説明

フィルターの製造方法及び液体噴射ヘッド並びに液体噴射装置

【課題】コストを低減したフィルターの製造方法及び液体噴射ヘッド並びに液体噴射装置を提供することを目的とする。
【解決手段】パンチ及び被打ち込み部材60を用い、被打ち込み部材60の上に載置された被加工板51に複数の貫通孔52を形成するフィルターの製造方法であって、被打ち込み部材60は、容器58と容器58内に保持されるダイラタント流体59とを具備し、被加工板51の加工部をダイラタント流体59上に配置し、所定の速度でパンチにより被加工板51を打ち抜き、打ち抜き片をダイラタント流体59に保持させることで、被加工板51に複数の貫通孔を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工板に複数の貫通孔が設けられたフィルターの製造方法及びこれを具備する液体噴射ヘッド並びに液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置は種々な液体を噴射するもので、中でも広く使用されているものに、インクジェット式記録装置がある。インクジェット式記録装置は、複数のノズル開口から液体であるインク滴を吐出するインク噴射ヘッドを備えている。このインク噴射ヘッドによりインク滴を記録媒体である記録紙等の表面に着弾させて画像や文字を印刷するようになっている。
【0003】
そして、インク噴射ヘッド内に設けられたインクの供給流路には、インク内に混入した異物、即ち、何らかの原因で供給流路内に残留している合成樹脂等の微細片や気泡を取り除くための平板状のフィルターが配置されている。このフィルターとして、薄板にパンチ加工によって複数の貫通孔を設けたものが提案されている(特許文献1等参照)。特許文献1では、下受けダイとパンチとの間に軟質部材を設け、打ち抜き片を軟質部材の内部に押し込むことにより、パンチを受ける凹部を形成する必要がなくなると共にパンチとの位置あわせが不要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−272631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、パンチの先端のパンチ部を軟質部材内に押し込むとパンチ部に負荷がかかり、長期間に亘って使用するとパンチ部の湾曲や破断などの破損が生じ易いという問題があった。したがって、このようなパンチを長期間に亘って使用すると、所望の貫通孔を形成することができなくなり、歩留まりが低下してしまうという問題がある。
【0006】
また、パンチ部は、微細な貫通孔を形成するためには高精度な寸法が要求されるものの、湾曲や破断といった破損によって寿命が短くなり、頻繁な交換が必要になってしまうという問題がある。これらの問題により、フィルターのコストが高くなってしまう。
【0007】
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッド等の液体噴射ヘッドに搭載されるフィルターに限定されず、他の装置に搭載されるフィルターにおいても同様に存在する。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑み、コストを低減したフィルターの製造方法及び液体噴射ヘッド並びに液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の態様は、パンチ及び被打ち込み部材を用い、被打ち込み部材の上に載置された被加工板に複数の貫通孔を形成するフィルターの製造方法であって、前記被打ち込み部材は、容器と当該容器内に保持されるダイラタント流体とを具備し、前記被加工板の加工部を前記ダイラタント流体上に配置し、所定の速度で前記パンチにより前記被加工板を打ち抜き、打ち抜き片を前記ダイラタント流体に保持させることで、前記被加工板に複数の貫通孔を形成することを特徴とするフィルターの製造方法にある。
【0010】
かかる態様では、被打ち込み部材とダイラタント流体を具備するものとし、被加工板の加工部をダイラタント流体上に配置し、所定の速度でパンチを打ち込むことにより、打ち込みの際にダイラタント流体が固体のような状態となり、被加工板を打ち抜くことができる。この方法によれば、被打ち込み部材に肉寄せが発生することがなく、パンチ部の湾曲や破断などの破損が抑制され、フィルターの歩留まりが向上すると共にパンチの寿命が長くなる。また、被打ち込み部材のダイラタント流体は、打ち抜き片を大量に保持することができ且つ打ち込み後に形状が元に戻るため、長期に亘って使用することができる。したがって、フィルターを低コストで製造することができる。
【0011】
また、前記被加工板の端部の少なくとも一部は、前記容器の壁面に固定されているのが好ましい。これにより、被加工板に精度の高い貫通孔を形成することができる。
【0012】
本発明の他の態様は、上記の製造方法により製造したフィルターを具備することを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0013】
かかる態様では、液体の吐出不良を防止して、信頼性を向上した液体噴射ヘッドを低コストで実現できる。
【0014】
さらに本発明の他の態様は、このような液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
【0015】
かかる態様では、液体の吐出不良を防止して、信頼性を向上した液体噴射装置を低コストで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態1に係る記録装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図。
【図3】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの断面図。
【図4】本発明の実施形態1に係るフィルターの平面図。
【図5】本発明の実施形態1に係る金型装置の断面図。
【図6】本発明の実施形態1に係るパンチの斜視図。
【図7】本発明の実施形態1に係るフィルターの製造方法を示す断面図及び斜視図。
【図8】本発明の実施形態1に係るフィルターの製造方法を示す断面図。
【図9】本発明の実施形態1に係るフィルターの製造方法を示す断面図。
【図10】本発明の実施形態1に係るパンチの他の例を示す斜視図及び平面図。
【図11】本発明の実施形態1に係る金型装置の他の例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
ここで本発明のフィルターの製造方法により製造したフィルターを具備する液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置について説明する。なお、図1は、本発明の液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置の概略斜視図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の液体噴射装置であるインクジェット式記録装置1は、例えば、ブラック(B)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)等の複数の異なる色のインクが貯留される貯留室を有するインクカートリッジ(液体貯留手段)2が装着されたインクジェット式記録ヘッド10(以下、記録ヘッド)を具備する。記録ヘッド10はキャリッジ3に搭載されており、記録ヘッド10が搭載されたキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、キャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙装置等により給紙された紙等の被記録媒体Sがプラテン8上を搬送されるようになっている。
【0019】
次に、本実施形態に係る記録ヘッド10について説明する。なお、図2は、実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図であり、図3はその断面図である。
【0020】
図2及び図3に示すように、インクジェット式記録ヘッド10を構成するヘッドホルダーの一例であるカートリッジケース11は、上述したインクカートリッジ(図示なし)が装着されるカートリッジ装着部12を有する。例えば、本実施形態では、このカートリッジ装着部12に、ブラックインク及び複数色のカラーインクが充填された各インクカートリッジがそれぞれ装着されるようになっている。また、カートリッジケース11の底面には、一端が各カートリッジ装着部12に開口し、他端が後述するヘッドケース側に開口する複数のインク連通路(第1の液体流路)13がそれぞれ形成された管状の流路形成部14が突設されている(図3参照)。
【0021】
カートリッジケース11の上面側、すなわち、カートリッジ装着部12のインク連通路13の開口部分には、インクカートリッジに挿入される複数のインク供給針15が、インク内の気泡や異物を除去するためのフィルター16を介して固定されている。
【0022】
カートリッジケース11の下面側には、シール部材17及び回路基板18を挟んで、ヘッド部材19が固定されている。本実施形態に係るヘッド部材19は、複数の圧電素子を有する圧電素子ユニット20を収容するための中空箱体状の部材であるヘッドケース21と、このヘッドケース21のカートリッジケース11とは反対側の端面に固定されるヘッド本体22とで構成されている。ヘッド本体22は、複数のノズル23が穿設されたノズルプレート24と、ノズル23に連通する圧力発生室25を含む流路が形成された流路形成基板26と、流路形成基板26のノズルプレート24とは反対面側に配される振動板27とで構成されている。これらノズルプレート24及び振動板27と流路形成基板26とはそれぞれ接着剤によって接合されている。またヘッドケース21には、一端側が圧力発生室25に連通すると共に他端側がカートリッジケース11のインク連通路13に連通するインク供給路28が設けられている。インク連通路13とインク供給路28との接続部分は、シール部材17によって密封されている。
【0023】
このようにカートリッジケース11の下面側に、シール部材17、回路基板18、ヘッド部材19を構成するヘッドケース21及びヘッド本体22の順で配し、これら各部材の外側にヘッド本体22のノズル23を露出する窓部29を有する枠体30をはめ込み、ネジ31によってカートリッジケース11に固定することで、インクジェット式記録ヘッド10が形成される。
【0024】
ここで、フィルター16について詳細に説明する。なお、図4は、フィルターの平面図である。
【0025】
図4に示すように、フィルター16は、ステンレス(SUS)等の金属材料からなる平坦な被加工板51(例えば、厚さ15μm)に多数の微細な貫通孔52(例えば、内径が15μmの穴が1cmに数万穴)を穿設して円形に切断したものであり、直径は例えば、8〜9mm程度とされている。貫通孔52の内径は、ノズル23よりも小さく設定されている。なお、フィルター16の貫通孔52としては、正方形や六角形の穴とすることも可能であり、この場合、対角線の長さがノズル23よりも小さく設定されていればよい。異物がフィルター16を通過してもノズル23から排出されるからである。また、本実施形態では、貫通孔52は、隣接する貫通孔52のピッチが、例えば、4μm程度に設定されている。
【0026】
また、平坦な被加工板51には格子状に延びる凹凸線53が形成され、カール力(多数の微細な貫通孔52が穿設されたことに基づく曲がり方向の残留応力)が除去されて平坦状態が維持されている。凹凸線53を設けたことにより、極薄のフィルター16であってもカールが除去されて平坦状態が維持され、取り扱いが容易になって組み立て時の生産性を向上させることが可能になる。凹凸線53は、山の高さが、例えば、20μm〜50μm程度に設定され、隣接する凹凸線53同士のピッチが、例えば、60μm程度に設定されている。
【0027】
ここで、本実施形態のフィルター16の製造方法について図5〜7を用いて説明する。
まず、フィルターの製造に用いる金型装置54について説明する。図5に示すように、金型装置54は、平盤状の基台55、角型のパンチ57、被打ち込み部材60を有する。そして、角型パンチ57は、平盤状の基台55の上部にストリッパー56を介して設けられている。
【0028】
被打ち込み部材60は、容器58と容器58内に保持されるダイラタント流体59とを具備する。具体的には、被打ち込み部材60は、容器58と容器58を上限まで満たすダイラタント流体59からなり、後述する被加工板51とダイラタント流体59が接触するようになっている。すなわち、被打ち込み部材60の被打ち込み部はダイラタント流体59からなる。
【0029】
ここで、ダイラタント流体59とは、見掛け粘度が剪断速度の増加とともに増加する流体である。ダイラタント流体59としては、比較的大きい粒子と液体との混合物が挙げられ、具体的には、片栗粉と水の混合物、砂と水との混合物、ポリマーと水等の極性溶媒との混合物、無機粒子と水又は有機溶媒との混合物などが挙げられる。このとき、被打ち込み部材60に用いるダイラタント流体59として、被加工板51を劣化させることのないものを選択する。本実施形態では、ダイラタント流体59として、片栗粉と水の混合物を用いた。
【0030】
また、容器58は、ダイラタント流体59を保持するものであり、上面が開放された水密性を有する筺体からなる。上面が開放されていることにより、後述する打ち込みの際に被加工板51の片面をダイラタント流体59と接触させることができる。なお、容器58の形状は特に限定されず、円筒形や多角筒形などであってもよく、被加工板51の形状に合わせて適宜選択する。また、容器58の内部には、必要に応じて、ダイラタント流体59を攪拌するスクリューを設けて、ダイラタント流体の粒子の分布状態を均一化できるようにしてもよい。
【0031】
容器58の高さ、すなわち、ダイラタント流体59の高さは、少なくとも被加工板51の厚さの2倍以上であることが好ましい。例えば、本実施形態では、被加工板51の厚さが15μmであるのに対し、容器58の高さを0.1mm〜0.2mm程度としている。容器58の高さをこのような高さとすることで、ダイラタント流体59の内部に打ち抜き片62を確実に留めることができると共に、被加工板51は完全に貫通させることができるので、貫通不良などによる貫通孔52の周縁部のバリ発生を抑制できる。
【0032】
このような被打ち込み部材60を用いることで、基台55側にパンチ57のパンチ部57aを受けるための凹部を設けることなく、貫通孔52を打ち抜くことが可能になる。また、パンチ57のパンチ部57aと凹部との位置合わせが不要になり、被加工板51に貫通孔52を容易に形成することができる。
【0033】
また、図6に示すように、パンチ57には、矩形体状の本体の端面に複数本(本実施形態では5本)の角型のパンチ部57aが列設されている。パンチ57のパンチ部57aの一辺は、例えば、13μmに形成され、フィルター16の貫通孔52の対角線の長さが約15μmとなるようになっている。なお、パンチ57のパンチ部57aの形状は円形であってもよい。複数のパンチ部57aが列設されたパンチ57を使用することにより、一度の打ち抜きで一列に並んだ複数(本実施形態では5個)の貫通孔52を形成することができる。
【0034】
このような金型装置54を用いたフィルター16の製造方法について詳細に説明する。
図7に示すように、被加工板51の端部を、被打ち込み部材60の容器58の壁面に固定する。具体的には、被加工板51の端部を折り曲げて、被打ち込み部材60の容器58の側面にピン等により固定する。本実施形態では、被加工板51の端部すべてを被打ち込み部材60の容器58に固定したが、被加工板51の対向する二辺のみを固定してもよい。これにより、被加工板51の片面と、被打ち込み部材60のダイラタント流体59が接触した状態となる。
【0035】
そして、図8(a)に示すように、ストリッパー56を基台55側に移動させて、所定の速度でパンチ57のパンチ部57aを被加工板51に打ち込む。このとき、パンチ57の打ち込み力により、ダイラタント流体59の片栗粉が膨張して固体のような状態となり、パンチ57のパンチ部57aが被加工板51を貫通して貫通孔52が形成される。なお、パンチ57のパンチ部57aの先端は、被加工板51を貫通して、被打ち込み部材60のダイラタント流体59に挿入される。これにより、打ち抜き片62がダイラタント流体59の内部に押し込まれる。
【0036】
次に、ストリッパー56を上昇させ打ち抜き片62が被打ちこみ部材60のダイラタント流体59に保持された状態で、図8(b)に示すように、被打ち込み部材60と共に被加工板51を1ピッチ分移動させて、再び被加工板51にパンチ57のパンチ部57aを貫通させて貫通孔52を形成する。この動作を繰り返すことで、多数の貫通孔52を被加工板51に形成する。
【0037】
打ち抜き後は、ダイラタント流体59は流動性を有する状態となる。そして、打ち抜き片62は、ダイラタント流体59の下方へと徐々に沈み込む。
【0038】
本発明は、被打ち込み部材60の被打ち込み部がダイラタント流体59からなることにより、肉寄せが発生することがなく、パンチ部57aの湾曲や破断などの破損が抑制され、フィルター16の歩留まりが向上すると共にパンチの寿命が長くなる。
【0039】
また、被打ち込み部材60のダイラタント流体59は、打ち抜き片62を大量に保持することができ且つ打ち込み後に形状が元に戻るため、長期に亘って使用することができる。したがって、フィルター16を低コストで製造することができる。
【0040】
また、被打ち込み部材60と共に被加工板51を1ピッチ分移動させてパンチ57による打ち込みが繰り返されるため、かえりが発生してもストリッパー56の端面につぶされる等の横かえりが発生する虞が全くない。ちなみに、下側にパンチ57のパンチ部57aが挿入される凹部を備えたダイを使用した場合、被加工板51を移動させると、凹部以外のダイの上面とストリッパー56の端面との間でかえりが潰されて貫通孔52が変形する虞がある。上述した金型装置54を用いることで、貫通孔52が変形する虞が生じない。
【0041】
なお、フィルター16は、一枚の被加工板51に複数個一体的に形成された後、1枚のフィルター16のサイズに打ち抜く(切り抜く)ことで形成する。具体的には、図9に示すように、貫通孔52が多数形成された被加工板51は小判抜き型65により抜かれてフィルター16の形状に打ち抜かれる。小判抜き型65の上型65aと下型65bの対向面にはそれぞれ凹凸線53を形成するための凹凸部66が設けられ、フィルター16の形状に打ち抜かれると同時に、表面に凹凸線53が形成される。なお、フィルター16の周囲に溶着代を残した状態で凹凸線53を形成するようにしてもよい。凹凸部66が設けられた小判抜き型65を用いることにより小判抜き時に加圧矯正によるカール取りが同時に行える。
【0042】
パンチは、上述したパンチ57に限定されるものではない。ここで、パンチの他の例を図10に示す。図10に示すように、パンチ81は、立方体状の本体の端面に複数本(図示例では16本)のパンチ部81aが設けられたものであってもよい(剣山型)。図10に示したパンチ81を使用することにより、一度の打ち抜きで複数(図示例では16個)の貫通孔52を形成することができる。また、パンチは、1つのパンチ部のみからなるものであってもよく、複数のパンチ部がランダムに設けられたものであってもよい。
【0043】
また、被打ち込み部材60は、上述したものに限定されるものではない。例えば、図11に示すように、被打ち込み部材60Aの容器58Aは、上面に蓋部を有する形状であってもよい。このとき、被打ち込み部材60Aは、ダイラタント流体59が容器58Aの蓋部の上面まで満たされている。なお、蓋部は、容器58Aの壁面の全辺もしくは全周に設けられている必要はなく、容器58Aが筺体の場合は、対向する壁面の上部に設けられていればよい。被打ち込み部材60Aの容器58Aが蓋部を有する場合は、図11に示すように、被加工板51Aの端部を折り曲げることなく、被打ち込み部材60Aの容器58Aに固定することができる。具体的には、被加工板51Aを容器58Aの蓋部に架かるように載置し、ピン等により固定する。その後は、実施形態1と同様の方法により、フィルター16の製造を行う。上述した実施形態1と同様に、被打ち込み部材60Aには肉寄せが発生することがなく、パンチ部57aの湾曲や破断などの破損が抑制され、フィルター16の歩留まりが向上すると共にパンチの寿命が長くなる。また、被打ち込み部材60Aのダイラタント流体59は、打ち抜き片62を大量に保持することができ且つ打ち込み後に形状が元に戻るため、長期に亘って使用することができる。したがって、フィルター16を低コストで製造することができる。
【0044】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、カートリッジケース11とインク供給針15との間に設けられたフィルター16について説明したが、本発明のフィルターは、インクジェット式記録ヘッド10に代表される液体噴射ヘッドに用いられたフィルターであれば、その設置場所等については特に限定されるものではない。もちろん、フィルター16は、インクジェット式記録ヘッド10以外に、インクジェット式記録装置1に代表される液体噴射装置に搭載されるものであってもよい。液体噴射装置に搭載されるフィルターとしては、例えば、インク等の液体を貯留する貯留タンクなどの貯留手段が、キャリッジ3に搭載されず、装置本体4に固定されるものにおいて、貯留手段とインクジェット式記録ヘッド10との間に設けられたフィルターなどであってもよい。
【0045】
もちろん、上述したインクジェット式記録装置1では、インクジェット式記録ヘッド10がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッド10が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0046】
また、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも適用することができる。
【0047】
また、本発明は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに搭載されるフィルターの製造方法に限られず、他の装置に搭載されるフィルターの製造方法にも適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 インクジェット式記録装置、 16 フィルター、 17 シール部材、 18 回路基板、 19 ヘッド部材、 20 圧電素子ユニット、 21 ヘッドケース、 22 ヘッド本体、 23 ノズル、 24 ノズルプレート、 25 圧力発生室、 26 流路形成基板、 27 振動板、 28 インク供給路、 29 窓部、 30 枠体、 31 ネジ、 51 被加工板、 52 貫通孔、 53 凹凸線、 54 金型装置、 55 基台、 56 ストリッパー、 57 パンチ、 58 容器、 59 ダイラタント流体、 60 被打ち込み部材、 62 打ち抜き片、 65 小判抜き型、 66 凹凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチ及び被打ち込み部材を用い、被打ち込み部材の上に載置された被加工板に複数の貫通孔を形成するフィルターの製造方法であって、
前記被打ち込み部材は、容器と当該容器内に保持されるダイラタント流体とを具備し、
前記被加工板の加工部を前記ダイラタント流体上に配置し、所定の速度で前記パンチにより前記被加工板を打ち抜き、打ち抜き片を前記ダイラタント流体に保持させることで、前記被加工板に複数の貫通孔を形成することを特徴とするフィルターの製造方法。
【請求項2】
前記被加工板の端部の少なくとも一部は、前記容器の壁面に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルターの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法によって製造されたフィルターを有することを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項4】
請求項3に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−194418(P2010−194418A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40049(P2009−40049)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】