説明

ファン制御装置、ファン制御方法、及びファン制御プログラム

【課題】 ファンの温度が変化する場合でも、ファンの残存寿命が均等になるよう複数のファンの動作を制御するファン制御装置を提供する。
【解決手段】 本発明のファン制御装置は、温度センサが計測したファンの温度と、温度毎の前記ファンの動作時間を取得する動作情報取得手段と、前記動作時間に温度毎の重みを掛けて積算した換算動作時間を算出する換算動作時間算出手段と、複数の前記ファン毎の前記換算動作時間に基づき所定の個数のファンを選択し、選択した前記ファンの動作と、他のファンの停止を決定し、決定情報を出力する指示手段とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はファンの動作及び停止を制御するファン制御装置に関し、特に、複数のファンの動作及び停止を個別に制御するファン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冗長構成の複数のファンで構成される冷却装置では、複数のファンのうち少なくとも1個のファンの動作を停止させることができる。しかし、常に、ある特定のファンが動作し、他の特定のファンが動作を停止しているなど、ファンの動作時間にばらつきがある場合、動作時間の長いファンの寿命が短くなる。ファンが1個でも故障すると、冷却装置の信頼性が保証できなくなるので、特定のファンの寿命が短い場合、冷却装置自体の信頼性を保証できる期間も短くなる。また、ファンの故障時期にばらつきが生じるので、故障したファンの取り替えを行わなければならない間隔が短くなる。例えば電子機器などの装置を冷却する、冗長構成の複数のファンを制御し、複数のファンが故障するまでの時間を均一にする方法が、以下の文献に記載されている。
【0003】
特許文献1には、複数の冷却ファンと、冷却ファンを稼働状態と待機状態とに切り替える冷却ファン動作切替え手段を含む冷却装置が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の冷却ファン動作切替え手段は、稼働状態にする冷却ファンと待機状態にする冷却ファンとを、所定の時間間隔で順次切り替える。
【0005】
特許文献2には、室内設置変圧器用冷却装置の複数台のファンの稼働台数を、温度又は負荷電流の値に応じて制御するファン制御方法が記載されている。
【0006】
特許文献2のファン制御方法は、各ファンの累積運転時間をカウントしておき、ファンの運転台数を増やす時には、累積運転時間の短いファンから運転し、ファンの運転台数を減らす時には、累積運転時間の長いファンから停止する。
【0007】
以下、ファンの回転数は、単位時間当たりのファンが回転する回数である。
【0008】
ファンの寿命は、例えば、ファンの使用を開始してから、ファンの設計上の回転数に対する実際の回転数の割合が所定値を下回った時までである。ファンの回転数の低下は、軸受け(例えばボールベアリング)の劣化及び軸受けに使用するグリスの劣化によって発生する。しかし、グリスの劣化の測度と比較して軸受けの劣化の速度は遅いので、ファンの寿命は、通常、軸受けの寿命には依存せず、グリスの寿命と同じとみなすことができる。
【0009】
グリスの寿命と温度との関係は、例えば非特許文献1に記載されている。
【0010】
非特許文献1によると、ファンの軸受けに使用するグリスの寿命Lは、数1で表される。ファンの寿命は、数1で表される寿命Lと同じとみなすことができる。
【0011】
【数1】

【0012】
数1のA、B、C、Dは、グリスの種類に依存する定数である。Tはファンの動作中のグリスの温度である。rはファンの使用回転数、rmaxは設計上の許容回転数である。ただし、r/rmax部分の値は、rがrmaxに近い場合、r/rmaxで計算される値になるが、rが十分小さい場合、r/rmaxで計算される値ではなくグリスの種類に依存する定数になる。通常の冷却用ファンで使用する回転数域では、r/rmaxは定数である。
【0013】
ファンの軸受けに使用されているグリスの温度は、ファンの軸受けの温度と同じとみなすことができる。従って、ファンの寿命は、軸受けの温度に基づき、軸受けに使用されているグリスの寿命を表す数1によって算出されるLとみなすことができる。以下の説明では、ファンの温度はファンの軸受けの温度を指す。
【0014】
図8はファンの温度とファンの寿命の関係の一例を表す図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2001−068881号公報
【特許文献2】特開2006−019349号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】信学技法 EMD96-37, CPM96-60, OPE96-59, LQE96-61, 1996-08, pp79-84, 1996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ファンにより冷却を行う対象の装置の温度は、その装置の負荷や周囲の環境の変化により、変化する。ファンの温度は、冷却を行う対象の装置の温度や、周囲の環境の温度変化に応じて変化する。ファンの寿命は、動作中の温度によって変化する。温度が高ければ高いほど、ファンの寿命は短くなる。
【0018】
特許文献1及び特許文献2の技術は、複数のファンの動作時間を均等にするものである。しかし、複数のファンの動作時間が均等であっても、それぞれのファンの動作中の温度が均等でなければ、ファンの残存寿命は均等にならない。
【0019】
特許文献1及び特許文献2の技術には、ファンの温度が変化する場合、ファンの残存寿命を均等にすることができないという問題がある。
【0020】
本発明の目的は、ファンの温度が変化する場合でも、ファンの残存寿命が均等になるよう複数のファンの動作を制御するファン制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明のファン制御装置は、温度センサが計測したファンの温度と、温度毎の前記ファンの動作時間を取得する動作情報取得手段と、前記動作時間に温度毎の重みを掛けて積算した換算動作時間を算出する換算動作時間算出手段と、複数の前記ファン毎の前記換算動作時間に基づき所定の個数のファンを選択し、選択した前記ファンの動作と、他のファンの停止を決定し、決定情報を出力する指示手段とを含む。
【0022】
本発明のファン制御方法は、温度センサが計測したファンの温度と、温度毎の前記ファンの動作時間を取得し、前記動作時間に温度毎の重みを掛けて積算した換算動作時間を算出し、複数の前記ファン毎の前記換算動作時間に基づき所定の個数のファンを選択し、選択した前記ファンの動作と、他のファンの停止を決定し、決定情報を出力する。
【0023】
本発明のファン制御プログラムは、コンピュータを、温度センサが計測したファンの温度と、温度毎の前記ファンの動作時間を取得する動作情報取得手段と、前記動作時間に温度毎の重みを掛けて積算した換算動作時間を算出する換算動作時間算出手段と、複数の前記ファン毎の前記換算動作時間に基づき所定の個数のファンを選択し、選択した前記ファンの動作と、他のファンの停止を決定し、決定情報を出力する指示手段として動作させる。
【発明の効果】
【0024】
本発明には、ファンの温度が変化する場合でも、ファンの故障時期のばらつきを減らすことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施形態の構成を表すブロック図である。
【図2】並列に並べた、ファンコントローラを含む複数のファンの配置の一例を表す図である。
【図3】直列に並べた、ファンコントローラを含まない複数のファンの配置の一例を表す図である。
【図4】第1の実施形態の動作を表すフローチャートである。
【図5】第2の実施形態の構成を表すブロック図である。
【図6】第2の実施形態の動作を表すフローチャートである。
【図7】第3の実施形態の構成を表すブロック図である。
【図8】ファンの寿命と動作温度の関係の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
図1は本実施形態の構成を表すブロック図である。
【0028】
図1を参照すると、本実施形態のファン制御装置1は、動作情報取得部10と、換算動作時間算出部11と、動作指示部12を含む。
【0029】
ファン制御装置1には、ファンコントローラ2と、複数のファン(ファン31、ファン32、…、ファン3N)の各々に取り付けられた複数の温度センサ(温度センサ41、温度センサ42、…、温度センサ4N)が接続されている。なお、ファンの個数Nは2以上の整数であればよい。
【0030】
各ファンは、例えば、何らかの装置や建物などの内部の空間と外界との境界に取り付けられ、その装置や建物などの内部から風を吸い出すか、その装置や建物などの内部に風を送り込んで、その装置や建物などの内部の冷却の対象を冷却する。
【0031】
ファンコントローラ2は、指示部12から受信した、指示部12が決定した各ファンの動作及び停止を表す決定情報に基づき、各ファンの動作及び停止の制御をファン毎に行う。
【0032】
図1には1個のファンコントローラ(ファンコントローラ2)が全てのファンの制御を行う例が記載されているが、1個のファンコントローラが全てのファンの制御を行わなくてもよい。この場合、例えば、複数のファンコントローラが存在し、各ファンはいずれかのコントローラに接続され、各コントローラは自らに接続されているファンの制御を行えばよい。また、1個のファンコントローラが1個のファンだけを制御してもよい。ファンコントローラは、ファンの外部に存在していてよく、ファンの内部に組み込まれていてもよい。
【0033】
各ファンは、送風方向に重ならないよう並列に並べて取り付けられていればよい。また、各ファンは、送風方向の前後に重ねて直列に並べて取り付けられていてもよい。あるいは、各ファンは、別々の場所に取り付けられていてもよい。各ファンの配置は、各ファンが冷却する冷却対象を冷却することができる配置であれば、任意である。また、全てのファンが同時に動作する必要はない。本実施形態では、各ファンは同一の種類のファンである。なお、複数のファンの形状などが異なっていても、軸受けの温度と寿命の関係が同じであれば、同一の種類のファンとみなすことができる。
【0034】
図2及び図3は、各ファンとファンコントローラの構成の例を表す図である。
【0035】
図2の例では、各ファン(ファン31A、ファン32A、…、ファン3NA)は、並列に取り付けられている。また、各ファンを制御する各ファンコントローラ(ファンコントローラ21、ファンコントローラ22、…、ファンコントローラ2N)は、各ファンに組み込まれている。
【0036】
図3の例では、各ファンは直列に取り付けられている。また、ファンコントローラ2が全てのファンを制御する。
【0037】
前述ように、各ファンには、それぞれのファンの、複数の温度センサ(温度センサ41、温度センサ42、…、温度センサ4N)が取り付けられている。各温度センサは、その温度センサが取り付けられているファンの、例えば軸受け部分の温度を計測する。それぞれの温度センサは、ファンの温度と見なせる温度を測定することが可能であれば、軸受けの温度を直接測定しなくてもよい。各温度センサは、ファン制御装置1の動作情報取得部10に接続されている。また、動作情報取得部10に接続され、冷却対象の温度を計測する温度センサ4Xが存在していてもよい。
【0038】
以下、各ファン、各温度センサ、ファンコントローラ2及びファン制御装置1の配置が、図1に示す配置である場合について説明を行う。
【0039】
動作情報取得部10は、各温度センサが計測した各ファンの温度を各温度センサから取得する。さらに、温度センサ4Xが存在する場合、動作情報取得部10は冷却対象の温度を取得することができる。また、動作情報取得部10は、各温度センサが温度を計測した時刻も取得する。動作情報取得部10は、各温度センサが計測した温度を取得した時刻を、温度を計測した時刻とみなしてもよい。その場合、動作情報取得部10は、各ファンの温度を取得した時刻を、図示しないタイマーによって得ればよい。動作情報取得部10が取得する温度は、適宜離散化した温度であればよい。
【0040】
また、動作情報取得部10は、例えば指示部12あるいはファンコントローラ2から、各ファンの動作開始時刻や停止時刻を取得する。また、後述するように、動作情報取得部10は、例えば指示部12から受け取った決定情報と、決定情報を受け取った時刻により、各ファンの動作開始時刻や停止時刻を取得することもできる。動作情報取得部10は、決定情報を取得した時刻も、温度を取得した時刻と同様に、図示しないタイマーによって得ればよい。
【0041】
動作情報取得部10は、各ファンの温度及び温度を取得した時刻と、各ファンの動作開始時刻や停止時刻から、前回動作時間を算出して以降の、各ファンの温度毎の動作時間を算出し、出力する。
【0042】
換算動作時間算出部11は、動作情報取得部10が取得したファンの温度(T1)及び温度T1における動作時間(W1)を受け取る。換算動作時間算出部11は、受け取った温度T1及び動作時間W1から、そのファンの累積の動作が、所定の温度(T0)で動作し続けたとした場合に、どれだけの動作時間に相当するか(換算動作時間)を算出する。数1で表されるように、例えばT1がT0より大きい場合、温度がT1の場合のファンの寿命は、温度がT0の場合のファンの寿命より短い。ファンが同じ時間動作したとしても、温度がT1の状況で動作した方が、温度がT0の状況で動作した場合より、ファンが動作したことによってファンの寿命が減少する割合は大きい。従って、ファンの温度がT1の状況でW1だけの時間動作すると、ファンは温度がT0の状況でW1より長い時間動作したことに相当する。換算動作時間は、ファンが動作したことによる、温度T0におけるファンの寿命の減少分に相当する。換算動作時間の算出法は後述する。
【0043】
指示部12は、各ファンの換算動作時間に基づき、所定の個数のファンを選択し、選択したファンを動作させ、他のファンを停止させることを決定する。指示部12は、動作させるファンと停止させるファンを特定する決定情報をファンコントローラ2に送信する。ファンコントローラが複数存在する場合は、指示部12は、各ファンコントローラが制御するファンの情報を含む決定情報を各ファンコントローラに送信すればよい。また、各ファンがそれぞれ個別にファンコントローラを含む構成の場合は、指示部12は、各ファンコントローラに動作又は停止の指示のみを送信してもよい。
【0044】
また、指示部12は、各ファンの動作開始及び停止を表す情報を動作情報取得部10に送信してもよい。この場合、指示部12は、決定情報をファンコントローラ2に出力すると同時に動作情報取得部10にも送信すればよい。指示部12が動作情報取得部10に送信する決定情報は、ファンコントローラに送信する決定情報と異なる形であってもよい。例えば、各ファンがそれぞれ個別にファンコントローラを含む構成の場合、前述のように、指示部12は、各ファンコントローラに動作又は停止の指示のみを送信してもよい。しかし、各ファンがそれぞれ個別にファンコントローラを含む構成の場合でも、指示部12が動作情報取得部10に送信する決定情報は、各ファンの動作状況を得られる情報を含んでいる必要がある。
【0045】
コントローラ2は、決定情報を受け取ると、ファン毎に動作を開始させたり、停止させたりして、各ファンの動作状態を変更する。決定情報を受け取った動作情報取得部10は、例えば決定情報を受け取った時刻に基づき、各ファンの動作時間を算出することができる。また、指示部12は、決定情報と、例えばその決定情報をファンコントローラ2に出力した時刻を動作情報取得部10に送信してもよい。この場合、動作情報取得部10は、決定情報と、受け取った時刻に基づき、各ファンの動作時間を算出することができる。
【0046】
次に、本実施形態の動作について図面を参照して詳細に説明する。
【0047】
図4は本実施形態のファン制御装置1の動作を表すフローチャートである。
【0048】
図4を参照すると、まず、動作情報取得部10が、各ファンの温度と、動作時間を取得し、各ファンの温度毎の動作時間を算出する(ステップS11)。動作情報取得部10が算出する各ファンの温度毎の動作時間は、例えば、前回、動作情報取得部10が動作時間を取得して以降の動作時間である。
【0049】
動作情報取得部10は、各温度センサ(温度センサ41〜温度センサ4N)から、各温度センサが計測した各ファンの温度を取得すればよい。
【0050】
また、動作情報取得部10は、例えば指示部12あるいはファンコントローラ2から、各ファンの動作開始時刻や停止時刻を取得する。動作情報取得部10は、指示部12あるいはファンコントローラ2から、各ファンの動作開始時刻や停止時刻ではなく、各ファンが、動作を開始したことを表す情報及び動作を停止したことを表す情報を取得してもよい。この場合、動作情報取得部10は、動作を開始したことを表す情報を受け取った時刻にファンが動作を開始し、動作を停止したことを表す情報を受け取った時刻にファンが動作を停止したとみなせばよい。通常、各ファンの温度が有意に変化するまでの時間と比較して、各ファンの動作状態が変化した時刻と、各ファンが動作を開始したことを表す情報及び動作を停止したことを表す情報を動作情報取得部10が取得した時刻との差は、十分小さい。従って、通常、この時刻の差は無視することができる。動作情報取得部10は、各ファンが、動作を開始したことを表す情報及び動作を停止したことを表す情報を、決定情報によって得ることができる。
【0051】
動作情報取得部10は、各ファンの温度及び温度を取得した時刻と、各ファンの動作開始時刻や停止時刻から、各ファンの温度毎の動作時間を算出する。なお、動作情報取得部10は、各ファンの動作状況や動作状況の変化を表す情報を、決定情報以外の形で受け取ってもよい。
【0052】
次に、換算動作時間算出部11が、各ファンの温度毎の動作時間を動作時間取得部10から受け取り、各ファンのこれまでの動作時間が相当する、所定の温度で動作し続けた場合の動作時間(換算動作時間)を算出する(ステップS12)。
【0053】
換算動作時間算出部11は、例えば、その時点までの換算動作時間を保持しておき、ファンが温度T1で時間W1の間動作したことによる、温度T0におけるファンの寿命の減少に相当する時間をその時点までの換算動作時間に足たせばよい。また、各ファンの温度毎の累積動作時間を保持しておき、まとめて換算することもできる。換算動作時間算出部11は、例えば図示しない外部の記憶装置に換算動作時間を記憶させ、必要に応じて記憶装置から換算動作時間を読み出してもよい。
【0054】
換算動作時間算出部11は、例えば、動作情報取得部10が取得したファンの温度T1におけるファンの寿命L1と、動作情報取得部10が取得した動作時間W1と、所定の温度T0におけるファンの寿命L0から、W0=L1/L0×W1のようにして計算すればよい。温度T1におけるファンの寿命L1や温度T0におけるファンの寿命L0は、予め、例えば温度と寿命の関係を表すテーブルとして与えられていればよい。あるいは温度T1とL1/L0の値の関係を表すテーブルが、予め与えられていてもよい。また、換算動作時間算出部11が、例えば数1によって、温度T1におけるファンの寿命L1や、温度T0におけるファンの寿命L0を計算することもできる。換算動作時間算出部11が数1によってファンの寿命を計算する場合、数1の定数は予め与えられていればよい。
【0055】
次に、指示部12が、換算動作時間算出部11が算出した各ファンの換算動作時間を元に、所定の個数のファンを動作させるファンに、他のファンを停止させるファンに決定する(ステップS13)。指示部12は、例えば、換算動作時間が短い方から所定の個数のファンを動作させるファンとして選択し、他のファンを停止させるファンとして選択すればよい。各ファンの種類が同じであれば、設計寿命は同じである。従って、換算動作時間が短いファンを優先的に動作させることで、換算動作時間のばらつきを減らすことができる。
【0056】
動作させるファンとして選択するファンの個数は、予め決められていてもよい。また、指示部12が、各ファンの温度や、温度センサ4Xが測定した冷却対象の温度をもとに、例えば温度と動作させるファンの個数の関係を表すテーブルにより、動作させるファンの個数を決定してもよい。なお、指示部12は、各ファンの温度や冷却対象の温度をもとに動作させるファンの個数を決定する場合、必要な温度を動作情報取得部10から受け取ればよい。また、ファンの回転数が可変である場合、指示部12は、前述の温度に基づき、例えば同様にテーブルを参照して各ファンの回転数を決定すればよい。その場合のテーブルは、温度と動作させるファンの個数及び回転数との関係を表すものであればよい。なお、前述のように、冷却ファンの通常回転数域においては、回転数が変化してもファンの寿命は変わらない。
【0057】
指示部12は、動作させるファンと停止させるファンを特定する情報を含む決定情報を、コントローラ2に対して出力する(ステップS14)。ファンコントローラ2は、受信した決定情報に従って、それぞれのファンの動作を開始させたり、停止させたりする。
【0058】
ファン制御装置1は、以上で説明したステップS11からステップS14までの処理を、所定の時間間隔で繰り返し行えばよい。また、ファン制御装置1は、いずれか一つ又は複数のファンの温度や冷却対象の温度が、例えば所定値以上変動した場合に、ステップS11からステップS14までの処理を行ってもよい。ファン制御装置1は、前回処理を行ってから所定の時間経過した場合、あるいは、いずれか一つ又は複数のファンの温度や冷却対象の温度が、例えば所定値以上変動した場合に、ステップS11からステップS14までの処理を行ってもよい。
【0059】
以上で説明した本実施形態のファン制御装置1には、ファンの温度が変化する場合でも、ファンの故障時期のばらつきを減らすことができるという効果がある。
【0060】
その理由は、指示部12が、換算動作時間11が算出した換算動作時間に基づき、動作させるファンと停止させるファンを選択するからである。
【0061】
例えばファンを冗長化した冷却装置では、1個のファンが故障すると、全てのファンを交換する場合もある。このような場合、最も短いファンの寿命が、冷却装置のファン全体の寿命になる。このような冷却装置では、各ファンの寿命のばらつきを減らすことで、ファン全体の寿命を長くすることができる。また、個別に故障したファンの交換を行う場合であっても、ファンの故障時期が近いと、複数のファンを一度に交換できるので、ファンの交換を行う保守の回数を減らすことができる。従って、ファンの故障時期のばらつきが減ることで、保守コストを減らすことができるという効果もある。
【0062】
次に、本発明の第2の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0063】
図5は、本実施形態の構成を表すブロック図である。
【0064】
図5と第1の実施形態の構成を表す図1を比較すると、本実施形態のファン制御装置1Aが、故障検出部13と、挿抜検出部14を含み、指示部12の代わりに指示部12Aを含む点が異なる。また、本実施形態のファン制御装置1が制御する各ファンは、異なる種類のファンが混在していてもよい。
【0065】
動作情報取得部10は、第1の実施形態の動作情報取得部10と同じである。
【0066】
本実施形態の換算動作時間算出部11は、挿抜検出部14がファンの挿入を検出した場合、挿入されたファンの換算動作時間を0にする。また、本実施形態の換算動作時間算出部11は、挿抜検出部14がファンの抜去を検出した場合、抜去されたファンの換算動作時間を消去すればよい。以上の点以外は、本実施形態の換算動作時間算出部11と第1の実施形態の換算動作時間算出部11は同じである。
【0067】
指示部12Aは、ファンの種類毎の設計寿命とファンの換算動作時間の差が大きいものから所定個数のファンを選択し、選択したファンを動作させるファンに、他のファンを停止させるファンに決定する。また、故障したファンを特定する情報を故障検出部13から受け取り、受け取った情報で特定されるファンを、動作させるファンの選択の対象から除外する。同様に、抜去されたファンを特定するための情報を挿抜検出部14から受け取り、受け取った情報で特定されるファンを、動作させるファンの選択の対象から除外する。以上の点以外は、指示部12Aと第1の実施形態の指示部12は同じである。
【0068】
故障検出部13は、各ファンの故障を検出する。
【0069】
挿抜検出部14は、各ファンの挿抜を検出する。
【0070】
次に、本実施形態のファン制御装置1Aの動作について、図面を参照して詳細に説明する。
【0071】
図6は本実施形態の動作を表すフローチャートである。
【0072】
図6を参照すると、まず、故障検出部13が各ファンの故障を検出する(ステップS21)。
【0073】
故障検出部13は、例えば、定期的にファンコントローラ2から各ファンの回転数を受け取り、受け取ったファンの回転数が所定値を下回った場合に、そのファンの故障を検出すればよい。また、ファン制御装置1Aとファンコントローラ2の間に割り込み線を設け、ファンコントローラ2は設定された下限回転数を少なくともいずれか1個のファンの回転数が下回った場合、ファン制御装置1Aに対して割り込みをあげるようにすることもできる。この場合、故障検出部13は、割り込みがあがった場合のみ、ファンコントローラ2から、例えば各ファンの回転数や、他の故障したファンを特定するための情報を読み出せばよい。これにより、故障検出部13は定期的に各ファンの回転数を受け取る必要が無くなり、故障検出部13の負荷は減少する。
【0074】
故障検出部13がいずれかのファンの故障を検出した場合(ステップS22、Y)、故障検出部13は故障したファンを除外する処理を行う(ステップS23)。ステップS23では、故障検出部13は、故障したファンを特定する情報を指示部12Aに送信し、故障したファンを指示部12Aが動作させるファンとして選択する対象から除外させる。
【0075】
故障検出部13がファンの故障を検出しなかった場合(ステップS22、N)、ステップS24に進む。
【0076】
次に、挿抜検出部14が、ファンの取り外しの有無を検出する(ステップS24)。
【0077】
挿抜検出部14は、例えば、各ファンがそれぞれファンコントローラを含んでいる場合、定期的に各ファンコントローラにアクセスし、アクセスの失敗の有無でファンの存在の有無を判定し、ファンの挿抜を検出することができる。また、各ファンの外部に、図示しない挿抜監視回路を設け、挿抜検出部14は定期的に挿抜監視回路にアクセスしてファンの挿抜を検出することもできる。さらに、ファン制御装置1Aと挿抜監視回路の間に図示しない割り込み線を設け、挿抜監視回路は、ファンが挿入された場合及び抜去された場合に割り込み線を通じてファン制御装置1Aに割り込みをあげてもよい。この場合、挿抜検出部14は、割り込みがあがった場合のみ挿抜監視回路にアクセスし、挿入されたファン及び抜去されたファンを特定する情報を読み出せばよい。これにより、挿抜検出部14は、各ファンコントローラあるいは挿抜監視回路に定期的にアクセスする必要が無くなり、挿抜検出部14の負荷は減少する。
【0078】
挿抜検出部14が、いずれかのファンが取り外されたことを検出した場合(ステップS25、Y)、挿抜検出部14は、取り外されたファンの情報を消去するための処理を行う(ステップS26)。ステップS26では、挿抜検出部14は、取り外されたファンを特定する情報を、換算動作時間算出部11と指示部12Aに送信する。
【0079】
ファンを特定する情報は、例えばファンを取り付ける場所毎に割り振られた番号のような、ファンの取り付け場所を特定する情報であっても、例えばファン毎に割り振られる異なる番号のような、個別のファンを特定する情報であってもよい。
【0080】
ファンを特定する情報がファンを取り付ける場所を特定する情報である場合、指示部12Aは、取り外されたファンを特定する情報を受け取ると、その情報で特定されるファンを、動作させるファンの選択の対象から除外すればよい。また、この場合、換算動作時間算出部11は、取り外されたファンを特定する情報を受け取った場合、そのファンの換算動作時間を消去すればよく、何もしなくてよい。
【0081】
ファンを特定するための情報が個別のファンを特定する情報である場合、指示部12Aは、取り外されたファンを特定する情報を受け取ると、その情報で特定されるファンを、動作させるファンの選択の対象から除外し、そのファンに関する情報を消去すればよい。また、この場合、換算動作時間算出部11は、取り外されたファンを特定する情報を受け取ると、そのファンに関する情報を消去すればよい。
【0082】
挿抜検出部14が、いずれかのファンが挿入されたことを検出した場合(ステップS27、Y)、挿抜検出部14は、新規ファンの情報を追加する処理を行う(ステップS28)。ステップS28では、挿抜検出部14は、挿入されたファンを特定する情報を、換算動作時間算出部11と指示部12Aに送信する。
【0083】
換算動作時間算出部11は、取り外されたファンを特定する情報を受け取ると、受け取った情報で特定されるファンの換算動作時間を0にする。指示部12Aは、挿入されたファンを特定する情報を受け取ると、その情報で特定されるファンを、動作させるファンの選択の対象に含めればよい。
【0084】
なお、ファン制御装置1Aは、ステップS27とステップS28の動作を行った後、ステップ25とステップS26の動作を行ってもよい。また、ファン制御装置1Aは、ステップ24からステップS28までの動作を行った後、ステップS21からステップS23までの動作を行ってもよい。
【0085】
ステップS11の動作は第1の実施形態のステップS11の動作と同じであるので説明を省略する。
【0086】
次に、指示部12Aは、ファンの種類毎の設計寿命とファンの換算動作時間の差(換算残存寿命)が大きいものから所定個数のファンを選択し、選択したファンを動作させるファンに、他のファンを停止させるファンに決定する(ステップS29)。
【0087】
ファンの種類毎の設計寿命は、例えば、換算動作時間算出部11が算出する換算動作時間に対応する前述の温度T0における設計寿命である。設計寿命は指示部12Aに予め与えられておけばよい。あるいは、指示部12Aが、例えば予め指示部12Aに与えられた数1のパラメータから、数1に基づいて算出してもよい。ファンの種類を特定するための情報は、例えば、ファン制御装置1Aの管理者が図示しない入力手段により入力すればよい。また、例えば、各ファンがそれぞれファンコントローラを含む場合、各ファンのファンコントローラに予めファンの種類を特定するための情報を設定しておいてもよい。その場合、指示部12Aが各ファンのファンコントローラからファンの種類を特定するための情報を読み出せばよい。また、各ファンがファンコントローラを含まない場合、例えば、ファンの種類を特定するための情報を、ファンコントローラが読み出し可能な形で、各ファンに設定しておけばよい。そして、ファンコントローラが各ファンからファンの種類を特定するための情報を読み出し、指示部12Aに送信すればよい。
【0088】
次に、指示部12Aは、動作させるファンと停止させるファンを特定する決定情報を、コントローラ2に対して出力する(ステップS14)。
【0089】
ファン制御装置1Aは、以上で説明したステップS21からステップS14までの処理を、所定の時間間隔で繰り返し行えばよい。また、ファン制御装置1Aは、いずれか一つ又は複数のファンの温度や冷却対象の温度が、例えば所定値以上変動した場合に、ステップS21からステップS14までの処理を行ってもよい。ファン制御装置1Aは、前回処理を行ってから所定の時間経過した場合、あるいは、いずれか一つ又は複数のファンの温度や冷却対象の温度が、例えば所定値以上変動した場合に、ステップS21からステップS14までの処理を行ってもよい。
【0090】
以上で説明した本実施形態のファン制御装置1Aには、各ファンの寿命が同一ではなく、ファンの温度が変化する場合でも、ファンの故障時期のばらつきを減らすことができるという効果がある。
【0091】
その理由は、指示部12Aが、ファンの種類毎の設計寿命と換算動作時間11が算出した換算動作時間の差に基づき、動作させるファンと停止させるファンを選択するからである。
【0092】
次に本発明の第3の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0093】
図7は本実施形態のファン制御装置1の構成を表すブロック図である。
【0094】
ファン制御装置1は、温度センサが計測したファンの温度と、温度毎の前記ファンの動作時間を取得する動作情報取得手段10と、前記動作時間に温度毎の重みを掛けて積算した換算動作時間を算出する換算動作時間算出手段11と、複数の前記ファン毎の前記換算動作時間に基づき所定の個数のファンを選択し、選択した前記ファンの動作と、他のファンの停止を決定し、決定情報を出力する指示手段12とを含む。
【0095】
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0096】
本実施形態のファン制御装置1には、ファンの温度が変化する場合でも、ファンの故障時期のばらつきを減らすことができるという効果がある。
【0097】
その理由は、指示部12が、換算動作時間11が算出した換算動作時間に基づき、動作させるファンと停止させるファンを選択するからである。
【0098】
本発明の各実施形態のファン制御装置1及びファン制御装置1Aは、回路などの専用のハードウェア、あるいは、コンピュータ及びコンピュータを動作させるためのプログラム、あるいはこれらの組み合わせによって実現することができる。ファン制御装置1及びファン制御装置1Aは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、NvRAM(Non−volatile Random Access Memory、不揮発性メモリ)のいずれか一つまたは複数の組み合わせ及びプログラムと、BMC(Base Management Controller)によって実現することができる。
【0099】
また、ファン制御装置1及びファン制御装置1Aと、ファンコントローラ2や各温度センサとの間の接続は、例えばI2C(Inter−Integreted Circuit)インタフェースのような汎用の通信回路によって実現することができる。ファン制御装置1と、ファンコントローラ2や各温度センサとの間の接続は、専用の通信回路によって実現することもできる。
【0100】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0101】
1、1A ファン制御装置
2、21、22、2N ファンコントローラ
10 動作情報取得部
11 換算動作時間算出部
12、12A 指示部
13 故障検出部
14 挿抜検出部
31、31A、32、32A、3N、3NA ファン
41、42、4N、4X 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度センサが計測したファンの温度と、温度毎の前記ファンの動作時間を取得する動作情報取得手段と、
前記動作時間に温度毎の重みを掛けて積算した換算動作時間を算出する換算動作時間算出手段と、
複数の前記ファン毎の前記換算動作時間に基づき所定の個数のファンを選択し、選択した前記ファンの動作と、他のファンの停止を決定し、決定情報を出力する指示手段と
を含むファン制御装置。
【請求項2】
前記指示手段は、前記ファン各々の前記換算動作時間と、前記ファン毎に指定された設計寿命の差分から、前記所定の個数のファンを選択する
請求項1に記載のファン制御装置。
【請求項3】
所定の時間毎に、
前記動作情報取得手段は、前記ファンの温度と、前記所定の時間内の前記ファンの動作時間と、複数の前記ファンが冷却する冷却対象を温度センサにより測定した温度を取得し、
前記指示手段は、前記冷却対象の温度に基づき選択するファンの個数を決定し、前記ファンの温度及び前記動作時間をもとに前記換算動作時間算出手段が算出した換算動作時間に基づき、決定した前記個数のファンを選択する
請求項1又は2に記載のファン制御装置。
【請求項4】
前記温度センサと、複数の前記ファンと、前記決定情報に基づき前記ファン各々を動作又は停止させる制御を行うファンコントローラと、請求項1乃至3のいずれかに記載のファン制御装置とを含む冷却システム。
【請求項5】
温度センサが計測したファンの温度と、温度毎の前記ファンの動作時間を取得し、
前記動作時間に温度毎の重みを掛けて積算した換算動作時間を算出し、
複数の前記ファン毎の前記換算動作時間に基づき所定の個数のファンを選択し、選択した前記ファンの動作と、他のファンの停止を決定し、決定情報を出力する
ファン制御方法。
【請求項6】
前記ファン各々の前記換算動作時間と、前記ファン毎に指定された設計寿命の差分から、前記所定の個数のファンを選択する
請求項5に記載のファン制御方法。
【請求項7】
所定の時間毎に、
前記ファンの温度と、前記所定の時間内の前記ファンの動作時間と、複数の前記ファンが冷却する冷却対象を温度センサにより測定した温度を取得し、
前記冷却対象の温度に基づき選択するファンの個数を決定し、前記ファンの温度及び前記動作時間をもとに算出した換算動作時間に基づき、決定した前記個数のファンを選択する
請求項5又は6に記載のファン制御方法。
【請求項8】
コンピュータを、
温度センサが計測したファンの温度と、温度毎の前記ファンの動作時間を取得する動作情報取得手段と、
前記動作時間に温度毎の重みを掛けて積算した換算動作時間を算出する換算動作時間算出手段と、
複数の前記ファン毎の前記換算動作時間に基づき所定の個数のファンを選択し、選択した前記ファンの動作と、他のファンの停止を決定し、決定情報を出力する指示手段と
として動作させるファン制御プログラム。
【請求項9】
コンピュータを、
前記ファン各々の前記換算動作時間と、前記ファン毎に指定された設計寿命の差分から、前記所定の個数のファンを選択する前記指示手段と
して動作させる請求項8に記載のファン制御プログラム。
【請求項10】
コンピュータを、
所定の時間毎に、
前記ファンの温度と、前記所定の時間内の前記ファンの動作時間と、複数の前記ファンが冷却する冷却対象を温度センサにより測定した温度を取得する前記動作情報取得手段と、
前記冷却対象の温度に基づき選択するファンの個数を決定し、前記ファンの温度及び前記動作時間をもとに前記換算動作時間算出手段が算出した換算動作時間に基づき、決定した前記個数のファンを選択する前記指示手段と
して動作させる請求項8又は9に記載のファン制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−134209(P2012−134209A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282726(P2010−282726)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】