説明

ファクシミリ装置

【課題】確立されたセッションにおいて、ファクシミリ通信データの送信先である相手先装置と好適な通信を行うことができる、ファクシミリ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ファクシミリ装置は、帯域確保型のIPネットワークに接続された相手先装置にファクシミリ通信データを送信する。ファクシミリ装置では、確立されたセッションにおいて、利用する通信帯域の変更が設定された第一信号が受信された場合、セッションの確立から第一信号が受信されたタイミングまでの経過時間と、確立されたセッションを管理する基準の単位として定められた単位時間とに応じて(S412)、第一信号にて設定された通信帯域の変更を受け入れることを表す第二信号と、第一信号にて設定された通信帯域の変更を受け入れないことを表す第三信号との何れかが送信される(S414,S416)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯域確保型のIPネットワークに対応したファクシミリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ファクシミリ装置に関する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、公衆網を介して送信先通信装置に画情報のファクシミリ送信を行う通信装置が開示されている。通信装置では、送信先通信装置から、再送要求を受けた場合に、当該再送要求に「課金パルスによりエラーが生じた」旨の通知が付加されているときは、送信速度を変更せずに画情報が送信先通信装置に再送される。通信装置では、「課金パルスによりエラーが生じた」旨の通知がカウントされ、カウント値がある値になったときは通信速度を落として画情報が送信先通信装置に再送される。
【0003】
市外局番から始まる電話番号を利用した帯域確保型のデータ通信サービスが提供されている(例えば、非特許文献1参照)。このサービスにはNGNが利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−112488号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】東日本電信電話株式会社、“News Release 「ひかり電話」を利用した帯域確保型データ通信サービス「データコネクト」の提供および大容量・多チャネルでの通信を実現する「ひかり電話ナンバーゲート」の提供について”、[online]、平成22年5月31日、[平成23年9月7日検索]、インターネット< http://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20100531_05.html >
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1における帯域確保型のデータ通信サービスでは、通信に要する時間が、基準の単位となる単位時間を経過する毎に、課金される。現在、非特許文献1による帯域確保型のデータ通信サービスでは、単位時間は30秒とされている。単位時間あたりの単位課金額は、利用する通信帯域が高速となる程、高額となるように設定されている。非特許文献1のような帯域確保型のデータ通信サービスを利用して、符号化画像データを含むファクシミリ通信データを相手先装置に送信した場合、相手先装置から、利用する通信帯域の変更を要求する信号を受信することがある。ユーザが、この帯域確保型のデータ通信サービスを利用して、ファクシミリ通信データを送信したとする。この場合、例えば、通信が30秒を超えた場合、60秒までは、課金額は増加しない。前述の例において、通信に31秒要したタイミングでは、同一課金内で、理論的には、残り29秒間通信をすることができる。ただし、31秒のタイミングで、通信帯域の変更が設定された信号を受信し、この信号に応じて、通信帯域を変更した場合、変更後のタイミングから新たに30秒のカウントが開始される。この場合、残りの29秒間の通信は行われていないにもかかわらず、60秒まで通信した場合の額に、新たな通信帯域による通信に応じた額が加算される。即ち、相手先装置にファクシミリ通信データを送信するために確立されたセッションでの課金額は、最初の60秒分までの額と、新たな通信帯域による時間に応じた額とを合計した額となる。ユーザ視点によれば、残り29秒分の課金が無駄であるように感じられる。
【0007】
本発明は、確立されたセッションにおいて、ファクシミリ通信データの送信先である相手先装置と好適な通信を行うことができる、ファクシミリ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来の課題に鑑みなされた本発明の一側面は、帯域確保型のIPネットワークに接続された相手先装置と通信し、相手先装置に符号化された符号化画像データを含むファクシミリ通信データを送信するファクシミリ装置であって、前記IPネットワークに接続され、前記IPネットワークを介して相手先装置と通信する通信部と、時間の経過を計測する計時部と、相手先装置とのセッションを確立させるための発呼処理を制御する第一通信制御部と、前記発呼処理によるセッションの確立を条件として、前記計時部での計測が開始されるように制御する第一計時制御部と、確立されたセッションにおいて、前記ファクシミリ通信データが前記通信部から相手先装置に送信されるように制御する第二通信制御部と、確立されたセッションにおいて、利用する通信帯域の変更が設定された第一信号が前記通信部で受信された場合、セッションの確立から前記第一信号が受信されたタイミングまでの経過時間と、確立されたセッションを管理する基準の単位として定められた単位時間と、に応じて、前記第一信号にて設定された通信帯域の変更を受け入れることを表す第二信号と、前記第一信号にて設定された通信帯域の変更を受け入れないことを表す第三信号と、の何れかが前記通信部から相手先装置に送信されるように制御する第三通信制御部と、を備えるファクシミリ装置である。これによれば、経過時間と単位時間とに応じて、利用する通信帯域の変更を受諾するか、拒否するかを決定することができる。
【0009】
このファクシミリ装置は、次のようにすることもできる。確立されたセッションにおいて、前記経過時間と、前記単位時間と、の関係を判断する第一判断部を備え、前記第三通信制御部は、前記第一判断部にて判断される前記経過時間と前記単位時間との関係に関し、前記経過時間を前記単位時間で除した計算結果の余りとなる剰余時間に対応した第一基本時間が前記単位時間より長くなるような関係である場合、前記第二信号が前記通信部から相手先装置に送信されるように制御し、前記第一判断部にて判断される前記経過時間と前記単位時間との関係に関し、前記第一基本時間が前記単位時間より短くなるような関係である場合、前記第三信号が前記通信部から相手先装置に送信されるように制御する。これによれば、経過時間と単位時間との関係に基づいたファクシミリ通信データの送信を好適に管理することができる。
【0010】
また、前記第三信号が送信された場合、確立されたセッションにおいて、前記通信部から相手先装置に送信される符号化画像データのうち、前記第一信号が受信されたタイミングで送信されていない符号化画像データを送信するのに要する必要時間を取得する取得部と、前記取得部にて取得された前記必要時間と、前記単位時間から前記剰余時間を差し引いた時間と、の関係を判断する第二判断部と、前記第二判断部にて前記必要時間が前記単位時間から前記剰余時間を差し引いた時間より長い時間であると判断された場合、前記単位時間から前記第一基本時間を差し引いた第二基本時間をカウント値として、前記計時部での計測が開始されるように制御する第二計時制御部と、前記第二計時制御部にて開始された計測において、前記第二基本時間が経過したかを判断する第三判断部と、を備え、前記第三通信制御部は、前記第三判断部にて前記第二基本時間が経過したと判断された場合、前記通信部で受信された前記第一信号に設定されていた通信帯域と同一の通信帯域が設定された新たな第一信号が前記通信部から相手先装置に送信されるように制御する。これによれば、継続されるファクシミリ通信データの送信において、相手先装置からの要求に応じた通信帯域を利用した通信を実現することができる。相手先装置では、送信されるファクシミリ通信データを好適に受信することができる。
【0011】
また、前記第一信号が受信された場合、受信された前記第一信号が、セッションの確立の際に設定された通信帯域より、低速の通信帯域が設定された信号であるか、高速の通信帯域が設定された信号であるか、を判断する第四判断部を備え、前記第二通信制御部は、前記第三信号が前記通信部から相手先装置に送信され、且つ、前記第四判断部にて前記第一信号が低速の通信帯域が設定された信号であると判断された場合、前記ファクシミリ通信データの伝送速度を前記第一信号に設定された通信帯域に低下させる。これによれば、実質的には、相手先装置の要求に従ったファクシミリ通信データの送信を実行させることができる。相手先装置では、送信されるファクシミリ通信データを好適に受信することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、確立されたセッションにおいて、ファクシミリ通信データの送信先である相手先装置と好適な通信を行うことができる、ファクシミリ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ファクシミリ装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【図2】通信帯域の変更に関する要求に応じて通信帯域を変更する第一実施例のシーケンス図である。
【図3】通信帯域の変更に関する要求に応じない場合のシーケンス図である。(A)は、変更が通信帯域を高めるための要求である第二実施例のシーケンス図である。(B)は、変更が通信帯域を低下させるための要求である第三実施例のシーケンス図である。
【図4】ファクシミリ処理のフローチャートである。
【図5】読取処理のフローチャートである。
【図6】発呼処理のフローチャートである。
【図7】送信処理のフローチャート(その1)である。
【図8】UPDATE又はre−INVITEメッセージのSDPの一例を示す図である。
【図9】送信処理のフローチャート(その2)である。
【図10】タイムアップ処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための実施形態について、図面を用いて説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略し又は他の構成等に置換してもよい。また、他の構成を含むようにしてもよい。
【0015】
<ファクシミリ通信システム>
ファクシミリ装置(以下、「FAX装置」という)10を含むファクシミリ通信システム(以下、「FAX通信システム」という)1について、図1を参照して説明する。図1に示すFAX通信システム1は、次世代ネットワーク(Next Generation Network 以下、「NGN」という)網3によって構築される。具体的に、FAX通信システム1は、例えば上述した非特許文献1に示されるような、市外局番から始まる電話番号(以下、「ダイヤル番号」という)を利用した帯域確保型のデータ通信サービスによって構築される。即ち、FAX通信システム1は、東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社によって既に提供されている、NGN網3を利用した帯域確保型のデータ通信サービスによって構築される。この帯域確保型のデータ通信サービスは、データコネクト(登録商標)と称されている。この帯域確保型のデータ通信サービスでは、確立されたセッションは、基準の単位となる単位時間毎に管理される。即ち、帯域確保型のデータ通信サービスでは、セッションが確立された後の経過時間が単位時間を経過する毎に、課金される。現在、単位時間は30秒とされている。本実施形態では、単位時間を「30秒」として説明する。単位時間あたりの単位課金額は、利用する通信帯域が高速となる程、高額となるように設定されている。NGN網3を利用した帯域確保型のデータ通信サービスは、既に実用化された技術であるため、この他の説明は、省略する。
【0016】
FAX通信システム1は、送信元となるFAX装置10の他、図1に示すように、送信先(受信側)となるFAX装置(以下、「相手先装置」という)50と、SIP(Session Initiation Protocol)サーバ80とを含む。FAX装置10と、相手先装置50と、SIPサーバ80とは、NGN網3に接続されている。SIPサーバ80は、FAX装置10のIPアドレス及びSIPURI(SIP Uniform Resource Identifier)を対応付けて記憶し、相手先装置50の、IPアドレス及びSIPURIを対応付けて記憶している。SIPサーバ80は、SIPを用いて、FAX装置10と相手先装置50との間の通信を制御する。FAX装置10と相手先装置50との間でSIPに従った手順に基づく各種の信号(指令)は、SIPサーバ80を経由して送受信される。
【0017】
<FAX装置>
FAX装置10は、T.38ベースのIPFAX(Internet Protocol FAX)通信(以下、「T.38FAX通信」という)を行うための機能を有する。T.38は、IPプロトコルを用いて、G3FAX通信を行うための伝送制御プロトコルである。T.38FAX通信は、SIPURIを用いて、NGN網3を介して、符号化された画像データ(以下、「符号化画像データ」という)を含むファクシミリ通信データ(以下、「FAX通信データ」という)を通信(送受信)するものである。FAX通信データは、符号化画像データを含む。FAX通信データについては、後述する。T.38FAX通信では、相手先装置50に対応する相手先情報として、ダイヤル番号が用いられる。ダイヤル番号としては、例えば、0ABJやE.164形式が例示され、東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社から割り当てられる。FAX装置10は、T.38FAX通信による送信(T.38FAX送信)によって、符号化画像データを、相手先装置50に送信する。FAX装置10は、モノクロ及びカラーの各送信に対応している。モノクロ送信では、符号化方式として、例えば、MMR、MR、MH、及び、JBIGが用いられる。FAX装置10は、JBIGに対応している。一般的に、JBIGに対応しているFAX装置は、それより低圧縮率であるMMR、MR、MHにも対応している。MMRに対応しているFAX装置は、それより低圧縮率であるMR、MHにも対応している。カラー送信では、例えば、JPEGが用いられる。
【0018】
FAX装置10は、図1に示すように、表示部12と、操作部14と、読取部16と、印刷部18と、ネットワークインターフェース(ネットワークI/F)20と、計時部22とを備える。FAX装置10は、CPU30と、プログラムROM32と、RAM34と、フラッシュROM36とを備える。これら各部12〜36は、バスライン38に接続されている。表示部12は、諸情報を表示するためのディスプレイである。操作部14は、複数のキーによって構成される。操作部14は、0〜9等のテンキー、スタートキー、選択キー等で構成される。テンキーは、例えば、ダイヤル番号を入力する際に押下される。スタートキーは、T.38FAX送信を行う際に、押下される。例えば、相手先装置50に、モノクロ送信を行う場合、モノクロ送信のためのスタートキーが押下される。ユーザは、操作部14を構成する各種の処理に対応付けられたキーを操作することで、各種の指示をFAX装置10に入力することができる。選択キーは、所定の選択肢を選択等する際に押下される。例えば、後述するアドレス帳データベースに登録された相手先装置50に対応するダイヤル番号から、所望のダイヤル番号を選択する際に用いられる。選択キーによって所望のダイヤル番号を選択することでも、ダイヤル番号を入力することができる。読取部16は、原稿を読み取る。印刷部18は、FAX装置10で受信された符号化画像データに対応する画像を、記録用紙に印刷する。ネットワークI/F20は、NGN網3に接続され、FAX装置10をNGN網3に接続する。計時部22は、時間の経過を計測する。計時部22は、時計機能を有する。
【0019】
CPU30は、演算処理を実行する。プログラムROM32は、後述する処理(図4〜図7及び図9、図10参照)を含む各種の処理のためのコンピュータプログラムを記憶する。RAM34は、CPU30が各種のコンピュータプログラムを実行する際に利用される記憶領域となる。RAM34には、後述する処理で利用される情報(データ)のための領域が確保される。CPU30は、プログラムROM32に記憶された各種のコンピュータプログラムを実行して、FAX装置10を制御する。これによって、FAX装置10では、各種の処理が実行され、各種の機能が実現される。フラッシュROM36は、各種のデータを記憶する。例えば、フラッシュROM36には、SIPサーバ80のドメイン名が記憶される。ユーザは、操作部14等を介して、SIPサーバ80のドメイン名を記憶させる。フラッシュROM36には、この他、相手先装置50に関連付けて、相手先装置50に対応するダイヤル番号等が登録されたアドレス帳データベースが記憶される。
【0020】
相手先装置50は、FAX装置10と同様又は従来から用いられているFAX装置である。相手先装置50は、図1に示すように、FAX装置10の各部12〜38に対応する、各部52〜78を備える。相手先装置50に関する説明は、省略する。
【0021】
<処理シーケンス>
FAX通信システム1において、FAX装置10と、相手先装置50との間で行われるT.38FAX通信における処理の各手順について、3つの実施例を説明する。何れの実施例も、T.38FAX通信の途中(後述する送信処理(図4のS108、詳細は図7及び図9参照)の途中)に、相手先装置50から、SIPにて、通信帯域の変更が設定されたUPDATE又はre−INVITEが送信され、FAX装置10(ネットワークI/F20)は、SIPサーバ80を介して、UPDATE又はre−INVITEを受信する。UPDATE又はre−INVITEは、既に実用化されている、SDP(Session Description Protocol)を含んでいる。これらに関する説明は省略する。なお、SDPは、SIPと共に利用されて、通信のためのメディアパケット伝送に必要な能力交換を行う機能を提供する。図2及び図3(A),(B)では、SIPサーバ80は省略されている。SIPに従った手順については、SIPサーバ80を介して信号等の送受信が行われる。
【0022】
<第一実施例>
第一実施例は、次のような仮定の場合の実施例である。FAX装置10では、セッション(メディアセッション)が確立された後の経過時間が単位時間の整数倍に対応したタイミング(後述する図7のS412参照)で、UPDATE又はre−INVITEが受信されている。通信開始後の経過時間が単位時間の整数倍となるタイミングは、課金に関し、その時点での単位時間が満了し、新たな単位時間に移行するタイミングともいえる。以下、第一実施例について、図2等を参照して説明する。
【0023】
FAX装置10と相手先装置50との間では、INVITE及び200OKの送受信がなされる(手順A1,A2参照)。手順A1,A2は、SIPにて行われる。INVITE及び200OKは、SDPを含んでいる。これに関する説明は省略する。FAX装置10にて200OKが受信されると、FAX装置10と相手先装置50との間で、セッション(メディアセッション)が確立される。その後、FAX装置10と相手先装置50との間で、FAX通信データの送受信が実行される(手順A3)。手順A3は、T.38にて行われる。手順A3において、FAX装置10では、後述する図7及び図9に示す、送信処理が実行される。
【0024】
T.38FAX通信の途中において、相手先装置50は、通信帯域の変更が設定されたUPDATE又はre−INVITEを送信し、FAX装置10は、これを受信する(手順A4)。FAX装置10では、後述する処理(図7のS404〜S412:Yes)が実行され、200OKが送信され、相手先装置50は、これを受信する(手順A5)。この場合の200OKは、UPDATE又はre−INVITEに設定された新たな通信帯域を受け入れることを表す信号となる。即ち、FAX装置10では、UPDATE又はre−INVITEが受信されたタイミングが、セッションが確立された後の経過時間が単位時間の整数倍となるタイミングに対応しているため、通信帯域の変更に関する要求を受諾する。手順A4,A5は、SIPにて行われる。FAX装置10と相手先装置50との間では、新たな通信帯域により、FAX通信データの送受信がなされる(手順A6)。手順A6は、T.38にて行われる。FAX通信データが全フレーム送信された後、FAX装置10はBYEを送信し、相手先装置50はこれを受信する(手順A7)。続けて、BYEを受信した相手先装置50は、200OKを送信し、FAX装置10は、これを受信する(手順A8)。手順A7,A8は、SIPにて行われる。手順A8にて、確立されたセッションにおけるT.38FAX通信は終了する。
【0025】
<第二実施例>
第二実施例は、次のような仮定の場合の実施例である。先ず、FAX装置10では、UPDATE又はre−INVITEが受信されるが、その受信は、セッションが確立された後の経過時間が単位時間の整数倍に対応したタイミングではない。次に、UPDATE又はre−INVITEには、通信帯域を高めるための設定がなされている。以下、第二実施例について、図3(A)等を参照して説明する。なお、第二実施例での各手順について、第一実施例の各手順と共通する手順については、その対応を示すのみとし、説明は省略する。
【0026】
FAX装置10と相手先装置50との間では、図3(A)に示すような、手順B1〜B4が、順次実行される。手順B1〜B4は、それぞれ、図2に示す第一実施例の手順A1〜A4に対応する。これらに関する説明は省略する。手順B4に続けて、FAX装置10では、後述する処理(図7のS404〜S412:No)が実行され、488信号が送信され、相手先装置50は、これを受信する(手順B5)。この場合の488信号は、UPDATE又はre−INVITEに設定された新たな通信帯域を受け入れないことを表す信号となる。即ち、FAX装置10では、UPDATE又はre−INVITEが受信されたタイミングが、セッションが確立された後の経過時間が単位時間の整数倍となるタイミングに対応していないため、通信帯域の変更に関する要求を拒否する。手順B5は、SIPにて行われる。
【0027】
FAX装置10と相手先装置50との間では、従来のままの通信帯域により、FAX通信データの送受信がなされる(手順B6)。時間が経過し、セッションが確立された後の経過時間が単位時間の整数倍となるタイミングの直前(後述するマージンT4(図9のS508参照)秒前)のタイミングになったとする。FAX装置10では、UPDATE又はre−INVITEが送信され、相手先装置50は、これを受信する(手順B7)。UPDATE又はre−INVITEには、手順B4のUPDATE又はre−INVITEに設定された通信帯域が設定される。即ち、FAX装置10から相手先装置50に対し、先に要求され、拒否した通信帯域への変更(セッションが確立された際の通信帯域より高速の通信帯域への変更)が要求される。続けて、UPDATE又はre−INVITEを受信した相手先装置50は、200OKを送信し、FAX装置10は、これを受信する(手順B8)。この場合の200OKは、UPDATE又はre−INVITEに設定された新たな通信帯域を受け入れることを表す信号となる。手順B7,B8は、SIPにて行われる。
【0028】
FAX装置10と相手先装置50との間では、新たな通信帯域により、FAX通信データの送受信がなされる(手順B9)。手順B9は、T.38にて行われる。FAX通信データが全フレーム送信された後、手順B10,B11が、順次実行される。手順B10,B11は、それぞれ、図2に示す第一実施例の手順A7,A8に対応する。これらに関する説明は省略する。手順B11にて、確立されたセッションにおけるT.38FAX通信は終了する。
【0029】
<第三実施例>
第三実施例は、次のような仮定の場合の実施例である。先ず、第二実施例と同様、UPDATE又はre−INVITEの受信は、セッションが確立された後の経過時間が単位時間の整数倍に対応したタイミングではない。次に、UPDATE又はre−INVITEには、通信帯域を低下させるための設定がなされている。以下、第三実施例について、図3(B)等を参照して説明する。なお、第三実施例での各手順について、第一実施例又は第二実施例の各手順と共通する手順については、その対応を示すのみとし、説明は省略する。
【0030】
FAX装置10と相手先装置50との間では、図3(B)に示すような、手順C1〜C5が、順次実行される。手順C1〜C4は、それぞれ、図2に示す第一実施例の手順A1〜A4(図3(A)の手順B1〜B4)に対応し、手順C5は、図3(A)の手順B5に対応する。これらに関する説明は省略する。手順C5に続けて、FAX装置10では、FAX通信データの送受信がなされる(手順C6)。このとき、FAX装置10では、手順C4のUPDATE又はre−INVITEに設定された通信帯域まで低下させた伝送速度で、FAX通信データの送信が実行される。即ち、手順C6では、FAX装置10と相手先装置50との間では、セッションが確立された際の通信帯域のまま、これより低速な伝送速度により、FAX通信データの送受信がなされる。NGN網3を利用した帯域確保型のデータ通信サービスにおいて、設定された通信帯域は伝送速度の上限となる。実際のT.38FAX通信では、上限以下の速度であれば、伝送速度は可変させることができる。
【0031】
時間が経過し、セッションが確立された後の経過時間が単位時間の整数倍となるタイミングの直前(後述するマージンT4(図9のS508参照)秒前)のタイミングになったとする。FAX装置10では、UPDATE又はre−INVITEが送信され、相手先装置50は、これを受信する(手順C7)。UPDATE又はre−INVITEには、手順C4のUPDATE又はre−INVITEに設定された通信帯域が設定される。即ち、FAX装置10から相手先装置50に対し、先に要求され、拒否した通信帯域への変更(セッションが確立された際の通信帯域より低速の通信帯域への変更)が要求される。続けて、UPDATE又はre−INVITEを受信した相手先装置50は、200OKを送信し、FAX装置10は、これを受信する(手順C8)。この場合の200OKは、UPDATE又はre−INVITEに設定された新たな通信帯域を受け入れることを表す信号となる。手順C7,C8は、SIPにて行われる。
【0032】
FAX装置10と相手先装置50との間では、新たな通信帯域により、FAX通信データの送受信がなされる(手順C9)。手順C9は、T.38にて行われる。FAX通信データが全フレーム送信された後、手順C10,C11が、順次実行される。手順C10,C11は、それぞれ、図2に示す第一実施例の手順A7,A8(図3(A)の手順B10,B11)に対応する。これらに関する説明は省略する。手順C11にて、確立されたセッションにおけるT.38FAX通信は終了する。
【0033】
<FAX装置で実行される処理>
FAX装置10で実行される処理について説明する。以下では、図2及び図3(A),(B)に基づき上述した説明との対応を明らかにするため、図2の手順A1〜手順A8、図3(A)の手順B1〜手順B11、及び、図3(B)の手順C1〜C11を、対応する処理の説明及び/又はステップ番号に併記する。その際、各手順が示された図の番号の記載は省略する(単に、「手順A1」、「手順B2」、「手順C3」等と記載する)。
【0034】
<ファクシミリ処理>
ファクシミリ処理について、図4等を参照して説明する。ファクシミリ処理の開始に際し、ユーザは、送信対象となる原稿をFAX装置10にセットし、操作部14を操作して、FAX通信データの送信先となる相手先装置50のダイヤル番号を入力する。ダイヤル番号の入力は、操作部14のダイヤルキーを押下し、又は、操作部14の選択キーを操作し、アドレス帳データベースへの登録に基づき、表示部12に表示された相手先装置50に対応するダイヤル番号の中から、所望のダイヤル番号を選択して行われる。その後、ユーザは、操作部14のスタートキーを押下する。ファクシミリ処理は、スタートキーの押下に応じて開始される。ファクシミリ処理における相手先装置50との通信は、T.38FAX通信にて行われる。
【0035】
CPU30は、入力されたダイヤル番号を取得する(S100)。ダイヤル番号は、RAM34に確保されたダイヤル番号領域に記憶される。CPU30は、読取処理を実行する(S102)。その後、CPU30は、発呼処理を実行する(S104)。読取処理及び発呼処理については、後述する。続けて、CPU30は、発呼処理で設定された接続フラグが接続OKであるかを判断する(S106)。接続フラグは、RAM34に確保された接続フラグ領域に記憶されている。接続フラグは、ファクシミリ処理の開始に際し、入力されたダイヤル番号の相手先装置50との間で、セッションが確立されたか否かを表すフラグである。具体的に、接続OKは、セッションが確立された場合に設定されるフラグである。接続NGは、セッションが確立されない場合に設定されるフラグである。
【0036】
接続フラグが、接続OKではなく、接続NGであった場合(S106:No)、CPU30は、ファクシミリ処理を終了する。接続フラグが、接続OKであった場合(S106:Yes)、CPU30は、送信処理を実行する(S108)。送信処理については、後述する。その後、CPU30は、BYEがネットワークI/F20から送信されるように制御する(S110/手順A7、手順B10、手順C10参照)。BYEの送信は、SIPにて行われる。送信されたBYEは、SIPサーバ80を介して相手先装置50に送信される(手順A7、手順B10、手順C10参照)。BYEを受信した相手先装置50は、その後、200OKを送信する(手順A8、手順B11、手順C11参照)。200OKの送信は、SIPにて行われる。送信された200OKは、SIPサーバ80を介してFAX装置10に送信される。CPU30は、ネットワークI/F20での200OKの受信を制御する(S112/手順A8、手順B11、手順C11参照)。ネットワークI/F20では、200OKが受信される。S112を実行した後、CPU30は、ファクシミリ処理を終了する。この場合、T.38FAX通信も終了する。
【0037】
<読取処理>
図4に示すファクシミリ処理のS102で実行される読取処理について、図5等を参照して説明する。読取処理を開始したCPU30は、FAX装置10にセットされた原稿の読み取りが読取部16で行われるように制御する(S200)。読取部16では、FAX装置10にセットされた原稿の読み取りが実行される。読取部16にて読み取られた原稿に対応する画像データは、RAM34に確保された画像データ領域に記憶される。続けて、CPU30は、RAM34の画像データ領域に記憶された画像データを、予め定められた符号化方式で符号化し、符号化画像データを生成する(S202)。例えば、今回の送信がモノクロ送信である場合、MMRで符号化する。MMR方式の符号化画像データを生成する。生成された符号化画像データは、RAM34に確保された送信用領域に記憶される。最終的に、RAM34の送信用領域には、読み取られた全ての原稿に対応する画像データを符号化した、全頁分の符号化画像データが記憶される。続けて、CPU30は、RAM34の送信用領域に記憶された全頁分の符号化画像データのデータ量を取得し、データ量管理領域に記憶する(S204)。S204を実行した後、CPU30は、読取処理を終了し、処理を図4のS104に戻す。
【0038】
<発呼処理>
図4に示すファクシミリ処理のS104で実行される発呼処理について、図6等を参照して説明する。発呼処理を開始したCPU30は、INVITEがネットワークI/F20から送信されるように制御する(S300/手順A1、手順B1、手順C1参照)。INVITEの送信は、SIPにて行われる。INVITEには、以降の通信で利用する通信帯域が設定されている。例えば、NGN網3を利用した帯域確保型のデータ通信サービスで利用可能な通信帯域が、64kbps、512kbps及び1Mbpsである場合において、通信帯域を512kbpsとするとき、INVITEは「bs=AS:512」との情報を含む。S300に際し、CPU30は、フラッシュROM36から、SIPサーバ80のドメイン名を読み出す。CPU30は、図4のS100で取得され、RAM34のダイヤル番号領域に記憶されたダイヤル番号と、読み出したドメイン名とから、SIPURIを生成する。RAM34のダイヤル番号領域に記憶されたダイヤル番号が、「1234567890」であって、SIPサーバ80のドメイン名が「sipuri.com」であるとする。このとき、CPU30は、これら各情報から、「1234567890@sipuri.com」とのSIPURIを生成する。INVITEは、作成されたSIPURIを宛先として、送信される。
【0039】
送信されたINVITEは、SIPサーバ80を介して相手先装置50に送信される(手順A1、手順B1、手順C1参照)。INVITEが相手先装置50で受信された場合、これを受信した相手先装置50は、200OKを送信する(手順A2、手順B2、手順C2参照)。200OKの送信は、SIPにて行われる。送信された200OKは、SIPサーバ80を介してFAX装置10に送信される。CPU30は、ネットワークI/F20で200OKが受信されたかを判断する(S302)。200OKが受信されない場合(S302:No)、CPU30は、SIPによる接続に失敗したと判断する。CPU30は、接続フラグとして接続NGを設定する(S304)。この場合、FAX装置10と相手先装置50との間で、セッションは確立されなかったこととなる。設定された接続NGは、RAM34の接続フラグ領域に記憶される。S304を実行した後、CPU30は、発呼処理を終了し、処理を図4のS106に戻す。
【0040】
200OKが受信された場合(S302:Yes/手順A2、手順B2、手順C2参照)、CPU30は、SIPによる接続に成功したと判断する。CPU30は、接続フラグとして接続OKを設定する(S306)。設定された接続OKは、RAM34の接続フラグ領域に記憶される。この場合、FAX装置10と相手先装置50との間で、セッションが確立されたこととなる。続けて、CPU30は、計時部22で計時されている現在時刻を、RAM34に確保された時間領域に記憶する(S308)。CPU30は、受信された200OKに含まれる通信帯域を、通信に利用する通信帯域として、RAM34に確保された通信帯域領域に記憶する(S310)。以下では、S308で記憶された時刻を「時刻T1」といい、S310で記憶された通信帯域を「帯域V」という。S310を実行した後、CPU30は、発呼処理を終了し、処理を図4のS106に戻す。
【0041】
<送信処理>
図4に示すファクシミリ処理のS108で実行される送信処理について、図7〜図9等を参照して説明する。送信処理を開始したCPU30は、FAX通信データを1フレーム送信する(S400/手順A3,A6、手順B3,B6,B9、手順C3,C6,C9参照)。S400は、T.38にて行われる。FAX通信データは、T.38にて行われる各手順において、ネットワークI/F20から相手先装置50に送信される各信号及び符号化画像データを総称したものである。FAX通信データにおける1フレームは、送信対象がT.38で規定された信号である場合、送信対象の1つの信号に対応する。T.38で規定された信号には、DCN、DCS及びEOP等が例示される。これら各信号は、既に実用化されたT.38に基づく信号であるため、説明は省略する。FAX通信データにおける1フレームは、送信対象が符号化画像データである場合、符号化画像データの1フレームに対応する。S400で、CPU30は、送信処理にて管理されるスピードX(変数)を設定する。スピードXは、伝送速度を管理する変数である。スピードXは、RAM34の通信帯域領域に記憶されて管理される。CPU30は、ネットワークI/F20から送信されるFAX通信データの伝送速度がスピードXに対応した速度となるように制御する。即ち、ネットワークI/F20では、スピードXに対応した伝送速度にて、FAX通信データがNGN網3に送信される。送信処理が開始された直後であれば、スピードXには、図6のS310で、RAM34の通信帯域領域に記憶された帯域Vが設定される。従って、CPU30は、帯域Vに対応した伝送速度で、FAX通信データをネットワークI/F20から送信(送出)する。
【0042】
次に、CPU30は、ネットワークI/F20で、UPDATE又はre−INVITEが受信されたかを判断する(S402)。UPDATE又はre−INVITEは、同様の情報を定義可能な信号であって、図8に示すような情報を含む信号である。UPDATE又はre−INVITEによれば、確立されたセッションにおいて利用する通信帯域を含む、確立されたセッションで用いる各種の設定を変更することができる。具体的に、UPDATE又はre−INVITEは、「b=AS:帯域」との情報を含む。ここで、「帯域」の部分には、変更後の通信帯域(値)が設定される。
【0043】
UPDATE又はre−INVITEの何れも受信されない場合(S402:No)、CPU30は、処理を図9のS510に移行する。UPDATE又はre−INVITEの何れかが受信された場合(S402:Yes/手順A4、手順B4、手順C4参照)、CPU30は、受信されたUPDATE又はre−INVITEに設定された通信帯域を、RAM34の通信帯域領域に記憶する(S404)。以下では、S404で記憶された通信帯域を「帯域W」という。S404で記憶される帯域Wは、図6のS310での帯域Vとは別に管理される。続けて、CPU30は、帯域Vと帯域Wとが同一であるかを判断する(S406)。即ち、S406では、受信されたUPDATE又はre−INVITEは、通信帯域の変更が設定された信号であるか否かが判断される。帯域Vと帯域Wとが同一である場合(S406:Yes)、CPU30は、処理を図9のS510に移行する。この場合、受信されたUPDATE又はre−INVITEは、通信帯域以外の設定の変更等に関する信号である。
【0044】
帯域Vと帯域Wとが同一ではない場合(S406:No)、CPU30は、計時部22で計時されている現在時刻を、RAM34の時間領域に記憶する(S408)。以下では、S408で記憶された現在時刻を「時刻T2」という。S408で記憶される時刻T2は、図6のS308での時刻T1とは別に管理される。続けて、CPU30は、セッションの確立(図6のS302:Yes,S308参照)からUPDATE又はre−INVITEが受信されたタイミング(S402:Yes,S408参照)までの経過時間(時刻T2−時刻T1)を、単位時間(30秒)で除した計算結果の余りとなる時間を取得し、取得された時間を、RAM34の時間領域に記憶する(S410)。以下では、S410で記憶された時間を「剰余時間T3」という。
【0045】
次に、CPU30は、S412でRAM34の時間領域に記憶された剰余時間T3に予め定めたマージンT4を加算した剰余時間T3に対応した時間(第一基本時間)が、単位時間としての30秒以上であるかを判断する(S412)。ここで、マージンT4は、剰余時間T3が単位時間としての30秒に近い時間であるかを確認するためのマージンである。マージンT4は、例えば、1秒〜2秒程度以下の範囲で適宜定められる。
【0046】
第一基本時間(剰余時間T3+マージンT4(秒))が単位時間としての30秒より短い場合(S412:No)、CPU30は、488信号(Not Acceptable Here)がネットワークI/F20から送信されるように制御する(S414/手順B5,手順C5参照)。488信号は、UPDATE又はre−INVITEによる要求を受け入れないことを表す信号である。即ち、CPU30は、488信号を送信し、通信帯域の変更に関する要求を拒否する。S414を実行した後、CPU30は、処理を図9のS500に移行する。第一基本時間が単位時間としての30秒以上である場合(S412:Yes)、CPU30は、200OKがネットワークI/F20から送信されるように制御する(S416/手順A5参照)。この場合の200OKは、UPDATE又はre−INVITEによる要求を受け入れることを表す信号である。即ち、CPU30は、200OKを送信し、通信帯域の変更に関する要求を受諾する。続けて、CPU30は、RAM34の通信帯域領域に記憶されたスピードXを、帯域Wに更新する(S418)。S418を実行した後、CPU30は、処理を図9のS510に移行する。
【0047】
図9のS500で、CPU30は、帯域Wが帯域Vより高速であるかを判断する。換言すれば、CPU30は、UPDATE又はre−INVITEがセッションの確立の際に設定された通信帯域(帯域V)より、低速の通信帯域が設定された信号であるか、高速の通信帯域が設定された信号であるかを判断する。帯域Wが帯域Vより低速である場合(S500:No)、CPU30は、RAM34の通信帯域領域に記憶されたスピードXを、帯域Wに更新する(S502)。帯域Wが帯域Vより高速である場合(S500:Yes)、又は、S502が実行された後、CPU30は、セッションが確立された後、ここまでのタイミングで、既に送信された符号化画像データのデータ量を取得する(S504)。S504を実行した後、CPU30は、処理をS506に移行する。
【0048】
S506で、CPU30は、先ず、図5のS204でRAM34のデータ量管理領域に記憶された全頁分の符号化画像データのデータ量から、S504で取得された送信済みの符号化画像データのデータ量を差し引き、送信されていない符号化画像データのデータ量(未送信データ量)を取得する。続けて、CPU30は、未送信データ量を、RAM34の通信帯域領域に記憶されたスピードXで除して得られる時間(必要時間(秒))が、単位時間としての30秒から剰余時間T3を差し引いた時間より長いかを判断する。即ち、S506では、現在のスピードXに対応した伝送速度で符号化画像データを送信し続けた場合、新たな単位時間となる前に、送信が完了するかが判断される。必要時間(未送信データ量/スピードX)が前述の時間(30−剰余時間T3(秒))より短い場合(S506:No)、CPU30は、処理をS510に移行する。必要時間が前述の時間(30−剰余時間T3(秒))より長い場合(S506:Yes)、CPU30は、単位時間としての30秒から第一基本時間(剰余時間T3+マージンT4(秒)、図7のS412参照)を差し引いた時間(第二基本時間)をタイムアップ処理のためのカウント値としてセットする(S508)。以下では、セットされるカウンタ値を「タイマーT5」という。このとき、CPU30は、セットされたタイマーT5のカウントが計時部22で開始されるように制御する。S508を実行した後、CPU30は、処理をS510に移行する。
【0049】
S510で、CPU30は、タイムアップ処理を実行する。タイムアップ処理については、後述する。その後、CPU30は、FAX通信データの全フレームの送信が完了したかを判断する(S512)。即ち、CPU30は、FAX通信データを送信するためのT.38による全ての手順が完了したかを判断する。全フレームの送信が完了していない場合(S512:No)、CPU30は、処理を図7のS400に移行し、未送信の1フレームを対象として、上述したような制御を実行する。なお、図7のS418が実行された状態で処理がS400に移行し、又は、S502が実行された状態で処理がS400に移行したとする。この場合、スピードXは帯域Wに更新されているため、S400では、帯域Wに従った伝送速度で、FAX通信データが、ネットワークI/F20から送信される(手順A6、手順C6参照)。
【0050】
特に、S502が実行された状態で処理がS400に移行した場合、通信帯域は、セッションが確立された際の帯域Vのままの状態である。しかし、スピードXが帯域Wに更新されているため、CPU30は、ネットワークI/F20から送信されるFAX通信データの伝送速度が帯域Wに対応した速度となるように制御する。即ち、ネットワークI/F20では、帯域Wに対応した伝送速度にて、FAX通信データが送信される。上述した通り、NGN網3を利用した帯域確保型のデータ通信サービスにおいて、セッションの確立の際に設定された帯域Vは伝送速度の上限である。実際のT.38FAX通信では、上限以下の速度であれば、伝送速度は可変させることができる。全フレームの送信が完了している場合(S512:Yes)、CPU30は、送信処理を終了し、処理を図4のS110に戻す。
【0051】
<タイムアップ処理>
図9のS510で実行されるタイムアップ処理について、図10を参照して説明する。タイムアップ処理を開始したCPU30は、図9のS510でのタイマーT5のセットに合わせて開始させたカウントがタイムアップしたかを判断する(S600)。タイマーT5がタイムアップしている場合(S600:Yes)、CPU30は、通信帯域としてRAM34の通信帯域領域に記憶された帯域Wが設定されたUPDATE又はre−INVITEがネットワークI/F20から送信されるように制御する(S602/手順B7、手順C7参照)。UPDATE又はre−INVITEの送信は、SIPにて行われる。UPDATE又はre−INVITEの何れを送信するかについては、適宜決定される。UPDATE又はre−INVITEは、SIPサーバ80を介して、相手先装置50に送信され、相手先装置50はこれを受信する。相手先装置50は、FAX装置10からのUPDATE又はre−INVITEに設定された帯域Wを受け入れる場合、200OKを送信する。これ以降の手順については、図3(A),(B)に基づき上述した通りである(手順B8以降、手順C8以降の各手順参照)。従って、その説明は省略する。
【0052】
タイマーT5がタイムアップしていない場合(S600:No)、又は、S602を実行した後、CPU30は、タイムアップ処理を終了し、処理を図9のS512に戻す。ところで、タイマーT5は、図9のS508にてセットされ、このタイミングで計時部22での計測が開始される。UPDATE又はre−INVITEが受信(図7のS402:Yes参照)されたタイミングによっては、1度もS508が実行されない状態で、図9のS506が否定され(S506:No)、タイムアップ処理が実行される場合も想定される。図7のS406が肯定された場合(S406:Yes)、又は、図7のS416及びS418が実行された場合についても、1度もS508が実行されない状態で、タイムアップ処理が実行される。このような場合、CPU30は、タイマーT5はタイムアップしていないと判断し(S600:No)、上述した通り、処理を図9のS512に戻す。
【0053】
<本実施形態による効果>
本実施形態によれば次のような効果を得ることができる。
【0054】
(1)上記では、T.38FAX通信の途中、換言すれば、図4に示すファクシミリ処理の途中(詳細には、図7に示す送信処理のS400を実行後、送信処理が終了するまでの間)に、通信帯域の変更が設定されたUPDATE又はre−INVITEが受信された場合(図7のS402:Yes参照)、セッションが確立されてから、前述した何れかの信号が受信されるまでの経過時間(時刻T2−時刻T1)と、単位時間とに応じたS412(図7参照)での判断に応じて、送信(応答)する信号を、488信号又は200OKの何れかとした。S412が否定される場合(図7のS412:No参照)、488信号を送信し(図7のS414参照)、S412が肯定される場合(図7のS412:Yes参照)、200OKを送信する(図7のS416参照)こととした。
【0055】
NGN網3を利用した帯域確保型のデータ通信サービスでは、単位時間毎に課金額が加算される。換言すれば、単位時間の範囲内では課金額は加算されない。例えば、前述の経過時間が31秒を超えた場合(単位時間:2周期目)であれば、60秒までは課金額は一定である。これとは別に、NGN網3を利用した帯域確保型のデータ通信サービスでは、確立されたセッションにおいて、通信帯域を変更すると、そのタイミングで、単位時間のカウントが開始される。例えば、経過時間が31秒(単位時間:2周期目)のタイミングで、通信帯域を変更すると、変更前の通信帯域に基づいた2周期分の額に、変更後の通信帯域に基づいた少なくとも1周期分の額を合計した額が、そのセッションにおける課金額となる。このような場合と、通信帯域の変更のタイミングを、2周期目の単位時間が満了するタイミングに近い、例えば59秒で行った場合とを比較すると、両者の課金額は同額となる。課金額を一定とすれば、後述のようなパターンは、前述のようなパターンより、28秒間長く通信できたこととなる。換言すれば、前述のようなパターンは、後述のようなパターンより、28秒間の通信時間を無駄にしたこととなる。
【0056】
ここで、「剰余時間T3+マージンT4≧30(秒)」との条件に基づく、図7のS412は、換言すれば、UPDATE又はre−INVITEが受信されたタイミングが、現在の単位時間が満了し、新たな単位時間に移行する直前のタイミング(課金額が増加する新たな単位時間に移行するタイミングからマージンT4以内のタイミング)であるか否かを判断するための処理である。本実施形態は、このような判断を行い、UPDATE又はre−INVITEが受信されたタイミングが新たな単位時間に移行する直前のタイミングではない場合(図7のS412:No参照)、488信号を送信し(図7のS414参照)、現状の通信帯域による通信を継続させる。これに対し、UPDATE又はre−INVITEが受信されたタイミングが新たな単位時間に移行する直前のタイミングである場合(図7のS412:Yes参照)、200OKを送信し(図7のS416参照)、相手先装置50の要求に応じて通信帯域を変更し、新たな通信帯域による通信を行う。これによって、上述したような通信時間の無駄を削減することができる。
【0057】
(2)上記では、S412を否定し(図7のS412:No参照)、488信号を送信した場合(図7のS414参照)であって、新たな単位時間に移行する前に、符号化画像データの送信が完了しないと判断される場合(図9のS506:Yes参照)、新たな単位時間までの時間に対応した第二基本時間(30−(剰余時間T3+マージンT4)(秒))をタイマーT5にセットする(図9のS508参照)こととした。その上で、タイマーT5がタイムアップしたタイミングで(図10のS600:Yes参照)、受信されたUPDATE又はre−INVITE(図7のS402:Yes参照)で設定された通信帯域(帯域W)が設定されたUPDATE又はre−INVITEを、相手先装置50に送信することとした(図10のS602参照)。従って、通信時間の無駄を削減しつつ、相手先装置50からの要求に従ったT.38FAX通信(FAX通信データの送信)を実現することができる。
【0058】
(3)上記では、S412を否定し(図7のS412:No参照)、488信号を送信した場合(図7のS414参照)において、受信されたUPDATE又はre−INVITE(図7のS402:Yes参照)で設定された通信帯域(帯域W)が、その時点で利用されている通信帯域より低速であった場合(図9のS500:No参照)、伝送速度を管理するスピードXを、帯域Wに更新する(図9のS502参照)こととした。従って、その後に継続される(図9のS512:No参照)、FAX通信データの送信を、帯域Wに対応した伝送速度とすることができる。即ち、実質的に、相手先装置50からの要求に応じたT.38FAX通信(FAX通信データの送信)を実行させることができる。
【0059】
<変形例>
本実施形態は、次のようにすることもできる。上記では、図7に示す送信処理のS412を「剰余時間T3+マージンT4≧30(秒)」との条件に基づき判断することとした。このような条件は、次のような条件であってもよい。例えば、「30−剰余時間T3≦マージンT4(秒)」としてもよい。この他、図7のS410で、単位時間を整数倍した時間であって、経過時間(時刻T2−時刻T1)より長い最小の時間を算出(以下、「第三基本時間」という)する。その上で、図7のS412で、「第三基本時間−経過時間≦マージンT4」に基づいた判断を実行する。この判断が否定される場合(図7のS412:No参照)、処理は図7のS414に移行し、肯定される場合(図7のS412:Yes参照)、処理は図7のS416に移行する。ここに例示した何れの条件によっても、上述した「剰余時間T3+マージンT4≧30(秒)」と同様の関係を判断することが可能で、経過時間と単位時間との関係を判断することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 ファクシミリ通信システム(FAX通信システム)
3 次世代ネットワーク網(NGN網)
10 ファクシミリ装置(FAX装置)
12 表示部、 14 操作部、 16 読取部、 18 印刷部
20 ネットワークインターフェース(ネットワークI/F)、 22 計時部
30 CPU、 32 プログラムROM、 34 RAM
36 フラッシュROM、 38 バスライン、 80 SIPサーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯域確保型のIPネットワークに接続された相手先装置と通信し、相手先装置に符号化された符号化画像データを含むファクシミリ通信データを送信するファクシミリ装置であって、
前記IPネットワークに接続され、前記IPネットワークを介して相手先装置と通信する通信部と、
時間の経過を計測する計時部と、
相手先装置とのセッションを確立させるための発呼処理を制御する第一通信制御部と、
前記発呼処理によるセッションの確立を条件として、前記計時部での計測が開始されるように制御する第一計時制御部と、
確立されたセッションにおいて、前記ファクシミリ通信データが前記通信部から相手先装置に送信されるように制御する第二通信制御部と、
確立されたセッションにおいて、利用する通信帯域の変更が設定された第一信号が前記通信部で受信された場合、セッションの確立から前記第一信号が受信されたタイミングまでの経過時間と、確立されたセッションを管理する基準の単位として定められた単位時間と、に応じて、前記第一信号にて設定された通信帯域の変更を受け入れることを表す第二信号と、前記第一信号にて設定された通信帯域の変更を受け入れないことを表す第三信号と、の何れかが前記通信部から相手先装置に送信されるように制御する第三通信制御部と、を備えるファクシミリ装置。
【請求項2】
確立されたセッションにおいて、前記経過時間と、前記単位時間と、の関係を判断する第一判断部を備え、
前記第三通信制御部は、
前記第一判断部にて判断される前記経過時間と前記単位時間との関係に関し、前記経過時間を前記単位時間で除した計算結果の余りとなる剰余時間に対応した第一基本時間が前記単位時間より長くなるような関係である場合、前記第二信号が前記通信部から相手先装置に送信されるように制御し、
前記第一判断部にて判断される前記経過時間と前記単位時間との関係に関し、前記第一基本時間が前記単位時間より短くなるような関係である場合、前記第三信号が前記通信部から相手先装置に送信されるように制御する、請求項1に記載のファクシミリ装置。
【請求項3】
前記第三信号が送信された場合、確立されたセッションにおいて、前記通信部から相手先装置に送信される符号化画像データのうち、前記第一信号が受信されたタイミングで送信されていない符号化画像データを送信するのに要する必要時間を取得する取得部と、
前記取得部にて取得された前記必要時間と、前記単位時間から前記剰余時間を差し引いた時間と、の関係を判断する第二判断部と、
前記第二判断部にて前記必要時間が前記単位時間から前記剰余時間を差し引いた時間より長い時間であると判断された場合、前記単位時間から前記第一基本時間を差し引いた第二基本時間をカウント値として、前記計時部での計測が開始されるように制御する第二計時制御部と、
前記第二計時制御部にて開始された計測において、前記第二基本時間が経過したかを判断する第三判断部と、を備え、
前記第三通信制御部は、前記第三判断部にて前記第二基本時間が経過したと判断された場合、前記通信部で受信された前記第一信号に設定されていた通信帯域と同一の通信帯域が設定された新たな第一信号が前記通信部から相手先装置に送信されるように制御する、請求項2に記載のファクシミリ装置。
【請求項4】
前記第一信号が受信された場合、受信された前記第一信号が、セッションの確立の際に設定された通信帯域より、低速の通信帯域が設定された信号であるか、高速の通信帯域が設定された信号であるか、を判断する第四判断部を備え、
前記第二通信制御部は、前記第三信号が前記通信部から相手先装置に送信され、且つ、前記第四判断部にて前記第一信号が低速の通信帯域が設定された信号であると判断された場合、前記ファクシミリ通信データの伝送速度を前記第一信号に設定された通信帯域に低下させる、請求項1から請求項3の何れか1項に記載のファクシミリ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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