説明

フィルタープレス装置およびフィルタープレート

【課題】フィルタープレス装置において、並設されるフィルタープレート同士の水密性を常に高く確保できるようにする。
【解決手段】フィルタープレス装置において複数枚並べて配設されるフィルタープレート10であって、フィルタープレス装置に配設された際に隣り合うフィルタープレート側を向くことになる表面11cに、ろ室を形成するための凹部11dと、その周りに配置された環状のパッキン収容溝11gとが形成され、パッキン収容溝11gに環状のパッキン12が嵌着されてなるフィルタープレート10において、プレート本体11の内部に、一端側がパッキン収容溝11gの底部に開口し、他端側が該溝11gとは別の部分においてプレート本体11の外面に開口した圧力流体導入路11k、11j、11bを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形物と液体との混合物を脱水処理するフィルタープレス装置に関するものである。
【0002】
また本発明は、そのようなフィルタープレス装置に用いられるフィルタープレートに関するものである。
【背景技術】
【0003】
例えば水処理施設で発生する汚泥や、食品製造工程で生じる残渣などを脱水処理する装置の一つとして、従来、特許文献1に示されるフィルタープレス装置が知られている。このフィルタープレス装置は、互いに密着・離間可能に並べて配設された複数枚のフィルタープレートを用い、密着させたフィルタープレート同士の間に形成されたろ室に処理対象物を圧送してろ過するように構成されたものである。
【0004】
この種のフィルタープレス装置に用いられるフィルタープレートは、基本的に、表面にろ室を形成するための凹部およびそれに連通するろ液溝が形成され、その上にろ布が被着されてなるものである。フィルタープレス装置においてはこのような構造のフィルタープレートが、上記表面同士が向き合う状態に並べて配設され、それらのフィルタープレートが互いに密着状態にされると、隣り合うフィルタープレート同士の間に上記凹部によってろ室が形成される。この状態下でろ室に処理対象物が圧送されると、処理対象物がろ布によりろ過され、ろ液が上記ろ液溝を通してプレート外に排出される。そしてその後、各フィルタープレートを離間させることにより、ろ室に残った脱水済みの固形物が排出される。
【0005】
ここで、フィルタープレート間に形成されたろ室に処理対象物を圧送する際には、その漏れを招かないように、隣り合うフィルタープレート同士が水密(液密)状態を保って密着している必要がある。従来、このフィルタープレートの水密性を高めるための構造として、特許文献2に示されたものが公知となっている。この特許文献2に示された構造は、フィルタープレートのろ室形成用凹部が形成された表面に、該凹部を取り囲む状態に環状のパッキン収容溝が形成され、この溝に環状のパッキンが収容されてなるものである。このようなフィルタープレートを使用する場合は、パッキンをその潰し代(しろ)内で潰し得る比較的小さな力でプレート同士を押圧するだけで、良好な水密性が確保されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3802015号公報
【特許文献2】特許第2688472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に示された構造においては、使用を重ねるうちに環状パッキンのシール効果が劣化して、フィルタープレート同士の水密性が低下するという問題が認められる。すなわち、この種のフィルタープレートにおいては、互いに密着される際に環状パッキンが押し潰されるので、使用を重ねるうちにパッキンが徐々に変形し、そのためにパッキンのシール効果が劣化するのである。この環状パッキンの変形は、使用に伴う劣化だけに限らず、温度変化によって生じることもある。さらに、ろ布やフィルタープレート本体の変形に起因して、パッキンのシール効果が劣化することもある。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、並設されるフィルタープレート同士の水密性を常に高く確保できるフィルタープレス装置を提供することを目的とする。
【0009】
また本発明は、そのようなフィルタープレス装置を実現できるフィルタープレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるフィルタープレートは、
前述したように、フィルタープレス装置において複数枚並べて配設されるフィルタープレートであって、
フィルタープレス装置に配設された際に隣り合うフィルタープレート側を向くことになる表面に、ろ室を形成するための凹部と、その周りに配置された環状のパッキン収容溝とが形成され、
前記パッキン収容溝に環状のパッキンが嵌着されてなるフィルタープレートにおいて、
プレート本体内部に、一端側が前記パッキン収容溝の底部に開口し、他端側が該溝とは別の部分においてプレート本体外面に開口した圧力流体導入路が形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
なお、上記構成を有する本発明のフィルタープレートにおいては、圧力流体導入路の他端側が、フィルタープレス装置においてフィルタープレートが複数枚並べて配設されたとき、隣り合うフィルタープレート同士で互いに整合するようになる位置に開口していることが望ましい。
【0012】
一方、本発明によるフィルタープレス装置は、
複数枚並べて配設されるフィルタープレートとして、本発明によるフィルタープレートが設けられ、
それらのフィルタープレートの各圧力流体導入路に前記他端側から圧力流体を供給する手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
なお上述した環状パッキンは、隣り合うフィルタープレートの一方だけに設けられていても、フィルタープレート間の水密性向上に寄与するものである。したがって本発明のフィルタープレートにおいては、フィルタープレス装置に配設された際に隣り合うフィルタープレート側を向くことになる2つの表面のうち、片方だけにパッキン収容溝が形成されて、そこに環状パッキンが収容されていてもよい。また、本発明のフィルタープレス装置においては、本発明によるフィルタープレート2枚の間に、本発明外のフィルタープレート、つまり環状パッキンは備えないフィルタープレートが配設されていても構わない。したがってそのような状態も、「複数枚並べて配設されるフィルタープレートとして、本発明によるフィルタープレートが設けられる」という概念に含むものとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のフィルタープレートによれば、プレート本体内部に、一端側がパッキン収容溝の底部に開口し、他端側が該溝とは別の部分においてプレート本体外面に開口した圧力流体導入路が形成されたことにより、この圧力流体導入路の他端側からその内部に加圧空気等の圧力流体を導入することが可能になる。このように導入された圧力流体は、パッキン収容溝の底部に吐出して、該溝に嵌着されている環状のパッキンを外側に、つまり隣り合うフィルタープレート側に押圧するようになる。そこで、このパッキン自体が変形していたり、あるいはろ布やフィルタープレート本体が変形したりしていても、パッキンによるシール効果が良好に保たれるので、並設されるフィルタープレート同士の水密性が常に高く確保されるようになる。
【0015】
本発明によるフィルタープレス装置においては、上述した本発明によるフィルタープレートが設けられた上で、それらのフィルタープレートの各圧力流体導入路にその他端側から圧力流体を供給する手段が設けられているので、圧力流体導入路に圧力流体を導入して、並設されるフィルタープレート同士の水密性を常に高く確保可能となる。
【0016】
なお、フィルタープレートに設けられる圧力流体導入路の他端側は、各プレート毎にそれぞれ耐圧ゴムホース等の配管に接続され、その配管を介してコンプレッサ等の圧力流体供給源に接続されてもよい。ただしその場合は、1枚のフィルタープレート毎に配管が接続されるので、配管構造が複雑になりやすい。
【0017】
一方、本発明のフィルタープレートにおいて特に、圧力流体導入路の他端側が、フィルタープレス装置においてフィルタープレートが複数枚並べて配設されたとき、隣り合うフィルタープレート同士で互いに整合するようになる位置に開口している場合は、複数のフィルタープレートが密着した状態になると、それらの内部に共通の圧力流体導入路が形成されるようになる。そこでこの場合は、最低限1つのフィルタープレートの圧力流体導入路に圧力流体を供給するだけで、全てのフィルタープレートに圧力流体を導入可能となるので、フィルタープレート外の配管構造を極めて簡潔なものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態によるフィルタープレス装置の概略構成を示す一部破断側面図
【図2】本発明の一実施形態によるフィルタープレートを示す一部破断正面図
【図3】上記フィルタープレートの平断面図
【図4】図1のフィルタープレス装置の要部を示す正面図
【図5】図4のA−A線に沿った部分の断面図
【図6】本発明の別の実施形態によるフィルタープレートを示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態によるフィルタープレス装置1の概略構成を示す一部破断側面図であり、また図2および図3は各々、そこに用いられているフィルタープレートを示す一部破断正面図、平断面図である。
【0020】
図1に示されるようにこのフィルタープレス装置1は、厚さ方向(図中の左右方向)に互いに1枚置きに並設された複数枚のフィルタープレート10および20と、これらのフィルタープレート10および20を図1中の左右方向に移動自在に保持するフィルタープレート保持機構30と、フィルタープレート10および20を上記方向に移動させて互いに密着・離間させる締付機構40と、原液供給管32と、加圧した空気を貯えるエアチャンバを備えたコンプレッサ33と、このコンプレッサ33からフィルタープレート10および20に加圧空気を供給する空気配管35と、この空気配管35に介設された例えば電磁弁からなる空気供給制御弁36とを有している。なおこの図1においては、複数枚のフィルタープレート10および20のうち一部のものを中央部で破断して示してある。
【0021】
上記締付機構40は、例えばフィルタープレート10および20と同様に図1中の左右方向に移動自在に保持された移動台41と、この移動台41に連結されたシリンダ42と、このシリンダ42を往復移動させる油圧装置43等から構成されている。
【0022】
ここで、フィルタープレート10および20について図2および図3を参照して詳しく説明する。これらの図は、フィルタープレート10および20のうち、本発明によるフィルタープレート10を示している。なお図3は、このフィルタープレート10の中央部の断面形状を示すものである。ここに示される通りフィルタープレート10は、中央部に原液通過孔11aが設けられると共に、一つの隅部に圧力流体導入路11bが形成されたプレート本体11と、ゴム等の弾性体から形成されてプレート本体11の左右各表面11cの上に取り付けられた環状パッキン12および13と、これらの環状パッキン12および13の上からプレート本体表面11cの上にそれぞれ被着、固定されたろ布14と、上記原液通過孔11a内において互いに嵌合して2枚のろ布14を固定するろ布固定具15、16とから構成されている。
【0023】
上記プレート本体11は例えばポリプロピレン等の合成樹脂から形成されたものであり、その中央部には、後述するようにしてろ室を構成する凹部11dが形成されている。またこの凹部11dの底面に当たる位置においてプレート本体表面11cにはろ液溝11eが形成され、さらにプレート本体11には、上記ろ液溝11eに連通して本体端面に開口するろ液排出通路11fが形成されている。また2つのプレート本体表面11cには、上記凹部11dの外側の位置において環状のパッキン収容溝11g(後述する図4、5も参照)が形成されており、前述した環状パッキン12は各々このパッキン収容溝11gの中に嵌着されている。
【0024】
図4は、フィルタープレート10の圧力流体導入路11bが形成されている部分周辺の正面形状を、ろ布14を省いて示すものであり、また図5は、図4のA−A線に沿った部分のフィルタープレート10、20の断面形状を示すものである。以下、これらの図4および図5に示されている部分について説明する。圧力流体導入路11bはプレート本体11を貫通する状態に形成されている。そしてこの圧力流体導入路11bの周りの位置において、プレート本体11の2つの表面11cにはそれぞれ環状のパッキン収容溝11hが形成されており、前述した環状パッキン13はこれらのパッキン収容溝11hの中に各々嵌着されている。
【0025】
圧力流体導入路11bのプレート厚さ方向中央位置近辺には、細い圧力流体導入路11jが連通している。この圧力流体導入路11jの先端部分は2つの圧力流体導入路11kに分岐している。これら2つの圧力流体導入路11kはそれぞれ、環状のパッキン収容溝11gの底部に開口している。ここで、1つのパッキン収容溝11gに関わる構成について考えれば、圧力流体導入路11k、11jおよび11bによって1系統の圧力流体導入路が構成され、その一端側(圧力流体導入路11kの先端側)がパッキン収容溝11gの底部に開口し、他端側(圧力流体導入路11bの両端側)がフィルタープレート10の外面に開口していることになる。
【0026】
また本実施形態では特に、圧力流体導入路11jの途中部分から2つの圧力流体導入路11mが分岐し、それらの圧力流体導入路11mの先端側はパッキン収容溝11hの底部に開口している。
【0027】
一方フィルタープレート20は、プレート本体11とほぼ同様の外形形状を有するプレート本体21と、ろ布14と同様のろ布24と、ろ布固定具15、16と同様のろ布固定具(図示せず)とから構成されており、環状パッキン12および13に相当するパッキンは備えていない。なお図5における「21c」、「21d」および「21e」はそれぞれ、プレート本体11の表面11c、凹部11dおよびろ液溝11eとそれぞれ対応する表面、凹部およびろ液溝である。また図1に示すようにこのフィルタープレート20にも、フィルタープレート10の原液通過孔11aと同様の原液通過孔21aが形成されている。またろ布14および24の、圧力流体導入路11bと整合する部分は穿孔されている。
【0028】
このフィルタープレート20を構成するプレート本体21においては、上に述べた圧力流体導入路11b、11jおよび11kのうち、圧力流体導入路11bに相当する圧力流体導入路21bだけが設けられている。すなわちこの圧力流体導入路21bは、プレート本体21を貫通するものとされ、フィルタープレス装置1においてフィルタープレート10とフィルタープレート20とが密着された際には、フィルタープレート10の圧力流体導入路11bと整合する位置に形成されている。図1に示した空気配管35は、最も外側に配置されたフィルタープレート20の圧力流体導入路21bに連通されている。
【0029】
次に図1に戻って、このフィルタープレス装置1の作用について説明する。固形物と液体との混合物である原液(処理対象物)を本装置により脱水処理する際には、互いに離間していたフィルタープレート10、20が、締付機構40を作動させることにより、同図に示すように互いに密着する状態とされる。
【0030】
この状態になると、フィルタープレート10、20の各凹部11d、21d(図5参照)によってろ室50が形成される。これらのろ室50は、フィルタープレート10の原液通過孔11aおよびフィルタープレート20の原液通過孔21aを通して違いに連通することになる。なお、このように複数枚並設されるフィルタープレート10、20のうち、図中の最左端および最右端のものとしてはフィルタープレート20が用いられている。そして最左端のフィルタープレート20の原液通過孔21aには、原液供給管32が連通されている。他方、最右端のフィルタープレート20においては、原液通過孔21aおよび圧力流体導入路21bは設けられていない。
【0031】
上記の状態とされた後、原液供給管32から原液がろ室50内に向けて圧送される。この原液は、上記原液通過孔21aおよび11aを通過して全部のろ室50内に送り込まれ、フィルタープレート10のろ布14、フィルタープレート20のろ布24によりろ過される。フィルタープレート10のろ布14を通過した液体(ろ液)は、ろ液溝11eにより捕捉、集液され、ろ液排出通路11fからフィルタープレート10外に排出される。同様に、フィルタープレート20のろ布24を通過したろ液は、ろ液溝21eにより捕捉、集液され、上記ろ液排出通路11fと同様のろ液排出通路(図示せず)からフィルタープレート20外に排出される。こうしてフィルタープレート10、20外に排出されたろ液は、図示外のろ液集液機構によって集められ、所定の槽などに送られる。
【0032】
ろ室50内には、以上のように脱水されて含水率が低下した固形物成分(脱水ケーキ)が残ることになる。その後締付機構40を作動させることにより、フィルタープレート10、20が互いに離間する状態とされる。それによりフィルタープレート10、20の間から脱水ケーキが落下し、その脱水ケーキは図示外の脱水ケーキ回収機構によって回収される。
【0033】
なお本発明のフィルタープレス装置においても従来装置と同様、脱水ケーキを掻き取るスクレーパや、ろ布14および24の目詰まりを解消する洗浄装置などが適宜設けられてもよい。また本発明のフィルタープレス装置に適用されるろ液集液機構や、脱水ケーキ回収機構や、原液を圧送する手段に特に制限は無く、従来公知のものを用いればよい。
【0034】
また、ろ室50内に原液が供給された後、互いに密着しているフィルタープレート10、20をさらにプレート間の間隔を狭める方向に押圧する圧搾機構を付加して、フィルタープレート同士の密着効果および脱水効果を向上させるようにしてもよい。そのような圧搾機構としては、例えば並設されたフィルタープレート10、20の端部や中間部に配設されて、プレート並び方向に膨張するダイヤフラムを備えた機構などが挙げられる。さらに、このフィルタープレス装置1に供給する原液に、必要に応じて凝集剤を添加するようにしてもよい。
【0035】
次に、フィルタープレート10、20同士の間の水密性を常に高く確保する点について説明する。このフィルタープレス装置1においては、上述のように原液がろ室50内に向けて圧送される前に、それまで閉じられていた制御弁36が開状態にされる。それにより、コンプレッサ33のエアチャンバに貯留されていた加圧空気が空気配管35を通して、図1中で最左端のフィルタープレート20の圧力流体導入路21bに送り込まれる。
【0036】
フィルタープレート10の圧力流体導入路11bと、フィルタープレート20の圧力流体導入路21bとは互いに整合する位置に設けられているので、図1の状態下では、これらの圧力流体導入路11bおよび21bが連続した1本の通路(ヘッダー管)を構成している。上述のように送り込まれた加圧空気はこの通路を流れ、フィルタープレート10においてはそこから分岐した圧力流体導入路11jおよび11kまで流入する。そこでこの加圧空気は、圧力流体導入路11kの先端からパッキン収容溝11gに流出して、そこに収容されている環状パッキン12を外側に押圧する。なお、環状パッキン12はパッキン収容溝11gに嵌着されているから、上記加圧空気は本質的にプレート本体11外に漏れ出ることがなく、環状パッキン12を強く押圧可能である。
【0037】
このように押圧された環状パッキン12は、ろ布14および24を介して隣のフィルタープレート20に当接するので、ろ室50を形成する凹部11dおよび21dの周りにおいて、フィルタープレート10とフィルタープレート20との間の水密性が高く確保される。そこで、その後に原液がろ室50に圧送され、あるいは場合によってはそれに加えてさらに前述の圧搾機構が作動された際にも、原液がフィルタープレート10、20の外に漏れ出ることが確実に防止される。
【0038】
そして、このように環状パッキン12を押圧して水密性を上げるのであれば、この環状パッキン12が使用を重ねたため、あるいは温度変化のために変形していても、さらにはプレート本体11やろ布14の方が変形していても、それに拘わらず常に上記水密性を高く確保可能となる。
【0039】
また本実施形態においては特に、上記圧力流体導入路11jから分岐した圧力流体導入路11mがパッキン収容溝11hの底部に開口しているので、そこに収容されている環状パッキン13も環状パッキン12と同様に加圧空気によって押圧される。このように押圧された環状パッキン13は、ろ布14および24を介して隣のフィルタープレート20に当接するので、圧力流体導入路11bと圧力流体導入路21bとの間の気密性も高く確保される。そこで、供給された加圧空気が圧力流体導入路11bと圧力流体導入路21bとの間から漏れ出てしまうことが防止される。
【0040】
次に図6を参照して、本発明の別の実施形態によるフィルタープレート110について説明する。なおこの図6において、図1〜5中の要素と同等の要素には同番号を付してあり、それらについての説明は特に必要のない限り省略する。フィルタープレス装置においてこのフィルタープレート110は、本発明外のフィルタープレート120と1枚ずつ交互に配して用いられるものである。
【0041】
このフィルタープレート110は図5に示したフィルタープレート10と比べると、プレート本体11において圧力流体導入路11bが設けられず、圧力流体導入路11jがそのままプレート本体11の端面に開口している点が異なるものである。この圧力流体導入路11jには一例として雌ねじが形成されており、そこに耐圧ゴムホース135が螺合して接続される。この耐圧ゴムホース135は、例えば図1に示した空気配管35等を介してコンプレッサ33に接続され、それにより該耐圧ゴムホース135から圧力流体導入路11jに加圧空気が供給される。そこで本実施形態においても、パッキン収容溝11gに収容されている環状パッキン12が加圧空気によって外側に押圧され、図5の構造におけるとの同様に、フィルタープレート110とフィルタープレート120との間の水密性が常に高く確保される。
【0042】
本実施形態のフィルタープレート110は、1枚のプレート毎に上記耐圧ゴムホース135等の配管に接続されるので、図5に示したフィルタープレート10と比べると、複雑な配管構造を必要とするものである。その反面このフィルタープレート110は、フィルタープレート120との間で加圧空気が漏れることに対処する必要はないので、図5に示した環状パッキン13等を設ける必要がないという利点が有る。
【0043】
なお、仮に環状パッキン12が設けられない場合は、フィルタープレート110、120のいわゆる框(かまち)部、つまり図6にL2として示す部分が、互いに強く密着している必要がある。したがってその場合は図1の締付機構40等により、P1=〔原液圧送によるろ室内部圧力〕に、P2=〔框部に必要な面圧を作用させる圧力〕を加えた圧力をフィルタープレート110、120に作用させる必要がある。それに対して、環状パッキン12によって水密性を確保する場合は、上記圧力P2の代わりに、図6にL1で示す狭い範囲において〔環状パッキン12を必要潰し代だけ潰す圧力〕を力P1に加えただけの比較的小さい圧力をフィルタープレート110、120に作用させればよい。また、環状パッキン12によって水密性を確保する場合は、ろ布の馴染み等により框面の圧力が低下するようなことがあっても、圧力流体により環状パッキンが押し出されるので、必要なシール面圧を維持することができる。
【0044】
以上説明した実施形態のフィルタープレート10、110においては、その両表面にそれぞれ環状パッキン12が配設されているが、片方の表面だけにこの環状パッキン12を配設するようにしてもよい。その場合は当然、圧力流体導入路は、その環状パッキン12を収容している1つのパッキン収容溝の底部に開口するように形成すればよい。本発明のフィルタープレートをそのように構成した場合は、複数枚の該フィルタープレートを相隣接する状態に並設すればよく、間に本発明外のフィルタープレート(図5のフィルタープレート20や図6のフィルタープレート120)を配置する必要は無くなる。
【0045】
また以上は、圧力流体として加圧空気が用いられる実施形態について説明したが、本発明のフィルタープレス装置においては加圧空気に限らずその他の圧力流体、例えば加圧水等を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 フィルタープレス装置
10、110 フィルタープレート
11 プレート本体
11a 原液通過孔
11b、11j、11k、11m 圧力流体導入路
11c プレート本体の表面
11d 凹部
11e ろ液溝
11f ろ液排出通路
11g、11h パッキン収容溝
12、13 環状パッキン
14 ろ布
32 原液供給管
33 コンプレッサ
35 空気配管
36 制御弁
40 締付機構
50 ろ室
135 耐圧ゴムホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタープレス装置において複数枚並べて配設されるフィルタープレートであって、
フィルタープレス装置に配設された際に隣り合うフィルタープレート側を向くことになる表面に、ろ室を形成するための凹部と、その周りに配置された環状のパッキン収容溝とが形成され、
前記パッキン収容溝に環状のパッキンが嵌着されてなるフィルタープレートにおいて、
プレート本体内部に、一端側が前記パッキン収容溝の底部に開口し、他端側が該溝とは別の部分においてプレート本体外面に開口した圧力流体導入路が形成されていることを特徴とするフィルタープレート。
【請求項2】
前記圧力流体導入路の他端側が、フィルタープレス装置においてフィルタープレートが複数枚並べて配設されたとき、隣り合うフィルタープレート同士で互いに整合するようになる位置に開口していることを特徴とする請求項1記載のフィルタープレート。
【請求項3】
複数枚並べて配設されるフィルタープレートとして請求項1または2記載のフィルタープレートが設けられ、
それらのフィルタープレートの各圧力流体導入路に前記他端側から圧力流体を供給する手段が設けられていることを特徴とするフィルタープレス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−224418(P2011−224418A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93678(P2010−93678)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000101374)アタカ大機株式会社 (55)
【Fターム(参考)】