説明

フィルター内での粒状濾材の有害な移動と沈降を減少させるための開放セル用部分深さ安定化部材を有するエアーフィルター

【課題】壁面煙突作用を過度に生じさせず、粒状濾材の安定化を改善するフィルタ。
【解決手段】第1の面、第2の面、その間の内部通路を備えた中空フレームと;第1の面で通路を横切る第1の濾網と;通路を横切って内方に延出する第1の開放セル用部分深さ安定化部材であって、複数の壁部により形成されたマトリックスを具備するものと;第2の面で通路を横切る第2の濾網と;通路を横切って内方に延出する第2の開放セル用部分深さ安定化部材であって、複数の壁部により形成されたマトリックスを具備するものと;前記通路内に密に充填された粒状濾材とを具備してなるフィルタであって:第1、第2の開放セル用部分深さ安定化部材の合わせた深さがフィルタの深さ(第1の濾網と第2の濾網との間の距離)よりも小さく;第1、第2の安定化部材の深さ、開放セルの数、サイズ、断面、フィルタの深さ、粒状濾材の組成、充填密度が、互いにバランスされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概略的にエアーフィルターに係り、特に、フィルターを通過する空気をろ過するために粒状濾材を使用する種類のエアーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
エアーフィルターは、フィルターを通過する空気をろ過し、それにより空気から望ましくない物質を除去するために、しばしば粒状濾材を使用する。例えば、多くのエアーフィルターは空気から望ましくない物質(例えば、毒素、生体分子など)を一掃するために活性炭粒子を使用している。典型的には、この粒状濾材は、フレーム内であって、空気を透過させつつこの粒状濾材を保持する二つのスクリーン(例えば、メッシュ、格子など)の間に配置される。
【0003】
この粒状濾材は、一般に不規則な形状のもので、密に充填するのが面倒なものとなる。更に詳述すると、この粒状濾材は移動し沈降し易く、その結果、濾材を通る優先通路が形成されることがある。
【0004】
更に、粒状濾材がフィルター内で移動すると、より大きい粒状濾材は、より小さい粒子に破壊されることになり、それが次の更なる移動と沈降を生じさせることになり、それが更なる粒子の破壊に繋がる。この問題は、粒状濾材が比較的脆く破壊され易い場合に、特に深刻である。粒状濾材が次第により小さい粒子に破壊されると、上記優先通路が形成される傾向が更に増大する。
【0005】
この粒状濾材を通る優先通路(時折、「煙突」と呼ばれる)は一般に好ましいものではない。なぜならば、空気が濾材と余り接触することなくフィルターを通過することを可能し、フィルターの有効性を減少させることになるからである。この粒状濾材の移動と沈降作用は、活性炭粒子などの場合に特に面倒なものとなる。なぜならば、これらの粒子は不規則なものになり易く、その輸送、取り扱いの間に、上述の有害な移動と沈降を極めて生じ易いからである。
【0006】
その結果、粒状フィルターのメーカー、特に活性炭フィルターのメーカーにとって、このフィルター内の粒状濾材の有害な移動と沈降、例えば、輸送と取り扱いの間の移動と沈降を抑制するために種々の手段を採用することが広く行われている。このような濾材安定化手段は当該業界で周知であり、例えば、(i)圧縮バネおよび弾性発泡体を使用して粒状濾材を二つの対向する濾網間にて圧縮し、粒状濾材の有害な移動と沈降を抑制するもの;(ii)フレームに直交ブレーシングを設け(すなわち、フィルターの深さを横切る)、粒状濾材をより小さく、独立した区域に細別させ、それにより輸送、取り扱いの間の粒状濾材の移動と沈降を抑制するもの;(iii)各フィルターのサイズ(すなわち、断面積)を制限し、より多数の個々のフィルターを使用し、ろ過の所定のレベルを提供するもの(すなわち、所定のろ過断面積を提供する)などがある。
【0007】
これらのアプローチによれば、粒状濾材内の優先通路の形成を一般的に減少させ、フィルターの有効性を増大させることが見出されているが、このような構成は一般的に製造を複雑化するものであり、従って、フィルターの全体的なコストを増大させるものとなる。さらに、直交ブレーシングの使用は、粒状濾材をより小さく、独立した区域に細別させ、それにより粒状濾材の移動と沈降を抑制するのに役立つが、直交ブレーシングの壁面に沿って配置されるフィルター粒子の数を増大させることになり易い。これは新たな問題を生じさせることになる。なぜならば、不規則な形状の粒子は直交ブレーシングの壁面に沿って密に詰めにくく、それが“煙突”の形成に繋がるからである(すなわち、直交ブレーシングの壁面に沿ってフィルターの深さ方向に延びる煙突)。この直交ブレーシングの壁面がフィルターの深さ方向に上から下まで延びているから、これらの“煙突”はフィルターの深さ方向に上から下まで延びた実質的に新たな優先通路を生じさせ、それによりフィルターの総体的有効性を減少させるものとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、輸送、取り扱いの間の粒状濾材の有害な移動と沈降を抑制させるための手段を備えた新規で、改善されたフィルター構造であって、しかも、従来技術で遭遇する複雑化、コストおよび壁部煙突などの問題を軽減し得るものの開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明はこれらの目的および他の目的に対処するものであり、以下のような新規なエアーフィルターおよびその使用を提供するものである。すなわち、この新規なエアーフィルターは:
第1の面、第2の面およびその間に延出する内部通路を備えた中空フレームと;
前記第1の面で前記通路を横切って延びた第1の濾網と;
前記通路を横切って内方に延出する第1の開放セル用部分深さ安定化部材であって、複数の開放セルを画成する複数の壁部により形成されたマトリックスを具備してなるものと;
前記第2の面で前記通路を横切って延びた第2の濾網と;
前記通路を横切って内方に延出する第2の開放セル用部分深さ安定化部材であって、複数の開放セルを画成する複数の壁部により形成されたマトリックスを具備してなるものと;
前記第1の濾網と第2の濾網との間の前記通路内に密に充填された粒状濾材と;
を具備してなるエアーフィルターであって;
前記第1の濾網と第2の濾網との間の距離が前記フィルターの深さを画定し;
前記の第1の開放セル用部分深さ安定化部材および第2の開放セル用部分深さ安定化部材の併せた深さが全体で前記フィルターの深さよりも小さく;
前記の第1および第2の開放セル用部分深さ安定化部材の深さ、これらの開放セルの数、サイズおよび断面、前記フィルターの深さ、粒状濾材の組成、および粒状濾材の充填密度の全てが、壁面煙突作用を過度に生じさせることなく、粒状濾材の安定化を改善させるべく互いに相対してバランスされていることを特徴とする。
【0010】
本発明のこれらの目的および他の目的並びに特徴は、添付図面を参照する本発明の好ましい実施例についての以下の詳細な説明によって十分に開示されており、又、これらの説明から自明なものとなるであろう。なお、図1ないし6Eにおいて、同一部分については同一符号が付されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
最初に、図1-5を参照すると、此処には本発明に従って形成されたフィルター5が示されている。このフィルター5は大略的に中空フレーム10を具備してなり、これは大略的に第1の面15と、第2の面20と、その間に延出する内部通路25とにより特徴づけられる。このフレーム10は、好ましくは、第1のハーフ部材30と、第2のハーフ部材35とを具備してなり、これらは接合部40で一緒に接合され、それによりフィルターの製造が簡素化されている。しかし、他の構造も採用することができる。
【0012】
第1の濾網45が前記第1の面15で通路25を横切って延びており、第2の濾網50が前記第2の面20で通路25を横切って延びている。第1の濾網45と第2の濾網50との間の通路25内には粒状濾材55が充填されている。本発明の目的において、第1の濾網45と第2の濾網50との間の距離、従って、粒状濾材55の深さはフィルターの“深さ”として考えることができる。
【0013】
本発明によれば、第1の開放セル用部分深さ安定化部材60が第1の濾網45の一部として形成され、通路25内に部分的に延出しており(従って、粒状濾材55の深さ内に部分的に延びている)、第2の開放セル用部分深さ安定化部材65が第2の濾網50の一部として形成され、通路25内に部分的に延出している(従って、粒状濾材55の深さ内に部分的に延びている)。第1の開放セル用部分深さ安定化部材60および第2の開放セル用部分深さ安定化部材65の合わせた深さは全体で前記フィルターの全体の深さよりも小さくなっている。しかし、(i)第1の開放セル用部分深さ安定化部材60および第2の開放セル用部分深さ安定化部材65が通路25内に部分的に延出していること、(ii)粒状濾材55が第1の濾網45と第2の濾網50との間に圧縮状態で保持されているという事実により、第1の開放セル用部分深さ安定化部材60および第2の開放セル用部分深さ安定化部材65はそれらを合わせてもフィルターの深さ全体の一部中にのみ延出するに過ぎないが、これら安定化部材が一緒になって粒状濾材55の塊りの実質的全体を安定化させることができる。
【0014】
より具体的には、これら第1の開放セル用部分深さ安定化部材60および第2の開放セル用部分深さ安定化部材65が、圧縮状態の粒状濾材55の集合体中に延出しているので、これら安定化部材60、65の開放セル(ハネカム構造のセル、下記参照)内に配置されている粒子の“第1の列”がこれら安定化部材60、65により安定化されることになる。粒状濾材55が第1の濾網45と第2の濾網50との間に密に充填されているから、これらの安定化された粒子の“第1の列”が代わって今度は、その直ぐ隣接する粒子の“第2の列”を安定化させる。この作用は粒状濾材の相互に連結されている塊りの深さ全体を通して段階的に伝わることになる。従って、第1の開放セル用部分深さ安定化部材60および第2の開放セル用部分深さ安定化部材65はフィルターの深さ全体の一部中にのみ延出するに過ぎないが、粒状濾材55の塊りはフィルター内にて実質的に十分に安定化されることになる。
【0015】
上述のような構成の結果、第1の開放セル用部分深さ安定化部材60および第2の開放セル用部分深さ安定化部材65は、フィルターの輸送と取り扱いの間に粒状濾材55の有害な移動と沈降を有意に減少させること、好ましくは実質的になくして、粒状濾材を通過する重大な優先通路の形成を回避することができる。これは従来技術を超える有意な前進といえるものである。
【0016】
第1の濾網45はフレーム10に固定され、第2の濾網50はフレーム10に固定されている。同様に、第1の開放セル用部分深さ安定化部材60はフレーム10に固定され、好ましくは更に第1の濾網45に固定されている。第2の開放セル用部分深さ安定化部材65はフレーム10に固定され、好ましくは更に第2の濾網50に固定されている。本発明の好ましい一つの形態として、第1の濾網45および第1の開放セル用部分深さ安定化部材60が、フレーム10の第1のハーフ部材30と一緒になって単一の構造体として形成される。これは例えば、これらを単一体として成形することにより、又は、これらを別々の部材として成形し、後にこれら部材を超音波溶接又は接着により接合して単一の構造体とすることができる。同じく、第2の濾網50および第2の開放セル用部分深さ安定化部材65が、フレーム10の第2のハーフ部材35と一緒になって単一の構造体として形成される。これは例えば、これらを単一体として成形することにより、又は、これらを別々の部材として成形し、後にこれら部材を超音波溶接又は接着により接合して単一の構造体とすることができる。いずれにしても、第1の濾網45、第2の濾網50、第1の開放セル用部分深さ安定化部材60および第2の開放セル用部分深さ安定化部材65は、フレーム10との関連で所定位置に固定される。
【0017】
フレーム10はフィルターの全体構成を提供するものである。このフレーム10は図中では直方体(例えば、箱型)として示されているが、本発明はこれに限らず、他のフィルター形状にも適用し得るものである。例えば、ディスク形などのフィルターにも適用し得る。このフレーム10は本発明に適合する任意の適当な材料から製作することができる。例えば、金属、プラスチック、セラミックスなどである。
【0018】
第1の濾網45および第2の濾網50は、複数の小さな開口部を有するメッシュ又は格子状の構造体からなる。より具体的に述べると、第1の濾網45および第2の濾網50は、それらの間に粒状濾材55を保持し得ると同時に、空気の通過を可能にするようにして作られている。第1の濾網45および第2の濾網50は、本発明に適合する任意の適当な材料(例えば、金属、プラスチックなど)から製作することができ、規則的パターン(例えば、格子状など、従来の網戸に類似するものなど)を有するもの、あるいは規則的パターンを有しないもの(例えば、バット(詰綿)、スチールウールなど)として製作することができる。第1の濾網45および第2の濾網50中に存在する開口部の具体的サイズは、フィルターの特性に従って変化させることができる(例えば、粒状濾材55がより大きいサイズの場合は、上記開口部のサイズはより大きくなり、粒状濾材55がより小さなサイズの場合は、上記開口部のサイズはより小さくなる)。好ましくは、第1の濾網45および第2の濾網50中の開口部のサイズは3mm未満とする。限定するものではないが、例えば、本発明の好ましい一つの形態として、第1の濾網45および第2の濾網50中の開口部のサイズは約0.5mmとする。
【0019】
好ましくは、第1の濾網45および第2の濾網50は互いに同一のものからなるものとする。
【0020】
粒状濾材55を安定化させるために、第1の開放セル用部分深さ安定化部材60は第1の濾網45から粒状濾材55内に延出している。第2の開放セル用部分深さ安定化部材65も第2の濾網50から粒状濾材55内に延出している。第1の開放セル用部分深さ安定化部材60が第1の濾網45と一体的に形成されている場合、第1の開放セル用部分深さ安定化部材60は第1の濾網45を支持するのに役立ち、第2の開放セル用部分深さ安定化部材65が第2の濾網50と一体的に形成されている場合、第2の開放セル用部分深さ安定化部材65は第2の濾網50を支持するのに役立つことになる。
【0021】
更に図1−5を参照すると、第1の開放セル用部分深さ安定化部材60は第1の濾網45の部位で通路25を横切るようにして延びている。この第1の開放セル用部分深さ安定化部材60は、複数の壁部70により形成されたマトリックスを具備し、これら壁部70相互間に開放セル75を画成している。この第1の開放セル用部分深さ安定化部材60は基本的にハネカム構造からなっている。開放セル75の数、サイズおよび断面はフィルターの特性に従って変えることができる(例えば、フィルターのサイズ、および使用される粒状濾材など)。第1の開放セル用部分深さ安定化部材60の壁部70は粒状濾材55内に或る距離を以って延びているが、この壁部70はフィルターの深さを完全に横切るようにしては延びていない。より具体的には、第1の開放セル用部分深さ安定化部材60の壁部70は、圧縮されている粒子の“第1の列”を安定化し得る程度にまで粒状濾材55内に十分に延びていて、それが次に圧縮されている粒子の隣接する列を安定化させ、この作用が相互に圧縮、連結されている粒子の深さ全体を通して段階的に伝わることになる。それにより、フィルターの深さ全体に亘って粒状濾材の有害な移動と沈降を有意に減少させることができる。しかし、この壁部70は、有意な壁部煙突を形成させるまで粒状濾材55内部を横切って遠くまで延びておらず、それにより、フィルターの有効性を覆すような有効的優先通路の形成が回避されることになる。限定するものではないが、例えば、この壁部70はフィルターの深さの約5−30%を横切るようにして延出させることができる。
【0022】
第2の開放セル用部分深さ安定化部材65は第2の濾網50の部位で通路25を横切るようにして延びている。この第2の開放セル用部分深さ安定化部材65は、複数の壁部80により形成されたマトリックスを具備し、これら壁部80相互間に開放セル85を画成している。この第2の開放セル用部分深さ安定化部材65は基本的にハネカム構造からなっている。開放セル85の数、サイズおよび断面はフィルターの特性に従って変えることができる(例えば、フィルターのサイズ、および使用される粒状濾材など)。第2の開放セル用部分深さ安定化部材65の壁部80は粒状濾材55内に或る距離を以って延びているが、この壁部80はフィルターの深さを完全に横切るようにしては延びていない。より具体的には、第2の開放セル用部分深さ安定化部材65の壁部80は、圧縮されている粒子の“第1の列”を安定化し得る程度にまで粒状濾材55内に十分に延びていて、それが次に圧縮されている粒子の隣接する列を安定化させ、この作用が相互に圧縮、連結されている粒子の深さ全体を通して段階的に伝わることになる。それにより、フィルターの深さ全体に亘って粒状濾材の有害な移動と沈降を有意に減少させることができる。しかし、この壁部80は、有意な壁部煙突を形成させるまで粒状濾材55内部を横切って遠くまで延びておらず、それにより、フィルターの有効性を覆すような有効的な優先通路の形成が回避されることになる。限定するものではないが、例えば、この壁部70はフィルターの深さの約5−30%を横切るようにして延出させることができる。
【0023】
好ましくは、第1の開放セル用部分深さ安定化部材60および第2の開放セル用部分深さ安定化部材65は互いに同じになるようにして形成される。
【0024】
なお、フレームの全体的深さが増大するにつれ、前記のそれぞれの開放セル用部分深さ安定化部材の深さも同じく増大することになる。しかし、開放セル用部分深さ安定化部材60,65の深さはこの場合も、フィルターの深さ全長の一部のみを構成するものとなる。限定するものではないが、例えば、本発明の好ましい一つの形態において、フィルターのフレームの深さの全長が40mmとすると、開放セル用部分深さ安定化部材60,65のそれぞれの深さ(長さ)を4mmとする。
【0025】
いずれにしても、第1の開放セル用部分深さ安定化部材60および第2の開放セル用部分深さ安定化部材65の集成深さ(合計の深さ)は一緒で前記フィルターの全体の深さよりも小さいものとなる。それにも拘わらず、第1の開放セル用部分深さ安定化部材60および第2の開放セル用部分深さ安定化部材65は一緒でも前記フィルターの全体の深さよりも短く延びているに過ぎないが、これら安定化部材は一緒になって、粒状濾材55の塊りの実質的全体を安定化させることができる。その理由は、第1の開放セル用部分深さ安定化部材60および第2の開放セル用部分深さ安定化部材65が粒状濾材55の塊り内部に延出しているから、これら安定化部材60,65の開放セル75,85内に配置された粒子の“第1の列”が安定化することになるからである。粒状濾材55が第1の濾網45と第2の濾網50との間に密に充填されているから、これらの安定化された粒子の“第1の列”が代わって今度は、その直ぐ隣接する粒子の“第2の列”を安定化させることになり、この作用は粒状濾材の相互に連結されている塊りの深さ全体を通して段階的に伝わることになる。従って、第1の開放セル用部分深さ安定化部材60および第2の開放セル用部分深さ安定化部材65はフィルターの深さ全体の一部中にのみ延出するに過ぎないが、粒状濾材55の塊りはフィルター内にて実質的に十分に安定化されることになる。再び、これは従来技術を越える有意な改良と言えるものである。
【0026】
粒状濾材55は、ろ過される空気から望ましくない物質(例えば、毒素、生体分子など)を一掃するのに役立つものである。この粒状濾材55は一般に、例えばフィルターの輸送、取り扱いなどの際に、移動と沈降し易い不規則な形状を有する。この粒状濾材55は単一のタイプの粒子からなるもの、あるいは異なるタイプの粒子のブレンドからなるものでもよい。本質的に、この粒状濾材55は、当業者に周知の多くの粒状濾材(例えば、活性炭粒子)からなるものでよい。ただし、それら粒状濾材はろ過される空気から標的とする物質を一掃できるものでなければならない。なお、認識すべきことは、第1の濾網および第2の濾網の開口部のサイズは、使用される粒子のサイズに直接関係する。
【0027】
粒状濾材55は第1の濾網45と、第2の濾網50との間に密に充填されている。本発明の好ましい一つの形態において、この粒状濾材は圧縮状態で充填され、粒子相互の連結性を向上させるようにしている。この圧縮の程度は種々のファクターにより左右される。例えば、粒子のサイズ、粒子の寸法形状、粒子の硬さ、粒子の脆さ、個々の粒子の圧縮性、粒子の塊りの圧縮性などにより左右される。いずれにしても、粒状濾材の塊りは、フィルター内での粒子相互の連結性を確保するために十分密に詰め込まれる。この粒子相互の連結性は、それにより、第1の開放セル用部分深さ安定化部材60および第2の開放セル用部分深さ安定化部材65を以ってして、粒状濾材55全体の塊りを安定化させることができ、しかも、これら安定化部材60,65をフィルターの深さ全体を横切って延出させる必要なく、それを可能にするという点から重要である。
【0028】
上述のような構成の結果、空気を、フィルター5の通路25を通過させるとき、粒状濾材55により空気から望ましくない物質が一掃させることを理解されたい。更に、フィルター5内に、第1の開放セル用部分深さ安定化部材60および第2の開放セル用部分深さ安定化部材65を組み込み、第1の濾網45と、第2の濾網50との間に粒状濾材55を圧縮させたことにより、粒状濾材がフィルター内にて安定化され、フィルター内での粒状濾材の有害な移動および沈降を少なくすることができ、それにより、フィルター内での望ましくない煙突の形成を少なくすることができる。同時に、開放セル用安定化部材60,65が一緒でも、フィルターの深さ全体の一部にのみ横切って延出するに過ぎないから、粒状濾材の安定化を図りつつ、壁部煙突の有害な作用を少なくすることができる。
【0029】
本発明において、開放セルの壁部の高さ、開放セルの数、サイズおよび断面は、粒状濾材の性質と粒状濾材の圧縮の度合いに注意深く調整されて、(i)壁部煙突作用の増大、及び(ii)粒状濾材の移動と沈降の減少との間で最良の妥協点に達するようにしていることを理解されたい。
【0030】
従って、本発明においては、(i)第1の部分深さ開放セルを有する安定化部材60および第2の部分深さ開放セルを有する安定化部材65の合わされた深さ;(ii)これらの開放セルの数、サイズおよび断面;(iii)前記フィルターの深さ;(iv)粒状濾材の組成(例えば、粒子の硬さ、粒子の脆さ、個々の粒子の圧縮性、粒子の集合の塊りの圧縮性など);および(v)第1の濾網45と、第2の濾網50との間に充填されている粒状濾材に加えられている圧縮力の大きさ;の全てが、壁面煙突作用を過度に生じさせることなく、粒状濾材の最も可能な限りの安定化が得られるように互いに相対して注意深くバランスされている。
【0031】
(その他の構成)
フレーム10内には二つより少ない数の開放セル用部分深さ安定化部材を設けることも可能であることを理解されたい。従って、第1の開放セル用部分深さ安定化部材60又は第2の開放セル用部分深さ安定化部材65を省略することができる。しかし、フレーム10内に二つより少ない数の開放セル用部分深さ安定化部材を使用することは、粒状濾材55の塊りの安定化を可なり損なうものとなる。更に、二つより少ない数の開放セル用部分深さ安定化部材を使用することは、フレーム10に対する安定化も可なり損なうものとなる。
【0032】
図1−5に示す構造において、開放セル用部分深さ安定化部材60,65の壁部70,80は、四角形断面を有する同一の高密充填開放セル75,85を提供する構成されている。しかし、これらの開放セル用部分深さ安定化部材は異なる断面を有する開放セルを提供するよう構成されていてもよい。例えば、円形(図6A)、長円形又は楕円形(図6B)、三角形(図6C)、又は他の多角形(例えば、六角形、図6D)の断面を有するものでもよい。その他、この開放セルは互いに同一に形成されているが、互いに離間して形成されていてもよい(例えば、図6E)。
【0033】
本発明の他の形態として、開放セル用部分深さ安定化部材60,65は複数の異なる断面を有する開放セルから形成することもできる。
【0034】
本発明の他の形態として、二つの開放セル用部分深さ安定化部材がフィルター5内に使用される場合で、これら安定化部材の夫々が同一の形状を有する。その他、二つの開放セル用部分深さ安定化部材が互いに異なる形状のものであってもよい。
【0035】
更に、開放セル用部分深さ安定化部材の開放セルを濾網の全面又はその一部のみを横切るように形成してもよいことを理解されたい。しかし、濾網の実質的全面よりも少なく横切るように開放セルを設けることは、粒状濾材55の塊りの安定化を可なり減少させるものとなる。
【0036】
(好ましい実施例の変形例)
本発明の趣旨を説明するために此処に記載、説明した細部の構成、材料、工程および部品の配置については、多くの更なる変更が、本発明の原理および範囲を逸脱することなく、可能であることが、当業者にとって自明であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明により形成された新規なフィルターを示す斜視図。
【図2】図1に示したフィルターの分解斜視図であって、フィルターの二つのハーフ部材を互いに離して示す図。
【図3】図1に示したフィルターの模式的断面図であって、本発明の一つの好ましい構造に従って第1の濾網の一部として形成された第1の開放セル用部分深さ安定化部材と、第2の濾網の一部として形成された第2の開放セル用部分深さ安定化部材とが示されている。
【図3A】図3に示すものに類似するものの拡大断面図であるが、ここでは圧縮された粒状濾材の相互に連結された状態を強調するものである。
【図4】図2に示した第1の濾網の裏面の一部の平面図であって、第1の開放セル用部分深さ安定化部材を詳細に示す図。
【図5】図4に示した部分の拡大斜視図であって、第1の濾網の一部として形成された第1の開放セル用部分深さ安定化部材を示している。
【図6A】本発明の開放セル用部分深さ安定化部材で使用することができる更なる開放セル構造を示す平面図。
【図6B】本発明の開放セル用部分深さ安定化部材で使用することができる更なる開放セル構造を示す平面図。
【図6C】本発明の開放セル用部分深さ安定化部材で使用することができる更なる開放セル構造を示す平面図。
【図6D】本発明の開放セル用部分深さ安定化部材で使用することができる更なる開放セル構造を示す平面図。
【図6E】本発明の開放セル用部分深さ安定化部材で使用することができる更なる開放セル構造を示す平面図。
【符号の説明】
【0038】
5 フィルター
10 中空フレーム
15 第1の面
20 第2の面
25 内部通路
30 第1のハーフ部材
35 第2のハーフ部材
40 接合部
45 第1の濾網
50 第2の濾網
55 粒状濾材
60 第1の開放セル用部分深さ安定化部材
65 第2の開放セル用部分深さ安定化部材
70 壁部
75 開放セル
80 壁部
85 開放セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面、第2の面およびその間に延出する内部通路を備えた中空フレームと;
前記第1の面で前記通路を横切って延びた第1の濾網と;
前記通路を横切って内方に延出する第1の開放セル用部分深さ安定化部材であって、複数の壁部間に複数の開放セルを画成する該複数の壁部により形成されたマトリックスを具備してなるものと;
前記第2の面で前記通路を横切って延びた第2の濾網と;
前記通路を横切って内方に延出する第2の開放セル用部分深さ安定化部材であって、複数の壁部間に複数の開放セルを画成する該複数の壁部により形成されたマトリックスを具備してなるものと;
前記第1の濾網と第2の濾網との間の前記通路内に密に充填された粒状濾材と;
を具備してなるエアーフィルターであって;
前記第1の濾網と第2の濾網との間の距離が前記フィルターの深さを画定し;
前記の第1の開放セル用部分深さ安定化部材および第2の開放セル用部分深さ安定化部材の合わせた深さが全体で前記フィルターの深さよりも小さく;
前記の第1および第2の開放セル用部分深さ安定化部材の深さ、これらの開放セルの数、サイズおよび断面、前記フィルターの深さ、粒状濾材の組成、および粒状濾材の充填密度の全てがそれぞれ互いにバランスされて、壁面煙突作用を過度に生じさせることなく、粒状濾材の安定化を向上することを特徴とするフィルター。
【請求項2】
前記の第1の開放セル用部分深さ安定化部材が第1の濾網の近傍に配置され、前記の第2の開放セル用部分深さ安定化部材が第2の濾網の近傍に配置されている請求項1記載のフィルター。
【請求項3】
前記第1の濾網が前記フレームおよび前記第1の開放セル用部分深さ安定化部材の少なくとも一つに固定され、前記第2の濾網が前記フレームおよび前記第2の開放セル用部分深さ安定化部材の少なくとも一つに固定されている請求項1記載のフィルター。
【請求項4】
前記第1の開放セル用部分深さ安定化部材が、前記フレームおよび前記第1の濾網の少なくとも一つに固定され、前記第2の開放セル用部分深さ安定化部材が、前記フレームおよび前記第2の濾網の少なくとも一つに固定されている請求項1記載のフィルター。
【請求項5】
前記第1の開放セル用部分深さ安定化部材が前記第1の濾網と一体化して形成され、前記第2の開放セル用部分深さ安定化部材が前記第2の濾網と一体化して形成されている請求項1記載のフィルター。
【請求項6】
前記第1の濾網および第2の濾網の少なくとも一方がメッシュ構造として形成されている請求項1記載のフィルター。
【請求項7】
前記第1の濾網および第2の濾網の少なくとも一方が格子構造として形成されている請求項1記載のフィルター。
【請求項8】
前記粒状濾材が活性炭を含む請求項1記載のフィルター。
【請求項9】
前記第1の開放セル用部分深さ安定化部材および前記第2の開放セル用部分深さ安定化部材の少なくとも一方が四角形断面を有する気孔を含む請求項1記載のフィルター。
【請求項10】
前記第1の開放セル用部分深さ安定化部材および前記第2の開放セル用部分深さ安定化部材の少なくとも一方が円形断面を有する気孔を含む請求項1記載のフィルター。
【請求項11】
前記第1の開放セル用部分深さ安定化部材および前記第2の開放セル用部分深さ安定化部材の少なくとも一方が楕円形断面を有する気孔を含む請求項1記載のフィルター。
【請求項12】
前記第1の開放セル用部分深さ安定化部材および前記第2の開放セル用部分深さ安定化部材の少なくとも一方が三角形断面を有する気孔を含む請求項1記載のフィルター。
【請求項13】
前記第1の開放セル用部分深さ安定化部材および前記第2の開放セル用部分深さ安定化部材の少なくとも一方が多角形断面を有する気孔を含む請求項1記載のフィルター。
【請求項14】
前記第1の開放セル用部分深さ安定化部材および前記第2の開放セル用部分深さ安定化部材が互いに同一である請求項1記載のフィルター。
【請求項15】
前記第1の開放セル用部分深さ安定化部材および前記第2の開放セル用部分深さ安定化部材の少なくとも一方が該フィルターの深さの約5−30%を横切って延びている請求項1記載のフィルター。
【請求項16】
前記第1の開放セル用部分深さ安定化部材および前記第2の開放セル用部分深さ安定化部材の少なくとも一方の気孔が前記濾網の全面に亘って延びている請求項1記載のフィルター。
【請求項17】
前記第1の開放セル用部分深さ安定化部材および前記第2の開放セル用部分深さ安定化部材の少なくとも一方の気孔が前記濾網の全面の一部のみに亘って延びている請求項1記載のフィルター。
【請求項18】
前記粒状濾材が第1の濾網と第2の濾網との間に圧縮状態で蜜に充填されている請求項1記載のフィルター。
【請求項19】
前記中空フレームが第1のハーフ部材と、第2のハーフ部材とからなり、該フレームの第1のハーフ部材、前記第1の濾網および前記第1の開放セル用部分深さ安定化部材が全て単一ユニットとして形成され、該フレームの第2のハーフ部材、前記第2の濾網および前記第2の開放セル用部分深さ安定化部材が全て単一ユニットとして形成されている請求項1記載のフィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【公開番号】特開2008−188588(P2008−188588A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−300821(P2007−300821)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(507383208)フィパック リサーチ アンド ディベロップメント カンパニー (1)
【Fターム(参考)】