接続部(4c)を形成すると、ツマミ(4)とピルファープルーフバンド(3)とを安定して固定することができ、しかも、ピルファープルーフバンド(3)の開封時にツマミ(4)を引っ張った際には、容易にツマミ(4)とピルファープルーフバンド(3)との接続を切断することができる。更に、ツマミ接続部(4c)によって複数の凸部(4a)によって形成される凹凸の起伏が緩和され、剥離時の手指の圧痛を回避することができる。
【0026】
本発明において、凸部(4a)やツマミ接続部(4c)の形状は、特に限定されるものではない。したがって、図4の(a)に示すように、凸部(4a)がその中心から左右対称に形成されるものであってもよく、図4の(b)に示すように非対称であってもよい。非対称である場合には、凸部(4a)の前端側の丸み(R)と後端側の丸み(R)とを異ならせ、後端側の丸み(R)が前端側の丸み(R)よりも大きくなるように凸部(4a)を形成することが好ましい。このように形成することで、ツマミ(4)とピルファープルーフバンド(3)との接触幅(W)を等しく確保することができ、かつツマミ接続部(4c)の端末の厚さ(D)を、図4(a)の厚さ(Da)から図4(b)の厚さ(Db)で示すように、Db<Daと浅くすることができる。このため、固定力を維持したままツマミ側に残るツマミ接続部(4c)の量を低減することができる。なお、接続部(4c)の凸部(4a)の頂部からツマミ接続部(4c)端部までの接続幅(W)は、0.5〜1.0mm、より好ましくは0.6〜0.8mmである。
【0027】
本発明において、前記凸部(4a)は、ツマミ(4)の全長に亘って形成される必要はなく、例えば図2に示すように、ツマミ(4)の両端部を除く中央部に2〜5個の凸部(4a)を形成してピルファープルーフバンド(3)に固定する態様のほか、ツマミ(4)の開放端部から一定距離をあけて2〜3個の凸部(4a)を形成してピルファープルーフバンド(3)に固定する態様などであってもよい。
【0028】
本発明では、前記ツマミ(4)の開放端部(4b)は、角部を有する切り落としであってもよいが、図2に示すように、開放端部がツマミの外周側または内周側に突出するR状の突起(4b’)を有することが好ましい。また、ツマミ(4)の開放端部は、図10(b)に示すように、オーバーキャップ本体(2)側に突出するR状の突起(4b”)を有するものであってもよく、角部をなくして手に優しくすることができる。本発明では、ツマミの開放端部(4b)の突起(4b’)、(4b”)は、その双方が形成されるものであってもよい。このようにツマミ(4)の開放端部(4b)をR状に成形することで角部をなくし、開封時の指部の接触感を向上させることができる。また、R状の突起(4b’)や丸状の突起(4b”)によって開封時の指部によるツマミ(4)の把持を安定させることができる。なお、本発明は、ツマミ(4)がその内周に形成された複数の凸部(4a)と連設してピルファープルーフバンド(3)に固定される構成に特徴があり、ツマミ(4)の端部が引き剥がし開始部(3c)の近傍からピルファープルーフバンド(3)から延設される構成は、従前と同様の態様を適用することができる。
【0029】
図5に、本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの部分断面図を示す。図5に示すように、前記凸部(4a)は、側面視、ツマミ(4)の上端部に形成され、かつオーバーキャップ本体(2)とピルファープルーフバンド(3)とを連設する肉薄部(5)と同位置であることが好ましい。肉薄部(5)と凸部(4a)とが同位置で接触することで剥離時には容易にツマミ(4)を剥離し、かつオーバーキャップ本体(2)とピルファープルーフバンド(3)との分離を容易に行えるからである。なお、図5は、凸部(4a)のややツマミ先端側の断面を示す。
【0030】
また、ピルファープルーフバンド(3)は、オーバーキャップ本体(2)の下端の肉薄部(5)から漸増する肉厚部(3a)とその下端に形成される缶容器接触部(3b)とを有し、前記缶容器接触部(3b)の高さは、ピルファープルーフバンド(3)の高さの1/3〜2/3であることが好ましい。この範囲でピルファープルーフバンド(3)と缶容器とが接触すると、缶容器に装着したピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの固定安定性が向上するからである。なお、図5において、一点波線は、缶容器の位置を示す。
【0031】
なお、図6に薄肉で構成される引き剥がし開始部(3c)を含むピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの縦断面図を示す。ピルファープルーフバンド(3)の内側の肉厚を0.2〜0.4mm、より好ましくは0.25〜0.35mmに形成して引き剥がし開始部(3c)を構成することができる。なお、引き剥がし開始部(3c)の厚さは、缶容器にピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを装着する際に、ピルファープルーフバンド(3)が環状に維持できる程度の強度が確保できればよい。
【0032】
本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップは、ピルファープルーフバンドに付設されたツマミが、ツマミの内周に形成された複数の凸部と連設してピルファープルーフバンドに固定される点に特徴があり、したがって、ピルファープルーフバンドの形状に制限はない。このため、例えば、特開2004−161325号公報に記載されるように、ピルファープルーフバンドの下端に連設された周方向に並ぶ複数の折り返し羽根を備えるものや、特開2006−282199号公報に記載されるように、ピルファープルーフバンドの下端に延設されるスカート部を有するものなどに上記した態様でツマミ(4)をピルファープルーフバンド(3)に固定することで、本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップとすることができる。
【0033】
更に、本発明では、ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを装着する缶容器にも限定はない。なお、本明細書において「缶容器」とは、内容物が収納されている状態の缶を意味しており、このような内容物は粉末食品が好ましく、特に粉ミルク等の粉乳製品であることが推奨される。かかる内容物入り缶容器においては、缶容器の形状とピルファープルーフバンド付きオーバーキャップとの形状とを適合させることでより固定安定性に優れるオーバーキャップ付き固形状食品入り缶容器とすることができる。以下、便宜のため、所定形状の缶容器とこの缶容器に装着するピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを例示して説明する。
【0034】
本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを装着しうる缶容器(1)は、図7に示すように、金属製の円筒部材からなる胴部(12)と、少なくとも該胴部(12)の上端に巻締部(11)によって固定された天面部(13)とからなる。天面部(13)は金属で構成される場合に限定されず、たとえばプラスチックと金属箔、金属または金属酸化物の蒸着膜、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリアクリロニトリル樹脂、エチレン−酸化ビニル共重合体等のガスバリア性フィルムその他の合成樹脂フィルムまたは防湿紙などからなる中央部と、その外周に形成された金属部とからなり、この金属部が前記巻締部(11)で固設される態様であってもよい。天面部(13)の少なくとも一部を除去することで、内容物を取り出すための開口部が形成される。天面部を覆うようにオーバーキャップを装着することで、開口部が外部と直接接触することを防止することができる。
【0035】
前記缶容器(1)の前記胴部(12)上方部分には、該胴部(12)の外周に沿って突出する凸部(7)が前記胴部(12)の一周にわたって形成されていることが好ましい。このような缶容器(1)に本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを装着した部分断面図を図8に示す。この凸部(7)は、断面視で略半円弧形状の膨らみからなり、図8に示すように、ピルファープルーフバンドの下端が当接し、ピルファープルーフバンド(3)の下端からの指先によるアクセスを防止することができ、前記ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップが上方へと移動して缶容器(1)から離脱することを阻止することができる。
【0036】
また、缶容器(1)としては、さらに前記凸部(7)の上部に凸部(7)と平行して凸部(7’)が前記胴部(12)の一周にわたって形成されていてもよい。このような缶容器(1)に本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを装着した部分断面図を図9に示す。図9に示すように、前記缶容器(1)に装着した前記ピルファープルーフバンド(3)の下端部は、前記缶容器(1)に形成した凸部(7)と接触し、かつピルファープルーフバンド(3)の缶容器接触部(3b)の上端が凸部(7’)と当接するため、ピルファープルーフバンド(3)を缶容器(1)に安定に固定する効果を奏する。すなわち、ピルファープルーフバンド(3)の缶容器接触部(3b)を缶容器(1)に形成した上下の凸部(7),(7’)で挟み込むことにより、ピルファープルーフバンド(3)の下端へと指先が掛かることを防止するとともに、たとえオーバーキャップ(2)を上方へ押し上げても、ピルファープルーフバンド(3)と凸部(7’)が当接して、ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの上方向への移動を阻止することができる。なお、図10(a)に本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを缶容器(1)に装着した斜視部分断面図を示す。なお、ツマミ(4)近傍の拡大図を図10(b)に示す。オーバーキャップ本体(2)の下端に連設されたピルファープルーフバンド(3)の、ツマミ(4)を円周方向に引くことにより、引き剥がし開始部(3c)を起点に円周方向へとピルファープルーフバンド(3)が切除されて、図11に示すように、初めてオーバーキャップ本体(2)を取り外すことができる。このように、ピルファープルーフバンド(3)を切除した後において、初めてオーバーキャップ本体(2)を取り外すことが可能となるため、商品購入前にオーバーキャップ付き固形状食品入り缶容器の不正開封を防止することができる。
【0037】
なお、オーバーキャップ本体(2)の形状に限定はないが、缶容器(1)との関連を考慮すれば、例えば、図12に示すように円形状の天面部(2a)と、該天面部(2a)の外周縁より下方へと側壁部(2b)を有し、前記側壁部(2b)の内側には、凹状のくぼみからなる掛止部(9)が形成されていてもよい。前記したように、缶容器(1)の上縁に形成された巻締部(11)を、オーバーキャップ本体(2)の前記掛止部(9)へ掛止することにより、オーバーキャップ本体(2)を缶容器(1)に着脱自在に固定することができる。
【0038】
更に、前記オーバーキャップ本体(2)は、前記側壁部(2b)の内側にその下端から上端に向かう複数の凹部(2c)が形成されることが好ましい。この態様を図13に示す。このような凹部(2c)は、オーバーキャップ本体(2)を缶容器(1)に装着する際の空気穴として機能させることができる。また、複数の凹部(2c)が形成される場合、凹部(2c)の数に制限はないが好ましくは3〜10である。特に、3、5、7、9などの奇数個であることが好ましい。図13では、5箇所に凹部(2c)が形成される態様を示す。本発明では、複数の凹部(2c)の任意の2箇所は、前記天面部(2a)の対角線上に形成されないことが好ましい。凹部(2c)は空気穴として重要であるが、側壁部(2b)の肉厚を低減して形成されるため機械的強度が低下しやすく、かつ薄肉となるためこの凹部(2c)を介して天面部(2a)が折れ曲がり易い。このような折れ曲がりは天面部(2a)の中央を経過するものであるが、2箇所の凹部(2c)が天面部(2a)の対角線上にない場合には、天面部(2a)が中央から二つに折れることを回避することができ、折れ曲がりによるオーバーキャップ本体(2)の劣化を防止することができる。
【0039】
また、前記側壁部の内側に形成された凹部(2c)は、図14に示すように、その底部がRの丸みを有することが好ましい。凹部(2c)の形成によって前記した凹部(2c)を介する天面部(2a)が折れ曲がりを回避することができる。
【0040】
前記ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップは、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂を射出成形して形成することができる。より好ましくは、高密度ポリエチレン樹脂と低密度ポリエチレン樹脂との混合物からなり、その混合比は、高密度ポリエチレン樹脂1質量部に対し、低密度ポリエチレン樹脂1〜10質量部である。本発明は、射出成形時のピルファープルーフバンドとツマミとの安定固定性、使用開始時にツマミを剥離する際のツマミ接続部(4c)の易破断性、オーバーキャップ本体(2)の折れ曲がり回避と折れ曲がりによる劣化防止を目的とするが、上記混合割合であれば、これらをいずれも満足させることができる。
【0041】
また、前記缶容器(1)としては、ストレート缶の胴部の上端に巻締部(11)によって固定された金属製の天面部(13)を有する3ピースの金属缶のみならず、その用途に応じて適宜選択することができる。例えば、粉ミルクを収納した缶容器であれば、前記天面部(13)の中央部に丸型の環状縁部を有する紙またはプラスチックと金属箔、金属または金属酸化物の蒸着膜、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリアクリロニトリル樹脂、エチレン−酸化ビニル共重合体等のガスバリア材料の複合材料からなる材料で形成してもよい。
【0042】
本発明のオーバーキャップ付き固形状食品入り缶容器において、固形状食品とは、固形の形態を有する食品のことであり、粉末状、ピース状、ブロック状など各種の形態が例示できる。また一つ一つのピースが包装されている個包装のピース状のものであってもよい。このような固形状食品は、硬いものでも、軟らかいものでも固形の形態を有していれば硬さは問わない。以上のような固形状食品としては、粉ミルク等の粉末状食品がもっとも好適である。
【符号の説明】
【0043】
1・・・缶容器、
2・・・オーバーキャップ(オーバーキャップ本体)、
2a・・・オーバーキャップ天面部(天面部)、
2b・・・オーバーキャップ側壁、
2c・・・オーバーキャップ側壁の凹部、
3・・・ピルファープルーフバンド、
4・・・ツマミ、
4a・・・ピルファープルーフバンドの凸部、
4b・・・ツマミ開放端部、
4b’・・・ツマミ開放端部の外周側に形成したR状の突起、
4b”・・・ツマミ開放端部のオーバーキャップ本体側に突出するR状の突起、
4c・・・ツマミ接続部、
5・・・肉薄部、
7・・・缶凸部、
7’・・・缶凸部、
9・・・掛止部、
11・・・巻締部、
12・・・缶胴部、
13・・・缶天面部、
W・・・ツマミとピルファープルーフバンドとの接触幅、
D・・・ツマミ接続部の端末の厚さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉ミルク等の固形状食品入り缶容器に装着するオーバーキャップであり、不正開封を容易に検知できるピルファープルーフバンドが付設され、かつ容易にピルファープルーフバンドを除去できるピルファープルーフバンド付きオーバーキャップおよび該オーバーキャップを装着したオーバーキャップ付き固形状食品入り缶容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉ミルク等の比較的口径の大きい缶には、開缶後の包装内容物への湿気・臭い等の浸入、付着等を防止するためにいわゆるオーバーキャップが併用されている。また、流通段階の不正開封を防止するため、ピルファープルーフバンドが付設されるオーバーキャップも多用されている。ピルファープルーフバンドの有無により商品の開封の有無を判断する不正開封防止の効果を奏するものである。
【0003】
このようなピルファープルーフバンド付きオーバーキャップとして、盤状の蓋本体と、前記蓋本体の縁部から下方に連設され、内部に筒状缶容器のフランジ部の外形に沿って係合される溝部を備えるスカート部と、前記スカート部の下端に連設されたピルファープルーフバンドと、該ピルファープルーフバンドの下端に連設された、周方向に並ぶ複数の折り返し羽根を備え、前記スカート部とピルファープルーフバンドの間には引き裂き可能な薄肉部が形成され、ピルファープルーフバンドにはピルファープルーフバンド把持用ツマミが設けられていることを特徴とするオーバーキャップがある(特許文献1)。折り返し羽根をピルファープルーフバンドの内側に折り曲げた状態でオーバーキャップを包装内容物の入った筒状缶に嵌合させることで、従来のようにピルファープルーフバンドの下端に指先を引っかけてオーバーキャップを円筒状缶から取り外すことができないピルファープルーフ性を確保できる、という。
【0004】
また、容器天面部と略同一形状の蓋本体と、該蓋本体の縁部の全周にわたって下方に延出し、前記突部に掛け止める掛止部を内側に有する第1スカート部とを備えるオーバーキャップであって、前記第1スカート部に連続して下方に延設されるとともに、前記容器の側部に向かって内傾して設けられる連結部と、該連結部に連続して下方に延設されるとともに、前記容器の側部に沿って設けられる第2スカート部とを備えることを特徴とする、オーバーキャップもある(特許文献2)。該構成によれば、連結部で容器の側部に近接し、それに連続した第2スカート部が容器の側部に沿って配設されるため、未開封時に容器に密着して外しにくいオーバーキャップを提供できるという。特許文献2記載のオーバーキャップでは、前記第1スカート部と第2スカート部との連設部がピルファープルーフバンドとなっており、引き剥がし開始部に延設してツマミが連設されている。本願明細書の図15のオーバーキャップの平面図に示すように、特許文献2記載のオーバーキャップには、ピルファープルーフバンド(109)の引き剥がし開始部(112)が薄肉部で形成され、引き剥がし開始部(112)に隣接してツマミ(111)がピルファープルーフバンド(109)と一体に設けられている態様が示されている。ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップは、未開封時には缶容器に安定して装着され、ピルファープルーフバンドを除去することで、開封の事実を知らせるものであるから、ピルファープルーフバンドを除去する際には、これを容易に除去できる必要がある。このため、ツマミ(111)にはピルファープルーフバンド(109)に向かって6〜7個のリブが形成され、ツマミ(111)の把持を容易にしている。なお、引き剥がし開始部(112)に隣接して形成されるツマミ(111)は、前記複数のリブを形成する凸部を連設部(111A)としてピルファープルーフバンド(109)の円周に沿って本体に固定されている。ツマミ(111)が複数の連設部(111A)を介してピルファープルーフバンド(109)の円周に沿って本体に固定されている態様を図16に示す。ツマミ(111)の先端(111C)をめくるようにしてピルファープルーフバンド(109)から引き離すと、連設部(111A)が破断されるとともに引き剥がし開始部(112)が破断され、ピルファープルーフバンド(109)が除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−161325号公報
【特許文献2】特開2006−282199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図16に示すように、ツマミ(111)に形成される凸部は、ツマミ(111)側を裾野としてピルファープルーフバンド(109)に向かって頂部を形成する凸部であり、この頂部がピルファープルーフバンド(109)と連設して連設部(111A)を形成している。ツマミ(111)を引張って連設部(111A)を破断すると、連設部(111A)が順次破断され、前記破断部を頂点とする凸部からなるリブが形成される。このような凸部は、ツマミのすべり防止には好適であるが、更にツマミ(111)を引っ張ってピルファープルーフバンド(109)を除去する際には、この凸部を指で押圧する必要があり、押圧する指に圧痛を感じる場合がある。したがって、開封時に圧痛がない、ツマミの開発が望まれる。
【0007】
また、ツマミ(111)側を裾野とする凸部が形成され、この凸部の先端がピルファープルーフバンド(109)に接触して連設部(111A)を形成する場合、ツマミとピルファープルーフバンドとの連設部(111A)の破断を容易にするために、前記連設部は、ツマミ(111)の上端側でのみピルファープルーフバンド(109)と接触する構成となる。すなわち、図17に示すように、ツマミ(111)の下端から上端に向かって肉厚部が形成され、この肉厚部が連設部(111A)となってツマミ(111)の上端部でピルファープルーフバンド(109)に固定される。このため、ツマミ(111)を離脱するために、肉厚の連設部(111A)を破断しうる強い引っ張り力が必要となっている。このため、弱い力でもツマミを引っ張って開封できるピルファープルーフバンドの開発が望まれる。
【0008】
一方、ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップは、射出成形によって製造されるが、ツマミとピルファープルーフバンドとの固定が十分でないと、製品を金型からはずす際にツマミ(111)がピルファープルーフバンド(109)から分離し、製品とすることができない。したがって、離型時にツマミとピルファープルーフバンドとが安定して固定されるピルファープルーフバンドの開発が望まれる。
【0009】
一方、ツマミは、ピルファープルーフバンド(109)を除去するために付設されたものであり、把持が容易でないとこのような引張りを効率的に行うことができない。したがって、引っ張り時に把持が容易なツマミの開発が望まれる。
【0010】
また、ピルファープルーフバンドは、本来、不正開封を検知するものであるから、ピルファープルーフバンドを切除することなくオーバーキャップを缶容器から外し、再度オーバーキャップを元に戻すことができると、外観からは、オーバーキャップが一旦取り外されたことがわからず、不正開封を検知することができない。したがって、缶容器との固定安定性に優れるピルファープルーフバンド付きオーバーキャップ、およびオーバーキャップ付き固形状食品入り缶容器の開発が望まれる。
【0011】
加えて、オーバーキャップは、使用の都度缶容器から脱着されるものであって、偏平であるため繰り返し使用によって直径線上に亀裂が入り、または破損される場合がある。このような破損は内容物の保存性を著しく低下するため、回避する必要がある。
【0012】
上記現状に鑑み、本発明は、不正開封を効率的に予防しうるピルファープルーフバンドが付設されたオーバーキャップを提供することを目的とする。
また、本発明は、開封時にツマミを介して容易にピルファープルーフバンドを除去しうるオーバーキャップを提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、繰り返し使用によっても破損が少ないピルファープルーフバンドが付設されたオーバーキャップを提供することを目的とする。
また、本発明は、上記オーバーキャップが装着されたオーバーキャップ付き固形状食品入り缶容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、ピルファープルーフバンドに付設されるツマミの構造を詳細に検討した結果、ツマミの内周に複数の凸部を形成し、前記複数の凸部の頂部および前記頂部のツマミ後端側に形成されたツマミ接続部とによってツマミと前記凸部とを連設すれば、離型時にもツマミとピルファープルーフバンドとを安定して固定することができ、開封時にはツマミを容易に剥離することができ、かつツマミとピルファープルーフバンドとの連設部が破断した際に発生するツマミ側の凸部の頂部近傍に平坦部を形成できるため開封時の指部の押圧による圧痛を抑制できること、前記ツマミの端部にR状の突起を形成すればツマミを把持した際のすべりを防止することができ、かつ端部の丸みによって触りが柔らかくなること、前記凸部の連設部を、オーバーキャップ本体とピルファープルーフバンドとを連設する肉薄部と同位置に形成すれば、ピルファープルーフバンドの分離方向と同一であるためオーバーキャップ本体から容易にピルファープルーフバンドを除去できること、このようなピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを装着する缶容器の形状を特定することで、缶容器とピルファープルーフバンド付きオーバーキャップとの固定安定性に優れるオーバーキャップ付き固形状食品入り缶容器となることを見出し、本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、本発明は、オーバーキャップ本体と、前記オーバーキャップ本体の下端に肉薄部を介して連設されるピルファープルーフバンドとからなり、前記ピルファープルーフバンドは、破断を容易にする引き剥がし開始部と前記引き剥がし開始部に延設されたツマミとを付設し、前記ツマミは、前記ツマミの内周に形成された複数の凸部の頂部および前記頂部のツマミ後端側に形成されたツマミ接続部とによってピルファープルーフバンドに固定されることを特徴とする、ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを提供するものである。
【0016】
また、本発明は、上記ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップが装着されたオーバーキャップ付き固形状食品入り缶容器を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップは、ピルファープルーフバンドに付設されるツマミが、ツマミの内周に形成された複数の凸部の頂部および前記頂部のツマミ後端側に形成されたツマミ接続部とによって固定されるため、離型時にもツマミが剥離されることがない。なお、前記凸部の後端部側に形成されるツマミ接続部によって凸部の頂部近傍に平坦部を形成できるため、従来のツマミの内側にリブが形成される場合に生じる開封時の指部の圧痛を防止することができる。
【0018】
本発明では、ツマミの開放端部にR状の突起が形成されるため、ツマミを安定して把持することができる。
また、前記オーバーキャップ本体は、天面部と前記天面部の縁部から下方に連設される側壁部とからなり、前記側壁部の内側にその下端から上端に向かう複数の凹部が形成されるため装着時に内部の空気が逸脱し、簡便に装着することができる。また、前記凹部は天面部の直径線上に存在しないため脱着時に二つ折りせず平面を維持できるため、折り曲げによる破損を効率的に回避することができる。
【0019】
また、本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップは、高密度ポリエチレン樹脂に対して所定量の低密度ポリエチレン樹脂を配合した混合物で構成されるため、柔軟性を有するとともに剛性を確保できるため、前記ツマミによるピルファープルーフバンドの離脱を容易に行うことができ、かつ脱着時の機械的強度を高く維持することができる。
【0020】
また、本発明のオーバーキャップ付き固形状食品入り缶容器は、ピルファープルーフバンドと缶容器との密着性に優れ、不正開封防止効果に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの一例を示す図である。図1(a)は、その平面図であり、図1(b)は側面図、図1(c)は底面図である。
【図2】本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの底面図であって、ツマミ(4)の部分拡大図である。
【図3】ツマミ内周に形成した凸部が、その前端および後端でツマミに固定する態様を示す図である。
【図4】本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの底面図であって、ツマミ(4)の部分拡大図であり、ツマミ内周に形成した凸部が、その凸部の頂部とその後端でツマミに固定する態様を示す図である。
【図5】本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの部分断面図である。
【図6】薄肉で構成される引き剥がし開始部(3c)を含むピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの縦断面図である。
【図7】本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを装着しうる缶容器を説明する図である。
【図8】缶容器に本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを装着した部分断面図である。
【図9】缶容器に本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを装着した他の態様の部分断面図である。
【図10】本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを缶容器に装着した斜視部分断面図である。
【図11】ピルファープルーフバンドを除去した後の缶容器とオーバーキャップとを説明する図である。
【図12】本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの横断面図であり、オーバーキャップ本体の内部構造を説明する図である。
【図13】本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップ本体の底面図であり、側壁部の5箇所に凹部が形成される態様を示す図である。
【図14】図13の凹部の拡大図であり、凹部の底部がRの丸みを有する態様を示す図である。
【図15】特許文献2記載のオーバーキャップのツマミの形状を説明する図である。
【図16】従来のピルファープルーフバンドに付設されるツマミが複数の連設部を介してピルファープルーフバンドに固定されている態様を説明する図である。
【図17】従来のピルファープルーフバンドに付設されるツマミとピルファープルーフバンドとの連設部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第一は、オーバーキャップ本体と、前記オーバーキャップ本体の下端に肉薄部を介して連設されるピルファープルーフバンドとからなり、前記ピルファープルーフバンドは、破断を容易にする引き剥がし開始部と前記引き剥がし開始部に延設されたツマミとを付設し、前記ツマミは、ツマミの内周に形成された複数の凸部の頂部および前記頂部のツマミ後端側に形成されたツマミ接続部とによってピルファープルーフバンドに固定されることを特徴とする、ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップである。以下、詳細に説明する。
【0023】
本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの好適な態様の一例を図1に示す。図1(a)は、ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの平面図であり、図1(b)は部分側面断面図、図1(c)は底面図である。図1(a)に示すように、ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップは、平面視円形のオーバーキャップ本体(2)を有する。また、図1(b)に示すように、オーバーキャップ本体(2)とピルファープルーフバンド(3)とは、オーバーキャップ本体(2)の下端に形成した肉薄部(5)を介して連設され一体に成形される。また、図1(c)に示すように、ピルファープルーフバンド(3)の外周に沿うようにツマミ(4)が固定される。該ツマミ(4)は、ピルファープルーフバンド(3)の破断を容易にする引き剥がし開始部(3c)に延設して形成される。オーバーキャップ本体(2)の初期開封時、前記ツマミ(4)をつまんで円周方向へと引くと前記引き剥がし開始部(3c)が破断されるとともに円周方向に沿って肉薄部(5)を破断しつつピルファープルーフバンド(3)を切除することができる。
【0024】
図2に、ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの底面図であって、ツマミ(4)の部分拡大図を示す。ピルファープルーフバンド(3)には、薄肉で構成される引き剥がし開始部(3c)が形成され、ツマミ(4)の端部が該開始部(3c)に延設される。
【0025】
このツマミ(4)は、ツマミ(4)の内周に沿って形成された複数の凸部(4a)によってピルファープルーフバンド(3)に固定され、より詳細には、前記ツマミ(4)は、前記凸部(4a)の頂部と前記頂部のツマミ後端側(引き剥がし開始部(3c)側)に形成されたツマミ接続部(4c)とによってピルファープルーフバンドに固定されている。なお、本発明において、「ツマミの内周に形成された凸部」とは、ツマミを裾野としてピルファープルーフバンドに向かって頂部を形成する凸部を意味する。単に、凸部(4a)の頂点で点接触するようにピルファープルーフバンド(3)と連設する場合には接着が弱く、射出成形などでピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを成形した後に金型から成形品を取り出す際にツマミ(4)がピルファープルーフバンド(3)から外れる場合がある。一方、ツマミの開放端部(4b)を前端、引き剥がし開始部(3c)側を後端とする場合に、図3に示すように凸部(4a)の前端と後端との双方にツマミ接続部(4c)を形成すると、ツマミ(4)を剥離する際に大きな剥離力が必要となる。これに対し、図4(a)に示すように、凸部(4a)の後端側にのみツマミ接続部(4c)を形成すると、ツマミ(4)とピルファープルーフバンド(3)とを安定して固定することができ、しかも、ピルファープルーフバンド(3)の開封時にツマミ(4)を引っ張った際には、容易にツマミ(4)とピルファープルーフバンド(3)との接続を切断することができる。更に、ツマミ接続部(4c)によって複数の凸部(4a)によって形成される凹凸の起伏が緩和され、剥離時の手指の圧痛を回避することができる。
【0026】
本発明において、凸部(4a)やツマミ接続部(4c)の形状は、特に限定されるものではない。したがって、図4の(a)に示すように、凸部(4a)がその中心から左右対称に形成されるものであってもよく、図4の(b)に示すように非対称であってもよい。非対称である場合には、凸部(4a)の前端側の丸み(R)と後端側の丸み(R)とを異ならせ、後端側の丸み(R)が前端側の丸み(R)よりも大きくなるように凸部(4a)を形成することが好ましい。このように形成することで、ツマミ(4)とピルファープルーフバンド(3)との接触幅(W)を等しく確保することができ、かつツマミ接続部(4c)の端末の厚さ(D)を、図4(a)の厚さ(Da)から図4(b)の厚さ(Db)で示すように、Db<Daと浅くすることができる。このため、固定力を維持したままツマミ側に残るツマミ接続部(4c)の量を低減することができる。なお、接続部(4c)の凸部(4a)の頂部からツマミ接続部(4c)端部までの接続幅(W)は、0.5〜1.0mm、より好ましくは0.6〜0.8mmである。
【0027】
本発明において、前記凸部(4a)は、ツマミ(4)の全長に亘って形成される必要はなく、例えば図2に示すように、ツマミ(4)の両端部を除く中央部に2〜5個の凸部(4a)を形成してピルファープルーフバンド(3)に固定する態様のほか、ツマミ(4)の開放端部から一定距離をあけて2〜3個の凸部(4a)を形成してピルファープルーフバンド(3)に固定する態様などであってもよい。
【0028】
本発明では、前記ツマミ(4)の開放端部(4b)は、角部を有する切り落としであってもよいが、図2に示すように、開放端部がツマミの外周側または内周側に突出するR状の突起(4b’)を有することが好ましい。また、ツマミ(4)の開放端部は、図10(b)に示すように、オーバーキャップ本体(2)側に突出するR状の突起(4b”)を有するものであってもよく、角部をなくして手に優しくすることができる。本発明では、ツマミの開放端部(4b)の突起(4b’)、(4b”)は、その双方が形成されるものであってもよい。このようにツマミ(4)の開放端部(4b)をR状に成形することで角部をなくし、開封時の指部の接触感を向上させることができる。また、R状の突起(4b’)や丸状の突起(4b”)によって開封時の指部によるツマミ(4)の把持を安定させることができる。なお、本発明は、ツマミ(4)がその内周に形成された複数の凸部(4a)と連設してピルファープルーフバンド(3)に固定される構成に特徴があり、ツマミ(4)の端部が引き剥がし開始部(3c)の近傍からピルファープルーフバンド(3)から延設される構成は、従前と同様の態様を適用することができる。
【0029】
図5に、本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの部分断面図を示す。図5に示すように、前記凸部(4a)は、側面視、ツマミ(4)の上端部に形成され、かつオーバーキャップ本体(2)とピルファープルーフバンド(3)とを連設する肉薄部(5)と同位置であることが好ましい。肉薄部(5)と凸部(4a)とが同位置で接触することで剥離時には容易にツマミ(4)を剥離し、かつオーバーキャップ本体(2)とピルファープルーフバンド(3)との分離を容易に行えるからである。なお、図5は、凸部(4a)のややツマミ先端側の断面を示す。
【0030】
また、ピルファープルーフバンド(3)は、オーバーキャップ本体(2)の下端の肉薄部(5)から漸増する肉厚部(3a)とその下端に形成される缶容器接触部(3b)とを有し、前記缶容器接触部(3b)の高さは、ピルファープルーフバンド(3)の高さの1/3〜2/3であることが好ましい。この範囲でピルファープルーフバンド(3)と缶容器とが接触すると、缶容器に装着したピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの固定安定性が向上するからである。なお、図5において、一点波線は、缶容器の位置を示す。
【0031】
なお、図6に薄肉で構成される引き剥がし開始部(3c)を含むピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの縦断面図を示す。ピルファープルーフバンド(3)の内側の肉厚を0.2〜0.4mm、より好ましくは0.25〜0.35mmに形成して引き剥がし開始部(3c)を構成することができる。なお、引き剥がし開始部(3c)の厚さは、缶容器にピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを装着する際に、ピルファープルーフバンド(3)が環状に維持できる程度の強度が確保できればよい。
【0032】
本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップは、ピルファープルーフバンドに付設されたツマミが、ツマミの内周に形成された複数の凸部と連設してピルファープルーフバンドに固定される点に特徴があり、したがって、ピルファープルーフバンドの形状に制限はない。このため、例えば、特開2004−161325号公報に記載されるように、ピルファープルーフバンドの下端に連設された周方向に並ぶ複数の折り返し羽根を備えるものや、特開2006−282199号公報に記載されるように、ピルファープルーフバンドの下端に延設されるスカート部を有するものなどに上記した態様でツマミ(4)をピルファープルーフバンド(3)に固定することで、本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップとすることができる。
【0033】
更に、本発明では、ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを装着する缶容器にも限定はない。なお、本明細書において「缶容器」とは、内容物が収納されている状態の缶を意味しており、このような内容物は粉末食品が好ましく、特に粉ミルク等の粉乳製品であることが推奨される。かかる内容物入り缶容器においては、缶容器の形状とピルファープルーフバンド付きオーバーキャップとの形状とを適合させることでより固定安定性に優れるオーバーキャップ付き固形状食品入り缶容器とすることができる。以下、便宜のため、所定形状の缶容器とこの缶容器に装着するピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを例示して説明する。
【0034】
本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを装着しうる缶容器(1)は、図7に示すように、金属製の円筒部材からなる胴部(12)と、少なくとも該胴部(12)の上端に巻締部(11)によって固定された天面部(13)とからなる。天面部(13)は金属で構成される場合に限定されず、たとえばプラスチックと金属箔、金属または金属酸化物の蒸着膜、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリアクリロニトリル樹脂、エチレン−酸化ビニル共重合体等のガスバリア性フィルムその他の合成樹脂フィルムまたは防湿紙などからなる中央部と、その外周に形成された金属部とからなり、この金属部が前記巻締部(11)で固設される態様であってもよい。天面部(13)の少なくとも一部を除去することで、内容物を取り出すための開口部が形成される。天面部を覆うようにオーバーキャップを装着することで、開口部が外部と直接接触することを防止することができる。
【0035】
前記缶容器(1)の前記胴部(12)上方部分には、該胴部(12)の外周に沿って突出する凸部(7)が前記胴部(12)の一周にわたって形成されていることが好ましい。このような缶容器(1)に本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを装着した部分断面図を図8に示す。この凸部(7)は、断面視で略半円弧形状の膨らみからなり、図8に示すように、ピルファープルーフバンドの下端が当接し、ピルファープルーフバンド(3)の下端からの指先によるアクセスを防止することができ、前記ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップが上方へと移動して缶容器(1)から離脱することを阻止することができる。
【0036】
また、缶容器(1)としては、さらに前記凸部(7)の上部に凸部(7)と平行して凸部(7’)が前記胴部(12)の一周にわたって形成されていてもよい。このような缶容器(1)に本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを装着した部分断面図を図9に示す。図9に示すように、前記缶容器(1)に装着した前記ピルファープルーフバンド(3)の下端部は、前記缶容器(1)に形成した凸部(7)と接触し、かつピルファープルーフバンド(3)の缶容器接触部(3b)の上端が凸部(7’)と当接するため、ピルファープルーフバンド(3)を缶容器(1)に安定に固定する効果を奏する。すなわち、ピルファープルーフバンド(3)の缶容器接触部(3b)を缶容器(1)に形成した上下の凸部(7),(7’)で挟み込むことにより、ピルファープルーフバンド(3)の下端へと指先が掛かることを防止するとともに、たとえオーバーキャップ(2)を上方へ押し上げても、ピルファープルーフバンド(3)と凸部(7’)が当接して、ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップの上方向への移動を阻止することができる。なお、図10(a)に本発明のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップを缶容器(1)に装着した斜視部分断面図を示す。なお、ツマミ(4)近傍の拡大図を図10(b)に示す。オーバーキャップ本体(2)の下端に連設されたピルファープルーフバンド(3)の、ツマミ(4)を円周方向に引くことにより、引き剥がし開始部(3c)を起点に円周方向へとピルファープルーフバンド(3)が切除されて、図11に示すように、初めてオーバーキャップ本体(2)を取り外すことができる。このように、ピルファープルーフバンド(3)を切除した後において、初めてオーバーキャップ本体(2)を取り外すことが可能となるため、商品購入前にオーバーキャップ付き固形状食品入り缶容器の不正開封を防止することができる。
【0037】
なお、オーバーキャップ本体(2)の形状に限定はないが、缶容器(1)との関連を考慮すれば、例えば、図12に示すように円形状の天面部(2a)と、該天面部(2a)の外周縁より下方へと側壁部(2b)を有し、前記側壁部(2b)の内側には、凹状のくぼみからなる掛止部(9)が形成されていてもよい。前記したように、缶容器(1)の上縁に形成された巻締部(11)を、オーバーキャップ本体(2)の前記掛止部(9)へ掛止することにより、オーバーキャップ本体(2)を缶容器(1)に着脱自在に固定することができる。
【0038】
更に、前記オーバーキャップ本体(2)は、前記側壁部(2b)の内側にその下端から上端に向かう複数の凹部(2c)が形成されることが好ましい。この態様を図13に示す。このような凹部(2c)は、オーバーキャップ本体(2)を缶容器(1)に装着する際の空気穴として機能させることができる。また、複数の凹部(2c)が形成される場合、凹部(2c)の数に制限はないが好ましくは3〜10である。特に、3、5、7、9などの奇数個であることが好ましい。図13では、5箇所に凹部(2c)が形成される態様を示す。本発明では、複数の凹部(2c)の任意の2箇所は、前記天面部(2a)の対角線上に形成されないことが好ましい。凹部(2c)は空気穴として重要であるが、側壁部(2b)の肉厚を低減して形成されるため機械的強度が低下しやすく、かつ薄肉となるためこの凹部(2c)を介して天面部(2a)が折れ曲がり易い。このような折れ曲がりは天面部(2a)の中央を経過するものであるが、2箇所の凹部(2c)が天面部(2a)の対角線上にない場合には、天面部(2a)が中央から二つに折れることを回避することができ、折れ曲がりによるオーバーキャップ本体(2)の劣化を防止することができる。
【0039】
また、前記側壁部の内側に形成された凹部(2c)は、図14に示すように、その底部がRの丸みを有することが好ましい。凹部(2c)の形成によって前記した凹部(2c)を介する天面部(2a)が折れ曲がりを回避することができる。
【0040】
前記ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップは、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂を射出成形して形成することができる。より好ましくは、高密度ポリエチレン樹脂と低密度ポリエチレン樹脂との混合物からなり、その混合比は、高密度ポリエチレン樹脂1質量部に対し、低密度ポリエチレン樹脂1〜10質量部である。本発明は、射出成形時のピルファープルーフバンドとツマミとの安定固定性、使用開始時にツマミを剥離する際のツマミ接続部(4c)の易破断性、オーバーキャップ本体(2)の折れ曲がり回避と折れ曲がりによる劣化防止を目的とするが、上記混合割合であれば、これらをいずれも満足させることができる。
【0041】
また、前記缶容器(1)としては、ストレート缶の胴部の上端に巻締部(11)によって固定された金属製の天面部(13)を有する3ピースの金属缶のみならず、その用途に応じて適宜選択することができる。例えば、粉ミルクを収納した缶容器であれば、前記天面部(13)の中央部に丸型の環状縁部を有する紙またはプラスチックと金属箔、金属または金属酸化物の蒸着膜、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリアクリロニトリル樹脂、エチレン−酸化ビニル共重合体等のガスバリア材料の複合材料からなる材料で形成してもよい。
【0042】
本発明のオーバーキャップ付き固形状食品入り缶容器において、固形状食品とは、固形の形態を有する食品のことであり、粉末状、ピース状、ブロック状など各種の形態が例示できる。また一つ一つのピースが包装されている個包装のピース状のものであってもよい。このような固形状食品は、硬いものでも、軟らかいものでも固形の形態を有していれば硬さは問わない。以上のような固形状食品としては、粉ミルク等の粉末状食品がもっとも好適である。
【符号の説明】
【0043】
1・・・缶容器、
2・・・オーバーキャップ(オーバーキャップ本体)、
2a・・・オーバーキャップ天面部(天面部)、
2b・・・オーバーキャップ側壁、
2c・・・オーバーキャップ側壁の凹部、
3・・・ピルファープルーフバンド、
4・・・ツマミ、
4a・・・ピルファープルーフバンドの凸部、
4b・・・ツマミ開放端部、
4b’・・・ツマミ開放端部の外周側に形成したR状の突起、
4b”・・・ツマミ開放端部のオーバーキャップ本体側に突出するR状の突起、
4c・・・ツマミ接続部、
5・・・肉薄部、
7・・・缶凸部、
7’・・・缶凸部、
9・・・掛止部、
11・・・巻締部、
12・・・缶胴部、
13・・・缶天面部、
W・・・ツマミとピルファープルーフバンドとの接触幅、
D・・・ツマミ接続部の端末の厚さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーバーキャップ本体と、前記オーバーキャップ本体の下端に肉薄部を介して連設されるピルファープルーフバンドとからなり、
前記ピルファープルーフバンドは、破断を容易にする引き剥がし開始部と前記引き剥がし開始部に延設されたツマミとを付設し、
前記ツマミは、ツマミの内周に形成された複数の凸部の頂部および前記頂部のツマミ後端側に形成されたツマミ接続部とによってピルファープルーフバンドに固定されることを特徴とする、ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップ。
【請求項2】
前記ツマミの開放端部がツマミ内周側または外周側に形成されたR状の突起および/またはオーバーキャップ本体側に突出するR状の突起を有することを特徴とする、請求項1記載のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップ。
【請求項3】
前記複数の凸部は、前記オーバーキャップ本体とピルファープルーフバンドとを連設する肉薄部と同位置に形成されることを特徴とする、請求項1または2記載のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップ。
【請求項4】
前記ピルファープルーフバンドは、オーバーキャップ本体の下端の肉薄部から漸増する肉厚部と下端に形成される缶容器接触部とを有し、前記缶容器接触部は、ピルファープルーフバンドの高さの1/3〜2/3であることを有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップ。
【請求項5】
前記オーバーキャップ本体は、天面部と前記天面部の縁部から下方に連設される側壁部とからなり、前記側壁部の内側にその下端から上端に向かう複数の凹部が形成され、かつ前記複数の凹部のいずれの2箇所も、前記天面部の対角線上に形成されないことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップ。
【請求項6】
前記側壁部の内側に形成された凹部は、その内側が半径Rの丸みを有することを特徴とする、請求項5記載のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップ。
【請求項7】
前記オーバーキャップ本体とピルファープルーフバンドとは、高密度ポリエチレン樹脂と低密度ポリエチレン樹脂との混合物からなり、その混合比は、高密度ポリエチレン樹脂1質量部に対し、低密度ポリエチレン樹脂1〜10質量部であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップが装着されたオーバーキャップ付き固形状食品入り缶容器。
【請求項9】
前記容器は、前記ピルファープルーフバンドの前記缶容器接触部の下端に、凸部が形成されることを特徴とする、請求項8記載のオーバーキャップ付き固形状食品入り缶容器。
【請求項10】
前記容器は、前記ピルファープルーフバンドの前記缶容器接触部の下端および前記肉厚部の上端に、それぞれ凸部が形成されることを特徴とする、請求項8記載のオーバーキャップ付き固形状食品入り缶容器。
【請求項1】
オーバーキャップ本体と、前記オーバーキャップ本体の下端に肉薄部を介して連設されるピルファープルーフバンドとからなり、
前記ピルファープルーフバンドは、破断を容易にする引き剥がし開始部と前記引き剥がし開始部に延設されたツマミとを付設し、
前記ツマミは、ツマミの内周に形成された複数の凸部の頂部および前記頂部のツマミ後端側に形成されたツマミ接続部とによってピルファープルーフバンドに固定されることを特徴とする、ピルファープルーフバンド付きオーバーキャップ。
【請求項2】
前記ツマミの開放端部がツマミ内周側または外周側に形成されたR状の突起および/またはオーバーキャップ本体側に突出するR状の突起を有することを特徴とする、請求項1記載のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップ。
【請求項3】
前記複数の凸部は、前記オーバーキャップ本体とピルファープルーフバンドとを連設する肉薄部と同位置に形成されることを特徴とする、請求項1または2記載のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップ。
【請求項4】
前記ピルファープルーフバンドは、オーバーキャップ本体の下端の肉薄部から漸増する肉厚部と下端に形成される缶容器接触部とを有し、前記缶容器接触部は、ピルファープルーフバンドの高さの1/3〜2/3であることを有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップ。
【請求項5】
前記オーバーキャップ本体は、天面部と前記天面部の縁部から下方に連設される側壁部とからなり、前記側壁部の内側にその下端から上端に向かう複数の凹部が形成され、かつ前記複数の凹部のいずれの2箇所も、前記天面部の対角線上に形成されないことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップ。
【請求項6】
前記側壁部の内側に形成された凹部は、その内側が半径Rの丸みを有することを特徴とする、請求項5記載のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップ。
【請求項7】
前記オーバーキャップ本体とピルファープルーフバンドとは、高密度ポリエチレン樹脂と低密度ポリエチレン樹脂との混合物からなり、その混合比は、高密度ポリエチレン樹脂1質量部に対し、低密度ポリエチレン樹脂1〜10質量部であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のピルファープルーフバンド付きオーバーキャップが装着されたオーバーキャップ付き固形状食品入り缶容器。
【請求項9】
前記容器は、前記ピルファープルーフバンドの前記缶容器接触部の下端に、凸部が形成されることを特徴とする、請求項8記載のオーバーキャップ付き固形状食品入り缶容器。
【請求項10】
前記容器は、前記ピルファープルーフバンドの前記缶容器接触部の下端および前記肉厚部の上端に、それぞれ凸部が形成されることを特徴とする、請求項8記載のオーバーキャップ付き固形状食品入り缶容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−235157(P2010−235157A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85581(P2009−85581)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000006127)森永乳業株式会社 (269)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000006127)森永乳業株式会社 (269)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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