説明

ピンセット型の半田ごて

【課題】 手の疲れが極めて軽減され、ピンセットの把手部の温度を適切に制御できること。
【解決手段】 ケース10に内蔵された並進移動する第1カムフォロワー61と、第2カムフォロワー62とを有し、ケース10に一端部20aが連結固定され、他端部20cが第1カムフォロワー61に連結されると共に、往復の並進変位量に基づいて先端20xの開閉量を拡大すると共に、電子部品2を開放及び把持するピンセット20と、ケース10に内蔵された発熱体25と、ピンセット20が把持状態で、ピンセット20の他端部20cに発熱体25が熱的に接触するように第1カムフォロワー61、操作部材67と第2カムフォロワー62とを移動したので、操作部材67の並進変位量に基づいて変位拡大機能を有するピンセット20が開放・把持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピンセット型の半田ごてに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のピンセット型の半田ごて400は、図17に示すように、電源プラグ401を有し、断熱体で覆われた第1把手部403と、第1把手部403から突出した発熱部405と、第1把手部403と対向して設けると共に、断熱体で覆われた第2把手部407と、第2把手部407から突出した非発熱部409と、非発熱部409を開閉するために第2把手部407の端部に設けられた支軸411と、非発熱部409が開くように付勢するスプリング413を設けたものがある(特許文献1)。
【0003】
かかるピンセット型の半田ごて400によれば、半田ごての発熱部405と非発熱部409とにより半田付け対象物を挟む機能を設けることにより、半田付け対象物を固定しながら半田付け作業ができる。従って、半田付け作業が容易にできる。
【特許文献1】特開平4−123867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記ピンセット型の半田ごて400では、作業者が半田ごての第1把手部403と第2把手部407とを手で握り、スプリング413の反力に抗して第2把手部407を、支軸411を中心に回転させることにより発熱部405を非発熱部409に接近した把持状態として半田付け対象物を、発熱部405と非発熱部409とで挟んで半田付けする。つまり、被対象物を把持し続けるために半田ごて400の第1及び第2把手部403,407を手で握り続けなければならない。
また、半田付けが完了すると、第2把手部407から指の押圧を緩めてスプリング413により第2把手部407が開放して発熱部405と非発熱部409とが開放状態としている。このため、半田ごて400により多数の被対象物を半田付け又は半田を溶融しようとすると、作業者は半田ごて400の第1把手部403と第2把手部407とを手の握りと指の緩めといった上記動作を伴い、該動作が被対象物の数に比例して増加する。従って、作業者の手が疲労し易くなり、労働効率も低下するという課題があった。
【0005】
さらに、電源プラグ401を投入すると、常に加熱部405が熱せられるので、作業者は、該加熱部405に注意しながら半田付け等の作業をしなければならないので、緊張を強いられていた。加えて、ピンセット型の半田ごて400の第1把手部403と第2把手部407との温度を適切しなければならないという課題があった。にする
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、作業者が手によりピンセットの把持部の開閉を行うことがなく、手の疲れが極めて軽減されると共に、ピンセットが開放状態では、ピンセットの把持部に熱が伝導されにくく、ピンセットの把手部の温度を適切に制御できるピンセット型の半田ごてを得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のピンセット型の半田ごては、ケースに内蔵された第1並進移動する第1移動部と該第1移動部と反対方向に第2並進移動する第2移動部と、逆V字形で、一端部と他端部を有する第1、第2部材を有し、該第1部材と該第2部材の他端部どうしを連結し、ケースに一端部が連結固定され、他端部が前記第1移動部に連結されると共に、往復の第1並進移動に基づいて該第1並進移動の量よりも先端の開閉量を拡大すると共に、被対象物を開放及び把持する把持部を有するピンセットと、ケースに内蔵され、第2移動部に連結されると共に、流れる電流に応じて発熱量を定める発熱体と、ピンセットが把持状態で、ピンセットの他端部又は前記一端部の少なくともいずれか一方に発熱体が熱的に接触するように第2移動部を前記第2並進移動させる変換機構と、発熱体に流れる電流を制御する電流制御手段と、温度指令信号に基づいて電流制御手段を制御する温度制御手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明のピンセット型の半田ごては、第1移動部の第1並進移動に基づいて変位拡大機能を有するピンセットが把持(閉成)・開放し、第1並進移動と逆方向の第2並進移動により発熱体が移動し、ピンセットが把持状態で、ピンセットの他端部又は一端部の少なくともいずれか一方に発熱体が熱的に接触する。
これにより、第1移動部がピンセットを把持・開放するので、作業者が手によりピンセットの把持部の開閉を行うことがなく、手の疲れが極めて軽減される。しかも、ピンセットが開放状態では、ピンセットに熱が伝導されない。つまり、ピンセットは把持状態で熱せられるので、半田付け又は半田の溶融が必要なときに限り熱せられる。従って、常時熱している場合に比較してピンセットの熱的な劣化が軽減され、エネルギー効率が良い。
さらに、温度検出信号と温度指令信号とが一致するように、電流制御手段が発熱体の電流を制御し、温度制御手段が電流制御手段を制御したので、発熱体の温度を適正値に維持できる。
なお、ピンセットの把持状態とは、ピンセットが被対象物を把持した状態をいい、ピンセットの先端部どうしが接触するか否かを問わない。
また、ピンセットの第1部材と該第2部材の他端部どうしは、連結しておれば、足りるから、第1部材の第1他端部と第2部材の第2他端部とが、共通になっていても、分離しても良い。
【0009】
本発明のピンセット型の半田ごては、第2移動部を第2並進移動してピンセットの他端部又は一端部の少なくともいずれか一方に発熱体が熱的に接触するように変換機構を動作させる駆動手段と、ピンセットの温度を検出して温度検出信号を出力する温度検出手段と、ケースの振動を検知して振動検知信号を出力する振動検知手段と、第1温度指令信号を発生すると共に、振動検知信号の発生に基づいて第1温度指令信号よりも高い第2温度指令信号を発生する温度指令発生手段とを備え、駆動手段は、第1温度指令信号に基づいて第2移動部を第2並進移動してピンセットの他端部又は一端部の少なくともいずれか一方に発熱体が熱的に接触するように変換機構を動作させ、温度制御手段は、温度検出信号と第1又は第2温度指令信号とが一致するように電流制御手段を制御する、ことが好ましい。
これにより、第1温度指令信号に基づいてピンセットの温度を維持した後、作業者がピンセットを握ることにより生じる振動を振動検知手段が検知して振動検知信号を発生し、該振動検知信号に基づいて第1温度指令信号よりも高い目標温度となる第2温度指令信号を発生し、ピンセットの温度を速やかに目標温度にすることができる。
【0010】
本発明のピンセット型の半田ごては、複数の値の異なる第2温度指令信号を記憶する温度指令記憶手段を備え、温度指令発生手段が該温度指令記憶手段から指定された第2温度指令信号を読み出して、温度制御手段が温度検出信号と該第2温度指令信号とが一致するように電流制御手段を制御する、ことが好ましい。
複数の第2温度指令信号から一つを選択することにより、把持対象物に応じてピンセットの温度を適切な温度にできる。
【0011】
本発明のピンセット型の半田ごては、温度検出信号が第2温度指令信号に達することを判断すると共に、達すると第1信号を発生する第1判断手段と、該第1信号に基づいて報知する第1報知手段とを備えることが好ましい。
ピンセットが第2温度指令信号に達すると、第1報知手段が報知するので、作業者が第2温度に達したことを容易に認識できる。
【0012】
本発明のピンセット型の半田ごては、ピンセットを開放・把持する開閉指令を発生する開閉指令手段と、開閉指令が発生した時に、温度検出信号が第2温度指令信号に達していないことを判断し、達していないと第2信号を発生する第2判断手段と、該第2信号に基づいて報知する第2報知手段と、を備えることが好ましい。
これにより、ピンセットを開閉しようとする際に、ピンセットが適切な温度に達しているか否かを容易に認識できる。
【0013】
本発明のピンセット型の半田ごてにおける変換機構は、ケースに内蔵された第1並進移動する第1移動部と該第1移動部と反対方向に第2並進移動する第2移動部と、逆V字形で、一端部と他端部を有する第1、第2部材を有し、該第1部材と該第2部材の他端部どうしを連結し、前記ケースに前記一端部が連結固定され、前記他端部が前記第1移動部に連結されると共に、往復の前記第1並進移動に基づいて該第1並進移動の量よりも先端の開閉量を拡大すると共に、被対象物を開放及び把持する把持部を有するピンセットと、前記ケースに内蔵され、前記第2移動部に連結されると共に、流れる電流に応じて発熱量を定める発熱体と、前記ピンセットが把持状態で、前記ピンセットの前記他端部又は前記一端部の少なくともいずれか一方に前記発熱体が熱的に接触するように前記第2移動部を前記第2並進移動させる変換機構と、前記変換機構は、前記ケースに収納し、モータの軸に連結され、前記モータの一方向の回転を、所定の往復方向の並進変位量に変換して前記第1及び第2移動部を並進移動させると共に、前記ピンセットの他端部が引き込まれると、前記発熱体を押し出すように動作するように形成されており、前記モータの位置指令信号に基づいて前記モータを制御するモータ制御手段と、を備えることが好ましい。
これにより、モータの位置指令信号に基づいてピンセットを開閉することができる。
【0014】
本発明のピンセット型の半田ごては、モータの回転位置を検出して位置検出信号を発生する位置検出手段を備え、モータ制御手段は、モータの位置指令信号と前記位置検出信号との偏差に基づいてモータを制御する、ことが好ましい。
これにより、モータの位置指令信号と位置検出信号との偏差に基づいてピンセットを開閉することができる。従って、位置指令信号による正確なピンセットの開閉が可能となる。
【0015】
本発明のピンセット型の半田ごては、ピンセットが把持している状態に対応したモータの第1回転位置を記憶する位置記憶手段を備え、モータ制御手段は、位置検出手段が前記第1回転位置を検出することに基づいてモータを一定時間前記第1回転位置で停止する、ことが好ましい。
これにより、ピンセットを把持状態で一定時間維持できるので、被対象物の半田部に応じた時間で半田付けを溶融できる。
【0016】
本発明のピンセット型の半田ごては、位置検出手段が第1回転位置を検出するか否かを判断する第3判断手段と、該第3判断手段が第1回転位置の検出に基づいて報知すると共に、第3判断手段が第1回転位置を検出しないと警報する第3報知手段と、を備えることが好ましい。
これにより、ピンセットが把持状態か否かを容易に判断できる。
【0017】
本発明のピンセット型の半田ごてにおける変換機構は、ケースに収納し、モータの軸に連結され、モータの回転を、所定の往復方向の並進変位量に変換して第1及び第2移動部を並進移動させると共に、ピンセットの他端部が引き込まれると、発熱体を押し出すように動作するピンセット型半田ごてであって、発熱体と前記ピンセットとの熱的な接触は、弾性部材を介して成されており、位置記憶手段には、ピンセットによる把持対象物の半田付け部の間隔に対応して第1回転位置を記憶しており、第1回転位置に基づいて前記ピンセットを把持する、ことが好ましい。
これにより、ピンセットが把持状態、つまりピンセットの閉成量を把持対象物に応じて変更できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、作業者が手によりピンセットの開閉を行うことがなく、手の疲れが極めて軽減されると共に、ピンセットが開放状態では、ピンセットの把持部に熱が伝導されないピンセット型の半田ごてを得ることができる。しかも、ピンセット型半田ごての温度を容易に制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
実施の形態1.
本発明の一実施の形態となるピンセット型の電動半田ごての機械的な構成を図1から図7によって説明する。図1は電動半田ごての全体構成を示す縦断面図、図2は電動半田ごての主要部の拡大図、図3は図1のピンセットを示す斜視図、図4はピンセットの着脱部の斜視図、図5、図6はピンセットが開放、把持状態における各部の動作を示す部分断面図、図7は電動半田ごてに用いるカムの変位線図である。
【0020】
<機械的な構成>
図1及び図2において、ピンセット型の電動半田ごて1は、断熱機能を有するケース10を有しており、ケース10は、円筒状のホルダー部材5,ケース部材7と、円盤状の蓋9とを備えている。
電動半田ごて1は、半田付け又は半田溶融対象物としての電子部品2を把持(閉成)したり開放したりする二つのV字辺20Vを有するピンセット20と、ピンセット20の他端部20cから熱を伝える発熱体25と、ピンセット20の該他端部20c及び発熱体25を並進変位させる動力源となるモータ41を有する駆動部40と、モータ41の軸41aに連結されると共に、モータ41の一方向の回転を、所定の往復方向の並進変位量に変換して操作部材67を第1並進移動させると共に、該第1並進移動と逆方向に発熱体25を第2並進移動させる第1変換機構50とを備え、該第1変換機構50は、ピンセット20の他端部20cが矢印B方向に引き込まれる(引っ張る)と、発熱体25が矢印A方向に押し出す(戻る)と共に、ピンセット20の他端部20cが矢印A方向に押し出されると、発熱体25が矢印B方向に引き込まれるように動作するように形成されている。
【0021】
ピンセット20は、一端部20aが連結されたケース10に対し、他端部20cが連結された操作部材67に対してそれぞれ着脱部30により着脱自在に形成され、ケース10には、発熱体25、駆動部40と、第1変換機構50とが収納されており、着脱部30がホルダー部材5と着脱自在に係合されている。
【0022】
ピンセット20は、図3に示すように全体が略M形状で平板から成り、はり状で略逆V形状のV字辺を有すると共に、先端部を共有する第1、第2部材としての把持部材20Vを二つ有し、把持部材20Vは、略L形状の第1辺20fと、第1辺20fと対向すると共に、真っ直ぐな板状の第2辺20hから成っており、第2辺20hどうしの端を結合して他端部20cとしての共有部が形成されている。
【0023】
把持部材20Vは、該第1辺20fと第2辺20hが結合された平らな先端部に電子部品2等を把持する把持部20xと、第1辺20fの該把持部20xと反対の方向で、他端部20cと略平行に設けられた平坦面を有するL形の一端部20aとを有している。
ピンセット20の他端部20cには、該第2辺20hと交叉する平面部を有し、該平面部には、発熱体25の天面と略同一のリング形状で、丸形状の孔20eが形成され、発熱体25と接触する外側面が平らに形成されている。平らに形成されているのは、発熱体25の熱伝導を良くするためである。
ピンセット20は、上記のように一端部20aがケース10に連結され、並進変位に基づいて他端部20cが引っ張られたり、戻されたりして把持部20xの先端が内側、別言すれば、上記並進変位の方向に対して略垂直方向、つまり、該並進変位の方向に対して横方向に拡大変位することにより把持部20xが電子部品2を把持(閉成)したり開放したりするように形成されている。
ピンセット20の材質は、変位拡大機能を有するためにバネ性を有すると共に、発熱体25からの熱を伝えられるために熱伝導性にも優れていることが好ましい。
なお、上記ピンセット20の他端部20cが結合されて一つであるが、把持部材20Vを分離して、それぞれの把持部材20Vの他端部20cを形成して、他端部20cを二つにしても良い。
【0024】
着脱部30は、図4に示すように、ピンセット20を操作部材67及びケース10から着脱するもので、ピンセット20の一端部20aを着脱自在に係止させる移動部材31と、ピンセット20の他端部20cを係止する操作部材67とから成っている。
移動部材31は、平板から成る平面視略ドーナツ形で、中央にピンセット20の他端部20cを挿入する丸形状の挿入孔31eが設けられ、該挿入孔31eと連通してピンセット20の一端部20aを係止させる二つの切り欠き31aが平行に対向して設けられている。操作部材67には、円柱状で、上部にネジ孔67eが設けられており、ネジ孔67eにピンセット20の取付け孔21eを合わせてねじ68により螺合してピンセット20の他端部20cが固定される。
ここで、ピンセット20と着脱部30とが組み立てられたものをピンセットユニット35という。
【0025】
発熱体25は、セラミックヒーターの発熱体が窒化珪素のセラミックに内蔵して同時焼結されたもので(例えば京セラ製SNヒータ)、図2に示すように、接触熱抵抗を低くするために天面が平に形成され、操作部材67が挿入される孔25eを中央に有し、第1筒部25aと第1筒部25aよりも太い第2筒部25cとを有しており、ピンセット20の他端部20cに接触してから短時間にピンセット20の先端20xが例えば300℃になることが好ましい。そして、発熱体25が400℃の温度を発生している状態で、ピンセット20の他端部20cに接触してから2〜3秒後にピンセット20の先端20xが300℃になることが確認されている。
また、発熱体25の第1筒部25aの外周には、第1弾性部材としての第1コイルバネ71がホルダー部材5の内周面に摺動自在に移動するように挿入されたリング部材75を押圧するように圧縮状態で挿入されている。
【0026】
駆動部40は、軸41aを有するモータ41と、軸41aを回動自在に保持するベアリング43とを備えている。第1スイッチ手段としての開閉スイッチ47mがケース10の表面部に設けられている。発熱体25及びモータ41の駆動源となる電源を外部から取り込む電線45が接続され、電線45に電源を投入・遮断するための第2スイッチ手段としての電源スイッチ47sが外部に設けられている。開閉スイッチ47mは、モメンタリー型で、スイッチを押しているときのみオンし、離すとオフする。
第1変換機構50は、モータ41の軸41aにおける一方向、すなわち、正転又は逆転のうちいずれか一つとなる一定方向の回転を伝達するカム51を有している。
第1変換機構50は、カム51の回転によりピンセット20の他端部20cに対して、所定の往復方向の第1並進変位に変換してピンセット20の他端部20cを引っ張ったり戻したりすることによりピンセット20の先端を開閉する第1並進移動部としての第1カムフォロワー61と、発熱体25を第1並進変位とは逆方向の第2並進変位に変換して発熱体25を引き込んだり押し出したりする第2並進移動部としての第2カムフォロワー62とから成っている。そして、第1及び第2カムフォロワー61,62の並進変位量は、往路と復路との並進変位量を同一の大きさに変換するように形成されている。
【0027】
カム51は、略円柱状で、モータ41の軸41aに連結されると共に、輪郭に第1揚程部としての球状の第1球部51bを有すると共に、第1球部51bより外側に設けられた第2揚程部としての球状の第2球部52bを有している。
【0028】
第1カムフォロワー61は、図2に示すように円柱状で、カム51の第1球部51bに接触して摺動する第1接触部61sを有しており、第1カムフォロワー61の上面には、操作部材67の基部67bが固定されていて、第1カムフォロワー61の並進移動に同期して操作部材67が並進移動するように形成されている。
【0029】
第2カムフォロワー62は、発熱体25の一端面が固定されており、ピンセット20が把持状態で、ピンセット20の他端部20cの下面全体に発熱体25の天面(他端面)が熱的に接触するように移動するように形成されている。
第2カムフォロワー62は、中央に孔62eを有し、カム51の第2球部52bに接触して摺動する第2接触部62sを有する円筒状の空洞部62cを備えており、該空洞部62cには、第1カムフォロワー61が摺動自在に係合され、第2の弾性部材としての第2コイル72が操作部材67の基部67bを第1カムフォロワー61に押圧するように圧縮状態で装着されている。そして、第2コイルばね72の圧縮力が第1コイルバネ71よりも小さいものを選定している。カム51と第2カムフォロワー62とを確実に接触させるためである。
【0030】
図5において、電動半田ごて1のピンセット20が開放状態を示しており、カム51の第1球部51bにより第1カムフォロワー61の第1接触部61sが最も押し上げられることにより、操作部材67も押し上げられて矢印A方向に並進移動してピンセット20は、他端部20cが押されて開放状態と成るように形成されている。
一方、カム51の第2球部52bにより第2カムフォロワー62の第2接触部62sが最も引き込まれことにより、電動半田ごて1の発熱体25が最も引き込まれる。この際におけるピンセット20の他端部20c下面を第1基準位置Ln1、発熱体25の天面を第2基準位置Ln2となるように形成されている。
【0031】
次に、図6において、ピンセット20が把持状態を示しており、カム51の第1球部51bにより第1カムフォロワー61の第1接触部61sが最も引き込まれることにより、操作部材67が最も引き込まれ、ピンセット20は、他端部20cも引き込まれて把持状態と成り、この際の操作部材67は第1基準位置Ln1から並進変位量ΔSL1引き込まれるように形成されている。
一方、カム51の第2球部52bにより第2カムフォロワー62の第2接触部62sが最も押し上げられる。この際の発熱体25は第2基準位置Ln2から並進変位量ΔSL2移動してピンセット20の他端部20cに圧力がかかった状態で接触する、つまり圧接するように形成されている。
このように、ピンセット20の開放状態、把持(閉成)状態を示す第1変換機構50の変位曲線を図7に示す。図7に示すように、モータ41の回転角度Θ0で、ピンセット20が開放状態となり、回転角度Θhで、ピンセット20が閉成状態となり、回転角度Θh〜Θwまで閉成状態を維持し、回転角度Θwからピンセット20が閉成から開放状態に移行して回転角度Θ0で、開放状態に復帰する。
【0032】
<温度制御部の構成>
次に、ピンセット型の電動半田ごて1の温度制御部の構成を図8及び図9によって説明する。図8は一実施の形態を示す電動半田ごての温度制御部の全体図、図9は図1及び図8に示す振動スイッチの断面図である。
図8において、温度制御装置100は、商用の単相交流電源eを電源スイッチ47sを介して単相交流電圧を直流電圧に変換させるコンバータ103と、開閉スイッチ47mの開閉信号に基づいてモータ41を制御する位置指令信号を発生するモータ制御部170と、コンバータ103の電源が供給されると共に、モータ41を駆動するモータ駆動部105と、コンバータ103の電圧を制御して発熱体25に流れる電流を制御する電流制御部107も有している。
【0033】
ピンセット20の把持部20xの温度を制御する温度制御装置は、検出部,指令部,制御部,表示部,報知部を有している。
検出部は、ピンセット20の把持部20xの温度を検出して温度検出信号Tsを発生する温度検出手段としての熱電対から成る温度センサ80と、作業者がケース1を握ることにより生じる振動を検出して振動検知信号Bsを発生する振動センサ90とを有している。
指令部は、温度指令信号を発生する温度指令器130と切換えスイッチ140とを有している。温度指令器130は、半田付け作業の待機している時に、ピンセット20の把持部20xを待機温度にする第1温度指令信号としての待機温度指令信号Tr1を発生する待機指令部132と、ピンセットの把持部20xを目標温度にする第2温度指令信号としての目標温度指令信号Tr2を発生する目標指令部134と、設定器120により複数の目標温度指令信号Tr2を入力して記憶した記憶部136とを備えている。
温度指令切換部は、待機温度指令信号Tr1と目標温度指令信号Tr2とを切換える切換えスイッチ140と、振動検知信号Bsの発生により切換えスイッチ140をa側に投入して目標温度指令信号Tr2を発生する共に、振動検知信号Bsの消滅により切換えスイッチ140をb側に投入して待機温度指令信号Tr1を発生するスイッチ制御部160を有している。
【0034】
制御部は、温度検知信号Tsと温度指令信号Trとの差となる温度偏差信号Teを求める減算器143と、温度偏差信号Teに基づいて発熱体25に流れる電流指令信号Irを生成する温度制御部145と、該電流指令信号Irにより発熱体25の温度を制御する電流制御部107とを備えている。
【0035】
表示部は、ピンセット20の把持部20xの温度を温度検出信号Tsに基づいて液晶147aに表示させると共に、予め定められた目標温度に温度検出信号Tsが達すると発光ダイオード147cを点灯させる温度表示器147を有している。報知部は、温度検出信号Tsが目標温度に達することを判断すると共に、達すると第1信号としての報知信号を発生すると共に、開閉スイッチ47sと同期して開放、閉成する常開接点47m1からの開閉信号が発生する際に、温度検出信号Tsが目標温度に達していないと第2信号としての警報信号を発する第1及び第2判断手段としての温度判断部152と、上記報知信号、上記警報信号に基づいて報知する第1及び第2報知手段としてのブザー154とを有している。
【0036】
振動センサ90は図9に示すように、振動検出回路に通じる一対の接点95,95と、これらの接点95,95間隔を保った状態に支持する電気絶縁部材からなる基板91と、導電性の接触子97の両端を両接点95,95の孔95a内に遊嵌させた状態で、接点95,95間に遊動自在の配設された振動部材92とからなるもので、該振動部材92には、重心を偏らせて動きを不安定化するための重り92aが取り付けられている。そして、はんだ付け作業時には半田ごての動きによって振動部材92が両接点95,95間を遊動し、接触子97が両接点95,95に接離することによって振動センサ90がオン・オフを繰り返すようになっている。
【0037】
<ピンセットの動作>
上記のように構成された電動半田ごての動作を図1から図7を参照して説明する。
まず、電源スイッチ47sをオンにして発熱体25を温めてから、ピンセット20の開放状態で、作業者が開閉スイッチ47mを押すと、電線45を介して電源をモータ41に供給してモータ41が回転を開始する。モータ41の軸41aが回転し、同時にカム51も同一の方向に同一の速度で回転する。第2圧縮バネ72により矢印B方向に付勢された第1カムフォロア61の第1接触部61sと、カム51の第1球部51bとが摺動し、ピンセット20は、他端部20cが矢印B方向に引っ張られて並進変位しながら移動してV字片20Vが開放から把持(閉成)して電子部品2を把持する。
【0038】
一方、第2カムフォロア62の第2接触部62sと、カム51の第2球部52bとが摺動して発熱体25が矢印A方向に押し上げられ、ピンセット20は他端部20cの下面全体に発熱体25が圧接して熱が先端部20xまで伝導して瞬時に熱せられる。
ここで、作業者が開閉スイッチ47mから手を離すと、モータ41に流れている電流が遮断されてモータ41の回転が停止してピンセット20が閉成して電子部品2を把持し続ける。従って、基板に電子部品2が半田付けされている場合には、電子部品2のリードを介して半田が溶けて電子部品2を基板から容易に取り外すことができる。
【0039】
次に、作業者が開閉スイッチ47mを押すと、上記のようにモータ41の軸41aが回転し、同時にカム51も同一の方向に同一の速度で回転する。カム51の第1球部51bと第1カムフォロワー61の第1接触部61sとが摺動し、ピンセット20は他端部20cが矢印A方向に戻されて並進変位しながら移動し、開放して電子部品2を放す。つまり、リワーク作業が容易となる。
一方、第2カムフォロワー62の第2接触部62sと、カム51の第2球部52bとが摺動して発熱体25が矢印B方向に引き込み、ピンセット20は、他端部20cが発熱体25から離れて自然冷却する。
【0040】
<温度制御装置の動作>
上記のように構成された半田ごての温度制御の動作を図8及び図10を主に参照して説明する。図10は電動半田ごての各部の動作を示すタイムチャートである。
いま、電源スイッチ47sが開放していて、切換えスイッチ140がa側に投入され、ピンセット20が開放している状態において、時間t0で、作業者が電源スイッチ47sを投入(閉成)すると、モータ制御部170を介してモータ駆動部105によりモータ41を回転してピンセット20を開放から把持すると共に、発熱体25がピンセット20の他端部20cと接触する。
待機指令部132から待機温度指令信号Tr1を切換えスイッチ140を介して減算器143に入力する。温度センサ80は温度検出信号Tsを減算器143に入力し、減算器143は待機温度指令信号Tr1と温度検出信号Tsとの差となる温度偏差信号Teを温度制御部145に入力する。温度制御部145は、電流指令信号Irを生成して電流制御部107を介してピンセット20の把持部20xの温度Taが待機温度になるように電流を制御して該把持部20xが待機温度になる。
【0041】
時間t1で、作業者が半田ごてのケース10を握り振動を生じると、振動センサ90は該振動を検出し、振動検知信号Bsを発生して切換えスイッチ140をa側に投入する。これにより目標指令部134から目標温度指令信号Tr2を切換えスイッチ140を介して減算器143に入力する。温度センサ80は温度検出信号Tsを減算器143に入力し、減算器143は目標温度指令信号Tr2と温度検出信号Tsとの差となる温度偏差信号Teを温度制御部145に入力する。温度制御部145は、電流指令信号Irを生成して電流制御部107を介して制御し、ピンセット20の把持部20xの温度Taを制御する。
【0042】
次に、時間t2で、作業者が開閉スイッチ47mをオン(閉成)させると、常開接点47m1が閉成し、報知判断部152は、ピンセット20の把持部20xの温度センサ80からの温度検出信号Tsが目標温度に達していないと判断して、第2信号をブザー154に与えてブザー154を断続的に鳴らして警報を発すると共に、表示器147の発光ダイオード147aを点滅させる。作業者は、警報を聞き、該点滅により半田ごてのピンセット20が目標温度に達していないことが判るので、目標温度に達するまで待機する。
【0043】
時間t3で、温度判断部152は、温度センサ80からの温度検出信号Tsが目標温度に達したこと判断して第1信号を発生してブザー154を断続音から一定音で鳴らすと共に、温度表示器147の発光ダイオード147cを点滅から点灯する。作業者は、ブザー音を聞き、該点灯により半田ごて1のピンセット20が目標温度に達していることが判るので、開閉作業を開始する。時間t4で、作業者が開閉スイッチ47mを投入すると、モータ制御部170、モータ駆動部105を介してモータ41を回転してピンセット20を把持状態から開放して、一定時間後に把持する。
【0044】
上記実施形態の電動半田ごて1によれば、ケース10に内蔵された並進移動する第1カムフォロワー61と、第2カムフォロワー62とを有しており、該ケース10に一端部20aが連結固定され、他端部20cが第1カムフォロワー61に連結されると共に、往復の並進変位量に基づいて先端20xの開閉量を拡大すると共に、電子部品2を開放及び把持するピンセット20と、ケース10に内蔵された発熱体25と、ピンセット20が把持状態で、ピンセット20の他端部20cに発熱体25が熱的に接触するように第1カムフォロワー61、操作部材67と第2カムフォロワー62とを移動したので、操作部材67の並進変位量に基づいて変位拡大機能を有するピンセット20が開放・把持する。
これにより、第1カムフォロワー61の動作に基づいてピンセット20を開放・把持するので、作業者が手により直接ピンセット20の開閉を行うことがなく、手の疲れが極めて軽減され、労働効率が上昇する。
【0045】
さらに、ピンセット20の他端部20cに発熱体25が接触するので、電子部品2のリード等を挟むピンセット20の先端部20xの内側が速やかに熱せられる。さらに、ピンセット20の内側が熱せられ易く、外側が熱せられにくいので、作業者の作業がし易い。
また、ピンセット20が閉成した場合に限り、発熱体25から熱が伝導してピンセット20を熱するので、エネルギー効率が良い。
【0046】
上記実施形態の電動半田ごて1によれば、モータ41の軸41aに連結されると共に、モータ41の一方向の回転を、所定の往復方向の並進変位量に変換して移動部を並進移動させる第1変換機構50と、該第1変換機構50は、ピンセット20の他端部20cが引き込まれると、発熱体25が押し出さるように動作する。
これにより、モータ41によりピンセット20を開放・把持するので、作業者は電動半田ごて1のケース10を保持するのみで、電子部品2を半田付けできたり、基板に取り付いていた電子部品2を外したりできる。従って、手の疲れが極めて軽減される。
また、モータ41により第1変換機構50を介してピンセット20の開放・把持と、発熱体25とピンセット20との接触をなすことができる。従って、駆動源として扱いが容易なモータ41を用いることができると共に、第1変換機構50を簡易に構成できる。
【0047】
実施の形態2.
本発明の他の実施の形態を図11によって説明する。図11は他の実施の形態を示す電動半田ごてのモータ制御部の全体図である。図11中、図8と同一符号は同一部分を示し、説明を省略する。
図11において、モータ制御装置200は、検出部,指令部,制御部,表示部,報知部を有している。検出部は、モータ41の軸の回転角度を検出して位置検出信号を発生する位置検出手段としてのエンコーダ201と、振動センサ90とを有しており、指令部は、図12に示すように、時間に対して回転角度としての位置Θ0〜Θeとなる第1,第2位置指令信号Θr1,Θr2を発生する位置指令器201を有している。
【0048】
位置指令器201は、設定器220により入力された第1,第2位置指令信号Θr1,Θr2を記憶する記憶部214と、電源スイッチ47sの開閉と同期する常開接点47s1と,開閉スイッチ47mとの閉成により第1位置指令信号Θr1を生成すると共に、開閉スイッチ47mの閉成により第2位置指令信号Θr2を生成する指令生成部202とを有している。ここで、第1位置指令信号Θr1は図12に示すように、電源スイッチ47sが閉成して常開接点47s1の閉成により回転角度Θ0〜Θwまでモータ41を一方向に回転してピンセット20を把持状態にし、回転角度Θwでモータ41の停止状態を継続した後、開閉スイッチ47mの閉成により回転角度Θw〜Θeまでモータ41を一方向に回転し、ピンセット20を閉成から開放するように形成されている。
第2位置指令信号Θr2は、回転角度Θ0〜Θeまでモータ41を一方向に回転してピンセット20を開放から閉成して把持状態を継続させる把持時間tcと、ピンセット20を閉成から開放して該開放状態を継続させる開放時間twとを有し、時間t5から時間t9までを一周期としてモータ41を回転するように形成されている。
【0049】
制御部は、位置指令信号Θrと位置検出信号Θsとの差となる位置偏差信号Θeを求める減算器216と、位置偏差信号Θeに基づいてモータ駆動部105を介してモータ41の回転を制御するモータ制御手段としてのモータ制御部220を有している。
表示部は、ピンセット20の開放・閉成状態を液晶247aにより表示させると共に、ピンセット20が把持状態で、開閉スイッチ47mが開放している場合、即ち、待機状態で、発光ダイオード247cを点滅させる位置表示器247を有している。
【0050】
報知部は、エンコーダ201の位置検出信号Θsがピンセット20の閉成状態を示す第1回転位置として角度Θh〜Θw内か否かを判断すると共に、位置検出信号Θsがピンセット20の開放状態を示す第2回転位置としての角度Θeか否かを判断する第3判断手段としての位置判断部252と、位置判断部252がピンセット20が開放又は閉成状態を示す回転位置と判断することにより報知すると共に、位置判断部252がピンセット20の閉成状態を示す回転位置と判断することにより警報する第3報知手段としてのブザー254とを有している。
【0051】
上記のように構成されたピンセット型半田ごての開閉制御の動作を図11及び図12を主に参照して説明する。時間t0で、作業者が電源スイッチ47sをオンすると常開接点47s1が閉成し、指令生成部202は、記憶部214から第1位置指令信号Θr1を読み出して減算器216に入力する。
一方、エンコーダ201が位置検出信号Θsを減算器216に入力し、減算器216は、第1位置指令信号Θr1と位置検出信号Θsとの差となる位置偏差信号Θeをモータ制御部220に入力し、モータ制御部220は駆動指令信号をモータ駆動部105に入力してモータ41を回転し、時間t1で、第1位置指令信号Θr1の位置指令値Θhとなり上記のようにしてピンセット20が開放から閉成し、時間t2で、位置指令値Θwとなりこれに伴い、上記のようにしてピンセット20が閉成状態を維持する。
【0052】
位置判断部252は、エンコーダ201の位置検出信号Θsが角度Θh〜Θwの範囲内か否か、つまりピンセット20が把持状態か否かを判断し、範囲内であるので、ブザー254を一定時間鳴らして正常であることを知らせる。一方、上記範囲外では、位置判断部252は、ブザー254を図12(c)に示すように断続的に鳴らして警報し、モータ制御部220に異常信号を与えてピンセット20の動作を停止する。
【0053】
時間t3で、作業者が開閉スイッチ47mをオンすると、第1位置指令信号Θr1の位置指令Θwを増加してピンセット20を閉成から開放に移行し、時間t4で、モータ41を回転角度Θeにしてピンセット20を開放状態にする。位置判断部252が回転角度Θeか否かを判断し、角度Θeであるので、ブザー254が終了を示す音を鳴らす。
時間t4から時間t5までの時間twの間、ピンセット20の開放状態を維持する。指令生成部202は、記憶部214から第2位置指令信号Θr2を読み出して減算器216に入力する。減算器216は、第2位置指令信号Θr2と位置検出信号Θsとの差となる位置偏差信号Θeをモータ制御部220に入力し、上記のようにしてモータ41を回転し、時間t6で、第2位置指令信号Θr2の位置指令値Θhとなり上記のようにしてピンセット20が開放から閉成し、時間t7で、位置指令値Θwとなり、上記のようにしてピンセット20が閉成状態を時間tcの間、維持する。
そして、時間t7からt8で、第2位置指令信号Θr2の位置指令値ΘwからΘeとなりモータ41を回転し、ピンセット20が閉成から開放状態に移行して開放状態になり、第2位置指令信号Θr2の一周期が終了する。位置判断部252が回転角度Θeか否かを判断し、角度Θeであるので、ブザー254が終了を示す音を鳴らす。
【0054】
上記実施形態の半田ごてによれば、変換機構50はケース10に収納し、モータ41の軸に連結され、モータ41の一方向の回転を、所定の往復方向の並進変位量に変換して第1及び第2移動部を並進移動させると共に、ピンセット20の他端部20cが引き込まれると、発熱体25を押し出すように形成されており、モータ41の回転位置を検出して位置検出信号を発生するエンコーダ201と、モータ41の回転位置指令信号Θrと位置検出信号Θsとの偏差に基づいてモータ41を制御するモータ制御部220とを備えている。
これにより、モータ41の位置指令信号Θrと位置検出信号Θsとの位置偏差信号Θeに基づいてピンセット20を開閉できる。従って、位置指令信号Θrに正確に追従してピンセット20を開閉できる。
【0055】
また、エンコーダ201が回転角度Θh〜Θwを検出するか否か、つまりピンセット20が把持状態か否かを判断する位置判断部252が回転角度Θh〜Θwを検出するとことにより、ブザー254が報知する。一方、位置判断部252が上記回転角度を検出しないと、ブザー254が警報を発生する。従って、作業者は、ピンセット20が把持状態か否かを容易に認識できる。
【0056】
実施の形態3.
上記実施形態1の電動半田ごて1では、ピンセット20の他端部20cが発熱体25の上面と接触したが、ピンセット20の一端部20a又は、一端部20a及び他端部20cが発熱体25の上面と接触する実施の形態について説明する。
さらに、実施の形態2では、ピンセット20の把持状態、つまり最大閉成量を調整でなかったが、本実施の形態では、図11に示す閉成量ΔLcの最大値を調整可能なピンセット20を得るものである。
本実施の形態を図11、図13から図15によって説明する。図13は、半田ごての把持対象部品とモータの位置指令信号との関係を示すテーブル図、図14はピンセット型の電動半田ごてのピンセット端部と発熱体との接触部付近の部分拡大図、図15は図11に示す電動半田ごての各部の動作を示すタイムチャートである。
【0057】
図11において、位置指令器201は、設定器220により入力された第1,第3位置指令信号Θr1,Θr3を記憶する記憶部214と、電源スイッチ47s,開閉スイッチ47mの投入により第1位置指令信号Θr1を生成すると共に、開閉スイッチ47mの投入により第3位置指令信号Θr3を生成する指令生成部202とを有している。
第3位置指令信号Θr3は図15に示すように、開閉スイッチ47mの投入により回転位置Θraまでモータ41を一方向に正回転して停止してピンセット20を把持状態にした後、開閉スイッチ47mの再投入により回転位置Θ0までモータ41を逆回転して元の位置Θ0に復帰してピンセット20を開放するように形成されている。
そして、第3位置指令信号Θr3の位置の最大値は、図13に示すように、電子部品2の半田付け部のリード線間隔によって部品Aから部品Dに対応してΘraからΘrdのいずれかを選択できるように形成されている。
【0058】
図14において、発熱体25の天面には、リング状で、弾性機能を有すると共に、熱伝導性を有する弾性部材267が固定されており、ピンセット20の他端部20cを収納するように円柱状の凹部25uが形成されている。これにより、ピンセット20が把持状態で、ピンセット20の一端部20aと発熱体25が接触すると共に、ピンセットの20の他端部20cは、発熱体25の凹部25uに収納され、発熱体25と接触しないように形成されている。そして、第3位置指令信号Θr3が位置Θrc、つまり、発熱体25の並進変位量が最も短い場合に、発熱体25とピンセット20の一端部20aとが接触するようにしておいて、最も、ピンセット20の他端部20cが引き込まれる第3位置指令信号Θr3が位置Θrdで、弾性部材267が圧縮されて上記接触を維持するように形成されている。
【0059】
上記のように構成された半田ごての開閉制御の動作を図11、図13、図15を主に参照して説明する。まず、設定器220により部品Aを選択する。
時間t10で、作業者が電源スイッチ47sをオンすると、実施形態2と同様にして、指令生成部202は、記憶部214から第1位置指令信号Θr1に基づいてモータ41を位置Θ0からΘwに回転し、ピンセット20が開放から閉成する。
【0060】
時間t12で、位置判断部252は、位置検出信号Θsが角度Θh〜Θwの範囲内か否かを判断し、範囲内であるので、ブザー254を一定時間鳴らして正常であることを知らせる。
時間t13で、作業者が開閉スイッチ47mをオンすると、第1位置指令信号Θr1の位置指令Θwを徐々に増加してピンセット20を閉成から開放に移行し、時間t14で、モータ41を回転角度Θeにしてピンセット20を開放状態にする。位置判断部252は、位置検出信号Θsが角度Θeか否かを判断し、角度Θeであるので、ブザー254を一定時間鳴らして終了したことを知らせる。
【0061】
時間t20で、作業者が開閉スイッチ47mをオンすると、指令生成部202は、記憶部214からA部品に対応する最大回転角度Θraを有する第3位置指令信号Θr3を読み出して、減算器216、モータ制御部220、モータ駆動部105を介してモータ41を角度Θraまで正回転し、ピンセット20を閉成して電子部品2の半田部を加熱する。時間tcの閉成状態を経過した後、時間t22で、作業者が再び開閉スイッチ47mをオンすると、指令生成部202は、記憶部214から第3位置指令信号Θr3を読み出して上記のようにしてモータ41を逆転して回転角度Θ0に復帰し、ピンセット20が開放する。位置判断部252は、位置検出信号Θsが角度Θeか否かを判断し、角度Θeであるので、ブザー254を一定時間鳴らして終了したことを知らせる。
【0062】
このように構成された半田ごて1によれば、発熱体25からピンセット20の一端部20aを介してピンセット20の把持部20xに熱が伝導される。
さらに、発熱体25の凹部25uの深さを図14に示す一点鎖線のように、上記よりも少し浅く形成することにより、ピンセット20が把持状態で、発熱体25がピンセット20の一他端部20a及び他端部20cと接触するように形成しても良い。
【0063】
上記のように構成された半田ごて1によれば、発熱体22とピンセット22のとの一他端部20a熱的な接触は、弾性部材127を介して成されており、記憶部214には、ピンセット20による部品2の半田付け部の間隔に対応して位置指令信号の把持状態を決める第1回転位置を記憶しており、第1回転位置に基づいてピンセットを把持する。従って、部品2の半田付け部の間隔に対応してピンセット20の閉成量を決めることができるので、適切な把持ができる。
【0064】
実施の形態4.
本発明の他の実施の形態を図16によって説明する。図16は他の実施の形態を示すピンセット型の手動半田ごての全体断面図である。図16中、図1と同一符号は同一部分を示し説明を省略する。
図16において、手動半田ごて300の第2変換機構340は、カム51に結合された軸341aを有する第1傘歯車341と、第1傘歯車341と噛合する第2傘歯車345と、第2傘歯車345に結合されると共に、軸341aと直交する回転軸343と、回転軸343を回転させると共に、一部がケース10から突出したローレットが施された回動部材347とを備えている。
【0065】
このような手動半田ごて300によれば、作業者が指で回動部材347を回動すると、回転軸343が回転すると共に、第2傘歯車345も回転して第1傘歯車341が回転する。これにより、上記実施形態1と同様にしてカム51が回転してピンセット20を開放から把持(閉成)すると共に、ピンセット20の他端部20cと発熱体25を非接触から接触する。従って、作業者がピンセット20そのものを手で開閉することなく、作業者が指で回動部材347を回動させれば、ピンセット20を開閉できるので、手の疲れが軽減される。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、ピンセット型の半田ごてに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施の形態を示すピンセット型電動半田ごての全体縦断面図である。
【図2】図1に示すピンセット型の電動半田ごての部分拡大図である。
【図3】図1に示すピンセットを示す斜視図である。
【図4】図1に示すピンセットの着脱部の縦断斜視図である。
【図5】図1による電動半田ごてのピンセットが開放状態における各部の動作を示す部分断面図である。
【図6】図1による電動半田ごてのピンセットが把持状態における各部の動作を示す部分断面図である。
【図7】図1に示す電動半田ごてに用いるカムの変位線図である。
【図8】本発明の一実施の形態を示す電動半田ごての温度制御部の全体図である。
【図9】図1及び図8に示す振動スイッチの断面図である。
【図10】図8に示す電動半田ごての各部の動作を示すタイムチャートである。
【図11】本発明の他の実施の形態を示す電動半田ごてのモータ制御部の全体図である。
【図12】図11に示す半田ごての各部の動作を示すタイムチャートである。
【図13】本発明の他の実施の形態による半田ごての把持対象部品とモータの位置指令信号を示すテーブル図である。
【図14】他の実施の形態によるピンセット型の電動半田ごてのピンセット端部と発熱体との接触部付近の部分拡大図である。
【図15】図13及び図14に示す半田ごての各部の動作を示すタイムチャートである。
【図16】他の実施の形態を示すピンセット型の手動半田ごての全体縦断面図である。
【図17】従来のピンセット型の半田ごての正面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 電動半田ごて、2 電子部品、10 ケース、20 ピンセット、20a 一端部、20c 他端部、20v 把持部材、25 発熱体、30 着脱部、31 固定部材、41 モータ、50 第1変換機構、51 カム、61 第1カムフォロワー、62 第2カムフォロワー、67 操作部材、80 温度センサ、90 振動センサ、105 モータ駆動部、107 電流制御部、132 温度指令器、145 温度制御部、147 表示器、152 報知判断部、267 弾性部材、300 手動半田ごて、337 回動部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに内蔵された第1並進移動する第1移動部と該第1移動部と反対方向に第2並進移動する第2移動部と、
逆V字形で、一端部と他端部を有する第1、第2部材を有し、該第1部材と該第2部材の他端部どうしを連結し、前記ケースに前記一端部が連結固定され、前記他端部が前記第1移動部に連結されると共に、往復の前記第1並進移動に基づいて該第1並進移動の量よりも先端の開閉量を拡大すると共に、被対象物を開放及び把持する把持部を有するピンセットと、
前記ケースに内蔵され、前記第2移動部に連結されると共に、流れる電流に応じて発熱量を定める発熱体と、
前記ピンセットが把持状態で、前記ピンセットの前記他端部又は前記一端部の少なくともいずれか一方に前記発熱体が熱的に接触するように前記第2移動部を前記第2並進移動させる変換機構と、
前記発熱体に流れる電流を制御する電流制御手段と、
温度指令信号に基づいて前記電流制御手段を制御する温度制御手段と、
を備えたことを特徴とするピンセット型半田ごての制御装置。
【請求項2】
前記第2移動部を前記第2並進移動して前記ピンセットの前記他端部又は前記一端部の少なくともいずれか一方に前記発熱体が熱的に接触するように前記変換機構を動作させる駆動手段と、
前記ピンセットの温度を検出して温度検出信号を出力する温度検出手段と、
前記ケースの振動を検知して振動検知信号を出力する振動検知手段と、
第1温度指令信号を発生すると共に、前記振動検知信号の発生に基づいて前記第1温度指令信号よりも高い第2温度指令信号を発生する温度指令発生手段とを備え、
前記駆動手段は、前記第1温度指令信号に基づいて前記第2移動部を前記第2並進移動して前記ピンセットの前記他端部又は前記一端部の少なくともいずれか一方に前記発熱体が熱的に接触するように前記変換機構を動作させ、
前記温度制御手段は、前記温度検出信号と前記第1又は第2温度指令信号とが一致するように前記電流制御手段を制御する、
ことを特徴とする請求項1記載のピンセット型半田ごての制御装置。
【請求項3】
複数の値の異なる第2温度指令信号を記憶する温度指令記憶手段を備え、
前記温度指令発生手段が該温度指令記憶手段から指定された第2温度指令信号を読み出して、前記温度制御手段が前記温度検出信号と該第2温度指令信号とが一致するように前記電流制御手段を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載のピンセット型半田ごての制御装置。
【請求項4】
前記温度検出信号が前記第2温度指令信号に達することを判断すると共に、達すると第1信号を発生する第1判断手段と、
該第1信号に基づいて報知する第1報知手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のピンセット型半田ごての制御装置。
【請求項5】
前記ピンセットを開放・把持する開閉指令を発生する開閉指令手段と、
前記開閉指令が発生した時に、前記温度検出信号が前記第2温度指令信号に達していないことを判断し、達していないと第2信号を発生する第2判断手段と、
該第2信号に基づいて報知する第2報知手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のピンセット型半田ごての制御装置。
【請求項6】
ケースに内蔵された第1並進移動する第1移動部と該第1移動部と反対方向に第2並進移動する第2移動部と、
逆V字形で、一端部と他端部を有する第1、第2部材を有し、該第1部材と該第2部材の他端部どうしを連結し、前記ケースに前記一端部が連結固定され、前記他端部が前記第1移動部に連結されると共に、往復の前記第1並進移動に基づいて該第1並進移動の量よりも先端の開閉量を拡大すると共に、被対象物を開放及び把持する把持部を有するピンセットと、
前記ケースに内蔵され、前記第2移動部に連結されると共に、流れる電流に応じて発熱量を定める発熱体と、
前記ピンセットが把持状態で、前記ピンセットの前記他端部又は前記一端部の少なくともいずれか一方に前記発熱体が熱的に接触するように前記第2移動部を前記第2並進移動させる変換機構と、
前記変換機構は、前記ケースに収納し、モータの軸に連結され、前記モータの一方向の回転を、所定の往復方向の並進変位量に変換して前記第1及び第2移動部を並進移動させると共に、前記ピンセットの他端部が引き込まれると、前記発熱体を押し出すように動作するように形成されており、
前記モータの位置指令信号に基づいて前記モータを制御するモータ制御手段と、
ことを特徴とするピンセット型半田ごての制御装置。
【請求項7】
前記モータの回転位置を検出して位置検出信号を発生する位置検出手段とを備え、
前記モータ制御手段は、前記モータの位置指令信号と前記位置検出信号との偏差に基づいて前記モータを制御する、
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のピンセット型半田ごての制御装置。
【請求項8】
前記ピンセットが把持している状態に対応した前記モータの第1回転位置を記憶する位置記憶手段を備え、
前記モータ制御手段は、前記位置検出手段が前記第1回転位置を検出することに基づいて前記モータを一定時間前記第1回転位置で停止する、
ことを特徴とする請求項7に記載のピンセット型半田ごての制御装置。
【請求項9】
前記位置検出手段が前記第1回転位置を検出するか否かを判断する第3判断手段と、
該第3判断手段が前記第1回転位置の検出に基づいて報知すると共に、前記第3判断手段が前記第1回転位置を検出しないと警報する第3報知手段と、
を備えたことを特徴とする請求項7に記載のピンセット型半田ごての制御装置。
【請求項10】
前記変換機構は、前記ケースに収納し、モータの軸に連結され、前記モータの回転を、所定の往復方向の並進変位量に変換して前記第1及び第2移動部を並進移動させると共に、前記ピンセットの他端部が引き込まれると、前記発熱体を押し出すように動作するピンセット型半田ごてであって、
前記発熱体と前記ピンセットとの熱的な接触は、弾性部材を介して成されており、
前記位置記憶手段には、前記ピンセットによる把持対象物の半田付け部の間隔に対応して前記第1回転位置を記憶しており、
前記第1回転位置に基づいて前記ピンセットを把持する、
ことを特徴とする請求項1に記載のピンセット型半田ごての制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−132506(P2008−132506A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318664(P2006−318664)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(805000018)財団法人名古屋産業科学研究所 (55)