説明

フィルタおよび同フィルタを備えた空気調和機

【課題】網体の強度を増強させるとともに空気抵抗の増加を抑えるようにした巻き上げ可能なエンドレス状のフィルタおよび同フィルタを備えた空気調和機を提供する。
【解決手段】縦糸9と横糸10とを織り込んだ網体8からなり、巻き上げると同時に除塵する除塵手段19を備えたエンドレス状のフィルタ7であって、前記縦糸9が、前記横糸10と同径でなる第一網糸と、前記横糸10よりも大径でなり所定のピッチで複数箇所に織り込んだ第二網糸とで構成され、または、前記横糸10が、前記縦糸9と同径でなる第一網糸と、前記縦糸9よりも大径でなり前記網体8の少なくとも一箇所に織り込んだ第二網糸とで構成されたことを特徴とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタおよび同フィルタを備えた空気調和機に関わり、より詳細には、巻き上げ可能なエンドレス状のフィルタの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和機に用いられるフィルタとして、図7(A)乃至図7(C)に示すような従来のフィルタ100が知られている。このフィルタ100は、吸込口から矢印aのように吸い込まれた空気中に含まれる塵埃を捕捉するものであり、細い均一な径による繊維が織り込まれた網体101をエンドレス状に形成して、フィルタ100を巻き上げるための駆動手段102と、巻き上げると同時に網体101で捕捉された塵埃を除塵する除塵手段105とともにカバー106で覆われて、空気調和機に取り付けられている。
【0003】
エンドレス状のフィルタ100は、空気調和機の空気通路に配置されることで、吸込口から吸い込まれた空気中の塵埃を捕捉して被空調室へ吹き出される空気の清浄化を図るようになっており、駆動源を備えた駆動手段102によって巻き上げられると同時に、フィルタ100で捕捉された塵埃が、ブラシ103および集塵ケース104を備えた除塵手段105によって、フィルタ100から除去されたのち集塵ケース104に溜められるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上述したフィルタ100は常に除塵用のブラシ103によって摩擦されていることから、網体101が細い均一な径でなる繊維を織り込んで形成されたことで、ブラシ103の摩擦に対する強度が不足して変形または破損してしまう虞があり、また、図示はしないが、網体を枠部や桟部で支持する構成にしてフィルタ100の強度を増強させた場合には、網体による開口面積が減少して空気抵抗を増加させてしてしまうという問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−275626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、網体の強度を増強させるとともに空気抵抗の増加を抑えるようにした巻き上げ可能なエンドレス状のフィルタおよび同フィルタを備えた空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成できるように構成するため、本発明は以下に示す特徴を備えている。
【0008】
縦糸と横糸とを織り込んだ網体からなり、巻き上げると同時に除塵する除塵手段を備えたエンドレス状のフィルタであって、
前記縦糸が、前記横糸と同径でなる第一網糸と、前記横糸よりも大径でなり前記網体の少なくとも一箇所に織り込んだ第二網糸とで構成されたことを特徴としている。
【0009】
また、縦糸と横糸とを織り込んだ網体からなり、巻き上げると同時に除塵する除塵手段を備えたエンドレス状のフィルタであって、
前記横糸が、前記縦糸と同径でなる第一網糸と、前記縦糸よりも大径でなり前記網体の少なくとも一箇所に織り込んだ第二網糸とで構成されたことを特徴としている。
【0010】
また、前記フィルタを備えた空気調和機としたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、網体の強度を増強させるとともに空気抵抗の増加を抑えるようにした巻き上げ可能なエンドレス状のフィルタおよび同フィルタを備えた空気調和機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるフィルタを備えた空気調和機の断面図である。
【図2】本発明の請求項1に係るフィルタの斜視図である。
【図3】本発明の請求項1に係るフィルタのカバー付きの斜視図である。
【図4】本発明の請求項2に係るフィルタの斜視図である。
【図5】本発明の請求項2に係るフィルタのカバー付きの斜視図である。
【図6】本発明によるフィルタを上面から見た断面図である。
【図7】従来例によるフィルタの説明図で、(A)は斜視図であり、(B)はフィルタのカバー付きの斜視図であり、(C)は上面から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
【0014】
本発明によるフィルタを備えた空気調和機は、図1に示す断面図のように、前面に仕切部4を介した上下の吸込口2aおよび吸込口2bを設け、前面上下部に風向板を枢支した吹出口3aおよび吹出口3bを設けている。
【0015】
吸込口2aと吹出口3aとを結ぶ上部空気通路に、上部熱交換器5aおよび上部送風ファン6aが設けられ、吸込口2bと吹出口3bとを結ぶ下部空気通路に、下部熱交換器5bと下部送風ファン6bとが設けられ、吸込口2aおよび吸込口2bと、上部熱交換器5aおよび下部熱交換器5bとの間にはフィルタ7が設けられている。
【0016】
吸込口2aから吸い込まれた空気は、図1および図6に示す矢印Aのように、上部空気通路に設けられたフィルタ7と、上部熱交換器5aと、上部送風ファン6aとを通過して吹出口3aから被空調室に吹き出されるとともに、吸込口2bから吸い込まれた空気は、図1および図6に示す矢印Bのように、下部空気通路に設けられたフィルタ7と、下部熱交換器5bと、下部送風ファン6bとを通過して吹出口3bから被空調室に吹き出される。
【0017】
本発明によるフィルタ7が用いられる空気調和機は、上述したように吸込口や吹出口が複数箇所に設けられた構成に限ることなく、吸込口と吹出口とを結ぶ空気通路や、熱交換器および送風ファン等がそれぞれ一箇所に設けられた構成であってもよい。また、本発明によるフィルタ7は、空気調和機に限ることなく、図示はしないが、加湿器あるいは空気清浄器等に用いられる構成であってもよい。
【0018】
上述した空気調和機1では、被空調室内の空気が吸込口2aおよび吸込口2bから吸い込まれてフィルタ7を通過することで空気中に含まれた塵埃が捕捉されたのち、上部熱交換器5aおよび下部熱交換器5bによって冷媒との間で熱交換された調和空気となり、上部送風ファン6aおよび下部送風ファン6bによって吹出口3aおよび吹出口3bから被空調室へ吹き出される。
【0019】
なお、空気調和機1は、上部送風ファン6aまたは下部送風ファン6bの何れか一方を起動し、起動した何れか一方の上部送風ファン6aまたは下部送風ファン6bに対応して、上部熱交換器5aまたは下部熱交換器5bの何れか一方に冷媒を循環させることで熱交換された調和空気を、冷媒を循環させた上部熱交換器5aまたは下部熱交換器5bの何れか一方に対応する吹出口3aまたは吹出口3bに送出することによって空気調和を実行してもよい。
【0020】
上述したように、吸込口2aおよび吸込口2bから吸い込まれた被空調室内の空気は、吸込口2aおよび吸込口2bに面して配置されたフィルタ7によって空気中に含まれた塵埃が捕捉されることで清浄化される。これによって、フィルタ7の下流側を構成する上部空気通路および下部空気通路に塵埃が付着しなくなり、また、上部空気通路および下部空気通路にそれぞれ配置されている上部熱交換器5aおよび下部熱交換器5bや、上部送風ファン6aおよび下部送風ファン6bなどに塵埃が付着しなくなって清潔さを保つことができるとともに、吹出口3aおよび吹出口3bからは、フィルタ7で清浄化され上部熱交換器5aおよび下部熱交換器5bで熱交換された清潔な調和空気が被空調室に向けて吹き出される。
【0021】
フィルタ7は、図2乃至図6に示すように、少なくとも縦糸9と横糸10とによる第一網糸同士を織り込んだ網体8からなり、網体8の前面側がフィルタ7を巻き上げるために駆動する駆動モータ13および駆動ドラム15の側に向かうよう横方向に巻き上げ可能であって、巻き上げると同時に、捕捉した塵埃を除塵できるようにした除塵手段19を備えてエンドレス状に形成されてカバー21で覆われるように構成されている。
【0022】
なお、図1に示すフィルタ7においては、フィルタ7を巻き上げるために駆動する駆動モータ13および駆動ドラム15等は省略しており、図2乃至図5に示す網体8を構成する繊維は、エンドレス状に形成されたフィルタ7が巻き上げられる長手方向に沿う繊維を縦糸9とし、フィルタ7が巻き上げられる方向に直交する短手方向の繊維を横糸10としている。また、本実施例においては、フィルタ7の前面側が横方向に巻き上げられる構成として説明しているが、フィルタ7の前面側が縦方向に巻き上げられるように構成してもよい。
【0023】
ここで、フィルタ7が、少なくとも縦糸9と横糸10とによる第一網糸同士を織り込んだ網体8からなり、横方向に巻き上げ可能となるようにエンドレス状に形成された構成について、図2乃至図6に基づいて詳細に説明する。
【0024】
エンドレス状に形成されたフィルタ7は、図2および図4に示すように、フィルタ7の一側に設けられ、駆動モータ13に連係する連係歯車14を介して駆動される駆動ドラム15および補助駆動ドラム16と、他側に設けられた従動ドラム17および補助従動ドラム18との間に弛みなく架設されており、駆動ドラム15および補助駆動ドラム16と、従動ドラム17および補助従動ドラム18との間に架設されているフィルタ7の前面部は、図1に示す吸込口2aおよび吸込口2bに面するように配置されている。
【0025】
駆動モータ13は、駆動モータ13に連動する駆動歯車13aと、除塵手段19を構成しているブラシ19aを備えたブラシドラム19bとを駆動し、駆動歯車13aに連係している連係歯車14を介して駆動ドラム15を駆動するとともに、巻き上げられるフィルタ7を押圧するように配置されている補助駆動ドラム16を駆動して、フィルタ7が駆動ドラム15および補助駆動ドラム16によって巻き上げられることにより、架設されているフィルタ7を介して、従動ドラム17および補助従動ドラム18が従動するように構成されている。
【0026】
その際、駆動ドラム15の外周部には、網体8に引っ掛かる針状の凸片(図示せず)が多数突設されていることにより、駆動ドラム15が回転するのと同時に、針状の凸片(図示せず)が網体8を引っ掛けながらフィルタ7を円滑に巻き上げることができる。
【0027】
駆動歯車13aに連係している駆動ドラム15が駆動モータ13によって駆動された際、フィルタ7が駆動ドラム15の側に巻き上げられると同時にブラシドラム19bが駆動モータ13によって駆動され、フィルタ7で捕捉された塵埃が、駆動ドラム15に巻かれたフィルタ7に当接しているブラシ19aによって除去されるようになっている。
【0028】
フィルタ7から除去された塵埃は、除塵手段19の下部に設けられたケース20に溜められ、ユーザによって機外に定期的に廃棄されるようにしている。
【0029】
フィルタ7は、少なくとも縦糸9と横糸10とによる第一網糸同士を織り込んだ網体8からなる構成にして、枠部や桟部をなくすることで通風抵抗を抑え、巻き上げ可能なエンドレス状に形成して塵埃を捕捉できるとともに、巻き上げ時にブラシ19aで擦られることで変形や損傷が生じない強度を有した構成にしている。
【実施例1】
【0030】
次に、実施例1として示す図2と、図3と、図6とに基づいて、網体8が枠部や桟部によって支持されない構成にすることで通風抵抗を抑えるとともに、巻き上げ時に変形や損傷が生じないように強度をもたせたフィルタ7の構成について説明する。
【0031】
網体8は、互いに平行な縦糸9による第一網糸と、互いに平行な横糸10による第一網糸とが織り込まれるとともに、縦糸9よりも太い繊維からなる縦の第二網糸11が、所定のピッチで縦糸9の一部を構成して第一網糸と縦の第二網糸11とが等間隔となるように織り込まれている。
【0032】
これにより、所謂枠部や桟部のように幅広く形成されていない縦の第二網糸11が織り込まれることになるため、通風抵抗の増加を抑えて巻き上げ時に変形や損傷が生じない強度をもたせた網体8を形成できるようになり、とくに、強度をもたせた網体8からなるフィルタ7の巻き上げ方向である長手方向の強度を増強させ、フィルタ7の巻き上げ時にフィルタ7の縦方向に加わる引っ張り力により変形や損傷を生じさせないようにして、また、ブラシ19aによって塵埃を除去する時に加わる力に対する強度を増強できる。
【0033】
なお、縦の第二網糸11は、所定のピッチで複数箇所に織り込まれるのではなく、一本だけ織り込まれた構成であってもよいし、また、網体8の強度を更に増強するために、縦糸9による第一網糸に代えて縦の第二網糸11が所定のピッチで織り込まれた構成にしてもよい。
【実施例2】
【0034】
次に、実施例2として示す図4と、図5と、図6とに基づいて、網体8が枠部や桟部によって支持されない構成にすることで通風抵抗を抑えるとともに、巻き上げ時に変形や損傷が生じないように強度をもたせたフィルタ7の構成について説明する。
【0035】
網体8は、互いに平行な縦糸9による第一網糸と、互いに平行な横糸10による第一網糸とが織り込まれるとともに、横糸10よりも太い繊維からなる横の第二網糸12が、所定のピッチで横糸10の一部を構成して第一網糸と横の第二網糸12とが等間隔となるように織り込まれている。
【0036】
これにより、所謂枠部や桟部のように幅広く形成されていない横の第二網糸12が織り込まれることになるため、通風抵抗の増加を抑えて巻き上げ時に変形や損傷が生じない程度の強度を有する網体8を形成できるようになり、とくに、強度を有する網体8からなるフィルタ7の巻き上げ方向に直交する短手方向の強度を増強させ、フィルタ7の巻き上げ時にフィルタ7の短手方向に変形しないようにし、また、フィルタ7の巻き上げ時にブラシドラム19bの凸片による網目のズレに対する抵抗力を増強できる。
【0037】
なお、横の第二網糸12は、所定のピッチで複数箇所に織り込まれるのではなく、一本だけ織り込まれた構成であってもよいし、また、網体8の強度を更に増強するために、横糸10による第一網糸に代えて横の第二網糸12が所定のピッチで織り込まれた構成にしてもよい。または、網体8は、図示はしないが、その一部に縦の第二網糸11と横の第二網糸12とが織り込まれた構成にしてもよい。
【0038】
以上説明したように、本発明の構成によれば、網体8を構成する縦糸9が、横糸10と同径でなる第一網糸と、横糸10よりも大径でなり所定のピッチで織り込まれた横の第二網糸11とで構成されたことで、または、網体8を構成する横糸10が、縦糸9と同径でなる第一網糸と、縦糸9よりも大径でなり所定のピッチで織り込まれた縦の第二網糸12とで構成されたことで、網体8の強度を増強させ空気抵抗の増加を抑えた巻き上げ可能なエンドレス状のフィルタ7および同フィルタ7を備えた空気調和機1を提供できる。
【符号の説明】
【0039】
1 空気調和機
2a,2b 吸込口
3a,3b 吹出口
4 仕切部
5a 上部熱交換器
5b 下部熱交換器
6a 上部送風ファン
6b 下部送風ファン
7 フィルタ
8 網体
9 縦糸(第一網糸)
10 横糸(第一網糸)
11 縦の第二網糸
12 横の第二網糸
13 駆動モータ
13a 駆動歯車
14 連係歯車
15 駆動ドラム
16 補助駆動ドラム
17 従動ドラム
18 補助従動ドラム
19 除塵手段
19a ブラシ
19b ブラシドラム
20 ケース
21 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦糸と横糸とを織り込んだ網体からなり、巻き上げると同時に除塵する除塵手段を備えたエンドレス状のフィルタであって、
前記縦糸が、前記横糸と同径でなる第一網糸と、前記横糸よりも大径でなり前記網体の少なくとも一箇所に織り込んだ第二網糸とで構成されたことを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
縦糸と横糸とを織り込んだ網体からなり、巻き上げると同時に除塵する除塵手段を備えたエンドレス状のフィルタであって、
前記横糸が、前記縦糸と同径でなる第一網糸と、前記縦糸よりも大径でなり前記網体の少なくとも一箇所に織り込んだ第二網糸とで構成されたことを特徴とするフィルタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されたフィルタを備えたことを特徴とする空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−72956(P2012−72956A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218079(P2010−218079)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】