説明

ファクシミリ装置、ファクシミリ装置の制御方法、プログラム

【課題】IP網を介したファクシミリ通信を確実に行えるようにする。
【解決手段】 IP網を介してファクシミリ通信を行うファクシミリ装置に関わる。この装置では、呼接続のために、少なくとも、画像通信から始まるセッションで接続する接続シーケンス手段及び音声通信から始まるセッションで接続する接続シーケンス手段を含む、複数の呼接続用の接続シーケンス手段を備える。この装置では、最初に呼接続のため使用された接続シーケンス手段で接続に失敗した場合に、この接続に失敗した以外の接続シーケンス手段で再接続を試みるよう制御する制御手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP網を介してファクシミリ通信を行うファクシミリ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットやIP電話の普及からファクシミリ通信の通信経路としてIP網を利用する方法が確立されてきている。SIP(Session Initiation Protocol)といったリアルタイム通信のためのセッションの生成、変更及び切断を実行する呼制御を行うプロトコルが標準化されてきている。また、G3ファクシミリ(T.30)の信号をIP網上でIPメッセージに変換してリアルタイム伝送を行うT.38プロトコルが勧告化されている。
【0003】
リアルタイム型インターネットファクシミリ装置は、これらSIPとT.38を利用してIP網上でリアルタイムのファクシミリ通信を行うファクシミリ装置のことである。このリアルタイム型インターネットファクシミリ装置では、初めに、SIPで相手先のアドレスを特定し、送信側と受信側でデータ伝送にどのようなプロトコルで、どのようなデータを流すのか決定する。このリアルタイム型インターネットファクシミリ装置には、SDP(Session Description Protocol)が使用される。このSDPは、プロトコルという名前がついているが、実際はメディア情報の記述方式をフォーマット化したものであり、T.38通信を行う場合にもセッションのメディア種別を使用する。T.38通信で使用されるメディア種別にはimage又はapplicationが使用されており、また音声通信(通話)にはaudioが使用されている。
【0004】
また、従来のSIPでの呼接続時の相手先情報によって通信制御を行う通信装置では、T.38通信の開始に先立って行われる所定の呼接続手順において相手装置とやりとりする呼接続メッセージを得る。そして、得られた呼接続メッセージから相手装置の属性を示す情報である相手属性情報を取得する。さらに、取得された相手属性情報に応じてT.38通信時のパラメータ値を制御して、リアルタイムネットワークファクシミリ通信の制御を行う通信装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−303968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
SIP+T.38通信を行う機器には、リアルタイム型インターネットファクシミリ装置、T.38GWやT.38アダプタが存在し、これらを製造するメーカーも複数存在する。そして、メーカー間または同一メーカーの機種間において、採用しているSIPプロトコルでの接続シーケンスの違いや解釈の相違・機能拡張に伴うSDPの記述等の違いが存在する。
【0007】
このため、同じSIP+T.38対応のリアルタイム型インターネットファクシミリ装置間でも、メーカー又は機種の違いにより正しく通信を行えたり行えなかったりといった接続性・交信性の問題が発生している。
【0008】
本発明の目的は、IP網を介したファクシミリ通信を確実に行うことを可能とする仕組みを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のファクシミリ装置は、IP網を介してファクシミリ通信を行うファクシミリ装置において、呼接続のために、少なくとも、画像通信から始まるセッションで接続する接続シーケンス手段及び音声通信から始まるセッションで接続する接続シーケンス手段を含む、複数の呼接続用の接続シーケンス手段と、最初に呼接続のため使用された前記接続シーケンス手段で接続に失敗した場合に、この接続に失敗した以外の前記接続シーケンス手段で再接続を試みるよう制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、IP網を介したファクシミリ通信を確実に行うことが可能となる。より具体的に、例えば、接続シーケンスの異なるSIP+T.38端末に対しても、SIPからT.38通信に至る接続シーケンスを成功させるようにできる。また、T.38ファクシミリ手順中にエラー終了しても再接続時には最適な接続シーケンスで接続が可能なリアルタイム型インターネットファクシミリ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係るリアルタイム型インターネットファクシミリ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態に係るSIP標準手順で、T.38通信を行うときのプロトコルのシーケンスを示す説明図である。
【図3】本実施の形態に係る、他のSIP標準手順で、T.38通信を行うときのプロトコルのシーケンスを示す説明図である。
【図4】本実施の形態に係る、さらに他のSIP標準手順で、T.38通信を行うときのプロトコルのシーケンスを示す説明図である。
【図5】本実施の形態に係るリアルタイム型インターネットファクシミリ装置での送信処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
本実施の形態に係る通信装置の構成を示す図1のブロック図で、101はCPU(Central Processing Unit)で構成された制御手段としてのシステム制御部であり、装置全体の制御を司る。このCPU101には、バスを介して各種の機能部が接続されている。また、このCPU101には、IC等で構成された動作間隔等を計測するための時計部107が接続されている。
【0013】
このCPU101にバスを介して接続されたROM102は、CPUの制御プログラムを格納する。また、RAM103は、RAM等で構成され、画像データを蓄積する。画像メモリ104は、DRAM等で構成され、画像データを蓄積する。
【0014】
このCPU101にバスを介して接続された解像度変換処理部105は、ラスタデータのミリ−インチ解像度変換等の解像度変換制御を行う。さらに、読取・記録用符号化復号化処理部106(読取・記録用コーデック)は、通信装置で扱う画像データの符号化復号化処理を行う。
【0015】
このCPU101は、バスにより接続されたモデム108と、これに接続された回線i/f部109を介して、PSTN等のアナログ回線110に接続されている。このモデム108は、回線からの変調された信号を復調したり、逆に装置からの信号を変調し回線に送出するものである。また、回線i/f部109は、NCU等で構成される制御部である。この回線i/f部109は、電話機の接続端子が2個の場合、夫々の端子でオフフック/オンフック検知をするために接続端子毎にフック検知回路を有する。
【0016】
このCPU101は、バスにより接続されたLAN I/F111を介して、構内IP網又はNGN等のIP網112に接続されている。このLAN I/F111は、ネットワークを制御するためのLAN I/Fである。
【0017】
このCPU101には、バスにより接続された画像処理部113を介して、シートスキャナ114と、ブックスキャナ115とが接続されている。これらシートスキャナ114及びブックスキャナ115は、CSイメージセンサ及び原稿搬送機構等で構成され、原稿を光学的に読み取って電気的な画像データに変換するものであり、両面原稿の読み取りが可能に構成されている。シートスキャナ114又はブックスキャナ115によって、よって読み込まれた画像データは、画像処理部113で補正処理が施されて高精細な画像データに変換されて出力される。
【0018】
このCPU101には、バスを介して操作部116が接続されている。この操作部116は、キーボード、表示部等で構成され、オペレータが各種入力操作を行うためのものである。また、この操作部116は、ハンドセットがオフフック時に即時ダイヤル操作可能を表示し、外付け電話機がオフフック時に通信中であることの表示及び通信予約受け付け可能なことを表示する。
【0019】
このCPU101には、バスを介して、画像データの転送制御を行う場合に使用するラインバッファ117が接続されている。
【0020】
このCPU101には、バスにより接続されたプリントバッファ118を介して、プリンタ119が接続されている。このプリントバッファ118は、印字用文字コードを格納する為の1ページ分のバッファメモリである。また、このプリンタ119は、受信画像やファイルデータを普通紙に記録するLBP等のプリンタであり、両面記録を実行可能に構成されている。
【0021】
次に、本実施の形態に係るリアルタイム型インターネットファクシミリ装置で実行される接続シーケンスの1つである標準接続シーケンスについて、図2を参照して説明する。
【0022】
送信側は、送信側からのメディア種別(m)がimageであるINVITEリクエスト(セッション確立要求)を、受信側へ送信する。このINVITEリクエストを受信した受信側は、100 Trying(処理中)、180 Ringing(呼び出し中)のレスポンスをへて、200 OK(成功)レスポンスを送信側へ返す。すると送信側は、ACK(確認応答)を受信側へ返信して、m=imageのセッションが確立され、T.38通信が開始される。
【0023】
このT.38通信が終了した後に、送信側は、BYE(切断)を受信側へ送信する。このBYEを受信した受信機側は、200 OK(成功)を返してSIP標準接続シーケンスによるT.38通信が完了される。
【0024】
次に、本実施の形態に係るリアルタイム型インターネットファクシミリ装置で実行される接続シーケンスの1つであるaudio−imageの切換え接続シーケンスについて、図3を参照して説明する。
【0025】
送信側は、送信側からのメディア種別(m)がaudioであるINVITEリクエスト(セッション確立要求)を、受信側へ送信する。このINVITEリクエストを受信した受信側は、100 Trying(処理中)、180 Ringing(呼び出し中)のレスポンスをへて、200 OK(成功)レスポンスを送信側へ返す。送信側は、送信側のACK(確認応答)を受信側へ返信すると、m=audioのセッションが一旦生成される。
【0026】
次に、受信側は、m=audioでのセッション中に送信側からのCNG信号を検出すると、送信側にFAX能力があると判断する。受信側は、メディア種別(m)がimageであるreINVITEリクエスト(セッション確立要求)を送出し、送信側にm=imageのセッション生成を要求する。
【0027】
このセッション生成の要求を受けた送信側の200 OK(成功)に対する、受信側のACK(確認応答)をもってm=imageのセッションが確立し、T.38通信が開始される。また、T.38通信の終了後に、送信側は、BYE(切断)を送信し、これを受けた受信機側が200 OK(成功)を返すとSIP標準接続シーケンスを利用したT.38通信が完了される。
【0028】
次に、本実施の形態に係るリアルタイム型インターネットファクシミリ装置で実行される接続シーケンスの1つであるaudioとimageの2つのセッションでの接続シーケンスについて、図4を参照して説明する。
【0029】
送信側は、メディア種別(m)がaudioとimageである(セッション確立要求)を、受信側へ送信する。これを受けた受信側は、100 Trying(処理中)、180 Ringing(呼び出し中)のレスポンスをへて、メディア種別(m)がaudioとimageに対応した200 OK(成功)レスポンスを送信側へ返信する。そして、送信側がACK(確認応答)を受信側へ送信したことをもってm=audioとm=imageの2つのセッションが確立する。
【0030】
この後、受信側は、m=audioでのセッション中に送信側からのCNG信号を検出すると、m=imageのセッションでT.38通信を開始する。すると、送信側は、BYE(切断)を受信側へ送信し、受信機側が200 OK(成功)を返すことにより、SIP標準接続シーケンスによるT.38通信を完了させる。
【0031】
次に、本実施の形態に係る、発信時のリアルタイム型インターネットファクシミリ装置の接続シーケンスの選択処理とT.38通信に係る送信処理について、図5のフローチャートを参照して説明する。
【0032】
このリアルタイム型インターネットファクシミリ装置の制御手段としてのCPU101は、ユーザによる送信指令が入力されると、本送信処理を開始する。このCPU101は、発信時に予め設定されている発信シーケンス情報(図2、図3又は図4の何れかの発信シーケンス)を取得し(ステップS1)、接続シーケンスを開始する(ステップS2)。
【0033】
次に、CPU101は、接続処理が成功したかどうかを判断し、エラー終了したと判断した場合(ステップS3でYES)に、ステップS4へ進み、別の接続シーケンスが選択可能かを判断する。
【0034】
次に、CPU101は、別の接続シーケンスが選択可能であると判断した場合(ステップS4でYES)に、ステップS5へ進み、次に試みる接続シーケンスを選択する。この後、CPU101は、ステップS2に戻り接続シーケンスを再開する。
【0035】
また、CPU101は、次に試みる接続シーケンスが無いと判断した場合(ステップS4でNO)に、ステップS6へ進み、接続シーケンスのログ取得等のエラー処理を行う。この後、CPU101は、切断処理(ステップS7)を実行して、本送信処理を終了する。
【0036】
また、CPU101は、ステップS3において、接続シーケンスが正常に終了したと判断した場合(ステップS3でNO)に、宛先毎に成功した接続シーケンス情報を、宛先に関連付けして記憶する(ステップS8)。ここで、CPU101は、接続シーケンスが成功しT.38通信が可能となったので、T.38で通信を行う手順に移行し、T.38FAX通信を開始する(ステップS9)。
【0037】
次に、CPU101は、T.38通信中にエラーが発生したと判断した場合に、T.38手順でのエラー通信ログを取得・保存し、エラー再送信設定を行う。この場合のエラーは、T.38手順上のエラーなので接続シーケンス情報の変更は行わない(ステップS11)。次に、CPU101は、切断処理を行い(ステップS7)、本送信処理を終了する。
【0038】
要するに、本実施の形態に係る通信装置は、IP網を介してファクシミリ通信を行うファクシミリ装置として構成されている。送信側のファクシミリ装置は、受信側のファクシミリ装置に対して呼接続行うための複数の呼接続用の接続シーケンス手段を備える。
【0039】
この複数の呼接続用の接続シーケンス手段には、例えば、画像通信から始まるセッションで接続する接続シーケンス手段と、音声通信から始まるセッションで接続する接続シーケンス手段とがある。さらに、この複数の呼接続用の接続シーケンス手段には、音声通信を行うセッションと画像通信を行うセッションとを同時に生成する接続シーケンスを加えた手段がある。
【0040】
この画像通信から始まるセッションで接続する接続シーケンス手段は、image又はapplicationのメディア種別によるSIP標準接続手順による接続シーケンス手段である。また、音声通信から始まるセッションで接続する接続シーケンス手段は、audioのメディア種別によるSIP標準接続手順による接続シーケンス手段である。
【0041】
さらに、通信装置の制御手段であるCPU101は、最初に呼接続のため使用された接続シーケンス手段で接続に失敗した場合に、この接続に失敗した以外の接続シーケンス手段で再接続を試みる制御を可能に構成されている。
【0042】
この通信装置では、例えば、audioのメディア種別で接続後、FAX信号の検出でメディア種別をimage又はapplicationに変更して再接続を行う。
【0043】
また、音声通信と画像通信とのセッションを同時に生成する接続シーケンスの手段は、audioとimage又はaudioとapplicationの両方のメディア種別による2つのセッションで接続する接続シーケンス手段である。この両方で接続する接続シーケンス手段では、audioのメディア種別で接続後、FAX信号を検出し、メディア種別をimage又はapplicationに変更して再接続を行う。また、この両方で接続する接続シーケンス手段では、audioとimage又はaudioとapplicationの両方のメディア種別による2つのセッションで接続する。そしてこの両方で接続する接続シーケンス手段では、メディア種別audioのセッションでFAX信号を検出し、既に接続しているimage又はapplicationのセッションでT.38FAX通信行う。
【符号の説明】
【0044】
101 CPU
105 解像度変換処理部
106 読取記録用符号化複
108 モデム
109 NCU(回線if部)アナログ電話回線
LAN I/F
112 IPネットワーク
119 プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IP網を介してファクシミリ通信を行うファクシミリ装置であって、
呼接続のために、少なくとも、画像通信から始まるセッションで接続する接続シーケンス手段及び音声通信から始まるセッションで接続する接続シーケンス手段を含む、複数の呼接続用の接続シーケンス手段と、
最初に呼接続のため使用された前記接続シーケンス手段で接続に失敗した場合に、この接続に失敗した以外の前記接続シーケンス手段で再接続を試みるよう制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項2】
前記複数の呼接続用の接続シーケンス手段には、
音声通信を行うセッションと画像通信を行うセッションとを同時に生成する接続シーケンスを加えた手段が含まれることを特徴とする請求項1記載のファクシミリ装置。
【請求項3】
前記接続シーケンスが成功し、前記ファクシミリ通信を行う手順に移行した場合には、宛先に関連付けして成功した前記接続シーケンスを記憶し、
前記ファクシミリ通信中にエラーが発生した場合に、呼接続に成功したため記憶されている前記接続シーケンスを利用して、エラー再送信のための再接続をすることを特徴とする請求項1又は2記載のファクシミリ装置。
【請求項4】
呼接続のために、少なくとも、画像通信から始まるセッションで接続する接続シーケンス手段及び音声通信から始まるセッションで接続する接続シーケンス手段を含む、複数の呼接続用の接続シーケンス手段を備え、IP網を介してファクシミリ通信を行うファクシミリ装置であって、
最初に呼接続のため使用された前記接続シーケンス手段で接続に失敗した場合に、この接続に失敗した以外の前記接続シーケンス手段で再接続を試みるよう制御する制御工程を備えることを特徴とするファクシミリ装置の制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載のファクシミリ装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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