説明

フィルタカートリッジ

【課題】鞘および濾過パックがエンドキャップにできるだけ良好に挿入された状態を得る。
【解決手段】平面濾過媒体で形成された濾過パック3と、穿孔壁を有し濾過パックを取り巻く筒状の鞘2と、それぞれが熱可塑性樹脂製の互いに重ねられた第1のディスク16および第2のディスク17を有する2個のエンドキャップ5とを備えるフィルタカートリッジであって、濾過パック3の一方の縁に沿った部分および鞘2の一方の縁33に沿った部分が第2のディスク17に埋め込まれ、第1のディスク16が鞘2の関連部分を取り巻く周縁リム19を有し、鞘が第1のディスク16のリム19の縁に対向する肩34を有するフィルタカートリッジ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルタカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなカートリッジは既に知られており、Durapore(登録商標)の名称で本出願人によって販売され、薬剤や食品用途に用いられている。このカートリッジは平面濾過媒体がジグザグに折り畳まれてそれ自身の上に閉じることによって形成された濾過パックを備え、濾過パックを取り巻く穿孔壁を有する筒状の鞘を有し、濾過パックに取り巻かれた穿孔壁を有する筒状のコアを有し、2個のエンドキャップを有し、鞘、コア、およびエンドキャップはそれぞれ同じポリプロピレンから作られ、それぞれ射出成形され、コア、濾過パックおよび鞘それぞれの縁に沿った部分が各エンドキャップに埋め込まれている。
【0003】
このカートリッジを組み立てるために、鞘、濾過パック、およびコアが、互いに滑り込まされて仮カートリッジが得られ、エンドキャップの内面が所定の温度、例えば250℃に加熱されて、エンドキャップと仮カートリッジが一直線の状態に保たれながら合体され、圧接力が加えられる。この圧接力が、加熱によって軟化した各エンドキャップの材料に、鞘、濾過パック、およびコアそれぞれの縁部に沿った上記部分を挿し込む効果を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、この形式のカートリッジ、また、少なくとも一方の側で鞘および濾過パックの両方がエンドキャップに埋め込まれているカートリッジの全ての場合において、鞘および濾過パックがエンドキャップにできるだけ良好に挿入された状態を得ることに関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的のために、本発明は、
− 平面濾過媒体によって形成される濾過パックと、
− 前記濾過パックを取り巻く穿孔壁を有する筒状の鞘と、
− それぞれに前記濾過パックの両縁のうちの一方に沿った部分が埋め込まれ、それぞれに前記鞘の両縁のうちの一方に沿った部分が埋め込まれている熱可塑性の2個のエンドキャップと
を備えるフィルタカートリッジであって、
− 少なくとも1つの前記エンドキャップが、それぞれ熱可塑性樹脂から作られ互いに重なっている第1のディスクおよび第2のディスクを有し、
− 前記第2のディスク中に濾過パックの前記部分および鞘の前記部分が埋め込まれ、
− 前記第1のディスクが、鞘の前記部分を取り巻く周縁リムを有し、
− 前記鞘が、第1のディスクの前記リムの縁に対向する肩を有する
ことを特徴とするフィルタカートリッジを提供する。
【0006】
エンドキャップの2ディスク構造は、このディスク、濾過パック、および鞘の相互の配置とあいまって、特に下記の好ましい特徴が実現されるとき、鞘および濾過パックがエンドキャップ中にしっかりと保持されることにより、取り扱い中の衝撃耐性および作動中の高圧に耐えられる可能性に関し便益を得ることが可能になる。
【0007】
特に指摘すべきことは、本発明によるフィルタカートリッジでは、第1のディスクがエンドキャップと鞘の間の協動に係わり、その結果、エンドキャップと濾過パックの間の協動にも係わることである。その理由は、鞘がエンドキャップ中に埋め込まれている部分も含めて濾過パックを取り巻くからである。
【0008】
エンドキャップの2つのディスクの共同作用はまた、例えば国際公開第99/12629号パンフレットで既に知られている2種類の材料からなるエンドキャップとは異なり、これら2つのディスクがそれぞれ熱可塑性樹脂から作られていることによるものである。同出願では2つの材料は別々であり、例えば外側はエラストマーで内側は熱可塑性樹脂である。
【0009】
実施上の実際的な理由から好ましく、かつ得られる結果の品質にとって好ましい特徴によれば、
− 鞘の前記部分は、鞘の壁の他の部分より薄いネックの一部を形成し、前記ネックは厚さを鞘の縁から増加してよく、かつ/または
− 前記ネックは鞘の縁と前記肩の間に位置し、鞘の縁が、鞘全部の内面へ続いている内面から、縁から前記肩へ延在する円錐台形の面まで延び、この肩は前記円錐台形の面から鞘全体の外面まで延びてよい。
【0010】
好ましい他の特徴によれば、実施上の実際的な理由から、第1のディスクの前記リムが板から突き出て延び、前記リムは厚さを縁から増加してよく、前記リムの縁は、実質的に鞘全体の外面と同じ直径を有する外側面から、このリムから前記板まで延在する円錐台形の面まで延びてよい。
【0011】
好ましい他の特徴によれば、実施上の実際的な理由から、
− 鞘の前記肩と前記リムの縁は実質的に同じ幅を有し、かつ/または
− 前記リムは、円錐台形の面を介して第2のディスクに埋め込まれた鞘の前記部分に向かい合い、かつ/または
− 第2のディスクに埋め込まれた鞘の前記部分は、円錐台形の面を介して前記リムに向かい合い、かつ/または
− 第2のディスクに埋め込まれた鞘の前記部分および前記リムは、それぞれの円錐台形の面を介して互いに向かい合い、前記それぞれの円錐台形の面は互いに相似形(similar)であり、かつ/または
− 前記リムは途切れ(interruption)を有し、おそらくは、前記途切れは一定間隔で配置され、それぞれ頂点の角度が同じ弧にわたって延び、前記リムは、頂点の角度が約30°の弧にわたってそれぞれ延びる4個の前記途切れを有してもよく、かつ/または
− 前記第1のディスクは、前記第2のディスクとは反対側に環状のリブを有し、かつ/または
− 互いに重なって配置された第1のディスクと第2のディスクを有する前記エンドキャップの少なくとも一方が、中央オリフィスを有し、中央オリフィスを有するキャップの第1のディスクが前記中央オリフィスの周りにリムを有してもよく、かつ/または
− カートリッジは、前記濾過パックに取り巻かれ、穿孔壁を有するとともに、少なくとも一方の縁に沿って、前記第2のディスクに埋め込まれている部分をもつ筒状のコアを有し、コアの前記各部分は、コアの他の部分より薄いネックを形成してもよく、コアの縁は、コア全体の内面へ続いている内面から、縁からコア全体の外面へ延在する円錐形の面まで延びてもよい。
【0012】
好ましい他の特徴によれば、エンドキャップ中に鞘、および特に濾過パックを配置するのに極めて優れた特性を得ることができるので、ASTM D1238またはISO 1133の試験方法による230℃、2.16kgでの第1のディスクの材料のメルトフローレート(melt flow rate)は、第2のディスクの材料より低い。
【0013】
得られる結果の品質を考慮すると、好ましくは、
− 第1のディスクの材料の前記メルトフローレートは、15g/10分以下、より詳しくは、4.2〜6.5g/10分であり、かつ/または
− 第2のディスクの前記メルトフローレートは、25〜100g/10分、より詳しくは、65〜75g/10分である。
【0014】
好ましい他の特徴によれば、同じ理由から、第1のディスクおよび第2のディスクを有する前記エンドキャップは、2重射出成形法で成形され、より詳しくは、前記第2のディスクは前記第1のディスク上に型成形され、かつ/または前記第1のディスクおよび前記第2のディスクはポリプロピレンから作られ、より詳しくは、前記第1のディスクはホモポリマーのポリプロピレンから作られ、第2のディスクは共重合体のポリプロピレンから作られ、かつ/または
− 前記濾過パックを形成する前記平面濾過媒体は、濾過膜、および前記膜を間に挟んでいる2枚の支持レイヤを備え、前記濾過媒体はまた、前記膜の両端の近傍に配置された熱可塑性リボンを備えてもよく、かつ/または前記膜はポリフッ化ビニリデン(PVDF)製でもよく、かつ/または前記支持レイヤは熱可塑性樹脂製でもよく、かつ/または前記レイヤおよび前記膜の両端の近傍に配置された熱可塑性リボンは、ポリプロピレン製でもよい。
【0015】
好ましい他の特徴によれば、カートリッジの両端間のバランス上の理由から、各エンドキャップは前記第1のディスクおよび前記第2のディスクを有し、同じように鞘および濾過パックと協働する。
【0016】
以下に例として非限定的に示される実施形態例を添付図面を参照して説明することにより、本発明の開示を引き続き行う。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるフィルタカートリッジを示す切欠透視図である。
【図2】図1に示されたカートリッジと、エンドキャップをカートリッジのその他の部分と組み立てるのに用いられる支持体および加熱ブロックとを示す概略分解組立透視図である。
【図3】エンドキャップと組み立てる前の、カートリッジに含まれる濾過媒体の縁部での配列を特に示す部分断面図である。
【図4】フィルタカートリッジの底部エンドキャップの外側部分を形成する第1のディスクと、第1のディスク上に型成形され、このキャップの内側部分を形成する第2のディスクとを示す、キャップの切欠透視図である。
【図5】エンドキャップの第1のディスクのみを示す透視図である。
【図6】図4と同様な、フィルタカートリッジの頂部キャップを示す図である。
【図7】図2に示される一方の支持体中の所定位置にある底部エンドキャップと、底部エンドキャップ、より詳細にはその内側を加熱するために、支持体に対向し、したがって底部エンドキャップに対向して配置された、図2に示される一方の加熱ブロックとを示す概略立面断面図である。
【図8】図1の底部右側の部分を拡大して示す立面部分断面図である。
【図9】図8と同様な、図1の頂部右側部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示されるフィルタカートリッジ1は、鞘2、濾過パック3、コア4、底部エンドキャップ5、頂部エンドキャップ6を備える。この場合、カートリッジ1は約254mm(10インチ)の高さおよび約69mmの外径を有する。
【0019】
鞘2は型成形熱可塑性樹脂から作られ、この場合は射出成形されたポリプロピレンである。鞘2は筒形である。その壁を貫通して穿孔7が形成されており、図1には図面が過密にならないようにその幾つかだけが示されている。穿孔7は、液体が鞘2の壁を通り抜けるようにさせる。
【0020】
鞘2に関して上記で述べたことは、その壁を貫通して設けられた穿孔に参照番号8が付されている以外はコア4についても同様に当てはまる。
【0021】
コア4は、鞘2の直径よりも小さな直径を有する。鞘2とコア4の間に筒状の空間9ができるように、鞘2とコア4は同心に配置されている。
【0022】
エンドキャップ5および6は、それぞれ型成形された熱可塑性樹脂製であり、この場合は鞘2およびコア4とまったく同じように、射出成形されたポリプロピレンである。
【0023】
鞘2の底縁33(図8)に沿った部分はキャップ5の母材の中に埋め込まれ、コア4についても同様であり、その結果、空間9はカートリッジ1の底端部でキャップ5によって閉じられ、より詳細にはキャップ5が鞘2とコア4の間を横切って延びる部分によって閉じられる。
【0024】
キャップ6に対面する鞘2の頂縁およびコア4の底縁についても同様であり、したがってチャンバ9の頂端部が塞がれる。
【0025】
図2により詳しく見られるように、濾過パック3の断面は、全長にわたって、多数の腕をもつ星形である。
【0026】
このパックは、平面濾過媒体をジグザグに折り畳み、その長手方向の両端面をつなぐことによりそれ自身の上に閉じることにより形成されている。この場合は、パック3は127個のひだを有している。
【0027】
鞘2およびコア4とまったく同様に、パック3の底縁に沿った部分はエンドキャップ5の母材に埋め込まれ、パック3の頂縁に沿った部分はキャップ6の母材に埋め込まれている。
【0028】
したがって、空間9は、濾過パック3によってこのパックの両側にそれぞれ位置する2つのチャンバに分割され、一方のチャンバは穿孔7のみを介して外部と連通し、他方のチャンバは穿孔8のみを介して外部と連通する。
【0029】
したがって、穿孔7から空間9に入った液体は、濾過パック3を通過した後でないとその空間から出ることができない。もちろん、穿孔8から入って穿孔7から出る液体についても同様である。
【0030】
パック3が構成されている濾過媒体10の配列が、図3を参照しながら以下に述べられる。
【0031】
媒体10は、この場合はポリフッ化ビニリデン(PVDF)製の濾過膜11と、膜11の各縁13に近接して配置された、この場合はポリプロピレン製の熱可塑性リボン12と、リボン12を備えた膜11の両側にそれぞれ、この場合は不織ポリプロピレン製のレイヤ14Aおよび14Bとを有し、レイヤ14Aおよび14Bは、濾過媒体10がある程度の裂開耐性を有するように膜11を支持する。
【0032】
各リボン12は、縁13と並ぶその縁からその幅の約70%を加熱されながら、膜11にあてがわれ、それによって膜11に溶着される。図示されている例では、膜11の縁とリボン12の縁は面一であり、リボン12は縁13から7.5ないし8mmにわたって膜11に溶着され、リボン12の幅の残った部分すなわち約3mmではリボン12は膜11に単に接触している。
【0033】
レイヤ14Aおよび14Bは、膜11およびリボン12によって形成される組立体と単に接触している。
【0034】
レイヤ14Aおよびレイヤ14Bの幅は、膜13の幅よりわずかに小さく、そのためレイヤ14Aおよび14Bのそれぞれの縁15Aおよび15Bは、縁13よりも後退している。この場合、縁13とレイヤ14Aおよび14Bとの距離は約1mmであり、さらには0mmと2mmの間である。
【0035】
膜11に対してリボン12と同じ側に位置するレイヤ14Aは、濾過アセンブリ3中では外側すなわち鞘2側に位置し、レイヤ14Bは、内側すなわちコア4側に位置する。
【0036】
図示されている例では、濾過されるべき液体が鞘2中の穿孔7から空間9に入り、コア4中の穿孔8から出るようになされている。
【0037】
したがって、レイヤ14Aは濾過媒体10の上流側にあり、レイヤ14Bは下流側にある。
【0038】
図3では図面を簡単にするために、膜11、リボン12、ならびにレイヤ14Aおよび14Bは同じ厚さに描かれているが、膜11はリボン12より厚く、レイヤ14Aおよびレイヤ15Bより薄いことが指摘されるべきである。この場合は、膜11は100〜150μmの厚さを有し、リボン12は約50μmの厚さを有し、レイヤ14Aおよびレイヤ15Bは約200μmの厚さを有する。
【0039】
底部エンドキャップ5が、図4および5を参照して以下に説明される。
【0040】
上記のごとく、このキャップは熱可塑性樹脂、より正確には射出成形されたポリプロピレンから作られている。
【0041】
さらに詳しくは、キャップ5は2重射出成形法で型成形されている。キャップ5は、第1のグレードのポリプロピレンから作られ第1の射出成形工程で成形される第1のディスク16と、別のグレードのポリプロピレンで作られ、第2の射出工程で第1のディスク16上に型成形される第2のディスク17とを有する。
【0042】
図5により詳細に見られるように、第1のディスク16は、平らな円板18を有する。図面の紙面側に見られる面上、すなわちカートリッジ1の内側に向くことになる面上に、板18から突き出た外周リム19が延在する。この場合は、このリムは一定の間隔で途切られ、リム19のセグメントが互いに切込み20によって分離された段を形成する。この場合、より正確には、角度の観点から見て一定の間隔で配置されたそれぞれ頂点の角度が約30°の円弧を描く4つの切込みが存在する。
【0043】
第1のディスク16は、図面の下部側の面上、すなわちカートリッジ1の外側に位置するように設計された面上に、第1のディスク16の直径の2/3にほぼ等しい直径の環状リブ21を有する。
【0044】
本発明が明瞭に理解されるように、図5には第1のディスク16が単独で示されているが、実際には、ディスク16がそのまま鋳型から取り外されるのではないことが指摘されるべきである。すなわち、ディスク16を得るのに用いられた2つの半割り鋳型が分離されると、ディスク16を下側に位置する半割り鋳型中に残しながら、上側に位置していた半割り鋳型を別の上部半割り鋳型に交換する。ディスク16と第2の上部鋳型との間に存在する空洞が第2のディスク17の形を有し、次にこの空洞に第2のグレードのポリプロピレンを射出することによってディスク17が成形される。
【0045】
切込み20は、ディスク17をディスク16の上に型成形する第2の射出成形を可能にするガス抜きとして働くことが指摘されるべきである。
【0046】
図6に見られるように、頂部エンドキャップ6は、中央オリフィス22を有すること、および外側の面に位置するリブが異なる形状を有することを除けば、底部エンドキャップ5と同じである。キャップ5のそれに類似しているキャップ6の構成要素については、本明細書ではダッシュが付けられた同じ参照番号を採用する。
【0047】
リブ21の中央部側は直接肩で縁取られており、リブ21’の中央部側は、カートリッジ1を組み立てた後に接続部品を固定するのに有用な溝23で縁取られている。ディスク16’は、オリフィス22の周りにリム19Aを有する。リム19および19’の縁は、ディスク17および17’の面と面一であるが、リム19Aの縁はディスク17’に覆われている。
【0048】
次に、フィルタカートリッジ1がどのように組み立てられるかについて説明する。
【0049】
底部エンドキャップ5および頂部エンドキャップ6が、それぞれ支持体25および支持体26の中に配置される(図2)。その目的で、支持体25および26はそれぞれ、組立て前のカートリッジ1の内部に向かうようになされた側の面に、図7の支持体25とキャップ5について見られるような、キャップと同じ輪郭をもつ空洞を有する。
【0050】
次いで、加熱ブロック27および28が、それぞれ支持体25および26の前に配置され、それにより、カートリッジの内側に向くようになされたキャップ5および6の表面が、ブロック25および26をそれ自体の回りに図2の矢印30によって示されるように回転させながら加熱される。
【0051】
加熱は、前記表面が、例えば250℃から270℃の間に設定された所定の閾値温度に達するまで続けられる。
【0052】
次に、加熱ブロック27および28が取り除かれ、鞘2、パック3、およびコア4が互いに滑り込まされることによって形成された仮カートリッジ31が、支持体25および26と芯を合わせて配置され、次いで、支持体25および26を軸方向に押しやることによって両者が互いに寄せられ、それにより、エンドキャップ5および6が仮カートリッジ31に押し付けられる。
【0053】
加えられる圧接力は、底部エンドキャップ5については図8に、頂部エンドキャップ6については図9に示すように、鞘2、パック3、およびコア4それぞれの縁に沿った部分をキャップ5および6のそれぞれ加熱により軟化した母材に、所定の深さより深く挿入する効果を有する。
【0054】
図8および9において明らかに分かるように、仮カートリッジ31の様々な構成部品のそれぞれの部分がこのように埋め込まれるのは、より詳しくはディスク17およびディスク17’の中である。
【0055】
エンドキャップ5および6それぞれの第1のディスク16および16’は、メルトフローレートが比較的低く、ASTM D1238またはISO 1133の試験方法によれば230℃、2.16kgにおいて典型的には5.2g/10分であり、例えば4.2〜6.5g/10分、さらには15g/10分未満のレートであるポリプロピレンから作られる。
【0056】
この場合、それはExxon CorporationによりEscorene PP 1052の名称(これらの名称はそれらの名義人に属する)で販売されているホモポリマーのポリプロピレンである。
【0057】
他方、キャップ5および6それぞれの第2のディスク17および17’の素材であるポリプロピレンは、上記の試験方法によれば典型的には70g/10分、例えば65〜75g/10分、さらには15〜100g/10分と比較的高いメルトフローレートを有する。
【0058】
この場合、それはDow PlasticsからInspire C711−70RNAの名称(これらの名称はそれらの名義人に属する)で販売されている共重合体のポリプロピレンである。
【0059】
高温でのメルトフローレートが、上記のごとくディスク17および17’用の熱可塑性樹脂より大幅に低いディスク16および16’用の熱可塑性樹脂はまた、より良い耐衝撃性を有し、これが、全部がディスク17および17’に用いられている熱可塑性樹脂で作られていれば相対的に壊れやすくなるキャップ5および6にとって有利に働く。
【0060】
図2に矢印30で示されている支持体25および26の軸周りの回転運動が、加熱によって軟化したキャップ5および6の母材の重力流れ現象を防止し、あるいは少なくとも弱める。
【0061】
第2のディスク17および17’の高温時の比較的高い流動性によって、仮カートリッジ31の様々な構成部品の縁に沿った部分がうまく挿し込まれるようになる。
【0062】
この点から、鞘2はその両端に、壁の他の部分より薄いネック32を有する。
【0063】
図8に見られるように、ネック32は鞘2の縁33と肩34の間に位置し、肩はリム19または19’の縁35と実質的に同じ幅を有する。肩34は、鞘2全体の外側表面とそれ自体は肩34から縁33へ延びる円錐台形の面36との間に延び、縁33は面36から鞘2全体の内側表面へ続いている内面まで延びる。
【0064】
面36の傾斜の向きは、ネック32の厚みが肩34から縁33までの間で減少するような向きになっている。
【0065】
リム19および19’は、ネック32と相補的な断面形を有し、その内側の側面37は円錐台形で面36と相似形であり、その縁35は肩34と相似形であり、その外側の側面は円筒形で鞘2全体の外側表面と実質的に同じ直径を有する。
【0066】
コア4もまたその両端に、図面に参照番号38を付されたネックを有する。この場合、このネックは、図8に見られるようにコア4の縁40からコア4の外側の側面(チャンバ9に面している面)まで延びる円錐台形の面39による簡単な形をしており、面39の傾斜は面36および37のそれと実質的に同じである。
【0067】
図示されている例では、第2のディスク17および17’は、典型的には2.6mmの厚さをもつ。第1のディスク16および16’の板18および18’と仮カートリッジ31の様々な構成部品の縁との間には、典型的には鞘2については0.6mm、濾過パック3については0.7mm、コア4については1.2mmの距離が設けられている。
【0068】
より具体的に平面濾過媒体10に注目すると、上記の数値を考慮すれば濾過媒体10がディスク17または17’に挿し込まれている深さは平均で約1.9mmである。
【0069】
ディスク17または17’の高温時の高流動性により比較的容易に挿入がおこなえるので、エンドキャップに挿入時に、場合によっては比較的大きくなる応力集中が濾過媒体10内のエンドキャップ近傍に発生するのが避けられるという利点をもたらす。この応力集中が起こると、濾過媒体10の両エンドキャップに隣接した2つの領域がそれぞれ弱くなり、特に、カートリッジ1が作動しているときに濾過媒体10の両側に存在する圧力差により生じる剪断作用により破壊されやすくなる。
【0070】
なぜ濾過媒体10がエンドキャップに比較的容易に挿入できると応力集中が防止できるか、この理由に関して特に指摘されるべきことは、この挿入を行うためにキャップ5と6を近づけ組み上げるのに、キャップ5および6がすべてディスク16および16’と同じポリプロピレン製である場合の力と比較して、極めて小さな力を加えれば十分であり、キャップ5と6の間に掛かるこの組上げ力が小さいために、濾過パック3を湾曲させずに済むことである。この湾曲が起こると、媒体10の両縁近傍の2つの領域それぞれがエンドキャップに傾いてはめ込まれることになる。一方で、キャップ5と6の間に掛かる組上げ力が小さいために、挿入時に媒体10の両縁近傍の領域それぞれが座屈メカニズムによって折り曲げられずに済む。
【0071】
したがって、キャップ5およびキャップ6に埋め込まれている媒体10の両縁近傍の2つの領域それぞれが、全体にわたって軸方向に向いたままになる。その結果、レイヤ14Aおよびレイヤ14Bの両方がキャップ5およびキャップ6の母材に効果的にはめ込まれ、そのことが耐剪断性を強める追加の要因となる。
【0072】
というのは、この場合には、カートリッジが作動しているとき濾過媒体10の両側に生じる圧力差による力をできるだけ吸収するように働くレイヤ14Aおよび14Bが、濾過されるべき液体が通常の方向に、すなわち液体が鞘2の穿孔7からコア4の穿孔8へ循環する方向に流れるとき(このときは最大圧力位置がレイヤ14Aの側になる)も、反対方向に循環する場合(このときは最大圧力位置がレイヤ14Bの側になる)も、補強の役目を十分に果たすからである。
【0073】
エンドキャップ5および6のそれぞれについて、ディスク16と17の間およびディスク16’と17’の間でうまく協働が行われる。特に、境界面の結合は、2種類の熱可塑性樹脂、より正確には、この場合は2種類のポリプロピレンのケースであり、さらに2重射出成形による方法で製造されるために、優れた品質になる。
【0074】
ここに示されていない一変形形態では、コア4は、エンドキャップ5および6に固定されていないコアで置き換えられる。その両縁に隣接するどの部分もエンドキャップに埋め込まれていない。
【0075】
ここに示されていない別の変形形態では、リム19が4つより多い切込みまたは途切れ箇所を有し、あるいは途切れがなくしたがって連続している。
【0076】
ここに示されていない別の変形形態では、エンドキャップ5および6の一方のみが、16および17、または16’および17’のような2個のディスクを有し、カートリッジのさまざまな構成部品にポリプロピレン以外の熱可塑性樹脂が用いられ、エンドキャップのディスクが2重射出成形法以外によって作られ互いに一体化され、濾過パックが、ジグザグに折り畳むこと以外の方法により、例えば螺旋に巻くことにより全長が円環の輪郭内に納まるような形にされ、かつ/または形状および寸法の様々な変更が行われる。
【0077】
より一般には、本発明はここに説明され図示された例だけに限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面濾過媒体(10)によって形成される濾過パック(3)と、
前記濾過パック(3)を取り巻く穿孔壁を有する筒状の鞘(2)と、
それぞれに前記濾過パック(3)の両縁のうちの一方に沿った部分が埋め込まれ、それぞれに前記鞘(2)の両縁(33)のうちの一方に沿った部分が埋め込まれている熱可塑性の2個のエンドキャップ(5、6)と
を備えるフィルタカートリッジであって、
少なくとも1つの前記エンドキャップ(5、6)が、互いに重なり合っているそれぞれ熱可塑性樹脂製の第1のディスク(16、16’)および第2のディスク(17、17’)を有し、
前記第2のディスク(17、17’)中に濾過パック(3)の前記部分および鞘(2)の前記部分が埋め込まれ、
前記第1のディスク(16、16’)が、鞘(2)の前記部分を取り巻く周縁リム(19、19’)を有し、
前記鞘(2)が、第1のディスク(16、16’)の前記リム(19、19’)の縁に対向する肩(34)を有する
ことを特徴とするフィルタカートリッジ。
【請求項2】
鞘(2)の前記部分が、鞘(2)の残りの壁よりも薄いネック(32)の一部を形成することを特徴とする請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記ネック(32)の厚さが、鞘(2)の縁(33)から増加することを特徴とする請求項2に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記ネック(32)が、鞘(2)の縁(33)と前記肩(34)の間に位置することを特徴とする請求項2または3に記載のカートリッジ。
【請求項5】
鞘(2)の縁(33)が、鞘(2)全体の内面へ続いている内面から、縁(33)から前記肩(34)に延在する円錐台形の面(36)まで延び、肩(34)は前記円錐台形の面(36)から鞘(2)全体の外面まで延びることを特徴とする請求項4に記載のカートリッジ。
【請求項6】
第1のディスク(16、16’)の前記リム(19、19’)が、板(18、18’)から突き出して延びることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記リム(19、19’)の厚さが、その縁(35)から増加することを特徴とする請求項6に記載のカートリッジ。
【請求項8】
前記リム(19、19’)の縁が、鞘(2)全体の外面と実質的に同じ直径をもつ外側の側面から、このリムから前記板(18、18’)へ延在する円錐台形の面まで延びることを特徴とする請求項7に記載のカートリッジ。
【請求項9】
鞘(2)の前記肩(34)と前記リム(19、19’)の縁(35)が実質的に同じ幅を有する請求項1から8のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項10】
前記リム(19、19’)が、円錐台形の面(37)を介して、第2のディスク(17、17’)中に埋め込まれた鞘(2)の前記部分に向かい合うことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項11】
第2のディスク(17、17’)中に埋め込まれた鞘(2)の前記部分が、円錐形の面(36)を介して前記リム(19、19’)に向かい合うことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項12】
第2のディスク(17、17’)に埋め込まれた鞘(2)の前記部分と前記リム(19、19’)が、それぞれの円錐台形の面(36、37)を介して向かい合い、前記それぞれの円錐台形の面(36、37)が相似形であることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項13】
前記リム(19、19’)が途切れ(20)を有することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項14】
前記途切れ(20)が一定の間隔で配置され、それぞれ頂点の角度が同じ弧にわたって延びることを特徴とする請求項13に記載のカートリッジ。
【請求項15】
前記リム(19、19’)が、頂点の角度が約30°の弧にわたってそれぞれ延びる4つの前記途切れ(20)を有することを特徴とする請求項14に記載のカートリッジ。
【請求項16】
前記第1のディスク(16、16’)が、前記第2のディスク(17、17’)とは反対側に、環状リブ(21、21’)を有することを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項17】
重なり合った第1のディスク(16’)と第2のディスク(17’)を有する少なくとも1つの前記エンドキャップ(6)が中央オリフィス(22)を有することを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項18】
中央オリフィス(22)を有するキャップ(6)の第1のディスク(16’)が、前記中央オリフィス(22)の周りにリム(19A)を有することを特徴とする請求項17に記載のカートリッジ。
【請求項19】
前記濾過パック(3)によって取り巻かれ、穿孔壁を有し、少なくとも1つの縁(40)に沿って、一部分が前記第2のディスク(17、17’)に埋め込まれている筒状コア(4)をさらに備えることを特徴とする請求項1から18いずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項20】
コア(4)の前記部分それぞれが、コア(4)の他の部分よりも薄いネック(38)の一部を形成することを特徴とする請求項19に記載のカートリッジ。
【請求項21】
コア(4)の縁(40)が、コア(2)全体の内面へ続いている内面から、縁(40)からコア(4)全体の外面へ延在する円錐台形の面(39)まで延びることを特徴とする請求項20に記載のカートリッジ。
【請求項22】
ASTM D1238またはISO 1133の試験方法による230℃、2.16kgにおける第1のディスク(16、16’)の材料のメルトフローレートが、第2のディスク(17、17’)の材料のメルトフローレートより低いことを特徴とする請求項1から21のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項23】
第1のディスク(16、16’)の材料の前記メルトフローレートが、15g/10分以下であることを特徴とする請求項22に記載のカートリッジ。
【請求項24】
第1のディスク(16、16’)の前記メルトフローレートが、4.2〜6.5g/10分であることを特徴とする請求項23に記載のカートリッジ。
【請求項25】
第2のディスク(17、17’)の前記メルトフローレートが、25〜100g/10分であることを特徴とする請求項22から24のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項26】
第2のディスク(17、17’)の前記メルトフローレートが、65〜75g/10分であることを特徴とする請求項25に記載のカートリッジ。
【請求項27】
第1のディスク(16、16’)と第2のディスク(17、17’)とを備える前記エンドキャップ(5、6)が、2重射出成形法で成形されることを特徴とする請求項1から26のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項28】
前記第2のディスク(17、17’)が前記第1のディスク(16、16’)上に型成形されることを特徴とする請求項27に記載のカートリッジ。
【請求項29】
前記第1のディスク(16、16’)および前記第2のディスク(17、17’)が、ポリプロピレン製であることを特徴とする請求項1から28のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項30】
前記第1のディスク(16、16’)がホモポリマーのポリプロピレン製であり、前記第2のディスク(17、17’)が共重合体のポリプロピレン製であることを特徴とする請求項29に記載のカートリッジ。
【請求項31】
前記濾過パック(3)を形成する前記平面濾過媒体(10)が、濾過膜(11)と、前記濾過膜を間に挟んでいる2枚の支持レイヤ(14A,14B)とを備えることを特徴とする請求項1から30のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項32】
前記濾過媒体(10)がまた、前記膜(11)の両縁(13)の近くに配置された熱可塑性リボン(12)を備えることを特徴とする請求項31に記載のカートリッジ。
【請求項33】
前記膜がポリフッ化ビニリデン(PVDF)製であることを特徴とする請求項31または32に記載のカートリッジ。
【請求項34】
前記支持レイヤが熱可塑性樹脂製であることを特徴とする請求項31から33のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項35】
前記レイヤ(14A、14B)および前記膜(11)の両縁(13)の近くに配置された熱可塑性リボン(12)がポリプロピレン製であることを特徴とする請求項31から34のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項36】
前記各エンドキャップ(5、6)が前記第1のディスク(16、16’)および前記第2のディスク(17、17’)を有し、同様に鞘(2)および濾過パック(3)と協動することを特徴とする請求項31から35のいずれか一項に記載のカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−591(P2011−591A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−220982(P2010−220982)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【分割の表示】特願2004−518629(P2004−518629)の分割
【原出願日】平成15年6月30日(2003.6.30)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】