説明

フィルタエレメント

【課題】 プリーツ形成したシート状濾材の向かい合うそれぞれの壁面に設けた突出部同士が当接したフィルタエレメントにおいて、突出部の山同士の位置がずれて濾材の間隔を一定に保つことができなくなるという問題がなく、また、山同士の当接部分の通気性が著しく低下して有効濾過面積が低下し、圧力損失が上昇して濾過寿命が短くなるという問題も生じない、新規なフィルタエレメントを提供する。
【解決手段】 熱可塑性繊維を含むシート状濾材11にプリーツが形成されており、プリーツの山線12と谷線13の間の互いに向かい合うそれぞれの壁面20、30に突出部21、31が設けられており、一方の突出部A(21)の先端部Ea(22)と他方の突出部B(31)の先端部Eb(32)が接触しており、先端部Ea(22)の面積が先端部Eb(32)の面積よりも大きいことを特徴とするフィルタエレメント10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル空調、工場空調、病院空調などにおける空調機器に装着して使用される、プリーツが形成されたフィルタエレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
ビル空調、工場空調、病院空調などにおける空調機器には、塵埃を除去するため、シート状濾材を折り曲げてその表面積を大きくしたフィルタエレメントが使用されていた。
【0003】
このようなフィルタエレメントとしては、例えば特許文献1に、帯状の濾紙の両面に線状に一定の厚さで樹脂を塗布した後、帯状の濾紙をジグザグ状に折り畳み、対向する樹脂同士を接合し固化することで、濾紙の間隔を一定に保持したフィルターパックが開示されている。しかし、このようなフィルタエレメントは、ジグザグ状に折り畳む費用に追加して樹脂の原材料の費用や塗布工程による設備費や工程費がかかりコストが上昇するという問題があった。また、樹脂が塗布された部分は通気性がないため、その分圧力損失が上昇して濾過寿命が短くなるという問題があった。また、樹脂から人体や物品に対する有害な揮発性ガスが発生して空気環境を汚染することで、健康を害するという問題や、或いはクリーンルーム内で扱う電子機器用の物品などに悪影響を及ぼすという問題があった。
【0004】
そこで、樹脂を用いずにエンボス加工により濾材の間隔を一定に保つことが提案されている。このようなフィルタエレメントとしては、例えば特許文献2に、ジグザグ状に折り曲げられた濾材ウエブのV字状に対向した隣接折り壁に突出部が形成され且つ突出部同士が当接しているエアフィルタ用濾材が開示されている。また、図9には、この突出部の断面が半円形であり、対向する突出部が半円形の頂点同士当接することで、対向する突出部が線状に当接することが示されている。しかし、このようなエンボスの山同士が線状に当接する場合、山同士の位置がずれて濾材の間隔を一定に保つことができなくなるという問題があった。また、同じ形状の山同士一定幅をもつ面で当接するようにした場合はその部分の通気性が著しく低下して有効濾過面積が低下するため、圧力損失が上昇して濾過寿命が短くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭54−30144号公報
【特許文献2】特開平9−220427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決して、シート状濾材をプリーツ形成することによって濾過面積が著しく大きくなっており、且つシート状濾材の向かい合うそれぞれの壁面に設けた突出部同士が当接したフィルタエレメントにおいて、突出部の山同士の位置がずれて濾材の間隔を一定に保つことができなくなるという問題がなく、また、山同士の当接部分の通気性が著しく低下して有効濾過面積が低下し、圧力損失が上昇して濾過寿命が短くなるという問題も生じない、新規なフィルタエレメントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明では、熱可塑性繊維を含むシート状濾材にプリーツが形成されており、前記プリーツの山線と谷線の間の互いに向かい合うそれぞれの壁面に突出部が設けられており、一方の突出部Aの先端部Eaと他方の突出部Bの先端部Ebが接触しており、先端部Eaの面積が先端部Ebの面積よりも大きいことを特徴とするフィルタエレメントをその解決手段とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、シート状濾材をプリーツ形成することによって濾過面積が著しく大きくなっており、且つシート状濾材の向かい合うそれぞれの壁面に設けた突出部同士が当接したフィルタエレメントにおいて、突出部の山同士の位置がずれて濾材の間隔を一定に保つことができなくなるという問題がなく、また、山同士の当接部分の通気性が著しく低下して有効濾過面積が低下し、圧力損失が上昇して濾過寿命が短くなるという問題も生じない、新規なフィルタエレメントを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のフィルタエレメントの一例、およびその製作過程を示す図である。
【図2】本発明のフィルタエレメントの別の例、およびその製作過程を示す図である。
【図3】本発明のフィルタエレメントの一例の部分拡大図である。
【図4】本発明のフィルタエレメントの別の例の部分拡大図である。
【図5】本発明のフィルタエレメントの別の例の部分拡大図である。
【図6】本発明のフィルタエレメントの突出部の一例を示す図である。(a)は平面図であり、(b)はその立面図である。
【図7】本発明のフィルタエレメントの突出部の別の例を示す図である。(a)は平面図であり、(b)はその立面図である。
【図8】本発明のフィルタエレメントの突出部の別の例を示す図である。(a)は平面図であり、(b)はその立面図である。
【図9】本発明のフィルタエレメントの突出部の別の例を示す図である。(a)は平面図であり、(b)はその立面図である。
【図10】本発明のフィルタエレメントの突出部の別の例を示す図である。(a)は平面図であり、(b)はその立面図である。
【図11】本発明のフィルタエレメントの突出部の別の例を示す図である。(a)は平面図であり、(b)はその立面図である。
【図12】本発明のフィルタエレメントの突出部の別の例を示す図である。(a)は平面図であり、(b)はその立面図である。
【図13】本発明のフィルタエレメントの突出部の別の例を示す図である。(a)は平面図であり、(b)はその立面図である。
【図14】本発明のフィルタエレメントの突出部の別の例を示す図である。(a)は平面図であり、(b)はその立面図である。
【図15】本発明のフィルタエレメントの突出部の別の例を示す図である。(a)は平面図であり、(b)はその立面図である。
【図16】シート状濾材を折り曲げてプリーツを形成し、本発明のフィルタエレメントの一例を製作する過程及び、プリーツ形成後の断面形状を模式的に説明する図である。(a)はプリーツを形成する前のシート状濾材を示す図である。(b)は(a)の縦断面を示す図である。(c)はプリーツ形成の途中の状態を示す図である。(d)は(c)の折り曲げをさらに進めて、プリーツを形成した後の模式図である。(e)は(d)のC−C’線における横断面を示す図である。(f)は(e)の状態のフィルタエレメントを更に押しつぶして壁面同士を接近させた図である。
【図17】シート状濾材を折り曲げてプリーツを形成し、本発明フィルタエレメントの別の例を製作する過程及び、プリーツ形成後の断面形状を模式的に説明する図である。(a)はプリーツを形成する前のシート状濾材を示す図である。(b)は(a)の縦断面を示す図である。(c)はプリーツ形成の途中の状態を示す図である。(d)は(c)の折り曲げをさらに進めて、プリーツを形成した後の模式図である。(e)は(d)のC−C’線における横断面を示す図である。(f)は(e)の状態のフィルタエレメントを更に押しつぶして壁面同士を接近させた図である。
【図18】本発明のフィルタエレメントからなるフィルタユニットの正面図である。
【図19】本発明のフィルタエレメントからなるフィルタユニットの背面図である。
【図20】本発明のフィルタエレメントからなるフィルタユニットの正面図である。
【図21】本発明のフィルタエレメントからなるフィルタユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るフィルタエレメントの実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
本発明のフィルタエレメント10は、図1〜図5に例示するように、熱可塑性繊維を含むシート状濾材11にプリーツが形成されており、前記プリーツの山線12と谷線13の間の互いに向かい合うそれぞれの壁面20、30に突出部21、31が設けられており、一方の突出部A(21)の先端部Ea(22)と他方の突出部B(31)の先端部Eb(32)が接触しており、先端部Ea(22)の面積が先端部Eb(32)の面積よりも大きいことを特徴とするフィルタエレメント10である。
【0012】
なお、図1〜図5では突出部A(21)又はB(31)の底面の形状が長方形になっているが、本発明では突出部の底面の形状は特に限定されず、多角形、楕円形、円形およびその他の任意の形状を適用することが可能である。また、図1又は図2の説明図では左手から右手に向かうにつれて、シート状濾材11がプリーツの山線12と谷線13に沿って折り曲げられ、突出部同士が互いに接触してフィルタエレメント10が形成されていく様子が示されている。本発明では、プリーツの山線12と谷線13の間隔は50〜500mmであることが好ましく、70〜280mmであることがより好ましく、100〜180mmであることが更に好ましい。50mm未満であると、セパレータを設ける必要性が低下して突出部を設ける加工費用が割高になる場合がある。また、500mmを超えると山と山の間隔を精度良く保つことができなくなる場合がある。
【0013】
前記突出部は、熱可塑性繊維を含むシート状濾材にエンボス加工を施すことによって形成することができる。また、このエンボス加工の際にプリーツの山と谷となる部分に筋目を入れて、折り目を形成し易いようにすることも可能である。このエンボス加工は、凹凸を有し、且つ互いに凹凸部が噛み合うようにした一対の加熱した成形ロールの間にシート状濾材を通過させて、加圧する方法を採用することができる。或いは一対の冷却可能な成形ロールの間に加熱したシート状濾材を通過させて、冷却しながら加圧する方法を採用することができる。エンボス加工による場合、突出部の先端部Ea(22)及びEb(32)の高さは1〜7mmであることが好ましく、2〜7mmであることがより好ましい。この高さは、突出部の断面形状にも関係し、断面が台形の場合は、高さは1〜5mmであることが好ましく、断面が三角形または半円形の場合は2〜7mmであることが好ましい。断面が三角形または半円形の場合は台形の場合よりもエンボス加工による濾材の伸びが十分に確保できるので、台形よりも高さを高くすることができる。
【0014】
図3は図1のフィルタエレメント10の部分拡大図である。また、図6は図1のフィルタエレメントを折り曲げる前の状態を示している。図3及び図6の例では、壁面20に底面が長辺23と短辺24、25とからなる断面台形の突出部A(21)が、シート状濾材の長手方向(又はプリーツの形成方向)に平行な長辺23を有するように配置されている。また、この突出部A(21)は長辺と短辺26、27とからなる長方形の先端部Ea(22)を有しており、この先端部Ea(22)の山線12側に位置する短辺26と底面の短辺24とを結ぶ山線側斜面28が形成されている。また、先端部Ea(22)の谷線13側に位置する短辺27と底面の短辺25とを結ぶ谷線側斜面29が形成されている。
【0015】
前記突出部Aの底面の長辺23の長さは、プリーツの山線12と谷線13の間隔LPVにもよるが、間隔LPVよりも10〜90mm少ない寸法であることが好ましく、20〜50mm少ない寸法であることがより好ましい。10mm未満であると、プリーツ形成が困難になる場合があり、90mmを超えるとセパレータの効果が低下する場合がある。また、底面の短辺24、25はともに、3〜20mmであることが好ましく、5〜15mmであることがより好ましく、7〜13mmであることが更に好ましい。3mm未満であると突出部の高さを十分に確保できなくなる場合があり、20mmを超えると気体の通過抵抗が大きくなりすぎる場合がある。
【0016】
また、長方形の先端部Ea(22)の長辺の長さは、底面の長辺23の長さよりも少なくなっているが、突出部の高さおよび山線側斜面28と谷線側斜面29の角度に応じて決めることができる。また、長方形の先端部Ea(22)の短辺27の長さは、底面の短辺25の長さよりも少なくなっている。前記山線側斜面28の底面に対する角度は3〜90°であることが好ましく、5〜80°であることがより好ましい。3°未満であると、先端部Ea(22)の長辺の長さを十分に確保できなくなる場合があり、90°を超えると、エンボスによる成形が困難になる場合がある。また、前記谷線側斜面29の底面に対する角度は30〜90°であることが好ましく、30°未満であると、先端部Ea(22)の長辺の長さを十分に確保できなくなる場合があり、90°を超えると、エンボスによる成形が困難になる場合がある。
【0017】
また、図6の例では、前記山線側斜面28および谷線側斜面29に、前記突出部A(21)よりも巾が小さく、高さも低い小さな第2の突出部SAが形成されている。この突出部SAは断面が半円形となっており、プリーツを形成した際に突出部A(21)と山線12または谷線13との間のシート状濾材部分を補強するとともに、山線側斜面28および谷線側斜面29を補強する効果を奏する。特にシート状濾材が合成繊維からなる柔軟性に富む材料である場合には、これらの効果が顕著となるので、突出部SAを設けることが望ましい。突出部SAの巾は、突出部A(21)の底面の短辺24、25の長さよりも少なくなっており、短辺24、25の長さの1/2〜1/20の範囲であることが好ましく、1/3〜1/15の範囲であることがより好ましい。また、0.5〜5mmであることが好ましく、0.7〜3mmであることがより好ましく、これらの範囲で上述の効果が顕著となる。
【0018】
また、図3及び図6の例では、壁面30には、前記突出部A(21)に対応する位置において、底面が長辺33と短辺34、35とからなる断面三角形の突出部B(31)が、シート状濾材の長手方向(又はプリーツの形成方向)に平行な長辺33を有するように配置されている。また、この突出部B(31)は直線状の先端部Eb(32)を有しており、この先端部Eb(32)の山線12側に位置する端部36と底面の短辺34とを結ぶ山線側斜面38が形成されている。また、先端部Eb(32)の谷線13側に位置する端部37と底面の短辺35とを結ぶ谷線側斜面39が形成されている。
【0019】
前記突出部Bの底面の長辺33の長さは、前述の突出部Aと同様に、プリーツの山線12と谷線13の間隔LPVにもよるが、間隔LPVよりも10〜90mm少ない寸法であることが好ましく、20〜50mm少ない寸法であることがより好ましい。10mm未満であると、プリーツ形成が困難になる場合があり、90mmを超えるとセパレータの効果が低下する場合がある。また、底面の短辺34、35はともに、3〜20mmであることが好ましく、5〜15mmであることがより好ましく、7〜13mmであることが更に好ましい。3mm未満であると突出部の高さを十分に確保できなくなる場合があり、20mmを超えると気体の通過抵抗が大きくなりすぎる場合がある。
【0020】
また、三角形の先端部Eb(32)の長さは、前述の突出部Aと同様に、底面の長辺33の長さよりも少なくなっているが、突出部の高さおよび山線側斜面38と谷線側斜面39の角度に応じて決めることができる。前記山線側斜面38の底面に対する角度は3〜90°であることが好ましく、5〜80°であることがより好ましい。3°未満であると、先端部Eb(32)の長辺の長さを十分に確保できなくなる場合があり、90°を超えると、エンボスによる成形が困難になる場合がある。また、前記谷線側斜面39の底面に対する角度は30〜90°であることが好ましく、30°未満であると、先端部Eb(32)の長辺の長さを十分に確保できなくなる場合があり、90°を超えると、エンボスによる成形が困難になる場合がある。
【0021】
また、図6の例では、前記山線側斜面38および谷線側斜面39に、前記突出部B(31)よりも巾が小さく、高さも低い小さな第2の突出部SBが形成されている。この突出部SBは前述の突出部SAと同様に、断面が半円形となっており、プリーツを形成した際に突出部B(31)と山線12または谷線13との間のシート状濾材部分を補強するとともに、山線側斜面38および谷線側斜面39を補強する効果を奏する。特にシート状濾材が合成繊維からなる柔軟性に富む材料である場合には、これらの効果が顕著となるので、突出部SBを設けることが望ましい。突出部SBの巾は、突出部B(31)の底面の短辺34、35の長さよりも少なくなっており、短辺34、35の長さの1/2〜1/20の範囲であることが好ましく、1/3〜1/15の範囲であることがより好ましい。また、0.5〜5mmであることが好ましく、0.7〜3mmであることがより好ましく、これらの範囲で上述の効果が顕著となる。
【0022】
図3及び図6の例では、前述のように、突出部A(21)の先端部Ea(22)は長辺と短辺26、27とからなる長方形となっており、一方突出部B(31)の先端部Eb(32)は直線状となっているため、先端部Ea(22)の面積は先端部Eb(32)の面積よりも大きくなっている。そのため、プリーツを形成して、一方の突出部A(21)の先端部Ea(22)と他方の突出部B(31)の先端部Eb(32)が接触した際に、突出部の山同士の位置がずれて濾材の間隔を一定に保つことができなくなるという問題がなく、また、山同士の当接部分の通気性が著しく低下して有効濾過面積が低下し、圧力損失が上昇して濾過寿命が短くなるという問題も生じないという効果を奏する。なお、本発明では、直線状または点状であっても限りなく0に近い面積を有しているとみなし、各先端部の面積を比較するものとする。
【0023】
図3及び図6の例では、壁面20に底面が長辺23と短辺24、25とからなる断面台形の突出部A(21)が、シート状濾材の長手方向に平行な長辺23を有するように配置されているが、その隣に突出部A(21)と同形状の突出部A’(21’)がシート状濾材の裏側に突出するように配置されている。そして、この突出部A’(21’)と突出部A(21)とは、点対称の位置で、更に表裏がひっくり返る位置関係となっている。同様に、壁面30には底面が長辺33と短辺34、35とからなる断面三角形の突出部B(31)が、シート状濾材の長手方向に平行な長辺33を有するように配置されているが、その隣に突出部B(31)と同形状の突出部B’(31’)がシート状濾材の裏側に突出するように配置されている。そして、この突出部B’(31’)と突出部B(31)とは、点対称の位置で、更に表裏がひっくり返る位置関係となっている。このように、プリーツが形成された際に、突出部A’(21’)と突出部B’(31’)は接触し、このとき、突出部A’(21’)の先端部Ea’(22’)は長辺と短辺とからなる長方形となっており、一方突出部B(31’)の先端部Eb’(32’)は直線状となっているため、先端部Ea’(22’)の面積は先端部Eb’(32’)の面積よりも大きくなっている。
【0024】
図3及び図6の例では、壁面20に底面が長辺23と短辺24、25とからなる断面台形の突出部A(21)が、シート状濾材の長手方向に平行な長辺23を有するように1個配置されているが、同様の断面台形の突出部A(21)を直列に複数個配置することも可能であり、図4及び図7の例では断面台形の突出部A(21)が直列に2個配置されている。このように突出部A(21)を直列に複数個配置することによって、通気抵抗を減ずる効果が期待される。また、谷線側斜面28及び山線側斜面29の数が多くなるので、特にシート状濾材が合成繊維からなる柔軟性に富む材料である場合には、突出部Aが潰れるのを防ぐ効果が期待される。また、図4及び図7では2個の突出部A(21)の間にも突出部SAが設けられており、この突出部SAは、一方の突出部A(21)の山線側斜面28と他方の突出部A(21)の谷線側斜面29とを連結するように設けられている。また、壁面30には、前記突出部A(21)に対応する位置において、底面が長辺33と短辺34、35とからなる断面三角形の突出部B(31)が、シート状濾材の長手方向(又はプリーツの形成方向)に平行な長辺33を有するように2個直列に配置されており、2個の突出部B(31)の間にも突出部SBが設けられている。さらに、これらの突出部A(21)及び突出部B(31)と同様な突出部A’(21’)及び突出部B’(31’)がシート状濾材の裏側に突出するように設けられている。
【0025】
また、本発明では突出部A(21)の底面の短辺の長さと突出部B(31)の底面の短辺の長さとは同じであることも、異なることも可能であり、図4では突出部B(31)の底面の短辺34、35の長さが、突出部A(21)の底面の短辺24、25の長さよりも大きくなっている。また、本発明では突出部A(21)の先端部Ea(22)の長辺の長さと突出部B(31)の先端部Eb(32)の長辺の長さとは同じであることも、異なることも可能であり、図4では、直線状の先端部Eb(32)の長さが先端部Ea(22)の長辺の長さよりも大きくなっている。このように、面積の小さい先端部Eb(32)の長さ、又は面積の小さい先端部Eb(32)の長辺の長さが、面積の大きい先端部Ea(22)の長辺の長さよりも大きいことによって、通気抵抗が少ないと考えられる突出部B(31)の先端部Eb(32)が先端部Ea(22)に確実に接触できるという利点がある。
【0026】
図3及び図6に示す例では、壁面20に底面が長辺23と短辺24、25とからなる断面台形の突出部A(21)が、シート状濾材の長手方向に平行な長辺23を有するように配置されており、突出部A(21)の山線側斜面28及び谷線側斜面29はともに底面に対する角度が30°以上の急斜面となっているが、一方の斜面を30°未満の緩斜面とすることも可能である。(以下、底面に対する角度が30°以上の斜面を急斜面と称し、底面に対する角度が30°未満の斜面を緩斜面と称する場合がある。また、底面に対する角度が30°以上の斜線を急斜線と称し、底面に対する角度が30°未満の斜線を緩斜線と称する場合がある。)図2、5及び図8に示す例では、谷線側斜面29は急斜面であるが、山線側斜面28は緩斜面28となっている。この緩斜面28は気体の入り口に相当する部分であり、緩斜面であることにより気体の通過抵抗を減ずる効果を有している。これに対して、前記急斜面29は、もし仮に底辺が谷線13の近くまで続く緩斜面とした場合には気体の通過容積が少なくなり通過抵抗が大きくなるため、この通過抵抗を減ずる効果を有している。
【0027】
前記緩斜面28の底面に対する角度は3〜15°であることが好ましく、3〜10°であることがより好ましい。3°未満であると、先端部Ea(22)の長辺の長さを十分に確保できなくなる場合があり、15°を超えると、気体の通過抵抗を減ずる効果が少なくなり過ぎる場合がある。また、前記急斜面29の底面に対する角度は30〜90°であることが好ましく、40〜80°であることがより好ましい。30°未満であると、先端部Ea(22)の長辺の長さを十分に確保できなくなる場合があり、90°を超えると、エンボスによる成形が困難になる場合がある。
【0028】
また、図5及び図8の例では、壁面30には、前記突出部A(21)に対応する位置において、断面三角形の突出部B(31)が配置されており、この突出部B(31)の谷線側斜面39は急斜面であるが、山線側斜面38は緩斜面38となっている。前記緩斜面38は気体の入り口に相当する部分であり、緩斜面であることにより気体の通過抵抗を減ずる効果を有している。これに対して、前記急斜面39は、もし仮に底辺が谷線13の近くまで続く緩斜面とした場合には気体の通過容積が少なくなり通過抵抗が大きくなるため、この通過抵抗を減ずる効果を有している。
【0029】
前記緩斜面38の底面に対する角度は3〜15°であることが好ましく、3〜10°であることがより好ましい。3°未満であると、先端部Eb(32)の長辺の長さを十分に確保できなくなる場合があり、15°を超えると、気体の通過抵抗を減ずる効果が少なくなり過ぎる場合がある。また、前記急斜面39の底面に対する角度は30〜90°であることが好ましく、40〜80°であることがより好ましい。30°未満であると、先端部Eb(32)の長辺の長さを十分に確保できなくなる場合があり、90°を超えると、エンボスによる成形が困難になる場合がある。
【0030】
また、図5及び図8の例では、急斜面29側のみに前記突出部A(21)よりも巾が小さく、高さも低い小さな第2の突出部SAが形成されている。また、急斜面39側のみに前記突出部B(31)よりも巾が小さく、高さも低い小さな第2の突出部SBが形成されている。これらの、突出部SAおよび突出部SBの大きさや効果については、図3及び図6の例で説明したとおりである。
【0031】
本発明では、図1〜図8に示した形態以外にも、図9〜図15に例示する形態を採用することができる。また、これらの形態を組み合わせた形態を採用することができる。
【0032】
図9の例では、壁面20には図6に示される断面台形の突出部A(21)と同様の断面台形の突出部A(121)が配置されているが、その隣には図6に示される断面三角形の突出部B’(31’)と同様の断面三角形の突出部A’(121’)が配置されている。また、壁面30には図6に示される断面三角形の突出部B(31)と同様の断面三角形の突出部B(131)が配置されているが、その隣には図6に示される断面台形の突出部A’(21’)と同様の断面台形の突出部B’(131’)が配置されている。
【0033】
図10の例では、壁面20には図6に示される断面台形の突出部A(21)と同形状で高さが低い断面台形の突出部A(221)が配置されており、その隣には図6に示される断面台形の突出部A’(21’)と同形状で高さの低い断面台形の突出部A’(221’)が配置されている。また、壁面30には図6に示される断面三角形の突出部B(31)と同形状で高さの高い断面三角形の突出部B(231)が配置されており、その隣には図6に示される断面三角形の突出部B’(31’)と同形状で高さの高い断面三角形の突出部B’(231’)が配置されている。また、前記突出部A(221)の高さと前記突出部B(231)の高さの合計値が、前記突出部A’(221’)の高さと前記突出部B’(231’)の高さの合計値と等しくなるように突出部が配置されている。
【0034】
図11の例では、壁面20に底面が長辺323と谷線13上(または谷線13の近辺)に設けた短辺325と短辺324とからなる断面台形の突出部A(321)が、シート状濾材の長手方向(又はプリーツの形成方向)に平行な長辺323を有するように配置されている。また、この突出部A(321)は長辺と短辺326、325とからなる台形の先端部Ea(322)を有しており、この先端部Ea(322)の短辺326と底面の短辺324とを結ぶ急斜面328(底面に対する角度が30°以上)(又は山線側斜面)が形成されている。また、先端部Ea(322)は短辺326と底面の短辺325とを結ぶ緩斜面(底面に対する角度が30°未満)ともなっている。なお、断面台形の突出部A(321)の大きさなどは、図6又は図8の例と同様の部分については図6又は図8の例で説明した寸法を適用することができる。
【0035】
また、壁面30には、前記突出部A(321)に対応する位置において、底面が長辺333と谷線13上(または谷線13の近辺)に設けた短辺335と短辺334とからなる断面三角形の突出部B(331)が、シート状濾材の長手方向(又はプリーツの形成方向)に平行な長辺333を有するように配置されている。また、この突出部B(331)は平面状(三角形状)の先端部Eb(332)を有しており、この先端部Eb(332)の端部336と底面の短辺334とを結ぶ急斜面338(底面に対する角度が30°以上)(又は山線側斜面)が形成されている。また、先端部Eb(332)は端部336と底面の短辺335とを結ぶ緩斜面(底面に対する角度が30°未満)ともなっている。なお、断面三角形の突出部B(331)の大きさなどは、図6又は図8の例と同様の部分については図6又は図8の例で説明した寸法を適用することができる。
【0036】
図11の例では、壁面20に断面台形の突出部A(321)が、シート状濾材の長手方向に平行な長辺323を有するように配置されているが、その隣に突出部A(321)と同形状の突出部A’(321’)がシート状濾材の裏側に突出するように配置されている。そして、この突出部A’(321’)と突出部A(321)とは、点対称の位置で、更に表裏がひっくり返る位置関係となっている。同様に、壁面30には断面三角形の突出部B(331)が、シート状濾材の長手方向に平行な長辺333を有するように配置されているが、その隣に突出部B(331)と同形状の突出部B’(331’)がシート状濾材の裏側に突出するように配置されている。そして、この突出部B’(331’)と突出部B(331)とは、点対称の位置で、更に表裏がひっくり返る位置関係となっている。このように、プリーツが形成された際に、突出部A’(321’)と突出部B’(331’)は接触し、このとき、突出部A’(321’)の先端部Ea’(322’)は長辺と2つの短辺とからなる台形となっており、一方突出部B(331’)の先端部Eb’(332’)は平面状(三角形状)となっており、先端部Ea’(322’)の面積は先端部Eb’(332’)の面積よりも大きくなっている。
【0037】
図12の例では、図11と同様に、壁面20に底面が長辺423と谷線13上(または谷線13の近辺)に設けた短辺425と短辺424とからなる断面台形の突出部A(421)が、シート状濾材の長手方向(又はプリーツの形成方向)に平行な長辺423を有するように配置されている。また、この突出部A(421)は長辺423と短辺426、425とからなる台形の先端部Ea(422)を有しており、この先端部Ea(422)の短辺426と底面の短辺424とを結ぶ急斜面428(底面に対する角度が30°以上)(又は山線側斜面)が形成されている。また、先端部Ea(422)は短辺426と底面の短辺425とを結ぶ緩斜面(底面に対する角度が30°未満)ともなっている。なお、断面台形の突出部A(421)の大きさなどは、図6又は図11の例と同様の部分については図6又は図11の例で説明した寸法を適用することができる。
【0038】
また、壁面30には、前記突出部A(421)に対応する位置において、断面三角形の突出部B(431)が配置されており、この突出部B(431)は底面が長辺433と短辺434とからなる4角形となっており、長辺433の端部443が谷線13上(または谷線13の近辺)に設けられている。また、この突出部B(431)は直線状の先端部Eb(432)を有しており、この先端部Eb(432)の端部436と短辺434の端部444とを結ぶ急斜線438(底面に対する角度が30°以上)(又は山線側斜線)が形成されている。また、先端部Eb(432)は端部436と長辺433の端部443とを結ぶ緩斜線(底面に対する角度が30°未満)ともなっている。なお、断面三角形の突出部B(431)の大きさなどは、図6又は図11の例と同様の部分については図6又は図11の例で説明した寸法を適用することができる。
【0039】
図12の例では、壁面20に断面台形の突出部A(421)が、シート状濾材の長手方向に平行な長辺423を有するように配置されているが、その隣に突出部A(421)と同形状の突出部A’(421’)がシート状濾材の裏側に突出するように配置されている。そして、この突出部A’(421’)と突出部A(421)とは、点対称の位置で、更に表裏がひっくり返る位置関係となっている。同様に、壁面30には断面三角形の突出部B(431)が配置されているが、その隣に突出部B(431)と同形状の突出部B’(431’)がシート状濾材の裏側に突出するように配置されている。そして、この突出部B’(431’)と突出部B(431)とは、点対称の位置で、更に表裏がひっくり返る位置関係となっている。このように、プリーツが形成された際に、突出部A’(421’)と突出部B’(431’)は接触し、このとき、突出部A’(421’)の先端部Ea’(422’)は長辺と2つの短辺とからなる台形となっており、一方突出部B(431’)の先端部Eb’(432’)は直線状となっているため、先端部Ea’(422’)の面積は先端部Eb’(432’)の面積よりも大きくなっている。
【0040】
図6〜図12では、断面台形の突出部Aが有する長方形又は台形の先端部Eaと断面三角形の突出部Bが有する直線状又は三角形状の先端部Ebとが接触している例を示したが、突出部Bの断面形状は三角形に限定されることはなく、例えば図13に例示するように長方形の先端部Ebの面積が長方形の先端部Eaの面積よりも少ない面積を有する台形であることも可能であり、また図14に例示するように半円形であることも可能である。半円形の場合先端部Ebの形状は線状となる。また、突出部Bの先端部Ebの形状も必ずしも線状又は三角形状に限定されることはなく、例えば図13に例示するように先端部Ebの面積が長方形の先端部Eaの面積よりも少ない面積を有する長方形であることも可能である。また、図15に例示するように点状であることも可能である。図15では、突出部Bは四角錐の形状をした突出部が複数個一列に並んだ形態をしている。
【0041】
図16及び図17は、シート状濾材を折り曲げてプリーツを形成し、本発明のフィルタエレメントを製作する過程及び、プリーツ形成後の断面形状を模式的に説明する図である。(a)図はプリーツを形成する前のシート状濾材11に、図4及び図7、或いは図5及び図8と同様の形態の突出部A、突出部A’、突出部B及び突出部B’が形成されている状態を示している。(b)図は(a)図の縦断面を示しており、(c)図は(a)図の山線12に沿って山折りし谷線13に沿って谷折りしている途中の状態を示す図である。
【0042】
(d)図は(c)図の折り曲げをさらに進めて、プリーツを形成した後の模式図である。(d)図によれば、突出部Aの先端部Eaと他方の突出部Bの先端部Ebが直線状に接触しており、この直線状の接触部はシート状濾材11の壁面20及び壁面30と平行になっており、同時に壁面20と壁面30は平行になっている。このため、突出部と山線との間の壁面及び突出部と谷線との間の壁面は、突出部の底面の短辺部分で折れ曲がっている。本発明では、このように壁面20と壁面30は平行になるように、プリーツを形成することにより、構造の安定したフィルタエレメントを得ることができるという利点がある。しかし、本発明では、図1及び図2の右側に形成されたプリーツのように、壁面20と壁面30は平行であることに限定されず、突出部Aの先端部Eaと他方の突出部Bの先端部Ebが点状に接触するように、プリーツを形成することも可能であり、この場合はプリーツの折り角度はより大きくなる。また、図11又は図12の形態であれば、突出部Aの先端部Eaと他方の突出部Bの先端部Ebが直線状に又は平面状に接触しているため、この直線状又は平面状の接触部はシート状濾材11の壁面20及び壁面30と平行ではないが、構造の安定したフィルタエレメントを得ることができるという利点がある。
【0043】
(e)図は(d)図のC−C’線における横断面を示す図である。(e)図によれば、I領域の気体がシート状濾材を通過して斜線部分のO領域に到達することにより濾過が行われることがわかる。(f)図は(e)図の状態のフィルタエレメントを更に押しつぶして壁面20と壁面30とを接近させた図である。(f)図によれば、プリーツの数を増加させることが可能であるので、シート状濾材11の濾過面積の増大による圧力損失の低下とともに濾過寿命の増加を得ることができるという利点がある。
【0044】
本発明のフィルタエレメントの好ましい寸法は、図1〜図5に例示する形態の場合、フィルタエレメントの高さHは50〜500mmであることが好ましく、70〜280mmであることがより好ましく、100〜180mmであることが更に好ましい。50mm未満であると、セパレータを設ける必要性が低下して突出部を設ける加工費用が割高になる場合がある。また、500mmを超えると山と山の間隔を精度良く保つことができなくなる場合がある。また、フィルタエレメントの幅Wは100〜900mmであることが好ましく、200〜700mmであることがより好ましい。100mm未満であると、目的とする濾過面積が得られない場合があり、900mmを超えると通風時にフィルタエレメントの構造が不安定になる場合がある。また、フィルタエレメントの長さLは100〜900mmであることが好ましく、200〜700mmであることがより好ましい。100mm未満であると、目的とする濾過面積が得られない場合があり、900mmを超えると通風時にフィルタエレメントの構造が不安定になる場合がある。
【0045】
本発明では、図18〜図21に例示するように前記フィルタエレメント10に剛性枠40を取付けることによりフィルタユニット50を作製して、当該フィルタユニット50を一般空調設備などに配置することができる。図18は、図1又は図2に示すフィルタエレメント10に剛性枠40を取付けることにより得られるフィルタユニット50の正面図であり、図19はフィルタユニット50の背面図であり、図20はフィルタユニット50の背面を点線で表した正面図である。図21は、図2のフィルタエレメント10に剛性枠40を取付けることにより得られるフィルタユニット50の斜視図である。
【0046】
なお、本発明のフィルタエレメントを一般空調設備に配置する場合の実用的な寸法としては、フィルタエレメントに剛性枠を取付けたフィルタユニットの汎用的な寸法である、高さH610mm×幅W610mm×奥行きD150mmに、1個又は複数個のフィルタエレメントが収まるような寸法であることが好ましい。
【0047】
次に、本発明のフィルタエレメントとして適用可能な、好ましいシート状濾材11の態様を説明する。前記シート状濾材としては、熱可塑性繊維を含み通気性のある素材である限り特に限定されず、例えば、織物、編物、ネットまたは不織布などの繊維基材を適用することができる。この中でも、不織布であれば、繊維表面の総面積を広く効率良く利用でき、且つ繊維同士によって形成される小さな空隙を多数有しているので、特に好ましい。
【0048】
前記繊維基材としての不織布(以下、不織布基材と称する)も特に限定されず、不織布基材の構造としては、例えば繊維長15〜100mmの、捲縮数5〜30個/インチを有する通常ステープル繊維と呼ばれる繊維をカード機やエアレイ装置などを使用して、繊維ウエブに形成した後、接着性繊維または接着剤を用いて構成繊維を接着によって結合する方法による、一般的に乾式法と呼ばれる製法によって得られる不織布がある。なお、複合繊維等の接着性繊維を用いて構成繊維を結合することにより得られる不織布は、環境にも優しいクリーンな素材であり、また熱成形性にも優れるため好適な形態である。また、乾式法以外にも、スパンボンド法、メルトブロー法、湿式法などと呼ばれる製法によって得られる不織布がある。また、これらの製法で得られる繊維ウエブに、ニードルや水流などを作用させて、構成繊維を絡合した不織布も適用可能である。
【0049】
また、中高性能用のフィルタエレメントとするためには、低い圧力損失を維持した状態で高い塵埃捕集効率を得ることができることが望ましい。すなわち、高い塵埃捕集効率を有しながら濾過寿命を長くすることが可能な不織布を用いることが好ましい。このような不織布としては、例えばメルトブロー法によって形成された平均繊維径0.1〜10μmの極細繊維と、平均繊維径10〜50μmの短繊維からなる熱融着性繊維とが混合されており、且つ前記熱融着性繊維によって構成繊維が結合している不織布を挙げることができる。このような不織布であれば、極細繊維による高い塵埃捕集効率を有すると共に短繊維からなる熱融着性繊維によって嵩高な構造を有することが可能であり、その結果、低い圧力損失を維持した状態で高い塵埃捕集効率を得ることが可能である。なお、この場合のフィルタエレメントの濾過性能は、JIS B 9908形式2に規定される試験方法において、比色法により評価すると、空気の流入面の寸法を610mm角の場合、試験条件が風量56m/minの時に、平均粒子捕集率を80〜98%とすることが可能であり、中性能用としては60〜95%とすることが可能である。また、前記不織布にエレクトレット加工が施されている場合は、80%以上とすることが可能である。
【0050】
前記不織布を構成する繊維としては、例えば、熱可塑性を有する繊維であるポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、モダアクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリウレタン繊維などの合成繊維を使用することができる。また、これらの繊維と、ポリクラール繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリビニルアルコール繊維などの合成繊維や、レーヨン、ビスコースなどの再生繊維や、アセテートなどの半合成繊維や、炭素繊維、ガラス繊維などの無機繊維などとを混合して使用することができる。
【0051】
また、構成繊維が複合繊維であることも好ましく、複合繊維を構成する樹脂成分の組み合わせとして、例えば、ポリプロピレン/ポリエチレン、ポリエステル/低融点ポリエステル、ポリプロピレン/低融点ポリプロピレン、ナイロン66/ナイロン6、ナイロン6/低融点ナイロン、ポリエステル/ナイロン6、ナイロン6/ポリエチレン、ポリエステル/ポリプロピレンなどがある。
【0052】
なお、前記複合繊維の低融点樹脂成分が熱接着性を有する場合には、エンボス加工時にこの樹脂成分によりウエブ構成繊維を熱接着できる。このように、複合繊維の低融点樹脂成分が熱接着性を有すると、高融点樹脂成分により繊維形態を維持できるため、強度的に優れるという利点がある。
【0053】
以下、本発明の実施例につき説明するが、これは発明の理解を容易とするための好適例に過ぎず、本発明はこれら実施例の内容に限定されるものではない。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
低融点成分であるポリエチレン樹脂を鞘とし、高融点成分であるポリプロピレン樹脂を芯とする芯鞘型複合繊維である繊維径が2.2デシテックス(17μm)の短繊維を使用してカード機により、面密度が100g/mの繊維ウェブを形成した。次いで、この繊維ウェブを一対のベルトの間に挟みながら加熱ゾーンに移動し、熱融着性繊維によって構成繊維を結合して、面密度が100g/mで、厚さが1mmのシート状濾材を得た。
【0055】
次いで、凹凸を有し、且つ互いに凹凸部が噛み合うようにした一対の成形ロールの間にこのシート状濾材を通過させて、加圧することにより、このシート状濾材に図4、7又は図16に示す突出部(A、A’、B、B’)を形成した。また、このエンボス加工の際にプリーツの山と谷となる部分に筋目を入れて、折り目を形成し易いようにした。
得られたプリーツの山線12と谷線13の間隔LPVは130mmであり、突出部の先端部Ea(22)の高さは3.5mmであり、Eb(32)の高さは5mmであった。
また、断面台形の突出部A(21)の底面の長辺23の長さは33mmであり、短辺24、25の長さはともに6.5mmであった。また、底面の短辺24と山線12の間隔は27mmであり、底面の短辺25と谷線13の間隔は27mmであった。また、長方形の先端部Ea(22)の長辺の長さは29mmであり、短辺27の長さは4mmであった。また、突出部Aの山線側斜面28及び谷線側斜面29はともに底面に対する角度が60°であり、急斜面となっていた。また、2個の突出部Aの間隔は、一方の突出部Aの底面の短辺25から他方の突出部Aの底面の短辺26までの距離が10mmであった。
また、突出部Aの山線側斜面28及び谷線側斜面29に第2の突出部SAが形成されており、これらの突出部SAの巾は1mmであり、長さは5mmであり、高さは1mmであり、突出部の先端部は断面が半円形であった。また、2個の突出部Aの間にも同様の第2の突出部SAが形成されていた。
また、突出部A(21)と同寸法の突出部A’(21’)がシート状濾材の裏側に突出するように配置されていた。なお、この突出部A’と突出部Aとは、点対称の位置で、更に表裏がひっくり返る位置関係となっていた。
また、断面三角形の突出部B(31)の底面の長辺33の長さは41mmであり、短辺34、35の長さはともに8mmであった。また、底面の短辺34と山線12の間隔は19mmであり、底面の短辺35と谷線13の間隔は19mmであった。また、線状の先端部Eb(32)の長さは35mmであった。また、突出部Bの山線側斜面38及び谷線側斜面39はともに底面に対する角度が60°であり、急斜面となっていた。また、2個の突出部Bの間隔は、一方の突出部Bの底面の短辺36から他方の突出部Aの底面の短辺35までの距離が10mmであった。
また、突出部Bの山線側斜面38及び谷線側斜面39に第2の突出部SBが形成されており、これらの突出部SBの巾は1mmであり、長さは5mmであり、高さは1mmであり、突出部の先端部は断面が半円形であった。また、2個の突出部Bの間にも同様の第2の突出部SBが形成されていた。
また、突出部B(31)と同寸法の突出部B’(31’)がシート状濾材の裏側に突出するように配置されていた。なお、この突出部B’(31’)と突出部B(31)とは、点対称の位置で、更に表裏がひっくり返る位置関係となっていた。
【0056】
次いで、図4及び図16に示すように、山線12に沿って山折りし谷線13に沿って谷折りすることで、図16(d)、(e)に示す形状のフィルタエレメントを得た。
このフィルタエレメントにあっては、突出部A(21)の先端部Ea(22)と他方の突出部B(31)の先端部Eb(32)が直線状に接触しており、この直線状の接触部はシート状濾材11の壁面20及び壁面30と平行になっており、同時に壁面20と壁面30は平行になっていた。また、突出部と山線との間の壁面及び突出部と谷線との間の壁面は、突出部の底面の短辺部分で折れ曲がっていた。このように壁面20と壁面30は平行になるように、プリーツが形成されているので、得られたフィルタエレメントは構造が安定したものであった。また、このフィルタエレメントの高さHは130mmであり、幅Wは590mmであり、長さLは590mmであり、プリーツが65個形成されていた。
次いで、このフィルタエレメントに剛性枠を取付けて、図18〜図21に示すような、高さH610mm×幅W610mm×奥行きD150mmのフィルタユニットを形成した。
【0057】
(実施例2)
実施例1と同様にして、図4及び図16に示すように、山線12に沿って山折りし谷線13に沿って谷折りすることで、図16(d)、(e)に示す形状のフィルタエレメント中間体を得た。次いで、このフィルタエレメント中間体をもとの厚さに対して約80%となるよう押しつぶすようにして、図16(f)に示すように、壁面20と壁面30とを接近させたフィルタエレメントを得た。
このフィルタエレメントにあっては、突出部A(21)の先端部Ea(22)と他方の突出部B(31)の先端部Eb(32)が直線状に接触しており、この直線状の接触部はシート状濾材11の壁面20及び壁面30と平行になっており、同時に壁面20と壁面30は平行になっていた。また、突出部と山線との間の壁面及び突出部と谷線との間の壁面は、突出部の底面の短辺部分で折れ曲がっていた。このように壁面20と壁面30は平行になるように、プリーツが形成されているので、得られたフィルタエレメントは構造が安定したものであった。また、このフィルタエレメントの高さHは130mmであり、幅Wは590mmであり、長さLは590mmであり、プリーツが80個形成されていた。
このように、実施例1のフィルタエレメントのプリーツの数65個に対して、プリーツの数が1.2倍に増加していたので、シート状濾材11の濾過面積を増大させることができた。
次いで、このフィルタエレメントに剛性枠を取付けて、図18〜図21に示すような、高さH610mm×幅W610mm×奥行きD150mmのフィルタユニットを形成した。
【0058】
(実施例3)
実施例1と同様にして、面密度が100g/mで、厚さが1mmのシート状濾材を得た。次いで、凹凸を有し、且つ互いに凹凸部が噛み合うようにした一対の成形ロールの間にこのシート状濾材を通過させて、加圧することにより、このシート状濾材に図2、5、8又は図17に示す突出部(A、A’、B、B’)を形成した。また、このエンボス加工の際にプリーツの山と谷となる部分に筋目を入れて、折り目を形成し易いようにした。
得られたプリーツの山線12と谷線13の間隔LPVは130mmであり、突出部の先端部Ea(22)の高さは3.5mmであり、Eb(32)の高さは5mmであった。
また、断面台形の突出部A(21)の底面の長辺23の長さは95mmであり、短辺24、25の長さはともに10mmであった。また、底面の短辺24と山線12の間隔は5mmであり、底面の短辺25と谷線13の間隔は30mmであった。また、長方形の先端部Ea(22)の長辺の長さは66mmであり、短辺27の長さは7mmであった。また、突出部Aの山線側斜面28は底面に対する角度が8°であり、緩斜面となっており、突出部Aの谷線側斜面29は底面に対する角度が60°であり、急斜面となっていた。
また、突出部Aの谷線側斜面29に第2の突出部SAが形成されており、この突出部SAの巾は1mmであり、長さは5mmであり、高さは1mmであり、突出部の先端部は断面が半円形であった。
また、突出部A(21)と同寸法の突出部A’(21’)がシート状濾材の裏側に突出するように配置されていた。なお、この突出部A’と突出部Aとは、点対称の位置で、更に表裏がひっくり返る位置関係となっていた。
また、断面三角形の突出部B(31)の底面の長辺33の長さは95mmであり、短辺34、35の長さはともに10mmであった。また、底面の短辺34と山線12の間隔は5mmであり、底面の短辺35と谷線13の間隔は30mmであった。また、線状の先端部Eb(32)の長さは65mmであった。また、突出部Bの山線側斜面38は底面に対する角度が12°であり、緩斜面となっており、突出部Bの谷線側斜面39は底面に対する角度が60°であり、急斜面となっていた。
また、突出部Bの谷線側斜面39に第2の突出部SBが形成されており、この突出部SBの巾は1mmであり、長さは5mmであり、高さは1mmであり、突出部の先端部は断面が半円形であった。
また、突出部B(31)と同寸法の突出部B’(31’)がシート状濾材の裏側に突出するように配置されていた。なお、この突出部B’と突出部Bとは、点対称の位置で、更に表裏がひっくり返る位置関係となっていた。
【0059】
次いで、図2、5及び図17に示すように、山線12に沿って山折りし谷線13に沿って谷折りすることで、図17(d)、(e)に示す形状のフィルタエレメントを得た。
このフィルタエレメントにあっては、突出部Aの先端部Eaと他方の突出部Bの先端部Ebが直線状に接触しており、この直線状の接触部はシート状濾材11の壁面20及び壁面30と平行になっており、同時に壁面20と壁面30は平行になっていた。また、突出部と山線との間の壁面及び突出部と谷線との間の壁面は、突出部の底面の短辺部分で折れ曲がっていた。このように壁面20と壁面30は平行になるように、プリーツが形成されているので、得られたフィルタエレメントは構造が安定したものであった。また、このフィルタエレメントの高さHは130mmであり、幅Wは590mmであり、長さLは590mmであり、プリーツが65個形成されていた。
次いで、このフィルタエレメントに剛性枠を取付けて、図18〜図21に示すような、高さH610mm×幅W610mm×奥行きD150mmのフィルタユニットを形成した。
【0060】
(実施例4)
実施例3と同様にして、図2、5及び図17に示すように、山線12に沿って山折りし谷線13に沿って谷折りすることで、図17(d)、(e)に示す形状のフィルタエレメント中間体を得た。次いで、このフィルタエレメント中間体をもとの厚さに対して約80%となるよう押しつぶすようにして、図10(f)に示すように、壁面20と壁面30とを接近させたフィルタエレメントを得た。
このフィルタエレメントにあっては、突出部Aの先端部Eaと他方の突出部Bの先端部Ebが直線状に接触しており、この直線状の接触部はシート状濾材11の壁面20及び壁面30と平行になっており、同時に壁面20と壁面30は平行になっていた。また、突出部と山線との間の壁面及び突出部と谷線との間の壁面は、突出部の底面の短辺部分で折れ曲がっていた。このように壁面20と壁面30は平行になるように、プリーツが形成されているので、得られたフィルタエレメントは構造が安定したものであった。また、このフィルタエレメントの高さHは130mmであり、幅Wは590mmであり、長さLは590mmであり、プリーツが80個形成されていた。
このように、実施例1のフィルタエレメントのプリーツの数65個に対して、プリーツの数が1.2倍に増加していたので、シート状濾材11の濾過面積の増大による圧力損失の低下とともに濾過寿命の増加を得ることができた。
次いで、このフィルタエレメントに剛性枠を取付けて、図18〜図21に示すような、高さH610mm×幅W610mm×奥行きD150mmのフィルタユニットを形成した。
【符号の説明】
【0061】
10 フィルタエレメント
11 シート状濾材
12 山線
13 谷線
20 壁面
21、121、221、321、421 突出部A
21’、121’、221’、321’、421’ 突出部A’
22、322、422 突出部Aの先端部Ea
22’、 322’、 422’ 突出部A’の先端部Ea’
23、323、423 突出部Aの底面の長辺
24、324、424 突出部Aの底面の短辺
25、325、425 突出部Aの底面の短辺
26、326、426 先端部Eaの短辺
27 先端部Eaの短辺
28、328、428 突出部Aの山線側斜面
29 突出部Aの谷線側斜面
30 壁面
31、131、231、331、431 突出部B
31’、131’、231’、331’、431’ 突出部B’
32、332、432 突出部Bの先端部Eb
32’、332’、432’ 突出部B’の先端部Eb’
33、433 突出部Bの底面の長辺 :443 長辺433の端部
34、334、434 突出部Bの底面の短辺 :444 短辺434の端部
35、335 突出部Bの底面の短辺
36、336、436、 先端部Ebの端部
37 先端部Ebの端部
38、338 突出部Bの山線側斜面 :438 突出部Bの山線側斜線、急斜線
39 突出部Bの谷線側斜面
40 剛性枠
50 フィルタユニット
A、A’ 突出部
B、B’ 突出部
Ea 突出部Aの先端部
Ea’ 突出部A’の先端部
Eb 突出部Bの先端部
Eb’ 突出部B’の先端部
SA 突出部、第2の突出部
SB 突出部、第2の突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性繊維を含むシート状濾材にプリーツが形成されており、前記プリーツの山線と谷線の間の互いに向かい合うそれぞれの壁面に突出部が設けられており、一方の突出部Aの先端部Eaと他方の突出部Bの先端部Ebが接触しており、先端部Eaの面積が先端部Ebの面積よりも大きいことを特徴とするフィルタエレメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−206724(P2011−206724A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78591(P2010−78591)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】