説明

フィルターモジュール

【課題】外部配管と通液口との簡易な接続を実現しつつ、キャップのシール性を向上する。
【解決手段】中空糸膜モジュール1の一次側通液口10には、外部配管30のコネクタ40が挿入され回転されて接続されるクイックツイスト式の接続機構が形成されている。当該接続機構は、コネクタ40が嵌め込まれる嵌め込み溝51と、コネクタ40の螺旋突条部40aを係合するガイド部51aを有している。一次側通液口10の外周面には、一次側通液口10にキャップ31を取り付け可能にするネジ部が形成されている。中空糸膜は、0.1m2以上のフィルター面積を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルターモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば血液透析療法や血漿交換療法などの血液浄化や、血液製剤のウィルス除去などで行われる血液処理、水浄化処理には、内部に中空糸膜などのフィルターを内蔵したフィルターモジュールが用いられている。このフィルターモジュールには、外部配管が接続される通液口が設けられている。
【0003】
外部配管と通液口の接続機構には、ルアーロック機構などのクイックツイスト式のものが多く用いられている(特許文献1参照)。クイックツイスト式は、簡易で安価な接続機構であり、外部配管と通液口の一方に所定形状の溝を備え、もう一方に溝に嵌まる突起を備えており、どちらか一方を一周以下で回転させることにより、接続を達成させるものである。
【0004】
ところで、未使用時のフィルターモジュールの通液口には、外部配管の代わりに、上述の接続機構を利用したキャップが取り付けられている。つまりキャップは、外部配管のコネクタと同様に、クイックツイストイ式の接続機構を実現する構造を有し、通液口に対し簡易に接続できるようになっている。このキャップにより、出荷時にフィルターモジュール内に充填されている充填液の蒸発を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4604764号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のキャップはシール性が十分でなく、モジュールの輸送時や貯蔵時等に充填液が徐々に蒸発し、モジュールの使用期限が短くなる。また、クイックツイスト式の接続機構のキャップの場合、キャップを下にしてモジュールを置くと、上記突起によりキャップの一部に荷重が集中するため、キャップが変形しやすく、これによってもシール性が低下することがある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、外部配管と通液口との簡易な接続を実現しつつ、キャップのシール性を向上できるフィルターモジュールを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明は、フィルターが内蔵されており、外部配管が接続される筒状の通液口を有するフィルターモジュールであって、前記通液口には、前記外部配管のコネクタが挿入され回転されて接続されるクイックツイスト式の接続機構が形成され、前記通液口の外周面には、前記通液口にキャップを取り付け可能にするネジ部が形成されている、フィルターモジュールである。
【0009】
本発明によれば、クイックツイスト式の接続機構を用いて外部配管と通液口との簡易な接続を実現しつつ、通液口の外周面にネジ部によりキャップを固定できるので、キャップのシール性を向上できる。また、通液口の外周面にキャップが固定されるので、キャップと通液口が一体化し、外力が加わった場合にもキャップが変形しにくくなる。これにより、キャップのシール性をさらに向上できる。
【0010】
上記フィルターモジュールにおいて、前記通液口の先端面には、前記キャップとの間に介在されるシール部材を嵌め込むための凹部が形成されていてもよい。
【0011】
前記シール部材には、円板部と、当該円板部の中央から突出し前記通液口の内側流路に挿入される突出部とを有するものが用いられてもよい。
【0012】
前記フィルターが、0.1m2以上のフィルターの膜面積を有するものであってもよい。
【0013】
前記フィルターは、中空糸膜であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外部配管と通液口との簡易な接続を実現しつつ、キャップのシール性を向上できるので、例えばフィルターモジュール内の充填液の蒸発が防止され、モジュールの使用期限を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】中空糸膜モジュールの構成の概略を示す断面図である。
【図2】一次側通液口と外部配管のコネクタの構成を示す縦断面の説明図である。
【図3】一次側通液口とキャップの構成を示す縦断面の説明図である。
【図4】一次側通液口に外部配管のコネクタを接続した場合の説明図である。
【図5】一次側通液口にキャップを取り付けた場合の説明図である。
【図6】一次側通液口に外部配管のネジ付きコネクタを接続した場合の説明図である。
【図7】シール部材を介在して一次側通液口にキャップを取り付けた場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかるフィルターモジュールとしての中空糸膜モジュール1の構成の概略を示す縦断面の説明図である。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
中空糸膜モジュール1は、例えば図1に示すように略円筒状に形成されている。中空糸膜モジュール1の内部には、中空糸膜Aの束が収容されている。中空糸膜Aは、例えば0.1m2以上のフィルター面積を有するものである。中空糸膜モジュール1の両端部には、一次側通液口10がそれぞれ形成されている。また、中空糸膜モジュール1の両端部に近い側壁部には、2つの二次側通液口11が形成されている。
【0018】
一次側通液口10は、図2に示すように中空糸膜モジュール1の端面から外側に突出する略円筒状に形成されている。一次側通液口10には、例えばゴムチューブなどの外部配管30と、図3に示すキャップ31を選択的に取り付けることができる。
【0019】
図2に示すように一次側通液口10には、外部配管30のコネクタ40が挿入され回転されて接続されるクイックツイスト式の接続機構が形成されている。具体的には、一次側通液口10には、内部流路50よりも径の大きい環状の嵌め込み溝51が先端面10aに開口するように形成されている。嵌め込み溝51内には、外部配管30のコネクタ40の螺旋突条部40aと係合する螺旋状のガイド部51aが形成されている。
【0020】
図4に示すように一次側通液口10に対し、外部配管30の円筒状のコネクタ40を嵌め込み溝51内に差し込み、1周以下で回転させることで、螺旋突条部40aとガイド部51aが係合し、外部配管30と一次側通液口10を気密に接続できる。
【0021】
図3に示すように一次側通液口10の外周面には、ネジ部である雄ネジ60が形成されている。キャップ31は、一次側通液口10を覆う一面が閉鎖された円筒状に形成されている。キャップ31の内側の側面には、雄ネジ60に螺合する雌ネジ70が形成されており、図5に示すようにキャップ31を回して一次側通液口10に嵌め込むことができる。キャップ31の内側底面は、平坦になっており、キャップ31を一次側通液口10に嵌め込んだときに、キャップ31の平坦面31aと、一次側通液口10の先端面10aが密着し、一次側通液口10の内部流路50を密閉できる。より密着性が必要な場合は、キャップ31の平坦面31aと、一次側通液口10の先端面10aとの間に円板状のシール部材を介在させてもよい。
【0022】
以上のように構成された中空糸膜モジュール1は、例えば未使用時には、図5に示すように両側の一次側通液口10にキャップ31がそれぞれ嵌め込まれる。使用時には、一次側通液口10からキャップ31が外され、その代わりに図4に示すように外部配管30のコネクタ40が接続される。このとき、コネクタ40を一次側通液口10の嵌め込み溝51に挿入し1周以下で回転させることにより、螺旋突条部40aとガイド部51aが係合し、コネクタ40が一次側通液口10に固定される。
【0023】
また、一次側通液口10に対しては、図6に示すようにネジ付きコネクタ75を使って外部配管30を接続することができる。この際、ネジ付きコネクタ75の平坦面75aと、一次側通液口10の先端面10aとの間にリング状のシール部材を介在させてもよい。
【0024】
以上の実施の形態では、クイックツイスト式の接続機構を用いて外部配管30と一次側通液口10との簡易な接続を実現しつつ、一次側通液口10の外周面にネジ部によりキャップ31を固定できるので、キャップ31のシール性を向上できる。また、一次側通液口10の外周面にキャップ31が固定されるので、キャップ31と一次側通液口10が一体化し、外力が加わった場合にもキャップ31が変形しにくくなる。これにより、キャップ31のシール性をさらに向上できる。この結果、例えばモジュール1内の充填液の蒸発が防止され、モジュールの使用期限を延ばすことができる。
【0025】
また、一次側通液口10の外周面にネジ部が形成されているので、ネジ付きコネクタ75を有する外部配管30を接続することもできる。よって、中空糸膜モジュール1を用いた処理に要求される気密性や、耐圧性等に応じてユーザがコネクタの種類を選択することができ、使い勝手がよくなる。特に長時間の濾過の場合、ろ液の流れ等による振動でコネクタが緩んだり、コネクタが外れてろ液が漏れる可能性もあるため、ネジ付きコネクタ75を選択できるメリットは大きい。
【0026】
フィルターとして、0.1m2以上のフィルターの膜面積の中空糸膜Aを用いているので、例えば高価な中空糸膜モジュール1の使用期間が長くなる。
【0027】
以上の実施の形態において、図7に示すように一次側通液口10の先端面10aに凹部80を形成し、当該凹部80に、キャップ31との間に介在されるシール部材81を嵌め込むようにしてもよい。シール部材81は、円板部90と、円板部90の中央から突出し一次側通液口10の内側流路50に挿入される突出部91とを有するものであってもよい。かかる場合、一次側通液口10にキャップ31を取り付けた際のシール性が向上するので、使用前に中空糸膜モジュール1内の充填液が蒸発することをより確実に防止できる。
【0028】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0029】
例えば以上の実施の形態では、一次側通液口10と外部配管30を接続する接続機構として、一次側通液口10に嵌め込み溝51等を設け、外部配管30のコネクタ40に螺旋突条部40a等を設けていたが、それが逆であってもよい。また、クイックツイスト式の接続機構として、嵌め込み溝51内にコネクタ30を挿入するルアーロック式のものを用いていたが、キャップと通液口の一方に溝を備え、もう一方に溝に嵌まる突起を備えており、どちらか一方を一周以下で回転させることにより、接続を達成させるものであれば、他の構成のものであってもよい。例えば一方の溝の中に一部に凹みを設け、他方の突起に爪を設け、突起を溝に挿入し回転させて凹みに爪を嵌めて固定するようなバヨネット式コネクターであってもよい。
【0030】
また、以上の実施の形態では、キャップ31を一次側通液口10に取り付ける例を記載していたが、本発明は、キャップ31を二次側通液口11に取り付ける場合にも適用できる。また、フィルターは、中空糸膜に限られず、例えば、平膜型、スパイラル型、プリーツ型、管状型などの他のフィルターであってもよい。また、フィルターの膜面積は、0.1m2未満のフィルターであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、外部配管と通液口との簡易な接続を実現しつつ、キャップのシール性を向上する際に有用である。
【符号の説明】
【0032】
1 中空糸膜モジュール
10 一次側通液口
10a 先端面
11 二次側通液口
30 外部配管
31 キャップ
31a 平坦面
40 コネクタ
40a 螺旋突条部
50 内部流路
51 嵌め込み溝
51a ガイド部
60 雄ネジ
70 雌ネジ
75 コネクタ
75a 平坦面
80 凹部
81 シール部材
90 円板部
91 突起部
A 中空糸膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルターが内蔵されており、外部配管が接続される筒状の通液口を有するフィルターモジュールであって、
前記通液口には、前記外部配管のコネクタが挿入され回転されて接続されるクイックツイスト式の接続機構が形成され、
前記通液口の外周面には、前記通液口にキャップを取り付け可能にするネジ部が形成されている、フィルターモジュール。
【請求項2】
前記通液口の先端面には、前記キャップとの間に介在されるシール部材を嵌め込むための凹部が形成されている、請求項1に記載のフィルターモジュール。
【請求項3】
前記シール部材には、円板部と、当該円板部の中央から突出し前記通液口の内側流路に挿入される突出部とを有するものが用いられる、請求項2に記載のフィルターモジュール。
【請求項4】
前記フィルターは、0.1m2以上のフィルターの膜面積を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルターモジュール。
【請求項5】
前記フィルターは、中空糸膜である、請求項1〜4のいずれかに記載のフィルターモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−39498(P2013−39498A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175960(P2011−175960)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(507365204)旭化成メディカル株式会社 (65)
【Fターム(参考)】