説明

フィルタユニット及びそれを用いた投写型表示装置

【課題】フィルタの交換を検知し、フィルタに関する情報をリセットする投写型表示装置を提供する。
【解決手段】モータの駆動を制御したりフィルタの装着状態や巻取り状態を管理する制御部2と、制御部2の命令によって装着されたフィルタを巻き上げ等するフィルタ巻取り駆動部5と、フィルタ巻取り駆動部により巻き上げ等されるフィルタ6と、フィルタの巻き上げ等に連動してパルスを発生させ制御部2に通知するフォトインタラプタ7と、フィルタ6の有無を検知し制御部2に通知するフィルタ装着検出部4とを備え、フィルタ装着検出部4にてフィルタ6の装着を検出した場合には、一定期間フィルタ6を巻き戻し、フォトインタラプタ7でフィルタの巻き戻しを検出することができなかった場合には、フィルタに関する情報をリセットし、フィルタの巻き戻しを検出した場合には巻き戻した分のフィルタを巻き上げる投写型表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタユニットに係り、特に着脱式巻取りフィルタを用いたものに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ホームシアターから商用までさまざまなシーンでプロジェクタ等の投写型表示装置が使用されている。投写型表示装置にて映像を投写する際に、光学部品は大量の熱を発生するため、強い冷却効果が得られる冷却ファンを使用する必要がある。
【0003】
冷却ファンを回転させ、空気の流れができると空気中のダストが装置内に侵入してくるので、吸気口にフィルタを設ける必要がある。しかし、このフィルタにダストが蓄積すると冷却効果が落ちてしまうため、多くの投写型表示装置にて着脱式巻取りフィルタが用いられている。
【0004】
着脱式巻取りフィルタでは、フィルタにダストがたまったときにフィルタを巻き上げることで常に冷却効果を一定に保っている。但し、巻き上げることのできるフィルタの長さは決まっているため、フィルタを全て巻き上げた後は交換する必要がある。
【0005】
フィルタを交換した後は、投写型表示装置に保存しているフィルタに関する情報をリセットする必要がある。具体的には、巻き上げ量、予測交換時間、エラーの情報などである。これらの情報をリセットすることで正確にフィルタの使用可能時間を予測することができる。
【0006】
従来、フィルタを交換した後、ユーザーがフィルタに関する情報をリセットするための専用のボタンを押したり(例えば、非特許文献1参照)、投写型表示装置のガイダンス表示からリセットを選択したり(例えば、非特許文献2参照)してフィルタに関する情報をリセットしていた。しかし、ユーザーがフィルタ交換後に情報をリセットすることを忘れてしまうと、正確なフィルタの使用可能時間を予測することができなくなる。
【0007】
上記の対策として特許文献1には、フィルタに取り付けられたICタグからシリアル番号を一定間隔で読み取り、シリアル番号に変化があれば自動的にフィルタのリセットを行なうシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−145053号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「National ルームエアコン取扱説明書 CS-RCGシリーズ」、パナソニック株式会社、2005年、P19
【非特許文献2】「PT-DZ6710/DZ6700/DW6300S/D6000S取扱説明書」、パナソニック株式会社、2009年、P30
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記に記載のシステムでは、ICタグから読み出したシリアル番号に変化があれば、フィルタが交換されたと判断し、フィルタに関する情報のリセットを行なう。しかし、交換後のフィルタが新品でない場合にもフィルタに関する情報をリセットしてしまう。
【0011】
また、ロール状のフィルタとは形状が異なる。
【0012】
そこで、本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、着脱式巻取りフィルタの交換時におけるフィルタに関する情報のリセットを的確に行なうフィルタ装置及びそれを用いた投写型表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明のフィルタユニットは、フィルタと、前記フィルタが装着されたことを検出するフィルタ装着検出部と、装着されたフィルタを巻き上げ又は巻き戻しするフィルタ巻取り駆動部とを備え、前記フィルタ装着検出部によってフィルタの装着が検出された場合、外部の制御部が、前記フィルタ巻取り駆動部によりフィルタを所定量巻き戻して前記フィルタが新品か否かを判断することを特徴とする。
【0014】
また、本発明のフィルタユニットは、フィルタと、前記フィルタが装着されたことを検出するフィルタ装着検出部と、装着されたフィルタを巻き上げ又は巻き戻しするフィルタ巻取り駆動部と、前記駆動部によりフィルタの巻き戻しを検出するセンサとを備え、前記フィルタ装着検出部によってフィルタの装着が検出された場合、外部の制御部が、前記フィルタ巻取り駆動部によりフィルタを所定量巻き戻し前記センサから一定期間フィルタの巻き戻しを検知できなかった場合に、前記フィルタが新品であると判断することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の投写型表示装置は、フィルタと、前記フィルタがフィルタユニットに装着されたことを検出するフィルタ装着検出部と、装着されたフィルタを巻き上げ又は巻き戻しするフィルタ巻取り駆動部とを備えたフィルタユニットと、前記フィルタ装着検出部によってフィルタの装着が検出された場合、前記フィルタ巻取り駆動部によりフィルタを所定量巻き戻して前記フィルタが新品か否かを判断する制御部とを備え、前記制御部は、前記フィルタが新品であると判断した場合、前記フィルタに関する情報をリセットすることを特徴とする。
【0016】
さらに、制御部は、フィルタを所定量巻き戻したときにフィルタの巻き戻しを検出するセンサから一定期間巻き戻しを検知できなかった場合にフィルタが新品であると判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のフィルタユニットによると、フィルタの交換を確実に検知し、自動でフィルタに関する情報のリセットを行なうので、ユーザーがフィルタ情報をリセットする手間を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態の構成を示すブロック図
【図2】フィルタの基本構成を示す図
【図3】フィルタユニットの構成を示す図
【図4】フィルタの装着状況を検知する動作の一例を示すフロー図
【図5】フィルタの情報のリセットを行なうかどうかを判断する動作の一例を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態である投写型表示装置の制御系の構成を示すブロック図、図2はフィルタユニットの一部である着脱可能な巻取り式フィルタの基本構成図、図3は投写型表示装置に取り付けられているフィルタユニットの構成図、図4はフィルタの装着状況を検知する動作の一例を示すフロー図、図5はフィルタ情報のリセットを行なうかどうかを判定する動作の一例を示すフロー図である。
【0021】
まず、図2,図3を用いて投写型表示装置とフィルタユニットの構成について説明する。図2,図3は、図示しないプロジェクタに取り付けられているフィルタユニットの構成を示す。
【0022】
図2,図3において、当該フィルタユニットは、一定速度の駆動力を与える巻取りモータ20、モータ20の駆動力を伝達する駆動軸19、駆動軸19から動力を伝達するモータ動力伝達ギア18、巻取り方向を切り替える正転,逆転切り替えギア17、正転の際に動力を伝達する正転用動力伝達ギア22,23、伝達された動力により回転する正転用ギア24、正転用ギア24の回転に連動してフィルタ9を巻き上げるフィルタ巻取り軸11、逆転の際に動力を伝達する逆転用動力伝達ギア15,16、伝達された動力により回転する逆転用ギア14、逆転用ギア14の回転に連動してフィルタを巻き戻すフィルタ供給軸10、フィルタの巻き上げ又は巻き戻し経路に位置しフィルタに押圧してフィルタの巻き上げ又は巻き戻しと共に回転する回転パルス検知用回転軸8、回転パルス検知用回転軸8に連動して回転する回転検知用ギア13、回転検知用ギア13の山谷を検知しパルスを発生させるフォトセンサ21、フィルタユニットの装着を判断するためのフィルタ装着検知用突起12、フィルタ装着検知用突起12の有無を判断するフィルタ装着検知センサ25を備えている。
【0023】
次に、フィルタユニットへのフィルタの装着方法について説明する。
【0024】
図2に示すフィルタは着脱式になっており、図3に示すフィルタユニットへ取り付けるとフィルタ供給軸10と逆転用ギア14,フィルタ巻取り軸11と正転用ギア24,回転パルス検知用回転軸8と回転検知用ギア13が連結される。連結されるとモータ20の回転に連動してフィルタ9の巻き上げ又は巻き戻しが行なわれるようになる。また、フィルタを装着するとフィルタ装着検知用突起12がフィルタ装着検知センサ25を動作させる。フィルタ装着検知センサ25の状況によってフィルタが取り付けられているか外されているかを図示しないマイコンで判断する。
【0025】
次に、このフィルタの動作について説明する。
【0026】
図示しないマイコンによりフィルタ巻取り用モータ20を駆動させるとその動力が駆動軸19を通じてモータ動力伝達ギア18に伝わる。モータ動力伝達ギア18の動力は正転,逆転切り替えギア17を通じて次のギアに伝わる。図示しないマイコンにて正転,逆転切り替えギア17の制御を行なうことで正転,逆転切り替えギア17の位置が変わり、フィルタの巻取り方向が変化する。正転方向の巻き上げの場合には、正転,逆転切り替えギア17の動力が正転用動力伝達ギア22,23,正転用ギア24と伝わり、フィルタ巻取り軸11が回転する。フィルタ巻取り軸11が回転するとフィルタ供給軸10からフィルタ9が供給される。同様に逆転方向の巻き戻しの場合には、正転,逆転切り替えギア17の動力が逆転用動力伝達ギア16,15,逆転用ギア14と伝わり、フィルタ供給軸10が回転する。フィルタ供給軸10が回転するとフィルタ巻取り軸11からフィルタ9が供給される。フィルタ9が巻取られるとそれに連動して回転パルス検知用回転軸8,回転検知用ギア13が回転する。フォトセンサ21では回転検知用ギア13の回転をHigh, Lowのパルス信号として検知し、検知したパルス信号を図示しないマイコンにて取得する。
【0027】
次に、図1を参照して投写型表示装置の制御系の構成について詳細に説明する。同図において、投写型表示装置の制御系100は、モータの駆動を制御したりフィルタユニット1からの情報を処理したりする制御部2、制御部2からの命令によって装着されたフィルタを巻き上げ又は巻き戻しするフィルタ巻取り駆動部5、フィルタ巻取り駆動部により巻き上げ又は巻き戻されるフィルタ6、フィルタの巻き上げ又は巻き戻しに連動してパルスを発生させ制御部2に通知するフォトインタラプタ7、フィルタ6の有り無しを検知し制御部2に通知するフィルタ装着検出部4などを備えて構成されている。
【0028】
フィルタ装着検出部4にてフィルタ無しから有りに変化したことを検知すると制御部2にてリセットを行なうかどうかの判断処理を行なう。判定処理では、フィルタ巻取り駆動部にてフィルタ6を一定の回転速度で巻き戻す。フォトインタラプタ7にてフィルタ6の巻き戻し量をパルス信号に変換し、それを制御部2に伝える。制御部2ではパルス信号のHigh, Lowの数をカウントする。一定期間内にパルス信号を検知できなくなった場合には新品のフィルタが装着されたと判断し、制御部2にてフィルタに関する情報をリセットする。リセットした旨を図示しない表示部にてユーザーに通知してもよい。一定期間内に一定数のパルスを検知した場合には新品でないフィルタが装着されたと判断し、巻き戻したのと同じ量のフィルタの巻き上げを行なう。
【0029】
次に図4を参照してリセット判定処理を行なうかどうかを判断するフローの一例について説明する。
【0030】
制御部2にてフィルタ6の装着状態管理処理が始まると、所定のサイクル時間でフィルタ6が装着されているかどうかフィルタ装着検出部4を通じて判断する(S26)。制御部2ではフィルタ装着検出部4の情報を複数回取得し、それらが全て一致していたときに初めて正しい情報と判断することが好ましい。フィルタが取り付けられていなければフィルタ取外フラグをONにする(S27)。制御部2ではこのフラグを用いて警告のためのLEDを点灯させたり、図示しない表示部にメッセージを表示させたりすることも有効である。フィルタが取り付けられているときはフィルタ取外フラグの値を参照し(S28)、フラグがONであればつまりフィルタが取り外された後取り付けられた場合には、リセットを行なうかどうかの判定処理(S29)を行なう。
【0031】
次に図5を参照してリセットを自動で行なうためのフローの一例について説明する。
【0032】
まずフィルタが取り付けられてから一定時間経過しているかどうかを確認する(S30)。一定時間経過していればフィルタの巻き戻しを開始する(S31)。すぐに巻き戻しを行なわないのは、フィルタを交換した人の手や服が巻き込まれるのを防止するためである。巻き戻しを開始したら定期的にフォトインタラプタ7からの情報を確認し、フォトインタラプタ7からパルス信号が送られて来ていれば回転中と判断し、カウントアップする(S34)。フォトインタラプタ7から一定期間パルスが送られて来なければ、回転が停止しているので始端を検知したと判断する(S33)。但し、故障している場合にも回転が停止するので、故障と始端検知の判断をつける必要がある。巻き戻しを開始してから、フォトインタラプタ7から1度もパルスが送られて来なければ故障と判断する。始端を検知した場合は、巻き戻しを停止し(S35)、フィルタに関する情報をリセットする(S36)。その後、フィルタ取外フラグをOFFする(S40)。S32の処理にて一定期間巻き戻しを実施しても始端を検知できない場合には、正方向の巻き上げを開始する(S37)。巻き上げ量と巻き戻し量が一致したときに(S38)巻き上げを停止する(S39)。その後フィルタ取外フラグをOFFする(S40)。故障と始端検知の判断の誤りを防止するためにリセットを実行する前に図示しない表示部にてユーザーに対してリセットするか否かを確認することも効果的である。
【0033】
以上、本発明をその好適な実施形態例に基づいて説明したが、本発明のフィルタユニット、投写型表示装置は、上記実施形態例の構成にのみ限定されるものではなく、上記実施形態例の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明にかかるフィルタユニットは、フィルタの交換を自動で検知しフィルタに関する情報をリセットできるので、投写型表示装置におけるユーザーのメンテナンス性を向上したフィルタユニットとして有効である。
【符号の説明】
【0035】
1 フィルタユニット
2 制御部
4 フィルタ装着検出部
5 フィルタ巻取り駆動部
6 フィルタ
7 フォトインタラプタ
8 回転パルス検知用回転軸
9 フィルタ
10 フィルタ供給軸
11 フィルタ巻取り軸
12 フィルタ装着検知用突起
13 回転検知用ギア
14 逆転用ギア
15,16 逆転用動力伝達ギア
17 正転,逆転切り替えギア
18 モータ動力伝達ギア
19 駆動軸
20 モータ
21 フォトセンサ
22,23 正転用動力伝達ギア
24 正転用ギア
25 フィルタ装着検知センサ
100 制御系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタと、前記フィルタが装着されたことを検出するフィルタ装着検出部と、装着されたフィルタを巻き上げ又は巻き戻しするフィルタ巻取り駆動部とを備え、
前記フィルタ装着検出部によってフィルタの装着が検出された場合、外部の制御部が、前記フィルタ巻取り駆動部によりフィルタを所定量巻き戻して前記フィルタが新品か否かを判断することを特徴とするフィルタユニット。
【請求項2】
フィルタと、前記フィルタが装着されたことを検出するフィルタ装着検出部と、装着されたフィルタを巻き上げ又は巻き戻しするフィルタ巻取り駆動部と、前記駆動部によるフィルタの巻き戻しを検出するセンサとを備え、
前記フィルタ装着検出部によってフィルタの装着が検出された場合、外部の制御部が、前記フィルタ巻取り駆動部によりフィルタを所定量巻き戻し前記センサから一定期間フィルタの巻き戻しを検知できなかった場合に、前記フィルタが新品であると判断することを特徴とするフィルタユニット。
【請求項3】
フィルタと、前記フィルタがフィルタユニットに装着されたことを検出するフィルタ装着検出部と、装着されたフィルタを巻き上げ又は巻き戻しするフィルタ巻取り駆動部とを備えたフィルタユニットと、前記フィルタ装着検出部によってフィルタの装着が検出された場合、前記フィルタ巻取り駆動部によりフィルタを所定量巻き戻して前記フィルタが新品か否かを判断する制御部とを備え、前記制御部は、前記フィルタが新品であると判断した場合、前記フィルタに関する情報をリセットすることを特徴とする投写型表示装置。
【請求項4】
制御部は、フィルタを所定量巻き戻したときにフィルタの巻き戻しを検出するセンサから一定期間巻き戻しを検知できなかった場合にフィルタが新品であると判断する請求項2記載の投写型表示装置。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−5407(P2011−5407A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150625(P2009−150625)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】