説明

フィブリン接着剤塗布用装置

【課題】処置部位でフィブリン接着剤の二成分を塗布するための装置を提供する。
【解決手段】対応する注射器を受けるための二つの平行の筒状ハウジングを含む注射器用支持体、及びプランジャ連結部材を含み、前記注射器用支持体は前記プランジャ連結部材の挿入のための通路を含み、前記通路は二つの前記筒状ハウジング間の空間に位置し、前記プランジャ連結部材は前記通路へ摺動するのに適した形状の領域を有し、前記通路の横断面は両端で最大開口を有しかつ中央部で最小開口を有することを特徴とする、装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療環境及び/又は病院環境において、フィブリン接着剤の構成成分等の二成分を塗布するための装置に関する。更に、具体的には、本発明は、注射器用の支持体、注射器のプランジャを連結しかつ二つの注射器を受けることのできる部材を含み、接着剤の二成分、例えば、フィブリノゲン及びトロンビンンを、出口本体内で連続的に混合しかつ連続的に外傷、頑固な出血等を封止するために凝固させるようにして、別々に排出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
縫合は、長年、手術により組織及び外傷を修復する通常の方法である。しかし、縫合に使用される最も洗練された技術及び材料は、合併症を阻止するのに常に十分でない。更に、フィステル及び肉芽種の縫合、又は実質的器官又は炎症性潰瘍組織への切開は、外科医に非常に親しみの無い局面である。
【0003】
外傷からの離開、非常に相互に接近した複数の縫合に起因する潜在的虚血と共に、上述の因子は、恒常性であることに加えて外傷を与えることなく組織を修復する組織用接着剤装置(system)の発達に通じる。
【0004】
上述の接着剤装置は、血管縫合と同時に、主動脈及び静脈血管の結紮(実質損傷)後の毛細管血管からの出血を止めるために、そして出血エピソードで苦しんでいる患者に有用である。これらの接着剤装置は、同様に、組織を閉鎖し接着し、不十分な縫合を強化し、インサート及びインプラントを固定し、かつ就中、気体及び液体に対して不透過性にするために、縫合を被覆するのに有用である。
【0005】
更に、上述の接着剤装置は、コラーゲンシート、スポンジ、セラミック、及び抗生物質、ならびに細胞培養(内皮細胞、皮膚角化細胞)の支持体としての他の生体適合性材料と組み合わせて皮膚インサートの不完全血管領域、皮膚潰瘍、及び攻撃的細胞毒治療による壊死に使用できる。
【0006】
血液凝固の工程は、血液中のタンパク質間の連鎖反応の様々な段階を含む。フィブリン(フィブリン接着またはフィブリン接着剤として知られている)による閉鎖は、二成分から誘導されかつ血液凝固カスケードの最後段階に基づく生物学的シール(seal)の一例である。第一成分の主原料は、フィブリノゲン接着剤を含み、かつ第二成分の主原料は、トロンビンを含み、これは血液凝固反応のための触媒として働く。患者の外傷に使用かつ塗布する直前に上記ニ成分を混合することにより、迅速凝固反応が達成され、特に外傷を封鎖するのに役立つ。
【0007】
連結部材により支持された一対の注射器に基づいてフィブリン接着剤の二成分を塗布する種々の装置が既知であり、例えば、USP4735616にそのような装置が開示されている。この装置は、更に、二つのプランジャを同時に付勢する連結部材により連結されるプランジャを含む。
【0008】
にもかかわらず、接着剤のニ成分の混合は、塗布点で概ね1:1が適切であるが、上記装置は確実に実行できない欠点を有する。その理由は、プランジャが接着剤の二成分間の粘度の相違により位相(phase)ずれして前進し、注射器内での前進に対する抵抗を明らかに相違させ、通常プラスチック製である装置の材料に変形を与えることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】USP4735616
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述の問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するために、本発明は、二成分を含むフィブリン接着剤の塗布用装置を提供し、本発明による装置は、二つの注射器を受けるための二つの平行の筒状ハウジングを含む注射器用支持体、及び前記注射器のプランジャを連結する部材を含む。注射器用支持体とプランジャ連結部材は共に連結され、前記注射器用支持体は前記プランジャ連結部材の導入のための通路を含み、前記通路は前記注射器用支持体の二つの筒状ハウジング間の空間に位置し、前記プランジャ連結部材は前記通路を摺動するのに適した形状の領域を有する。
【0012】
前記通路は、両端で最大幅を有しかつ中央部で最小幅を有する。好適実施形態によれば、前記通路は概ねIの字又はXの字の形状を有する。このような形状は、二つ機能を発揮する。即ち、プランジャ連結部材の、前記注射器用支持体の二つの筒状ハウジング間の通路への通過を可能にし、かつプランジャ連結部材の慣性モーメントを増大し、いずれの変形に対しても抵抗を増大する。
【0013】
フィブリン接着剤の二成分を保存する一方法は注射器内で0°C未満にすることである。本発明による注射器用支持体の筒状ハウジングは、外部に開放するタイプであり、フィブリン接着剤の二成分の溶融を促進するために注射器本体の可能最大部分を露出させる。
【0014】
更に、本発明による装置の注射器用支持体は、注射器本体が前記注射器用支持体へ一旦付勢された後に前記注射器本体の回転を阻止する要素を具備しない。この運動は、注射器を接着剤の出口本体へ螺合させるために必要であり、前記出口本体は、関係部位へ接着剤を塗布する前に二成分を混合する場所である。前記プランジャ連結部材はプランジャが一旦前記プランジャ連結部材内へ設置された後にプランジャの回転を阻止する如何なる要素も具有しない。
【0015】
本発明によるフィブリン接着剤塗布装置は、二つの注射器のそれぞれのプランジャが相互に対して位相ずれすることなく同時移動し、接着剤がその塗布点で二成分間の正確な比率で塗布されることを確実にする。
【0016】
好適実施形態によれば、前記注射器用支持体は、標準的注射器を受けるのに適した筒状の二つのハウジングを含み、前記注射器は前記ハウジングへ付勢される。
【0017】
好適実施形態によれば、フィブリン接着剤の前記注射器本体に螺合により連結される出口本体を含む。
【0018】
好適実施形態によれば、前記注射器はフランジの形態の上部及びネジの形態の下部を有する。
【0019】
好適実施形態によれば、二つの前記注射器は同一直径及び体積を有する。

【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による二成分フィブリン接着剤の塗布用装置の一実施形態の斜視図を示す。
【図2】本発明による二成分フィブリン接着剤の塗布用装置の第二実施形態の斜視図を示す。
【図3】フィブリン接着剤の二成分を収容する二つの注射器を具えた本発明による装置の一実施形態の分解斜視図を示す。
【図4】本発明による装置の一実施形態における二つの注射器の位置を示す斜視図である。
【図5】本発明による装置の第二実施形態における二つの注射器の位置を示す斜視図である。
【図6】本発明による装置の出口本体の斜視図を示す。
【図7】注射器と出口本体とを連結した本発明による装置の一実施形態の斜視図である。
【図8】注射器と出口本体とを連結した本発明による装置の一実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のより良き理解のために、添付図面を参照して実施形態の詳細を説明するが、本発明の範囲を制限するものでない。
【0022】
図1は、本発明による二成分フィブリン接着剤を塗布するための装置の実施形態の斜視図を示す。前記装置は、注射器用支持体1、及びそのプランジャ連結部材2を含む。注射器用支持体1は、二つの注射器を受ける二つの平行筒状ハウジング10,11を含み且つ注射器の本体を保持するための機能を有し且つ二つの注射器を共に強固に保持する。好適には、二つの注射器は注射器用支持体1へ付勢される。更に、前記注射器用支持体は、二つの注射器が注射器用支持体1へ一旦付勢された後に注射器本体の回転を阻止する構成要素を有しない。
【0023】
本発明による装置の注射器用支持体は、図3に示されたように、前記プランジャ連結部材の挿入と移動のための通路12を含むことを特徴とする。図3において、通路12は前記注射器用支持体の筒状ハウジング間の空間に位置する。前記注射器用支持体の通路12を横切る方向の断面は、両先端で最大開口を有しかつ中央部で最小開口を有する。
【0024】
一好適実施形態において、前記プランジャ連結部材の細長部の横切る方向の断面は全体的形状がIの字であり(図1参照)、他の実施形態において前記プランジャ連結部材の細長部の横切る方向の断面はX字の形状である(図2参照)。両形状は、本発明によるフィブリン接着剤塗布装置における強度を確実にするのに最適である。
【0025】
他方、前記プランジャ連結部材は図1に示されたようにTの字の形状であり、最大幅部分で、前記注射器プランジャのフランジを受けるのに適した溝を有する部材に上先端で連結されている。
【0026】
本発明による装置において、プランジャ連結部材2,2’は注射器用支持体1,1内を移動し、プランジャ連結部材と注射器用支持体との二部材間の遊びは最小限であり、それにより接着剤の二成分を収容する注射器プランジャは確実に同時に作動する、即ち、二つの注射器が完全に空になるまで常時相互に対して位相ずれすることなく移動する。
【0027】
本発明による装置は、一対の注射器を受けるのに適し(図4参照)、一対の注射器はフィブリン接着剤の二成分を個別に収容する。注射器は市場で入手できる通常のものであってよい。注射器の直径は、使用される接着剤のタイプに依存して同一または異なっていてよい。
【0028】
好適には、各注射器は、注射器本体4,40及びプランジャ3,30を含み、好適にはピストン型である。注射器本体は好適には、上先端でフランジ5,50の形態の一方の部を含み、他の先端にネジ6,60の形態の他方の部を含む。注射器本体4,40は注射器用支持体1,1’へ付勢され、且つ一旦取り付けられると注射器用支持体1,1’は注射器の回転を可能にする。更に、注射器のプランジャ3,30はプランジャ連結部材2,2’へ付勢され、且つ一旦取り付けられると、プランジャ連結部材2,2’は同様にプランジャ3,30の回転を可能にする。即ち、プランジャ連結部材はプランジャの回転を阻止する要素を有しない。従来注射器に使用されたように、プランジャ3,30は注射器の本体内に収容された成分を付勢し且つ排出するために使用される。好適には、プランジャはピストン型であり、且つ標準的注射器本体に使用される標準部材であり、且つ好適には注射器本体内に取り付けられ得る一方の先端とフランジ形態の他方の先端を有し、手の指で圧力を付与できるものである。
【0029】
好適には、ネジ6,60は、注射器と出口本体7との間の螺合を可能にするために使用される。図6は出口本体7を示し、出口本体7において注射器本体から吐出される接着剤の二成分は混合され、且つその混合物の塗布が援助される。他の好適実施形態において、注射器は出口本体へ圧力嵌めされる。
【0030】
好適には、出口本体7は、注射器内の螺合領域8,8’、及び混合接着剤のための出口領域9を含む。
【0031】
図7及び8は、注射器及び出口本体を取り付けた後の本発明によるフィブリン接着剤の塗布用装置の二つの実施形態を示す。
【符号の説明】
【0032】
1 注射器用の支持体(又は注射器用支持体)
2,2’ プランジャ連結部材
3,30 プランジャ
4,40 注射器本体
10,11 ハウジング
12 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置部位でフィブリン接着剤の二成分を塗布する装置であって、
対応する注射器を受けるための二つの平行の筒状ハウジングを含む注射器用支持体、及び
プランジャ連結部材を含み、
前記注射器用支持体は前記プランジャ連結部材の挿入のための通路を含み、前記通路は前記注射器用支持体の二つの筒状ハウジング間の空間に位置し、前記プランジャ連結部材は前記通路へ摺動するのに適した形状の領域を有し、前記通路の横切る方向の断面は両端で最大開口を有しかつ中央部で最小開口を有することを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記プランジャ連結部材が前記注射器用支持体内で移動する領域の横切る方向の断面は概ねIの字の形状を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プランジャ連結部材が前記注射器用支持体内で移動する領域の横切る方向の断面は概ねXの字の形状を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記注射器用支持体は、標準的注射器を受けるのに適した筒状の二つのハウジングを含み、前記注射器は前記ハウジングへ付勢される、請求項1から3のいずれか一に記載の装置。
【請求項5】
前記注射器用支持体は、注射器本体が前記注射器用支持体へ一旦付勢した後に前記注射器本体の回転を阻止する要素を具備しない、請求項1から4のいずれか一に記載の装置。
【請求項6】
前記プランジャが前記プランジャ連結部材に一旦取り付けられた後に前記プランジャの回転を阻止する要素を具備しない、請求項1から5のいずれか一に記載の装置。
【請求項7】
フィブリン接着剤の注射器本体に螺合により連結される出口本体を更に含む、請求項1から6のいずれか一に記載の装置。
【請求項8】
前記注射器はフランジの形態の上部及びネジの形態の下部を有する、請求項1から7のいずれか一に記載の装置。
【請求項9】
二つの前記注射器は同一直径及び体積を有する、請求項1から8のいずれか一に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−284512(P2010−284512A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96928(P2010−96928)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(509348487)グリフォルス,ソシエダッド アノニマ (4)
【Fターム(参考)】